説明

ヒトアンギオポエチン様タンパク質4に対するヒト抗体

ヒトアンギオポエチン様タンパク質4(hANGPTL4)に特異的に結合して阻害する完全なヒト抗体またはヒト抗体の抗原結合フラグメントを提供する。ヒト抗hANGPTL4抗体は、ANGPTL4に関連する疾患または障害(高脂血症、高リポタンパク質血症、および脂質異常症(高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、カイロミクロン血症などが含まれる)など)の処置で有用である。さらに、抗hANGPTL4抗体を、異常な脂質代謝が危険因子である疾患または障害を防止または処置するために、必要な被験体に投与することができる。かかる疾患または障害には、心血管疾患(アテローム性動脈硬化症および冠状動脈疾患など)、急性膵炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、糖尿病、および肥満が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒトアンギオポエチン様タンパク質4(hANGPTL4)に特異的に結合するヒト抗体およびヒト抗体の抗原結合フラグメントならびに前記抗体の治療的使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連分野の記述
リポタンパク質リパーゼ(LPL)は、リポタンパク質代謝において中心的役割を果たし、それによって正常な血中リポタンパク質レベルが維持され、その活性の組織特異的調節によって、いつ、どの組織トリグリセリド(TG)が取り除かれるのかが決定される。ヒトおよびげっ歯類において、ANGPTL4がLPLを阻害してリポタンパク質の異化を遅延させると報告されている。ANGPTL4ヌルマウスは、血清TGの有意な減少を示す。逆に、マウスへのANGPTL4注射によって循環脂質が迅速に増加し、これはアンギオポエチン様タンパク質3(ANGPTL3)注射よりも速い(非特許文献1)。ANGPTL4のN末端コイルドコイル領域(C末端フィブリノゲン様ドメインではない)は、LPL活性阻害(したがって、高トリグリセリド血症を示す)で重要であることが公知である。これらの所見は、ANGPTL4阻害が脂質レベルの上昇によって特徴づけられる疾患(肥満、代謝症候群、II型糖尿病などに関連する原発性脂質異常症および高トリグリセリド血症などが含まれる)の処置で有益であり得ることを示す。ANGPTL4はまた、血管形成およびがんで役割を果たすことが示されている(非特許文献2;非特許文献3;および非特許文献4)。
【0003】
ヒトANGPTL4の核酸およびアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号475、および476に示す。ANGPTL4の抗体は、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/074228号
【特許文献2】国際公開第2007/109307号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Yoshida et al.,J Lipid Res 2002,43:1770−1772
【非特許文献2】Galaup et al.,PNAS 2006,103(49):18721−18726
【非特許文献3】Kim et al.,Biochem J 2000,346:603−610
【非特許文献4】Ito et al.,Cancer Res 2003,63(20):6651−6657
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
第1の態様では、本発明は、ヒトANGPTL4(hANGPTL4)に特異的に結合してその活性を中和する完全なヒトモノクローナル抗体(mAb)およびその抗原結合フラグメントを提供する。
【0007】
抗体(Ab)は、全長(例えば、IgG1抗体またはIgG4抗体)であり得、または抗原結合部分(例えば、Fab、F(ab’)、またはscFvフラグメント)のみを含むことができ、機能性に影響を及ぼす(例えば、残存するエフェクター機能を排除する)ように改変することができる(Reddy et al.,2000,J.Immunol.164:1925−1933)。
【0008】
1つの実施形態では、本発明は、配列番号2、18、22、26、42、46、50、66、70、74、90、94、98、114、118、122、138、142、146、162、166、170、186、190、194、210、214、218、234、238、242、258、262、266、282、286、290、306、310、314、330、334、338、354、358、362、378、382、386、402、406、410、426、430、434、450、454、458、466、468、および487、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列からなる群より選択される重鎖可変領域(HCVR)を含む抗体または抗体の抗原結合フラグメントを含む。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号26、42、46、487、74、90、94、122、138、142、146、162、および166からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCVRを含む。さらに別の実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号42、487、90、138、または162を含むHCVRを含む。
【0009】
1つの実施形態では、抗体または抗体の抗原結合フラグメントは、配列番号10、20、24、34、44、48、58、68、72、82、92、96、106、116、120、130、140、144、154、164、168、178、188、192、202、212、216、226、236、240、250、260、264、274、284、288、298、308、312、322、332、336、346、356、360、370、380、384、394、404、408、418、428、432、442、452、および456、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列からなる群より選択される軽鎖可変領域(LCVR)を含む。別の実施形態では、抗体または抗体の抗原結合部分は、配列番号34、44、48、82、92、96、130、140、144、154、164、および168からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む。さらに別の実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号44、92、140、または164を含むLCVRを含む。
【0010】
さらなる実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、
【0011】
【化1】

からなる群より選択されるHCVRおよびLCVR(HCVR/LCVR)配列対を含む。1つの実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号26/34、42/44、487/44、46/48、74/82、90/92、94/96、122/130、138/140、142/144、146/154、162/164、および166/168のアミノ酸配列対から選択されるHCVRおよびLCVRを含む。別の実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号42/44、487/44、90/92、138/140、または162/164を含むHCVR/LCVR対を含む。
【0012】
第2の態様では、本発明は、配列番号8、32、56、80、104、128、152、176、200、224、248、272、296、320、344、368、392、416、440、および464、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列からなる群より選択される重鎖相補性決定領域3(HCDR3)アミノ酸配列、および配列番号16、40、64、88、112、136、160、184、208、232、256、280、304、328、352、376、400、424、および448、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列からなる群より選択される軽鎖CDR3(LCDR3)アミノ酸配列を含む抗体または抗体の抗原結合フラグメントを特徴とする。1つの実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号32/40、80/88、128/136、または152/160を含むHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む。別の実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号32/40または80/88を含むHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む。
【0013】
さらなる実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号4、28、52、76、100、124、148、172、196、220、244、268、292、316、340、364、388、412、436、および460、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列からなる群より選択される重鎖CDR1(HCDR1)アミノ酸配列、および配列番号6、30、54、78、102、126、150、174、198、222、246、270、294、318、342、366、390、414、438、および462、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列からなる群より選択される重鎖CDR2(HCDR2)アミノ酸配列をさらに含み、任意選択的に、配列番号12、36、60、84、108、132、156、180、204、228、252、276、300、324、348、372、396、420、および444、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列からなる群より選択される軽鎖CDR1(LCDR1)アミノ酸配列、および/または配列番号14、38、62、86、110、134、158、182、206、230、254、278、302、326、350、374、398、422、および446、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列からなる群より選択される軽鎖CDR2(LCDR2)アミノ酸配列をさらに含む。
【0014】
あるいは、本発明は、配列番号4/6/8、28/30/32、52/54/56、76/78/80、100/102/104、124/126/128、148/150/152、172/174/176、196/198/200、220/222/224、244/246/248、268/270/272、292/294/296、316/318/320、340/342/344、364/366/368、388/390/392、412/414/416、436/438/440、および460/462/464からなる群より選択されるHCDR1/HCDR2/HCDR3組み合わせ、および/または配列番号12/14/16、36/38/40、60/62/64、84/86/88、108/110/112、132/134/136、156/158/160、180/182/184、204/206/208、228/230/232、252/254/256、276/278/280、300/302/304、324/326/328、348/350/352、372/374/376、396/398/400、420/422/424、および444/446/448からなる群より選択されるLCDR1/LCDR2/LCDR3組み合わせを含む抗体または抗体の抗原結合フラグメントを特徴とする。
【0015】
1つの実施形態では、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号28/30/32、76/78/80、124/126/128、および148/150/152からなる群より選択され、および/またはLCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、配列番号36/38/40、84/86/88、132/134/136、および156/158/160からなる群より選択される。さらに別の実施形態では、重鎖および軽鎖CDRアミノ酸配列は、配列番号28/30/32/36/38/40、76/78/80/84/86/88、124/126/128/132/134/136、および148/150/152/156/158/160からなる群より選択されるCDR配列組み合わせを含む。さらに別の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号28/30/32/36/38/40または76/78/80/84/86/88の重鎖および軽鎖CDR配列を含む。
【0016】
関連する実施形態では、本発明は、hANGPTL4に特異的に結合する抗体または抗体の抗原結合フラグメントであって、抗体またはそのフラグメントが、
【0017】
【化2】

からなる群より選択されるHCVR/LCVR対内に含まれる重鎖および軽鎖CDRドメインを含む、抗体またはそのフラグメントを含む。HCVRおよびLCVRのアミノ酸配列内のCDRを同定する方法および技術は当該分野で公知であり、本明細書中に開示の特定のHCVRおよび/またはLCVRのアミノ酸配列内のCDRの同定に適用することができる。CDRの境界の同定に適用することができる従来の定義には、Kabat定義、Chothia定義、およびAbM定義が含まれる。大まかに言えば、Kabat定義は配列多様性に基づき、Chothia定義は構造ループ領域の位置に基づき、AbM定義はKabatアプローチとChothiaアプローチとの間の折衷物である。例えば、Kabat、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991);Al−Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927−948(1997);およびMartin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9268−9272(1989)を参照のこと。抗体内のCDR配列の同定に公共データベースも利用可能である。1つの実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号26/34、42/44、487/44、46/48、74/82、90/92、94/96、122/130、138/140、142/144、146/154、162/164、および166/168のアミノ酸配列対からなる群より選択されるHCVRおよびLCVR対内に含まれるCDR配列を含む。別の実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号42/44、487/44、90/92、138/140、または162/164のHCVR配列およびLCVR配列対内に含まれるCDR配列を含む。
【0018】
別の関連する実施形態では、本発明は、配列番号28/30/32/36/38/40、76/78/80/84/86/88、124/126/128/132/134/136、または148/150/152/156/158/160の重鎖および軽鎖CDR配列を含む抗体または抗原結合フラグメントとhANGPTL4への特異的結合を競合する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。1つの実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号42/44、487/44、90/92、138/140、または162/164のHCVR/LCVR配列対を含む抗体とhANGPTL4への特異的結合を競合する。
【0019】
別の関連する実施形態では、本発明は、配列番号28/30/32/36/38/40、76/78/80/84/86/88、124/126/128/132/134/136、または148/150/152/156/158/160の重鎖および軽鎖CDR配列を含む抗体またはそのフラグメントによって認識されるhANGPTL4上の同一のエピトープに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。1つの実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号42/44、487/44、90/92、138/140、または162/164のHCVR/LCVR配列対を含む抗体によって認識されるhANGPTL4上のエピトープを認識する。
【0020】
第3の態様では、本発明は、抗ANGPTL4抗体またはそのフラグメント(特に上記のもの)をコードする核酸分子を提供する。本発明の核酸を保有する組換え発現ベクター、およびかかるベクターが導入された宿主細胞(例えば、細菌細胞(大腸菌など)または哺乳動物細胞(CHO細胞など))も本発明に含まれる。抗体を産生させる条件下での宿主細胞の培養および産生された抗体の取り出しによる抗体の産生方法も同様に含まれる。
【0021】
1つの実施形態では、本発明は、配列番号1、17、21、25、41、45、49、65、69、73、89、93、97、113、117、121、137、141、145、161、165、169、185、189、193、209、213、217、233、237、241、257、261、265、281、285、289、305、309、313、329、333、337、353、357、361、377、381、385、401、405、409、425、429、433、449、453、457、465、467、および486、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の相同性を有する実質的に同一の配列からなる群より選択される核酸配列によってコードされるHCVRを含む抗体またはそのフラグメントを提供する。別の実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号25、41、45、73、89、93、121、137、141、145、161、165、および486からなる群より選択される核酸配列によってコードされるHCVRを含む。さらに別の実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号41、89、137、161、または486の核酸配列によってコードされるHCVRを含む。
【0022】
1つの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号9、19、23、33、43、47、57、67、71、81、91、95、105、115、119、129、139、143、153、163、167、177、187、191、201、211、215、225、235、239、249、259、263、273、283、287、297、307、311、321、331、335、345、355、359、369、379、383、393、403、407、417、427、431、441、451、および455、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の相同性を有する実質的に同一の配列からなる群より選択される核酸配列によってコードされるLCVRを含む。別の実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号33、43、47、81、91、95、129、139、143、153、163、および167からなる群より選択される核酸配列によってコードされるLCVRを含む。さらに別の実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号43、91、139、または163の核酸配列によってコードされるLCVRを含む。
【0023】
さらなる実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、
【0024】
【化3】

