説明

ヒートシンク及びその製造方法

【課題】 金属線材がコイル状に巻回されて巻回単位が形成されるとともに全体が扁平に形成され、隣接する巻回単位が相互に位置ずれして空隙部を有する表面積の大きいフィンと前記基板を備える熱伝導性の基板を備えたヒートシンクにおいて、前記基板の四角状の溝とフィンとの間に空隙が形成されており、熱伝導性の基板近傍のフィンの空隙部を減少されることが課題である。
【解決手段】 金属線材がコイル状に巻回されて巻回単位が形成されるとともに全体が扁平に形成され、隣接する巻回単位の弧状頂部とこれに連なる弧状傾斜面が相互に位置ずれして空隙部及び接触部を有するフィンと、前記フィンを設ける熱伝導性の基板とを備え、前記熱伝導性の基板に設けられた溝に対してフィンが立設され、前記熱伝導性の基板の溝面と前記フィンの弧状傾斜面との間隙にハンダ、熱伝導性樹脂、及び金属箔の少なくとも一つが設けられてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はヒートシンクおよびその製造方法に関する。さらに詳しくは、主に半導体素子上に設置され、半導体素子の内部で発生する熱を流動する気体・液体に吸収させることによって半導体を冷却したり、その他、熱交換素子としての種々の用途に用いられるヒートシンク及びその製造方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来のヒートシンクは、半導体素子を効率的に冷却するため、一般に、表面の形状等を工夫し、表面積を大きくして放熱性能を向上させている。
【0003】
例えば、複数の孔を有する板状のベース部に、同様に複数の孔を有する柱状のフィンが立設されたヒートシンクが開示されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、上記(特許文献1)の発明は、複数の孔を設けて表面積を大きくすることにより放熱性が高められているが、ダイカスト法や引抜き法により製造されるため、手間がかかり、また製造コストが高いという欠点があった。
【0005】
一方、半導体素子とリードとが電気的に接続されて封止されたパッケージの上部に金属板を設け、その金属板の上部に金属細線製のコイル形放熱器が搭載された半導体装置が記載されている(特許文献2)。これによれば、コイルを放熱フィンとするため安価に製造できるという利点がある。
【0006】
しかしながら、上記(特許文献2)の発明は、コイルと金属板とが点接合であるため、金属板からコイルへの熱伝導が十分でなく、全体の放熱性能が低いという問題があった。また、コイルの占める空間体積が大きいため金属板上に密に搭載することができず、そのため大きな放熱量が得られないという問題もあった。
【0007】
また、上記課題を解決するため、金属線材がコイル状に巻回されて巻回単位が形成されるとともに全体が扁平に形成され、隣接する巻回単位が相互に位置ずれして空隙部及び接触部を有するフィンと、前記フィンを設ける四角状の溝が形成された熱伝導性の基板とを備え、前記フィンの扁平な面が熱伝導性の基板に対して垂直になるように、前記熱伝導性基板の溝中に配列されたヒートシンクが開示されている(特許文献3)。
【0008】
【特許文献1】特開平08−330483号公報
【特許文献2】特開平06−275746号公報
【特許文献3】国際公開第2005/067036号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記(特許文献3)の発明は、コイル状の金属線材を利用して表面積の大きいヒートシンクが得られることとなった。さらに鋭意研究した結果、基板の四角状の溝とフィンとの間に空隙が形成され、熱伝導性の基板の熱をフィンに伝えれば、十分な放熱量が得られることを発見した。すなわち、前記フィンは、金属線材がコイル状に巻回されて巻回単位が形成されるとともに全体が扁平に形成され、隣接する巻回単位が相互に位置ずれして空隙部を有するので、熱伝導性の基板近傍の前記フィンの空隙部を減少させることにより熱的結合が改善されることが判明した。
【0010】
この発明は、上述したように上記発明(特許文献3)がさらに研究されたものであり、前記熱伝導性の基板と前記フィンの熱的結合を改良することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、前記目的を達成すべく、本発明に係るヒートシンク及び製造方法は、次のような手段を選択する。
【0012】
