説明

ヒンジ構造

【課題】衝突体の衝突時にヒンジベース及びヒンジアームを傾倒させる。
【解決手段】ヒンジ構造10では、フードヒンジ22において、ヒンジベース24にヒンジアーム28がヒンジ軸30によって回動可能に連結されており、ヒンジ軸30の上側にフェンダ18の上部が配置されている。ここで、フェンダ18の上部にパッチ20が接合されている。このため、フェンダ18に上側から衝突体が衝突してフェンダ18がフードヒンジ22と干渉する際には、フェンダ18が局部変形されてフードヒンジ22の上端を包み込むことが抑制されることで、ヒンジベース24及びヒンジアーム28を車幅方向内側へ傾倒させることができ、フェンダ18が良好に下側へ変形できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジベースがヒンジアームを回動可能に支持するヒンジ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒンジ構造としては、ボンネット(回動体)に結合されたボンネット固定用バー(ヒンジアーム)が、車体側に結合されたブラケット(ヒンジベース)に、ヒンジ旋回中心(連結部)によって、回動可能に連結されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、このようなヒンジ構造において、仮にヒンジ旋回中心が泥除け(フェンダ)の下側に配置される場合には、フェンダに上側から衝突体(例えば歩行者の頭部)が衝突して、フェンダがボンネット固定用バー及びブラケットの少なくとも1つと干渉した際に、ボンネット固定用バー及びブラケットが傾倒できるのが好ましい。
【特許文献1】特表2004−535984公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮し、フェンダに上側から衝突体が衝突した際にヒンジベース及びヒンジアームを傾倒させることができるヒンジ構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載のヒンジ構造は、車体側に設けられたヒンジベースと、車両の回動体側に設けられたヒンジアームと、車両のフェンダの下側に配置され、前記ヒンジベースと前記ヒンジアームとを連結することで前記ヒンジベースが前記ヒンジアームを回動可能に支持する連結部と、前記フェンダに上側から衝突体が衝突した際に前記ヒンジベース及びヒンジアームを傾倒させる傾倒手段と、を備えている。
【0006】
請求項2に記載のヒンジ構造は、請求項1に記載のヒンジ構造において、前記傾倒手段は、前記フェンダに上側から衝突体が衝突した際に前記ヒンジベース及びヒンジアームの少なくとも1つと干渉する前記フェンダの部位を補強する、ことを特徴としている。
【0007】
請求項3に記載のヒンジ構造は、請求項1又は請求項2に記載のヒンジ構造において、前記傾倒手段は、前記フェンダに上側から衝突体が衝突した際に前記フェンダと干渉する前記ヒンジベース及びヒンジアームの少なくとも1つの干渉面積を大きくする、ことを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載のヒンジ構造は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のヒンジ構造において、前記傾倒手段に湾曲面を設けた、ことを特徴としている。
【0009】
請求項5に記載のヒンジ構造は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のヒンジ構造において、前記傾倒手段は、前記フェンダに上側から衝突体が衝突した際に前記フェンダを変形させて前記ヒンジベース及びヒンジアームの傾倒を前記フェンダが阻害することを抑制する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載のヒンジ構造では、車体側にヒンジベースが設けられると共に、車両の回動体側にヒンジアームが設けられており、ヒンジベースとヒンジアームとを連結部が連結することで、ヒンジベースがヒンジアームを回動可能に支持している。
【0011】
ここで、フェンダに上側から衝突体が衝突した際に、傾倒手段がヒンジベース及びヒンジアームを傾倒させる。このため、ヒンジベース及びヒンジアームを傾倒させることができる。
