説明

ヒータ及び画像加熱装置

【課題】商用電源に応じて抵抗値を切り替え可能な画像加熱装置において、信頼性の高いヒータおよび該ヒータを備えた画像加熱装置を提供する。
【解決手段】第1の導電経路で発熱抵抗体を長手方向に沿って基板の短手方向の両端側に位置させ、第2の導電経路で発熱抵抗体を第1の導電経路に挟まれる短手方向の中間に位置させ、発熱抵抗体の抵抗温度係数を第2の導電経路の方が第1の導電経路より大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子写真方式を採用した複写機やプリンター、あるいはファクシミリ等の記録材上にトナー画像形成可能な画像形成装置に搭載される画像加熱装置及びその装置に用いられるヒータに関する。より詳しくは、電源電圧100V/200Vの両方に使用できるユニバーサルなヒータ及び画像加熱装置に関する。なお、画像加熱装置としては、記録材に形成された未定着画像を定着する定着装置や、記録材に定着された画像を加熱することにより画像の光沢度を向上させる光沢処理加熱装置等が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
写真複写機や電子写真プリンタに搭載される定着装置における加熱方式として、フィルム加熱方式が提案され、実用化されている。このフィルム加熱方式は、加熱体に加熱用回転体である耐熱性の薄膜フィルム(定着フィルム)を加圧部材としての加圧用回転体(弾性ローラ)で密着させて摺動搬送させる。そして、この定着フィルムを挟んで加熱体と加圧用回転体とで形成される圧接ニップ部に未定着画像を担持した記録材としての被加熱材を導入して定着フィルムと一緒に搬送させる。これにより、未定着画像は、定着フィルムを介して付与される加熱体からの熱と圧接ニップ部の加圧力によって、転写材上に加熱定着される。
【0003】
このフィルム加熱方式の定着装置は、定着装置全体を低熱容量部材で構成することができるため、省電力化・ウェイトタイム短縮化(クイックスタート性)が可能である。加熱体としては、例えばアルミナ(Al2O3)や窒化アルミニウム(AlN)等、低熱容量の板状セラミック基材をベースとし、その一面に銀パラジウム(Ag/Pd)・Ta2N等を用いた発熱パターンを用いる。そして、発熱パターンに通電させるためのAg等の低抵抗材材料よりなる給電電極パターンをスクリーン印刷等で形成具備させ、更に発熱パターン形成面を薄肉ガラス保護層で覆う。
【0004】
この加熱体は、給電電極パターンを介して発熱パターンに通電がなされることにより発熱し、加熱体全体が急速昇温する。そして、この加熱体の昇温を、加熱体に当接あるいは近傍に配置された温度検知手段としてのサーミスタにより検知し、通電駆動制御部へフィードバックする。通電制御部は、サーミスタで検知される加熱体温度が所定のほぼ一定温度(定着温度)に維持されるように、発熱パターンに対する通電を制御する。これにより、加熱体は所定の定着温度に加熱制御される。
【0005】
このような抵抗発熱体を用いた画像加熱装置において、商用電源の電圧が100V系(ex.100V(日本)〜127V(メキシコ))と200V系(ex.200V(北朝鮮)〜240V(インド))の地域があることに対応する必要がある。ここで、同じ抵抗値のヒータを用いると、ヒータに投入される電力は電圧の二乗に比例するため、商用電源電圧が200Vの場合、100Vに比べて、ヒータに供給可能な最大電力値は4倍になる。ヒータに供給可能な最大電力が大きくなると、位相制御や波数制御などのヒータの電力制御で生じる高調波電流やフリッカ等が増加してしまう。
【0006】
また、画像加熱装置が熱暴走した際に生じる電力が4倍に増加するため、より応答性の早い電気的遮断回路が必要になる。そのため、商用電源電圧が100Vの地域と200V地域では、異なる抵抗値のヒータを有する画像加熱装置を用いる場合が多い。100Vの商用電源電圧が供給されている地域と、200Vの商用電源電圧が供給されている地域で共用できるユニバーサル画像加熱装置を実現する手段として、リレーなどスイッチ手段を用いて、ヒータの抵抗値を切り替える方法が考案されている。
【0007】
特許文献1に記載の画像加熱装置では、ヒータ長手方向に伸びた第1の導電経路と第2の導電経路を有し、第1の導電経路のみに通電する場合と、第1の導電経路と第2の導電経路を並列に接続して通電する場合で、ヒータの抵抗値を切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−147931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の方法では、商用電源100V用と200V用にヒータ抵抗値を切り替えると、ヒータの短手方向(通紙方向)の発熱分布が異なってしまう。特に、ヒータの短手方向の発熱分布が不均一になる場合には、画像加熱装置のヒータに印加される応力が大きくなり破損が生じ易く、画像加熱装置の信頼性が低下するという課題があった。
【0010】
