説明

ヒータの封止端子構造及びこれを用いたヒータ

【課題】 機械的強度がより強く、取り扱いが便利であり、また封止端子部を容易に形成することができ、しかも、許容電流を大きくでき、結果ヒータの許容温度範囲を大きくできる封止端子構造及びこれを用いたヒータを提供する。
【解決手段】 発熱体2がガラス部材3中に収納されたヒータの封止端子構造において、前記発熱体に電力を供給する接続線6a,6bと、前記接続線の一端を保持すると共にガラス部材3の端部を封止する、導電性金属材料からなる有底筒形状のキャップ部材7a、7bと、前記キャップ部材7a、7bの少なくとも内底面に設けられた、ガラス部材の端部と接するゴムパッキン部材8a,8bとを備え、前記ガラス部材3の端部を前記キャップ部材7a,7bに収容すると共に、ガラス部材3の端部角部が前記ゴムパッキン部材8a,8bの斜面部に接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータの封止端子構造及びこれを用いたヒータに関し、特に、発熱体がガラス部材中に収納されたヒータ及びその封止端子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明者らは、既に発熱体をガラス管中に封入したヒータを特許文献1(特開2000―228271号公報)及び特許文献2(特開2000−21890号公報)において提案している。
まず、特許文献1に記載されたヒータの概要を図12、図13に基づいて説明する。なお、図12はヒータの側面図であり、図13は図12に用いられている封止端子部(封止端子構造)の斜視図である。
【0003】
図12に示されているヒータ21は、カーボンワイヤー発熱体22と、前記カーボンワイヤー発熱体22を収納する、両端が開放されたU字状の小径のシリカガラス管23と、前記小径のシリカガラス管23の両端部23a、23bに圧縮収納されたワイヤーカーボン材Aと、前記小径のシリカガラス管23を収容すると共に、一端が閉塞されかつ他端が開放された大径のシリカガラス管24と、前記大径のシリカガラス管24の開放された端部に取り付けられた、カーボンワイヤー発熱体22と接続される接続線32a、32bとを備える封止端子部30とから構成されている。
なお、前記小径のシリカガラス管23は、その頂部において大径のシリカガラス管24の内部に固定部25を介して固定されている。
【0004】
更に、封止端子部30の構造を、図13に基づいて説明すると、封止端子部30を構成するガラス管31は、即ち、大径シリカガラス管24と融着してあるいは溶接して一体化するガラス管31は、大径シリカガラス管24との融着側から、シリカガラス部31a、グレイデッド(Graded)シール部31b、タングステン(W)ガラス部31cによって構成されている。
そして、小径のシリカガラス管23内に圧縮収納されているワイヤーカーボン材に接続されるタングステン(W)からなる接続線32a、32bは、タングステン(W)ガラス部31cのピンチシール部31dでピンチシールされる。
【0005】
すなわち、ピンチシール部31dを、接続線を構成するタングステン(W)の熱膨張係数に近いタングステン(W)ガラスで形成すると共に、大径シリカガラス管24との融着側をシリカガラスで形成している。
このように、ピンチシール部31dを、接続線を構成するタングステン(W)の熱膨張係数に近いタングステン(W)ガラスで形成することにより、接続線32a、32bの高温時熱膨張に伴うガラス部(ピンチシール部31d)の破損を防止している。
【0006】
次に、特許文献2に記載されたヒータの概要を図14に基づいて説明する。なお、図14はヒータの概略側面図である。
図14において、ヒータ40は、半ドーナツ形のシリカガラス製容器41を有し、その下部にシリカガラス管42が垂直に接続されている。シリカガラス製容器41は容器本体とフタ部材から構成され、容器本体にはカーボンワイヤー発熱体43を配置するための溝44が形成されている。溝44の両端には、端子装置を配置するための端子用凹所45が設けられている。
【0007】