すなわち、請求項1に記載のヒートシンクは、金属線材がコイル状に巻回されて巻回単位が形成されるとともに全体が扁平に形成され、隣接する巻回単位の弧状頂部とこれに連なる弧状傾斜面が相互に位置ずれして空隙部及び接触部を有するフィンと、前記フィンを設ける熱伝導性の基板とを備え、前記熱伝導性の基板に設けられた溝に対してフィンが立設され、前記熱伝導性の基板の溝面と前記フィンの弧状傾斜面との間隙にハンダ、熱伝導性樹脂、及び金属箔の少なくとも一つが設けられて熱的結合されることを特徴とする。
【0013】
前記構成によれば、弧状頂部から弧状傾斜面にかけて増加する基板底面と金属線材の空隙部に、ハンダ、熱伝導性樹脂、及び金属箔の少なくとも一つが設けられるため、前記熱伝導性の基板から前記フィンへの熱的結合部分が増加する。
【0014】
請求項2に記載のヒートシンクは、請求項1記載のヒートシンクにおいて、コイル状の金属線材が、右巻きに巻回されるコイル状の巻回単位及び左巻きに巻回されるコイル状の巻回単位が相互に位置ずれして組み合わさったものであることを特徴とする。
【0015】
前記構成によれば、右巻きに巻回されるコイル状の巻回単位及び左巻きに巻回されるコイル状の巻回単位が逆向きに相互に位置ずれして組み合わさるため、金属線材は空隙部を有し、かつ金属線材が密集して密に形成される。よって、金属線材同士が通気可能な状態で、金属線材同士の接触部が増加するため、フィンの熱抵抗が減少する。また、右巻きと左巻にそれぞれ巻回される巻回単位同士が逆向きで良好に絡み合う。
【0016】
請求項3に記載のヒートシンクは、請求項1または2のいずれか記載のヒートシンクにおいて、前記熱伝導性の基板に設けられた溝の底面が前記フィンの弧状傾斜面の一部に沿って形成されることを特徴とする。
【0017】
前記構成によれば、熱伝導性の基板の溝の底面が長さ方向にわたって、前記フィンの弧状傾斜面に沿って応接されているので、フィンの弧状傾斜面の一部とがより近接し、基板とフィンの間の熱抵抗が減少する。
【0018】
請求項4に記載のヒートシンクの製造方法は、金属線材がコイル状に巻回されて巻回単位が形成されるとともに全体が扁平に形成され、隣接する巻回単位の弧状頂部とこれに連なる弧状傾斜面が相互に位置ずれして空隙部及び接触部を有するフィンと、前記フィンを設ける熱伝導性の基板とを備え、前記熱伝導性の基板に設けられた溝に対してフィンが立設され、前記熱伝導性の基板の溝面と前記フィンの弧状傾斜面との間隙にハンダ、及び金属箔の少なくとも一つを備え、前記溝を外部から押圧、又はかしめるとともに、溶融して熱的結合することを特徴とする。
【0019】
前記構成によれば、前記熱伝導性基板の溝が押圧又はかしめることにより、基板の溝の空隙が減少するとともに、基板とフィンとが、ハンダ、及び金属箔の少なくとも一つを介して機械的結合される。さらに、ハンダ溶融による熱的結合が加わる。
【0020】
請求項5記載のヒートシンクの製造方法は、金属線材がコイル状に巻回されて巻回単位が形成されるとともに全体が扁平に形成され、隣接する巻回単位の弧状頂部とこれに連なる弧状傾斜面が相互に位置ずれして空隙部及び接触部を有するフィンと、前記フィンを設ける熱伝導性の基板とを備え、前記熱伝導性の基板に設けられた溝に対してフィンが立設され、前記熱伝導性の基板の溝面と前記フィンの弧状傾斜面の間隙に熱伝導性樹脂を備え、熱伝導性樹脂を熱硬化して熱的結合することを特徴とする。
【0021】
前記構成によれば、前記熱伝導性の基板から前記フィンへ、熱伝導性樹脂による熱的結合部分が増加するヒートシンクを得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のことから、本発明の請求項1に係るヒートシンクによれば、金属線材がコイル状に巻回されて巻回単位が形成されるとともに全体が扁平に形成され、隣接する巻回単位の弧状頂部とこれに連なる弧状傾斜面が相互に位置ずれして空隙部及び接触部を有するフィンを効率良く利用するヒートシンクが容易に得られる。前記フィンが前記熱伝導性の基板に設けられた四角状の溝に対して立設されると、前記溝と前記フィンの弧状傾斜面に間隙が生じる。前記弧状傾斜面の間隙に、ハンダ、熱伝導性樹脂、及び金属箔の少なくとも一つが設けられることにより、熱伝導性基板の溝とフィンとの間隙の空隙率が減少する。例えば、基板にフィンを立設した後、ハンダ、熱伝導性樹脂、及び金属箔の少なくとも一つを設けると、前記弧状傾斜面の間隙から埋められる。よって、熱伝導性基板の熱は、前記ハンダ、熱伝導性樹脂、及び金属箔の少なくとも一つ、または前記熱伝導性基板とフィンの接触部を介して、フィンに伝わる。
【0023】