本発明の目的は、このような課題に鑑み、信頼性を向上できるヒータ及び該ヒータを備えた画像加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係わるヒータの代表的な構成は、長手方向および前記長手方向に交差する短手方向を備える基板と、前記基板に設けられて、正の抵抗温度特性を備え、前記長手方向の端部に設けられる電極を介して通電により発熱する発熱抵抗体と、を有するヒータであって、前記発熱抵抗体は、前記基板における第1の導電経路および前記第1の導電経路と電気的に並列に接続される第2の導電経路に設けられ、前記第1の導電経路は、第1の電源電圧が印加される場合および前記第1の電源電圧より低い第2の電源電圧が印加される場合に共通に用いられ、且つ、前記第1の導電経路では、前記発熱抵抗体が前記長手方向に沿って前記基板の前記短手方向の両端側に位置し、前記第2の導電経路は、前記第2の電源電圧が印加される場合に用いられ、且つ、前記第2の導電経路では、前記発熱抵抗体が前記長手方向に沿って前記第1の導電経路に挟まれる前記短手方向の中間に位置し、前記第2の導電経路の前記発熱抵抗体の抵抗温度係数を、前記第1の導電経路の前記発熱抵抗体の抵抗温度係数より大きくしたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係わる画像加熱装置の代表的な構成は、回動可能であって回動方向に交差する方向に加熱可能な加熱回動部材と、前記加熱回動部材の内周側に設けられるヒータと、前記ヒータに摺動して回動する前記加熱回動部材を介してニップ部を形成する加圧部材と、を有し、前記ニップ部に画像を担持した記録材を挟持搬送して前記画像を加熱する画像加熱装置であって、前記ヒータは上述したヒータであり、かつ前記回動方向に交差する方向を前記長手方向とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ヒータ基板の短手方向における中央部での発熱を抑えることで、ヒータ基板の温度分布を均一化し、ヒータにかかる熱応力を小さくすることができ、信頼性の高いヒータ及び画像加熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)、(b)は本発明の第1の実施形態に係るヒータの概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係るヒータおよび画像加熱装置を搭載した画像形成装置の概略図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像加熱装置の概略図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る回路図である。
【図5】(a)乃至(g)は第1の実施形態の効果を説明する図である。
【図6】(a)乃至(c)は比較例1、比較例2との比較を表す図である。
【図7】(a)、(b)は第2の実施形態に係るヒータの概略図である。
【図8】(a)、(b)は第2の実施形態(及び第3の実施形態)の効果を説明する図である。
【図9】(a)、(b)は第3の実施形態に係るヒータの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
《第1の実施形態》
(画像形成装置)
図2に本発明の実施形態に係るヒータおよび画像加熱装置を搭載した画像形成装置の構成の概容を示す。給紙カセット101に積載された記録紙はピックアップローラ102によって1枚だけ給紙カセット101から送出され、給紙ローラ103によってレジストローラ104に向けて搬送される。さらに記録紙はレジストローラ104によって所定のタイミングでプロセスカートリッジ105へ搬送される。
【0016】
プロセスカートリッジ105は、帯電手段106、現像手段としての現像ローラ107、クリーニング手段であるクリーナ108、および電子写真感光体である感光体ドラム109で一体的に構成されている。そして、公知の電子写真プロセスの一連の処理によって未定着トナー像が記録紙上に形成される。感光体ドラム109は帯電手段106によって表面を一様に帯電された後、像露光手段であるスキャナユニット111により画像信号に基づいた像露光が行なわれる。
【0017】
スキャナユニット111内のレーザダイオード112から出射されるレーザ光は、回転するポリゴンミラー113および反射ミラー114を経て主走査方向(紙面垂直方向)に走査される。そして、感光体ドラム109の回転により副走査方向(紙面内方向)に走査され、感光体ドラム109の表面上に2次元の潜像が形成される。感光体ドラム109の潜像は、現像ローラ107によってトナー像として可視化され、トナー像は転写ローラ110によって、レジストローラ104から搬送されてきた記録紙上に転写される。
【0018】
続いて、トナー像が転写された記録紙は、画像加熱装置115に搬送されて加熱加圧処理され、記録紙上の未定着トナー像が記録紙に定着される。記録紙は、さらに中間排紙ローラ116、排紙ローラ117によって画像形成装置本体外に排出され、一連のプリント動作を終える。モータ118は、画像加熱装置119を含む各ユニットに駆動力を与えている。
【0019】
(画像加熱装置)
図3に、本発明の実施形態に係る画像加熱装置の構成の概容を示す。画像加熱装置115は加圧部材駆動式・テンションレスタイプのフィルム加熱方式の加熱装置である。加熱回動部材であるエンドレスの耐熱性フィルム(定着フィルム)202は、回動可能であって、ヒータ400により回動方向に交差する方向に加熱可能とされる。図3の紙面垂直方向を長手方向とする耐熱性樹脂製のフィルムガイド201は、エンドレス耐熱性フィルム(定着フィルム)202の内面ガイド部材となる。フィルム202は、薄い耐熱性フィルムの表面にフッ素樹脂等のコートを施してあるが、金属等で形成される素管等を用いても良い。
【0020】