そして、前記端子用凹所45及びシリカガラス管42内には、カーボンワイヤー発熱体43と複数のワイヤー状カーボン端子線46を接続するための第1の端子装置47、複数のワイヤー状カーボン端子線46と金属製端子線(内接続線)48を接続するための第2の端子装置49、シリカガラス管42の内側の金属製端子線48と電源側の金属製端子線(外接続線)50を接続するための第3の端子装置51が設けられている。
【0008】
前記第3の端子装置51は、シリカガラス管42の内側に配置された内接続線48と電源側の外接続線50を接続するためのものである。この内接続線48はモリブデン棒であり、このモリブデン棒の一端は第2の端子装置49に接続され、他端はモリブデン箔52に接続されている。したがって、このモリブデン棒(内接続線48)は、カーボンワイヤー発熱体43とは間接的に接続される。
また、シリカガラス管42の下端部には、シリカガラス製のキャップ53が接続されており、モリブデン棒(内接続線48)はキャップ53を通って引き出されている。モリブデン箔52の底部側からは、2本の外接続線50が外側に引き出されている。
【0009】
そして、モリブデン箔52全体が包み込まれるように、ピンチシール部53aが形成されている。ピンチシール部53aは、モリブデン箔52を、シリカガラス管42の内部及び大気から遮断している。このピンチシール部53aは、シリカ製のキャップ53の先端部を加熱軟化させピンチして(はさみ込んで)密封することにより形成される。
【0010】
このように、内接続線(モリブデン棒)48と電源側の外接続線50との接続をモリブデン箔52を介して行い、しかもこのモリブデン箔52の部分でシリカ製のキャップ53の先端部を加熱軟化させピンチすることによって、金属とガラスの熱膨張の差を吸収し、キャップ53(ピンチシール部53a)の破損を防止している。
【0011】
【特許文献1】特開2000―228271号公報
【特許文献2】特開2000−21890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、特許文献1に示された封止端子構造にあっては、封止端子部30を構成するガラス管31が、シリカガラス部31a、グレイデッド(Graded)シール部31b、タングステン(W)ガラス部31cによって構成されている。
そのため、シリカガラス部31aとタングステン(W)ガラス部31c間の熱膨張係数差による歪みを吸収緩和させるためには、構造上、ガラス管31の厚さは、より薄く形成されなければならない。
【0013】
しかしながら、ガラス管31の厚さを薄くすることは、一方において外力に対して機械的強度が弱くなり、破損し易く、その取り扱いに注意を要するという技術的課題があった。また、前記ガラス管31の製造には熟練を要し、特に低コスト製品の量産には適さないという技術的課題があった。特に、自動化による大量生産に適さないものであった。
【0014】
また、特許文献2に示された封止端子構造にあっては、シリカ製のキャップ53の先端部を加熱軟化させ、モリブデン箔52の部分をピンチして(はさみ込んで)封止している。
しかしながら、モリブデン箔52とシリカガラス(キャップ53)とを直接封止しているため、吸収できる熱膨張の差は小さく、それ故、許容される温度範囲が小さいという技術的課題があった。また、内接続線と外接続線が箔(モリブデン箔)を介して接続されているため、端子として許容する電流を小さくしなければならず、ヒータのパワーが制限されるという技術的課題があった。
【0015】
本発明者等は、これら課題を解決するためになされたものであり、機械的強度がより強く、取り扱いが便利であり、製造が容易であり、しかも、許容温度範囲が大きく、また許容電流が大きい、ヒータの封止端子構造について鋭意研究した。
この研究において、許容温度範囲を大きく、また許容電流を大きくするために、特許文献2に示すようなモリブデン箔とシリカガラス(キャップ)とを直接封止する方法ではなく、特許文献1に示すような接続線とガラス部材(ガラス管)とを直接封止する方法に基づいて、従来のガラス部材(ガラス管)を用いない、新たな封止端子構造を発明するに至った。
【0016】
本発明は、前記した技術的課題を解決するためになされたものであり、機械的強度がより強く、取り扱いが便利であり、また封止端子部を容易に形成することができ、しかも、許容温度範囲を大きく、また許容電流を大きくできる封止端子構造及びこれを用いたヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記技術的課題を解決するためになされた本発明にかかるヒータの封止端子構造は、発熱体がガラス部材中に収納されたヒータの封止端子構造において、前記発熱体に電力を供給する接続線と、前記接続線の一端を保持すると共にガラス部材の端部を封止する、導電性金属材料からなる有底筒形状のキャップ部材と、前記キャップ部材の少なくとも内底面に設けられた、ガラス部材の端部と接するゴムパッキン部材とを備え、前記ガラス部材の端部を前記キャップ部材に収容すると共に、ガラス部材の端部角部が前記ゴムパッキン部材の斜面部に接することを特徴としている。
【0018】
このように、キャップ部材は有底筒形状に形成され、ガラス部材の端部をその内部に収容すると共に、ガラス部材の端部角部が前記ゴムパッキン部材の斜面部に接するように構成されている。
したがって、従来のようなシリカガラス部、グレイデッド(Graded)シール部、タングステン(W)ガラス部をその長さ方向に有するガラス管もしくはモリブデン箔のような介在物を用いる必要がなく、ヒータを容易に製造でき、また、ヒータパワーの制限が小さくなり許容電流を大きくでき、結果ヒータの許容温度を大きくでき、しかも量産することができる。
しかも、金属製のキャップ部材を用いているため、パッキン部材を介してガス透過をより確実に防止することができる。また、従来のように接続線の軸線方向にシリカガラス部、グレイデッド(Graded)シール部、タングステン(W)ガラス部が設けられた封止端子部を設ける必要がなく、比較的厚いガラス管のみを用いることができ、結果従来品に比べ機械的強度が強くなり、取り扱いが便利である。
特に、ガラス部材の端部角部が前記ゴムパッキン部材の斜面部に接するように構成されているため、ガラス部材の内部の機密性がより向上する。
尚、発熱体が収納されるガラス部材としてはシリカガラスが好ましく、また有底筒形状のキャップは有底円筒形状であることが好ましい。
【0019】
ここで、前記キャップ部材による前記接続線の一端の保持が、キャップ部材の一部での前記接続線のかしめによる保持であり、かつ前記接続線を保持するキャップ部材の保持部外周面に螺子部を形成することが望ましい。このようにキャップ部材に螺子部を形成し、外部接続線と螺合させることにより、前記接続線、前記キャップ部材及び外部接続線のより確実な接続を図ることができる。
【0020】
また、前記ガラス部材の端部の少なくとも端面に、放射光を反射する反射部材が形成されていることが望ましい。
このように、前記ガラス部材の端部の少なくとも端面に、放射光を反射する反射部材を形成することにより、ガラス部材を伝わってくる放射光を反射し、キャップ部材の温度上昇を抑制できる。
【0021】
また、上記技術的課題を解決するためになされた本発明にかかるヒータの封止端子構造は、発熱体がガラス部材中に収納されたヒータの封止端子構造において、前記発熱体に電力を供給する接続線と、前記接続線を保持、固定すると共に、ガラス部材の端部を封止するゴム製のキャップ部材と、前記キャップ部材の少なくとも内底面に形成された、ガラス部材の端部と接する斜面部とを備え、前記キャップ部材は有底筒形状に形成され、ガラス部材の端部をその内部に収容すると共に、ガラス部材の端部角部が前記斜面部に接することを特徴としている。
【0022】
このように構成されているため、従来のようなシリカガラス部、グレイデッド(Graded)シール部、タングステン(W)ガラス部をその長さ方向に有するガラス管もしくはモリブデン箔のような介在物を用いる必要がなく、ヒータを容易に製造でき、またヒータパワーの制限が小さくなり許容電流を大きくでき、結果ヒータの許容温度を大きくでき、しかも量産することができる。
しかも、ゴム製のキャップ部材を用いているため、従来のように接続線の軸線方向にシリカガラス部、グレイデッド(Graded)シール部、タングステン(W)ガラス部が設けられた封止端子部を設ける必要がなく、比較的厚いガラス管のみを用いることができ、結果従来品に比べ機械的強度が強くなり、取り扱いが便利である。
特に、ガラス部材の端部角部が前記キャップ部材の斜面部に接するように構成されているため、ガラス部材の内部の機密性がより向上する。