【0012】
請求項2に記載のヒンジ構造では、フェンダに上側から衝突体が衝突した際にヒンジベース及びヒンジアームの少なくとも1つと干渉するフェンダの部位を、傾倒手段が補強している。このため、フェンダに上側から衝突体が衝突した際に、フェンダの局部変形が抑制されることで、ヒンジベース及びヒンジアームがフェンダに拘束されることなく滑って傾倒される。
【0013】
請求項3に記載のヒンジ構造では、フェンダに上側から衝突体が衝突した際にフェンダと干渉するヒンジベース及びヒンジアームの少なくとも1つの干渉面積を、傾倒手段が大きくしている。このため、フェンダに上側から衝突体が衝突した際に、フェンダの局部変形が抑制されることで、ヒンジベース及びヒンジアームがフェンダ内を滑って傾倒される。
【0014】
請求項4に記載のヒンジ構造では、傾倒手段に湾曲面が設けられている。このため、フェンダに上側から衝突体が衝突した際に、ヒンジベース及びヒンジアームを良好に傾倒させることができる。
【0015】
請求項5に記載のヒンジ構造では、フェンダに上側から衝突体が衝突した際に、傾倒手段がフェンダを変形させて、ヒンジベース及びヒンジアームの傾倒をフェンダが阻害することが抑制される。このため、ヒンジベース及びヒンジアームを良好に傾倒させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
【0017】
図1には、本発明の第1の実施の形態に係るヒンジ構造10が車両前方から見た断面図(図3の1−1線断面図)にて示されており、図3には、ヒンジ構造10が上方から見た平面図にて示されている。さらに、図4には、ヒンジ構造10が適用されて構成された車両12の主要部が車両前斜め右方から見た斜視図にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車幅方向外方(車両左方)を矢印OUTで示し、上方を矢印UPで示す。
【0018】
本実施の形態における車両12の前部には、エンジンルーム14が設けられており、エンジンルーム14は上側へ開放されている。エンジンルーム14の上端の車幅方向両外側には、車体側としての略矩形筒状のエプロンアッパメンバ16が設けられており、エプロンアッパメンバ16は、車両前後方向へ延伸されている。
【0019】
エンジンルーム14の車幅方向両外側には、エプロンアッパメンバ16の車幅方向外側において、断面略逆L字形板状のフェンダ18(フェンダパネル)が設けられており、フェンダ18の車幅方向外側部は、エンジンルーム14及びエプロンアッパメンバ16の車幅方向外側を被覆して、車両12の前部における車幅方向外側面(意匠面)を構成している。フェンダ18の上部は、エプロンアッパメンバ16の上側を被覆して、車両12の前部における車幅方向外側端部の上面(意匠面)を構成しており、フェンダ18の上部は、上側へ突出する湾曲板状にされると共に、車幅方向外側へ向かうに従い下側へ向かう方向へ傾斜されている。フェンダ18の上側端には、係合部としての長尺平板状のフェンダフランジ18Aが一体に設けられており、フェンダフランジ18Aは、フェンダ18から下側へ屈曲されて車幅方向に垂直に配置されると共に、車両前後方向へ延伸されている。
【0020】
フェンダ18の上部には、車両後側端部の下面(裏面)において、傾倒手段(補強部材)としての矩形板状のパッチ20が、接合手段としての接着剤によって接合(接着)されており、パッチ20は、フェンダ18の上部に沿って湾曲されると共に、車幅方向内側端がフェンダフランジ18Aに接触されている。パッチ20は、鋼製又は硬質樹脂製にされており、パッチ20は、好ましくはフェンダ18に比し剛性が高いか同等(例えば板厚が厚いか同等)にされて、フェンダ18の上部を補強している。また、パッチ20は、フェンダフランジ18Aの車幅方向外側面(裏面)に接合されていない。
【0021】
エプロンアッパメンバ16の車両後側端部の上側には、ヒンジ本体としてのフードヒンジ22が設けられている。
【0022】
フードヒンジ22の車幅方向外側部分には、断面略L字形板状のヒンジベース24が設けられており、ヒンジベース24は、フェンダ18に比し剛性が高くされている。ヒンジベース24の下側部分には、平板状の取付部24Aが設けられており、ヒンジベース24は、取付部24Aにおいて、エプロンアッパメンバ16の上面に取り付けられている。ヒンジベース24の上側部分には、板状の本体部24Bが設けられており、本体部24Bの下側部分は、断面L字状又は断面半円状に曲げられて、車幅方向外側に突出している。本体部24Bの下側部分には、車両前後方向中間部において、貫通孔26が貫通形成されており、貫通孔26によって本体部24Bの剛性が調整されている(低くされている)。