からなる群より選択される核酸配列対によってコードされるHCVRおよびLCVR(HCVR/LCVR)配列対を含む。1つの実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号25/33、41/43、486/43、45/47、73/81、89/91、93/95、121/129、137/139、141/143、145/153、161/163、および165/167からなる群より選択される核酸配列対によってコードされるHCVR/LCVR配列対を含む。さらに別の実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号41/43、486/43、89/91、137/139、または161/163の核酸配列対によってコードされるHCVR/LCVR対を含む。
【0025】
1つの実施形態では、本発明は、配列番号7、31、55、79、103、127、151、175、199、223、247、271、295、319、343、367、391、415、439、および463、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の相同性を有する実質的に同一の配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされるHCDR3ドメイン、および配列番号15、39、63、87、111、135、159、183、207、231、255、279、303、327、351、375、399、423、および447、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の相同性を有する実質的に同一の配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされるLCDR3ドメインを含む抗体または抗体の抗原結合フラグメントを特徴とする。別の実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号31/39、79/87、127/135、または151/159の核酸配列対によってコードされるHCDR3およびLCDR3配列対を含む。さらに別の実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号31/39または79/87の核酸配列対によってコードされるHCDR3およびLCDR3配列対を含む。
【0026】
さらなる実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号3、27、51、75、99、123、147、171、195、219、243、267、291、315、339、363、387、411、435、および459、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の相同性を有する実質的に同一の配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされるHCDR1ドメイン、および配列番号5、29、53、77、101、125、149、173、197、221、245、269、293、317、341、365、389、413、437、および461、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の相同性を有する実質的に同一の配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされるHCDR2ドメインをさらに含み、任意選択的に、配列番号11、35、59、83、107、131、155、179、203、227、251、275、299、323、347、371、395、419、および443、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の相同性を有する実質的に同一の配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされるLCDR1ドメイン、および/または配列番号13、37、61、85、109、133、157、181、205、229、253、277、301、325、349、373、397、421、および445、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の相同性を有する実質的に同一の配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされるLCDR2ドメインをさらに含む。
【0027】
あるいは、本発明は、配列番号3/5/7、27/29/31、51/53/55、75/77/79、99/101/103、123/125/127、147/149/151、171/173/175、195/197/199、219/221/223、243/245/247、267/269/271、291/293/295、315/317/319、339/341/343、363/365/367、387/389/391、411/413/415、435/437/439、および459/461/463からなる群より選択されるヌクレオチド配列組み合わせによってコードされるHCDR1/HCDR2/HCDR3組み合わせ、および/または配列番号11/13/15、35/37/39、59/61/63、83/85/87、107/109/111、131/133/135、155/157/159、179/181/183、203/205/207、227/229/231、251/253/255、275/277/279、299/301/303、323/325/327、347/349/351、371/373/375、395/397/399、419/421/423、および443/445/447からなる群より選択されるヌクレオチド配列組み合わせによってコードされるLCDR1/LCDR2/LCDR3組み合わせを含む抗体または抗体の抗原結合フラグメントを特徴とする。
【0028】
1つの実施形態では、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3は、配列番号27/29/31、75/77/79、123/125/127、および147/149/151からなる群より選択されるヌクレオチド配列組み合わせによってコードされ、および/またはLCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、配列番号35/37/39、83/85/87、131/133/135、および155/157/159からなる群より選択されるヌクレオチド配列組み合わせによってコードされる。さらに別の実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号27/29/31/35/37/39、75/77/79/83/85/87、123/125/127/131/133/135、および147/149/151/155/157/159からなる群より選択されるヌクレオチド配列組み合わせによってコードされる重鎖および軽鎖CDR配列を含む。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、配列番号27/29/31/35/37/39または75/77/79/83/85/87のヌクレオチド配列組み合わせによってコードされる重鎖および軽鎖CDR配列を含む。
【0029】
第4の態様では、本発明は、HCDR3およびLCDR3を含み、HCDR3が式X−X−X−X−X−X−X−X−X−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−X20(配列番号471)(式中、XはAlaであり、XはArgまたはLysであり、XはGlyまたはGluであり、XはGly、Asp、または不在であり、XはAspまたは不在であり、XはLeu、Arg、または不在であり、XはArgまたはSerであり、XはPhe、Gly、またはArgであり、XはLeu、His、またはAsnであり、X10はAsp、Pro、またはTyrであり、X11はTrp、Tyr、またはPheであり、X12はLeu、Phe、Val、またはAspであり、X13はSer、Tyr、またはGlyであり、X14はSer、Tyr、またはAspであり、X15はTyrであり、X16はPheまたはGlyであり、X17はLeuまたは不在であり、X18はAspであり、X19はTyr、Val、またはPheであり、X20はTrpである)のアミノ酸配列を含み、LCDR3が式X−X−X−X−X−X−X−X−X−X10(配列番号474)(式中、XはGlnであり、XはAsnまたはGlnであり、XはTyrまたはLeuであり、XはAsn、His、Ser、またはAspであり、XはThrまたはSerであり、XはAlaまたはTyrであり、XはPro、Ser、またはPheであり、XはLeuまたはArgであり、XはThrであり、X10はPheである)のアミノ酸配列を含む、hANGPTL4に特異的に結合する単離抗体または抗体の抗原結合フラグメントを特徴とする。
【0030】
さらなる実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、式X−X−X−X−X−X−X−X(配列番号469)(式中、XはGlyであり、XはGlyまたはPheであり、XはSerまたはThrであり、XはPheであり、XはSerであり、XはIle、Ser、またはThrであり、XはHisまたはTyrであり、XはHis、Gly、またはAspである)のアミノ酸配列を含むHCDR1配列、式X−X−X−X−X−X−X−X(配列番号470)(式中、XはIleであり、XはAsn、Ser、またはGlyであり、XはHis、Phe、Ser、またはValであり、XはArg、Asp、またはAlaであり、XはGlyであり、XはGlyまたは不在であり、XはSer、Asn、またはAspであり、XはThrまたはLysである)のアミノ酸配列を含むHCDR2配列、式X−X−X−X−X−X(配列番号472)(式中、XはGlnであり、XはGlyまたはSerであり、XはIleであり、XはSerまたはAsnであり、XはAsp、Ser、またはArgであり、XはTyrまたはTrpである)のアミノ酸配列を含むLCDR1配列、および式X−X−X(配列番号473)(式中、XはAlaまたはLysであり、XはAlaであり、XはSerである)のアミノ酸配列を含むLCDR2配列をさらに含む。H1H268P、H1H284P、H1H291P、およびH1H292Pモノクローナル抗体の配列アラインメントを図1(HCVR)および図2(LCVR)に示す。
【0031】
第5の態様では、本発明は、V、D、およびJ生殖系列配列由来のヌクレオチド配列セグメントによってコードされる重鎖可変領域(HCVR)、およびVおよびJ生殖系列配列由来のヌクレオチド配列セグメントによってコードされる軽鎖可変領域(LCVR)を含み、HCVRおよびLCVRが(i)V3−30、D5−12、J6、V1−9、およびJ4;(ii)V4−34、D3−3、J4、V1−27、およびJ4、および(iii)V3−13、D1−26、J4、V1−5、およびJ1からなる群より選択される生殖系列遺伝子組み合わせ由来のヌクレオチド配列セグメントによってコードされる、ヒト抗ANGPTL4抗体またはその抗原結合フラグメントを特徴とする。
【0032】
第6の態様では、本発明は、表面プラズモン共鳴アッセイ(例えば、BIACORETM)によって測定した場合に、約1nM以下の平衡解離定数(K)でhANGPTL4に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを特徴とする。一定の実施形態では、本発明の抗体は、約500pM以下、約400pM以下、約300pM以下、約200pM以下、約150pM以下、約100pM以下、または約50pM以下のKを示す。
【0033】
第7の態様では、本発明は、本明細書中に記載のように、例えば、ELISA、表面プラズモン共鳴アッセイ、またはLUMINEX(登録商標)XMAP(登録商標)テクノロジーによって決定した場合、配列番号476のhANGPTL4タンパク質に結合するが、関連タンパク質(ヒトアンギオポエチン様タンパク質3(hANGPTL3;配列番号485)など)と交差反応しない抗hANGPTL4抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ANGPTL3は、LPL活性を減少させることが公知であり、且つN末端コイルドコイル領域およびC末端フィブリノゲン様ドメインを有する別の分泌タンパク質である(Ono et al.,2003,J Biol Chem 43:41804−41809)。関連する実施形態では、本発明は、hANGPTL4タンパク質に結合し、且つhANGPTL3タンパク質と交差反応する抗hANGPTL4抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。一定の実施形態では、hANGPTL4抗体またはそのフラグメントのhANGPTL3タンパク質に対する結合親和性は、該抗体または該フラグメントのhANGPTL4タンパク質に対する結合親和性の約75%以下または約50%以下である。別の関連する実施形態では、本発明は、マウスANGPTL4(mANGPTL4:配列番号478)と交差反応しないが、カニクイザル(Macaca fascicularis;N末端1〜148残基のアミノ酸配列およびコードするDNA配列を、それぞれ配列番号490および489として示す)および/またはアカゲザル(Macaca mulatta;N末端1〜148残基のアミノ酸配列およびコードするDNA配列を、それぞれ、配列番号492および491として示す)のANGPTL4と交差反応する抗hANGPTL4抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0034】
本発明は、改変グリコシル化パターンを有する抗hANGPTL4抗体を含む。いくつかの適用では、望ましくないグリコシル化部位を除去するための改変(すなわち、例えば、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)機能を増加させるためのフコース部分の除去)は有用であり得る(Shield et al.(2002)JBC 277:26733を参照のこと)。他の適用では、N−グリコシル化部位の除去により、治療抗体に対する望ましくない免疫反応を減少させるか、抗体の親和性を増加させることができる。さらに他の適用では、ガラクトシル化を改変して補体依存性細胞傷害性(CDC)を改変することができる。
【0035】
第8の態様では、本発明は、hANGPTL4に特異的に結合する組換えヒト抗体またはそのフラグメントおよび薬学的に許容可能なキャリアを含む薬学的組成物を特徴とする。1つの実施形態では、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントと第2の治療薬との組み合わせである組成物を特徴とする。第2の治療薬は、1つ以上の任意の薬剤、例えば、(1)3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素A(HMG−CoA)レダクターゼインヒビター(セリバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、およびプラバスタチンなど);(2)コレステロール取り込みおよび/または胆汁酸再吸収のインヒビター;(3)リポタンパク質の異化を増加させるナイアシン;(4)低密度リポタンパク質(LDL)レベルを減少させ、高密度リポタンパク質(HDL)レベルおよびTGレベルを改善し、非致死性心臓発作数を減少させるフィブラートまたは両親媒性カルボン酸、および(5)コレステロール排除で役割を果たすLXR転写因子のアクチベーター、例えば、22−ヒドロキシコレステロール、またはエゼチミブ+シンバスタチンなどの固定組み合わせ;スタチンと胆汁樹脂(bile resin)(例えば、コレスチラミン、コレスチポール、コレセベラム)、ナイアシン+スタチンの固定組み合わせ(例えば、ナイアシンとロバスタチン);または他の脂質低下薬(ω−3−脂肪酸エチルエステル(例えば、オマコール)など)であり得る。さらに、第2の治療薬は、1つ以上のANGPTL4の他のインヒビター、ならびにANGPTL3、ANGPTL5、ANGPTL6、およびプロタンパク質コンバターゼサブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)(脂質代謝、特にコレステロールおよび/またはトリグリセリドホメオスタシスに関与する)などの他の分子のインヒビターであり得る。これらの分子のインヒビターには、これらの分子に特異的に結合してその活性を遮断する小分子および抗体が含まれる。
【0036】
関連する実施形態では、第2の治療薬は、1つ以上の抗がん剤(化学療法薬、抗血管新生薬、増殖阻害剤、細胞毒性薬、アポトーシス薬、およびがんまたは他の増殖性疾患もしくは障害を処置することが当該分野で周知の他の薬剤など)、および基礎をなすがん/腫瘍に伴う症状の回復および/または低下のための他の治療薬、例えば、鎮痛薬、抗炎症薬、例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)(Cox−2インヒビターなど)であり得る。
【0037】
第9の態様では、本発明は、本発明の抗hANGPTL4抗体または抗体の抗原結合部分を使用したhANGPTL4活性の阻害方法であって、治療方法が、治療有効量の本発明の抗体または抗体の抗原結合フラグメントおよび任意選択的に1つ以上の上記のさらなる治療薬を含む薬学的組成物を投与する工程を含む、方法を特徴とする。処置される疾患または障害は、抗hANGPTL4抗体処置を使用しない処置と比較して、ANGPTL4活性の除去、阻害、または減少によって改善、回復、阻害、または防止されるか、その出現率が減少する任意の疾患または状態である(例えば、ANGPTL4媒介疾患または障害)。本発明の方法によって処置可能な疾患または障害の例には、脂質代謝に関与する疾患または障害(高脂血症、高リポタンパク質血症、および脂質異常症(アテローム性脂質異常症、糖尿病性脂質異常症が含まれる)、高トリグリセリド血症(TG>1000mg/dLの重症高トリグリセリド血症が含まれる)、高コレステロール血症、カイロミクロン血症、混合型脂質異常症(肥満、代謝症候群、糖尿病など)、脂肪異栄養症、および脂肪組織萎縮など(例えば、LPL活性の減少および/またはLPL欠損、LDL受容体活性の減少および/またはLDL受容体欠損、ApoC2の変化、ApoE欠損、ApoBの増加、超低密度リポタンパク質(VLDL)の産生の増加および/または排除の減少、一定の薬物処置(例えば、糖質コルチコイド処置誘導性脂質異常症)、任意の遺伝的素因、食事、および生活様式などに起因する)など)が含まれるが、これらに限定されない。本発明の方法はまた、高脂血症、高リポタンパク質血症、および/または脂質異常症に関連するかこれに起因する疾患または障害(例えば、心血管疾患または障害、例えば、アテローム性動脈硬化症、動脈瘤、高血圧症、アンギナ、卒中、脳血管疾患、鬱血性心不全、冠状動脈疾患、心筋梗塞、および末梢血管疾患、急性膵炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、血糖障害(糖尿病など)、および肥満が含まれるが、これらに限定されない)を防止するか処置することができる。
【0038】
本発明の方法によって処置可能な疾患または障害の他の例には、がん/腫瘍ならびに非新生物性血管形成関連疾患または障害(血管新生眼疾患または障害(加齢性黄斑変性、網膜中心静脈閉塞または網膜静脈分枝閉塞、糖尿病性網膜症、および未熟児網膜症など)が含まれる)、炎症性疾患または障害(関節炎、関節リウマチ(RA)、および乾癬など)が含まれる。
【0039】
他の実施形態は、次の詳細な説明の概観から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、抗体H1H268P、H1H284P、H1H291P、およびH1H292Pの重鎖可変領域(HCVR)の配列アラインメントを示す。
【図2】図2は、抗体H1H268P、H1H284P、H1H291P、およびH1H292Pの軽鎖可変領域(LCVR)の配列アラインメントを示す。
【図3】図3Aおよび3Bは、野生型マウス(図3A)およびヒトANGPTL4を発現するトランスジェニックマウス(hAngptl4(+/+)マウスまたは「ヒト化ANGPTL4マウス」)(図3B)における抗ANGPTL4抗体の薬物動態学的クリアランスを示す。H4H268P2(□)、H4H284P(▲)、およびhIgG4コントロール(●)。
【図4】図4は、ApoEヌルマウスと交配させたヒト化ANGPTL4マウスにおける血清トリグリセリド(TG)レベルに及ぼす抗ANGPTL4抗体(H4H268P2)の影響を示す。無関係の特異性を有するコントロール抗体と比較した、H4H268P2による血清TGレベルの変化率(%)を示す。コントロールAb(白丸)およびH4H268P2(黒四角)。
【図5】図5は、ヒト化ANGPTL4マウスにおける血清TGレベルに及ぼす抗ANGPTL4抗体(H4H268P2)およびTG低下薬フェノフィブラートの単独または組み合わせの影響を示す。
【図6】図6は、肥満アカゲザル(Macaca mulatta)における、脂質のなかでも、特に絶食血清TGレベルに及ぼす抗ANGPTL4抗体の影響についての第I相パイロット研究の結果を示す。全てのサルに、−5日目にビヒクル(10mMヒスチジン、pH6)を静脈内(IV)注入し、0日目にH4H268P2(n=3)(●)またはH4H284P(n=3)(□)のいずれかを10mg/kgIV注入した。血清サンプルを、ベースライン期から投与後35日目まで採取した。各動物についての平均ベースラインを、−7、−5、および0日目に採取したサンプルに基づいて決定し、ベースラインからの血清TGレベルの変化率(%)を決定し、各Ab群について平均化した。
【図7】図7は、ビヒクル注入工程を省略したこと以外は図6に記載したものと同様の、肥満サルにおける絶食血清TGレベルに及ぼす抗ANGPTL4抗体(H4H268P2)の影響についての第II相パイロット研究の結果を示す。−7、−3、および0日目に採取したサンプルに基づいて、各サルについての平均ベースラインを得た。サルをそのベースラインに基づいて以下の群に分けた:A.TG<150mg/dL(n=3;□)、B.150mg/dL<TG<500mg/dL(n=4;●)、およびC.TG>1000mg/dL(n=1;▽)。ベースラインからの絶食TGレベルの変化率(%)を、各サルについて決定し、各群について平均化した。
【0041】
全グラフ中のエラーバーは、平均±SEMを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
詳細な説明
本発明を詳細に説明する前に、記載の特定の方法および実験条件は変化し得るので、本発明がこれらに制限されないことを理解すべきである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲のみによって制限されるので、本明細書中で使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を制限することを意図しないことも理解すべきである。
【0043】
他で定義しない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中に記載の方法および材料と類似するか等価な任意の方法および材料を、本発明の実施または試験で使用することができるが、好ましい方法および材料をここに記載する。
【0044】
定義
用語「ヒトアンギオポエチン様タンパク質4」または「hANGPTL4」は、本明細書中で使用する場合、配列番号475に示す核酸配列および配列番号476のアミノ酸配列を有するhANGPTL4、またはその生物学的に活性なフラグメントをいう。
【0045】
用語「抗体」は、本明細書中で使用する場合、4つのポリペプチド鎖(ジスルフィド結合によって相互接続した2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖)から構成される免疫グロブリン分子をいうことを意図する。各重鎖は、重鎖可変領域(HCVR)および重鎖定常領域(C;ドメインC1、C2、およびC3から構成される)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(LCVR)および軽鎖定常領域(C)から構成される。HCVRおよびLCVRを、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性領域(これは、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域に散在している)にさらに分類することができる。各HCVRおよびLCVRは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序で配置された3つのCDRおよび4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4。
【0046】
1つ以上のCDR残基の置換または1つ以上のCDRの省略も可能である。結合に関して、1つまたは2つのCDRを省くことができる抗体が科学文献中に記載されている。Padlan et al.(1995 FASEB J.9:133−139)は、公開された結晶構造に基づいて抗体とその抗原との間の接触領域を分析し、CDR残基のわずか約1/5から1/3しか抗原に実際に接触していないと結論づけた。Padlanはまた、1つまたは2つのCDRが抗原に接触しているアミノ酸を持たない抗体を多数見い出した(Vajdos et al.2002 J Mol Biol 320:415−428も参照のこと)。
【0047】
抗原に接触しないCDR残基を、以前の研究(例えば、CDRH2中の残基H60〜H65はしばしば必要でない)に基づいて、分子モデリングおよび/または経験的にChothiaCDRの外側に存在するKabatCDR領域から同定することができる。CDRまたはその残基を省く場合、通常、別のヒト抗体配列またはかかる配列のコンセンサス中の対応する位置を占めるアミノ酸に置換する。CDR内の置換のための位置および置換するためのアミノ酸も経験的に選択することができる。経験的置換は、保存的置換または非保存的置換であり得る。
【0048】
用語「ヒト抗体」は、本明細書中で使用する場合、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変領域および定常領域を有する抗体が含まれることを意図する。本発明のヒトmAbは、例えば、CDR、特にCDR3中に、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発またはin vivoでの体細胞変異によって導入される変異)を含むことができる。しかし、用語「ヒト抗体」は、本明細書中で使用する場合、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖系列に由来するCDR配列がヒトFR配列上に移植されているmAbが含まれることを意図しない。
【0049】
本明細書中に開示の完全なヒト抗hANGPTL4抗体は、対応する生殖系列配列と比較して重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域中および/またはCDR領域中に1つ以上のアミノ酸の置換、挿入、および/または欠失を含むことができる。かかる変異を、本明細書中に開示のアミノ酸配列を、例えば、公的な抗体配列データベースから利用可能な生殖系列配列と比較することによって容易に確認することができる。本発明は、本明細書中に開示の任意のアミノ酸配列に由来する抗体およびその抗原結合フラグメントを含み、ここで、1つ以上のフレームワーク領域および/またはCDR領域内の1つ以上のアミノ酸が、抗体が由来する生殖系列配列の対応する残基、別のヒト生殖系列配列の対応する残基へと変異しているか、または対応する生殖系列残基の保存的アミノ酸置換がおきている(かかる配列の変化を、本明細書中で集合的に「生殖系列変異」という)。当業者は、本明細書中に開示の重鎖および軽鎖可変領域の配列から開始して、1つ以上の個別の生殖系列の復帰変異またはその組み合わせを含む多数の抗体および抗体結合フラグメントを容易に産生することができる。一定の実施形態では、Vドメインおよび/またはVドメイン内の全てのフレームワーク残基および/またはCDR残基を、抗体が由来する元の生殖系列配列で見い出される残基に復帰変異させる。他の実施形態では、一定の残基のみ(例えば、FR1の最初の8個のアミノ酸内またはFR4の最後の8個のアミノ酸内に見い出される変異残基のみ、またはCDR1、CDR2、もしくはCDR3内に見い出される変異残基のみ)を元の生殖系列配列に復帰変異させる。他の実施形態では、1つ以上のフレームワーク残基および/またはCDR残基を、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体がもともと由来する生殖系列配列と異なる生殖系列配列)の対応する残基に変異させる。さらに、本発明の抗体は、フレームワーク領域および/またはCDR領域内に2つ以上の生殖系列変異の任意の組み合わせを含むことができる(例えば、一定の個別の残基を特定の生殖系列配列の対応する残基に変異させ、元の生殖系列配列と異なる一定の他の残基を維持するか、または異なる生殖系列配列の対応する残基に変異させる)。一旦得られると、1つ以上の生殖系列変異を含む抗体および抗原結合フラグメントを、1つ以上の所望の性質(結合特異性の改善、結合親和性の増加、拮抗的または作動的(場合による)な生物学的性質の改善または増強、免疫原性の減少など)について容易に試験することができる。この一般的様式で得た抗体および抗原結合フラグメントは、本発明に含まれる。
【0050】
本発明はまた、1つ以上の保存的置換を有する本明細書中に開示の任意のHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のバリアントを含む抗ANGPTL4抗体を含む。例えば、本発明は、例えば、本明細書中に開示の任意のHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列と比較して10個以下、8個以下、6個以下、4個以下、2個、または1個の保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗ANGPTL4抗体を含む。1つの実施形態では、HCVRは、10個以下の保存的アミノ酸置換を有する配列番号487のアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、HCVRは、8個以下の保存的アミノ酸置換を有する配列番号487のアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、HCVRは、6個以下の保存的アミノ酸置換を有する配列番号487のアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、HCVRは、4個以下の保存的アミノ酸置換を有する配列番号487のアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態では、HCVRは、2または1個の保存的アミノ酸置換を有する配列番号487のアミノ酸配列を含む。1つの実施形態では、LCVRは、10個以下の保存的アミノ酸置換を有する配列番号44のアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、LCVRは、8個以下の保存的アミノ酸置換を有する配列番号44のアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、LCVRは、6個以下の保存的アミノ酸置換を有する配列番号44のアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、LCVRは、4個以下の保存的アミノ酸置換を有する配列番号44のアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態では、LCVRは、2または1個の保存的アミノ酸置換を有する配列番号44のアミノ酸配列を含む。
【0051】
特に記載されない限り、用語「抗体」は、本明細書中で使用する場合、2つの免疫グロブリン重鎖および2つの免疫グロブリン軽鎖を含む抗体分子(すなわち、「完全な抗体分子」)、およびその抗原結合フラグメントを含むと理解されるものとする。用語、抗体の「抗原結合部分」および抗体の「抗原結合フラグメント」などは、本明細書中で使用する場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成する任意の天然に存在するか、酵素的に得ることができるか、合成であるか、遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、任意の適切な標準的技術(タンパク質分解消化または組換え遺伝子操作技術(抗体可変ドメインおよび(任意選択的に)定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を含む)など)を使用して、完全な抗体分子から誘導することができる。かかるDNAは公知であり、そして/または例えば、商業的供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージディスプレイ抗体ライブラリーが含まれる)から容易に得ることができるか、合成することができる。化学的または分子生物学技術の使用によってDNAを配列決定し、操作して、例えば、1つ以上の可変ドメインおよび/または定常ドメインを適切な立体配置に配置するか、コドンを導入するか、システイン残基を作製するか、アミノ酸を改変、付加、または欠失することなどができる。
【0052】
抗原結合フラグメントの非限定的な例には、(i)Fabフラグメント、(ii)F(ab’)フラグメント、(iii)Fdフラグメント、(iv)Fvフラグメント、(v)単鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAbフラグメント、および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、単離された相補性決定領域(CDR))が含まれる。他の操作された分子(二特異性抗体、三特異性抗体、四特異性抗体、およびミニボディなど)はまた、本明細書中で使用する場合、表現「抗原結合フラグメント」内に含まれる。
【0053】
抗体の抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含むであろう。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成であってよく、一般に、1つ以上のフレームワーク配列に隣接するかインフレームで存在する少なくとも1つのCDRを含むであろう。Vドメインと会合したVドメインを有する抗原結合フラグメントでは、VおよびVドメインを、任意の適切な配置で相互に関連させて配置することができる。例えば、可変領域は二量体であってよく、V−V、V−V、またはV−V二量体を含むことができる。あるいは、抗体の抗原結合フラグメントは、単量体VまたはVドメインを含むことができる。
【0054】
一定の実施形態では、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含むことができる。本発明の抗体の抗原結合フラグメント内に見い出すことができる可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的な例示的立体配置には、以下が含まれる:(i)V−C1、(ii)V−C2、(iii)V−C3、(iv)V−C1−C2、(v)V−C1−C2−C3、(vi)V−C2−C3、(vii)V−C、(viii)V−C1、(ix)V−C2、(x)V−C3、(xi)V−C1−C2、(xii)V−C1−C2−C3、(xiii)V−C2−C3、および(xiv)V−C。可変ドメインおよび定常ドメインの任意の立体配置(上記列挙の任意の例示的な立体配置が含まれる)では、可変ドメインおよび定常ドメインを、相互に直接連結することができるか、完全なまたは部分的なヒンジ領域またはリンカー領域によって連結することができる。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子中の隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメインの間に柔軟性または半柔軟性の連結が得られる少なくとも2個(例えば、5、10、15、20、40、60個、またはそれを超える)のアミノ酸からなり得る。さらに、本発明の抗体の抗原結合フラグメントは、相互に非共有結合した、および/または1つ以上の単量体VドメインまたはVドメインとの(例えば、ジスルフィド結合による)、上記列挙の任意の可変ドメインおよび定常ドメインの立体配置のホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含むことができる。
【0055】
完全な抗体分子と同様に、抗原結合フラグメントは、単一特異性または多重特異性(例えば、二重特異性)であり得る。抗体の多重特異性抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメイン(ここで、各可変ドメインは別々の抗原または同一抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる)を含むであろう。任意の多重特異性抗体形式(本明細書中に開示の例示的な二重特異性抗体形式が含まれる)を、当該分野で利用可能な日常的技術を使用して、本発明の抗体の抗原結合フラグメントに関連する使用に適応させることができる。
【0056】
一定の実施形態では、本発明の抗体または抗体フラグメントを、治療部分(細胞毒素、化学療法剤、免疫抑制薬、または放射性同位体など)に結合体化することができる(「免疫結合体」)。
【0057】
用語「特異的に結合する」などは、抗体またはその抗原結合フラグメントが生理学的条件下で比較的安定な抗原との複合体を形成することを意味する。特異的結合を、約1×10−6M以下(すなわち、Kが小さいほど結合が緊密であることを示す)の平衡解離定数(K)によって特徴づけることができる。2つの分子が特異的に結合するか否かを決定する方法は当該分野で周知であり、例えば、平衡透析および表面プラズモン共鳴などが含まれる。しかし、hANGPTL4に特異的に結合する単離された抗体は、他の抗原(他の種由来のANGPTL4分子(例えば、カニクイザルANGPTL4)および/または配列番号485のアミノ酸配列を有するhANGPTL3など)に交差反応性を示し得る。さらに、hANGPTL4および1つ以上のさらなる抗原に結合する多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)は、それにもかかわらず、本明細書中で使用する場合、hANGPTL4に「特異的に結合する」抗体と見なされる。
【0058】
用語「高親和性」抗体は、表面プラズモン共鳴(例えば、BIACORETM)または溶液親和性ELISAによって測定した場合、hANGPTL4に対する結合親和性(Kとして示す)が約1×10−9M以下、約0.5×10−9M以下、約0.25×10−9M以下、約1×10−10M以下、または約0.5×10−10M以下である抗体をいう。
【0059】
用語「K」は、本明細書中で使用する場合、特定の抗体−抗原相互作用の平衡解離定数をいうことが意図される。
【0060】
用語「スローオフレート(slow off rate)」、「Koff」、または「k」は、表面プラズモン共鳴(例えば、BIACORETM)によって決定した場合、1×10−3−1以下、好ましくは1×10−4−1以下の速度定数でhANGPTL4から解離する抗体を意味する。
【0061】
用語「内因性親和性定数」または「k」は、表面プラズモン共鳴(例えば、BIACORETM)によって決定した場合、約1×10−1−1以上の速度定数でhANGPTL4に会合する抗体を意味する。
【0062】
「単離された抗体」は、本明細書中で使用する場合、異なる抗原特異性を有する他のmAbを実質的に含まない抗体をいうことが意図される(例えば、hANGPTL4に特異的に結合する単離された抗体は、hANGPTL4以外の抗原に特異的に結合するmAbを実質的に含まない)。しかし、hANGPTL4に特異的に結合する単離された抗体は、他の抗原(他の種(カニクイザルなど)由来のANGPTL4分子および/または他の関連するタンパク質(ヒトANGPTL3など)など)に交差反応性を有し得る。
【0063】
「中和抗体」は、本明細書中で使用する場合(または「ANGPTL4活性を中和する抗体」)、ANGPTL4への結合によってANGPTL4の少なくとも1つの生物学的活性を阻害する抗体をいうことが意図される。ANGPTL4の生物学的活性の阻害を、当該分野で公知のいくつかの標準的なin vitroまたはin vivoアッセイ(以下の実施例も参照のこと)のうちの1つ以上によるANGPTL4生物学的活性の1つ以上の指標の測定によって評価することができる。
【0064】
用語「表面プラズモン共鳴」は、本明細書中で使用する場合、例えば、BIACORETMシステム(Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden and Piscataway,N.J.)を使用したバイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出によって、リアルタイムの生体特異的相互作用を分析することができる光学的現象をいう。
【0065】
用語「エピトープ」は、抗体が結合する抗原の領域である。エピトープを、構造的エピトープまたは機能的エピトープと定義することができる。機能的エピトープは、一般に、構造的エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接寄与する残基を有する。エピトープはまた、コンフォメーションエピトープでもあり得る(すなわち、非線状アミノ酸から構成される)。一定の実施形態では、エピトープは、分子の化学的に活性な表面群(アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、またはスルホニル基など)である決定基を含むことができ、一定の実施形態では、特異的な三次元構造特性および/または特異的な電荷特性を有し得る。
【0066】
用語「実質的同一性」または「実質的に同一な」は、核酸またはそのフラグメントをいう場合、以下に考察のように、任意の周知の配列同一性アルゴリズム(FASTA、BLAST、またはGAPなど)によって測定したときに、別の核酸(またはその相補鎖)と、適切なヌクレオチドの挿入または欠失を使用して最適にアラインメントした場合にヌクレオチド配列同一性がヌクレオチド塩基の少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、または99%であることを示す。
【0067】
ポリペプチドに適用する場合、用語「実質的類似性」または「実質的に類似の」は、デフォルトギャップウェイトを使用したプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適にアラインメントした場合に、2つのペプチド配列が、少なくとも90%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%、98%、または99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一でない残基の位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の化学的性質(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換される置換である。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的性質を実質的に変化させないであろう。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換によって相互に異なる場合、類似率または類似度は、置換の保存性について補正するために、増加するように調整され得る。この調整を行うための手段は当業者に周知である。例えば、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307−331を参照のこと。類似の化学的性質を有する側鎖を有するアミノ酸群の例には、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン;2)脂肪族ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン;5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、およびヒスチジン;6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、および7)硫黄含有側鎖:システインおよびメチオニンが含まれる。好ましい保存的アミノ酸置換群は以下である:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、およびアスパラギン−グルタミン。あるいは、保存的置換は、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443 45に開示のPAM250対数尤度マトリックスにおいて正の値を有する任意の変化である。「中程度に保存的な」置換は、PAM250対数尤度マトリックスにおいて非負値を有する任意の変化である。
【0068】
ポリペプチドの配列類似性を、典型的には、配列分析ソフトウェアを使用して測定する。タンパク質分析ソフトウェアは、種々の置換、欠失、および他の改変(保存的アミノ酸置換が含まれる)に割り当てられた類似性の基準を使用して類似の配列を対応させる。例えば、GCGソフトウェアは、密接に関連するポリペプチド(生物の異なる種由来の相同ポリペプチドなど)の間、または野生型タンパク質とそのムテインとの間の配列相同性または配列同一性を決定するための、デフォルトパラメーターと共に使用することができるプログラム(GAPおよびBESTFITなど)を含む。例えば、GCG バージョン6.1を参照のこと。ポリペプチド配列を、デフォルトパラメーターまたは推奨されるパラメーターを使用するFASTA(GCGバージョン6.1中のプログラム)を使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、クエリー配列と検索配列との間の最良の重複領域のアラインメントおよび配列同一率を提供する(Pearson(2000)前出)。本発明の配列を異なる種由来の多数の配列を含むデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、デフォルトパラメーターを使用したコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403 410および(1997)Nucleic Acids Res.25:3389 402を参照のこと。
【0069】
語句「治療有効量」は、所望の効果が得られる投与量を意味する。正確な量は処置目的、処置される被験体の年齢およびサイズ、および投与経路などに依存し、公知の技術を使用して当業者が確認可能であろう(例えば、Lloyd(1999)The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compoundingを参照のこと)。
【0070】
ヒト抗体の調製
トランスジェニックマウス中でのヒト抗体の生成方法は、当該分野で公知である。任意のかかる公知の方法を、本発明に照らして使用して、ANGPTL4に特異的に結合するヒト抗体を作製することができる。
【0071】
VELOCIMMUNETMテクノロジーまたは任意の他の公知のモノクローナル抗体生成方法を使用して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有するANGPTL4に対する高親和性キメラ抗体を最初に単離する。以下の実験の部にあるように、抗体を特徴付け、所望の特徴(親和性、選択性、およびエピトープなどが含まれる)について選択する。
【0072】
一般に、本発明の抗体は、固相上に固定されているか液相中の抗原への結合によって測定した場合、典型的には約10−12M〜約10−9MのKを有する非常に高い親和性を有する。マウス定常領域を、所望のヒト定常領域(例えば、野生型のIgG1(配列番号481)もしくはIgG4(配列番号482)または改変されたIgG1もしくはIgG4(例えば、配列番号483))と置換して、本発明の完全なヒト抗体を生成する。特定の用途にしたがって選択した定常領域が変化し得る一方で、抗体の高親和性抗原結合および標的特異性の特徴は、可変領域内に存在する。
【0073】
エピトープマッピングおよび関連テクノロジー
特定のエピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、日常的な交差ブロッキングアッセイ(Antibodies,Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harb.,NY)に記載のアッセイなど)を行うことができる。他の方法には、アラニンスキャニング変異体、ペプチドブロット(Reineke(2004)Methods Mol Biol 248:443−63)、またはペプチド切断分析が含まれる。さらに、エピトープ切り出し(epitope excision)、エピトープ抽出、および抗原の化学修飾などの方法を使用することができる(Tomer(2000)Protein Science 9:487−496)。
【0074】
用語「エピトープ」は、B細胞および/またはT細胞が応答する抗原上の部位をいう。B細胞エピトープを、隣接アミノ酸またはタンパク質の三次折り畳みによって並置された非隣接アミノ酸の両方から形成することができる。隣接アミノ酸から形成されたエピトープは、典型的には変性溶媒に曝露した状態で保持されるのに対して、三次折り畳みによって形成されたエピトープは、典型的には変性溶媒での処理によって喪失する。エピトープは、典型的には固有の空間的コンフォメーションにおいて少なくとも3、より通常には少なくとも5個または8〜10個のアミノ酸を含む。
【0075】
改変支援プロファイリング(MAP)(抗原構造ベースの抗体プロファイリング(ASAP)としても公知)は、化学的または酵素的に改変された抗原表面に対する各抗体の結合プロフィールの類似性にしたがって同一抗原に対する多数のモノクローナル抗体(mAb)をカテゴリーに分ける方法である(US 2004/0101920)。各カテゴリーは、別のカテゴリーによって示されたエピトープと明らかに異なるか部分的に重複する固有のエピトープを反映し得る。このテクノロジーにより、遺伝的に同一のmAbを迅速にフィルタリングすることが可能となり、これにより特徴付けを遺伝的に異なるmAbに集中させることができるようになる。ハイブリドーマスクリーニングに適用する場合、MAPは、所望の特徴を有するmAbを産生する稀なハイブリドーマクローンの同定を容易にすることができる。MAPを使用して、本発明の抗ANGPTL4mAbを異なるエピトープに結合するmAb群に分類することができる。
【0076】
ANGPTL4はアミノ末端コイルドコイルドメインおよびカルボキシル末端フィブリノゲン様ドメインを含み、全長ANGPTL4タンパク質は分子間ジスルフィド結合によって保持されたオリゴマーを形成する(Ge et al.,2004,J Bio Chem 279(3):2038−2045)。N末端コイルドコイルドメインがANGPTL4のオリゴマー化を媒介し(Ge et al.,前出)、LPL活性の阻害で重要でもあると報告されている(Ge et al.,2005,J Lipid Res 46:1484−1490およびOno et al.,2003,J Biol Chem 278:41804−41809)。したがって、一定の実施形態では、抗hANGPTL4抗体または抗体の抗原結合フラグメントは、hANGPTL4(配列番号476)のN末端コイルドコイルドメイン(残基1〜123)内のエピトープに結合する。一定の実施形態では、抗hANGPTL4抗体またはそのフラグメントは、hANGPTL4(配列番号476)の約残基1〜約残基25、約残基25〜約残基50、約残基50〜約残基75、約残基75〜約残基100、約残基100〜約残基125、約残基125〜約残基150の領域内のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗体または抗体フラグメントは、hANGPTL4のN末端コイルドコイルドメイン内の1つを超える列挙したエピトープを含むエピトープに結合する。他の実施形態では、hANGPTL4抗体またはそのフラグメントは、1つ以上のhANGPTL4のフラグメント(例えば、配列番号476の残基26〜406、残基26〜148、残基34〜66、および/または残基165〜406のフラグメント)に結合する。
【0077】
本発明は、本明細書中に記載の抗体の具体例のいずれかと同一のエピトープに結合するhANGPTL4抗体を含む。同様に、本発明はまた、本明細書中に記載の抗体の具体例のいずれかとhANGPTL4またはhANGPTL4フラグメントへの結合を競合する抗hANGPTL4抗体を含む。
【0078】
当該分野で公知の日常的方法の使用によって抗体が参照抗hANGPTL4抗体と同一のエピトープと結合するか否か、または結合を競合するか否かを容易に決定することができる。例えば、試験抗体が本発明の参照抗hANGPTL4抗体と同一のエピトープに結合するか否かを決定するために、参照抗体を飽和条件下でhANGPTL4タンパク質またはペプチドに結合させる。次に、試験抗体がhANGPTL4分子に結合する能力を評価する。試験抗体が参照抗hANGPTL4抗体との飽和結合後にhANGPTL4に結合することができる場合、試験抗体が参照抗hANGPTL4抗体と異なるエピトープに結合すると結論づけることができる。他方では、試験抗体が参照抗hANGPTL4抗体との飽和結合後にhANGPTL4分子に結合できない場合、試験抗体は、本発明の参照抗hANGPTL4抗体によって結合されたエピトープと同一のエピトープに結合することができる。
【0079】
