説明

ヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサンを含有する水性2K−PUR系

本発明は、ヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサンを含有する水性2K−PUR系に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサンを含有する水性2K−PUR系に関する。
【0002】
結合剤としてポリイソシアネート成分をイソシアネート基に対して反応性の反応成分、殊にポリヒドロキシ成分と組み合わせて含有する2成分系被覆剤は、久しく公知である。この2成分系被覆剤は、硬質で弾性で耐摩耗性および溶剤安定性に調節されていてよい、価値の高い被覆の形成に適している。
【0003】
例えば、揮発性の有機成分の許容される含量に関連する法律の規定は、ますます厳しくなっているので、水性系がますます重要視されている。水性の2成分系被覆剤は、数年来、公知であり、例えば欧州特許出願公開第0358979号明細書中に記載されている。
【0004】
2K−PUR塗料系をポリジメチルシロキサン(PDMS)で変性することは、公知である。PDMSの高い表面張力によって、特殊な性質、例えば良好な表面湿潤、スリップ安定性および表面の簡単な清浄化が形成される(Reusmann in Farbe und Lack, 105, 第8/99卷, 第40〜47頁, Adams in Paintindia, October 1996, 第31〜37頁参照)。
【0005】
良好なPDMS組込を保証しかつPDMSの移行を十分に回避させるために、しばしば有機官能性PDMS型、例えばアルキレンアミン官能性PDMS誘導体またはアルキレンヒドロキシル官能性PDMS誘導体が使用される。このような塗料系は、例えばWO91/18954、欧州特許出願公開第0329260号明細書または米国特許第4774278号明細書中に記載されている。
【0006】
しかし、アミン官能性PDMS型は、このアミン官能性PDMS型を基礎とするポリウレタン系の可使時間が高い尿素形成傾向のために極めて短縮されているという欠点を有する。
【0007】
公知のヒドロキシ官能性PDMS型は、実際に改善された可使時間を生じるが、しかし、一般にポリイソシアネート成分との不適合性を有し、したがって均一な被膜を形成することができず、架橋は、不完全にのみ行なわれる。それによって、自由な結合されていないPDMSが塗料中に存在し、このPDMSは、次第に被覆から移動し、被覆の性質の劣化をまねく。
【0008】
米国特許第6475568号明細書には、エポキシ官能性PDMSオリゴマーと添加剤としての第1アミンまたは第2アミンとを反応させることによって得られるコポリオールを化粧品または織物柔軟剤として使用することが記載されている。塗料および被覆のための2K−PUR結合剤としての使用可能性は、記載されていなかった。
【0009】
WO 2004/022619には、エポキシ官能性PDMSをアミンと反応させることによって得られるポリ尿素系のための連鎖延長剤の使用が記載されている。エポキシ官能性PDMSとヒドロキシルアミンとの反応により相応するOH官能性化合物を生じることは、記載されていない。
【0010】
ところで、特殊なヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサンをNCO反応性結合剤成分の一部分として特殊なポリアクリレートポリオールとの組合せで使用する場合には、公知技術水準の欠点を回避することができることが見い出された。
【0011】
本発明の対象は、
A)400〜3000g/molの数平均分子量および1.8を上廻る平均OH官能価を有するヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサン、但し、このヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサンは、式(I):
【化1】

〔式中、
Rは、枝分れしていてよい脂肪族C1〜C20基であり、
1は、2〜10個の炭素原子を有する枝分れしていてよいヒドロキシアルキル基であり、
2は、水素であるかまたは基R1の定義に相当する〕で示される少なくとも1つの構造単位を有することによって特徴付けられるものとし、
および
B)500〜50000g/molの数平均分子量Mn、16.5〜264mg KOH/g固体樹脂のヒドロキシル価、0〜150mg KOH/g固体樹脂の酸価およびポリマーの固体樹脂100g当たり5〜417ミリ当量の化学結合したカルボキシレート基および/またはスルホネート基の含量を有する、ヒドロキシル基、ならびにスルホネート基および/またはカルボキシレート基を有するポリマーおよび