【0023】
フードヒンジ22の車幅方向内側部分には、板状のヒンジアーム28が設けられており、ヒンジアーム28は、フェンダ18に比し剛性が高くされている。ヒンジアーム28の車両後側端部は、ヒンジベース24における本体部24Bの上部に、連結部としての略円軸状のヒンジ軸30によって、回動可能に連結されており、ヒンジアーム28は、ヒンジベース24にヒンジ軸30を中心として回動可能に支持されている。
【0024】
ヒンジベース24の上端とヒンジアーム28の上端とは、ヒンジ軸30の上側において、同一の高さに配置されており、ヒンジベース24の上端とヒンジアーム28の上端との上側(ヒンジ軸30の上側)には、フェンダ18の上部及びパッチ20の車幅方向外側部分が配置されている。ヒンジアーム28の上端縁は、略半円弧状にされると共に、ヒンジアーム28は、車両側面視略L字状にされている。ヒンジアーム28は、車両前後方向中間部において、車両前側へ向かうに従い車幅方向内側へ向かう方向へ曲げられており、ヒンジアーム28の車両前側部分は、フェンダ18のフェンダフランジ18Aの車幅方向内側において、車両前後方向へ延伸されている。
【0025】
一対のフードヒンジ22におけるヒンジアーム28の車両前側部分には、回動体としてのフード32の下面が車両後側端部の車幅方向両端部において取り付けられており、フード32は、閉じられて、一対のフェンダ18のフェンダフランジ18A間において、エンジンルーム14の上側を閉じている。フード32は、フードヒンジ22のヒンジベース24に対し、ヒンジアーム28と一体に回動可能にされており、フード32が回動されることで、フード32が開閉されて、エンジンルーム14の上側を開閉可能にされている。
【0026】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0027】
以上の構成のヒンジ構造10では、フードヒンジ22において、ヒンジベース24にヒンジ軸30によってヒンジアーム28が回動可能に連結されており、ヒンジ軸30の上側には、ヒンジベース24の上端、ヒンジアーム28の上端、及び、フェンダ18の上部が配置されている。
【0028】
ここで、フェンダ18の上部の下面には、ヒンジ軸30の上側において、パッチ20が接合されており、パッチ20は、フェンダ18の上部を補強している。
【0029】
このため、図2に示す如く、ヒンジ軸30の上側におけるフェンダ18の上部に上側から衝突体34(例えば歩行者の頭部)が衝突して、フェンダ18の上部がフードヒンジ22と干渉する際には、パッチ20がヒンジベース24の上端及びヒンジアーム28の上端に当接することで、フェンダ18の上部がヒンジベース24の上端及びヒンジアーム28の上端によって断面逆U字状に局部変形されてヒンジベース24の上端及びヒンジアーム28の上端を包み込むことが抑制される。これにより、ヒンジベース24を車幅方向内側へ変形させて、ヒンジベース24及びヒンジアーム28を車幅方向内側へ傾倒させることができ、フェンダ18が良好に下側へ座屈変形(移動)することができて、衝突体34に作用する衝突荷重を安定させることができる(当該衝突荷重が一時的に過大になることを抑制できる)。
【0030】
さらに、パッチ20が湾曲されて、パッチ20の下面が滑らかにされている(凹凸がなくされている)。このため、パッチ20がヒンジベース24の上端及びヒンジアーム28の上端に当接した際には、ヒンジベース24の上端及びヒンジアーム28の上端がパッチ20に対し良好に滑ることができ、ヒンジベース24及びヒンジアーム28を良好に車幅方向内側へ傾倒させることができる。
【0031】
