説明

ヒートポンプ装置

【課題】寒冷地で利用可能な高信頼性、高効率で設置面積の小さい蓄熱式ヒートポンプ装置を提供する。
【解決手段】ヒートポンプ装置は、圧縮機11a、圧縮機11b、放熱器12a、膨張機構13a、冷媒分離手段16、膨張機構13b、蒸発器14、前記冷媒分離手段16から圧縮機11aと圧縮機11bの接続配管に接続されるバイパス管17、バイパス管に設置された水−冷媒熱交換器18とによって冷媒回路10を形成し、蓄熱タンク23、放熱器12a、暖房端末22によって蓄熱回路21を形成し、蓄熱タンク23、蒸発器14bによって蓄熱利用回路24を形成し、蓄熱タンク温度検出手段31や外気温度検出手段33により把握した運転状態の変化に対応して、蓄熱運転モードと蓄熱利用運転モードを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯機や空調機などに用いる蓄熱式ヒートポンプ装置に係わり、特に、冬期に外気温度が例えば−15℃以下に低下するような寒冷地で利用する蓄熱式ヒートポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
寒冷地で用いられる蓄熱式ヒートポンプ装置の性能を確保するための手段として、負荷の小さい深夜時間帯にヒートポンプを用いて空気のエネルギーを蓄熱槽に蓄え、負荷の大きな朝や夕方に蓄えられたエネルギーを利用する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9は、特許文献1に記載された従来の寒冷地用蓄熱式ヒートポンプ装置を示す構成図である。
【0004】
図9において、ヒートポンプ装置は、容量制御圧縮機1、一定速圧縮機2a、2b、アキュムレータ3、オイルセパレータ4、四方弁5、室外熱交換器6a、6b、室外膨張弁7a、7b、過冷却器8a、8b、室外送風機9a、9b、レシーバ10、ガス液熱交換器11、ガス阻止弁12、液阻止弁13、蓄熱ガス阻止弁14、ガスバイパス15、蓄熱回路用電磁弁16a、16b、容量制御圧縮機用液インジェクション膨張弁20、一定速圧縮機用液インジェクション膨張弁21a、21b、容量制御圧縮機用液インジェクション電磁弁22、一定速圧縮機用液インジェクション電磁弁23a、23b、容量制御圧縮機用液インジェクションキャピラリーチューブ24、一定速圧縮機用液インジェクションキャピラリーチューブ25a、25b、室外制御装置30、室外温度センサー31、容量制御圧縮機用吐出温度センサー32、一定速圧縮機用吐出温度センサー33a、33b、吸入温度センサー34、高圧圧力センサー36、低圧圧力センサー37からなる室外機100と、室内熱交換器50a、50b、50c、室内膨張弁51a、51b、51c、室内送風機52a、52b、52c、室内制御装置53a、53b、53c、室内吸込温度センサー54a、54b、54c、リモートコントローラー55a、55b、55cからなる室内機200a、200b、200cと、蓄熱槽60、蓄熱熱交換器61、蓄熱回路用膨張弁62、蓄熱回路用電磁弁63a、63b、63c、蓄熱制御装置65、蓄熱媒体温度センサー66、蓄熱コントローラー67からなる蓄熱機300とが、ガス接続配管40、液接続配管41、蓄熱ガス接続配管42、伝送線45によって連結されている。
【0005】
夜間に蓄熱熱交換器61内の蓄熱媒体に蓄熱運転を行ない、昼間の空調運転時にこの蓄熱を利用する運転を行なうことで、蓄熱を利用する運転を朝夕に分割することにより性能を確保するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−106917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図9に示す従来の蓄熱式ヒートポンプ装置では、高温ラジエータを空調端末として利用した場合などでは、ヒートポンプ装置の高圧圧力や圧縮機の吐出温度が上昇し、ヒートポンプ装置の信頼性が低下する。あるいは信頼性を確保するために高圧圧力や吐出温度を制限するとヒートポンプ装置の性能が低下するなどの課題を有していた。