C)ポリイソシアネートを含有する水性組成物である。
【0012】
好ましくは、成分A)およびB)は、A)とB)の全体量に対して成分A)0.01〜20質量%および成分B)80〜99.99質量%、特に有利にA)0.1〜10質量%およびB)90〜99.90質量%が存在するように使用される。
【0013】
好ましくは、NCO基と成分A)〜C)のOH官能性化合物との比は、0.5:1〜5.0:1、特に有利に0.8:1〜2:1である。
【0014】
好ましくは、A)で使用されるヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサンは、1.9〜6の平均OH官能価を有する。
【0015】
このように使用することができるヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサンは、相応するエポキシ官能性ポリジメチルシロキサンをヒドロキシルアミンと特にエポキシ基対NH官能基の化学量論的比で反応させることにより得ることができる。
【0016】
そのために使用されるエポキシ官能性ポリジメチルシロキサンは、有利に1分子当たり1〜4個のエポキシ基を有する。更に、前記のエポキシ官能性ポリジメチルシロキサンは、有利に150〜2800g/mol、特に有利に250〜2000g/molの数平均分子量を有する。
【0017】
好ましいエポキシ官能性ポリジメチルシロキサンは、前記の分子量および1分子当たり平均で2個のエポキシ官能基を有する式(II)に相当するα,ω−エポキシ−ジメチルシロキサンである。このような製品は、例えばGE Bayer Silicones, Leverkusen, Deutschland, Tego, Essen, DeutschlandまたはWacker, Muenchen, Deutschlandから商業的に入手可能である。
【0018】
【化2】

【0019】
上記式中、
Rは、枝分れしていてよい脂肪族C1〜C20基であり、
nは、1〜25の整数である。
【0020】
使用されるヒドロキシルアミンは、式(III)
【化3】

〔式中、
1は、2〜10個の炭素原子を有する枝分れしていてよいヒドロキシアルキル基であり、
2は、水素であるかまたは基R1の定義に相当する〕に相当する。
【0021】
好ましいヒドロキシルアミンは、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミンおよびジプロパノールアミンである。特に好ましいのは、ジエタノールアミンである。
【0022】
成分A)の本発明に本質的な変性されたシロキサンを製造するために、前記種類のエポキシ官能性シロキサンは、場合によっては溶剤中に装入され、次に必要とされる量のヒドロキシルアミンまたは複数のヒドロキシルアミンの混合物と反応される。反応温度は、典型的には20〜150℃であり、遊離エポキシ基がもはや検出されなくなるまで実施される。
【0023】
好ましくは、前記のように得られる、成分A)のヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサンは、250〜2250g/molの数平均分子量を有する。
【0024】
成分B)は、ヒドロキシル基およびスルホネート基および/またはカルボキシレート基を含有するポリマーである。"スルホネート基および/またはカルボキシレート基"の表現は、脱プロトン化された陰イオン性スルホネート基またはカルボキシレート基ならびに相応するスルホン酸官能基およびカルボン酸官能基を含む。
【0025】
このポリマーは、適当なオレフィン系不飽和モノマーをラジカル重合させることによって得ることができ、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定された、500〜50000g/mol、有利に1000〜10000g/molの数平均分子量、16.5〜264mg KOH/g 固体、有利に33〜165mg KOH/g 固体のヒドロキシル価、0〜150mg KOH/g 固体、有利に0〜100mg KOH/g 固体の酸価(中和されていないスルホン酸基および/またはカルボキシル基に対して)および固体100g当たり5〜417ミリ当量、有利に24〜278ミリ当量のスルホネート基および/またはカルボキシレート基の含量を有する。
【0026】
好ましくは、ポリマーは、陰イオン性親水化のためにカルボキシレート基だけを有する。
【0027】
ポリマー樹脂B)は、本発明による水性組成物の製造のために一般に10〜50質量%、有利に20〜40質量%の水溶液および/または水性分散液の形で使用され、これら水溶液および/または水性分散液は、一般に10〜105mPa.s/23℃、特に100〜10000mPa.s/23℃の粘度および5〜10、特に6〜9のpH値を有する。
