説明

ヒータ及びこのヒータを有する像加熱装置

【課題】 非通紙部昇温を抑制しつつヒータ短手方向の温度分布の均一性を改善できるヒータ及びこのヒータを備えた像加熱装置を提供すること。
【解決手段】 基板上に基板長手方向に沿って設けられている二本の導電体間に正の抵抗温度特性を有する複数本の発熱抵抗体を並列接続した構成の第1の発熱ライン及び第2の発熱ラインを並列に接続した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、電子写真プリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱定着装置に利用すれば好適なヒータ、及びこのヒータを搭載する像加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタに搭載する定着装置として、エンドレスベルトと、エンドレスベルトの内面に接触するセラミックヒータと、エンドレスベルトを介してセラミックヒータと定着ニップ部を形成する加圧ローラと、を有する装置がある。この定着装置を搭載する画像形成装置で小サイズ紙を連続プリントすると、定着ニップ部長手方向において紙が通過しない領域の温度が徐々に上昇するという現象(非通紙部昇温)が発生する。非通紙部の温度が高くなり過ぎると、装置内の各パーツへダメージを与えたり、非通紙部昇温が生じている状態で大サイズ紙にプリントすると、小サイズ紙の非通紙部に相当する領域でトナーが高温オフセットすることもある。
【0003】
この非通紙部昇温を抑制する手法の一つとして、セラミック基板上の発熱抵抗体を正の抵抗温度特性を有する材質で形成し、発熱抵抗体に対してヒータの短手方向(記録紙の搬送方向)に電流が流れるように二本の導電体を基板の短手方向の両端に配置することが考えられている。非通紙部が昇温すると非通紙部の発熱抵抗体の抵抗値が昇温し、非通紙部の発熱抵抗体に流れる電流が抑制されることにより非通紙部の発熱を抑制するという発想である。正の抵抗温度特性は、温度が上がると抵抗が上がる特性であり、以後PTC(Positive Temperature Coefficient)と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−209493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているように、正の抵抗温度特性を有する材質を用いて、ヒータの短手方向(記録紙の搬送方向)に電流が流れるように二本の導電体を基板の短手方向の両端に配置する方法では、ヒータ短手方向(用紙搬送方向)に温度分布が生じると、短手方向の高温部に配置されている発熱抵抗体の抵抗値が上昇するため、短手方向の高温部の発熱量が大きくなり、短手方向の温度分布が不均一になりやすいということが判った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の解題を解決するための本発明は、基板と、前記基板上に基板長手方向に沿って設けられている第1導電体と、前記基板上に前記第1導電体とは基板短手方向で異なる位置に前記長手方向に沿って設けられている第2導電体と、正の抵抗温度特性を有しており前記第1導電体と前記第2導電体の間に電気的に並列接続されている複数本の発熱抵抗体と、を有する第1の発熱ラインと、前記基板上に基板長手方向に沿って設けられている第3導電体と、前記基板上に前記第3導電体とは基板短手方向で異なる位置に前記長手方向に沿って設けられている第4導電体と、正の抵抗温度特性を有しており前記第3導電体と前記第4導電体の間に電気的に並列接続されている複数本の発熱抵抗体と、を有する第2の発熱ラインと、を有し、前記第1の発熱ラインと第2の発熱ラインは、基板短手方向で異なる位置に前記長手方向に沿って設けられており、前記第1の発熱ラインと第2の発熱ラインが電気的に並列に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、正の抵抗温度特性を有する抵抗発熱体を用いた像加熱装置において、非通紙部昇温を抑制しつつヒータ短手方向の温度分布の均一性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の像加熱装置の断面図。
【図2】実施例1のヒータ構成図。
【図3】実施例1のヒータの用紙サイズとの関係を示した図。
【図4】実施例1のヒータの発熱分布説明図。