尚、発熱体が収納されるガラス部材としてはシリカガラスが好ましく、また有底筒形状のキャップは有底円筒形状であることが好ましい。
【0023】
ここで、前記キャップ部材を構成する材質は、耐熱性、ガス不透過性の観点からをフッ素ゴムであることが望ましい。
また、前記キャップ部材にガス不透過性の樹脂膜を形成することが望ましい。このガス不透過性の樹脂膜としては、フッ素樹脂膜を用いることができる。
【0024】
また、前記ガラス部材の端部の少なくとも端面に、放射光を反射する反射部材が形成されていることが好ましい。このように、前記ガラス部材の端部の少なくとも端面に、放射光を反射する反射部材を形成することにより、ガラス部材を伝わってくる放射光を反射し、キャップ部材の温度上昇を抑制できる。
特に、キャップ部材がゴム製の場合には、そのゴムの劣化を抑制することができる。
【0025】
また、上記技術的課題を解決するためになされた本発明にかかるヒータは、前記封止端子構造を用いたヒータにおいて、発熱体がカーボンワイヤー発熱体であって、前記カーボンワイヤー発熱体がガラス部材中に収納されると共に、前記カーボンワイヤー発熱体の端部がガラス管部の内部に充填されたワイヤーカーボン部材に保持され、かつ、カーボンワイヤー発熱体に電力を供給する接続線が、前記ワイヤーカーボン部材に保持されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば、機械的強度がより強く、取り扱いが便利であり、また封止端子部を容易に形成することができ、しかも、許容電流を大きくでき、結果ヒータの許容温度範囲を大きくできる封止端子構造及びこれを用いたヒータを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明にかかる第一の実施形態について図1乃至図5に基づいて説明する。ここで、図1は、本発明にかかるヒータの実施形態を示す断面図であり、図2は、図1の封止端子構造を示す拡大断面図、図3は、カーボンワイヤーを示す平面図、図4はカーボンワイヤー発熱体と接続線の接続状態を示す断面図、図5は図4の横断面図である。なお、図2では、ヒータの左右端部が同一形状であるため、一方の端部のみを図示すると共に、一の端部の説明をもって両端部の説明とする。
【0028】
図1に示されているヒータ1は、カーボンワイヤー発熱体2と、前記カーボンワイヤー発熱体2を収納する、両端が開放された、その端部が大径のシリカガラス管3と、前記シリカガラス管3の両端部3a,3bに収納された小径のシリカガラス管4a,4bと、この小径のシリカガラス管4a,4bの内部に圧縮収納されたワイヤーカーボン材Aと、前記シリカガラス管3の端部を封止し、閉塞する封止端子部10a,10bとから構成されている。
【0029】
この封止端子部10a,10bは、カーボンワイヤー発熱体2に電力を供給する接続線6a,6bと、前記接続線6a,6bの一端を保持すると共に、前記シリカガラス管3の端部を封止する、導電性金属材料からなるキャップ部材7a,7bとを備えている。この実施形態の場合、接続線6a,6bは外部に延設されず、前記したようにキャップ部材7a,7bに、その一端部がかしめによって保持されている。しかし、キャップ部材7a,7bは導電性の金属からなるため、キャップ部材7a,7bに電力を供給することにより、接続線7a,7bを介してカーボンワイヤー発熱体2に電力を、より簡易的な構造によって、より確実に供給することができる。
なお、前記キャップ部材を構成する導電性金属材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン等を挙げることができる。
【0030】
このキャップ部材7a,7bは有底円筒形状に形成され、シリカガラス管3の端部をその内部に収容する。また、キャップ部材7a,7bの先端部とシリカガラス管3の外周面との間に例えば、エポキシ樹脂等の有機系接着剤9a,9bを塗布し、前記シリカガラス管3にキャップ部材を固定している。なお、この有機系接着剤は、例えば、セラミックス系接着剤に比べ、ガス不透過性において優れている。
また、図2に示すように、キャップ部材7a,7bの内周面とシリカガラス管3の外周面間には、間隙Sが形成されている。この隙間Sは、キャップ部材7a,7bとシリカガラス管3の熱膨張率の相違から、封止端子部が破損するのを防止するために設けられている。