【0028】
ポリマーの分子量および陰イオン性基または遊離酸基、殊にカルボキシル基に対するポリマー含量に依存して、ポリマーを含有する水性系は、純粋な分散液、コロイド分散系分散液または分子分散系分散液であるが、しかし、一般に所謂"部分分散液"、即ち一部分が分子分散系であり、別の部分がコロイド分散系である水性系である。
【0029】
ヒドロキシル基を有するポリマーは、オレフィン系不飽和モノマーを自体公知の共重合によって製造され、この場合には、モノマーとしてヒドロキシル基を有するモノマーならびに酸基を有するモノマーが、一般に他のモノマーと一緒に共重合され、それにより存在する酸基は、少なくとも部分的に中和される。
【0030】
酸基を有するモノマーは、コポリマー中へのカルボキシル基および/またはスルホン酸基の組み込みの目的のために共用され、この場合このコポリマーは、親水性のためにポリマーの水溶性または水分散可能性を、殊に酸基の少なくとも部分的な中和後に保証する。共用される"酸性"コモノマーの量および最初に得られた"酸性"ポリマーの中和度は、酸価およびスルホネート基および/またはカルボキシレート基の含量に関連する上記の記載に相当する。
【0031】
一般に、"酸性"コモノマーは、使用されるモノマーの全質量に対して1〜30質量%、特に5〜20質量%の量で使用される。
【0032】
適当な"酸性"コモノマーは、原理的に少なくとも1個のカルボキシル基および/またはスルホン酸基を有する全てのオレフィン系不飽和の重合可能な化合物、例えば分子量範囲72〜207g/molのオレフィン系不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸またはスルホン酸基を有するオレフィン系不飽和化合物、例えば2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはこの種のオレフィン系飽和酸の任意の混合物である。
【0033】
ヒドロキシル基を有するモノマーは、その他の点で一般に0.5〜8質量%、特に1〜5質量%のポリマーのヒドロキシル基含量に相当する、ポリマーの上記のヒドロキシル価が生じるような量で共用される。
【0034】
一般に、ヒドロキシ官能性コモノマーは、使用されるモノマーの全質量に対して3〜75質量%、特に6〜47質量%の量で共用される。
【0035】
更に、勿論、記載された範囲内でヒドロキシ官能性モノマーの量は、1分子当たりの統計学的平均で少なくとも2個のヒドロキシル基を有するコポリマーが生じるように選択されることに注目しなければならない。
【0036】
好ましいヒドロキシル基を有するモノマーは、アルキル基中に特に2〜4個の炭素原子を有するアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートまたは3−ヒドロキシプロピルアクリレート、または2−ヒドロキシプロピルメタクリレートまたは3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ならびに異性体のヒドロキシブチルアクリレートまたはヒドロキシブチルメタクリレート、またはこの種のモノマーの任意の混合物である。
【0037】
コポリマーの製造の際に一般に共用されるオレフィン系不飽和モノマーの第3のグループとして、酸基を有しないし、ヒドロキシル基も有しないオレフィン系不飽和化合物を挙げることができる。このオレフィン系不飽和化合物には、例えばアルコール基中に1〜18個、特に1〜8個の炭素原子を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステル、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、前記アクリレートに相当するメタクリレート、スチレン、アルキル置換スチレン、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、ビニルアセテートまたはビニルステアレート、またはこの種のモノマーの任意のコング物が属する。また、エポキシ基を有するコモノマー、例えばグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレート、またはモノマー、例えばN−メトキシメチルアクリルアミドまたはN−メトキシメチルメタクリルアミドは、微少量で共用されてよい。
【0038】
酸基およびヒドロキシル基なしの最後に記載された第3のグループのモノマーは、一般に使用されるモノマーの全体量に対して90質量%まで、有利に40〜80質量%の量で共用される。
【0039】