しかも、パッチ20がフェンダフランジ18Aの車幅方向外側面に接合されていないと共に、フェンダフランジ18Aの車幅方向外側面が平面状にされて滑らかにされている(凹凸がなくされている)。このため、ヒンジベース24及びヒンジアーム28が車幅方向内側へ傾倒されてフェンダフランジ18Aに当接した際には、フェンダフランジ18Aがフェンダ18に対し容易に傾動(曲がり変形)できると共に、ヒンジベース24の上端及びヒンジアーム28の上端がフェンダフランジ18Aに対し良好に滑ることができる。これにより、フェンダフランジ18Aがヒンジベース24及びヒンジアーム28の車幅方向内側への傾倒を阻害することを抑制でき、ヒンジベース24及びヒンジアーム28を良好に車幅方向内側へ傾倒させることができる。
【0032】
また、パッチ20がフェンダ18の上部に接着剤によって接合されている。このため、フェンダ18の上部の上面(意匠面)に凹凸が発生することを防止できると共に、パッチ20の下面を滑らかにすることができる(例えばスポット溶接によるバリをなくすことかできる)。
【0033】
[第2の実施の形態]
【0034】
図5には、本発明の第2の実施の形態に係るヒンジ構造40が車両前方から見た断面図(図6の5−5線断面図)にて示されており、図6には、ヒンジ構造40が上方から見た平面図にて示されている。
【0035】
本実施の形態に係るヒンジ構造40は、上記第1の実施の形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0036】
本実施の形態に係るヒンジ構造40では、パッチ20の車幅方向内側端に、矩形平板状のパッチフランジ20Aが一対一体に設けられている。パッチフランジ20Aは、パッチ20から下側へ屈曲されて車幅方向に垂直に配置されると共に、車両前後方向へ延伸されており、パッチフランジ20Aは、フェンダ18のフェンダフランジ18Aにスポット溶接によって接合されている。パッチフランジ20Aは、フードヒンジ22のヒンジ軸30の車両前側及び車両後側に配置されており、パッチフランジ20Aは、ヒンジ軸30の車幅方向内側には設けられていない。
【0037】
ここで、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0038】
特に、パッチ20のパッチフランジ20Aがフェンダ18のフェンダフランジ18Aにスポット溶接によって接合されている。このため、フェンダ18(フェンダフランジ18Aを含む)にパッチ20(パッチフランジ20Aを含む)を強固に接合することができると共に、フェンダ18(フェンダフランジ18Aを含む)をパッチ20(パッチフランジ20Aを含む)によって一層補強することができる。しかも、フェンダ18の上部の上面(意匠面)に凹凸が発生することを防止できると共に、パッチ20の下面を滑らかにすることができる(例えばスポット溶接によるバリをなくすことかできる)。
【0039】
さらに、パッチフランジ20Aがフードヒンジ22のヒンジ軸30の車幅方向内側に設けられていない。このため、ヒンジ軸30の上側におけるフェンダ18の上部に上側から衝突体34が衝突して、ヒンジベース24及びヒンジアーム28が車幅方向内側へ傾倒される際には、ヒンジベース24の上端及びヒンジアーム28の上端がフェンダフランジ18Aに当接することで、パッチフランジ20Aがヒンジベース24及びヒンジアーム28の車幅方向内側への傾倒を阻害することを抑制できる。これにより、フェンダフランジ18Aがフェンダ18に対し容易に傾動(曲がり変形)することができ、ヒンジベース24及びヒンジアーム28を良好に車幅方向内側へ傾倒させることができる。
【0040】
[第3の実施の形態]
【0041】
図7には、本発明の第3の実施の形態に係るヒンジ構造50が車両前方から見た断面図(図3の1−1線位置断面図)にて示されている。
【0042】
本実施の形態に係るヒンジ構造50は、上記第1の実施の形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0043】
本実施の形態に係るヒンジ構造50では、上記第1の実施の形態におけるパッチ20が設けられていない。
【0044】
フードヒンジ22には、ヒンジベース24の上端に、傾倒手段(当接部材)としての断面逆L字形板状のヒンジフランジ52が一体に設けられている。ヒンジフランジ52は、フェンダ18に比し剛性が高くされており、ヒンジフランジ52の下側部分は、ヒンジベース24の上端から上側へ延出されている。ヒンジフランジ52の上側部分は、ヒンジフランジ52の下側部分の上端から車幅方向外側へ延出されて、フェンダ18の上部に沿って傾斜かつ湾曲されており、ヒンジフランジ52の曲部52A(上側部分と下側部分との境界部分)の上側面は、湾曲されている。