抗体が参照抗hANGPTL4抗体と結合を競合するか否かを決定するために、上記結合方法を、以下の2つの方向性で行う。第1の方向性では、参照抗体を飽和条件下でhANGPTL4分子と結合させ、その後に試験抗体のhANGPTL4分子への結合を評価する。第2の方向性では、試験抗体を飽和条件下でhANGPTL4分子に結合させ、その後に参照抗体のANGPTL4分子への結合を評価する。両方の方向性で第1の(飽和)抗体のみがANGPTL4分子に結合することができる場合、試験抗体および参照抗体がhANGPTL4への結合を競合すると結論づける。当業者に認識されるように、参照抗体と結合を競合する抗体は、参照抗体と同一のエピトープに必ずしも結合しなくてもよいが、重複エピトープまたは隣接エピトープへの結合によって参照抗体の結合を立体的に遮断することができる。
【0080】
それぞれが抗原への他方の結合を競合的に阻害する(遮断する)場合、2つの抗体は同一または重複するエピトープに結合する。すなわち、競合結合アッセイで測定した場合に、1、5、10、20、または100倍過剰の一方の抗体が、他方の抗体の結合を少なくとも50%、好ましくは75%、90%、またはさらに99%阻害する(例えば、Junghans et al.,Cancer Res,1990:50:1495−1502を参照のこと)。あるいは、一方の抗体の結合を減少または排除させる抗原中の本質的に全てのアミノ酸変異が他方の抗体の結合を減少または排除させる場合、2つの抗体は同一のエピトープを有する。一方の抗体の結合を減少または排除させるいくつかのアミノ酸変異が他方の抗体の結合を減少または排除させる場合、2つの抗体は重複するエピトープを有する。
【0081】
次いで、さらなる日常的な実験(例えば、ペプチド変異および結合分析)を行って、認められた試験抗体結合の欠如が実際に参照抗体と同一のエピトープへの結合に起因するか否か、または立体的遮断(または別の現象)が認められた結合の欠如に関与するか否かを確認することができる。この種の実験を、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリー、または当該分野で利用可能な任意の他の定量的または定性的抗体結合アッセイを使用して行うことができる。
【0082】
免疫結合体
本発明は、治療部分(細胞毒素、化学療法剤、免疫抑制薬、または放射性同位体など)に結合体化したヒト抗ANGPTL4モノクローナル抗体(「免疫結合体」)を含む。細胞毒素薬には、細胞に有害な任意の薬剤が含まれる。免疫結合体形成に適切な細胞毒素薬および化学療法薬の例は、当該分野で公知である(例えば、WO05/103081号を参照のこと)。
【0083】
二重特異性
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、または多重特異性であり得る。多重特異性mAbは、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であり得るか、1つを超える標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含むことができる。例えば、Tutt et al.(1991)J.Immunol.147:60−69を参照のこと。ヒト抗hANGPTL4mAbを、別の機能的分子(例えば、別のペプチドまたはタンパク質)に連結するか、またはこれらと共に発現することができる。例えば、抗体またはそのフラグメントを(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合性会合、またはその他によって)1つ以上の他の分子的実体(別の抗体または抗体フラグメントなど)に機能的に連結させて、第2の結合特異性を有する二重特異性抗体または多重特異性抗体を産生することができる。
【0084】
本発明と関連して使用することができる例示的な二重特異性抗体形式は第1の免疫グロブリン(Ig)C3ドメインおよび第2のIgC3ドメインの使用を含み、ここで、第1および第2のIgC3ドメインは相互に少なくとも1つのアミノ酸が異なり、アミノ酸の相違を欠く二重特異性抗体と比較して少なくとも1つのアミノ酸の相違によって二重特異性抗体のプロテインAへの結合が減少する。1つの実施形態では、第1のIgC3ドメインはプロテインAに結合し、第2のIgC3ドメインはプロテインA結合を減少させるか無効にする変異(H95R修飾(IMGTエクソンナンバリングによる;EUナンバリングによるH435R)など)を含む。第2のC3は、Y96F修飾(IMGTによる;EUによるY436F)をさらに含むことができる。第2のC3内で見い出すことができるさらなる修飾には、以下が含まれる:D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、およびV82I(IMGTによる;EUによるD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、およびV422I)(IgG1抗体の場合);N44S、K52N、およびV82I(IMGT;EUによるN384S、K392N、およびV422I)(IgG2抗体の場合);およびQ15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、およびV82I(IMGTによる;EUによるQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、およびV422I)(IgG4抗体の場合)。上記の二重特異性抗体形式の変形は、本発明の範囲内であることが意図される。
【0085】
生物学的等価性
本発明の抗hANGPTL4抗体および抗体フラグメントは、記載のmAbと異なるが、ヒトANGPTL4に結合する能力を保持するアミノ酸配列を有するタンパク質を含む。かかるバリアントmAbおよび抗体フラグメントは、親配列と比較した場合に1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、または置換を含むが、記載のmAbと本質的に等価な生物学的活性を示す。同様に、本発明のhANGPTL4抗体をコードするDNA配列は、開示の配列と比較した場合に1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、または置換を含むが、本発明の抗hANGPTL4抗体または抗体フラグメントに本質的に生物学的に等価な抗hANGPTL4抗体または抗体のフラグメントをコードする配列を含む。かかるバリアントアミノ酸およびDNA配列の例は、上記で考察されている。
【0086】
2つの抗原結合タンパク質(すなわち、抗体)は、例えば、類似の実験条件下にて単回用量または複数回用量のいずれかで同一のモル用量で投与した場合にその吸収速度および吸収程度が有意差を示さない薬学的等価物または薬学的代替物である場合、生物学的に等価と見なされる。いくつかの抗体は、その吸収程度が等価であるが、吸収速度が等価でない場合に等価物または薬学的代替物と見なされ、依然として生物学的に等価と見なすことができる。なぜならば、かかる吸収速度の相違は意図的なものであり、標識に反映され、例えば、慢性使用における有効な体内薬物濃度の達成に不可欠ではなく、且つ研究した特定の薬物製品に関して医学的に些細なことであると見なされるからである。1つの実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、その安全性、純度、および効力において臨床的に有意義な相違が存在しない場合、生物学的に等価である。
【0087】
1つの実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、かかる切り換えを使用しないで治療を継続した場合と比較して、有害作用(免疫原性の臨床的に有意な変化または有効性の減少が含まれる)のリスクの予想される増加を伴わずに、患者が参照生成物と生物学的製剤とを1回以上切り換えることができる場合に生物学的に等価である。
【0088】
1つの実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、使用の条件に関して共通の作用機構によって、かかる機構が公知である範囲で両方とも作用する場合に生物学的に等価である。
【0089】
生物学的等価性を、in vivo法およびin vitro法によって示すことができる。生物学的等価性の測定には、例えば、(a)血液中、血漿中、血清中、または他の体液中の抗体またはその代謝産物の濃度を時間の関数として測定するヒトまたは他の哺乳動物におけるin vivo試験、(b)ヒトのin vivoでの生物学的利用能データと相関しており、且つ合理的に予想されるin vitro試験、(c)抗体(またはその標的)の適切な薬理学的急性効果を時間の関数として測定するヒトまたは他の哺乳動物におけるin vivo試験、および(d)抗体の安全性、有効性、生物学的利用能、または生物学的等価性を確立する十分に制御された臨床試験が含まれる。
【0090】
本発明の抗hANGPTL4抗体の生物学的に等価なバリアントを、例えば、生物学的活性に必要のない残基または配列の種々の置換、または末端または内部の残基または配列の欠失によって構築することができる。例えば、生物学的活性に不可欠ではないシステイン残基を欠失させるか他のアミノ酸と置換して、復元の際の不必要か不正確な分子内ジスルフィド結合架橋の形成を防止することができる。
【0091】
治療的投与および処方物
本発明は、本発明の抗hANGPTL4抗体またはその抗原結合フラグメントを含む治療組成物、およびこれらの治療的使用方法を提供する。本発明の治療組成物を、適切なキャリア、賦形剤、および処方物に組み込まれる他の薬剤と共に投与することで、伝達、送達、および耐性などが改善されるであろう。多数の適切な処方物を、全ての薬剤師に公知の処方集(Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PA)中に見い出すことができる。これらの処方物には、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、オイル、脂質、小胞を含む脂質(カチオン性またはアニオン性)(リポフェクチンTMなど)、DNA結合体、無水吸収ペースト、水中油型および油中水型のエマルジョン、エマルジョンカーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカーボワックスを含む半固体混合物が含まれる。Powell et al.「Compendium of excipients for parenteral formulations」 PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238−311も参照のこと。
【0092】
用量は、投与すべき被験体の年齢およびサイズ、標的疾患、処置の目的、状態、および投与経路などに応じて変化し得る。本発明の抗体を成人患者におけるANGPTL4に直接または間接的に関連する種々の状態および疾患(高コレステロール血症、LDLおよびアポリポタンパク質Bに関連する障害、および脂質代謝障害などが含まれる)の処置のために使用する場合、約0.01〜約20mg/kg体重、より好ましくは約0.02〜約7、約0.03〜約5、または約0.05〜約3mg/kg体重の単回用量で本発明の抗体を静脈内または皮下に投与することが有利である。状態の重症度に応じて、処置の頻度および継続時間を調整することができる。一定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを、初回量として少なくとも約0.1mg〜約800mg、約1〜約500mg、約5〜約300mg、または約10〜約200mg、約100mgまで、または約50mgまで投与することができる。一定の実施形態では、初回量の後に、初回量とほぼ同量または初回量より少量であり得る量において、第2または複数のその後の抗体またはその抗原結合フラグメントの投与を施すことができ、その後の投与は、少なくとも1〜3日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、または少なくとも14週間の間隔をあける。
【0093】
種々の送達系が公知であり、送達系を使用して本発明の薬学的組成物(例えば、リポソーム中の被包、微粒子、マイクロカプセル、変異ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス)を投与することができる(例えば、Wu et al.(1987)J.Biol.Chem.262:4429−4432を参照のこと)。導入方法には、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が含まれるが、これらに限定されない。組成物を、任意の都合の良い経路(例えば、注入またはボーラス注射、上皮または粘膜皮膚の内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜、および腸粘膜など)を介した吸収)によって投与することができ、他の生物学的に活性な薬剤と共に投与することができる。投与は全身または局所であり得る。
【0094】
小胞、特にリポソーム中の薬学的組成物を送達させることもできる(Langer(1990)Science 249:1527−1533;Treat et al.(1989)in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353−365;Lopez−Berestein,同書,pp.317−327を参照のこと;一般に同書を参照のこと)。
【0095】
一定の状況では、薬学的組成物を、制御放出系で送達させることができる。1つの実施形態では、ポンプを使用することができる(Langer,前出;Sefton(1987)CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照のこと)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974)を参照のこと)。さらに別の実施形態では、制御放出系を組成物の標的の近傍に配置することができ、したがって、全身用量の一部のみが必要である(例えば、Goodson,in Medical Applications of Controlled Release,前出,vol.2,pp.115−138,1984を参照のこと)。
【0096】
注射用調製物には、静脈内、皮下、皮内、および筋肉内注射、点滴注入などのための投薬形態が含まれ得る。これらの注射用調製物を、公知の方法によって調製することができる。例えば、注射用調製物を、例えば、従来より注射のために使用されている滅菌水性媒質または油性媒質への上記の抗体またはその塩の溶解、懸濁、または乳化によって調製することができる。注射用水性媒質として、例えば、生理学的食塩水、グルコースおよび他の助剤を含む等張液などが存在し、これらを、適切な可溶化剤(アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80、HCO−50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物))など)と組み合わせて使用することができる。油性媒質として、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが使用され、これらを、可溶化剤(安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなど)と組み合わせて使用することができる。このようにして調製した注射剤を、好ましくは、適切なアンプルに充填する。本発明の薬学的組成物を、標準的な針およびシリンジを使用して皮下または静脈内に送達させることができる。さらに、皮下送達に関して、ペン送達デバイスは、本発明の薬学的組成物の送達に容易に適用される。かかるペン送達デバイスは、再利用可能であるか、使い捨てであり得る。再利用可能なペン送達デバイスは、一般に、薬学的組成物を含む交換式カートリッジを使用する。一旦カートリッジ内の全ての薬学的組成物が投与されてカートリッジが空になると、空のカートリッジを、容易に破棄して薬学的組成物を含む新規のカートリッジと交換することができる。次いで、ペン送達デバイスを再利用することができる。使い捨てペン送達デバイスでは、交換式カートリッジが存在しない。むしろ、使い捨てペン送達デバイスは、あらかじめ充填された薬学的組成物がデバイス内のリザーバ中に保持されている。一旦リザーバ中の薬学的組成物が空になると、デバイス全体を破棄する。
【0097】
多数の再利用可能なペンおよび自動注入送達デバイスが、本発明の薬学的組成物の皮下送達で適用される。ほんの数例を挙げれば、AUTOPENTM(Owen Mumford,Inc.,Woodstock,UK)、DISETRONICTMペン(Disetronic Medical Systems,Burghdorf,Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25TMペン、HUMALOGTMペン、HUMALIN 70/30TMペン(Eli Lilly and Co.,Indianapolis,IN)、NOVOPENTMI,II、およびIII(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、NOVOPEN JUNIORTM(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、BDTMペン(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)、OPTIPENTM、OPTIPEN PROTM、OPTIPEN STARLETTM、およびOPTICLIKTM(sanofi−aventis,Frankfurt,Germany)などがあるが、必ずしもこれらに限定されない。本発明の薬学的組成物の皮下送達で適用される使い捨てペン送達デバイスの例には、SOLOSTARTMペン(sanofi−aventis)、FLEXPENTM(Novo Nordisk)、およびKWIKPENTM(Eli Lilly)が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0098】
有利には、上記の経口または非経口用の薬学的組成物を、活性成分の用量にふさわしい適切な単位用量の投薬形態に調製する。単位用量のかかる投薬形態には、例えば、錠剤、丸薬、カプセル、注射剤(アンプル)、坐剤などが含まれる。前述の抗体の含有量は、一般に、単位用量の投薬形態(特に注射形態)あたり約0.1〜約800mgであり、前述の抗体は、他の投薬形態のために約1〜約500mg、約5〜300mg、約8〜200mg、および約10〜約100mgで含まれる。
【0099】
組み合わせ療法
本発明は、1つ以上のさらなる治療薬と組み合わせた本発明のhANGPTL4抗体またはそのフラグメントの投与によるhANGPTL4に直接または間接的に関連する疾患または障害の処置のための治療方法をさらに提供する。さらなる治療薬は、本発明の抗体またはそのフラグメントと有利に組み合わせられる1つ以上の任意の薬剤、例えば、HMG−CoAレダクターゼインヒビター(セリバスタチン(cerovastatin)、アトルバスタチン、シンバスタチン、ピタバスタチン(pitavastin)、ロスバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、およびプラバスタチンなど);ナイアシン;種々のフィブラート(フェノフィブラート、ベザフィブラート、シプロフィブラート、クロフィブラート、およびゲムフィブロジルなど);およびLXR転写因子アクチベーターであり得る。さらに、本発明のhANGPTL4抗体またはそのフラグメントを、他のANGPTL4インヒビターならびにANGPTL3、ANGPTL5、ANGPTL6、およびプロタンパク質コンバターゼサブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)(脂質代謝、特にコレステロールおよび/またはトリグリセリドホメオスタシスに関与する)などの他の分子のインヒビターと共投与することができる。これらの分子のインヒビターには、これらの分子に特異的に結合してその活性を遮断する小分子および抗体が含まれる(例えば、US 2010/0166768A1に開示の抗PCSK9抗体を参照のこと)。
【0100】
さらに、さらなる治療薬は、1つ以上の抗がん剤(化学療法薬、抗血管新生薬、増殖阻害剤、細胞毒性薬、アポトーシス薬など)およびがんまたは他の増殖性疾患または障害を処置するための当該分野で周知の他の薬剤であり得る。抗がん剤の例には、抗有糸分裂剤(ドセタキセルおよびパクリタキセルなど)、プラチナベースの化学療法化合物(シスプラチン、カルボプラチン、イプロプラチン、およびオキサリプラチンなど)、または他の従来の細胞毒性薬(5−フルオロウラシル、カペシタビン、イリノテカン、ロイコボリン、およびゲムシタビンなど)、および抗血管新生薬、例えば、血管内皮成長因子(VEGF)アンタゴニスト、例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標)、Genentech)および受容体ベースのVEGF遮断薬、例えば、米国特許第7,070,959号明細書中に記載の「VEGFトラップ」、デルタ様リガンド4(Dll4)アンタゴニスト(米国特許出願公開第2008/0181899号明細書中に記載の抗Dll4抗体など)、およびDll4の細胞外ドメインを含む融合タンパク質(例えば、米国特許出願公開第2008/0107648号明細書中に記載のDll4−Fc);受容体チロシンキナーゼおよび/または血管形成のインヒビター(ソラフェニブ(ネクサバール(登録商標)、Bayer Pharmaceuticals Corp.)、スニチニブ(スーテント(登録商標)、Pfizer)、パゾパニブ(ボトリエントTM、GlaxoSmithKline)、トセラニブ(パラディアTM、Pfizer)、バンデタニブ(ザクチマTM、AstraZeneca)、セジラニブ(レセンチン(登録商標)、AstraZeneca)、レゴラフェニブ(BAY 73−4506、Bayer)、アキシチニブ(AG013736、Pfizer)、レスタウルチニブ(CEP−701、Cephalon)、エルロチニブ(タルセバ(登録商標)、Genentech)、ゲフィチニブ(イレッサTM、AstraZeneca)、BIBW2992(トボックTM、Boehringer Ingelheim)、ラパチニブ(タイカーブ(登録商標)、GlaxoSmithKline)、およびネラチニブ(HKI−272、Wyeth/Pfizer)などが含まれる)、ならびに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸、または誘導体が含まれるが、これらに限定されない。さらに、他の治療薬(鎮痛薬、および抗炎症薬(非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)(Cox−2インヒビターなど)が含まれる)など)を本発明のhANGPTL4抗体またはそのフラグメントと共投与して、基礎をなすがん/腫瘍に伴う症状を回復および/または低下させることもできる。
【0101】
本発明のhANGPTL4抗体またはそのフラグメントおよびさらなる治療薬を、一緒に、または別々に共投与することができる。別々の投薬処方物を使用する場合、本発明の抗体またはそのフラグメントおよびさらなる薬剤を、同時投与してもよく、または交互に(すなわち、逐次)適切な順序で別々に投与してもよい。
【0102】
抗体の診断的使用
本発明の抗ANGPTL4抗体を使用して、例えば、診断目的のためにサンプル中のANGPTL4を検出および/または測定することもできる。例えば、抗ANGPTL4Abまたはそのフラグメントを使用して、ANGPTL4の異常な発現(例えば、過剰発現、低発現、発現の欠如など)によって特徴づけられる状態または疾患を診断することができる。例示的なANGPTL4の診断的アッセイは、例えば、患者から得たサンプルを本発明の抗ANGPTL4Abと接触させる工程を含むことができ、ここで、抗ANGPTL4抗体は、検出可能な標識またはレポーター分子で標識されているか、またはこの抗体を使用して患者サンプルからANGPTL4タンパク質を選択的に捕捉し、単離する。あるいは、非標識の抗ANGPTL4Abを、それ自体が検出可能に標識された二次抗体と組み合わせて診断的適用で使用することができる。検出可能な標識またはレポーター分子は、放射性同位体(H、14C、32P、35S、131I、または125Iなど)、蛍光部分または化学発光部分(フルオレセインイソチオシアナートまたはローダミンなど)、または酵素(アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、またはルシフェラーゼなど)であり得る。サンプル中のANGPTL4を検出または測定するために使用することができるアッセイには、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、および蛍光細胞分析分離(FACS)などが含まれる。
【実施例】
【0103】
以下の実施例を、当業者に本発明の方法および組成物の作製および使用方法を完全に開示および説明するために示し、発明者らが発明者らの発明と見なす範囲を制限することを意図しない。使用した数値に関して正確さを保証する努力をしているが、いくつかの実験上のエラーおよび偏りが存在するはずである。他で示さない限り、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。
【0104】
実施例1:ヒトANGPTL4に対するヒト抗体の生成
VELOCIMMUNETMマウスを、ヒトANGPTL4を使用して免疫化し、これらのマウスから得た血清を使用した抗原特異的免疫アッセイによって抗体免疫応答をモニタリングした。抗hANGPTL4発現B細胞を、抗hANGPTL4抗体力価の上昇が認められた免疫化マウスの脾臓から採取し、マウス骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを形成させた。下記のアッセイを使用して、ハイブリドーマをスクリーニングおよび選択し、hANGPTL4特異的抗体を発現する細胞株を同定した。アッセイによってキメラ抗hANGPTL4抗体を産生したいくつかの細胞株が同定され、これらを、H1M222、H1M223、H1M224、H1M225、H1M234、およびH1M236と命名した。
【0105】
US 2007/0280945A1に記載のように、ヒトANGPTL4特異的抗体も、骨髄腫細胞に融合しない抗原免疫化B細胞から直接単離した。重鎖および軽鎖可変領域をクローン化して、完全なヒト抗hANGPTL4抗体(H1H257、H1H268、H1H283、H1H284、H1H285、H1H291、H1H292、H1H295、H1H624、H1H637、H1H638、H1H644、およびH1H653と命名)を生成した。安定な組換え抗体発現CHO細胞株を樹立した。
【0106】
実施例2.可変遺伝子利用分析
産生された抗体の構造を分析するために、抗体の可変領域をコードする核酸をクローン化し、配列決定した。抗体の核酸配列および推定アミノ酸配列から、各重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)の遺伝子使用を同定した。表1は、選択した本発明の抗体についての遺伝子使用を示す。
【0107】
【表1】