ポリマーの製造は、重合によって常法により実施されることができる。特に、ポリマーの製造は、有機溶液中で行なわれる。連続的または非連続的な重合法が可能である。非連続的方法からは、バッチ法および供給法を挙げることができ、この場合には、後者の供給法が好ましい。供給法の場合、溶剤は、単独またはモノマー混合物の一部分と一緒に装入され、重合温度に加熱され、重合はモノマー装入液の場合にラジカル的に開始され、残りのモノマー混合物は、開始剤混合物と一緒に1〜10秒間、特に3〜6秒間の経過中に供給される。場合によっては、引続きなおさらに活性化され、重合は、少なくとも99%の変換率になるまで実施される。
【0040】
溶剤としては、例えば芳香族化合物、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、エステル、例えばエチルアセテート、ブチルアセテート、メチルグリコールアセテート、エチルグリコールアセテート、メトキシプロピルアセテート、エーテル、例えばブチルグリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルグリコールエーテル、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ハロゲン含有溶剤、例えば塩化メチレンまたはトリクロロモノフルオロエタンがこれに該当する。
【0041】
ラジカルによって開始される重合は、開始剤によって引き起こされてよく、この場合この開始剤のラジカル崩壊の半減期は、80〜180℃で0.01〜400分間である。一般に、共重合反応は、記載された温度範囲内、特に100〜160℃で103〜2×104ミリバールの圧力下で行なわれ、この場合正確な重合温度は、開始剤の種類により左右される。開始剤は、モノマーの全体量に対して0.05〜6質量%の量で使用される。
【0042】
適当な開始剤は、例えば脂肪族アゾ化合物、例えばアゾイソブチロニトリルならびに過酸化物、例えば過酸化ジベンゾイル、過ピバリン酸第三ブチル、第三ブチル−ペル−2−エチルヘキサノエート、第三ブチル−ペルベンゾエート、第三ブチルヒドロペルオキシド、ジ−第三ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドならびにジシクロヘキシルペルオキシジカーボネートおよびジベンゾイルペルオキシジカーボネートである。
【0043】
ポリマーの分子量を調節するために、通常の調節剤、例えばn−ドデシルメルカプタン、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジ(メチレントリメチロールプロパン)キサントゲンジスルフィドおよびチオグリコールが使用されてよい。この調節剤は、モノマー混合物に対して最大3質量%の量で添加される。
【0044】
重合の終結後、コポリマーは、水溶液または分散液に変換される。このために、有機ポリマー溶液は、多くの場合に予熱された水相中に導入され、同時に有機溶剤は、蒸留により、一般に真空を掛けながら除去される。良好な水溶性または水分散可能性を達成させるために、水相には、一般に中和剤、例えば無機塩基、アンモニアまたはアミンが添加されなければならない。無機塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが使用されてよく、アミンとしてアンモニアと共にトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミンが使用されてよい。中和剤は、化学量論的不足量ならびに化学量論的過剰量で使用されてよく、この場合には、スルホネート基および/またはカルボキシレート基、殊にカルボキシレート基の上記含量および上記酸価が生じる。更に、存在する酸基を完全に中和する場合には、酸価は、零になり、他方、スルホネート基および/またはカルボキシレート基の含量は、スルホン酸基またはカルボキシル基の元来の含量に相当する。部分中和の場合、スルホネート基および/またはカルボキシレート基の含量は、使用された中和剤の量に相当する。しかし、殊に化学量論的過剰量の中和剤を使用する場合には、ポリマーの高分子電解質特性によって明らかに粘度上昇を生じうる。得られた水溶液または分散液は、上記の濃度および粘度を有し、一般に5質量%未満、特に2質量%未満の残留溶剤の含量を有する。また、水より高温で沸騰する溶剤を実際に残留物がないように除去することは、共沸蒸留によって可能である。
【0045】
成分C)の適当なポリイソシアネートは、少なくとも2の平均NCO官能価および少なくとも140g/molの分子量を有する有機ポリイソシアネートである。特に、(i)140〜300g/molの数平均分子量範囲の変性されていない有機ポリイソシアネート、(ii)300〜1000g/molの数平均分子量の塗料ポリイソシアネートならびに(iii)1000g/molを上廻る数平均分子量を有するウレタン基含有NCOプレポリマーまたは(i)〜(iii)からの混合物は、良好に好適である。
