説明

ヒータ

【課題】発熱抵抗体が基板から剥離しにくいヒータを提供すること。
【解決手段】長矩形状の基板1と、基板1上に設けられ、基板1の長手方向に沿って延びる発熱抵抗体2と、発熱抵抗体2を覆っている保護膜3と、を備えているヒータAであって、保護膜3は、基板1の長手方向に沿って延び、かつ、発熱抵抗体2に対して短手方向yに並列されているとともに、基板1と接している層31と、発熱抵抗体2および層31を覆う層32と、を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱媒体を加熱するヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
図3に、従来のヒータの一例にかかる断面図を示している。この図に示されたヒータ9Aは、基板91、発熱抵抗体92および保護膜93を備えている。基板91は、紙面に垂直方向に延びる長矩形状である。発熱抵抗体92は、基板91上に形成され、基板91の長手方向に沿って延びている。発熱抵抗体92は、電極(図示略)から電力の供給を受け、発熱する。保護膜93は、基板91上に設けられている。保護膜93は、発熱抵抗体92、上記電極の一部を覆っている。
【0003】
一般的に、被加熱媒体Dcにトナー像を転写した後に、ヒータ9Aの熱により被加熱媒体Dcを加熱することで、トナーを被加熱媒体Dcに定着させている。このような定着処理は、ヒータ9Aとヒータ9Aの図中上方に配置されている加圧ローラ(図示略)とで、被加熱媒体Dcを挟みつつ、搬送することにより行われる。この定着処理を行う際においてヒータ9Aに上記加圧ローラが強く押さえつけられる。このとき、発熱抵抗体92に力がかかり、発熱抵抗体92の基板91からの剥離が生じうる。発熱抵抗体92が基板91から剥離すると、ヒータ9Aの伝熱状態が変化する。かかる事態は、ヒータ9Aの温度分布が所望のものと異なってしまうといった不具合を招来するため、好ましくない。
【0004】
【特許文献1】特開2002−289328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、発熱抵抗体が基板から剥離しにくいヒータを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供されるヒータは、長矩形状の基板と、上記基板上に設けられ、上記基板の長手方向に沿って延びる発熱抵抗体と、上記発熱抵抗体を覆っている保護膜と、を備えているヒータであって、上記保護膜は、上記基板の長手方向に沿って延び、かつ、上記発熱抵抗体に対して上記基板の短手方向に並列されているとともに、上記基板と接している第1の層と、上記発熱抵抗体および上記第1の層を覆う第2の層と、を含んでいることを特徴としている。
【0007】
このような構成によれば、上記保護膜と上記基板との上記長手方向に沿った接合面積が大きい上記ヒータを容易に製造できる。上記接合面積が大きくなれば、上記保護膜と上記基板とがより強固に接合される。すなわち、上記ヒータは、上記発熱抵抗体の上記基板からの剥離を抑制するのに好適である。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1の層は2つあり、上記発熱抵抗体は、上記基板の短手方向において、2の上記第1の層に挟まれている。このような構成によれば、上記保護膜と上記基板との接合が、より一層強固なものとなる。これにより、上記発熱抵抗体が上記基板から、さらに剥離しにくくなる。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1の層は上記発熱抵抗体と接している。このような構成によれば、上記発熱抵抗体と上記第1の層との隙間を小さくすることができる。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1の層は、上記基板の厚さ方向における大きさが、上記発熱抵抗体の上記厚さ方向における大きさよりも大きい部分を有する。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記保護膜は、上記長手方向に沿って延びる窪みを有しており、この窪みは、上記基板の厚さ方向視において上記発熱抵抗体と重なっている。このような構成によれば、被加熱媒体を上記ヒータが押さえるとき、上記保護膜のうち、上記窪みの内側には力がかかりにくくなる。そのため、上記発熱抵抗体にも不当な力がかかりにくくなる。これにより、上記発熱抵抗体の上記基板からの剥離をさらに抑制できる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記発熱抵抗体は、BaTiO3系セラミックから構成されており、上記基板は、Al23、AlN、または、SiCから構成されている。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態にかかるヒータの平面図である。図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。同図に示されたヒータAは、基板1、発熱抵抗体2、保護膜3および電極4を備えている。ヒータAは、被加熱媒体Dcに転写されたトナーを、被加熱媒体Dcに熱定着させるために用いられる。なお図1においては、理解の便宜上、保護膜3を省略している。
【0016】
図1,2に表れているように、基板1は、長矩形状であり、絶縁性を有する。基板1は、たとえば、Al23、AlN、または、SiCなどにより構成されている。発熱抵抗体2は、BaTiO3系セラミックにより構成されている。また、発熱抵抗体2は、ニクロムや酸化ルテニウムなどから構成されていてもよい。
【0017】
図2に表れているように、保護膜3は、発熱抵抗体2を保護するためのものであり、発熱抵抗体2を覆っている。保護膜3は、基板1の長手方向xに沿って延びている。保護膜3は、非晶質ガラスや結晶化ガラスから構成されている。たとえば基板1がAl23により構成されている場合、保護膜3は非晶質ガラスにより構成されている。また、基板1がAlNにより構成されている場合、保護膜3は結晶化ガラスにより構成されている。また、保護膜3の短手方向yの大きさLaは、たとえば、発熱抵抗体2の短手方向yの大きさLbの2倍以上である。このようにするには、大きさLaを5.0mm、大きさLbを2.0mm、などとすればよい。
【0018】
保護膜3は、長手方向xに沿って延びる窪み33を有する。図2に表れているように、この窪み33は、基板1の厚さ方向視において、発熱抵抗体2と重なっている。保護膜3は、2つの層31および層32を含んでいる。層31は、本発明における第1の層に相当する。層32は、本発明における第2の層に相当する。層31はいずれも、長手方向xに沿って延びており、基板1と接している。また、層31はいずれも、発熱抵抗体2に対して短手方向yに並列されている。図2に表れているように、2つの層31は、発熱抵抗体2の短手方向yの両端に位置している。すなわち、発熱抵抗体2は、短手方向yにおいて、2つの層31に挟まれているといえる。また、層31は、発熱抵抗体2と接している。さらに、層31の厚みは、発熱抵抗体2の厚みよりも大きい。たとえば、層31の厚みLcは30μmであり、発熱抵抗体2の厚みLdは10μmである。
【0019】
層32は、発熱抵抗体2および2つの層31を覆っている。層32は、層31を構成している材料と同じ材料から構成されていることが好ましい。層32のうち、層31と重なる部分の最大の大きさLeは、たとえば50μmである。また、層32のうち、発熱抵抗体2と重なる部分の最小の大きさLfは、たとえば40μmである。
【0020】
保護膜3の形成は、発熱抵抗体2や電極4などが形成された基板1に層31を形成した後に、層32を、層31および発熱抵抗体2に積層させることにより行う。
【0021】
電極4は、導電性材料から構成されており、基板1の長手方向xの両端に形成されている。電極4は、発熱抵抗体2と接している。電極4は、発熱抵抗体2にヒータAの外部から電力を供給するためのものである。
【0022】
次に、ヒータAの作用について説明する。
【0023】
本実施形態によれば、保護膜3と基板1との長手方向xに沿った接合面積が大きいヒータAを容易に製造できる。上記接合面積が大きくなれば、保護膜3と基板1とがより強固に接合される。すなわち、ヒータAは、発熱抵抗体2の基板1からの剥離を抑制するのに好適である。
【0024】
また、発熱抵抗体2としてBaTiO3系セラミックを、基板1としてセラミックを用いた場合に、仮に、発熱抵抗体2が基板1と十分に接合していないことがあっても、発熱抵抗体2が基板1から剥離しにくい。
【0025】
また、層31が、発熱抵抗体2の短手方向yの両端に形成されているため、保護膜3と基板1との接合が、より一層強固なものとなっている。
【0026】
ヒータAにおいて発熱抵抗体2と層31が接している。そのため、発熱抵抗体2の図2の上部において段差が形成されるおそれが少なくなる。
【0027】
保護膜3は窪み33を有するため、被加熱媒体DcをヒータAが押さえるとき、保護膜3のうち、窪み33の内面には力がかかりにくくなる。そのため、発熱抵抗体2に不当な力がかかりにくくなる。これにより、発熱抵抗体2の基板1からの剥離をさらに抑制することが可能となっている。
【0028】
層31は、発熱抵抗部2の厚さより厚くなっている。そのため、保護膜3のうち層31の図2における上方の部分が盛り上がっているように形成しやすくなる。これにより、窪み33の深さをより深くできる。その結果、ヒータAが被加熱媒体Dcを押さえるときに、発熱抵抗体2に力がさらにかかりにくくなる。
【0029】
本発明に係るヒータは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るヒータの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。たとえば、本発明にかかる第1の層は発熱抵抗体に、必ずしも接している必要はない。また、本発明にかかる電極は、上記基板の短手方向の両端に形成されていてもよい。上記発熱抵抗体は、上記基板上に複数形成されていてもよい。
【0030】
また、本発明の範囲には、複数の上記第1の層が、上記基板の長手方向に沿って点在するように配置されているものも含む。同様に、本発明の範囲には、複数の上記発熱抵抗体が、上記基板の長手方向に沿って配置されているものも含む。
【0031】
さらに、上記窪みは、上記基板の長手方向の一端から他端にわたって形成されていてもよい。一方、上記窪みは、上記基板の長手方向の一端から他端に至るまでの部分の一部のみに、形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるヒータの平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】従来のヒータの一例にかかる断面図である。
【符号の説明】
【0033】
A ヒータ
1 基板
2 発熱抵抗体
3 保護膜
31 層(第1の層)
32 層(第2の層)
33 窪み
4 電極
x 長手方向
y 短手方向
Dc 被加熱媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長矩形状の基板と、
上記基板上に設けられ、上記基板の長手方向に沿って延びる発熱抵抗体と、
上記発熱抵抗体を覆っている保護膜と、を備えているヒータであって、
上記保護膜は、上記基板の長手方向に沿って延び、かつ、上記発熱抵抗体に対して上記基板の短手方向に並列されているとともに、上記基板と接している第1の層と、
上記発熱抵抗体および上記第1の層を覆う第2の層と、を含んでいることを特徴とする、ヒータ。
【請求項2】
上記第1の層は2つあり、
上記発熱抵抗体は、上記基板の短手方向において、2の上記第1の層に挟まれている、請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
上記第1の層は上記発熱抵抗体と接している、請求項1または2に記載のヒータ。
【請求項4】
上記第1の層は、上記基板の厚さ方向における大きさが、上記発熱抵抗体の上記厚さ方向における大きさよりも大きい部分を有する、請求項1ないし3のいずれかに記載のヒータ。
【請求項5】
上記保護膜は、上記長手方向に沿って延びる窪みを有しており、
この窪みは、上記基板の厚さ方向視において上記発熱抵抗体と重なっている、請求項1ないし4のいずれかに記載のヒータ。
【請求項6】
上記発熱抵抗体は、BaTiO3系セラミックから構成されており、
上記基板は、Al23、AlN、または、SiCから構成されている、請求項1ないし5のいずれかに記載のヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−92720(P2010−92720A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261636(P2008−261636)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】