表2は、選択された抗hANGPTL4抗体の重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列対およびその対応する抗体識別名を示す。N、P、およびLの表記は、同一のCDR配列を有するが、CDR配列の外側の領域中(すなわち、フレームワーク領域中)に配列変形を有する重鎖および軽鎖を有する抗体を指す。したがって、特定の抗体のN、P、およびLバリアントは、その重鎖および軽鎖可変領域内に同一のCDR配列を有するが、フレームワーク領域内が改変されている。
【0108】
【表2】

実施例3.hANGPTL4結合親和性の決定
マウスIgG2aに直列に融合したヒトANGPTL4(hANGPTL4−mFc;配列番号480)のアミノ酸残基26〜148に結合する選択された抗体への抗原結合についての平衡解離定数(K値)を、リアルタイムバイオセンサー表面プラズモン共鳴アッセイ(BIACORETMT100)を使用して表面動態によって決定した。hANGPTL4−mFcを、遊離アミノ基を介してBIACORETMチップに化学的にカップリングしたヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体(GE Healthcare)を使用して捕捉した。種々の濃度(12.5nM〜50nMの範囲)の抗ANGPTL4抗体を、捕捉された抗原表面上に90秒間注入した。抗原−抗体結合および解離を、25℃および37℃にてリアルタイムでモニタリングした。動態分析を行って、抗原/抗体複合体解離のKおよび半減期を計算した。結果を表3に示す。ヒト抗EGFR抗体を、捕捉したhANGPTL4−mFcに結合しないネガティブコントロールとして使用した。
【0109】
【表3】