【図5】実施例1のヒータの効果説明図。
【図6】実施例2のヒータ構成図。
【図7】実施例3のヒータ構成図。
【図8】比較例のヒータ構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は像加熱装置の一例としての定着装置100の断面図である。定着装置100は、筒状のフィルム(エンドレスベルト)102と、フィルム102の内面に接触するヒータ200と、フィルム102を介してヒータ200と共に定着ニップ部Nを形成する加圧ローラ(ニップ部形成部材)108と、を有する。フィルムのベース層の材質は、ポリイミド等の耐熱樹脂、またはステンレス等の金属である。
【0010】
加圧ローラ108は、鉄やアルミニウム等の材質の芯金109と、シリコーンゴム等の材質の弾性層110を有する。ヒータ200は耐熱樹脂製の保持部材101に保持されている。保持部材101はフィルム102の回転を案内するガイド機能も有している。加圧ローラ108は不図示のモータから動力を受けて矢印方向に回転する。加圧ローラ108が回転することによってフィルム102が従動して回転する。
【0011】
ヒータ200は、セラミック製のヒータ基板105と、基板105上に発熱抵抗体を用いて形成された発熱ラインA(第1の発熱ライン)及び発熱ラインB(第2の発熱ライン)と、発熱ラインA及びBを覆う絶縁性(本実施例ではガラス)の表面保護層107を有する。ヒータ基板105の裏面側であって、プリンタで設定されている利用可能な最小サイズ紙(本例では封筒DL:110mm幅)の通紙領域にはサーミスタ等の温度検知素子111が当接している。温度検知素子111の検知温度に応じて商用交流電源から発熱ラインへ供給する電力が制御される。
【0012】
未定着トナー画像を担持する記録材(用紙)Pは、定着ニップ部Nで挟持搬送されつつ加熱されて定着処理される。ヒータ基板105の裏面側には、ヒータが異常昇温した時に作動して発熱ラインへの給電ラインを遮断するサーモスイッチ等の安全素子112も当接している。安全素子112も温度検知素子111と同様に最小サイズ紙の通紙領域に当接している。番号104は保持部材101に不図示のバネの圧力を加えるための金属製のステーである。
【0013】
本例で説明する定着装置は、A3サイズ(297mm×420mm)を縦送りする(長辺が搬送方向と平行になるように搬送する)場合の用紙幅297mmに対応したプリンタに搭載するものである。A3サイズよりも用紙幅が狭い紙、例えばA5サイズ(148mm×210mm)を横送りする場合の用紙幅210mmにも対応できるように設計してある。
【実施例1】
【0014】
図2は実施例1のヒータの簡略図を示している。なお、発熱ラインA中の発熱抵抗体及び発熱ラインB中の発熱抵抗体は、いずれも正の抵抗温度特性(PTC)である。発熱ラインA(第1の発熱ライン)は1個の発熱ブロックA1を有し、発熱ラインB(第2の発熱ライン)も1個の発熱ブロックB1を有している。また、発熱ラインAと発熱ラインBは並列に接続されており、電極E1(第1の電極)及びE2(第2の電極)から電力が供給される。
【0015】
発熱ラインAは、基板長手方向に沿って設けられている導電パターンD1(発熱ラインAの第1導電体)と、導電パターンD1とは基板の短手方向で異なる位置に基板長手方向に沿って設けられている導電パターンD2(発熱ラインAの第2導電体)を有する。導電パターンD1と導電パターンD2の間には複数本(本例では94本)の発熱抵抗体(A1−1〜A1−94)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックA1を形成している。
【0016】
発熱ラインBは、基板長手方向に沿って設けられている導電パターンD3(発熱ラインBの第3導電体)と、導電パターンD3とは基板の短手方向で異なる位置に基板長手方向に沿って設けられている導電パターンD4(発熱ラインBの第4導電体)を有する。導電パターンD3と導電パターンD4の間には複数本(本例では94本)の発熱抵抗体(B1−1〜B1−94)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックB1を形成している。
【0017】
導電パターン(第5導電体)D5は、導電パターンD2と導電パターンD3の間(前記短手方向の内側)に配置されている。導電パターンD1と導電パターンD4は、基板長手方向の電極側(図面の左側)で、電極E1と接続されている。導電パターンD2と導電パターンD3は、基板長手方向の非電極側(図面の右側)で導電パターンD5と接続されており、導電パターンD5は、基板長手方向の電極側(図面の左側)で電極E2と接続されている。
