説明

ヒートシンクおよび半導体レーザ装置

【課題】ガルバニック腐食による水路内壁の構造劣化を防止し、信頼性の向上を図ることができるようにする。
【解決手段】水路3内を、接合部4の端部41のわずかな部分を除いて、各層21〜25を構成する薄板(母材)の表面が露出する構成とする。これにより、接合金属5を用いた接合を行っているにもかかわらず、接合金属5の露出は最小限に抑えられ、水路3内には実質的にほとんど異種金属が存在しない構造となる。これにより、ガルバニック腐食による信頼性への影響を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の薄板を重ね合わせて接合し内部に冷却液が通る流路(水路)が形成されたヒートシンク、およびそのようなヒートシンクに半導体レーザ素子を実装した半導体レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
数〜数十Wクラスの半導体レーザ装置では、高出力化、高信頼性化を実現するため水冷による冷却方式が多用されている。高い排熱効率を実現するためのヒートシンク構造として、マイクロチャネル型のヒートシンクがよく知られている(特許文献1参照)。
【0003】
図8は、従来の半導体レーザ装置の断面構造の一例を示している。
この半導体レーザ装置は、マイクロチャネル型の微細流路構造を有するヒートシンク101に、半導体レーザチップ102を搭載して構成されている。ヒートシンク101は、複数枚の薄板を重ね合わせて接合した構造を有し、内部に冷却液が通る水路103(供給水路103A、中間水路103B、および排出水路103C)が形成されている。図8の例では、最も上側を第1層121として、第1層121〜第5層125の5枚の薄板を積層した構成とされている。第1層121は上面に半導体レーザチップ102が搭載されるレーザチップ搭載板となっている。第2層122および第4層124には放熱フィンが形成されている。第2層122〜第5層125には水路103を形成する穴部が形成されている。各層はインサート金属(接合金属)105によって接合されている。
【0004】
このような構造のヒートシンク101の具体的な作製手順は、以下のような工程で行われる。
(1)各層の母材シート作製→(2)シート材エッチング(水路構造形成)→(3)シート材にインサート金属(接合金属)のメッキ→(4)シート材の張り合わせ→(5)シート材を加熱・加圧接合
ここで、母材シートとしては、一般に、熱伝導率が高く加工が容易な銅(Cu)が用いられる。インサート金属105としては例えば金(Au)や銀(Ag)が用いられる。接合方法としては、液相拡散接合やロウ付け等が用いられる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−294943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の作製手順において、液相拡散接合等を行った際にインサート金属105が溶け出して微細な構造部分が埋没することのないよう、インサート金属105のメッキは、例えば放熱フィンのパターンが形成された第2層122および第4層124には施されず、図9に示したように、第1層121、第3層123、および第5層125に施される。このように各層を交互にメッキした後、接合を行うと、図8に示したように、水路103の内壁は異なる金属が表出する構造となる。すなわち、水路103内には母材の金属(銅等)が露出する部分201と、インサート金属105(金、銀等)が露出する部分202とが混在する構造となる。従来では、このような構造のために、使用時間が経つにつれて、ガルバニック腐食が発生するという問題があった。ガルバニック腐食とは、冷却溶液中において異種金属が接触した際に、イオンが移動し、イオン化傾向の卑なる金属が減肉する(削れる)現象のことである。冷却流体を介しヒートシンク内の異種金属同士に電位差が発生し、数千時間前後の長期的な通水を行うことで、接液部の電気化学的な機構により、ヒートシンク内の貴金属側(例えば金、銀)に減肉が、また、卑金属側(例えば銅)で腐食生成物の堆積および付着が発生してしまう。これにより、水路内の構造破壊(通水時間数千時間での冷却能力低下)や、ヒートシンク外壁との導通(通水時間数千時間程度での漏水)が生じ、ヒートシンクとしての信頼性を著しく低下させる原因となっていた。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、ガルバニック腐食による水路内壁の構造劣化を防止し、信頼性の向上を図ることができるようにしたヒートシンクおよび半導体レーザ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のヒートシンクは、複数枚の薄板を重ね合わせて接合し内部に冷却液が通る水路が形成されたヒートシンクであって、水路内の表面が、少なくとも各薄板間の接合部の端部を除いて、すべて同一の金属材料で構成されているものである。
【0009】
本発明の半導体レーザ装置は、複数枚の薄板を重ね合わせて接合し内部に冷却液が通る水路が形成されたヒートシンクと、ヒートシンクに実装された半導体レーザ素子とを備えた半導体レーザ装置であって、ヒートシンクの水路内の表面が、少なくとも各薄板間の接合部の端部を除いて、すべて同一の金属材料で構成されているものである。
【0010】
本発明のヒートシンクまたは半導体レーザ装置では、水路内において、接合部の端部を含めて表面がすべて同一の金属材料が露出する構成とされるか、または接合部の端部を除く表面がすべて同一の金属材料が露出する構成とされる。これにより、水路内の表面が実質的にすべて同一の金属材料で構成され、水路内には異種金属が存在しない状態となるか、または異種金属が存在しても水路内表面積に対してごくわずかしか存在しない状態となる。これにより、ガルバニック腐食が最小限に抑えられ、信頼性が向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のヒートシンクまたは半導体レーザ装置によれば、水路内の表面を、少なくとも薄板間の接合部の端部を除いて、すべて同一の金属材料で構成するようにしたので、水路内には異種金属が存在しない状態、または異種金属が存在しても水路内表面積に対してごくわずかしか存在しない状態とすることができる。これにより、ガルバニック腐食による水路内壁の構造劣化を防止し、信頼性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
【0013】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体レーザ装置の一構成例を示している。また、図2は、この半導体レーザ装置に適用されるヒートシンク1Aの具体的な内部構造の一例を分解して示している。
【0014】
この半導体レーザ装置は、マイクロチャネル型の微細流路構造を有するヒートシンク1Aに、半導体レーザ素子2を搭載して構成されている。ヒートシンク1Aは、複数枚の薄板を重ね合わせて接合した構造を有し、内部に冷却液が通る水路3(供給水路3A、中間水路3B、および排出水路3C)が形成されている。本実施の形態では、最も上側を第1層21として、第1層21〜第5層25の5枚の薄板を積層した構成とされている。
【0015】
ヒートシンク1Aの各層21〜25は、すべて単一の金属材料(例えば銅、銀または金)の薄板で構成されている。各層21〜25はインサート金属を用いることなく、各層21〜25を構成する薄板(母材)が直接的に重ね合わせられて接合されている。これにより、水路3内の表面(内壁)が、接合部4の端部41(各層間の水路3側の端部)を含めてすべて、各層21〜25を構成する薄板の表面が露出する構成とされている。
【0016】
第1層21は上面に半導体レーザ素子2が搭載されるレーザチップ搭載板となっている。第2層22は、放熱フィン形成板となっており、図2に示したように、中間水路形成部15と、放熱フィン15fとを有している。中間水路形成部15は、第2層22を上下に貫通して形成されている。放熱フィン15fは、半導体レーザ素子2の搭載位置の下部に対応する位置に複数枚、並列的に配置されている。また、各放熱フィン15fの間を冷却水が通る構成となっている。
【0017】
第4層24も同様に放熱フィン形成板となっており、図2に示したように、中間水路形成部13と、放熱フィン13fとを有している。第4層24はまた、供給水路形成穴部12と、排出水路形成穴部17とを有している。供給水路形成穴部12と排出水路形成穴部17は、第4層24の上下を貫通するように形成されている。
【0018】
第3層23は、中間水路形成部14と排出水路形成穴部16とを有している。中間水路形成部14と排出水路形成穴部16は、第3層23の上下を貫通するように形成されている。中間水路形成部14は、矩形状に形成され、第2層22の放熱フィン15fと第4層24の放熱フィン13fとの間に位置している。
【0019】
第5層25は、供給水路形成穴部11と排出水路形成穴部18とを有している。供給水路形成穴部11と排出水路形成穴部18は、第5層25の上下を貫通するように形成されている。
【0020】
第5層25の供給水路形成穴部11と第4層24の供給水路形成穴部12は、上下方向に対応する位置に設けられ、これにより下層側から上層側に向けて冷却液が通過する供給水路3Aが形成されている。また、冷却液が通過する側から順に、第4層24の中間水路形成部13および放熱フィン13fと、第3層23の中間水路形成部14と、第2層22の放熱フィン15fおよび中間水路形成部15とにより、全体として供給水路3Aを通過した後の冷却液が通過する中間水路3Bが形成されている。また、第3層23の排出水路形成穴部16と第4層24の排出水路形成穴部17と第5層25の排出水路形成穴部18は、上下方向に対応する位置に設けられ、これにより全体として、中間水路3Bを通過した後の冷却液が上層側から下層側に向けて通過する排出水路3Cが形成されている。
【0021】
ここで、この半導体レーザ装置の動作例を説明する。
