説明

ヒートシンク、電子機器及びヒートシンクの製造方法

【課題】包絡体積が小さく放熱量の大きいヒートシンクを提供する。
【解決手段】電子部品上に装着して電子部品の発熱を放熱するヒートシンク1において、平板状の底面部11a、12aと底面部11a、12aの両端を折曲して立設したフィン部11b、11c、12b、12cとを有した金属板から成る複数の放熱部材11、12を備え、対向するフィン部11b、11c、12b、12cの間隔が各放熱部材11、12で異なるともに、フィン部11b、11c間の間隔の大きい放熱部材11の底面部11a上にフィン部12b、12c間の間隔の小さい放熱部材12の底面部12aを順に重ねて一体に形成し、最も外側に配される放熱部材11の厚みを内側に配される放熱部材12よりも厚くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に装着して放熱するヒートシンク及びそれを用いた電子機器に関する。また本発明は、電子部品に装着して放熱するヒートシンクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品に装着して電子部品の発熱を放熱する従来のヒートシンクは特許文献1、2に開示されている。このヒートシンクは金属板を折曲して形成される複数の放熱部材を備えている。各放熱部材は平板状の底面部と底面部の両端を折曲して立設したフィン部とを有し、対向するフィン部の間隔が各放熱部材で異なる。そして、フィン部間の間隔の大きい放熱部材の底面部上にフィン部間の間隔の小さい放熱部材の底面部を順に重ねて一体化し、ヒートシンクが形成される。これにより、ダイカスト法や押し出し加工よりもヒートシンクを安価に形成することができる。
【0003】
また、特許文献2のヒートシンクは一部のフィン部から延びる係合部が電子機器のシャーシや筐体に係合して固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4011600号公報(第11頁−第29頁、第3図)
【特許文献2】特開平10−126075号公報(第4頁−第8頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のヒートシンクは発熱量の異なる電子部品にそれぞれ対応した放熱量に形成される。この時、フィン部の高さが異なる放熱部材を用いることや、放熱部材の数量を増減することにより、ヒートシンクの放熱量が可変される。このため、放熱量が大きいヒートシンクの包絡体積が大きくなる問題があった。また、放熱量の異なる複数種のヒートシンクに対応してフィン部の高さが異なる放熱部材をそれぞれ必要とするため、部品点数が多くヒートシンクのコストが高くなる問題もあった。
【0006】
本発明は、包絡体積が小さく放熱量の大きいヒートシンク及びそれを用いた電子機器を提供することを目的とする。また本発明は、放熱量の異なる複数種のヒートシンクを安価に得ることのできるヒートシンクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、電子部品上に装着して前記電子部品の発熱を放熱するヒートシンクにおいて、平板状の底面部と前記底面部の両端を折曲して立設したフィン部とを有した金属板から成る複数の放熱部材を備え、対向する前記フィン部の間隔が各前記放熱部材で異なるともに、前記フィン部間の間隔の大きい前記放熱部材の前記底面部上に前記フィン部間の間隔の小さい前記放熱部材の前記底面部を順に重ねて一体に形成し、最も外側に配される前記放熱部材の厚みが内側に配される前記放熱部材よりも厚いことを特徴としている。
【0008】
この構成によると、金属板を折曲して底面部に対して立設したフィン部を有するコ字型の複数の放熱部材が形成される。各放熱部材はフィン部の間隔が大きい順にフィン部間の底面部上に重ねられて一体化され、上層の放熱部材は下層の放熱部材の内側に配置される。この時、外気流と接触し易い最も外側に配される放熱部材の厚みが内側に配される放熱部材よりも厚く形成される。
【0009】
また本発明は、上記構成のヒートシンクにおいて、少なくとも一の前記放熱部材の前記フィン部に凹部を形成したことを特徴としている。この構成によると、凹部によってフィン部の表面積が大きくなる。
【0010】
また本発明は、上記構成のヒートシンクにおいて、最も外側に配される前記放熱部材が前記電子部品の実装基板に係合する脚部を有し、前記脚部は一方の前記フィン部の一端と他方の前記フィン部の他端からそれぞれ延びて対角に配されることを特徴としている。
【0011】
この構成によると、最も外側に配される放熱部材の一方のフィン部から延びる脚部と、他方のフィン部から延びる脚部とが対角に配されて実装基板に係合する。これにより、ヒートシンクが電子部品上に密着した状態で実装基板に取り付けられる。
【0012】
また本発明は、上記構成のヒートシンクにおいて、前記脚部は前記フィン部に対して同一面内または垂直面内に配されることを特徴としている。
【0013】
また本発明の電子機器は、上記各構成のヒートシンクと、前記ヒートシンクを装着した電子部品とを備えたことを特徴としている。
【0014】
また本発明は、電子部品上に装着して前記電子部品の発熱を放熱するヒートシンクの製造方法において、前記ヒートシンクは平板状の底面部と前記底面部の両端を折曲して立設したフィン部とを有した金属板から成る複数の放熱部材を備え、対向する前記フィン部の間隔が各前記放熱部材で異なるとともに、前記フィン部間の間隔の大きい前記放熱部材の前記底面部上に前記フィン部間の間隔の小さい前記放熱部材の前記底面部を順に重ねて一体に形成され、
所望の放熱量に応じて最も外側に配される前記放熱部材を異なる厚みに形成するとともに、放熱量に対して共通の前記放熱部材を内側に配置したことを特徴としている。
【0015】
この構成によると、金属板を折曲して底面部に対して立設したフィン部を有するコ字型の複数の放熱部材が形成される。各放熱部材はフィン部の間隔が大きい順にフィン部間の底面部上に重ねられて一体化され、上層の放熱部材は下層の放熱部材の内側に配置される。この時、外気流と接触し易い最も外側に配される放熱部材はヒートシンクの放熱量に応じて厚みの異なる複数の部品から選択され、内側に配される放熱部材はヒートシンクの放熱量に依らず共通の部品が用いられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、複数の放熱部材を重ねて一体化したヒートシンクにおいて、最も外側に配される放熱部材の厚みが内側に配される放熱部材よりも厚いので、放熱量の大きいヒートシンクを小さい包絡体積で形成することができる。
【0017】
また本発明によると、所望の放熱量に応じて最も外側に配される放熱部材を異なる厚みに形成し、放熱量に対して共通の放熱部材を内側に配置したので、放熱量の異なる複数種のヒートシンクに対して部品を共通化してヒートシンクを安価に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態のヒートシンクを示す斜視図
【図2】本発明の第2実施形態のヒートシンクを示す斜視図
【図3】本発明の第3実施形態のヒートシンクを示す斜視図
【図4】本発明の第4実施形態のヒートシンクを示す斜視図
【図5】本発明の第4実施形態のヒートシンクを示す側面図
【図6】本発明の第4実施形態のヒートシンクを示す正面図
【図7】本発明の第5実施形態のヒートシンクを示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は第1実施形態のヒートシンクを示す斜視図である。ヒートシンク1は電子機器に設けられるIC等の電子部品上に装着され、アルミニウム等の金属板により形成される複数の放熱部材11、12、13を有している。
【0020】
放熱部材11は平板状の底面部11aと、底面部11aの両端を折曲により立設したフィン部11b、11cとを有している。放熱部材12も同様に、平板状の底面部12aと、底面部12aの両端を折曲により立設したフィン部12b、12cとを有している。放熱部材13も同様に、平板状の底面部13aと、底面部13aの両端を折曲により立設したフィン部13b、13cとを有している。尚、本実施形態ではヒートシンク1が3個の放熱部材11、12、13により形成されるが、2以上の放熱部材により形成することができる。
【0021】
対向するフィン部11b、11cの間隔はフィン部12b、12cの間隔よりも大きく、フィン部12b、12cの間隔はフィン部13b、13cの間隔よりも大きくなっている。そして、フィン部11b、11cの間隔の大きい放熱部材11の底面部11a上にフィン部12b、12cの間隔の小さい放熱部材12の底面部12aが重ねられる。また、フィン部12b、12cの間隔の大きい放熱部材12の底面部12a上にフィン部13b、13cの間隔の小さい放熱部材13の底面部13aが重ねられる。これにより、外側から順に放熱部材11、12、13が配されて一体化し、ヒートシンク1が形成される。
【0022】
最も外側に配される放熱部材11には折曲により一体に形成される圧着部11dが対向する2辺に設けられる。圧着部11dにより放熱部材12、13が挟持され、放熱部材11、12、13が密着される。放熱部材11、12、13の間に熱伝導シートや熱伝導グリスを配して密着性を向上させてもよい。
【0023】
また、最も外側に配される放熱部材11の厚みは内側に配される放熱部材12、13の厚みよりも厚くなっている。
【0024】
上記構成のヒートシンク1は、放熱部材11の底面部11aが接着等によって電子部品上に密着して装着される。電子部品の発熱がヒートシンク1に伝えられ、ヒートシンク1は外気流と熱交換して放熱する。この時、外気流と接触し易い最も外側に配される放熱部材11の厚みが内側に配される放熱部材12、13よりも厚いので、ヒートシンク1の放熱量の大きくできるとともに包絡体積を小さくすることができる。
【0025】
また、電子部品の発熱量に対応して放熱量の異なる複数種のヒートシンク1が同じ製造ライン上で形成される。この時、最も外側に配される放熱部材11は所望の放熱量に応じて厚みの異なる複数の部品から選択される。そして、内側に配される放熱部材12、13は放熱量に対して共通の部品が用いられる。
【0026】
これにより、図2の第2実施形態に示すように、放熱部材12、13よりも厚みの薄い放熱部材11を有するヒートシンク1を第1実施形態と同様に形成することができる。従って、放熱量の異なる複数種のヒートシンク1に対して内側に配される部品(放熱部材12、13)を共通化してヒートシンク1を安価に得ることができる。
【0027】
次に、図3は第3実施形態のヒートシンク1の斜視図を示している。説明の便宜上、前述の図1に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態のヒートシンク1はフィン部11b、11cの外面に凹部11eが形成される。凹部11eによってフィン部11b、11cの表面積を大きくすることができる。従って、より放熱量の大きいヒートシンク1を容易に得ることができる。
【0028】
尚、凹部11eをフィン部11b、11cの内面に設けてもよく、フィン部12b、12cやフィン部13b、13cに設けてもよい。
【0029】
次に、図4、図5、図6は第4実施形態のヒートシンクの斜視図、側面図及び正面図を示している。説明の便宜上、前述の図1に示す第1実施形態と同一の部分は同一の符号を付している。本実施形態のヒートシンク1はフィン部11b、11cから外側に延びる脚部11f、11gが設けられる。
【0030】
脚部11f、11gは放熱部材11を形成する金属板を折曲して形成され、底面部11aの下方(フィン部11b、11cの反対方向)に突出する。脚部11fは一方のフィン部11bの一端から延びてフィン部11bと同一面内に形成される。脚部11gは他方のフィン部11cの他端から延びてフィン部11cと同一面内に形成される。これにより、脚部11f、11gはヒートシンク1の対角に配置される。
【0031】
電子部品上に配したヒートシンク1は脚部11f、11gが電子部品の実装基板に設けた孔に係合して実装基板に取り付けられる。この時、脚部11f、11gが対角に配されるため、ヒートシンク1をより確実に電子部品に密着させることができる。
【0032】
また、従来例のように電子機器のシャーシや筐体等との係合によってヒートシンク1を固定した場合に、ヒートシンク1がシャーシ等の近くに設置されると外気流による熱の対流がシャーシ等により妨げられる。また、ヒートシンク1がシャーシ等から離れて設置されると、係合部が大型になって係合部により熱の対流が妨げられる。
【0033】
従って、放熱部材11から下方に延びる脚部11f、11gが実装基板に係合してヒートシンク1を固定することにより、熱の対流が妨げられることを防止して放熱量をより大きくすることができる。
【0034】
次に、図7は第5実施形態のヒートシンクの斜視図を示している。説明の便宜上、前述の図4〜図6に示す第4実施形態と同一の部分は同一の符号を付している。本実施形態のヒートシンク1はフィン部11b、11cに対して脚部11f、11gが折曲して設けられる。
【0035】
脚部11f、11gは放熱部材11を形成する金属板を折曲して形成され、底面部11aの下方に突出する。脚部11fは一方のフィン部11bの一端から延びて折曲によりフィン部11bに対して垂直面内に形成される。脚部11gは他方のフィン部11cの他端から延びてフィン部11cに対して垂直面内に形成される。これにより、脚部11f、11gはヒートシンク1の対角に配置される。
【0036】
電子部品上に配したヒートシンク1は脚部11f、11gが電子部品の実装基板に設けた孔に係合して実装基板に取り付けられる。この時、脚部11f、11gが対角に配されるため、ヒートシンク1をより確実に電子部品に密着させることができる。また、熱の対流が妨げられることを防止して放熱量をより大きくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によると、ヒートシンク及びそれを用いた電子機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ヒートシンク
11、12、13 放熱部材
11a、12a、13a 底面部
11b、11c、12b、12c、13b、13c フィン部
11e 凹部
11f、11g 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品上に装着して前記電子部品の発熱を放熱するヒートシンクにおいて、平板状の底面部と前記底面部の両端を折曲して立設したフィン部とを有した金属板から成る複数の放熱部材を備え、対向する前記フィン部の間隔が各前記放熱部材で異なるともに、前記フィン部間の間隔の大きい前記放熱部材の前記底面部上に前記フィン部間の間隔の小さい前記放熱部材の前記底面部を順に重ねて一体に形成し、最も外側に配される前記放熱部材の厚みが内側に配される前記放熱部材よりも厚いことを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
少なくとも一の前記放熱部材の前記フィン部に凹部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
最も外側に配される前記放熱部材が前記底面部に対して前記フィン部と反対方向に突出して前記電子部品の実装基板に係合する脚部を有し、前記脚部は一方の前記フィン部の一端と他方の前記フィン部の他端からそれぞれ延びて対角に配されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記脚部は前記フィン部に対して同一面内または垂直面内に配されることを特徴とする請求項3に記載のヒートシンク。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のヒートシンクと、前記ヒートシンクを装着した電子部品とを備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
電子部品上に装着して前記電子部品の発熱を放熱するヒートシンクの製造方法において、前記ヒートシンクは平板状の底面部と前記底面部の両端を折曲して立設したフィン部とを有した金属板から成る複数の放熱部材を備え、対向する前記フィン部の間隔が各前記放熱部材で異なるとともに、前記フィン部間の間隔の大きい前記放熱部材の前記底面部上に前記フィン部間の間隔の小さい前記放熱部材の前記底面部を順に重ねて一体に形成され、
所望の放熱量に応じて最も外側に配される前記放熱部材を異なる厚みに形成するとともに、放熱量に対して共通の前記放熱部材を内側に配置したことを特徴とするヒートシンクの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate