説明

ヒンジ体及びヒンジ体で連結された車両用ボード

【課題】ヒンジ体で連結された一方の部材及び他方の部材を切り離すことができるとともに、多様な機能を付加することを可能にする。
【解決手段】第1部材31と第2部材32との間に架け渡されて配置されるヒンジ体34であって、第1部材31又は第2部材32の一方に対し固定される固定部(固定ねじ)57,57を備えた第1ベース部51と、他方に形成される係止部(ヒンジ係止ピン)37,37と係脱自在に係合する係合部(異形孔)65,65を備えた第2ベース部52と、第1ベース部51と第2ベース部52とを折り畳み自在に連結するヒンジ部54とからなり、第1ベース部51及び第2ベース部52が折り畳まれた状態で両者を結合する保持部85,85が第1ベース部51及び第2ベース部52間に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の部材から他方の部材を着脱可能に構成されたヒンジ体、及びヒンジ体で連結された車両用ボードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒンジ体として、樹脂にて一体的に形成されたもの、若しくは一方の部材に他方の部材をヒンジ軸(軸部材)を介して転結されるものが知られている。
この種のヒンジ体は、使用される部材の用途に応じて適宜選択されるものであった。
【0003】
このようなヒンジ体として、熱可塑性樹脂で一体成形されたもの及び金属部材で分割構成されたものが知られている(例えば、特許文献1−2参照。)。
また、ヒンジ体で連結された車両用ボードとして、熱可塑性樹脂で一体成形されたものが知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2001−26023公報
【特許文献2】実開平6−20837号公報
【0004】
特許文献1のヒンジ体は、第1のプレート部と、第2のプレート部と、これらの第1・第2のプレート部を繋ぐヒンジ部とから構成され、第1・第2のプレート部及びヒンジ部が樹脂で一体成形されたものである。
【0005】
特許文献2のヒンジ体は、第1のプレート部と、第2のプレート部と、これらの第1・第2のプレート部を回転自在に連結する軸部材とから構成され、これらの第1・第2のプレート部及び軸部材は金属にて形成されたものである。
【0006】
しかし、特許文献1のヒンジ体では、第1・第2のプレート部及びヒンジ部が樹脂で一体成形されたものであり、第1のプレート部に取付ける一方の部材と、第2のプレート部に取付ける他方の部材とを切り離すことはできない。
また、特許文献2ヒンジ体では、第1・第2のプレート部及び軸部材の3部品から構成されているので、第1のプレート部に取付ける一方の部材と、第2のプレート部に取付ける他方の部材とを切り離すことはできるものの、部品点数が多いので組立性の低下を招く。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ヒンジ体を容易に製造することができ、ヒンジ体で連結された一方の部材及び他方の部材を切り離すことができるとともに、多様な機能を付加したヒンジ体を提供することを課題とするとともに、このヒンジ体で連結され、多様な用途に使用できる車両用ボードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、第1部材と第2部材との間に架け渡されて配置されるヒンジ体であって、第1部材又は第2部材の一方に対し固定される固定部を備えた第1ベース部と、他方に形成される係止部と係脱自在に係合する係合部を備えた第2ベース部と、第1ベース部と第2ベース部とを折り畳み自在に連結するヒンジ部とからなり、第1ベース部及び第2ベース部が折り畳まれた状態で両者を結合する保持部が第1ベース部及び第2ベース部間に形成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、ヒンジ部の対向側で第2ベース部にサブヒンジ部を介して第3ベース部が形成され、第2ベース部及び第3ベース部間に、第3ベース部を第2ベースに係合する中間係合部が形成され、第3ベース部に、係合部から係止部の移動を規制することを補助する係合補助部が形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、保持部が、第3ベース部を第1ベース部及び第2ベース部間に挟むように保持可能としたものであることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、ヒンジ部が、第1ベース部及び第2ベース部と一体成形された樹脂ヒンジであることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、係合補助部に、弾性変形により係止部を押圧する押圧部を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、第1ベース部、第2ベース部及び第3ベース部が、それぞれ略同面積の長方形状に形成されたことを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、第2ベース部に、第3ベース部に形成される係合補助部を折り畳み状態で収容可能とする収容部を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項8に係るヒンジ体で連結された車両用ボードの発明は、車室壁面若しくは車体フロアの一部を形成する第1ボード部及び第2ボード部と、これらの第1ボード部及び第2ボード部を折り畳み自在に連結するヒンジ体とを備えた車両用ボードにおいて、ヒンジ体が、第1ボード部又は第2ボード部の一方に対し固定される固定部を備えた第1ベース部と、他方に形成される係止部と係脱自在に係合する係合部を備えた第2ベース部と、第1ベース部と第2ベース部とを折り畳み自在に連結するヒンジ部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、ヒンジ体は、第1部材と第2部材との間に架け渡されて配置される。
ヒンジ体は、第1部材又は第2部材の一方に対し固定される固定部を備えた第1ベース部と、他方に形成される係止部と係脱自在に係合する係合部を備えた第2ベース部と、第1ベース部と第2ベース部とを折り畳み自在に連結するヒンジ部とからなる。
第1ベース部及び第2ベース部が折り畳まれた状態で両者を結合する保持部が第1ベース部及び第2ベース部間に形成されたので、ヒンジ体を折り畳み状態で保持することができる。すなわち、第1部材又は第2部材をヒンジ体から外した状態で、第1部材又は第2部材の一方から第2ベース部が突出することを防止できる。
【0017】
請求項2に係る発明では、ヒンジ部の対向側で第2ベース部にサブヒンジ部を介して第3ベース部が形成され、第2ベース部及び第3ベース部間に、第3ベース部を第2ベースに係合する中間係合部が形成されたので、第2ベース部に第3ベース部を係合させておくことができる。
また、第3ベース部に、係合部から係止部の移動を規制することを補助する係合補助部が形成されたので、不用意な外れを阻止することができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、保持部が、第3ベース部を第1ベース部及び第2ベース部間に挟むように保持可能としたものなので、ヒンジ体に第3ベース部を備える構成としても、折り畳み状態においても第3ベース部が邪魔になることはない。
【0019】
請求項4に係る発明では、ヒンジ部が、第1ベース部及び第2ベース部と一体成形された樹脂ヒンジであるので、ヒンジ体の製造が容易となる。
【0020】
請求項5に係る発明では、係合補助部に、弾性変形により係止部を押圧する押圧部を備えたので、ヒンジ体に対する第1部材又は第2部材のガタを防止することができ、第1部材と第2部材とを強固にヒンジ結合することができる。
【0021】
請求項6に係る発明では、第1ベース部、第2ベース部及び第3ベース部が、それぞれ略同面積の長方形状に形成されたので、ヒンジ体を折り畳み状態に保持するときに収まりよく、保持状態での見栄えを向上することができる。
【0022】
請求項7に係る発明では、第2ベース部に、第3ベース部に形成される係合補助部を折り畳み状態で収容可能とする収容部を備えたので、係合補助部の形状を任意に形成することができ、係合補助部の剛性の向上を図ることができる。
【0023】
請求項8に係る発明では、車両用ボードに、車室壁面若しくは車体フロアの一部を形成する第1ボード部及び第2ボード部と、これらの第1ボード部及び第2ボード部を折り畳み自在に連結するヒンジ体とを備える。
ヒンジ体に、第1ボード部又は第2ボード部の一方に対し固定される固定部を備えた第1ベース部と、他方に形成される係止部と係脱自在に係合する係合部を備えた第2ベース部と、第1ベース部と第2ベース部とを折り畳み自在に連結するヒンジ部とを備えたので、車両用ボードの第1ボード部若しくは第2ボード部を取り外すことで、車両用ボードのサイズ変更をすることができる。さらに、外した第1ボード部又は第2ボード部の一方を他の用途に使用することができ、利用形態の拡大を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るヒンジ体を採用するボード部材を搭載した車両の断面図であり、図2は図1に示された車両の斜視図であり、図3は図1に示された車両のシート収納状態を示す斜視図である。
【0025】
車両10は、車体11の前部にエンジンルーム(不図示)が設けられ、車体11の後部に車室12が設けられる2ボックスの車両であり、車室12の下部が構成される車体フロア13に、車室12の前方からこの順で、運転席及び助手席からなる1列目シート(不図示)、2列目シート14(図2参照)、3列目シート15及び荷室16が配置されている。
【0026】
3列目シート15は、上側フロア21の床面下に収納可能な座席であり、その収納状態において、上側フロア21の一部を形成可能に折り畳み状態で配置される平板状部28を備える。また、3列目シート15は、収納状態で後述するボード部材27の配置部29を被覆可能とした。さらに、3列目シート15(以下「座席15」と記載する)は、乗員が着座する複数の着座部17,17を備える。
ボード部材27の配置部29は、凹部上壁であり、実施例では収納凹部26に被せられる。
【0027】
車体フロア13は、車室12の前方に形成される下側フロア22と、この下側フロア22から一段高く立ち上げたキックアップ部23と、このキックアップ部23の後方に形成される上側フロア21とから構成される。すなわち、下側フロア22には、1列目シート(不図示)及び2列目シート14が配置され、上側フロア21に座席15が上側フロア21の床面下に収納可能に配置され、座席15の後方は荷室16が形成される。
【0028】
荷室16には、工具やスペヤタイヤ(不図示)などを収納する収納凹部26が形成され、この収納凹部26にボード部材(車両用ボード若しくは荷室ボード)27が被される。
【0029】
ボード部材27は、第1部材(第1ボード部)31と、第2部材(第2ボード部)32と、これらの第1・第2部材31,32を切り離し自在に連結するヒンジ体33とから構成され、切り離された第1部材31は座席15の収納時にキックアップ部23前方の下側フロア22に移設され、上側フロア21と平坦に連続するフロアボードとして使用される。
すなわち、第1部材31は、車体フロア13上に配置される内装部材でもある。
【0030】
キックアップ部(前壁)23には、フロアボードとして使用される第1部材31を保持する車両用ブラケット34,34が設けられている。
以下、ボード部材27の詳細を説明する。
【0031】
図4は本発明に係るヒンジ体を採用されたボード部材の斜視図であり、図5は図4に示されたボード部材を裏返した状態を示す斜視図であり、図6は図4に示されたボード部材を切り離した状態を示す斜視図である。
【0032】
ボード部材27は、車体前方に位置する第1部材(フロント側ボード)31と、車体後方に位置する第2部材(リヤ側ボード)32と、これらの第1・第2部材31,32を折畳み可能に且つ切り離し可能に連結する2個のヒンジ体33,33とからなる。
第1部材31は、複数のボードピースの1枚であるとともに移設可能部である。第2部材32は、複数のボードピースの1枚である。
【0033】
第1部材31は、板状の本体部35と、この本体部35の裏面に折畳み可能に設けられた左右の脚部36,36と、ヒンジ体33側に設けられ、ヒンジ体33に係止する複数の係止部(ヒンジ係止ピン)37と、ヒンジ体33と対向する側に設けられ、キックアップ部23に設けられた車両用ブラケット34,34に係止する左右のフック38,38とからなる。
【0034】
第1部材31は、1個のヒンジ体33に対して2個のヒンジ係止ピン37,37が設けられ、ヒンジ体33に切り離し自在に接続される。
第2部材32は、ヒンジ体33に固定ねじ(固定具)57,57で固定され、ヒンジ体33を介して第1部材31に接続されている。
【0035】
板状の本体部35は、荷室16の収納凹部26を覆う荷室ボード機能と、下側フロア22に立脚し、上側フロア21と連続面を形成するフロアボード機能とを有する。
左右の脚部36,36は、開脚して下側フロア22に接地させ、板状の本体部35を自立支持する。
【0036】
左右のフック38,38は、車両用ブラケット34,34に係止することで、車体前後方向、車幅方向及び高さ方向の本体部35の移動を規制する。
【0037】
図7は図5の7部拡大図であり、図8は図7の8−8線断面図であり、図9は本発明に係るヒンジ体を展開した状態で示す斜視図である。
【0038】
図9に示されたように、ヒンジ体33は、樹脂で一体形成された部材であり、第2部材32に固定される第1ベース部51と、第1部材31にスライド可能に係合される第2ベース部52と、これらの第1ベース部51と第2ベース部52とを折り畳み自在に連結するヒンジ部54と、このヒンジ部54の対向側で前記第2ベース部52にサブヒンジ部55を介して折り畳み自在に連結した第3ベース部53とからなる。
【0039】
第1ベース部51、第2ベース部52及び第3ベース部53は、それぞれ略同面積の長方形状に形成される。
ヒンジ部54は、第1ベース部51及び第2ベース部52に一体成形された樹脂ヒンジであり、サブヒンジ部55は、第2ベース部52及び第3ベース部53に一体成形された樹脂ヒンジである。
【0040】
第1ベース部51は、図8に示された固定ねじ57,57(一方不図示)で固定する固定部(貫通孔)58,58と、これらの固定部58,58にそれぞれ形成され、固定ねじ57,57のねじ頭57a,57a(一方不図示)を落とし込むざくり部59,59と第2ベース部52を第1ベース部51側に折り畳んだときに、第2ベース部52を所定位置で止める第1ベース側凸部61,61と、この第1ベース側凸部61,61の内側に形成され、第2ベース部52を第1ベース部51側に係合させる内側突起62,62(一方不図示)と、第1部材(フロント側ボード)31の切り離し時に人手を掛ける第1ベース部側手掛かり部63とが形成される。
【0041】
第2ベース部52は、図8に示されたヒンジ係止ピン37,37に係止されるとともに、第3ベース部53の係合補助部(突部)81,81が収納される係合部(異形孔)65,65と、第3ベース部53を第2ベース部52側に折り畳んだときに、第3ベース部53を所定位置で止める第2ベース部側凸部66,66と、第1ベース部51の第1ベース部側凸部61,61に当接させる第2ベース部側当接部67,67と、第1ベース部51の内側突起62,62に係合させる突出部68,68と、第3ベース部53が係合する係合孔69,69とが形成される。
【0042】
異形孔65は、鍵穴形状を呈し、ヒンジ係止ピン37の頭部89の挿入を許容するとともに、係合補助部(突部)81を第3ベース部53の折り畳み状態で収容可能とする収容部73と、図8に示されたヒンジ係止ピン37のピン部88をスライドさせて係合するU字孔部74と、これらの収容部73の上縁及びU字孔部74の上縁に形成され、ヒンジ係止ピン37の係止を容易にする面取部75とが形成される。
【0043】
第3ベース部53は、第2ベース部52の蓋体としての機能を担い、第2ベース部側凸部66,66に当接する第3ベース部側当接部78,78と、第2ベース部52の係合孔69,69に係合する第3ベース部側係合部79,79と、収容部73,73に収納される係合補助部(突部)81,81と、ヒンジ係止ピン37の頭部89を逃がす逃がし部82,82と、第2部材(リヤ側ボード)32の着脱時に人手を掛ける第3ベース部側手掛かり部83とが形成される。
係合補助部81は、ヒンジ係止ピン37側に形成され、弾性変形によりヒンジ係止ピン37をU字孔部74のU字の底に向けて押圧する押圧部84が形成される。
【0044】
第1ベース部51の内側突起62及び第2ベース部52の突出部68で、第1ベース部51及び第2ベース部52が折り畳まれた状態で両者を結合する保持部85,85(一方不図示)が形成される。
第2ベースの係合孔69及び第3ベース部側係合部79で、第3ベース部53を第2ベースに係合する中間係合部86,86(一方不図示)が形成される。
【0045】
ヒンジ係止ピン37は、図8に示されたように、第1部材31にねじ込まれるねじ部87と、このねじ部87の上部に形成されU字孔部74に係止する段部88と、この段部88の上部に形成された頭部89とからなる。
【0046】
図10(a)〜(c)は図9に示されたヒンジ体の脱着手順前半の説明図である。