【0031】
また、このキャップ部材7a,7bの内底面には、前記シリカガラス管3の端部と接し、前記シリカガラス管3の内部を密封するリング状のゴムパッキン部材8a,8bが設けられている。このゴムパッキン部材8a,8bには内側から外側に傾斜するリング状の斜面部8a1が形成され、前記リング状の斜面部8a1にシリカガラス管3の端部の角部が押圧状態で接することにより、前記シリカガラス管3の内部の密封が図られている。
【0032】
また、前記したようにシリカガラス管3の端部が、ゴムパッキン部材8a,8bに対していわゆる線接触状態で押え付けられるため、シリカガラス管3の内部の機密性をより向上させることができる。
なお、前記ゴムパッキン部材8a,8bの材質としては、ブチルゴム、シリコンゴム、フッ素ゴムを用いることができるが、耐熱性、ガス不透過性の観点から、フッ素ゴムがより好ましい。
【0033】
また、前記したように、キャップ部材7a,7bの先端部をシリカガラス管3の外周面に固定し、シリカガラス管3の端部がゴムパッキン部材8a,8bに押圧状態で接するように構成されているため、キャップ部材7a,7bとシリカガラス管3が熱膨張しても、シリカガラス管3の密閉度が低下することはない。
【0034】
この前記接続線6a,6bはMo(モリブデン)、あるいはW(タングステン)棒からなり、その直径は1mm乃至3mmに形成されている。前記接続線6a,6bの直径は、必要に応じて適宜選択することができるが、直径が小さすぎる場合には、大きな電気抵抗となる傾向があり、また直径が大きすぎる場合には、端子自体が大きくなる傾向がある。
なお、接続線6a,6bは、小径シリカガラス管4a,4b内に圧縮収納されているワイヤーカーボン材Aに容易に接続ができるように、その先端部は尖っている。
【0035】
また、前記カーボンワイヤー発熱体2としては、図3に示すような複数本のカーボンファイバーを束ねたファイバー束を複数束用いてワイヤー状に編み込んだもの等が用いられる。このカーボンワイヤー発熱体2は、図4、図5に示すように小径のシリカガラス管4a,4bの内部に圧縮収納された複数本のワイヤーカーボン材A間に、圧縮状態で埋設されている。
【0036】
前記カーボンワイヤー発熱体2の具体例としては、直径5乃至15μmのカーボンファイバー、例えば、直径7μmのカーボンファイバーを1000乃至3000本程度束ねたファイバー束を10束程度用いて直径約1.3〜2.5mmの編紐、あるいは組紐形状に編み込んだ等のカーボンワイヤーが用いられる。
前記の場合において、ワイヤーの編み込みスパンは2乃至5mm程度であり、カーボンファイバーによる表面の毛羽立ちは0.5乃至1.5mm程度である。なお、前記毛羽立ちとは、図3の符号aに示すような、カーボンファイバーが切断されたものの一部が、カーボンワイヤーの外周面から突出したものである。
【0037】
また、前記ワイヤーカーボン材Aは、カーボンワイヤー発熱体2と同一もしくは、少なくともカーボンファイバーを束ねたファイバー束を複数編み上げてなる編紐あるいは組紐形状である点において同等の構成材料が用いられる。
なお、同一の構成材料とは、カーボンファイバー直径、カーボンファイバーの束ねた本数、ファイバー束を束ねる束数、編み込み方、編み込みスパン長さ、毛羽立ち長さ、材質が同一であることを意味している。
【0038】
また、小径のシリカガラス管4a,4bに収容されるワイヤーカーボン材Aの本数は、カーボンワイヤー発熱体2の本数以上が収容されるのが良い。より好ましくは、カーボンワイヤー発熱体2の本数の5倍以上の本数が、ワイヤーカーボン材Aとして収容されているのが良い。具体的に説明すれば、例えばカーボンワイヤー発熱体2が1本のときワイヤーカーボン材Aが14本、あるいはカーボンワイヤー発熱体2が2本のときワイヤーカーボン材Aが12本等、5倍以上の本数がワイヤーカーボン材Aとして用いられるのが好ましい。
【0039】
前記のように、カーボンワイヤー発熱体2とワイヤーカーボン材Aとして例示した、直径7μmのカーボンファイバーを1000乃至3000本程度束ねたファイバー束を9束程度用いて直径約2mmの編紐、あるいは組紐形状に編み込んだ等のカーボンワイヤーの電気抵抗は、室温で略10〜30Ω/1m・1本、1000℃で5〜15Ω/1m・1本である。