【0018】
導電パターンD5を用いることで、発熱ブロックA1及び発熱ブロックB2に対して、基板長手方向の両側から電力を供給できるため、後述するヒータ200の基板長手方向の発熱分布を改善する効果を得るために有効である。
【0019】
また、電極E1と電極E2を長手方向の片側に集めることで、不図示のコネクタを基板長手方向の片側のみに配置することができる。2極の電極をもつ一つのコネクタで、ヒータ200に電力を供給する場合に有効である。
【0020】
導電パターンD2、導電パターンD3、導電パターンD5は、ヒータ200に電力を供給する際に電気的にほぼ同電位となるため、導電パターンD5を導電パターンD2と導電パターンD3の間(基板短手方向の内側)に配置することが好ましい。導電パターン間の放電等を考慮せずに、導電パターン間隔(D2、D3、D5の間隔)を狭めることができるので、比較的に基板短手方向の幅の狭いヒータ基板上にヒータを形成する場合に有効である。
【0021】
図2(b)は発熱ブロックA1の詳細図を示している。導電体D1と導電体D2の間には複数本(本例では94本)の発熱抵抗体(A1−1〜A1−94)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックA1を形成している。発熱ブロックA1は線長a−1、線幅b−1、傾きθ−1の発熱抵抗体A1−1から、線長a−94、線幅b−94、傾きθ−94の発熱抵抗体A1−94まで、間隔c−1〜c−94で94本並べ、導電体を介して並列接続している。発熱ブロック長さを、図2(c)のcで示すように、左端にある発熱抵抗体の短辺の中心から、右端にある発熱抵抗体の短辺の中心までのヒータ長手方向の長さとして定義する。ヒータ200では、発熱抵抗体間隔c−1〜c−94は等間隔であり、c/94とする。
【0022】
ここで、発熱ブロックA1及び発熱ブロックB1の導電パターンD1〜D4の抵抗値はゼロではなく、導電体で生じる電圧降下の影響により、一つの発熱ブロック中、中央部の発熱抵抗体に印加される電圧は両端部の発熱抵抗体に印加される電圧に比べて小さくなることが判った。発熱抵抗体の発熱量は印加電圧の二乗に比例するため、一つの発熱ブロックの中央部と両端部で発熱量が異なってしまう。このように、一つの発熱ブロックで発熱ムラが生じると、長手方向の発熱分布ムラも大きくなる。
【0023】
上述した発熱ムラを抑制するために、発熱ブロックA1は用紙搬送基準X側(発熱ブロックA1の中央側)にある発熱抵抗体(A1−47、A1−48)ほど抵抗値が低く、発熱ラインA端部側にある発熱抵抗体(A1−1、A1−94)ほど抵抗値が高くなるようにしている。
【0024】
図2(c)に示す表には、発熱ブロックA1の単位長さ辺りの発熱量を調整する方法の一例を示している。ここでは発熱抵抗体の長さa−n、間隔c−nは一定とし、線幅b−nを調整して長手方向における発熱抵抗体の抵抗値を調整している。発熱抵抗体の抵抗値は、長さ/線幅に比例するため、線幅と同様に発熱抵抗体長さを調整してもよい。このように、発熱ラインAは、長手方向の中央に配置されている発熱抵抗体よりも発熱ラインの端部に配置されている発熱抵抗体のほうが抵抗値が高い、または、一つの発熱ラインに含まれる複数本の発熱抵抗体の間隔が、長手方向の中央よりも端部のほうが広い、の少なくともいずれか一方の条件を満たしていればよい。また図2(c)に示すように発熱抵抗体形状を長方形にすることで、発熱抵抗体に流れる電流分布をより均一にすることができる。例えば発熱抵抗体を平行四辺形にした場合、最短経路により多くの電流が流れるため、発熱抵抗体に流れる電流分布に偏りが生じる場合がある。ただし、本発明の非通紙部昇温を抑制する効果は、平行四辺形の発熱抵抗体を用いた場合でも得ることができ、発熱抵抗体の形状を長方形に限るものではない。また、曲線状の発熱抵抗体を用いても良い。また、隣り合う発熱抵抗体同士が基板長手方向において重なり合うように配置することで、基板長手方向における微小な発熱分布ムラを抑えるようにしている。本実施例では、図2(c)に示すように、発熱抵抗体の短辺の中央が、隣の発熱抵抗体の短辺の中央と重なりあうように配置されている。発熱ラインBの抵抗値調整方法は、発熱ラインAと同様のため、説明を省略する。
【0025】