フィルム202の内周側に設けられるセラミック製のヒータ400は、フィルムガイド202の下面に長手方向に沿って形成した溝部に嵌入してあり、エンドレスの耐熱性フィルム202は、ヒータ400を含むフィルムガイド201に外嵌させてある。ステー204は、図3の紙面垂直方向を長手方向とする剛性部材であり、フィルムガイド201の内側に配設される。このエンドレスの耐熱性フィルム202の内周長は、ヒータ400を含むフィルムガイド201の外周長よりも例えば約3mm程大きくしてあり、従ってフィルム202はヒータ400を含むフィルムガイド201に対して周長が余裕をもってルーズに外嵌している。
【0021】
加熱体としてのヒータ400は、高熱伝導材であるアルミナ及び窒化アルミ等でできたヒータ基板205の表面に、例えばAg/Pd(銀パラジウム)等の電気抵抗材料(発熱パターン401〜404)をスクリーン印刷等により塗工する。そして、同じくAg等の電気導電材料(導電パターン)をスクリーン印刷等により塗工し、その上に電気的な絶縁体としての保護層207としてガラスやフッ素樹脂等をコートする。ヒータ基板205は、長手方向および長手方向に交差する短手方向を備え、長手方向をエンドレスの耐熱性フィルム202の回動方向に交差する方向(回動軸方向)とし、短手方向を通紙方向としている。
【0022】
加圧ローラ208は、ヒータ400との間でフィルム202を挟んで圧接ニップである定着部Nを形成する。加圧ローラ208は、フィルム202を駆動する回転体であり、アルミニウム・鉄・ステンレス等の芯軸209と、この軸に外装したシリコンゴム等の離型性のよい耐熱ゴム弾性体のローラ部210とからなる。加圧ローラ表面には、被記録材P、定着フィルム202の搬送性、トナーの汚れ防止の理由から、フッ素樹脂を分散させたコート層を設けている。
【0023】
芯金209の一端部が、モータにより駆動されることで、反時計方向に回転駆動される。この加圧ローラ208の回動によりエンドレスの耐熱性フィルム202がその内面をヒータ400の面に密着摺動されながら、時計方向に回転駆動される。エンドレスの耐熱性フィルム202は非駆動時においては、ヒータ400と加圧ローラ208との圧接ニップ部Nに挟持搬送される部分を除く残余の大部分の略全周長部分に関して、テンションフリーである。加圧ローラ208が回転駆動されると、ニップ部Nにおいてフィルム202に回転加圧ローラ208との摩擦力で移動力がかかる。
【0024】
そして、フィルム202が、加圧ローラ208の回転周速と略同速度をもって、フィルム内面がヒータ400面(=保護層207面)に摺動されつつ、時計方向に回転駆動される。このフィルム駆動時においては、ニップ部Nとこのニップ部Nよりもフィルム移動方向上流側であって、このニップ部近傍のフィルム内面ガイド部分とニップ部の間の部分のみにおいて、フィルムにテンションが加わる。
【0025】
而して、フィルム駆動とヒータ400の発熱体層への通電を行わせた状態において、未定着トナー像を担持した被記録材Pが定着部であるニップ部Nの回転フィルム202と回転加圧ローラ208との間に像担持面上向きで導入される。すると、被記録材Pはフィルム202と一緒にニップ部Nを通過していき、ニップ部Nにおいてフィルム内面に接しているヒータ400の熱エネルギーがフィルム202を介して被記録材Pに付与される。また、ニップ部Nにおける加圧力によりトナー像の熱定着がなされる。なおヒータ400の温度を検出するために、サーミスタ211が設けられている。
【0026】
サーミスタ211はバネ等でセラミックヒータ400上に所定の圧で押し当てられており、セラミックヒータ400の温度を検出する。さらに、セラミックヒータ400への供給電力を制御する手段が故障し、セラミックヒータ202が熱暴走に至った場合、過昇温を防止する装置として、ヒューズなど過昇温防止手段212がセラミックヒータ202上に配されている。過昇温防止手段212は、例えば温度ヒューズやサーモスイッチである。電力供給制御手段の故障により、ヒータ400が熱暴走に至り過昇温防止手段212が所定の温度以上になると、過昇温防止手段212がオープンとなり、ヒータ400への通電が断たれる。
【0027】
図4は、本実施形態に係るヒータの回路(駆動回路及び制御回路)を示している。図中、301は画像形成装置に接続される商用の交流電源で、画像形成装置は交流電源301からの入力電圧をヒータ400へ供給することにより、ヒータ400を発熱させる。ヒータ400への電力供給は、トライアック302の通電/遮断により行われる。抵抗303、304はトライアック302のためのバイアス抵抗で、フォトトライアックカプラ305は一次・二次間の沿面距離を確保するためのデバイスである。
【0028】
そして、フォトトライアックカプラ305の発光ダイオード305bに通電することによりトライアック302をオンさせる。抵抗306は、フォトトライアックカプラ305の電流を制限するための抵抗であり、トランジスタ307によりフォトトライアックカプラ305をオン/オフする。トランジスタ307は、抵抗308を介してCPU309からのヒータ駆動信号に従って動作する。
【0029】
サ−ミスタ211によって検出される温度は、抵抗310と、サーミスタ211との分圧として検出され、CPU309にTH信号としてA/D入力される。CPU309の内部処理として、サーミスタ211の検出温度とヒータ400の設定温度に基づき、例えばPI制御により、供給するべき電力比を算出する。更に供給する電力比に対応した位相角(位相制御)、波数(波数制御)の制御レベルに換算し、その制御条件によりCPU309がトランジスタ307にON信号を出力する。
【0030】