また、前記カーボンワイヤーを5本束ねたときの電気抵抗は、室温で略2〜6Ω/1m・1本、1000℃で1〜3Ω/1m・1本である。
【0040】
したがって、ワイヤーカーボン材Aとして、小径シリカガラス管4a,4bに前記カーボンワイヤーが5本、圧縮収容されている場合には、前記したように室温で略2〜6Ω/1m・1本、1000℃で1〜3Ω/1m・1本となり、電気抵抗が1/5(1/本数)となり、低下する。
その結果、ワイヤーカーボン材Aによる発熱を、カーボンワイヤー発熱体2の発熱に比べ、極端に低下させることができる。
【0041】
また、カーボンワイヤー発熱体2と後述する接続線6a,6bとの間にワイヤーカーボン材Aが介在するために、カーボンワイヤー発熱体2の熱が接続線6a,6bに極力伝わらないようにすることができ、封止端子部10a,10bの高温劣化を防止することができる。即ち、ワイヤーカーボン材Aが断熱材として機能し、封止端子部10a,10bの高温劣化を防止することができる。
【0042】
ここで、ワイヤーカーボン材Aの長さは40mm以上、より好ましくは45mm以上に設定される。一般にヒータ温度が1200℃、ワイヤーカーボン材Aの長さが35mmとした場合、封止端子部10a,10bの温度は250℃程度となる。封止端子部10a,10bの温度が270℃を超えた場合、熱膨張差によりキャップ部材とシリカガラス管との固定部近傍(接着剤塗布部近傍)にクラックが入る可能性があるため、断熱材としてのワイヤーカーボン材Aの長さは40mm以上、より好ましくは45mm以上に設定する必要がある。
【0043】
次に、図6、図7に基づいて、前記した第一の実施形態の変形例を説明する。
図6に示した変形例は、かしめによるキャップ部材7aの接続線6aの保持部7a1の外周面に螺子部7a2を形成したものである。そして、外部接続線11の端子部11aの内部に螺子部11a1を形成し、前記螺子部7a2と螺合させることにより、接続線11a2と接続線6aとを電気的に接続するものである。
このように、キャップ部材7a,7bに螺子部7a2を形成し、外部接続線11と螺合させることにより、確実な電気接続を図ることができる。
【0044】
また、図7に示した変形例は、キャップ部材7a,7bの内周面にゴムパッキン部材12が形成され、シリカガラス管3の外周面を、前記円筒状のゴムパッキン部材12に密着させたものである。このように、前述の隙間Sを形成することなく、キャップ部材の内面にゴムパッキン部材12を形成することによっても、キャップ部材7a,7bとシリカガラス管3の熱膨張率の相違から、封止端子部が破損するのを防止することができる。また、機密性をより向上させることができる。
なお、前記ゴムパッキン部材12は、前記キャップ部材7a,7bに内底面に設けられたリング状のゴムパッキン部材8aと一体に形成したものでもよく、また、分割されたものであってもよい。
【0045】
次に、第二の実施形態について、図8乃至図11に基づいて説明する。なお、ヒータの左右の封止端子部が同一形状であるため、一方の封止端子部のみを図示すると共に、一の封止端子部の説明をもって両封止端子部の説明とする。また、封止端子部以外のヒータの構成は、第一の実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
図8に示すようにこの封止端子部17aは、カーボンワイヤー発熱体2に電力を供給する接続線6aと、前記接続線6aを保持すると共に、前記大径のシリカガラス管3の端部を封止する、ゴム製のキャップ部材13aとを備えている。この実施形態の場合、接続線6aは外部に延設され、前記接続線6aの略中間部が前記キャップ部材13aに、固定、保持されている。そのため、前記接続線6aに電力を供給することによりカーボンワイヤー発熱体2に電力を供給することができる。
【0046】
また、キャップ部材13aに対して、接続線6aは次のようにして固定される。まず、図9(a)に示すように接続線6aの中央部6a1以外をマスキングし、中央部6a1を酸化処理し、前記酸化処理した中央部6a1に接着剤16aを塗布する(図9(b))。そして、前記酸化処理した中央部6a1にキャップ部材としてゴムの一体成形を行う。前記酸化処理によって、接続線6aと接着剤16aの結合性を高め、この接着剤6aを介することで接続線6aとゴム製キャップ部材13aの一体成形を可能とすることができる。