H1H268PおよびH1H284Pについて、Fabフラグメントをパパイン消化によって調製し、標準的な精製方法によって精製し、本質的に上記の方法にしたがって、hANGPTL4に対するその結合親和性をBIACORETMシステムを使用して25℃、pH7.2およびpH5.75で測定した。簡潔に述べれば、種々の濃度(3.125nM〜100nM)の抗hANGPTL4抗体(すなわち、H1H268Fab、全H1H268mAb、H1H284Fab、および全H1H284mAb)を、低密度抗mFc捕捉したhANGPTL4(26−148)−mFc(約68±4RU)表面上、またはアミノカップリングしたhANGPTL4(26−406)−His(R&D Systems)(450RU)またはアミノカップリングしたC末端ヘキサヒスチジンタグと共に発現されるカニクイザルN末端領域(配列番号490のアミノ酸残基1〜130)(MfANGPTL4(1−130)−His)(1,028RU)の表面上に注入した。動態分析を行ってkおよびkを測定し、抗原/抗体複合体解離のK値および半減期を計算した。結果を表4(H1H268P)および表5(H1H284P)に示す。
【0110】
【表4】

【0111】
【表5】

両Fabフラグメントは、抗体分子全体よりも低い親和性ではあるが、全てのANGPTL4形態に結合することができた。
【0112】
実施例4.抗hANGPTL4抗体交差反応の決定
抗hANGPTL4抗体の関連タンパク質(すなわち、hANGPTL3、ヒトアンギオポエチン様タンパク質5(hANGPTL5)、およびマウスANGPTL4(mANGPTL4))に対する交差反応の可能性を、BIACORETMシステムを使用して、選択した抗体(すなわち、H1H268PおよびH1H284P)について試験した。簡潔に述べれば、抗hANGPTL4抗体および任意のANGPTLタンパク質に対する結合物質ではないネガティブコントロール(すなわち、2つのモノクローナル抗体(コントロールaおよびコントロールb))を、3.125μg/mL〜50μg/mLで、それぞれ、hANGPTL3−His(R&D Systems、カタログ番号3829−AN)(5228RU)、hANGPTL4−His(R&D Systems、カタログ番号4487−AN)(6247RU)、hANGPTL5−His(Abnova Corp.、カタログ番号H00253935−P01)(5265RU)、およびmANGPTL4−His(ASリンカーを用いてC末端6−ヒスチジンタグと融合したmANGPTL4(配列番号478)のR26−S410)(5233RU)のアミンカップリングしたチップ表面に注入した。hANGPTL3に特異的なポリクローナル抗体(R&D System、カタログ番号BAF3485)も試験した。各抗体の結合(比RU値として示す)を決定し、結果を表6に示す。
【0113】
【表6】

H1H268PおよびH1H284PはhANGPTL4−Hisのみと特異的に結合したが、いずれの他の関連ANGPTLタンパク質とも結合しなかった。
【0114】
さらに、種々のANGPTL3およびANGPTL4ペプチドに対するH1H268PおよびH1H284Pの結合親和性も、BIACORETMシステムによって決定した。簡潔に述べれば、H1H268P(1348±11RU)およびH1H284P(868±13RU)を抗ヒトFc表面上に捕捉し、種々の濃度(62.5nM〜500nM)のhANGPTL3およびhANGPTL4ペプチドを注入した。試験したペプチドは、hANGPTL4(配列番号476のR34〜L66)、N末端ビオチン化hANGPTL4(配列番号476のR34〜L66)、hANGPTL3(配列番号485のR36〜I68)、およびN末端ビオチン化hANGPTL3(配列番号485のR36〜I68)であった。動態分析を行ってkおよびkを測定し、抗原/抗体複合体解離のK値および半減期を計算した。結果を表7に示す。NB:記載の実験条件下で結合なし。
【0115】
【表7】

hANGPTL3ペプチドに結合した抗体はなかった。さらに、H1H284Pは、最高のペプチド試験濃度(500nM)においてさえもいかなるhANGPTL4ペプチドにも結合しない一方で、H1H268Pは両方のhANGPTL4ペプチドに結合することができた。これは、H1H268Pが34〜66領域内の線状エピトープを認識することを示唆している。対照的に、H1H284Pは、この領域の外側に結合するか、この領域内の線状エピトープを認識しない。
【0116】
実施例5.抗ANGPTL4抗体によるhANGPTL4の阻害
リポタンパク質リパーゼ(LPL)は、ヒトにおける脂質代謝で重要な役割を果たす。LPLはトリグリセリドの加水分解を触媒し、代謝されることになる脂肪酸を放出する。ANGPTL4は、LPL活性を阻害して脂質レベルを増加させる(Oike et al.,2005,Trends in Molecular Medicine 11(10):473−479)。ANGPTL4のN末端コイルドコイル領域は、独立で、およびC末端フィブリノゲン様領域に連結した場合の両方で、ホモ多量体化する。N末端領域はまた、C末端フィブリノゲン領域を伴わずに発現した場合にLPLを阻害する。無細胞バイオアッセイを開発して、選択した抗hANGPTL4抗体がLPL活性のANGPTL4誘導性の減少を阻害する能力を決定した。
【0117】
選択した抗hANGPTL4抗体によるhANGPTL4活性の阻害を、CONFLUOLIPTM連続蛍光分析リパーゼ試験(Progen,Germany)を使用し、以下の2つのhANGPTL4タンパク質を使用して決定した:C末端ヘキサ−ヒスチジンタグを有する全長hANGPTL4(すなわち、配列番号476のアミノ酸残基26〜406)(hANGPTL4−His;R&D Systems,MN)およびN末端コイルドコイル領域を含むhANGPTL4−mFc(配列番号480)。
【0118】
簡潔に述べれば、2nMウシLPL、0.25μMヒトApoCII(LPLの補因子)、2mg/mL BSA、および1.6mM CaClを、96ウェルアッセイプレート中であらかじめ混合した。hANGPTL4−Hisタンパク質またはhANGPTL4−mFcタンパク質のいずれかを、Apo/LPL混合物にそれぞれ最終濃度10nMおよび2nMまで添加した。次いで、Apo/LPL/ANGPTL4タンパク質混合物に、出発濃度300nM(hANGPTL4−His阻害用)または100nM(hANGPTL4−mFc阻害用)で連続希釈した抗hANGPTL4抗体を添加し、室温で30分間インキュベートした(最終容積50μl)。インキュベーション後、200μlの再構成リパーゼ基質(1−トリニトロフェニル−アミノ−ドデカノイル−2−ピレンデカノイル−3−0−ヘキサデシル−sn−グリセロール(LS−A,Progen))を抗体混合物に添加し、37℃で2時間インキュベートした。次いで、蛍光を、FlexStation(登録商標)3マイクロプレートリーダー(Molecular Devices,CA)を使用して342nm/400nm(励起/発光)で測定した。蛍光は、LPL活性に比例する。結果を表8に示す。コントロールI:hANGPTL4に特異的なウサギポリクローナル抗体(BioVendor)。コントロールII:hANGPTL4に結合しない無関係のヒト抗体。NT:試験せず。全阻害(すなわち、100%阻害)を、抗ANGPTL4抗体およびANGPTL4タンパク質の非存在下で2nMウシLPL、0.25μMヒトApoCII、2mg/mL BSA、および1.6mM CaClを使用したアッセイの相対蛍光単位(RFU)から決定した。
【0119】
【表8】