(a)において、図7に示されるヒンジ体33の使用状態から、第3ベース部53を、第2ベース部52から矢印a1の如く離脱する。
【0047】
(b)において、第1部材(フロント側ボード)31を、第2部材(リヤ側ボード)32及びヒンジ体33に対して矢印a2の如くスライドさせる。
【0048】
(c)において、ヒンジ体33に対して第1部材31を矢印a3の如く下方に移動し、ヒンジ係合ピン37,37をヒンジ体33の収容部73,73から抜き、第1部材31を、第2部材32及びヒンジ体33から切り離す。
【0049】
図11(a)〜(c)は図9に示されたヒンジ体の脱着手順後半の説明図である。
(a)において、第3ベース部53を、第2ベース部52に矢印a4の如く折り畳み、第2ベース部側凸部66,66に第3ベース部側当接部78,78を当接させるとともに、第2ベース部52の係合孔69,69に第3ベース部側係合部79,79を係合する。
【0050】
(b)において、第2ベース部52を、第1ベース部51に矢印a5の如く折り畳み、第1ベース部側凸部61,61に第2ベース部側当接部67,67を当接させるとともに、第1ベース部51の内側突起62,62(一方不図示)に第2ベース部52の突出部68,68を係合する。
【0051】
(c)において、第2部材32側に第2・第3ベース部52,53を折り畳んだ状態が示され、第1部材31が外されたヒンジ体33は、第2部材32からヒンジ体33が飛び出した状態から第2部材32の内部に収納されるので、ヒンジ体33が邪魔になることはない。
【0052】
図12(a),(b)は図4に示されたボード部材の第2部材の説明図である。
(a)に示されたように、第2部材32及びヒンジ体33から第1部材31(図5参照)が外された直後の第2部材32では、ヒンジ体33が第2部材32から突出している状態なので、ヒンジ体33が他部品に引っ掛かることがあり、第2部材32の扱い性がよくない。
そこで、(b)に示されたように、第2部材32にヒンジ体33を収納することで、第2部材32の扱い性が向上する。
【0053】
図13(a)〜(c)は図4に示された第1部材のセット手順前半の説明図である。
(a)に示されたように、キックアップ部(前壁)23に第1部材31を係止する2個の車両用ブラケット34,34が取付けられている。
(b)において、キックアップ部23に切り離した第1部材31を臨ます。
(c)において、車両用ブラケット34,34の第1支持部101,101に、第1部材31のフック38,38を矢印b1,b1の如く掛ける。
【0054】
図14(a)〜(c)は図4に示された第1部材のセット手順後半の説明図である。
(a)において、第1部材31を、車両用ブラケット34,34の第1支持部101,101(図13(b)参照)を支点として矢印b2の如く回転する。
【0055】
(b)において、第1部材31のフック側端部39を、車両用ブラケット34,34の第2支持部102,102に嵌合させ、第1部材31のフック側端部39を、車両用ブラケット34,34の第1支持部101,101及び第2支持部102,102間に挟み込む。
【0056】
(c)において、第1部材31の左右の脚部36,36を矢印b3,b3の如く開き、第1部材31の本体部35を自立させる。
【0057】
次に、車両用ブラケット34の詳細構造を説明する。
図15は図1に示される車両の第1部材及び車両用ブラケットの下方から見た斜視図であり、図16は図1に示される車両用ブラケットの斜視図であり、図17は図1に示される第1部材及び車両用ブラケットの側面断面図であり、図18は図1に示される第1部材及び車両用ブラケットの寸法関係を示す説明図である。
【0058】
図15〜図17に示されたように、車両用ブラケット34は、弾性変形可能な樹脂にて形成されたものであり、キックアップ部23に係止する基部103と、この基部103から平面視で略U字状に延出され、第1部材31に形成されたフック38(図6参照)と係合して第1部材31の上下それぞれの方向への移動を規制する第1支持部101と、この第1支持部101の根本から平面視で略U字状に延出され、第1支持部101との間に第1部材(フロント側ボード)31のフック側端部39を挟み込むように、上方から支持する第2支持部102とからなる。
車両用ブラケット34は、車幅方向に並列配置される複数の着座部17,17(図2参照)間で且つ座席15の下部に車両前方に向けて取付けられる。