【0046】
グループ(i)のポリイソシアネートの例は、1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサンまたは2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、1−イソシアナト−1−メチル−4−(3)−イソシアナトメチルシクロヘキサン、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,10−ジイソシアナトデカン、1,12−ジイソシアナト−ドデカン、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネートおよびシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート異性体、トリイソシアナトノナン(TIN)、2,4−ジイソシアナトトルエンまたはその2,6−ジイソシアナトトルエンとの混合物、有利に混合物に対して35質量%までの2,6−ジイソシアナトトルエンを有する、2,4−ジイソシアナトトルエンとの混合物、またはジフェニルメタン系列の工業用ポリイソシアネート混合物または記載されたイソシアネートの任意の混合物である。この場合には、有利にジフェニルメタン系列のポリイソシアネートが特に有利に異性体混合物として使用される。
【0047】
グループ(ii)のポリイソシアネートは、自体公知の塗料ポリイソシアネートである。"塗料ポリイソシアネート"の概念は、本発明の範囲内で、(i)で例示的に記載された種類の簡単なジイソシアネートを自体公知のオリゴマー化反応によって得られる化合物または化合物の混合物である。適当なオリゴマー化反応は、例えばカルボジイミド化、二量体化、三量体化、ビウレット化、尿素形成、ウレタン化、アロファネート化および/またはオキサジアジン構造の形成下での環化である。しばしば、"オリゴマー化"の場合、複数の記載された反応は、同時にかまたは順次に実行される。
【0048】
好ましくは、"塗料ポリイソシアネート"(ii)は、ビウレットポリイソシアネート、イソシアヌレート含有ポリイソシアネート混合物、ウレタン基含有および/またはアロファネート基含有のポリイソシアネートであるかまたは簡単なジイソシアネートを基礎とするイソシアヌレート基含有およびアロファネート基含有のポリイソシアネート混合物である。
【0049】
この種の塗料ポリイソシアネートの製造は、公知であり、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第1595273号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3700209号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公開第3900053号明細書または欧州特許出願公開第0330966号明細書、欧州特許出願公開第0259233号明細書、欧州特許出願公開第0377177号明細書、欧州特許出願公開第0496208号明細書、欧州特許出願公開第0524501号明細書または米国特許第4385171号明細書中に記載されている。
【0050】
グループ(iii)のポリイソシアネートは、上記の例示的に記載された種類の簡単なジイソシアネートを基礎としおよび/または一面で塗料ポリイソシアネートを基礎とし、他面300g/molを上廻る数平均分子量の有機ポリヒドロキシ化合物を基礎とする、自体公知のイソシアヌレート基を有するプレポリマーである。グループ(ii)のウレタン基含有塗料ポリイソシアネートは、62〜300g/molの数平均分子量範囲の低分子量ポリオールの誘導体であり、適当なポリオールは、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンまたはこれらのアルコールの混合物であり、グループ(iii)のNCOプレポリマーの製造のために、300g/molを上廻る、有利に500g/molを上廻る、特に有利に500〜8000g/molの数平均分子量を有するポリヒドロキシル化合物が使用される。この種のポリヒドロキシル化合物は、殊に1分子当たり2〜6個、有利に2〜3個のヒドロキシル基を有しかつエーテルポリオール、エステルポリオール、チオエーテルポリオール、カーボネートポリオールおよびポリアクリレートポリオール、およびこの種のポリオールからの混合物からなるグループから選択されるものである。
【0051】
NCOプレポリマー(iii)を製造する場合、記載された高分子量ポリオールは、記載された低分子量ポリオールとの混合物で使用されてよく、したがって直接にウレタン基を有する低分子量の塗料ポリイソシアネート(ii)と高分子量のNCOプレポリマー(iii)との混合物が生じ、この混合物は、同様に本発明による出発成分(C)として適している。