抗体H1H284PおよびH1H268Pは、試験した抗体(ポリクローナルhANGPTL4抗体コントロールが含まれる)のうちでLPLに対するANGPTL4阻害活性の最高の阻害を示した。抗体H1H284PおよびH1H268Pについて、2nM hANGPTL4−mFcの50%最大阻害に必要な抗体濃度(IC50)は、それぞれ0.8nMおよび1.2nMと決定された。さらに、10nM hANGPTL4−Hisの50%最大阻害に必要な抗体濃度は、それぞれ0.5nMおよび0.2nMと決定された。
【0120】
同様に、H1H284PおよびH1H268Pを、LPLバイオアッセイにて以下の異種間オルソログを阻害する能力について試験した:N末端ヘキサヒスチジンタグと共に発現するカニクイザルN末端領域(アミノ酸残基26〜148)(His−MfANGPTL4;配列番号488)およびC末端ヘキサ−ヒスチジンタグを有するマウス全長オルソログ(配列番号478のアミノ酸残基26〜410)(mANGPTL4−His)。表9に示すように、LPLアッセイにおいてANGPTL4タンパク質を使用した全用量−応答を最初に実施して各実験についてのANGPTL4 EC50を決定し、一定濃度のANGPTL4タンパク質を使用して各抗体のIC50を決定した。抗体濃度は、0〜100nMの範囲であった。NB:遮断なし。
【0121】
【表9】

両抗体は、ヒトANGPTL4(全長およびN末端)およびサルANGPTL4(N末端)両方のタンパク質活性をIC50約0.3〜0.5nMで阻害したが、いずれの抗体も最高の抗体試験濃度(すなわち、100nM)でマウスANGPTL4(全長)を阻害しなかった。
【0122】
実施例6.血漿脂質レベルに及ぼすANGPTL4のin Vivoでの影響
hANGPTL4をC57BL/6マウスに静脈内投与して、血漿脂質レベルに及ぼすhANGPTL4の生物学的影響を決定した。簡潔に述べれば、C57BL/6マウスを5匹の動物の4つの群に分け、各群に異なる量のhANGPTL4−mFcタンパク質(配列番号480):マウスあたり25μg、50μg、100μg、および300μgを投与した。コントロール群にPBSを注射した。hANGPTL4−mFcタンパク質およびPBSを、尾静脈を介した静脈内注射(i.v.)によって投与した。hANGPTL4−mFcまたはPBS送達から15分、30分、60分、および120分後にマウスから採血し、血漿脂質レベルを、ADVIA(登録商標)1650化学システム(Siemens)によって決定した。各用量群についてトリグリセリド、全コレステロール、低密度リポタンパク質(LDL)、非エステル化脂肪酸(NEFA−C)、および高密度リポタンパク質(HDL)を決定した。全コレステロール、LDL、NEFA−C、およびHDLの測定値は、注射後の各時点で各用量群間で有意差はなかった。25μg/マウスのhANGPTL4−mFcの注射により、注射30分後のコントロールマウス(PBS)と比較して2倍を超えて循環トリグリセリドが増加した。したがって、下記のように、25μg用量のhANGPTL4−mFcを、選択した抗hANGPTL4抗体による、血清トリグリセリドレベルのANGPTL4誘導性増加の阻害の分析のための可能な最小投薬量として選択した。
【0123】
実施例7.抗ANGPTL4抗体によるANGPTL4のin Vivo阻害
別の実験セットでは、選択した抗hANGPTL4抗体を、hANGPTL4誘導性のトリグリセリドレベルの増加を阻害する能力について試験した。全コレステロール(全−C)、LDL、NEFA−C、およびHDLも測定した。簡潔に述べれば、C57BL/6マウスを、各試験抗体について5匹のマウス群に分けた。5mg/kg用量の抗体を皮下注射によって投与した。コントロール群I(すなわち、抗hANGPTL4抗体やhANGPTL4を投与されていないマウス)にPBSを投与した。抗体注射の24時間後、hANGPTL4−mFc(配列番号480)を、25μg/マウスの用量で各抗体群に投与した(i.v.)。hANGPTL4−mFc注射の30分後にマウスから採血し、脂質レベルをADVIA(登録商標)1650化学システム(Siemens)によって決定した。各抗体群またはコントロール群についてのトリグリセリド、全コレステロール、LDL、NEFA−C、およびHDLの各測定値の平均を計算した。標準的なELISAアッセイを使用して、循環抗hANGPTL4抗体(血清Ab)レベルも決定した。簡潔に述べれば、血清Abを捕捉するためにヤギ抗ヒトFc抗体(Sigma−Aldrich)でプレートをコーティングした。次いで、血清をプレートに添加し、捕捉された抗hANGPTL4抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体化ヤギ抗ヒトIgG抗体(Sigma−Aldrich)を使用して化学発光によって検出した。結果(血清脂質濃度の(平均±SEM)として示す)を、表10〜12に示す。コントロールI:PBSを投与したが、抗hANGPTL4抗体やhANGPTL4−mFcを投与しなかったマウス。コントロールII:CD20に特異的なヒト抗体(すなわち、US 2008/0260641に開示の2F2クローン配列を有するmAb)およびhANGPTL4−mFcを投与したマウス。
【0124】
【表10】

【0125】
【表11】

【0126】
【表12】

hANGPTL4−mFc(25μg)の注射後、多くの試験した抗hANGPTL4抗体(表10〜12に示す)は、無関係の抗体(コントロールII)で処置したマウスと比較して、血清トリグリセリドレベルの有意な減少を示した。
【0127】
実施例8.hIgG4アイソタイプを有する抗ANGPTL4抗体の調製
hIgG1アイソタイプを有する抗体H1H268PおよびH1H284Pを、各定常領域をヒンジ領域内にS108P変異を含む配列番号483のhIgG4アミノ酸配列で置換することによってhIgG4アイソタイプに変換した。さらに、単一アミノ酸置換をH1H268P(配列番号42)のフレームワーク領域1中に導入してIgG4バージョンのH4H268P2(配列番号487)を形成させた。それぞれH4H268P2およびH4H284Pと命名されたIgG4抗体のhANGPTL4−mFc(配列番号480)結合についてのK(pM)値およびt1/2値を、上記実施例3のプロトコールにしたがってpH7.4および25℃でのBiacoreによって得た。結果を以下の表13に示す。
【0128】
【表13】

H4H268P2およびH4H284Pを、対応するIgG1バージョン(それぞれ、H1H268PおよびH1H284P)と共に、上記実施例5に記載のようにLPL阻害アッセイで試験して、IC50値を決定した。結果を表14に示す。NB:遮断なし。
【0129】
【表14】

このアッセイでは、H1H268PおよびH1H284Pは全長およびN末端hANGPTL4タンパク質について約0.2〜0.7nMの範囲のIC50を示し、一方で、H4H268P2およびH4H284PのIC50は約1.0〜2.0nMの範囲であった。
【0130】
実施例9.抗ANGPTL4抗体の薬物動態研究
抗hANGPTL4抗体H4H268P2およびH4H284Pの薬物動態学的クリアランス速度を、野生型マウスおよびヒトANGPTL4を発現するトランスジェニックマウス(hANGPTL4(+/+)マウス)において決定した。野生型マウスおよびトランスジェニックマウスの両方の系統バックグラウンドは、C57BL6(75%)および129Sv(25%)であった。野生型マウスまたはhANGPTL4(+/+)マウスのいずれかの5匹のマウスからなる個別のコホートに、1mg/kgのH4H268P2、H4H284P、または無関係の特異性を有するアイソタイプ適合(hIgG4)コントロールを皮下(s.c.)投与した。血液サンプルを、注射0時間後、6時間後、1日後、2日後、3日後、4日後、7日後、10日後、および15日後、22日後、および30日後に採取した。ヒト抗体の血清レベルを、サンドイッチELISAによって決定した。簡潔に述べれば、ヤギポリクローナル抗ヒトIgG(Fc特異的)捕捉抗体(Jackson ImmunoResearch,PA)で96ウェルプレートをコーティングし(濃度1μg/mL)、4℃で一晩インキュベートした。プレートをBSAでブロッキングした後、6ポイント連続希釈の血清サンプルおよび12ポイント連続希釈の各抗体の参照標準物をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。適切な洗浄緩衝液での洗浄後、捕捉されたヒト抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と結合体化した同一のヤギポリクローナル抗ヒトIgG(Fc特異的)抗体(Jackson ImmunoResearch,PA)を使用して検出し、テトラメチルベンジジン(TMB)基質を使用した標準的な比色反応によって発色させ、プレートリーダーで450nmの吸光度を測定した。血清中のヒト抗体濃度を、同一のサンプルプレートについて作成した参照標準物曲線を使用して決定した。結果を表15ならびに図3Aおよび3Bに示す。
【0131】
【表15】

表15に示すように、それぞれ、H4H268P2、H4H284P、およびhIgG4コントロールについて30日間にわたって計算した曲線下面積(AUC)(約318、200、および199(hrμg/mL))に反映されるように、両抗hANGPTL4抗体は、野生型マウスにおいてアイソタイプ適合コントロール抗体に類似のクリアランス速度を示した(図3Aも参照のこと)。ヒトANGPTL4のみを発現するトランスジェニックマウス(hANGPTL4(+/+))では、AUCで反映されるクリアランス速度は、野生型マウスにおけるクリアランス速度(それぞれ、318および200hrμg/mL)と比較して、およびhANGPTL4(+/+)マウス(168hrμg/mL)または野生型マウス(199hrμg/mL)のいずれかにおけるアイソタイプ適合コントロール抗体のクリアランス速度と比較して、H4H268P2(37.0hrμg/mL)およびH4H284P(7.60hrμg/mL)についてより速かった(図3Bも参照のこと)。hANGPTL4(+/+)マウスでは、H4H284Pについての30日間AUC(7.60hrμg/mL)は、H4H268P2(37.0hrμg/mL)の約1/5であった。まとめると、これらの結果は、両抗hANGPTL4抗体がヒトANGPTL4を発現するマウスにおいて標的媒介クリアランスを示し、H4H284PがH4H268P2よりクリアランス速度が実質的に速いことを示唆している。
【0132】
実施例10.ヒト化ANGPTL4マウスにおける循環TGレベルに及ぼすIgG1抗hANGPTL4抗体のin vivoでの影響
血清TGレベルに及ぼす抗hANGPTL4抗体H1H268PおよびH1H284Pの影響を、ヒトN末端コイル−コイル領域を含むANGPTL4タンパク質を発現するマウス(「ヒト化ANGPTL4マウス」)において決定した。ヒト化ANGPTL4マウスを、C57BL6/129(F1H4)胚性幹細胞中でマウスAngptl4遺伝子の最初の3つのエクソン(N末端コイル−コイル領域)を対応するヒトN末端コイル−コイルANGPLT4配列で置換することによって作製した。生殖系列移行の確立後、ヘテロ接合体マウス(ANGPTL4hum/+)を交配させてC57BL6バックグラウンドでホモ接合体マウス(ANGPTL4hum/humまたはhANGPTL4(+/+))を作製した。実験7日前(−7日目)にヒト化ANGPTL4マウスから予め採血し、各試験抗体についてそれぞれ6匹のマウスの群に分けた。抗体(H1H268P、H1H284P、およびマウス抗原に対する交差反応が知られていないアイソタイプ適合(hIgG1)コントロール)を、用量10mg/kgで皮下注射によって投与した。抗体注射の1、4、7、および11日後に、絶食4時間後のマウスから採血し、血清TGレベルをADVIA(登録商標)1800化学システム(Siemens)によって決定した。各時点の各抗体についての平均TGレベルを計算した。結果(血清TG濃度の(平均±SEM)として示す)を表16に示す。
【0133】
【表16】

循環抗hANGPTL4抗体(「血清ヒトAb」)レベルも、標準的なELISAアッセイを使用して決定した。簡潔に述べれば、血清ヒトAbを捕捉するためにプレートをヤギ抗ヒトFc抗体(Sigma−Aldrich)でコーティングした。次いで、血清をプレートに添加し、捕捉された抗hANGPTL4抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体化ヤギ抗ヒトIgG抗体(Sigma−Aldrich)を使用した化学発光によって検出した。結果(血清ヒトAbの(平均±SEM)として示す)を表17に示す。
【0134】
【表17】

H1H268Pのヒト化ANGPTL4マウスへの投与により、アイソタイプ適合コントロール抗体を投与したマウスと比較して、抗体投与の4〜11日後に循環TGが約25〜30%減少した。H1H284P投与に起因するTG減少は、抗体注射4日後で最も有効であったが(TG減少約34%)、11日目までにTGレベルはコントロールレベルまで増加して戻った。これは、おそらく抗体の迅速なクリアランス速度に起因するであろう。
【0135】
実施例11.ヒト化ANGPTL4マウスにおける循環TGレベルに及ぼすIgG4抗hANGPTL4抗体のin vivoでの影響
抗hANGPTL4抗体H4H268P2およびH4H284Pの血清TGレベルに及ぼす影響を、ヒト化ANGPTL4マウスにおいて決定した。ヒト化ANGPTL4マウスから、実験7日前に予め採血し、各試験抗体についてそれぞれ6匹のマウス群に分けた。抗体(H4H268P2、H4H284P、およびマウス抗原に対する交差反応が知られていないアイソタイプ適合(hIgG4)コントロール)を、用量10mg/kgで皮下注射によって投与した。抗体注射の1、4、7、および11日後に、絶食4時間後のマウスから採血し、血清中のTGレベルをADVIA(登録商標)1800化学システム(Siemens)によって決定した。各時点の各抗体についての平均TGレベルを計算した。結果(血清TG濃度の(平均±SEM)として示す)を表18に示す。
【0136】
【表18】