また、本発明の請求項2に係るヒートシンクによれば、右巻きに巻回されるコイル状の巻回単位及び左巻きに巻回されるコイル状の巻回単位が相互に位置ずれして逆向きに組み合わさるため、例えば、右巻きに巻回されるコイル状の巻回単位のみからなる場合より、金属線材が密集して密に形成され、金属線材同士の接触部が増加する。よって、上記フィンの熱抵抗が減少する。また、通気可能な空隙は保持されているため、フィンの放熱性が向上する。また、右巻きと左巻にそれぞれ巻回される巻回単位同士が逆向きで良好に絡み合うため、形状の保持が良好になる。
【0024】
また、本発明の請求項3に係るヒートシンクによれば、熱伝導性の基板の溝の底面が長さ方向にわたって、前記フィンの弧状傾斜面に沿って応接されているので、基板とフィンの間の熱抵抗が減少し、ヒートシンクの放熱性が向上する。
【0025】
また、本発明の請求項4に係るヒートシンクの製造方法によれば、前記熱伝導性基板からの熱が、前記熱伝導性の基板の溝面と前記フィンの弧状傾斜面との間隙のハンダ、及び金属箔の少なくとも一つ、または前記熱伝導性の基板と前記フィンの接触部を介して、コイル状の金属線材を利用した表面積の大きいフィンに効率良く伝わるヒートシンクが容易に得られる。
【0026】
また、本発明の請求項5に係るヒートシンクの製造方法によれば、前記熱伝導性基板からの熱が、前記熱伝導性の基板の溝面と前記フィンの弧状傾斜面との間隙の熱伝導性樹脂、または前記熱伝導性の基板と前記フィンの接触部を介して、コイル状の金属線材を利用した表面積の大きいフィンに効率良く伝わるヒートシンクが容易に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るヒートシンク及びその製造方法について詳細に説明する。
【0028】
図1〜図4は、本発明に係るヒートシンクの一実施の形態を示す。
【0029】
図1のヒートシンク1は、基板10に複数の溝100を形成し、その溝100に沿うように、コイル状に巻回された金属線材から作製するフィン11を配列させることによって概略構成されている。基板10は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製で、高熱伝導性、かつ軽量である。フィン11も、同様にアルミニウムまたはアルミニウム合金製である。なお、図1では、図の煩雑を避けるために、フィン11を1列のみ描き、他の列については一部省略している。
【0030】
また、図1の例では、基板10に四角状の溝100を設け、熱伝導性の基板10に対してフィン11の扁平な面111が垂直となるように立設されている。
【0031】
フィン11は、コイル状に巻回された金属線材を、扁平に形成することによって作製されている。このとき、隣接する一巻き一巻きの巻回単位11a、11bが、相互に密着するようにする。これにより密着した接触部113を介して熱がフィン11全体に速やかに伝導する。また、コイル状の金属線材であるために、フィン11の表面積が大きくなり、したがって高い放熱性能を得ることができる。なお、ここでコイル状とは、円形に巻いたものに限定されるものではなく、三角形や四角形等の多角形、楕円形あるいは星形等の種々の形状を含んだものをいう。
【0032】
また、フィン11は金属線材12、13がコイル状に巻回されて巻回単位が形成されるとともに全体が扁平に連続形成され、各巻回単位11a、11bが相互に幅方向と長手方向に位置ずれして交差して、空隙部112と接触部113を形成する。特に、各巻回単位11a、11bが相互に位置ずれしているため多数の空隙部112及び接触部113が形成される。そして、金属線材12、13とが扁平に形成されているため、各巻回単位が相互に接触した接触部113の接触面積が大きくなる。
【0033】
具体的には、図2に示すように左巻きに巻回されたコイル状の金属線材12と、右巻きに巻回されたコイル状の金属線材13とが組み合わされる。そして、圧延等の手段により各金属線材12、13を扁平に形成することによって、扁平コイルが得られる。この加圧の際には、金属線材12,13の帯形の中心部分が内側(重合わせの内部側)に折曲げられるとともに、金属線材12,13の重合わせの表側の部分が圧潰されて中心部分に扁平な面111が形成される。
【0034】