この半導体レーザ装置は、ヒートシンク1Aの供給水路3Aおよび排出水路3Cが、冷却水の給排水を行うチラーと称される図示しない循環装置に接続される。ヒートシンク1Aは、供給水路3Aに冷却水が供給されると、上述のように供給水路3Aから中間水路3Bへと冷却水が流れる。その後、冷却水は排出水路3Cから排出される。半導体レーザ素子2は、図示しないドライバ素子から受けた電気信号を、光信号に変換して出力する。半導体レーザ素子2が駆動されることで発生した熱は、レーザチップ搭載板(第1層21)からヒートシンク1A内に伝達される。ヒートシンク1A内には、半導体レーザ素子2が搭載された位置に対応する位置に放熱フィン13f,15fが設けられているので、水路3を冷却水が流れることで、半導体レーザ素子2から受けた熱が冷却される。これにより、半導体レーザ素子2が冷却される。
【0022】
次に、図3(A)〜(D)を参照して本実施の形態におけるヒートシンク1Aの製造方法を説明する。
ヒートシンク1Aの具体的な作製手順は、例えば以下のような工程で行われる。
(1)各層の母材シート作製(図3(A))→(2)シート材エッチング(水路構造形成)(図3(B))→(3)シート材の張り合わせ(図3(C))→(4)シート材を加熱・加圧接合(図3(D))
【0023】
ここで、母材シートは、熱伝導率の高い、例えば銅、銀、または金を用いて薄板状に形成される。また、母材シートは、各層21〜25につき、すべて単一(同一)の金属材料を用いる。各層21〜25の張り合わせおよび接合は、水路構造のエッチングを行った後の母材シートをインサート金属を用いることなく、直接的に重ね合わせて接合することにより行う。接合には固相拡散接合などの技術が使用可能である。このようにして、全体として完全に単一材料でのヒートシンク1Aを作成することができる。全体として完全に単一材料で構成されているので、水路3内の表面は、接合部4の端部41を含めてすべて、各層21〜25を構成する母材シートの表面が露出する構成となる。これにより、水路3内には異種金属がまったく存在しない構造となるので、ガルバニック腐食による信頼性への影響は皆無となる。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態のヒートシンク1Aおよび半導体レーザ装置によれば、ヒートシンク1A内の各層21〜25を構成する薄板(母材)をすべて単一の金属材料で構成すると共に、それら単一の金属材料で構成された各薄板をインサート金属を用いることなく直接的に重ね合わせて接合するようにしたので、水路3内の表面を、接合部4の端部41を含めてすべて同一の金属材料で構成することができる。これにより、水路内には異種金属が存在しない状態となり、ガルバニック腐食による水路内壁の構造劣化を防止し、信頼性の向上を図ることができる。
[第2の実施の形態]
【0025】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。なお、上記第1の実施の形態と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0026】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体レーザ装置の一構成例を示している。
本実施の形態に係る半導体レーザ装置は、上記第1の実施の形態におけるヒートシンク1A(図1)に代えてヒートシンク1Bを備えたものである。なお、本実施の形態におけるヒートシンク1Bは、各層の接合構造が異なるのみで、基本的な構成は上記第1の実施の形態におけるヒートシンク1Aと同様である。
【0027】
本実施の形態では、ヒートシンク1Bの各層21〜25の表面全体が、すべて単一の金属材料(例えば銀、金またはニッケル)による接合金属(インサート金属)5で覆われて接合されている。これにより、水路3内の表面(内壁)が、接合部4の端部41(各層間の水路3側の端部)を含めてすべて、接合金属5が露出する構成とされている。
【0028】
このヒートシンク1Bの製造方法を図5(A)〜(C)を参照して説明する。
ヒートシンク1Bの具体的な作製手順は、例えば以下のような工程で行われる。
(1)各層の母材シート作製(図5(A))→(2)シート材エッチング(水路構造形成)(図5(B))→(3)シート材に接合金属5を形成(図5(C))→(4)各層の張り合わせ→(5)各層を加熱・加圧接合
【0029】
ここで、シート材に接合金属5を施すこと以外の工程は、基本的に上記第1の実施の形態と同様である。ただし、上記第1の実施の形態とは異なり、母材シートは必ずしも単一(同一)の金属材料を用いる必要はない。接合金属5の形成は、例えばメッキや蒸着により行うことができる。また、本実施の形態では、接合金属5を用いて各層21〜25の張り合わせおよび接合を行うが、その接合方法は、固相拡散接合であることが好ましい。固相拡散接合は、固相面間を固相状態で接合するものであり、接合材料の融点以下の温度で接合が行われる。このため、接合の際に水路3内に材料ムラが少ない構造にすることができる。
【0030】
このようにして、全体として表面が完全に単一材料でのヒートシンク1Bを作成することができる。全体として表面が完全に単一材料で構成されているので、水路3内の表面は、接合部4の端部41を含めてすべて、接合金属5が露出する構成となる。これにより、水路3内には異種金属がまったく存在しない構造となるので、ガルバニック腐食による信頼性への影響は皆無となる。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態のヒートシンク1Bおよび半導体レーザ装置によれば、ヒートシンク1B内の各層21〜25の表面をすべて単一の金属材料からなる接合金属5が露出する構成にしたので、水路3内の表面を、接合部4の端部41を含めてすべて同一の金属材料で構成することができる。これにより、水路内には異種金属が存在しない状態となり、ガルバニック腐食による水路内壁の構造劣化を防止し、信頼性の向上を図ることができる。
[第3の実施の形態]
【0032】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。なお、上記第1または第2の実施の形態と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0033】
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体レーザ装置の一構成例を示している。
本実施の形態に係る半導体レーザ装置は、上記第1の実施の形態におけるヒートシンク1A(図1)に代えてヒートシンク1Cを備えたものである。なお、本実施の形態におけるヒートシンク1Cは、各層の接合構造が異なるのみで、基本的な構成は上記第1の実施の形態におけるヒートシンク1Aと同様である。
【0034】
上記第2の実施の形態におけるヒートシンク1B(図4)では、ヒートシンク1Bの各層21〜25の表面全体を、接合金属5で覆って接合するようにしたが、本実施の形態におけるヒートシンク1Cでは、必要最小限の部分にのみ接合金属5が形成されるようにしている。これにより、水路3内の表面(内壁)が、接合部4の端部41(各層間の水路3側の端部)を除いて、各層21〜25を構成する薄板(母材)の表面が露出する構成とされている。
【0035】
このヒートシンク1Cの製造方法を図7(A)〜(D)を参照して説明する。なお、図7(A)〜(D)では、第4層24の製造工程のみを代表して示している。
ヒートシンク1Cの具体的な作製手順は、例えば以下のような工程で行われる。
(1)各層の母材シート作製(図7(A))→(2)シート材に接合金属5を形成(図7(B))→(3)接合金属5のエッチング(図7(C))→(4)シート材エッチング(水路構造形成)(図7(D))→(4)各層の張り合わせ→(5)各層を加熱・加圧接合
【0036】
上記第2の実施の形態では、シート材エッチング(水路構造形成)後に接合金属5を形成するようにしたが、本実施の形態では、水路構造を形成する前に接合金属5を形成する。母材シートは、上記第1の実施の形態と同様に、各層21〜25につき、すべて単一(同一)の金属材料(例えば銅)を用いる。接合金属5は例えば銀、金またはニッケルであり、その形成は、例えばメッキや蒸着により行うことができる。本実施の形態では、接合金属5を形成した後、2度に分けてエッチング工程を行う。また、本実施の形態においても、上記第2の実施の形態と同様、各層21〜25の接合方法は、固相拡散接合であることが好ましい。固相拡散接合では、母材と接合金属5との間で原子相互拡散させることで接合が行われるので、接合金属5の形状変化が極めて少ない。このため、固相拡散接合を用いることで、接合の際に、接合金属5の形状変化や溶け出しを最小限に留めることができる。
【0037】
このような工程により、水路3内が、接合部4の端部41のわずかな部分を除いて、各層21〜25を構成する薄板(母材)の表面が露出する構成とされる。これにより、接合金属5を用いた接合を行っているにもかかわらず、接合金属5の露出は最小限に抑えられ、水路3内には実質的にほとんど異種金属が存在しない構造となるので、ガルバニック腐食による信頼性への影響を少なくすることができる。本実施の形態によれば、接合金属5を使用した作製の容易さとガルバニック腐食による信頼性の向上とを両立することができる。
<具体例>
【0038】
本実施の形態によれば、従来と比べて水路3内における貴な金属の割合を最小にすることができる。従来の構造(図8)では、水路内壁がヒートシンク材質より貴なインサート金属が露出し、ガルバニック腐食が促進されるのに対し、本実施の形態のヒートシンク1Cでは実質的にほぼ100%、例えば銅のみの水路3を形成することができ、ガルバニック腐食の速度を最小とすることができる。
【0039】
具体的には、腐食のレートに関して、一般的に次のような関係が成り立つ。
P=P0(1+B/A)
ただし、
P:貴な金属に接触後の卑な金属の腐食速度、P0:卑な金属の単独での腐食速度
A:卑な金属の表面積、B:貴な金属の表面積
【0040】
ここで、貴な金属とは例えば母材側の銅であり、卑な金属とは例えば接合金属5の金である。表面積A,Bを水路3内での面積とすることで、水路3内での腐食レートを計算することができる。従来、液相拡散接合を用いて図8のような構成とした場合、表面積Aが例えば800mm2程度、表面積Bが10mm2程度と仮定すると、腐食レート(P)は0.06×10-3mm程度になる。これに対して本実施の形態の構造(図6)にすることで、漏水寿命を16825倍にすることができる。
【0041】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変形実施が可能である。
例えば、上記各実施の形態で示した水路構造は図示した構造に限らず、他の構造であっても良い。また、ヒートシンクの層構造は5層に限らず、4層以下または6層以上であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る半導体レーザ装置の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るヒートシンクの一例を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るヒートシンクの製造方法の一例を示す製造工程図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る半導体レーザ装置の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るヒートシンクの製造方法の一例を示す製造工程図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る半導体レーザ装置の一例を示す断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るヒートシンクの製造方法の一例を示す製造工程図である。
【図8】従来の半導体レーザ装置の一例を示す断面図である。
【図9】従来のヒートシンクの製造方法の一例を示す製造工程図である。
【符号の説明】
【0043】
1A,1B,1C…ヒートシンク、2…半導体レーザ素子、3…水路、3A…供給水路、3B…中間水路、3C…排出水路、4…接合部、5…接合金属、11,12…供給水路形成穴部、13,14,15…中間水路形成部、16,17,18…排出水路形成穴部、13f,15f…放熱フィン、21…レーザチップ搭載板(第1層)、22…放熱フィン形成板(第2層)、23…水路形成板(第3層)、24…放熱フィン形成板(第4層)、25…水路形成板(第5層)、41…接合部の端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の薄板を重ね合わせて接合し内部に冷却液が通る水路が形成されたヒートシンクであって、
水路内の表面が、少なくとも前記各薄板間の接合部の端部を除いて、すべて同一の金属材料で構成されている
ことを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
前記複数枚の薄板は、インサート金属を介して接合されている
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記複数枚の薄板がすべて単一の金属材料で構成されると共に、前記各薄板が前記インサート金属を介して接合され、
前記水路内において前記接合部の端部を除く表面が、すべて前記各薄板の表面が露出する構成とされている
ことを特徴とする請求項2に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記水路内の表面が、前記接合部の端部を含めてすべて前記インサート金属が露出する構成とされている
ことを特徴とする請求項2に記載のヒートシンク。
【請求項5】
前記各薄板は、固相拡散接合により接合されている
ことを特徴とする請求項2に記載のヒートシンク。
【請求項6】
前記複数枚の薄板がすべて単一の金属材料で構成されると共に、前記各薄板が直接的に重ね合わせられて接合され、
前記水路内の表面が、前記接合部の端部を含めてすべて前記各薄板の表面が露出する構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項7】
複数枚の薄板を重ね合わせて接合し内部に冷却液が通る水路が形成されたヒートシンクと、前記ヒートシンクに実装された半導体レーザ素子とを備えた半導体レーザ装置であって、
前記ヒートシンクの水路内の表面が、少なくとも前記各薄板間の接合部の端部を除いて、すべて同一の金属材料で構成されている
ことを特徴とする半導体レーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−300596(P2008−300596A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144640(P2007−144640)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】