【0047】
また、このキャップ部材13aを構成するゴム材としては、ブチルゴム、シリコンゴム、フッ素ゴムを用いることができるが、耐熱性の観点からシリコンゴム、フッ素ゴムが好ましく、また密封性の観点からブチルゴム、フッ素ゴムが好ましい。したがって、耐熱性、機密性(密封性)が好ましい、フッ素ゴムを用いることがより好ましい。
【0048】
このキャップ部材13aは有底円筒形状に形成され、シリカガラス管3の端部をその内部に圧入することにより収容する。
また、このキャップ部材13aの表面にはゴムのガス透過性を抑制するために、ガス不透過性の樹脂膜14aが形成されている。この樹脂膜は、耐熱性の観点からフッ素系樹脂が好ましい。なお、キャップ部材13a自体がフッ素ゴムで形成されている場合には、必ずしも、前記樹脂膜14aを形成する必要はない。
【0049】
なお、キャップ部材13aにシリカガラス管3の端部が単に圧入されているに過ぎないため、キャップ部材13aとシリカガラス管3の熱膨張率の相違から生じる破損を防止することができる。
【0050】
また、キャップ部材13aの内底面を、図10(a)に示すように平面状に形成し、シリカガラス管3の端面が接するようにしても良いが、キャップ部材13aに内側から外側に傾斜するリング状の斜面部13a1を形成し、前記リング状の斜面部13a1にシリカガラス管3の端部の角部が押圧状態で接するようになすことがより好ましい。
このようにシリカガラス管3の端部が、キャップ部材13aに対していわゆる線接触状態で押えられているため、シリカガラス管3の内部の機密性をより向上させることができる。
【0051】
更に、図10(c)に示すように、前記リング状の斜面部13a1のほか、キャップ部材13aに外側から内側に傾斜するリング状の斜面部13a2を形成し、前記リング状の斜面部13a1及びリング状の斜面部13a2にシリカガラス管3の端部の角部が接するようになすことが、前記シリカガラス管3の内部の密閉性がより図られ好ましい。
尚、前記した二つのリング状の斜面部13a1,13a2を形成し、シリカガラス管3の端部の角部が接するようになすことは、第一の実施形態においても実現可能である。
【0052】
また、図11(a)に示すように、シリカガラス管3の端面にアルミニウムからなる反射膜15aを形成するのが好ましい。この反射膜15aによってシリカガラス管3を伝わってくる放射光を反射し、キャップ部材13aを構成するゴム材の劣化を抑制する。
なお、前記反射膜15aを、図11(b)に示すように、シリカガラス管3の端面のみならず、端部の内周面及び外周面に形成することにより、放射光をより反射することができ、キャップ部材13aを構成するゴム材の劣化をより抑制できる。また、前記反射膜15aは蒸着等の手段を用いることにより形成することができる。また、この反射膜を形成することは、第一の実施形態においても実現可能である。
【0053】
上記実施形態の説明において、棒状(管状)のヒータを例にとって説明したが、平板状のヒータにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように本発明にかかるヒータは、あらゆる分野に用いられているヒータに、特に好ましくは一般産業用ヒータに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明にかかるヒータの実施形態を示す断面図である。
【図2】図2は、図1の封止端子構造を示す拡大断面図である。
【図3】図3は、カーボンワイヤーを示す平面図である。
【図4】図4はカーボンワイヤー発熱体と接続線の接続状態を示す断面図である。
【図5】図5は図4の横断面図である。
【図6】図6は第一の実施形態の第一変形例を示す断面図である。
【図7】図7は第一の実施形態の第二変形例を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明にかかる第二の実施形態を示す断面図である。
【図9】図9は、第二の実施形態を製造過程を説明するための図であって、接続線を示す側面図である。