図3及び図4(a)で示すように、金属線材12は、巻回単位の弧頂頂部114で、基板の溝100の底部と接するが、接触部123以外では、前記弧頂頂部114の下部と基板の溝の底部とに空隙が生じる。そして、図3及び図4(b)で示すように、巻回単位の弧状傾斜面115では、弧状傾斜面115の下部と基板の溝の底部とに空隙が生ずる。また、金属線材12と反対巻きの金属線材13は、巻回単位の弧頂頂部116で基板の溝100の底部と最も近接するが、弧頂頂部116の下部と基板の溝の底部とに空隙が生じる。そして、巻回単位の弧状傾斜面117では、弧状傾斜面117の下部と基板の溝の底部との空隙は増大する。
【0035】
前記金属線材12の巻回単位の弧頂頂部114では、弧頂頂部114の下部の空隙にハンダ118を備えることにより、基板10の溝100の底部との接合部が増加している。また、前記金属線材12と反対巻きに巻回されるコイル状の金属線材13の巻回単位の弧状頂部116では、ハンダ118’により基板10の溝100の底部と接合している。
【0036】
また、金属線材12の巻回単位の弧状頂部114は、基板10へ備えるとき、図4(a)の様に変形させ、接触部121から接触部122の平坦部を形成することもできる。また、金属線材12と反対向きに巻回される金属線材13の弧状頂部116も変形させ、接触部124から接触部125の平坦部を形成することができる。さらに、前記弧状頂部114と前記弧状頂部116間においても接触部126から接触部127の平坦部を形成することができる。
【0037】
このときには、基板10の熱は、前記接触部123、ハンダ118、前記接触部121から接触部122の平坦部、または前記接触部126から接触部127の平坦部において金属線材12の弧状頂部114に伝導する。また、金属線材13の弧状頂部116では、ハンダ118’、前記接触部124から接触部125の平坦部、または前記接触部126から接触部127の平坦部において、基板10の熱が伝導する。
【0038】
図4(b)で示すように、弧状傾斜面115では、ハンダ119により基板10の溝の底部と接合される部分は、前記弧状頂部においてハンダ118で接合される部分の2倍以上の体積となる。また、金属線材13の巻回単位の弧状傾斜面117では、前記弧状頂部116と同様に、ハンダ119’により基板10の溝の底部と接合している。前記弧状傾斜面115,116の部分には、前記弧状頂部113,114より多くのハンダが供給されることが望ましい。例えば、ディスペンサーなどにより、弧状傾斜面の部分に多くのハンダを供給することができる。
【0039】
前記と同様に、金属線材12の巻回単位の弧状傾斜面115、金属線材13の巻回単位の弧状傾斜面117でも変形させ、平坦部128及び平坦部129を形成することができる。また、金属線材12の弧状傾斜面115と金属線材13の弧状傾斜面17の間に平坦部130を形成することができる。
【0040】
このときには、基板10の熱は、ハンダ119、119’、金属線材12と基板10との平坦部128、または金属線材13と基板10との平坦部129において前記弧状傾斜面115,117に伝導する。また、金属線材同士が接する平坦部130においても熱が伝導する。なお、図4(a)および図4(b)では、ハンダ118、118’、119、または119’の換わりに、熱伝導性樹脂、または金属箔を使用することができる。
【0041】
このように製造された扁平コイルでは、金属線材12の巻回単位11a及び金属線材13の巻回単位11bが隣接し、相互に密着している。そして、扁平コイルには、隣接した巻回単位11a、11bが相互に位置ずれして空隙部112及び接触部113が形成されている。具体的には、隣接する巻回単位11a、11bが幅方向に長さm、長手方向に長さnの距離だけ位置ずれしている。幅方向の位置ずれの長さmは、金属線材12、13の直径dに対して0.5〜2倍が好ましい。幅方向の位置ずれの長さmが金属線材12、13の直径dに対して2倍以上の場合には、扁平コイルの端部における金属線材の密度が低くなることがある。また、幅方向の位置ずれの長さmが金属線材12、13の直径dの0.5倍未満の場合には、金属線材の重なりが大きく圧延等の手段により扁平に形成する際の成形性が低くなることがことがある。また、長手方向の位置ずれの長さnは、巻回単位11a、11bの長手方向の直径kに対して0.3〜0.7倍が好ましく、0.4〜0.6倍が特に好ましい。
【0042】
次に、図5は、本発明に係るヒートシンクの製造方法の実施の形態(1)を示す。まず、基板10の溝にハンダシート15、金属線材12,13を備える(図5(a))。その後、ハンダシートを溶解し、冷却することにより、基板10と金属線材12,13との間隙に、溶融後のハンダ16を形成することができる(図5(b))。
【0043】