図3では、ヒータ200の長手方向における発熱分布を示している。発熱ブロックA1及び発熱ブロックB1に対して、基板長手方向の両側から電力を供給し、図2で説明した発熱ブロックA1及びB1の抵抗値調整方法を行うことで、ヒータ200の基板長手方向の発熱分布の均一性を改善できる。
【0026】
図4はヒータ200の非通紙部昇温を説明するための図である。図4は、発熱ラインの中央部を基準にA5サイズ(210mm×148mm)紙を縦方向搬送する場合を例として示している。異なる用紙を搬送する際の基準位置を記録材(用紙)搬送基準Xとして定義する。
【0027】
不図示の給紙カセットは用紙の位置を規制する位置規制板を有しており、積載された記録紙のサイズごとに所定の位置から記録紙を給紙し、像加熱装置の所定の位置を記録紙が通過するように搬送している。本例では中央部を基準にする場合について説明を行っているが、左右どちらかの端部を基準に用紙搬送を行う場合でも同様に、基準とは逆側の端部で非通紙部昇温が生じる。例えば左端を基準に用紙搬送を行う場合には、記録材(用紙)搬送基準Xは左端となる。
【0028】
図4のヒータ200は、A3サイズ紙(約297mm×420mm)を縦方向搬送する場合に対応するため、紙幅297mmに対して297mmの発熱ライン長を有している。297mmの発熱ライン長を有するヒータ200に紙幅210mmのA5サイズ(148mm×210mm)を縦方向搬送する場合、発熱ラインの両端部に43.5mmの非通紙領域が生じる。ヒータ200の温度制御は通紙部の中央付近に設けられたサーミスタ111の出力に基づいて行われており、非通紙部では紙に熱を奪われないため、非通紙部の温度が通紙部に比べて上昇する。A5サイズ用紙の端部は発熱ラインA1の発熱抵抗体A1−14及びA1−81上を通過しており、同様に、A5サイズ用紙の端部は発熱ラインB1の発熱抵抗体B1−14及びB1−81上を通過している。本ヒータ200は図4に示したような、小サイズ紙を印刷する際に生じる、非通紙部昇温を抑制することを目的とした、PTCの抵抗発熱体を用いたヒータである。
【0029】
図5はヒータ200の基板短手方向の温度分布の均一性を改善する効果を説明するために用いる図である。図5(a)は記録材Pを加熱搬送している場合など、加圧ローラ108が回転している状態におけるヒータ200の基板短手方向の温度分布を示している。加圧ローラ108の回転や用紙の搬送は定着装置の上流側から下流側に向かって行われるため、ヒータ200の基板短手方向の下流側の温度が上昇している。
【0030】
図5(b)は図5(a)の状態におけるヒータ200の基板短手方向の発熱分布を示している。また、比較例として用いるヒータ800(図8(a)に示す)の発熱分布を示している。比較例として用いるヒータ800では、ヒータ200の発熱ラインA及び発熱ラインBが直列にされている。
【0031】
本実施例のヒータ200では、基板短手方向の上流側(発熱ラインA側)の温度が、基板短手方向の下流側(発熱ラインB側)の温度に比べて低くなると、発熱ブロックA1の抵抗値が低下するため、並列接続された発熱ブロックB1に比べて発熱量が増加する。このように、ヒータ200では温度が低くなった上流側の発熱量が増加するため、基板短手方向の温度分布の均一性が改善される。
【0032】
点線で示した比較例のヒータ800では、基板短手方向の上流側(発熱ラインA側)の温度が、基板短手方向の下流側(発熱ラインB側)の温度に比べて低くなると、発熱ブロックA1の抵抗値が低下するため、直列接続された発熱ブロックB1に比べて発熱量が低下する。比較例のように発熱ブロックA1と発熱ブロックA2が電気的に直列接続された場合では、温度が低くなった上流側の発熱量が低下するため、基板短手方向の温度分布の均一性が悪化してしまう。
【0033】
ここで発熱ラインAの発熱分布にのみ注目する。一つの発熱ブロックA1の中でも、温度が低い箇所の発熱量が低く、温度が高い箇所の発熱量が高くなることが分かる。例えば、比較例のヒータ801(図8(b)に示す)のように、発熱ラインAのみを有するヒータにおいても、PTCの抵抗発熱材料を用いて、ヒータの短手方向(記録紙の搬送方向)に電流が流れるように配置したヒータでは、基板短手方向の温度分布が生じると、基板短手方向の温度分布の均一性を更に悪化させてしまう特性がある。
【0034】
本実施例のヒータ200で示したように、PTCの抵抗発熱材料を用いて、ヒータの短手方向(記録紙の搬送方向)に電流が流れるように配置した発熱ラインを複数本(本実施例では発熱ラインAと発熱ラインB)用いて並列接続することで、図5で説明したように、基板短手方向の温度分布の均一性が改善することができる。
【0035】
このように実施例1のヒータ200を用いることにより、非通紙部昇温を抑制しつつヒータ短手方向の温度分布の均一性を改善できる。
【実施例2】
【0036】
次に実施例2のヒータを説明する。実施例1と同様の構成については説明を省略する。
図6は本実施例2に用いるヒータ600を説明するための概略図面である。発熱ラインA(第1の発熱ライン)は1個の発熱ブロックA1を有し、発熱ラインB(第2の発熱ライン)も発熱ブロックB1を有し、発熱ラインA及び発熱ラインBは並列に接続されている。また、並列接続された発熱ラインA及び発熱ラインBは、電極E1と電極E2を介して電力が供給される。
【0037】
実施例1では図2(a)に示すように、導電パターンD3、導電パターンD4、導電パターンD5の3つの導電パターンを用いていた。本実施例のヒータ600では、図6に示すように、一本の導電体D2(3)のみで形成することができる。そのため、より基板短手方向の幅の狭いヒータ基板上にヒータを形成する場合に有効な発熱パターンとなる。
【0038】
発熱ラインAは、基板長手方向に沿って設けられている導電パターンD1(発熱ラインAの第1導電体)と、導電パターンD1とは基板の短手方向で異なる位置に基板長手方向に沿って設けられている導電パターンD2(D3)(発熱ラインAの第2導電体)を有する。
【0039】
導電パターンD1と、導電パターンD2(D3)の間には複数本(本例では94本)の発熱抵抗体(A1−1〜A1−94)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックA1を形成している。
【0040】
発熱ラインBは、基板長手方向に沿って設けられている導電パターンD4(発熱ラインBの第1導電体)と、導電パターンD4とは基板の短手方向で異なる位置に基板長手方向に沿って設けられている導電パターンD2(D3)(発熱ラインBの第2導電体)を有する。
【0041】
導電パターンD4と、導電パターンD2(D3)の間には複数本(本例では94本)の発熱抵抗体(B1−1〜B1−94)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックBを形成している。
【0042】
また、図6(b)のヒータ601に示すように、基板にスルーホールF1及びF2を形成し、ヒータ601の基板裏面を導電パターンを介して、電極E1と電極E2を基板長手方向の片側に配置してもよい。
【0043】
本実施例のヒータ600においても、非通紙部昇温を抑制しつつヒータ短手方向の温度分布の均一性を改善できる。
【実施例3】
【0044】
次に実施例3のヒータを説明する。実施例1と同様の構成については説明を省略する。
図7は本実施例3のヒータ700を説明するための概略図面である。発熱ラインA(第1の発熱ライン)は、2個の発熱ブロックA1とA2を有し、発熱ブロックA1とA2は直列に接続されている。発熱ラインB(第2の発熱ライン)も、2個の発熱ブロックB1とB2を有し、発熱ブロックB1とB2も直列に接続されている。また、並列接続された発熱ラインA及び発熱ラインBは、電極E1と電極E2を介して電力が供給される。発熱ラインAは、基板長手方向に沿って設けられている導電体D1(発熱ラインAの第1導電体)と、導電体D1とは基板の短手方向で異なる位置に基板長手方向に沿って設けられている導電体D2(発熱ラインAの第2導電体)を有する。導電体D1は基板長手方向で2本(D1−1、D1−2)に分割されている。発熱ラインBの構成は発熱ラインAと同様のため説明は省略する。
【0045】
発熱ブロックA1は発熱ブロックの中央側にある発熱抵抗体(A1−24)ほど抵抗値が低く、発熱ブロックの端部側にある発熱抵抗体(A1−1、A1−47)ほど抵抗値が高い。発熱ブロックA2は発熱ブロックの中央側にある発熱抵抗体(A2−24)ほど抵抗値が低く、発熱ブロックの端部側にある発熱抵抗体(A2−1、A2−47)ほど抵抗値が高い。発熱ラインBは発熱ラインAと同様の構成のため説明を省略する。
【0046】
本実施例のヒータ700のように、発熱ラインを複数の発熱ブロックに分割し、直列接続したヒータでは、実施例1で説明したヒータ200に比べて、比較的に低いシート抵抗値の抵抗発熱材料を用いることができる。
【0047】
本実施例のヒータ700のように、発熱ラインを複数の発熱ブロックに分割し、一つの発熱ライン内の発熱ブロックを直列接続したヒータにおいても、非通紙部昇温を抑制しつつヒータ短手方向の温度分布の均一性を改善できる。
【符号の説明】
【0048】
100 像加熱装置
200 ヒータ
A 発熱ラインA(第1の発熱ライン)
B 発熱ラインB(第2の発熱ライン)
A1 発熱ラインAの発熱ブロック
B1 発熱ラインBの発熱ブロック
D1 第1導電体
D2 第2導電体
D3 第3導電体
D4 第4導電体
D5 第5導電体
A−1〜A−94、B−1〜B−94 発熱抵抗体(PTC)
X 記録材(用紙)搬送基準

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に基板長手方向に沿って設けられている第1導電体と、前記基板上に前記第1導電体とは基板短手方向で異なる位置に前記長手方向に沿って設けられている第2導電体と、正の抵抗温度特性を有しており前記第1導電体と前記第2導電体の間に電気的に並列接続されている複数本の発熱抵抗体と、を有する第1の発熱ラインと、
前記基板上に基板長手方向に沿って設けられている第3導電体と、前記基板上に前記第3導電体とは基板短手方向で異なる位置に前記長手方向に沿って設けられている第4導電体と、正の抵抗温度特性を有しており前記第3導電体と前記第4導電体の間に電気的に並列接続されている複数本の発熱抵抗体と、を有する第2の発熱ラインと、
を有し、前記第1の発熱ラインと第2の発熱ラインは、基板短手方向で異なる位置に前記長手方向に沿って設けられており、前記第1の発熱ラインと第2の発熱ラインが電気的に並列に接続されていることを特徴とするヒータ。
【請求項2】
前記第1及び第2の発熱ラインは、前記長手方向の中央に配置されている発熱抵抗体よりも発熱ラインの端部に配置されている発熱抵抗体のほうが抵抗値が高い、または、一つの発熱ラインに含まれる前記複数本の発熱抵抗体の間隔が、前記長手方向の中央よりも端部のほうが広い、の少なくともいずれか一方の条件を満たしていることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記基板上に第1の電極と、第2の電極を前記長手方向の片側に有しており、
前記第2導電体及び前記第3導電体は、前記第1導電体と前記第4導電体よりも基板短手方向の内側に配置されており、
前記第2導電体と前記第3導電体の基板短手方向の間に第5導電体が配置されており、
前記第1の電極と前記第1導電体及び第4導電体が接続されており、
前記第2の電極と前記第5が導電体は接続されており、
前記第2導電体及び第3導電体は前記第5導電体と接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載のヒータ。
【請求項4】
前記第1の発熱ライン及び第2の発熱ラインは複数の発熱ブロックに分割されており、一つの発熱ライン内の前記発熱ブロックは直列に接続されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載のヒータ。
【請求項5】
前記基板上に第1の電極と、第2の電極を前記長手方向の片側に有しており、
前記第2導電体及び前記第3導電体は、前記第1導電体と前記第4導電体よりも基板短手方向の内側に配置されており、
前記第1の電極と前記第1導電体及び第4導電体が接続されており、
前記第2の電極と前記第2導電体及び第3導電体が接続されており、
前記第2導電体と第3導電体が、前記長手方向に沿って一本の導電体で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のヒータ。
【請求項6】
エンドレスベルトと、前記エンドレスベルトの内面に接触するヒータと、前記エンドレスベルトを介して前記ヒータと共にニップ部を形成するニップ部形成部材と、を有し、前記ニップ部で画像を担持する記録材を挟持搬送しつつ加熱する像加熱装置において、
前記ヒータが請求項1〜5いずれか1項に記載のヒータであることを特徴とする像加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−189807(P2012−189807A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53298(P2011−53298)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】