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、高温ラジエータを空調端末として利用した蓄熱式ヒートポンプ装置を寒冷地で使用した場合でも、高効率と高信頼性を確保することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明のヒートポンプ装置は、第一圧縮機と、第二圧縮機と、第一放熱器と、第一膨張機構と、第二膨張機構と、蒸発器とを順次接続し、前記第一膨張機構と前記第二膨張機構の接続配管から分岐し、前記第一圧縮機と前記第二圧縮機の接続配管に合流するバイパス管に水−冷媒熱交換器および流量調整弁を設置することによって冷凍サイクルを構成し、前記放熱器と暖房端末および蓄熱タンクとを順次接続することによって蓄熱回路を構成し、前記水−冷媒熱交換器と蓄熱タンクとを接続することによって蓄熱利用回路を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のヒートポンプ装置によれば、高温ラジエータを空調端末として利用した蓄熱式ヒートポンプ装置を寒冷地で使用した場合でも、高効率と高信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1におけるヒートポンプ装置の構成図
【図2】本発明の実施形態1における蓄熱タンク温度を利用した最適な運転モード制御フローチャート
【図3】本発明の実施形態1における時刻を利用した最適な運転モード制御フローャート
【図4】本発明の実施形態1における水温度を利用した最適な水ポンプ出力制御フローチャート
【図5】本発明の実施形態1における外気温度によって各閾値を変化させる最適な制御フローチャート
【図6】本発明の実施形態2におけるヒートポンプ装置の構成図
【図7】本発明の実施形態2における外気温度を利用して運転を変化させる最適な制御フローチャート
【図8】本発明の実施形態2における水温度を利用した最適な水ポンプ出力制御フローチャート
【図9】従来のヒートポンプ装置を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
(実施形態1)
図1は、本発明の第1実施形態におけるヒートポンプ装置の構成図である。
【0014】
図1において、本実施形態のヒートポンプ装置は、冷媒を中間圧力に圧縮する圧縮機11aと、冷媒を高温高圧に圧縮する圧縮機11bと、高温高圧になった冷媒と水とを熱交換する放熱器12aと、冷媒を中間圧力まで減圧膨張する膨張機構13aと、気液二相冷媒を気相と液相に分離する冷媒分離手段16と、冷媒分離手段16によって液相冷媒が主成分となった冷媒を低圧圧力まで減圧膨張する膨張機構13bと、大気の熱を奪って冷媒を蒸発させる蒸発器14と、冷媒分離手段16によって気相冷媒が主成分となった冷媒が流れるバイパス管17と、バイパス管17に流れる冷媒と蓄熱利用回路24を流れる水とを熱交換させる水−冷媒熱交換器18と、バイパス管17に流れる冷媒流量を調節する流量調整弁15とによって冷媒回路10を形成している。
【0015】
また、蓄熱タンク23を設け、放熱器12aと暖房端末22とによって蓄熱回路21を形成する。そして、蓄熱回路21に設けられた水ポンプ25aで低温水が支配的な蓄熱タンク23底部から汲み上げ、放熱器12aで高温水とし、暖房端末22を通過させた後の中温水となった水を中温水が支配的な蓄熱タンク23上部に戻す。そのため、蓄熱タンク23内は、自然と底部の低温水が支配的な第1領域と、上部の高温水が支配的な第2領域とに分かれる。
【0016】
さらに、蓄熱タンク23と、水ポンプ25bと、水−冷媒熱交換器18とによって蓄熱利用回路24を形成する。そして、蓄熱利用回路24に設けられた水ポンプ25bで蓄熱タンク23上部の第2領域から中温水を汲み上げ、水−冷媒熱交換器18で冷媒との熱交換を行った後に蓄熱タンク23の第1領域に戻す。
【0017】
蓄熱タンク23に蓄えられた中温水と低温水のバランスを、蓄熱タンク23内部に設置された水の温度を検出する温度検出手段31により把握することができる。例えば、温度検出手段31を蓄熱タンク23の底部から容積に換算して4割の高さ付近に設置(図1の基準線Xに相当)しておき、温度検出手段31の検出値と所定値を比較することで蓄熱タンク23内の第1領域と第2領域の占有割合を予測することができる。
【0018】
なお、本実施形態では温度検出手段を1個としたが、温度検出手段を蓄熱タンク23の底部から容積に換算して異なる高さの位置に複数個設置することで、より正確に中温水と低温水の占有割合を把握することができる。
【0019】
また、蓄熱タンク23には蓄熱タンク内部に蓄えられている水の温度を検出する温度検出手段31、蓄熱利用回路24の水−冷媒熱交換器18の下流側には水温度を検出する温度検出手段34がそれぞれ設置されており、バイパス管17の水−冷媒熱交換器18の下流側には冷媒温度を検出する温度検出手段36が設置されており、時刻検出手段32および外気温度検出手段33も設置されている。
【0020】
さらに、これらの温度検出手段31、時刻検出手段32、外気温度検出手段33、温度検出手段34および温度検出手段36からの信号により、運転モードの切り替えや水ポンプ25aによる水の循環速度、流量調整弁15の出力を制御する制御手段40が備えられている。
【0021】
次に、上記したヒートポンプ装置の動作について説明する。
【0022】
まず、蓄熱運転モードについて説明する。圧縮機11aで吐出された中間圧力の冷媒は、圧縮機11bにて高温高圧に圧縮され、放熱器12aにて水と熱交換して冷却される。放熱器12aを流出した冷媒は第1膨張機構13aを通過して中間圧力になった後、冷媒分離手段16において気相冷媒を主成分とする冷媒と液相冷媒を主成分とする冷媒に分離される。気相冷媒を主成分とする冷媒は、バイパス管17に流入し、圧縮機11aから吐出される中間圧冷媒と合流して圧縮機11bに戻る。液相冷媒を主成分とする冷媒は、膨張機構13bによって低圧圧力まで減圧膨張され、蒸発器14において周囲大気の熱エネルギーを取り込み、再び圧縮機11aに戻る。
【0023】
この時、バイパス管17を流れる気相冷媒を主成分とする冷媒は、温度検出手段36によって検出された温度に対応した流量に、流量調整弁15によって調整される。また、蓄熱タンク23から蓄熱回路21に流れ出た低温水は放熱器12aで温められ高温水となり、暖房端末22にて室内空気などを暖め、暖房機能を発揮し、中温水となり再び蓄熱タンクに戻る。この時、蓄熱利用回路24に設置されている水ポンプ25bは作動しておらず、水−冷媒熱交換器18に水を流し込まない。これらの動作により、蓄熱タンク23内では、低温水が減少し中温水が増加し熱エネルギーが蓄えられる。
【0024】
次に、蓄熱利用運転モードについて説明する。圧縮機11aで吐出された中間圧力の冷媒は、圧縮機11bにて高温高圧に圧縮され、放熱器12aにて水と熱交換して冷却される。放熱器12aを流出した冷媒は膨張機構13aを通過し、中間圧力になった後、冷媒分離手段16において気相冷媒を主成分とする冷媒と液相冷媒を主成分とする冷媒に分離される。気相冷媒を主成分とする冷媒は、バイパス管17に流入し、蓄熱利用回路を流れる中温水から熱を奪った後、圧縮機11aから吐出される中間圧冷媒と合流して圧縮機11bに戻る。液相冷媒を主成分とする冷媒は、膨張機構13bによって低圧圧力まで減圧膨張され、蒸発器14において周囲大気の熱エネルギーを取り込み、再び圧縮機11aに戻る。この時、バイパス管17を流れる気相冷媒を主成分とする冷媒は、温度検出手段36によって検出された温度に対応した流量に、流量調整弁15によって調整される。また、蓄熱タンク23から蓄熱回路21に流れ出た低温水は放熱器12aで温められ高温水となり、暖房端末22にて室内空気などを暖め、暖房機能を発揮し、中温水となり再び蓄熱タンクに戻る。この時、蓄熱利用回路24に設置されている水ポンプ25bは動作しており、水−冷媒熱交換器18に水を流入させ、中温水が持つ熱エネルギーを冷媒に移動させ、低温水になった後、蓄熱タンク23に戻る。
【0025】
これらの動作により、蓄熱タンク23に蓄えられた熱エネルギーを利用できるので、信頼性を保ちつつ、性能を向上させることができる。また、冷媒分離手段16により、大気エネルギーを回収することができない気相冷媒を蒸発器14に流さずにおけるため、蒸発器14での圧力損失が低減し、圧縮機11aでの消費電力を低減できるので、性能が向上する。
【0026】
ここで、暖房システムを低コストで効率よく制御する方法について、図3〜6のフローチャートを用いて説明する。
【0027】
(1)蓄熱タンク内の温水温度を判断基準とした運転モードの切り替え制御
図2は、蓄熱タンク温度によって運転モードを切り替えるシステムの制御フローチャートである。
【0028】
まず、ステップS1では、蓄熱タンク温度検出手段31からの検出信号により蓄熱タンク温度Tnを検出する。
【0029】
ステップS2では、蓄熱タンク温度Tnと閾値Tn1を比較する。蓄熱タンク温度Tnが閾値Tn1より大きければステップS3に移り、蓄熱タンク温度Tnが閾値Tn1以下であればステップS4に移る。
【0030】
上記制御によれば、ステップS3では蓄熱利用運転モードの動作を行い、ステップS4では、蓄熱運転モードの動作を行なう。これにより、蓄熱タンク23内における中温水と低温水の占有割合を適切に保ちながら運転することが可能になるので、蓄熱タンク容量を最小限に留めながら高効率な暖房システムを構築することが可能となる。
【0031】
(2)時刻を判断基準とした運転モードの切り替え制御
図3は、時刻Tiによって運転モードを切り替えるシステムの制御フローチャートである。
【0032】
まず、ステップS5で時刻検出手段32からの検出信号により時刻Tiを検出し、ステップS6に移る。
【0033】
ステップS6で時刻Tiと閾値Ti1およびTi2を比較する。そして、時刻Tiが閾値ti1以下であり、かつ閾値Ti2より大きければステップS7に移り、それ以外の時刻ではステップS8に移る。
【0034】
上記制御によれば、ステップS7では蓄熱利用運転モードの動作を行い、ステップS8では、蓄熱運転モードの動作を行なう。なおこの時、蓄熱利用運転モードの動作を行なう時刻を深夜時間帯とし、蓄熱運転モードの動作を行なう時刻を深夜以外の時間帯としても良い。これにより、外気温度が高い時など、大気からの熱の取り込みが効率よく行なえる条件では蓄熱運転モードで動作し、深夜など給湯などの付随する機器の負荷が減少し、なおかつ外気温度が低く大気からの熱の取り込み効率が低い条件では蓄熱利用運転モードで動作することにより、蓄熱タンクや熱交換器などの容量を抑えながらも高効率な暖房システムを構築することが可能となる。
【0035】
(3)蓄熱利用回路を流れる温水温度を判断基準とした運転モードの切り替え制御
図4は、蓄熱利用回路24の水−冷媒熱交換器18下流側の配管に設置された温度検出手段34によって検出された水温度により、水ポンプ25bの出力を変化させるシステムの制御フローチャートである。ここで、水ポンプ出力は、単位時間当たりに水ポンプが搬送する水量であり、例えば水ポンプの回転数で制御することができる。
【0036】
まず、ステップS9で水温度検出手段34からの検出信号により水温度Trを検出し、ステップS10に移る。
【0037】
ステップS10で水温度Trと閾値Tr1を比較する。そして、水温度Trが閾値Tr1より大きければステップS11に移り、水ポンプ出力Pwをw1だけ大きくして、単位時間当たりに水−冷媒熱交換器18を通過する水量を増加させる。一方、水温度Trが閾値Tr1以下であればステップS12に移る。
【0038】
ステップS12では、水温度Trと閾値Tr2を比較する。そして、水温度Trが閾値Tr2より大きければ、水ポンプ出力を変化させずに維持し、水温度Trが閾値Tr2以下であればステップS13に移り、水ポンプ出力PwをPw2だけ小さくして、単位時間当たりに水−冷媒熱交換器18を通過する水量を減少させる。
【0039】
上記制御によれば、蓄熱タンク23に蓄えられる低温水の温度および水−冷媒熱交換器18に流入する水温度を変化させることができるので、冷凍サイクルを効率よく運転することができ、低コストで高効率な暖房システムを構築することが可能となる。
【0040】
(4)外気温度を判断基準とした運転モードの切り替え制御
図5は、外気温度により、図2〜4のフローチャートで用いられる蓄熱タンク温度の閾値Tn1、時刻の閾値Ti1、Ti2、水温度の閾値Tr1、Tr2を変化させるシステムの制御フローチャートである。
【0041】
まず、ステップS14で外気温度検出手段33からの検出信号により外気温度Taを検出し、ステップS15に移る。
【0042】
ステップS15で、外気温度Taと閾値Ta1を比較する。そして、外気温度Taが閾値Ta1より小さければステップS16に移り、外気温度Taが閾値Ta1以上であればステップS17に移る。
【0043】
ステップS16では、閾値Tn1をTn11、閾値Ti1をTi11、閾値Ti2をTi21、閾値Tr1をTr11、閾値Tr2をTr21とする。
【0044】
ステップS17では、外気温度Taと閾値Ta2を比較する。そして、外気温度Taが閾値Ta2より小さければ、ステップS18に移り、外気温度Taが閾値Ta2以上であれば、ステップS19に移る。
【0045】
ステップS18では、閾値Tn1をTn12、閾値Ti1をTi12、閾値Ti2をTi22、閾値Tr1をTr12、閾値Tr2をTr22とする。
【0046】
ステップS19では、外気温度Taと閾値Ta3を比較する。そして、外気温度Taが閾値Ta3より小さければ、ステップS20に移り、外気温度Taが閾値Ta3以上であれば、ステップS21に移る。
【0047】
ステップS20では、閾値Tn1をTn13、閾値Ti1をTi13、閾値Ti2をTi23、閾値Tr1をTr13、閾値Tr2をTr23とする。
【0048】
ステップS21では、閾値Tn1をTn14、閾値Ti1をTi14、閾値Ti2をTi24、閾値Tr1をTr14、閾値Tr2をTr24とする。
【0049】
上記制御によれば、外気温度条件により、蓄熱タンク23に蓄えられる中温水と低温水の量や運転モードを切り替える時間帯、および低温水の温度や冷凍サイクルの低圧圧力を変化させることができるので、より高効率で設置スペースの小さな暖房システムを低コストで構築することが可能となる。
【0050】
(実施形態2)
図6において、本実施形態のヒートポンプ装置は、冷媒を中間圧力に圧縮する圧縮機11a、冷媒を高温高圧に圧縮する圧縮機11b、高温高圧になった冷媒と暖房回路26を流れる水を熱交換させる放熱器12aと、放熱器12aを流出した冷媒と蓄熱回路21を流れる水を熱交換させる放熱器12bと、冷媒を中間圧力まで減圧膨張する膨張機構13aと、気液二相冷媒を気相と液相に分離する冷媒分離手段16と、前記冷媒分離手段16によって液相冷媒が主成分となった冷媒を低圧圧力まで減圧膨張する膨張機構13bと、大気の熱を奪って冷媒を蒸発させる蒸発器14と、前記冷媒分離手段16によって気相冷媒が主成分となった冷媒が流れるバイパス管17と、バイパス管に流れる冷媒と蓄熱利用回路24を流れる水とを熱交換させる水−冷媒熱交換器18と、バイパス管17に流れる冷媒流量を調節する流量調整弁15とによって冷媒回路10を形成している。
【0051】
また、放熱器12aと、暖房端末22とによって暖房回路26を形成している。
【0052】
さらに、蓄熱タンク23を設け、水ポンプ25aで放熱器12bと蓄熱タンク23の水を循環させることによって蓄熱回路21を形成する。蓄熱回路21に設けられた水ポンプ25aで低温水が支配的な蓄熱タンク23底部から汲み上げ、放熱器12bで高温水とし、蓄熱回路21を通過させた後の中温水となった水を中温水が支配的な蓄熱タンク23上部に戻す。そのため、蓄熱タンク23内は、自然と底部の低温水が支配的な第1領域と、上部の高温水が支配的な第2領域とに分かれる。
【0053】
さらに、中温水を蓄える蓄熱タンク23と、水ポンプ25bと、水−冷媒熱交換器18とによって蓄熱利用回路24を形成している。そして、蓄熱利用回路24に設けられた水ポンプ25bで蓄熱タンク23上部の第2領域から中温水を汲み上げ、水−冷媒熱交換器18で冷媒との熱交換を行った後に蓄熱タンク23の第1領域に戻す。
【0054】
蓄熱タンク23に蓄えられた中温水と低温水のバランスを、蓄熱タンク23内部に設置された水の温度を検出する温度検出手段31により把握することができる。例えば、温度検出手段31を蓄熱タンク23の底部から容積に換算して4割の高さ付近に設置(図1の基準線Xに相当)しておき、温度検出手段31の検出値と所定値を比較することで蓄熱タンク23内の第1領域と第2領域の占有割合を予測することができる。
【0055】
なお、本実施形態では温度検出手段を1個としたが、温度検出手段を蓄熱タンク23の底部から容積に換算して異なる高さの位置に複数個設置することで、より正確に中温水と低温水の占有割合を把握することができる。
【0056】
また、蓄熱回路21の放熱器12bの下流側には配管内水温度を検出する温度検出手段35、前記バイパス管17の水−冷媒熱交換器18の下流側には冷媒温度を検出する温度検出手段36、外気温度検出手段33が設置されている。
【0057】
さらに、これらの温度検出手段33、35、36からの信号により、運転モードの切替や前記水ポンプ25bの出力を制御する制御手段40が備えられている。
【0058】
次に、上記ヒートポンプ装置の動作について説明する。
【0059】
まず、蓄熱運転モードについて説明する。圧縮機11aで吐出された中間圧力の冷媒は、圧縮機11bにて高温高圧に圧縮され、放熱器12aおよび放熱器12bにて水と熱交換して冷却される。放熱器12bを流出した冷媒は膨張機構13aを通過し、中間圧力になった後、冷媒分離手段16において気相冷媒を主成分とする冷媒と液相冷媒を主成分とする冷媒に分離される。気相冷媒を主成分とする冷媒は、バイパス管17に流入し、圧縮機11aから吐出される中間圧冷媒と合流して圧縮機11bに戻る。液相冷媒を主成分とする冷媒は、膨張機構13bによって低圧圧力まで減圧膨張され、蒸発器14において周囲大気の熱エネルギーを取り込み、再び圧縮機11aに戻る。この時、バイパス管17を流れる気相冷媒を主成分とする冷媒は、温度検出手段36によって検出された温度に対応した流量に流量調整弁15によって調整される。
【0060】
また、蓄熱タンク23から蓄熱回路21に流れ出た低温水は放熱器12bで温められ中温水となり、再び蓄熱タンクに戻る。また、暖房回路26を流れる水は、放熱器12aにて高温水となり、暖房端末22にて室内空気などを暖め、暖房機能を発揮し、中温水となり再び放熱器12aに戻る。この時、蓄熱利用回路24に設置されている水ポンプ25bは作動しておらず、水−冷媒熱交換器18に水を流し込まない。これらの動作により、蓄熱タンク23内では、低温水が減少し、中温水が増加することで熱エネルギーが蓄えられる。
【0061】
次に、蓄熱利用運転モードについて説明する。圧縮機11aで吐出された中間圧力の冷媒は、圧縮機11bにて高温高圧に圧縮され、放熱器12aおよび放熱器12bにて水と熱交換して冷却される。放熱器12bを流出した冷媒は膨張機構13aを通過し、中間圧力になった後、冷媒分離手段16において気相冷媒を主成分とする冷媒と液相冷媒を主成分とする冷媒に分離される。気相冷媒を主成分とする冷媒は、バイパス管17に流入し、蓄熱利用回路を流れる中温水から熱を奪った後、圧縮機11aから吐出される中間圧冷媒と合流して圧縮機11bに戻る。液相冷媒を主成分とする冷媒は、膨張機構13bによって低圧圧力まで減圧膨張され、蒸発器14において周囲大気の熱エネルギーを取り込み、再び圧縮機11aに戻る。
【0062】
この時、バイパス管17を流れる気相冷媒を主成分とする冷媒は、温度検出手段36によって検出された温度に対応した流量に流量調整弁15によって調整される。
【0063】
また、蓄熱タンク23から蓄熱回路21に流れ出た低温水は放熱器12bで温められ中温水となり再び蓄熱タンク23に戻る。暖房回路26を流れる中温水は、放熱器12aで温められ高温水となり、暖房端末22にて室内空気などを暖め、暖房機能を発揮し、中温水となり再び蓄熱タンク23に戻る。
【0064】
この時、蓄熱利用回路24に設置されている水ポンプ25bは動作しており、水−冷媒熱交換器18に水を流入させ、中温水が持つ熱エネルギーを冷媒に移動させ、低温水になった後、蓄熱タンク23に戻る。
【0065】
これらの動作により、蓄熱タンク23に蓄えられた熱エネルギーを利用できるので、信頼性を保ちつつ、性能を向上させることができる。
【0066】
また、冷媒分離手段16により、大気エネルギーを回収することができない気相冷媒を蒸発器14に流さずにおけるため、蒸発器14での圧力損失が低減し、性能が向上する。
【0067】
次に、暖房運転について説明する。圧縮機11aで吐出された中間圧力の冷媒は、圧縮機11bにて高温高圧に圧縮され、放熱器12aにて水と熱交換して冷却され、放熱器12bでは冷却されずに膨張機構13aを通過し、中間圧力になった後、冷媒分離手段16において気相冷媒を主成分とする冷媒と液相冷媒を主成分とする冷媒に分離される。
【0068】
気相冷媒を主成分とする冷媒は、バイパス管17に流入し、圧縮機11aから吐出される中間圧冷媒と合流して圧縮機11bに戻る。一方、液相冷媒を主成分とする冷媒は、膨張機構13bによって低圧圧力まで減圧膨張され、蒸発器14において周囲大気の熱エネルギーを取り込み、再び圧縮機11aに戻る。この時、バイパス管17を流れる気相冷媒を主成分とする冷媒は、温度検出手段36によって検出された温度に対応した流量に流量調整弁15によって調整される。
【0069】
また、暖房回路26を流れる水は、放熱器12aにて高温水となり、暖房端末22にて室内空気などを暖め、暖房機能を発揮し、中温水となり再び放熱器12aに戻る。この時、水ポンプ25aおよび水ポンプ25bは動作させない。
【0070】
これらの動作により、暖房運転では蓄熱回路21および蓄熱利用回路24に水を流し込まないため、水ポンプ25aおよび水ポンプ25bが消費する動力が必要となくなる。
【0071】
また、蓄熱回路21および蓄熱利用回路24、蓄熱タンク23からの熱損失が無くなるため、消費エネルギーおよび熱損失を低減させることが可能となる。
【0072】
この暖房システムを低コストで効率よく制御する方法について、図7、8のフローチャートを用いて説明する。
【0073】
(1)外気温度を判断基準とした運転モードの切り替え制御
図7は、外気温度によって運転を切り替えるシステムの制御フローチャートである。
【0074】
まず、ステップS22で外気温度検出手段33からの検出信号により外気温度Taを検出し、ステップS23に移る。
【0075】
ステップS23で外気温度Taと閾値Ta11を比較する。外気温度Taが閾値Ta11より大きければステップS24に移り、外気温度Taが閾値Ta11以下であればステップS25に移る。
【0076】
暖房システムは、ステップS24では暖房運転を行い、ステップS25では、蓄熱・蓄熱利用切替運転を行なう。これにより、外気温度が高く、吐出温度や吐出圧力が過剰上昇する恐れが少ない場合には暖房運転を行うことにより、水ポンプ25a、25bの動力低減、蓄熱回路、蓄熱利用回路、蓄熱タンクからの放熱損失の低減が可能となる。また、外気温度が低い場合には、吐出温度や吐出圧力の上昇を抑えながらも大気からの熱エネルギーを取り込むことが可能となるので、高信頼性で高効率な暖房システムを構築することが可能となる。
【0077】
(2)蓄熱回路を流れる温水温度を判断基準とした運転モードの切り替え制御
図8は、蓄熱回路21の放熱器12b下流側の配管に設置された温度検出手段35によって検出された水温度により水ポンプ25bの出力を変化させるシステムの制御フローチャートである。
【0078】
まず、ステップS26で水温度検出手段35からの検出信号により水温度Tkを検出し、ステップS27に移る。
【0079】
ステップS27で水温度Tkと閾値Tk1を比較する。水温度Tkが閾値Tk1より大きければステップS28に移り、水ポンプ出力PzをPz1だけ大きくする。また、水温度Tkが閾値Tk1以下であればステップS29に移る。
【0080】
ステップS29では、水温度Tkと閾値Tk2を比較する。水温度Tkが閾値Tk2より大きければ、水ポンプ出力を変化させず、水温度Tkが閾値Tk2以下であればステップS30に移り、水ポンプ出力PzをPz2だけ小さくする。
【0081】
これにより、蓄熱タンク23に蓄えられる中温水の温度および放熱器12b周囲の水温度を変化させることができるので、冷凍サイクルを効率よく運転することができ、低コストで高効率な暖房システムを構築することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明にかかるヒートポンプ装置は、特に寒冷地で運転される蓄熱式の高温暖房システムの効率を向上させることができ、給湯機、冷凍・空調機器など、他の用途のヒートポンプ装置としても利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
10 冷媒回路
11a 第1圧縮機
11b 第2圧縮機
12a 第1放熱器
12b 第2放熱器
13a 第1膨張機構
13b 第2膨張機構
14 蒸発器
15 流量調整弁
16 冷媒分離手段
17 バイパス回路
18 水−冷媒熱交換器
21 蓄熱回路
22 暖房端末
23 蓄熱タンク
24 蓄熱利用回路
25a 第1水ポンプ
25b 第2水ポンプ
26 暖房回路
31 蓄熱タンク温度検出手段
32 時刻検出手段
33 外気温度検出手段
34 第1水温度検出手段
35 第2水温度検出手段
36 冷媒温度検出手段
40 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一圧縮機と、第二圧縮機と、第一放熱器と、第一膨張機構と、第二膨張機構と、蒸発器とを順次接続し、前記第一膨張機構と前記第二膨張機構の接続配管から分岐し、前記第一圧縮機と前記第二圧縮機の接続配管に合流するバイパス管に水−冷媒熱交換器および流量調整弁を設置することによって冷凍サイクルを構成し、
前記放熱器と暖房端末および蓄熱タンクとを順次接続することによって蓄熱回路を構成し、前記水−冷媒熱交換器と蓄熱タンクとを接続することによって蓄熱利用回路を形成する、ヒートポンプ装置。
【請求項2】
第一圧縮機と、第二圧縮機と、第一放熱器と、第二放熱器と、第一膨張機構と、第二膨張機構と、蒸発器とを順次接続し、前記第一膨張機構と前記第二膨張機構の接続配管から分岐し、前記第一圧縮機と前記第二圧縮機の接続配管に合流するバイパス管に水−冷媒熱交換器および流量調整弁を設置することによって冷凍サイクルを構成し、
前記第一放熱器と暖房端末とを接続することによって暖房回路を構成し、
前記第二放熱器と蓄熱タンクとを接続することによって蓄熱回路を構成し、
前記水−冷媒熱交換器と蓄熱タンクとを接続することによって蓄熱利用回路を形成する、ヒートポンプ装置。
【請求項3】
前記第一膨張機構と前記第二膨張機構の接続配管に冷媒分離手段を設置し、気相冷媒を優先的に前記水−冷媒熱交換器に流すことを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載のヒートポンプ装置。
【請求項4】
前記蓄熱タンクと前記蓄熱回路の間で水を循環させ、高温水を前記蓄熱タンクに蓄える蓄熱運転モードと、
冷媒を前記第一圧縮機、前記第二圧縮機、前記第一放熱器、前記第一膨張機構、前記第二膨張機構、前記蒸発器、前記第一圧縮機の順に循環させつつ、前記第一膨張機構と前記第二膨張機構の接続配管から分岐する前記バイパス管に冷媒の一部を分流し、前記第一圧縮機と前記第二圧縮機の接続配管に合流させ、水を前記蓄熱回路、前記暖房回路および前記蓄熱利用回路に流すことで、暖房、蓄熱および蓄熱利用を行う蓄熱利用運転モードとを切り替えて運転する、請求項1〜3のいずれかに記載のヒートポンプ装置。
【請求項5】
冷媒を前記第一圧縮機、前記第二圧縮機、前記第一放熱器、前記第一膨張機構、前記第二膨張機構、前記蒸発器、前記第一圧縮機の順に循環させつつ、前記第一膨張機構と前記第二膨張機構の接続配管から分岐する前記バイパス管に冷媒の一部を分流し、前記第一圧縮機と前記第二圧縮機の接続配管に合流させ、水を前記暖房回路に循環させることで暖房を行う暖房運転と、前記蓄熱運転モードと前記蓄熱利用運転モードとを交互に切り替えて運転する蓄熱・蓄熱利用切替運転とを切り替えて運転する、請求項2〜4に記載のヒートポンプ装置。
【請求項6】
前記蓄熱タンクに温度検出手段を設け、検出された温度によって運転モードを切り替える、請求項1〜5のいずれかに記載のヒートポンプ装置。
【請求項7】
時刻検出手段を設け、検出された時刻によって運転モードを切り替える、請求項1〜5のいずれかに記載のヒートポンプ装置。
【請求項8】
外気温度検出手段を設け、検出された外気温度により、前記暖房運転と前記蓄熱・蓄熱利用切替運転とを切り替える、請求項5に記載のヒートポンプ装置。
【請求項9】
前記蓄熱利用回路に第一水ポンプを前記水−冷媒熱交換器の下流側に設け、前記蓄熱利用回路に水温度検出手段を設け、検出された水温度により前記第一水ポンプの出力を変化させる、請求項1〜8のいずれかに記載のヒートポンプ装置。
【請求項10】
外気温度検出手段を設け、計測された外気温度により、運転モードを切り替える蓄熱タンク温度又は、運転モードを切り替える時刻又は、前記第一水ポンプの出力を変化させる、請求項1〜9のいずれかに記載のヒートポンプ装置。
【請求項11】
蓄熱回路に第二水ポンプを、前記第二放熱器の下流側の前記蓄熱回路に水温度検出手段を設け、検出された水温度により前記第二水ポンプの出力を変化させる、請求項1〜9のいずれかに記載のヒートポンプ装置。
【請求項12】
前記水−冷媒熱交換器の下流の前記バイパス管、あるいは、前記第二圧縮機の吸入配管に、温度検出手段を設け、検出された温度により前記流量調整弁の出力を変化させる、請求項1〜11のいずれかに記載のヒートポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−185469(P2011−185469A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48693(P2010−48693)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】