また、図6は、本発明に係るヒートシンクの製造方法の実施の形態(2)を示す。まず、基板10の溝に熱伝導性樹脂17、金属線材12,13を備える。その後、加熱、または放置などにより、熱伝導性樹脂17は硬化する。前記ハンダ16は、金属線材12,13及び基板10と濡れ性がよいため、ハンダ付け時に溝を埋めることが難しいが、熱伝導性樹脂17により、基板の溝100を埋めることができる。
【0044】
図6には示されていないが、基板10と金属線材12、13との間隙に金属箔またはハンダを備えることも好ましい。この場合には、基板10の溝の間隙を熱伝導性樹脂17よりも高熱伝導性の金属箔またはハンダで形成することが可能となる。
【0045】
また、図7は、本発明に係るヒートシンクの製造方法の実施の形態(3)を示す。まず、基板10の溝に金属線材12,13、金属箔18、及びハンダ16を備える。その後、外部から押圧、またはかしめることにより、基板10、金属箔18、金属線材12,13は変形し、熱的結合状態が向上する。
【0046】
図7には示されていないが、前記ハンダ16、及び金属箔18に加えて、熱伝導性樹脂17を使用することもできる。また、基板10の溝と金属線材12,13との間隙に、ハンダ16、熱伝導性樹脂17、金属箔18のいずれか一つを備えた後、押圧、またはかしめてヒートシンクを製造することも可能である。
【0047】
また、基板に溝が複数形成されているときには、溝の一つおきにフィン11を立設すると、フィン11が立設されていない溝を利用して、押圧、またはかしめることができるため、作業性が向上する。
【0048】
次に、基板10としては、熱伝導性の高い材質を適宜選択して用いることができる。具体的には、アルミニウム、銅、銀、金等の金属材料、もしくはこれらとニッケル、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等との合金、あるいは炭素材料等を挙げることができる。
【0049】
基板10上の溝100は、平板状の基板の表面に切削加工を施すことによって形成することができる。また、ダイキャスト法、押出成形等により、溝100が形成された基板10を直接製造することもできる。なお、溝100のピッチ、形状等は、要求される放熱性能や、フィン11の大きさ等に応じて適宜設定することができる。なお、ここでいう熱伝導性の基板とは、放熱が要求される半導体装置等の基板をも含んだものをいう。
【0050】
また、コイル状に巻回された金属線材を扁平に形成するには、圧延等の公知の手段により押し潰す等して行うことができる。また、一方向に送られるコイルを連続的に圧延して、長尺状のフィン11を得ることもできる。このとき、隣接する巻回単位11a、11bが相互に適切に密着するように、圧延の圧力、圧延する角度等を適宜設定することが好ましい。なお、コイルを連続的に圧延すると、強度等の関係でコイルが伸びてしまい不適当な場合がある。このような場合には、例えば、左巻きコイルと右巻きコイルとを同軸に組み合わせ(絡み合わせ)、その組み合わせた状態で圧延すると乱れがなく良好に押し潰すことができる。
【0051】
フィン11についても、上記基板10の場合と同様に種々の材質から構成することができる。具体的には、アルミニウム、銅、銀、金等の金属材料、又はこれらとニッケル、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等との合金等を挙げることができる。特に、アルミニウム系の材料は、熱伝導性が高くかつ低コストであるため好適に用いられる。
【0052】
また、フィン11の金属線材の材質として、耐蝕性の金属を用いることもできる。ヒートシンクの用途によっては、腐食しやすい環境で使用される場合があるため、そのような場合に適している。耐蝕性の金属の例としては、チタン、及びその合金、ステンレス等が挙げられる。
【0053】
フィン11を構成する金属線材には、必要に応じて、熱伝導性、耐蝕性を高めるために表面処理を施すことができる。具体的には、銅めっき、銀めっき等が挙げられる。また、アルミニウム又はその合金を素材とする場合には、表面に陽極酸化皮膜処理(アルマイト処理)を施すことが好ましい。これにより、耐蝕性が向上するとともに、巻回単位11a、11bの相互に密着する接触部113の熱抵抗が低下し、全体の放熱性をさらに高めることができる。処理の方法は、既知の工程を採用することができ、具体的には、処理物を陽極として、シュウ酸や硫酸、リン酸等の液中で電解を行うことにより酸化皮膜を形成することができる。なお、陽極酸化皮膜処理には、いわゆる白色アルマイトと黒色アルマイトとがあるが、いずれも適用可能である。