【0052】
NCOプレポリマー(iii)またはその塗料ポリイソシアネート(ii)との混合物を製造するために、上記に例示的に記載された種類のジイソシアネート(i)または(ii)で例示的に記載された種類の塗料ポリイソシアネートは、高分子量のヒドロキシル化合物またはその例示的に記載された種類の低分子量ポリヒドロキシル化合物との混合物と1.1:1〜40:1、有利に2:1〜25:1のNCO/OH当量比を維持しながらウレタン形成下に反応される。場合によっては、過剰量の蒸留可能な出発ジイソシアネートを使用する際に、この出発ジイソシアネートは、反応に引き続いて蒸留により除去されることができ、したがってモノマー不含のNCOプレポリマー、即ち出発ジイソシアネート(i)と純粋なNCOプレポリマー(iii)との混合物が存在し、この混合物は、同様に成分(A)として使用されてよい。
【0053】
脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族のイソシアネート、特に有利に脂肪族または脂環式イソシアネートを基礎とする遊離イソシアネート基を有する低粘稠な親水化されたポリイソシアネートは、使用されてもよい。
【0054】
ポリイソシアネートの親水化は、例えば不足量の1価の親水性ポリエーテルアルコールとの反応によって可能である。この種の親水化されたポリイソシアネートの製造は、欧州特許出願公開第0540985号明細書、第3頁第55行〜第4頁第5行に記載されている。欧州特許出願公開第959087号明細書、第3頁第39〜51行に記載された、モノマー貧有のポリイソシアネートとポリエチレンオキシドポリエーテルアルコールとをアロファネート化条件下で反応させることによって製造される、アロファネート基含有ポリイソシアネートは、良好に好適である。また、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10007821号明細書、第2頁第66行〜第3頁第5行に記載された、トリイソシアナトノナンを基礎とする水分散可能なポリイソシアネート混合物は、適しており、ならびに例えばドイツ連邦共和国特許第10024624号明細書、第3頁第13〜33行に記載されているようなイオン性基(スルホネート基、ホスホネート基)で親水化されたポリイソシアネートも適している。同様に、市販の乳化剤の添加による親水化も可能である。
【0055】
好ましい親水性ポリイソシアネートC)は、スルホネート基含有ポリイソシアネートである。このようなスルホネート基含有ポリイソシアネートは、有利に基礎となるポリエーテルに対して少なくとも1.8の平均イソシアネート官能価、4.0〜26.0質量%のイソシアネート基含量(NCOとして計算した;分子量=42)、0.1〜7.7質量%の結合されたスルホン酸およびスルホネート基の含量(SO3-として計算した;分子量=80)および0〜19.5質量%のポリエーテル鎖内で結合された酸化エチレン単位の含量(C22Oとして計算した;分子量=44)を有する。
【0056】
前記ポリイソシアネートがポリエーテル鎖を有する場合には、このポリイソシアネートは、統計的平均で5〜35個の酸化エチレン単位を含有する。
【0057】
この場合、スルホネート基は、対イオンとして有利に第3アミンからプロトン化によって形成されたアンモニウムイオンを有する。スルホン酸基およびスルホネート基からの総和と第3アミンおよびこれから誘導されるプロトン化されたアンモニウムイオンからの総和との比は、典型的には0.2〜2.0である。
【0058】
第3アミンの例は、モノアミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、または第3ジアミン、例えば1,3−ビス−(ジメチルアミノ)−プロパン、1,4−ビス−(ジメチルアミノ)−ブタンまたはN,N′−ジメチルピペラジンである。しかし、適してはいるが、あまり好ましくはない中和アミンは、イソシアネートに対して反応性の基を有する第3アミン、例えばアルカノールアミン、例えばジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンである。好ましいのは、ジメチルシクロヘキシルアミンである。
【0059】
このような変性されたポリイソシアネートの製造は、WO−A 01−88006中に詳細に記載されている。
【0060】
原則的にC)においては、封鎖されたNCO基を有する前記種類のポリイソシアネートが使用されてもよい。しかし、好ましくは、前記のポリイソシアネートが使用され、この場合封鎖は省略されている。
【0061】
有利にC)で使用されるポリイソシアネートは、前記の親水化されたポリイソシアネートである。
【0062】
必要な場合には、ポリイソシアネートは、微少量の不活性溶剤との混合物で使用されてよく、粘度は、記載された範囲内の値に減少される。しかし、この種の溶剤の量は、最終的に得られる本発明による被覆剤中で水量に対して最大20質量%の溶剤が存在するように最大に定められ、この場合には、場合によりポリマー分散液またはポリマー溶液中になお存在する溶剤も算入される。ポリイソシアネートのための添加剤として適当な溶剤は、例えば芳香族炭化水素、例えば"溶剤ナフサ"であるかまたは既に上記に例示的に記載された種類の溶剤でもある。
【0063】
また、本発明の対象は、成分A)およびB)の水溶液または水性分散液中にポリイソシアネート成分C)が乳化されているような塗料を製造するための方法であり、この場合成分A)〜C)の量比は、NCO/OH当量比が0.5:1〜5:1、有利に0.8:1〜2:1であるように定められている。
【0064】
ポリイソシアネート成分C)の添加前に、ポリマー成分A)、即ちポリマーの分散液または溶液には、塗料技術の通常の助剤および添加剤が組み込まれていてよい。このためには、内部離型剤、充填剤、染料、顔料、難燃剤、加水分解保護剤、殺菌剤、流展助剤、溶剤、酸化防止剤、消泡剤、顔料分布のための分散助剤および類似物が属する。
【0065】
こうして得られた本発明による塗料は、現在、高められた特性プロフィールを有する溶剤含有、溶剤不含または別の種類の水性塗料系および水性ラッカー系が使用される、実際に全ての使用分野が適している。例えば:実際に全ての鉱物質建築材料表面の被覆、例えば石灰および/またはセメントに結合した漆喰、石膏を含有する表面、繊維−セメント建築材料、コンクリート、木材および木材材料、例えばパーティクルボード、木質繊維板ならびに紙の塗装および封止;金属表面の塗装;アスファルト含有またはビチューメン含有の街路敷き材(Strassenbelaege)の塗装;多種多様なプラスチック表面の塗装および封止。
【0066】
実施例:
次の実施例において、全ての百分率の記載は、質量%に関するものである。
【0067】
動的粘度を23℃で回転粘度計(ViscoTester(登録商標)550. Thermo Haake GmbH, D-76227 Karlsruhe)で測定した。
【0068】
OH価をDIN 53240 T.2により測定した。
【0069】
エポキシ基含量をDIN 16945により測定し、この場合には、本発明の範囲内でエポキシ基含量は、42g/molの分子量に関連した。
【0070】
光沢度の測定をDIN 67530により実施した。
【0071】
曇り度をDIN 67530により測定した。
【0072】
ケーニッヒ(Koenig)による振子硬度をDIN 53157により7日間の貯蔵後に室温で測定した。
【0073】
簡単な清浄化の性質を、赤色のルモカラーパーマネントマーカー(Lumocolor Permanent-Marker)350(Staedler, Nuernberg, DE)で塗り、1分間作用させることにより測定した。引続き、このマーキングを乾燥したパルプ紙およびエタノールで湿潤させたパルプ紙で除去することを試みた。
【0074】
エダクト
MPA:メトキシプロピルアセテート
DBTL:ジブチル錫ジラウレート
スルフィノール(Surfynol)104BC(ブタングリコール中50%):2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、Lanxess, Leverkusen, DE
ボルヒゲル(Borchigel PW 25)(プロパングリコール/水中25%):ポリウレタンを基礎とする非イオノゲン濃稠化剤, Bayer MaterialScience AG, Leverkusen, DE
バイシロン(Baysilone)VP AI 3468(ブタングリコール中10%):表面添加剤ポリエーテルポリシロキサン、Brochers GmbH, Langenfeld DE
ソルベントナフサ100:芳香族化合物含有溶剤。
【0075】
ポリオールIの製造:
700g/molの数平均分子量およびR=CH2を有する、式
【化4】

で示されるエポキシド770gを装入し、ジエタノールアミン231gを添加した。引続き、この混合物を100℃で2時間攪拌した。この生成物は、エポキシ基不含で370mg KOH/gのOH価および23℃で2900mPasの粘度を有していた。
【0076】
比較ポリオールI:
比較のために、式
【化5】

で示されるポリオールを使用し、この場合このポリオールの性質は、次に表中に記載されている:
【表1】

【0077】