【0045】
ここで、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0046】
特に、図2と同様に、ヒンジ軸30の上側におけるフェンダ18の上部に上側から衝突体34が衝突して、フェンダ18の上部がフードヒンジ22と干渉する際には、フェンダ18の上部がフードヒンジ22の上側のヒンジフランジ52の上側部分に当接する(フェンダ18の上部がフードヒンジ22に干渉する干渉面積が大きくされる)ことで、フェンダ18の上部がヒンジベース24の上端及びヒンジアーム28の上端によって断面逆U字状に局部変形されてヒンジベース24の上端及びヒンジアーム28の上端を包み込むことが抑制される。これにより、ヒンジベース24を車幅方向内側へ変形させて、ヒンジベース24及びヒンジアーム28を車幅方向内側へ傾倒させることができ、フェンダ18が良好に下側へ座屈変形することができて、衝突体34に作用する衝突荷重を安定させることができる。
【0047】
さらに、ヒンジフランジ52の上側部分が湾曲されて、ヒンジフランジ52の上側部分の上面が滑らかにされている(凹凸がなくされている)。このため、フェンダ18の上部がヒンジフランジ52の上側部分に当接した際には、ヒンジフランジ52の上側部分がフェンダ18の上部に対し良好に滑ることができ、ヒンジベース24及びヒンジアーム28を良好に車幅方向内側へ傾倒させることができる。
【0048】
しかも、ヒンジフランジ52の曲部52Aの上側面が、湾曲されている。
【0049】
このため、フェンダ18の上部がヒンジフランジ52の曲部52Aに当接した際でも、ヒンジフランジ52の曲部52Aがフェンダ18の上部に突き刺さることを抑制できると共に、ヒンジフランジ52の曲部52Aがフェンダ18の上部に対し良好に滑ることができ、ヒンジベース24及びヒンジアーム28を車幅方向内側へ容易に傾倒させることができる。
【0050】
さらに、ヒンジベース24及びヒンジアーム28が車幅方向内側へ傾倒されてヒンジフランジ52の曲部52Aがフェンダフランジ18Aに当接した際には、ヒンジフランジ52の曲部52Aがフェンダフランジ18Aに突き刺さることを抑制できると共に、ヒンジフランジ52の曲部52Aがフェンダフランジ18Aに対し良好に滑ることができる。これにより、フェンダフランジ18Aがフェンダ18に対し容易に傾動(曲がり変形)できて、フェンダフランジ18Aがヒンジベース24及びヒンジアーム28の車幅方向内側への傾倒を阻害することを抑制でき、ヒンジベース24及びヒンジアーム28を良好に車幅方向内側へ傾倒させることができる。
【0051】
また、フェンダ18の上部に上記第1の実施の形態におけるパッチ20が接合されていない。このため、フェンダ18の上部の上面(意匠面)に凹凸が発生することを防止できると共に、フェンダ18の上部の下面を滑らかにすることができる(例えばスポット溶接によるバリをなくすことかできる)。
【0052】
[第4の実施の形態]
【0053】
図8には、本発明の第4の実施の形態に係るヒンジ構造60が車両前方から見た断面図(図3の1−1線位置断面図)にて示されている。
【0054】
本実施の形態に係るヒンジ構造60は、上記第3の実施の形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0055】
本実施の形態に係るヒンジ構造60では、フードヒンジ22において、ヒンジベース24の上側におけるヒンジフランジ52の上側部分が、ヒンジフランジ52の下側部分の上端から車幅方向内側へ延出されて、フェンダ18の上部に沿って傾斜かつ湾曲されており、ヒンジフランジ52の曲部52A(上側部分と下側部分との境界部分)の上側面は、湾曲されている。
【0056】
ヒンジフランジ52の先端52B近傍は、湾曲されて、曲部52Cにされており、ヒンジフランジ52の先端部52Dは、フェンダ18のフェンダフランジ18A近傍において、車幅方向内側へ向かうに従い下側へ向かう方向へ傾斜されると共に、ヒンジフランジ52の曲部52Cの上側面は、湾曲されている。ヒンジフランジ52の先端部52Dは、平板状又は上側へ突出する湾曲板状にされており、ヒンジフランジ52の先端部52Dの上下方向幅は、フェンダフランジ18Aの上下方向幅に比し、小さくされている。
【0057】