【0054】
また、金属線材の表面には、必要に応じて、フェライトを含む塗膜を形成することもできる。これにより、フェライトが電磁波吸収能を有するため、全体として電磁波を効果的に吸収するヒートシンクを得ることができる。特に、フィン11の表面は、金属線材から構成するがゆえに凹凸形状であるため、電磁波が乱反射されて、電磁波吸収の効果が相乗的に大きくなる。
なお、フェライトとしては、軟磁性フェライト(ソフトフェライト)と、硬磁性フェライト(ハードフェライト)とが知られているが、いずれか一方を用いても良いし、複数種を混合して用いても良い。また、フェライトを分散させるバインダーとしては、特に限定されることなく、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等の一般的な物質を用いることができる。
【0055】
さらに、金属線材の表面には、必要に応じて、フィン11中を伝導する熱を速やかに外部へ放熱するために、熱放射性の塗膜を形成することができる。
このような塗膜は、熱放射効果を有する種々の顔料を含有させた塗料から形成することができる。顔料の例としては、カーボンブラック、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、ジルコン、マグネシア、イットリア(Y2O3)、コージライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、チタン酸アルミニウム(Al2O3・TiO2)等を挙げることができる。これらは、いずれかを単独で用いても良いし、複数を複合して用いても良い。また、塗料中の顔料の量は、所望の熱放射性に応じて適宜設定することができ、一般には塗膜の乾燥質量に対して10〜90質量%程度が適当である。また、バインダーとしては、熱によって劣化し難い物質が好ましく、例として、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
なお、熱放射性の塗膜の厚さは、1〜50μmが適当である。1μm未満であると、熱放射効果が小さくなり好ましくない。
【0056】
そして、フィン11の径(扁平な面111の幅)は、特に限定されることなく、要求される放熱性能に応じて適宜設定することができる。一般には、径が大きくなると表面積が増加し、放熱性が向上する。具体的には、製造したヒートシンクの用途によっても異なるが、数mm〜数cm程度が適当である。
【0057】
さらに、上記では、コイル状に巻回される金属線材を、押し潰す等して扁平に形成しているが、これに限定されるものではない。すなわち、隣接する巻回単位11a、11bが相互に密着することを条件として、例えば、コイル状の金属線材を、その長さ方向の端面が湾曲(三日月形など)になるように押し潰したり、端面が多角形等になるよう成形する等して異形面に形成することができる。
【0058】
また、上記ハンダは、基板10及びフィン11と濡れ性がよければよい。また、ハンダの形状は、シート、粉末、ペースト、糸状などが使用できる。また、軟らかいハンダであれば、フィン11を基板10の溝へ備える際にハンダを変形させることもできる。
【0059】
上記フィン11を構成する金属線材の断面形状は円形であるので、四角形状の溝100との間に空隙が形成される。この空隙にハンダを供給すると、毛細管現象によりフィン11の表面に沿ってハンダが拡がり、確実な固定が行われて、基板10からフィン11への熱の移動が円滑になる。
【0060】
次に、上記熱伝導性樹脂17の例としては、金、銀、銅、ニッケル等の金属粉、アルミナ、窒化アルミナ、窒化ケイ素、カーボン粉等を、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等のバインダーに配合したもの等を挙げることができる。
【0061】
さらに、図8(a)に示すように、ヒートシンク10’の溝102の底面を、上記フィンの弧状傾斜面に沿って形成することができる。図7(b)で示すように、前記ヒートシンク10’と前記フィンを接合すると、溝の弧状頂部103とフィンの弧状頂部前記ヒートシンク10’の溝の弧状頂部118から、溝の弧状傾斜面104とフィンの弧状傾斜面119が、熱的結合される。よって、熱伝導性の基板からフィンへの熱抵抗が減少し、ヒートシンクの放熱特性が向上する。
【0062】
なお、上記のヒートシンク1を半導体等に設置する場合には、半導体等からヒートシンク1への熱伝導を妨げないように、上述の熱伝導性接着剤等を介して設置することが好ましい。
【実施例】