【0059】
基部103は、キックアップ部(前壁)23に取付ける上・下係止片105,106が形成される。
第1支持部101は、基部103から前方に延ばされた水平延出部107,107と、これらの水平延出部107,107を繋ぐ先端部108とからなる。
【0060】
第2支持部102は、第1支持部101から立ち上げられた立ち上げ部111,111と、これらの立ち上げ部111,111から水平に延ばした水平部112とからなる。また、水平部112は、第1支持部101と平行に形成される。
【0061】
図18に示されたように、側面視で第1支持部101の先端部108(図16参照)に、第1部材31のフック38の回転中心P1を設定するときに、回転中心P1から第1部材31のフック側端部39の上面39aまでの距離をA1、回転中心P1から第1部材31のフック側端部39の上コーナ39bまでの距離をA2、回転中心P1から第2支持部102(図16参照)の水平部112の下部113までの寸法をH1、回転中心P1から第2支持部102(図16参照)の水平部112の先端下部114までの寸法をH2とするときに、これらの距離A1、A2及び寸法H1,H2の関係を、H1=A1、H2<A2に設定した。
【0062】
さらに、回転中心P1は、水平方向に関して第1部材31のフック側端部39から距離B1だけ前方に設定され、第2支持部102の水平部112の先端下部114は、水平方向に関して第1部材31のフック側端部39から距離B2だけ前方に設定され、且つ距離B1,B2の関係がB1>B2に設定されている。
【0063】
すなわち、距離A1を第1部材31の厚さ方向距離、距離A2を第1部材31の端部上コーナ距離、寸法H1を第1・第2支持部101,102間の狭挟寸法、寸法H2を第1・第2支持部101,102の間口寸法、B1を第1部材水平距離、B2を第2部材32水平距離と呼ぶときに、車両用ブラケット34は、狭挟寸法H1を第1部材31の厚さ方向距離A1に設定され、間口寸法H2を第1部材31の端部コーナ距離A2よりも小さく設定したものといえる。
【0064】
言い換えれば、第1支持部101及び第2支持部102間の間口寸法H2を、第1部材31の下面に取付けられる係止部の回転中心から第1部材31のフック側端部39の上コーナ39bまでの距離A2よりも短くなるよう設定したので、例えば、第1支持部101に第1部材31の係止部を係合させ、第1部材31を所定の方向に回転させ、第1部材31のフック側端部39を第1支持部101及び第2支持部102間に挟み込むときに、第1部材31のフック側端部39を第1支持部101及び第2支持部102間に押圧しつつ嵌合させることができる。この結果、フック側端部39の端部を第1支持部101及び第2支持部102から脱落し難くすることができる。
【0065】
図19(a),(b)は図9に示されるヒンジ体の比較検討図である。
(a)に示されたように、比較例のヒンジ体210は、第1部材211側に固定される第1のベース部214と、第2部材212側に固定される第2のベース部215と、これらの第1・第2ベース部214,215を繋ぐヒンジ部216とからなり、第1部材211に第1のベース部214が固定具217,217で固定され、第2部材212に第2のベース部215が固定具217,217されている。従って、第1部材211及び第2部材212を切り離して他の用途に使用することはできない。
【0066】
(b)に示されたように、実施例のヒンジ体34では、第2部材32に固定される第1ベース部51と、第1部材31に着脱自在に係合される第2ベース部52とを備えたので、ヒンジ体34から第1部材31を切り離し(取り外し)、第1部材31を他の用途に使用することができ、部品の多機能化を図ることができる。
【0067】
図7に示されたように、ヒンジ体34は、第1部材31と第2部材32との間に架け渡されて配置される。
図7〜図11に示されたように、ヒンジ体34は、第1部材31又は第2部材32の一方に対し固定される固定部(貫通孔)58,58を備えた第1ベース部51と、他方に形成される係止部(ヒンジ係止ピン)37,37と係脱自在に係合する係合部(異形孔)65,65を備えた第2ベース部52と、第1ベース部51と第2ベース部52とを折り畳み自在に連結するヒンジ部54とからなる。
【0068】