【図10】図10は、第二の実施形態の変形例を示す断面図である。
【図11】図11は、第二の実施形態の変形例を示す断面図である。
【図12】図12は、従来のヒータを示す側面図である。
【図13】図13は、図12の封止端子部の拡大斜視図である。
【図14】図14は、従来の他の封止端子構造を示した側面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ヒータ
2 カーボンワイヤー発熱体
3 シリカガラス管
3a シリカガラス管の端部
3b シリカガラス管の端部
4a,4b 小径のシリカガラス管
6a,6b 接続線
7a,7b キャップ部材
8a,8b ゴムパッキン部材
9a,9b 接着剤
10a,10b 封止端子部
11 外部接続線
12 ゴムパッキン部材
13a キャップ部材
13a1 斜面部
13a2 斜面部
17a 封止端子部
A ワイヤーカーボン材
a 毛羽立ち

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体がガラス部材中に収納されたヒータの封止端子構造において、
前記発熱体に電力を供給する接続線と、前記接続線の一端を保持すると共にガラス部材の端部を封止する、導電性金属材料からなる有底筒形状のキャップ部材と、前記キャップ部材の少なくとも内底面に設けられた、ガラス部材の端部と接するゴムパッキン部材とを備え、
前記ガラス部材の端部を前記キャップ部材に収容すると共に、ガラス部材の端部角部が前記ゴムパッキン部材の斜面部に接することを特徴とするヒータの封止端子構造。
【請求項2】
前記キャップ部材による前記接続線の一端の保持が、キャップ部材の一部での前記接続線のかしめによる保持であり、かつ前記接続線を保持するキャップ部材の保持部外周面に螺子部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載されたヒータの封止端子構造。
【請求項3】
前記ガラス部材の端部の少なくとも端面に、放射光を反射する反射部材が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたのヒータの封止端子構造。
【請求項4】
発熱体がガラス部材中に収納されたヒータの封止端子構造において、
前記発熱体に電力を供給する接続線と、前記接続線を保持、固定すると共に、ガラス部材の端部を封止するゴム製のキャップ部材と、前記キャップ部材の少なくとも内底面に形成された、ガラス部材の端部と接する斜面部とを備え、
前記キャップ部材は有底筒形状に形成され、ガラス部材の端部をその内部に収容すると共に、ガラス部材の端部角部が前記斜面部に接することを特徴とするヒータの封止端子構造。
【請求項5】
前記キャップ部材を構成する材質がフッ素ゴムであることを請求項4に記載されたヒータの封止端子構造。
【請求項6】
前記キャップ部材にガス不透過性の樹脂膜を形成したことを特徴とする請求項4に記載されたヒータの封止端子構造。
【請求項7】
前記ガラス部材の端部の少なくとも端面に、放射光を反射する反射部材が形成されていることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれかに記載されたのヒータの封止端子構造。
【請求項8】
前記請求項1乃至請求項7のいずれかに記載された封止端子構造を用いたヒータにおいて、
発熱体がカーボンワイヤー発熱体であって、
前記カーボンワイヤー発熱体がガラス部材中に収納されると共に、前記カーボンワイヤー発熱体の端部がガラス管部の内部に充填されたワイヤーカーボン部材に保持され、
かつ、カーボンワイヤー発熱体に電力を供給する接続線が、前記ワイヤーカーボン部材に保持されていることを特徴とするヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−4673(P2006−4673A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177299(P2004−177299)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000221122)東芝セラミックス株式会社 (294)
【Fターム(参考)】