ヒンジフランジ52は、ヒンジベース24に対するヒンジアーム28の回動によるフード32の開閉を阻害しない配置にされている。
【0058】
ここで、本実施の形態でも、上記第3の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0059】
特に、図2と同様に、ヒンジ軸30の上側におけるフェンダ18の上部に上側から衝突体34が衝突して、フェンダ18の上部がフードヒンジ22と干渉する際には、フェンダ18の上部がフードヒンジ22の上側のヒンジフランジ52の上側部分に当接する(フェンダ18の上部がフードヒンジ22に干渉する干渉面積が大きくされる)ことで、フェンダ18の上部がヒンジベース24の上端及びヒンジアーム28の上端によって断面逆U字状に局部変形されてヒンジベース24の上端及びヒンジアーム28の上端を包み込むことが抑制される。これにより、ヒンジベース24を車幅方向内側へ変形させて、ヒンジベース24及びヒンジアーム28を車幅方向内側へ傾倒させることができ、フェンダ18が良好に下側へ座屈変形することができて、衝突体34に作用する衝突荷重を安定させることができる。
【0060】
しかも、ヒンジフランジ52の曲部52Cの上側面が、湾曲されている。このため、フェンダ18の上部がヒンジフランジ52の曲部52Cに当接した際でも、ヒンジフランジ52の曲部52Cがフェンダ18の上部に突き刺さることを抑制できると共に、ヒンジフランジ52の曲部52Cがフェンダ18の上部に対し良好に滑ることができ、ヒンジベース24及びヒンジアーム28を車幅方向内側へ容易に傾倒させることができる。
【0061】
さらに、ヒンジフランジ52の先端部52Dが、車幅方向内側へ向かうに従い下側へ向かう方向へ傾斜されている。このため、ヒンジベース24及びヒンジアーム28が車幅方向内側へ傾倒されてヒンジフランジ52の先端52Bがフェンダフランジ18Aに当接した際には、ヒンジフランジ52の先端52Bがフェンダフランジ18Aに突き刺さることを抑制できると共に、ヒンジフランジ52の先端52Bがフェンダフランジ18Aに対し良好に滑ることができる。これにより、フェンダフランジ18Aがフェンダ18に対し容易に傾動(曲がり変形)できて、フェンダフランジ18Aがヒンジベース24及びヒンジアーム28の車幅方向内側への傾倒を阻害することを抑制でき、ヒンジベース24及びヒンジアーム28を良好に車幅方向内側へ傾倒させることができる。
【0062】
なお、本実施の形態では、ヒンジフランジ52の先端部52Dの上下方向幅をフェンダフランジ18Aの上下方向幅に比し小さくした構成としたが、図9に示す変形例に係るヒンジ構造70の如く、ヒンジフランジ52の先端部52Dの上下方向幅をフェンダフランジ18Aの上下方向幅に比し大きくした構成としてもよい。
【0063】
この場合、ヒンジベース24及びヒンジアーム28が車幅方向内側へ傾倒された際に、ヒンジフランジ52の先端部52Dの上側面がフェンダフランジ18Aに当接する。このため、ヒンジフランジ52の先端52Bがフェンダフランジ18Aに突き刺さることを抑制できると共に、ヒンジフランジ52の先端部52Dがフェンダフランジ18Aに対し良好に滑ることができる。これにより、フェンダフランジ18Aがフェンダ18に対し容易に傾動(曲がり変形)できて、フェンダフランジ18Aがヒンジベース24及びヒンジアーム28の車幅方向内側への傾倒を阻害することを抑制できる。
【0064】
また、上記第3の実施の形態及び第4の実施の形態(変形例を含む)では、ヒンジフランジ52をヒンジベース24に設けた構成としたが、ヒンジフランジ52をヒンジアーム28に設けた構成としてもよい。
【0065】
さらに、上記第3の実施の形態及び第4の実施の形態(変形例を含む)では、ヒンジフランジ52をフードヒンジ22に一体に形成した構成としたが、金属製又は樹脂製のヒンジフランジ52をフードヒンジ22と別に製作してフードヒンジ22に取り付けた構成としてもよい。
【0066】
[第5の実施の形態]
【0067】
図10には、本発明の第5の実施の形態に係るヒンジ構造80が車両前方から見た断面図(図3の1−1線位置断面図)にて示されており、図11には、ヒンジ構造80が車両前斜め左方から見た斜視図にて示されている。
【0068】
本実施の形態に係るヒンジ構造80は、上記第1の実施の形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0069】
本実施の形態に係るヒンジ構造80では、上記第1の実施の形態におけるパッチ20が設けられていない。
【0070】
フードヒンジ22には、ヒンジベース24の車幅方向外側に、傾倒手段(当接部材)としての硬質樹脂製(金属製でもよい)で断面逆J字形板状のキャップ82(カバー)の下端が、取付手段としてのクリップ84によって取り付けられており(締め付けられており)、キャップ82の車幅方向外側部分は、ヒンジ軸30の車幅方向外側を被覆している。
【0071】
キャップ82の上部は、断面逆U字形板状にされており、キャップ82の上部は、ヒンジベース24の上端及びヒンジアーム28の上端を上側及び車幅方向両外側から被覆している。キャップ82の上面は、平面状(上側へ突出する湾曲面状にされてもよい)にされており、キャップ82の上面の車幅方向両端部は、湾曲されている。
【0072】
キャップ82は、ヒンジベース24に対するヒンジアーム28の回動によるフード32の開閉を阻害しない配置にされている。
【0073】
ここで、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0074】
特に、図2と同様に、ヒンジ軸30の上側におけるフェンダ18の上部に上側から衝突体34が衝突して、フェンダ18の上部がフードヒンジ22と干渉する際には、フェンダ18の上部がフードヒンジ22の上側のキャップ82の上部に当接する(フェンダ18の上部がフードヒンジ22に干渉する干渉面積が大きくされる)ことで、フェンダ18の上部がヒンジベース24の上端及びヒンジアーム28の上端によって断面逆U字状に局部変形されてヒンジベース24の上端及びヒンジアーム28の上端を包み込むことが抑制される。これにより、ヒンジベース24を車幅方向内側へ変形させて、ヒンジベース24及びヒンジアーム28を車幅方向内側へ傾倒させることができ、フェンダ18が良好に下側へ座屈変形することができて、衝突体34に作用する衝突荷重を安定させることができる。
【0075】
さらに、キャップ82の上面が平面状にされて、キャップ82の上面が滑らかにされている(凹凸がなくされている)。このため、フェンダ18の上部がキャップ82の上面に当接した際には、キャップ82の上面がフェンダ18の上部に対し良好に滑ることができ、ヒンジベース24及びヒンジアーム28を良好に車幅方向内側へ傾倒させることができる。
【0076】
しかも、キャップ82の上面の車幅方向両端部が湾曲されている。
【0077】
このため、フェンダ18の上部がキャップ82の上面の車幅方向端部に当接した際でも、キャップ82の上面の車幅方向端部がフェンダ18の上部に突き刺さることを抑制できると共に、キャップ82の上面の車幅方向端部がフェンダ18の上部に対し良好に滑ることができ、ヒンジベース24及びヒンジアーム28を車幅方向内側へ容易に傾倒させることができる。
【0078】
さらに、ヒンジベース24及びヒンジアーム28が車幅方向内側へ傾倒されてキャップ82の上面の車幅方向内側端部がフェンダフランジ18Aに当接した際には、キャップ82の上面の車幅方向端部がフェンダフランジ18Aに突き刺さることを抑制できると共に、キャップ82の上面の車幅方向内側端部がフェンダフランジ18Aに対し良好に滑ることができる。これにより、フェンダフランジ18Aがフェンダ18に対し容易に傾動(曲がり変形)できて、フェンダフランジ18Aがヒンジベース24及びヒンジアーム28の車幅方向内側への傾倒を阻害することを抑制でき、ヒンジベース24及びヒンジアーム28を良好に車幅方向内側へ傾倒させることができる。
【0079】
また、フェンダ18の上部に上記第1の実施の形態におけるパッチ20が接合されていない。このため、フェンダ18の上部の上面(意匠面)に凹凸が発生することを防止できると共に、フェンダ18の上部の下面を滑らかにすることができる(例えばスポット溶接によるバリをなくすことかできる)。
【0080】
なお、本実施の形態では、キャップ82をヒンジベース24に設けた構成としたが、キャップ82をヒンジアーム28に設けた構成としてもよい。
【0081】