ポリオールII:水希釈可能なOH官能性ポリアクリレート分散液、水/ソルベントナフサ100/Dowanol PnB中で45質量%、ジメチルエタノールアミン/トリエタノールアミンで中和された、3.9%のOH含量、128mg KOH/gのOH価および2000mPa.sの粘度;Bayhydrol XP 2470, Bayer Materialscience AG, Leverkusen, DE。
【0078】
ポリイソシアネート:20.6%のNCO含量および23℃で5400mPa.sの粘度を有する、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを基礎とする親水性の脂肪族ポリイソシアネート;Bayhydur XP 2487/1, Bayer Materialscience AG, Leverkusen, DE。
【0079】
塗料の製造
成分に次の表の記載により市販の塗料添加剤、触媒およびポリイソシアネートを攪拌しながら攪拌し、引続き50μmのナイフでガラス上に塗布し、かつ100℃で60分間硬化させた。
【0080】
【表2】

【0081】
本発明による実施例1は、平滑な表面および良好な簡単な清浄化の性質を有する澄明な被膜を生じる。シリコン成分なしの実施例2は、光沢のない表面を有する被膜を生じ、実施例1と比較して劣悪な簡単な清浄化の性質を有する。実施例3〜6は、実施例1よりも劣悪な簡単な清浄化の性質を有する。更に、実施例3および4からの被膜は、油状の表面を有し、このことは、シリコンジオールがポリウレタンマトリックス中に組み込まれていないことを示す。比較例5および6は、光沢のない表面を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)400〜3000g/molの数平均分子量および1.8を上廻る平均OH官能価を有するヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサンを含有する水性組成物において、このヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサンが、式(I):
【化1】

〔式中、
Rは、枝分れしていてよい脂肪族C1〜C20基であり、
1は、2〜10個の炭素原子を有する枝分れしていてよいヒドロキシアルキル基であり、
2は、水素であるかまたは基R1の定義に相当する〕で示される少なくとも1つの構造単位を有し、
および
B)500〜50000g/molの数平均分子量Mn、16.5〜264mg KOH/g固体樹脂のヒドロキシル価、0〜150mg KOH/g固体樹脂の酸価およびポリマーの固体樹脂100g当たり5〜417ミリ当量の化学結合したカルボキシレート基および/またはスルホネート基の含量を有する、ヒドロキシル基、ならびにスルホネート基および/またはカルボキシレート基を有するポリマーおよび
C)ポリイソシアネートを含有することを特徴とする、前記水性組成物。
【請求項2】
成分A)およびB)はA)とB)の全体量に対してA)0.1〜10質量%およびB)90〜99.90質量%が存在するように使用されている、請求項1記載の水性組成物。
【請求項3】
NCO基と成分A)〜C)のOH官能性化合物との比が0.8:1〜2:1である、請求項1または2記載の水性組成物。
【請求項4】
基R1とR2とが同一であり、かつHO−CH2−CH2−を表わす、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が助剤および添加剤として、内部離型剤、充填剤、染料、顔料、難燃剤、加水分解保護剤、殺菌剤、流展助剤、溶剤、酸化防止剤、消泡剤および/または顔料分布のための分散助剤を含有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物から得られる、被覆、接着剤またはパッキング材料。
【請求項7】
請求項6記載の被覆または接着剤で被覆されたかまたは接着された支持体。

【公表番号】特表2009−507089(P2009−507089A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528388(P2008−528388)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008277
【国際公開番号】WO2007/025670
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(504213548)バイエル マテリアルサイエンス アクチエンゲゼルシャフト (54)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【住所又は居所原語表記】D−51368 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】