電圧検知部311は、交流電源301の電圧を検知し、電源電圧の範囲が100V系(例えば100V〜127V)か、200V系(例えば200V〜240V)のどちらかを判別し、CPU309に出力している。トランジスタ315は、抵抗316を介してCPU309からのON信号に従って動作する。
【0031】
電圧検知部311が100Vを検知している場合、トランジスタ315をON状態とし、リレー314の2次側コイルに電流を流すことで、リレー314の1次側回路をON状態にする。抵抗317は電流制限抵抗、ダイオード318は逆起電圧防止素子である。リレー314の1次側回路がON状態では、発熱パターン401及び402が直列接続された導電経路と、発熱パターン403が並列接続された導電経路が並列接続される。2つの導電経路が並列接続されるため、ヒータ400は抵抗値の低い状態になる。
【0032】
電圧検知部311が200Vを検知している場合、トランジスタ315をOFF状態とし、リレー314の1次側回路をOFF状態にする。リレー314の1次側回路がOFF状態では、抵抗401及び402が直列接続された導電経路のみに電流が流れるため、ヒータ400の抵抗値は高い状態になる。このように、リレー314の1次側回路のON/OFFによって、ヒータ400の抵抗値を、電源電圧の電圧範囲に応じて切り替えることができる。本実施形態ではCPUを介してリレーを制御する例を説明しているが、電圧検知部311の出力で、トランジスタ315を直接制御しても良い。
【0033】
電流検知部313は、ヒータ400に流れる電流をカレントトランス312を介して検出するために用いられる。電流検出部であり、電流検出結果IinをCPU309に出力している。電流検知部313は、例えば電源電圧が200Vにも係らずリレー314の1次側回路がONしてしまった場合に生じる、ヒータ400に流れる過電流を検出することができる。ヒータの駆動回路及び制御回路を有する回路基板と、画像加熱装置115を接続する3本のAC導電経路は、回路基板上のコネクタ320、321,322を介して、画像加熱装置と接続されている。
【0034】
過昇温防止手段212は、ヒータの過昇温状態を検出すると、第1の導電経路及び第2の導電経路の共通接点と、回路基板上のコネクタ322間の電流を遮断し、ACH側から画像加熱装置に供給される全ての電流経路を遮断することができる。
【0035】
(ヒータ)
図1(a)、図1(b)は本実施形態に用いるヒータ400を説明するための概略図面である。図1(a)は基板205上に形成された発熱パターン、導電パターン、及び電極を示している。また図4のヒータの駆動回路及び制御回路との接続を説明するための概略図を、図1(a)にも示す。ヒータ400は、発熱パターン401、402、403を有している。405は発熱パターンと電極との間を接続する導電パターンである。第1の導電経路では、短手方向の両端側に位置する発熱パターン401、402が直列接続されており、コネクタ320、電極407、電極408、コネクタ322を介して、AC電力が供給されている。
【0036】
第2の導電経路は、発熱パターン403の一本パターンで、コネクタ321、電極409、電極408、コネクタ322を介して、AC電力が供給されている。ヒータ400では、商用電源電圧が高い第1の電源電圧(200V)の場合に第1の導電経路のみに通電し、商用電源電圧が低い第2の電源電圧(100V)の場合にリレー314をONすることで、第1の導電経路と、第2の導電経路を並列接続して通電している。
【0037】
図1(b)は、ヒータ400の発熱パターン401、402、403の詳細図を示している。各発熱パターンは、ヒータ400の短手方向の基板中心から対称に配置されている。図中a、b、cの寸法は、aは1.0mm、bは2.0mm、cは1.5mmである。なお、いずれの発熱パターンも幅が同じにしているものの、特にこれに限定するものではない。
【0038】
(発熱抵抗体の抵抗値と抵抗温度係数)
1)発熱抵抗体の抵抗値
発熱抵抗体の抵抗値に関し、商用電源電圧が200Vで第1の導電経路のみに通電する場合と、商用電源電圧が100Vで第1の導電経路と第2の導電経路を並列接続して通電する場合において、同じ発熱量とすることが好ましい。そして、定着器の立ち上げ時間t内に投入される積算電力量が同じ場合、室温から定着温度(200℃程度)まで定着器の立ち上げ時間tを揃えることができる。
【0039】
具体的には、各発熱パターンが同じ抵抗温度係数(TCR)とすると、発熱パターン401、402の抵抗値が夫々30Ω(電極を除いた場合、長手両端間の室温の抵抗)の場合に、発熱パターン403の抵抗値を、2/3程度の20Ωとする。電極を除いた場合の長手両端間の室温の抵抗が20Ωであれば、100V印加時も200V印加時も同様な電力が投入されることになる。
【0040】
より詳細に示せば、印加電圧をV、抵抗値をRとするとき、電力はV×V/Rで与えられるため、200V印加当初の電力は200×200/(30+30)Wとなる。一方、100V印加当初の電力は[100×100/(30+30)+100×100/20]Wとなり、200V印加当初の電力と同じ値となる。
【0041】
因みに、100V印加時の短手方向における夫々の端部側の発熱抵抗体の発熱量をQとすると、短手方向における中央部の発熱抵抗体の発熱量は6Qであり、一方200V印加時の短手方向における夫々の端部側の発熱抵抗体の発熱量は4Qである。これにより、100V印加時も200V印加時も共に全発熱量は8Qと同じ値となる。
【0042】
2)発熱抵抗体の抵抗温度係数
発熱抵抗体が正の抵抗温度特性を備える場合、加熱が開始されて所定時間経過後において、加熱開始時に比べ抵抗値が大きくなり、抵抗値の逆数に比例する発熱量は小さくなる。本実施形態では、各発熱パターンの抵抗温度係数(TCR)を、発熱パターン401、402で400ppm/℃、発熱パターン403で750ppm/℃と異ならせる。
【0043】
そのため、200V印加時に対し、100V印加時の立ち上げ時間tで立ち上がる温度が低くなってしまう。これは、200V印加時は、400ppm/℃の発熱抵抗体のみの発熱であるのに対し、100V印加時は、400ppm/℃と、750ppm/℃の発熱抵抗体が発熱するため、温度上昇に伴う総抵抗値の上昇が、100V印加時の方が大きいことに起因する。従って、本実施形態では、100V印加時に立ち上げ時間tで立ち上がる温度が低くならないように、発熱パターン403の抵抗値を本来の20Ωより小さく設定する。
【0044】
具体的には、発熱パターン401、402の抵抗は30Ω(電極を省いた場合、長手両端間の室温の抵抗)のままであるが、発熱パターン403の抵抗を19.4Ω(電極を除いた場合、長手両端間の室温の抵抗)とする。これにより、100V印加時と200V印加時それぞれにおいて、立ち上げ時間tまでに定着器に投入される積算電力量を揃え、室温から定着温度(約200℃)までの定着器の立ち上げスピードを同等にした。
【0045】
(ヒータ基板の熱応力)
図5(a)はヒータ400の構成、図5(b)乃至(f)は、ヒータ短手方向の発熱分布及び、ヒータ基材に発生する応力を説明するための熱温度分布シミュレーション及び、熱応力シミュレーション結果を示す。本シミュレーションは、加圧ローラ208が非回転状態において、ヒータ400の基板205の裏面温度分布を測定したものである。ヒータ基板は、線膨張係数7.2×10−6/℃、ヤング率340GPa、曲げ強度420MPaのアルミナ基板を用いている。なお、このシミュレーションを行う上で用いたシート抵抗値、投入電力、熱伝導率などの条件は、本発明に制限を与えるものではない。
【0046】
図5(b)は、電源電圧が100V、リレー314がON状態において、ヒータ400に電力を供給してから一定時間後に測定した、ヒータ400の基板裏温度の基板短手方向の分布である。図5(c)は、前記温度分布からシミュレーションされる、ヒータ400の基板長手方向にかかる応力の基板短手方向の分布である。このときのプラス側の応力は引っ張り応力であり、マイナス側の応力は圧縮応力を表す。このうち基板の破断に寄与するのは、引張り応力であり、所定の値よりも大きくなった場合に、基板の破断が発生する。
【0047】
図5(d)は、電源電圧が200V、リレー314がOFF状態において、ヒータ400に電力を供給してから一定時間後に測定した、ヒータ400基板裏温度の基板短手方向の分布である。図5(e)は、前記温度分布からシミュレーションされる、ヒータ400の基板長手方向にかかる応力の基板短手方向の分布である。図5(f)、図5(g)は、100Vと200Vの結果を比較するためのグラフである。100V印加時は、中央部にある発熱パターン403の発熱が抑えられるため、200V印加時に対して中央付近の温度ピークが低くなる。
【0048】
その結果、200V系に対して引っ張り応力は、0.3MPa(基板中央付近MAX)に対し、100V系の引張り応力は、0.75MPa(基板端部付近MAX)と高い。したがって、中央の発熱体が発熱する100V印加時の引っ張り応力を小さくすることが、ヒータ基板の破断を良化させるに重要である。
【0049】
(ヒータの比較例)
1)比較例1
図6(a)乃至(c)は、本実施形態の効果を説明するための比較例を表しており、それぞれ比較例としてのヒータ500の構成、ヒータ短手方向の発熱分布及び、ヒータ基材に発生する応力を説明するためのシミュレーション結果を示す。比較例1では、発熱パターン501、502、503の抵抗温度係数(TCR)がいずれも400ppm/℃である。そして、発熱パターン501、502の抵抗値が夫々30Ω(電極を除いた場合、長手両端間の室温の抵抗)であるのに対し、発熱パターン503の抵抗値が、その2/3の19.4Ω(電極を除いた場合、長手両端間の室温の抵抗)である。なお、それぞれのパターン幅、パターン間隔、長手寸法形状は本実施形態と同じである。
【0050】
2)比較例2
比較例2は、発熱パターン501、502、503のTCRはいずれも750ppm/℃で、発熱パターン501、502の抵抗値に対し、発熱パターン503の抵抗値は2/3である。比較例2のヒータは、本実施形態及び比較例1のヒータに対し、TCRが高く高温時の抵抗が上昇し立ち上げ時間tまでの積算電力量が減少することから、比較例1と同じ抵抗関係では、定着器の立ち上げ温度が低くなる。したがって、発熱パターン501、502、503のそれぞれの抵抗値を、比較例1に対し、下げることで、実施形態1及び比較例1に対する室温から定着温度(約200℃)までの定着器の立ち上げスピードを同程度とした。
【0051】
したがって、発熱パターン501、502、503の抵抗値は、それぞれ29.1Ω、29.1Ω、19.4Ω(電極を除いた場合、長手両端間の室温の抵抗)としている。また、それぞれのパターン幅、パターン間隔、長手寸法形状は本実施形態と同じである。
比較例1、比較例2とも実施形態1と同様に一定時間後の発熱分布を計測し熱応力を算出した。
【0052】
図6(b)、図6(c)に、100V印加時の本実施形態、比較例1、比較例2の温度分布データと、熱応力分布データを表す。図6(b)で、本実施形態の実施例1に比べ、比較例1の方がヒータの短手方向の中央部で低温となる理由は、端部側の発熱が実施例1のように中央部へ移動しないためと考えられる。また、ヒータの短手方向の端部側で比較例1の方が低温となる理由は、端部側の発熱が実施例1のように中央部へ移動せず、基板の外側へ放出されるためと考えられる。
【0053】
図6(c)に示すように、本実施形態、比較例1、比較例2共に、基板の端部での引っ張り応力が最も高く、それぞれ380MPa、640MPa、541MPaである。本実施形態と比較例1の結果から、本実施形態では短手方向の中央部の発熱が抑えられた結果、基板全体の発熱分布が比較して一様になる。その結果、基板に発生する引っ張り応力が小さくなる。なお、比較例2のように、すべての発熱体パターンの抵抗温度係数(TCR)が高く、ヒータの立ち上がりが遅い場合に対しても、本実施形態の方が発熱分布が比較して一様であり、基板に発生する引張り応力が小さくなることが分かる。
【0054】
次に、実際に上記条件のヒータを作成し、最大電力を投入し、基板が破断にいたるまでの時間を測定した結果を表す。このとき使用したヒータ基板は、長手方向の寸法270mm、短手方向の寸法10mm、厚み1mmのアルミナ基板からなるものである。また、本実施形態において用いた過昇温防止手段212は、1300W(抵抗値15Ωに対し、電圧140V印加)の電力で熱暴走した際に、5秒程度で過昇温防止手段が作動し、電力投入が切れることが分かっている。1300Wの電力で暴走した際に、基板が破断にいたるまでの時間は、本実施形態が6秒、比較例1が3.7秒、比較例2が4.6秒であり、実施形態1の構成だけが、基板の破断発生前に過昇温手段212の作動することが確認できた。
【0055】
以上説明してきた本実施形態により、基板上で均一な発熱分布を持たせ基板に発生する引っ張り応力を小さくすることができ、その結果、信頼性の高いヒータ及び該ヒータを備えた画像加熱装置を提供することができる。
【0056】
《第2の実施形態》
第1の実施形態では、第2の導電経路に発熱パターンが1本設けられていたが、本実施形態では第2の導電経路に発熱パターンが2本電気的に並列に設けられる。第1の本実施形態と同様の構成については説明を省略する。図7(a)は基板205上に形成された発熱パターン、導電パターン、及び電極を示している。ヒータ700は発熱パターン701、702、703、704と、を有している。705は導電パターンである。
【0057】
第1の導電経路では、発熱パターン701、702が直列接続されており、コネクタ720、電極707、電極708、コネクタ722を介して、AC電力が供給されている。第2の導電経路では、短手方向における中央位置に関して対称的に設けられる発熱パターン703、704が並列接続されており、コネクタ721、電極709、電極708、コネクタ722を介して、AC電力が供給されている。ヒータ700では、商用電源電圧が高い範囲(200V)の場合には第1の導電経路のみに通電し、商用電源電圧が低い範囲(100V)の場合にはリレー314をONすることで、第1の導電経路と、第2の導電経路を並列接続して通電することを特徴としている。
【0058】
図7(b)は、ヒータ700の発熱パターン701、702、703、704の詳細図を示している。各発熱パターンは、ヒータ400の短手方向の基板中心から対称に配置されている。図中a,b,c,dの寸法は、aは1.0mm、bは2.0mm、cは0.5mm、dは1.5mmである。なお、いずれの発熱パターンも幅が同じにしているものの、特にこれに限定するものではない。
【0059】
商用電源電圧が200Vで第1の導電経路のみに通電する場合と、商用電源電圧が100Vで第1の導電経路と第2の導電経路を並列接続して通電する場合において、定着器の立ち上げ時間t内に投入される積算電力量が同じになればよい。これにより、室温から定着温度(200℃程度)まで定着器の立ち上げ時間tを揃えることができる。仮に、各発熱パターンが同じ抵抗温度係数(TCR)であれば、発熱パターン703、704の抵抗値は発熱パターン701、702の3/4程度の40Ω(電極を除いた場合、長手両端間の室温の抵抗)にする必要がある。なお、発熱パターン701、702のそれぞれの抵抗値は30Ω(電極を除いた場合、長手両端間の室温の抵抗)である。
【0060】
しかしながら、本実施形態の場合、各発熱パターンの抵抗温度係数(TCR)は、701、702が400ppm/℃、703、704が750ppm/℃である。このため、上記「TCRが同じ場合の発熱パターンの抵抗関係」では、200V印加時に対し、100V印加時の立ち上げ時間tで立ち上がる温度が低くなってしまう。
【0061】
この原因としては、次のような理由が挙げられる。まず、定着器を室温から立ち上げる際は、可能な限り素早く立ち上げるために、最大電力を投入する構成としている。そのため、商用電源電圧より供給される100Vを、一定電圧で供給するため、発熱パターンが持つ抵抗の温度特性の影響を大きく受ける。200Vのときは、400ppm/℃の発熱抵抗体のみの発熱であるのに対し、100Vのときは、400ppm/℃と、750ppm/℃の発熱抵抗体が発熱するため、温度上昇に伴う総抵抗値の上昇は、100Vの方が大きい。
【0062】
したがって、発熱パターン703、704の定着温度までの立ち上がりを速くするために、以下のように抵抗値を定めた。即ち、発熱パターン701、702の抵抗は、30Ω(電極を除いた場合、長手両端間の室温の抵抗)、発熱パターン703、704の抵抗は、38.8Ω(電極を除いた場合、長手両端間の室温の抵抗)とした。これにより、100V印加時と200V印加時それぞれにおいて、立ち上げ時間tまでに定着器に投入される積算電力量をそろえ、室温から定着温度(約200℃)までの定着器の立ち上げスピードを同等にした。
【0063】
図8(a)、図8(b)は、ヒータ700のヒータ短手方向の発熱分布及び、ヒータ基材に発生する応力を説明するためのシミュレーション結果である。本シミュレーションでは、加圧ローラ208が非回転状態において、ヒータ700の基板705の裏面温度分布を測定したものである。また、このシミュレーションを行う上で用いた、シート抵抗値、投入電力、熱伝導率などの条件は、本発明に制限を与えるものではない。
【0064】
図8(a)は、電源電圧が200V、リレー314OFF状態において、ヒータ700に電力を供給してから一定時間後のヒータ400の温度分布を表している。図8(b)は、前記温度分布における、ヒータ700の応力分布をシミュレーションした結果である。この結果を見ると、本実施形態は第1の実施形態よりも更に基板裏面の温度分布が一様になっており、その結果、基板内の引っ張り応力は、基板端での最大値は、第1の実施形態の384MPaに対し、本実施形態は300MPaと小さくなっていることが分かる。
【0065】
この理由は、発熱パターンを中央部にある発熱体の抵抗温度係数(TCR)を高く設定するだけでなく、短手方向(通紙方向)における中央部の発熱体を二つに分けて、夫々上下流側へシフトさせて、相対的に中央部の発熱ピークを低減させられたためである。
【0066】
次に、実際に上記条件のヒータを作成し、最大電力を投入し、基板が破断にいたるまでの時間を測定した結果を表す。このとき使用したヒータ基板は、長手方向の寸法270mm、短手方向の寸法10mm、厚み1mmのアルミナ基板からなるものである。また、本実施形態において用いた過昇温防止手段212は、1300W(抵抗値15Ωに対し、電圧140V印加)の電力で熱暴走した際に、5秒程度で過昇温防止手段が作動し、電力投入が切れることが分かっている。1300Wの電力で暴走した際に、基板が破断にいたるまでの時間は、本実施形態が8.0秒であり、第1の実施形態の構成よりも長く、基板の破断発生前に過昇温手段212の作動することが確認できた。
【0067】
以上説明してきた本実施形態の構成により、基板上で均一な発熱分布を持たせ基板に発生する引っ張り応力を小さくすることができ、信頼性の高いヒータ及び該ヒータを備えた画像加熱装置を提供することができる。
【0068】
《第3の実施形態》
第2の実施形態では、第1の導電経路に設けられる2本の発熱パターンが電気的に直列接続されていたが、本実施形態では電気的に並列接続される。第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。図9(a)、(b)は本実施形態に用いるヒータ1000を説明するための概略図面である。図9(a)は、基板上に形成された発熱パターン及び、導電パターンを示している。ヒータ1000は、発熱パターン1001、1002、1003、1004を有している。1005は、導電パターンである。第1の導電経路では、発熱パターン1001、1002が電気的に並列接続されており、コネクタ320、電極1007及、電極1008、コネクタ322を介して、AC電力が供給されている。
【0069】
第2の導電経路では、発熱パターン1003、1004が並列接続されており、コネクタ321、電極1009、電極1008、コネクタ322を介して、AC電力が供給されている。ヒータ1000では、商用電源電圧が高い範囲(200V)の場合には第1の導電経路のみに通電し、商用電源電圧が低い範囲(100V)の場合には第1の導電経路と、第2の導電経路を並列接続して通電することを特徴としている。
【0070】
図9(b)は、ヒータ1000の発熱パターン1001、1002、1003、1004の詳細図を示している。各発熱パターンは、ヒータ400の短手方向の基板中心から対称に配置されている。図中a,b,c,dの寸法は、aは1.0mm、bは2.0mm、cは0.5mm、dは1.5mmである。なお、いずれの発熱パターンも幅が同じにしているものの、特にこれに限定するものではない。
【0071】
商用電源電圧が200Vで第1の導電経路のみに通電する場合と、商用電源電圧が100Vで第1の導電経路と第2の導電経路を並列接続して通電する場合において、室温から定着温度(200℃程度)まで定着器の立ち上げ時間tを揃えることが好ましい。このためには、定着器の立ち上げ時間t内に投入される積算電力量が同じになればよい。仮に、各発熱パターンが同じ抵抗温度係数(TCR)であれば、発熱パターン1001、1002のそれぞれの抵抗値120Ωに対し、発熱パターン1003、1004の抵抗値は、1/3程度の40Ωにする必要がある。
【0072】
しかしながら、本実施形態の場合、各発熱パターンの抵抗温度係数(TCR)は、1001、1002が400ppm/℃、1003、1004が750ppm/℃である。このため、上記「TCRが同じ場合の発熱パターンの抵抗関係」では、200V印加時に対し、100V印加時の立ち上げ時間tで立ち上がる温度が低くなってしまう。
【0073】
この原因としては、次のような理由が挙げられる。まず、定着器を室温から立ち上げる際は、可能な限り素早く立ち上げるために、最大電力を投入する構成としている。そのため、商用電源電圧より供給される100Vを、一定電圧で供給するため、発熱パターンが持つ抵抗の温度特性の影響を大きく受ける。200Vのときは、400ppm/℃の発熱抵抗体のみの発熱であるのに対し、100Vのときは、400ppm/℃と、750ppm/℃の発熱抵抗体が発熱するため、温度上昇に伴う総抵抗値の上昇は、100Vの方が大きい。
【0074】
したがって、発熱パターン1003、1004の定着温度までの立ち上がりを速くするために、以下のように抵抗値を設定した。即ち、発熱パターン1001、1002の抵抗は、120Ω(電極を除いた場合、長手両端間の室温の抵抗)とし、発熱パターン1003、1004の抵抗は、38.8Ω(電極を除いた場合、長手両端間の室温の抵抗)とした。これにより、100V印加時と200V印加時それぞれにおいて、立ち上げ時間tまでに定着器に投入される積算電力量を揃え、室温から定着温度(約200℃)までの定着器の立ち上げスピードを同等にした。
【0075】
ヒータ1000のヒータ短手方向の発熱分布及び、ヒータ基材に発生する応力は、図8に示した第2の実施形態と同等の結果が得られる。また、基板が破断にいたるまでの時間を測定した結果も第2の実施形態と同様に、8.0秒であった。したがって、本実施形態の構成は、第1の実施形態の構成よりも、基板の破断までの時間が長いことが確認できた。
【0076】
以上、説明してきた本実施形態により、基板上で均一な発熱分布を持たせ基板に発生する引っ張り応力を小さくすることができ、信頼性の高いヒータ及び該ヒータを備えた画像加熱装置を提供することができる。
【0077】
(変形例)
以上、各実施形態で述べた技術的事項を本発明の範囲で適宜組み合わせることもできる。
例えば、第3の実施形態では、第2の導電経路に関し、発熱抵抗体を2本用いたが、これを第1の実施形態で述べたような1本の抵抗発熱体とすることも可能である。
【符号の説明】
【0078】
115・・画像加熱装置、314・・リレー、400・・ヒータ、401・・第1の発熱パターン、402・・第2の発熱パターン、403・・第3の発熱パターン、407〜409・・電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向および前記長手方向に交差する短手方向を備える基板と、
前記基板に設けられて、正の抵抗温度特性を備え、前記長手方向の端部に設けられる電極を介して通電により発熱する発熱抵抗体と、
を有するヒータであって、
前記発熱抵抗体は、前記基板における第1の導電経路および前記第1の導電経路と電気的に並列に接続される第2の導電経路に設けられ、
前記第1の導電経路は、第1の電源電圧が印加される場合および前記第1の電源電圧より低い第2の電源電圧が印加される場合に共通に用いられ、且つ、前記第1の導電経路では、前記発熱抵抗体が前記長手方向に沿って前記基板の前記短手方向の両端側に位置し、
前記第2の導電経路は、前記第2の電源電圧が印加される場合に用いられ、且つ、前記第2の導電経路では、前記発熱抵抗体が前記長手方向に沿って前記第1の導電経路に挟まれる前記短手方向の中間に位置し、
前記第2の導電経路の前記発熱抵抗体の抵抗温度係数を、前記第1の導電経路の前記発熱抵抗体の抵抗温度係数より大きくしたことを特徴とするヒータ。
【請求項2】
前記第1の導電経路に関し、前記基板の前記短手方向の両端側に位置する前記発熱抵抗体は電気的に直列に設けられることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記第1の導電経路に関し、前記基板の前記短手方向の両端側に位置する前記発熱抵抗体は電気的に並列に設けられることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項4】
前記第1の導電経路に関し、前記発熱抵抗体は、前記基板の前記短手方向における中央位置に関して対称的に設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項5】
前記第2の導電経路に関し、前記発熱抵抗体は、前記基板の前記短手方向における中央位置に設けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項6】
前記第2の導電経路に関し、前記発熱抵抗体は、前記基板の前記短手方向における中央位置に関して対称的に設けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項7】
回動可能であって回動方向に交差する方向に加熱可能な加熱回動部材と、
前記加熱回動部材の内周側に設けられるヒータと、
前記ヒータに摺動して回動する前記加熱回動部材を介してニップ部を形成する加圧部材と、
を有し、前記ニップ部に画像を担持した記録材を挟持搬送して前記画像を加熱する画像加熱装置であって、
前記ヒータは請求項1乃至6のいずれか1項に記載のヒータであり、かつ前記回動方向に交差する方向を前記長手方向とすることを特徴とする画像加熱装置。
【請求項8】
前記ヒータの過昇温により作動する過昇温防止手段を備えることを特徴とする請求項7に記載の画像加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−8510(P2013−8510A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139375(P2011−139375)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】