さらに、本実施の形態では、キャップ82をフードヒンジ22と別に製作してフードヒンジ22に取り付けた構成としたが、キャップ82をフードヒンジ22に一体に形成した構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るヒンジ構造を示す車両前方から見た断面図(図3の1−1線断面図)である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るヒンジ構造における衝突体の衝突時を示す車両前方から見た断面図(図3の1−1線位置断面図)である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るヒンジ構造を示す上方から見た平面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における車両の主要部を示す車両前斜め右方から見た斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るヒンジ構造を示す車両前方から見た断面図(図6の5−5線断面図)である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るヒンジ構造を示す上方から見た平面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るヒンジ構造を示す車両前方から見た断面図(図3の1−1線位置断面図)である。
【図8】本発明の第4の実施の形態に係るヒンジ構造を示す車両前方から見た断面図(図3の1−1線位置断面図)である。
【図9】本発明の第4の実施の形態の変形例に係るヒンジ構造を示す車両前方から見た断面図(図3の1−1線位置断面図)である。
【図10】本発明の第5の実施の形態に係るヒンジ構造を示す車両前方から見た断面図(図3の1−1線位置断面図)である。
【図11】本発明の第5の実施の形態に係るヒンジ構造を示す車両前斜め左方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0083】
10 ヒンジ構造
12 車両
16 エプロンアッパメンバ(車体側)
18 フェンダ
20 パッチ(傾倒手段)
24 ヒンジベース
28 ヒンジアーム
30 ヒンジ軸(連結部)
32 フード(回動体)
34 衝突体
40 ヒンジ構造
50 ヒンジ構造
52 ヒンジフランジ(傾倒手段)
60 ヒンジ構造
70 ヒンジ構造
80 ヒンジ構造
82 キャップ(傾倒手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に設けられたヒンジベースと、
車両の回動体側に設けられたヒンジアームと、
車両のフェンダの下側に配置され、前記ヒンジベースと前記ヒンジアームとを連結することで前記ヒンジベースが前記ヒンジアームを回動可能に支持する連結部と、
前記フェンダに上側から衝突体が衝突した際に前記ヒンジベース及びヒンジアームを傾倒させる傾倒手段と、
を備えたヒンジ構造。
【請求項2】
前記傾倒手段は、前記フェンダに上側から衝突体が衝突した際に前記ヒンジベース及びヒンジアームの少なくとも1つと干渉する前記フェンダの部位を補強する、ことを特徴とする請求項1記載のヒンジ構造。
【請求項3】
前記傾倒手段は、前記フェンダに上側から衝突体が衝突した際に前記フェンダと干渉する前記ヒンジベース及びヒンジアームの少なくとも1つの干渉面積を大きくする、ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のヒンジ構造。
【請求項4】
前記傾倒手段に湾曲面を設けた、ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項記載のヒンジ構造。
【請求項5】
前記傾倒手段は、前記フェンダに上側から衝突体が衝突した際に前記フェンダを変形させて前記ヒンジベース及びヒンジアームの傾倒を前記フェンダが阻害することを抑制する、ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項記載のヒンジ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−269485(P2009−269485A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122196(P2008−122196)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】