第1ベース部51及び第2ベース部52が折り畳まれた状態で両者を結合する保持部85,85(一方不図示)が第1ベース部51及び第2ベース部52間に形成されたので、ヒンジ体34を折り畳み状態で保持することができる。すなわち、第1部材31又は第2部材32をヒンジ体34から外した状態で、第1部材31又は第2部材32の一方から第2ベース部52が突出することを防止できる。
【0069】
ヒンジ体34では、ヒンジ部54の対向側で第2ベース部52にサブヒンジ部55を介して第3ベース部53が形成され、第2ベース部52及び第3ベース部53間に、第3ベース部53を第2ベースに係合する中間係合部86,86(一方不図示)が形成されたので、第2ベース部52に第3ベース部53を係合させておくことができる。
【0070】
また、第3ベース部53に、係合部(異形孔)65,65から係止部(ヒンジ係止ピン)37,37の移動を規制することを補助する係合補助部(突部)81,81が形成されたので、不用意な外れを阻止することができる。
【0071】
ヒンジ体34では、保持部85,85(一方不図示)が、第3ベース部53を第1ベース部51及び第2ベース部52間に挟むように保持可能としたものなので、ヒンジ体34に第3ベース部53を備える構成としても、折り畳み状態においても第3ベース部53が邪魔になることはない。
【0072】
ヒンジ体34では、ヒンジ部54が、第1ベース部51及び第2ベース部52と一体成形された樹脂ヒンジであるので、ヒンジ体34の製造が容易となる。
【0073】
ヒンジ体34では、係合補助部(突部)81に、弾性変形により係止部(ヒンジ係止ピン)37を押圧する押圧部84を備えたので、ヒンジ体34に対する第1部材31又は第2部材32のガタを防止することができ、第1部材31と第2部材32とを強固にヒンジ結合することができる。
【0074】
ヒンジ体34では、第1ベース部51、第2ベース部52及び第3ベース部53が、それぞれ略同面積の長方形状に形成されたので、ヒンジ体34を折り畳み状態に保持するときに収まりよく、保持状態での見栄えを向上することができる。
【0075】
ヒンジ体34では、第2ベース部52に、第3ベース部53に形成される係合補助部(突部)81,81を折り畳み状態で収容可能とする収容部74,74を備えたので、係合補助部(突部)81,81の形状を任意に形成することができ、係合補助部(突部)81,81の剛性の向上を図ることができる。
【0076】
ボード部材(車両用ボード)27は、車体フロア13(図1参照)の一部を形成する第1ボード部及び第2ボード部と、これらの第1ボード部(第1部材)31及び第2ボード部(第2部材)32を折り畳み自在に連結するヒンジ体34とを備える。
【0077】
ヒンジ体34に、第1ボード部31又は第2ボード部32の一方に対し固定される固定部(貫通孔)58,58を備えた第1ベース部51と、他方に形成される係止部(ヒンジ係止ピン)37,37と係脱自在に係合する係合部(異形孔)65,65を備えた第2ベース部52と、第1ベース部51と第2ベース部52とを折り畳み自在に連結するヒンジ部54とを備えたので、車両用ボード27の第1ボード部31若しくは第2ボード部32を取り外すことで、車両用ボード27のサイズ変更をすることができる。さらに、外した第1ボード部31又は第2ボード部32の一方を他の用途に使用することができ、利用形態の拡大を図ることができる。
【0078】
尚、本発明に係るヒンジ体は、図9に示すように、第1ベース部51、第2ベース部52、第3ベース部53から構成されたが、これに限るものではなく、第1ベース部及び第2ベース部のみで形成されるものであってもよい。
【0079】
本発明に係る車両用ボードは、図2に示すように、収納凹部26を覆うボード部材27であったが、これに限るものではなく、車室壁面若しくは車体フロアの一部を形成するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係るヒンジ体及び車両用ボードは、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係るヒンジ体を採用するボード部材を搭載した車両の断面図である。
【図2】図1に示された車両の斜視図である。
【図3】図1に示された車両のシート収納状態を示す斜視図である。
【図4】本発明に係るヒンジ体を採用されたボード部材の斜視図である。
【図5】図4に示されたボード部材を裏返した状態を示す斜視図である。
【図6】図4に示されたボード部材を切り離した状態を示す斜視図である。
【図7】図5の7部拡大図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】本発明に係るヒンジ体を展開した状態で示す斜視図である。
【図10】図9に示されたヒンジ体の脱着手順前半の説明図である。
【図11】図9に示されたヒンジ体の脱着手順後半の説明図である。
【図12】図4に示されたボード部材の第2部材の説明図である。
【図13】図4に示された第1部材のセット手順前半の説明図である。
【図14】図4に示された第1部材のセット手順後半の説明図である。
【図15】図1に示される車両の第1部材及び車両用ブラケットの下方から見た斜視図である。
【図16】図1に示される車両用ブラケットの斜視図である。
【図17】図1に示される第1部材及び車両用ブラケットの側面断面図である。
【図18】図1に示される第1部材及び車両用ブラケットの寸法関係を示す説明図である。
【図19】図9に示されるヒンジ体の比較検討図である。
【符号の説明】
【0082】
10…車両、13…車体フロア、27…車両用ボード(ボード部材)、31…第1ボード部(第1部材)、32…第2ボード部、33…ヒンジ体、37…係止部(ヒンジ係止ピン)、51〜53…第1〜第3ベース部、54…ヒンジ部、55…サブヒンジ部、58…固定部(貫通孔)、65…係合部(異形孔)、73…収容部、84…押圧部、85…保持部、86…中間係合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材との間に架け渡されて配置されるヒンジ体であって、
前記第1部材又は第2部材の一方に対し固定される固定部を備えた第1ベース部と、他方に形成される係止部と係脱自在に係合する係合部を備えた第2ベース部と、前記第1ベース部と第2ベース部とを折り畳み自在に連結するヒンジ部とからなり、
前記第1ベース部及び第2ベース部が折り畳まれた状態で両者を結合する保持部が前記第1ベース部及び第2ベース部間に形成されたことを特徴とするヒンジ体。
【請求項2】
前記ヒンジ部の対向側で前記第2ベース部にサブヒンジ部を介して第3ベース部が形成され、前記第2ベース部及び第3ベース部間に、前記第3ベース部を前記第2ベースに係合する中間係合部が形成され、前記第3ベース部に、前記係合部から前記係止部の移動を規制することを補助する係合補助部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載のヒンジ体。
【請求項3】
前記保持部は、前記第3ベース部を前記第1ベース部及び第2ベース部間に挟むように保持可能としたものであることを特徴とする請求項2記載のヒンジ体。
【請求項4】
前記ヒンジ部は、前記第1ベース部及び第2ベース部と一体成形された樹脂ヒンジであることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載のヒンジ体。
【請求項5】
前記係合補助部は、弾性変形により前記係止部を押圧する押圧部を備えることを特徴とする請求項2に記載のヒンジ体。
【請求項6】
前記第1ベース部、前記第2ベース部及び前記第3ベース部は、それぞれ略同面積の長方形状に形成されたことを特徴とする請求項2に記載のヒンジ体。
【請求項7】
前記第2ベース部は、前記第3ベース部に形成される係合補助部を折り畳み状態で収容可能とする収容部を備えることを特徴とする請求項2に記載のヒンジ体。
【請求項8】
車室壁面若しくは車体フロアの一部を形成する第1ボード部及び第2ボード部と、
これらの第1ボード部及び第2ボード部を折り畳み自在に連結するヒンジ体とを備えた車両用ボードにおいて、
前記ヒンジ体は、前記第1ボード部又は第2ボード部の一方に対し固定される固定部を備えた第1ベース部と、他方に形成される係止部と係脱自在に係合する係合部を備えた第2ベース部と、前記第1ベース部と第2ベース部とを折り畳み自在に連結するヒンジ部とを備えることを特徴とするヒンジ体で連結された車両用ボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−95890(P2010−95890A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266557(P2008−266557)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】