H4H268P2およびH4H284Pのヒト化ANGPTL4マウスへの投与により、アイソタイプ適合コントロール抗体を投与したマウスと比較して、抗体投与1日後(H4H268P2)および4日後(H4H268P2およびH4H284P)の循環TGが有意に減少した。
【0137】
循環TGレベルに及ぼすH4H268P2の影響を、ApoEヌルマウスと交配したヒト化ANGPTL4マウスでさらに研究した。ApoEヌルマウスモデルは、VLDLレムナントクリアランス障害に起因して大部分のコレステロールおよびTGがVLDL粒子において循環する高アテローム生成性および高脂血性モデルとして公知である。ヒト化ANGPTL4×ApoEヌルマウスから実験7日前に予め採血し、各6匹のマウスの2群に分けた。抗体H4H268P2およびコントロールAbを、10mg/kgで皮下注射によって投与した。抗体注射の1、4、7、11、および17日後に、絶食4時間後のマウスから採血し、血清中のTGレベルをADVIA(登録商標)1800化学システム(Siemens)によって決定した。図4に示したTG減少を、コントロールAbと比較したTGレベルの比率として示す。
【0138】
コントロールAbを投与したマウスと比較して、TGレベルは全17日間で有意に減少し(42%超)、H4H268P2投与7日後に最も減少した(約50%)。
【0139】
実施例12.フェノフィブラートと組み合わせた抗hANGPTL4抗体の血清TGレベルに及ぼすin vivoでの影響
抗ANGPTL4抗体H4H268P2およびTG低下薬フェノフィブラートの単独または組み合わせの血清TGレベルに及ぼす影響を、ヒト化ANGPTL4マウスで評価した。実験7日前に絶食4時間後のマウスから予め採血し、各6匹のマウスの4群に分けた。群2および4に、0日目に10mg/kgのH4H268P2を皮下注射によって投与し、群1(コントロール群)および2に、一般飼料(chow diet)を与えた。群3および4に、0.05%(w/w)のフェノフィブラート(パイロット研究において投薬レベルを実験的に決定した)を補充した飼料を与えた。H4H268P2および/またはフェノフィブラート投与後7日目に、終末の採血から血清を収集し(絶食4時間後)、ADVIA(登録商標)1800化学システム(Siemens)によって分析した。結果を図5に示す。
【0140】
H4H268P2のみおよびフェノフィブラートとの組み合わせの投与により、投与7日後の循環TGレベルが有意に減少した。TGレベルは、飼料で処置したコントロール群と比較して、H4H268P2のみの投与7日後に約40%(平均)、フェノフィブラート処置のみの後に約25%、ならびにH4H268P2およびフェノフィブラートの組み合わせの処置後に約50%減少した。H4H268P2は、マウスモデルにおける循環TGレベルの減少においてフェノフィブラートより有効であった。組み合わせ処置により、TGレベルに対するH4H268P2およびフェノフィブラートの相乗効果が認められた。注目すべきことに、7日間フェノフィブラートを消費したマウス(群3および4)から採取した肝臓は、コントロール飼料を消費したマウス(群1および2)と比較して、有意に大きくなった(1.8倍、肝臓重量/体重)(データ示さず)。
【0141】
実施例13.肥満アカゲザルにおける抗ANGPTL4抗体の薬物動態学/薬力学についてのパイロット研究
第I相:パイロット非GLP薬物動態学/薬力学(PK/PD)研究では、H4H268P2およびH4H284Pを、単回ボーラス静脈内(IV)注射として肥満アカゲザル(Macaca mulatta)に投与した。アカゲザルを選択したのは、この種が系統学的および生理学的にヒトと密接に関連し、非臨床的毒性評価のために一般に使用される種であるからである。典型的に中程度に上昇したTGレベル(すなわち、平均>100mg/dL;超TG)を示すので、高脂肪食を6ヶ月超与えた肥満サルを選択した。8匹の健康が確認された雄性サルを馴化させ、投与前7日間のベースライン評価研究に割り当てた。−5日目に全動物にビヒクル(10mMヒスチジン、pH6)をIV注入によって投与し、その後、0日目にIVで10mg/kgにてその内の4匹にH4H268P2を投与し、別の4匹にH4H284Pを投与した。注入後のいかなる時点においても注射部位の反応や他の有害作用は認められなかった。
【0142】
血清サンプルを、ベースライン期から投与後35日目まで採取し、ADVIA(登録商標)1800化学システム(Siemens)によって血清脂質レベルについて評価した。各動物についての平均ベースラインを、−7、−5、および0日目に採取したサンプルに基づいて決定した。ビヒクル投与後に採取したサンプルの予備分析により、各群由来の3匹の肥満動物が絶食時TGレベルの上昇を示し(すなわち、TG>100mg/dL)、一方で、各群由来の1匹の動物が十分に正常範囲内の平均TGレベル(すなわち、平均絶食TGレベル42mg/dLおよび84mg/dL)を示すことが明らかとなった。したがって、各群の3匹の動物を使用してデータ分析を行った。ベースラインからの血清TGレベルの変化率(%)を各動物について決定し、各Ab群について平均化した。結果を図6に示す。
【0143】
3匹の軽度の超TG動物へのH4H268P2の投与により、投与後4日目に57%の最大減少を示した。H4H268P2処置後のこれらの動物についての平均血清TGレベルは、ほぼ25日目まで100mg/dL以下に維持された。さらなる脂質(LDL−コレステロール(LDL−C)およびHDL−Cなど)に対する中程度の影響が認められたが、全−Cは不変であった(データ示さず)。低TGレベルの単一の肥満動物へのH4H268P2の投与により、絶食時TGや任意の他の脂質パラメーターを低下させるいかなる有意な影響も得られず(データ示さず)、抗体によるTGレベルの減少の下限が示唆された。
【0144】
第II相:第2の非GLP薬物動態学/薬力学(PK/PD)研究では、H4H268P2のみを単回ボーラス静脈内(IV)注射として8匹の肥満アカゲザル(Macaca mulatta)に投与した。本研究では、投与前(pre−dosing)ビヒクル注射工程を省略した。研究−7、−3、および0日目に3つのベースライン評価を行い、0日目に8匹全てのサルに10mg/kgのH4H268P2をIVで投与した。血清サンプルを、ベースライン期から投与後35日目まで採取し、ADVIA(登録商標)1800化学システム(Siemens)によって血清脂質レベルについて評価した。あらかじめ影響を予想するために、平均ベースラインTGレベルにしたがってデータ分析のために動物を以下のように分類した:A.TG<150mg/dL(n=3)、B.150mg/dL<TG<500mg/dL(n=4)、およびC.TG>1000mg/dL(n=1)。
【0145】
図7は、3つのベースラインTG値の平均からのTGレベルの変化率として示した3群のTGレベルを示す。前臨床データに基づいて予想されるように、基礎血清TGレベルが高い動物ほど、より高い絶食TGレベルの減少が認められた。ベースラインTGレベルが1000mg/dL超であった個別の動物において、特に劇的且つ迅速なTGレベルの低下が認められた。ベースライン150mg/dL<TG<500mg/dLの動物についてTGレベルの堅調な減少(50〜68%)が認められた。この肥満サル群では、H4H268P2の投与によってHDL−Cが増加したが、LDL−Cや全−Cに影響を及ぼさなかった(データ示さず)。ベースラインTG<150mg/dL(正常TGレベル)の動物は、大部分がH4H268P2に無反応であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトアンギオポエチン様タンパク質4(hANGPTL4)に特異的に結合する単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
【化4】

から選択される重鎖相補性決定領域1(HCDR1)/HCDR2/HCDR3組み合わせを含む、単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
ヒトアンギオポエチン様タンパク質4(hANGPTL4)に特異的に結合する単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
【化5】

から選択される軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)/LCDR2/LCDR3組み合わせを含む、単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
請求項1または2に記載の抗体または抗原結合フラグメントであって、該抗体または抗原結合フラグメントは、重鎖および軽鎖CDR配列HCDR1/HCDR2/HCDR3/LCDR1/LCDR2/LCDR3を含み、該重鎖および軽鎖CDR配列HCDR1/HCDR2/HCDR3/LCDR1/LCDR2/LCDR3は、
【化6】

から選択されるCDR配列組み合わせを含む、抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項4】
ヒトアンギオポエチン様タンパク質4(hANGPTL4)に特異的に結合する単離ヒト抗体または抗体の抗原結合フラグメントであって、
【化7】

から選択される重鎖可変領域(HCVR)を含む、単離ヒト抗体または抗体の抗原結合フラグメント。
【請求項5】
【化8】

から選択される軽鎖可変領域(LCVR)をさらに含む、請求項4に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項6】
【化9】

から選択されるHCVR/LCVR配列対を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項7】
配列番号487/44または90/92のHCVR/LCVR配列対を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項8】
請求項6または7に記載の抗体または抗原結合フラグメントのHCVR/LCVR配列対内に含まれる重鎖および軽鎖CDR配列を含む、hANGPTL4に特異的に結合する単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
請求項3、6、および7のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合フラグメントとhANGPTL4への結合を競合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
請求項3、6、7、および9のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合フラグメントと同一のエピトープに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
請求項3、6、および7のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合フラグメントであって、該抗体または抗原結合フラグメントがカニクイザルANGPTL4およびアカゲザルANGPTL4と交差反応する、抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項12】
ヒトアンギオポエチン様タンパク質4(hANGPTL4)に特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
(a)式X−X−X−X−X−X−X−X−X−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−X20(配列番号471)(式中、XはAlaであり、XはArgまたはLysであり、XはGlyまたはGluであり、XはGly、Asp、または不在であり、XはAspまたは不在であり、XはLeu、Arg、または不在であり、XはArgまたはSerであり、XはPhe、Gly、またはArgであり、XはLeu、His、またはAsnであり、X10はAsp、Pro、またはTyrであり、X11はTrp、Tyr、またはPheであり、X12はLeu、Phe、Val、またはAspであり、X13はSer、Tyr、またはGlyであり、X14はSer、Tyr、またはAspであり、X15はTyrであり、X16はPheまたはGlyであり、X17はLeuまたは不在であり、X18はAspであり、X19はTyr、Val、またはPheであり、X20はTrpである)のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、および
(b)式X−X−X−X−X−X−X−X−X−X10(配列番号474)(式中、XはGlnであり、XはAsnまたはGlnであり、XはTyrまたはLeuであり、XはAsn、His、Ser、またはAspであり、XはThrまたはSerであり、XはAlaまたはTyrであり、XはPro、Ser、またはPheであり、XはLeuまたはArgであり、XはThrであり、X10はPheである)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)
を含む、単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
(c)式X−X−X−X−X−X−X−X(配列番号469)(式中、XはGlyであり、XはGlyまたはPheであり、XはSerまたはThrであり、XはPheであり、XはSerであり、XはIle、Ser、またはThrであり、XはHisまたはTyrであり、XはHis、Gly、またはAspである)のアミノ酸配列を含むHCDR1、
(d)式X−X−X−X−X−X−X−X(配列番号470)(式中、XはIleであり、XはAsn、Ser、またはGlyであり、XはHis、Phe、Ser、またはValであり、XはArg、Asp、またはAlaであり、XはGlyであり、XはGlyまたは不在であり、XはSer、Asn、またはAspであり、XはThrまたはLysである)のアミノ酸配列を含むHCDR2、
(e)式X−X−X−X−X−X(配列番号472)(式中、XはGlnであり、XはGlyまたはSerであり、XはIleであり、XはSerまたはAsnであり、XはAsp、Ser、またはArgであり、XはTyrまたはTrpである)のアミノ酸配列を含むLCDR1、および
(f)式X−X−X(配列番号473)(式中、XはAlaまたはLysであり、XはAlaであり、XはSerである)のアミノ酸配列を含むLCDR2
をさらに含む、請求項12に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項14】
ヒトアンギオポエチン様タンパク質4(hANGPTL4)に特異的に結合する単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントであって、V、D、およびJ生殖系列遺伝子セグメント由来のヌクレオチド配列セグメントによってコードされる重鎖可変領域(HCVR)ならびにVおよびJ生殖系列遺伝子セグメント由来のヌクレオチド配列セグメントによってコードされる軽鎖可変領域(LCVR)を含み、ここで、該HCVRおよび該LCVRは、(i)V4−34、D3−3、J4、V1−27、およびJ4、または(ii)V3−30、D5−12、J6、V1−9、およびJ4の組み合わせ由来のヌクレオチド配列セグメントによってコードされている、単離ヒト抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項15】
前述の請求項のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合フラグメントをコードする単離核酸分子。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項17】
請求項16に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項18】
抗hANGPTL4抗体またはその抗原結合フラグメントの産生方法であって、該抗体またはそのフラグメントを産生させる条件下で請求項17に記載の宿主細胞を増殖させる工程、および産生された抗体またはそのフラグメントを取り出す工程を含む、方法。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合フラグメントおよび薬学的に許容可能なキャリアを含む薬学的組成物。
【請求項20】
HMG−CoAレダクターゼのインヒビター;コレステロール取り込みまたは胆汁酸再吸収またはその両方のインヒビター;リポタンパク質異化を増加させる薬剤、非致死性心臓発作数を減少させる薬剤;およびLXR転写因子のアクチベーターから選択される1つ以上のさらなる治療薬をさらに含む、請求項19に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
スタチン、ナイアシン、フィブラート、および抗PCSK9抗体から選択される1つ以上のさらなる治療薬をさらに含む、請求項19に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
ANGPTL4活性の減少または阻害によって防止、回復、改善、または阻害される疾患または障害を防止または処置するための方法であって、治療有効量の請求項19〜21のいずれか1項に記載の薬学的組成物を、該疾患または障害の防止または処置を必要とする被験体に投与する工程を含む、方法。
【請求項23】
前記疾患または障害が、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、カイロミクロン血症、アテローム性脂質異常症、心血管疾患または障害、急性膵炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、糖尿病、および肥満から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ANGPTL4媒介疾患または障害の改善、回復、阻害、または防止に用いるための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項25】
前記ANGPTL4媒介疾患または障害が、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、カイロミクロン血症、アテローム性脂質異常症、心血管疾患または障害、急性膵炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、糖尿病、および肥満から選択される、請求項24に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項26】
ANGPTL4媒介疾患または障害の改善、回復、阻害、または防止に用いるための医薬の製造における、請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントの使用。
【請求項27】
前記ANGPTL4媒介疾患または障害が、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、カイロミクロン血症、アテローム性脂質異常症、心血管疾患または障害、急性膵炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、糖尿病、および肥満から選択される、請求項26に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−515486(P2013−515486A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546229(P2012−546229)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/061987
【国際公開番号】WO2011/079257
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(597160510)リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】