【0063】
(実施例1)
線形1.5(mm)のアルミ線(A1050材)を巻回径30mmで長さ63mmに加工し、フィンとした。基板には、幅が63mm、長さ63mm、基板の厚さは12mm、溝のピッチは4.5mm、溝幅は3mm、溝底部の厚さが4mmのA5052材を使用した。前記基板の溝の一つおきに、前記フィンとハンダシート(コンピュータクラフト製鉛フリーアルミ・ハンダ)を設置した。ハンダシートは、0.5mm厚で、幅5mmで長さ63mmのものを使用した。この後、2mmピッチでかしめ、ヒートシンクを作製した。
【0064】
次に、ヒートシンクの評価装置を作製した。幅60mm、長さ60mm、厚さ10mmの断熱材の上に、幅50mm、長さ50mm、厚さ3mmのラバーヒーターを設置した。その上に、上記ヒートシンク、ファン(COPAL製F614T−12MC)の順に重ねた。ファンは空気を吹き付ける向きに設置した。前記ラバーヒーターとヒートシンクの間には、放熱用グリースを塗布した。また、上記断熱材、ラバーヒーター、アルミ板、ヒートシンク、ファンは、それぞれの中心が重なるように設置した。また、ラバーヒーターの表面には、K型熱伝対を埋め込んだ。
【0065】
上記の評価装置を用い、前記ファンを回転させながら、前記ラバーヒーターに80Vの電圧をかけ、ラバーヒーター表面の温度を測定した。
【0066】
(実施例2)
実施例1で作製したヒートシンクを280℃で加熱し、ハンダを溶解した。その後、実施例1と同じ方法で評価を行った。
【0067】
(実施例3)
実施例1で作製したヒートシンクにおいて、ハンダシートの換わりに導電性エポキシ樹脂を用い、ヒートシンクを作製した。その後、実施例1と同じ方法で評価を行った。
【0068】
(実施例4)
実施例1で作製したヒートシンクにおいて、ハンダシートの換わりにアルミ箔を用いた。アルミ箔は、幅8mm、長さ63mmにしたものを用いた。フィンと基板の溝の側壁の間にアルミ箔を設置した。アルミ箔は、フィンの両側に設置した。その後、導電性エポキシ樹脂を基板壁、フィン、およびアルミ箔の間隙に導電性エポキシ樹脂を注入し、硬化させ、ヒートシンクを作製した。その後、実施例1と同じ方法で評価を行った。
【0069】
(実施例5)
ヒートシンクには実施例1と同じものを使用し、以下のようにヒートシンクの評価装置を作製した。幅60mm、長さ60mm、厚さ10mmの断熱材の上に、幅50mm、長さ50mm、厚さ3mmのラバーヒーターを設置した。その上に、幅63mm、長さ63mm、厚さ5mmのアルミ板(A1050材)を置き、前記アルミ板の上に上記ヒートシンク、ファン(COPAL製F614T−12MC)の順に重ねた。ファンは空気を吹き付ける向きに設置した。前記ラバーヒーターとアルミ板の間、及びアルミ板とヒートシンクの間には、放熱用グリースを塗布した。また、上記断熱材、ラバーヒーター、アルミ板、ヒートシンク、ファンは、それぞれの中心が重なるように設置した。また、ラバーヒーターの表面には、K型熱伝対を埋め込んだ。
【0070】
(実施例6)
線形1.5(mm)のアルミ線(A1050材)を巻回径30mmで長さ63mmに加工し、フィンとした。基板には、幅が9mm、長さ63mm、基板の厚さは12mm、溝のピッチは4.5mm、溝幅は3mm、溝底部の厚さが4mmのA5052材を使用した。前記基板の溝の一つおきに、前記フィンとを設置した。この後、2mmピッチでかしめた。上記基板の溝の側壁と上記フィンの間隙に導電性エポキシ樹脂を注入し、硬化させ、ヒートシンクを作製した。
【0071】
次に、ヒートシンクの評価装置を作製した。幅20mm、長さ20mm、厚さ10mmの断熱材の上に、幅25mm、長さ25mm、厚さ3mmのラバーヒーターを設置した。その上に、上記ヒートシンク、ファン(COPAL製F614T−12MC)の順に重ねた。ファンは空気を吹き付ける向きに設置した。前記ラバーヒーターとヒートシンクの間には、放熱用グリースを塗布した。また、上記断熱材、ラバーヒーター、アルミ板、ヒートシンク、ファンは、それぞれの中心が重なるように設置した。また、ラバーヒーターの表面には、K型熱伝対を埋め込んだ。
【0072】
上記の評価装置を用い、前記ファンを回転させながら、前記ラバーヒーターに40Vの電圧をかけ、ラバーヒーター表面の温度を測定した。
【0073】
(比較例)
実施例1で使用したヒートシンクからハンダシートを除き、他は実施例6と同じ方法でヒートシンクを作製した。その後、実施例6と同じ方法で評価を行った。
【0074】
(表1)

【0075】
表1に示すように、比較例のヒートシンクの熱抵抗1.36(℃/W)に対して、実施例5のヒートシンクの熱抵抗は0.90(℃/W)と良好な放熱特性を示した。また、実施例5と同じ構成の実施例3のヒートシンクの熱抵抗が0.36(℃/W)であったのに対し、実施例1、実施例2、実施例4のヒートシンクの熱抵抗は、それぞれ0.31(℃/W)、0.31(℃/W)、0.34(℃/W)と、いずれも実施例3のヒートシンクより良好な放熱特性を示した。また、実施例2のヒートシンクにアルミ板を供えたヒートシンクの熱抵抗は0.24(℃/W)となり、ヒートシンクとアルミ板との組合せにより、モットの良好な放熱特性を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明のヒートシンクの斜視図である。
【図2】扁平コイルを示す図である。
【図3】図1のA方向でのフィンを示す図である。
【図4】(a) 図2のB−B’方向でのヒートシンクの断面の拡大図である。(b) 図2のC−C’方向でのヒートシンクの溝の断面の拡大図である。
【図5】本発明の実施形態(1)に係るヒートシンクの製造方法の説明図である。
【図6】本発明の実施形態(2)に係るヒートシンクの製造方法の説明図である。
【図7】本発明の実施形態(3)に係るヒートシンクの製造方法の説明図である。
【図8】図1のA方向で、ヒートシンクの溝の底面が上記フィンの弧状傾斜面に沿って形成されるときを説明する図。
【符号の説明】
【0077】
1 ヒートシンク
10、10’ 基板
100 溝
101 空隙
102 溝
103 溝の弧状頂部
104 溝の弧状傾斜面
11 フィン
11a、11b 巻回単位
111 扁平な面
112 空隙部
113 接触部
114 金属線材の巻回単位の弧状頂部
115 金属線材の巻回単位の弧状傾斜面
116 金属線材の巻回単位の弧状頂部
117 金属線材の巻回単位の弧状傾斜面
118、118’ ハンダ
119、119’ ハンダ
12、13 金属線材
121、122、123 基板と金属線材の接触部
15 ハンダシート
16 溶融後のハンダ
17 熱伝導性樹脂
18 金属箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線材がコイル状に巻回されて巻回単位が形成されるとともに全体が扁平に形成され、隣接する巻回単位の弧状頂部とこれに連なる弧状傾斜面が相互に位置ずれして空隙部及び接触部を有するフィンと、前記フィンを設ける熱伝導性の基板とを備え、前記熱伝導性の基板に設けられた溝に対してフィンが立設され、前記熱伝導性の基板の溝面と前記フィンの弧状傾斜面との間隙にハンダ、熱伝導性樹脂、及び金属箔の少なくとも一つが設けられ熱的結合されることを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
請求項1記載のヒートシンクにおいて、コイル状の金属線材が、右巻きに巻回されるコイル状の巻回単位及び左巻きに巻回されるコイル状の巻回単位が相互に位置ずれして組み合わさったものであることを特徴とするヒートシンク。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか記載のヒートシンクにおいて、前記熱伝導性の基板に設けられた溝の底面が前記フィンの弧状傾斜面の一部に沿って形成されることを特徴とするヒートシンク。
【請求項4】
金属線材がコイル状に巻回されて巻回単位が形成されるとともに全体が扁平に形成され、隣接する巻回単位の弧状頂部とこれに連なる弧状傾斜面が相互に位置ずれして空隙部及び接触部を有するフィンと、前記フィンを設ける熱伝導性の基板とを備え、前記熱伝導性の基板に設けられた溝に対してフィンが立設され、前記熱伝導性の基板の溝面と前記フィンの弧状傾斜面との間隙にハンダ、及び金属箔の少なくとも一つを備え、前記溝を外部から押圧、又はかしめるとともに、溶融して熱的結合することを特徴とするヒートシンクの製造方法。
【請求項5】
金属線材がコイル状に巻回されて巻回単位が形成されるとともに全体が扁平に形成され、隣接する巻回単位の弧状頂部とこれに連なる弧状傾斜面が相互に位置ずれして空隙部及び接触部を有するフィンと、前記フィンを設ける熱伝導性の基板とを備え、前記熱伝導性の基板に設けられた溝に対してフィンが立設され、前記熱伝導性の基板の溝面と前記フィンの弧状傾斜面の間隙に熱伝導性樹脂を備え、熱伝導性樹脂を熱硬化して熱的結合することを特徴とするヒートシンクの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate