説明

ビューファインダ表示回路

【課題】色差信号によりオブジェクト検出するビューファインダ表示回路を提供する。
【解決手段】本発明のビューファインダ表示回路は、映像信号から輝度信号及び2種類の色差信号を生成する変換手段(10)と、当該映像信号によって表示される表示画面内の予め定めた色検出エリアにて、色差信号の信号レベルに基づいて色判定を行い、色判定した信号レベルの基準値を生成する基準値生成手段(12)と、色差信号と基準値とを比較して、所定の偏差内にある場合に一致すると判断する色比較手段(11)と、予め定めた所定の重畳映像信号を発生する重畳映像発生手段(15)と、前記一致すると判断した色差信号に対応する輝度信号と前記重畳映像信号とを混合する混合手段(16)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビカメラに使用する白黒ビューファインダでも色の識別が可能となるビューファインダの表示回路に関する。
【背景技術】
【0002】
放送用テレビカメラは、白黒ビューファインダを使用する場合が多い。これは、フォーカスを常に被写体に合わせることを要求されるカメラマンにとって白黒映像のほうが、階調がわかりやすく、輪郭部分も明確になるため、ピントが合わせやすいという理由からである。
【0003】
しかし、カメラマンにとって色が判ったときの方が画角をとりやすい場合もある。例をあげると、花が沢山咲く野原の中に一輸だけ違う色の花が咲いているとする。カメラマンは野原で撮影中その一輪だけ色の違う花にズームインしたい場合、白黒のビューファインダでは花は全部同じに見える。特にフレームに無数の花が混在するとその花はとても探しにくくなる。
【0004】
もう一つの例は、サッカーの試合で青色のユニフォームと赤色のユニフォームのチームが対戦している場合である。カメラマンは撮影する画角にボールと双方のチームの選手が何人いるということを考慮した上で撮影する。しかし、白黒ビューファインダだと選手全員が同じに見えてしまうため難しくなってしまう。花が被写体の場合はじっくり時間をかければ色の違う一輸の花を見つけることは可能であるが、動きの速いサッカーの試合では不可能である。色を見たいのであれば白黒のビューファインダからカラーのビューファインダに変えれば良いことであるが、ピントが合わせにくくなるという欠点がある。
【0005】
尚、映像信号から特定の色検出を行い、カラーモニタ受像機やベクトルスコープに表示する技術として、RGB映像信号から特定の色を検出してカラー受像機に検出した色領域のみを白黒表示することにより、色検出領域を判りやすくする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7-143510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1に開示されるような従来の技術は、カラー受像機に表示した場合には色検出領域を白黒で表示し、白黒のビューファインダに表示した場合は色検出領域を斜め縞パターン(ゼブラパターン)で表示することが開示されているが、いずれも特定の色、例えば肌色などの色を検出するものである。
【0007】
しかしながら、テレビカメラでの撮影は、光景が変わるため、どの色を検出するかは光景毎に異なる場合がある。固定の色で検出するとその都度、検出する色の設定を変える必要があり、煩わしいものとなる。また、RGBの三原色で検出するため、検出する色の設定を3種類行う必要がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上述した問題点を鑑みて、白黒のビューファインダを使用するテレビカメラで、カメラマンが自由に検出する色を変えることができ、2種類の色差信号によりオブジェクト検出することが可能なビューファインダの表示回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による第1の態様のビューファインダ表示回路は、撮像信号を処理して得られる映像信号から輝度信号及び2種類の色差信号を生成する変換手段と、当該映像信号によって表示される表示画面内の予め定めた色検出エリアにて、前記色差信号の信号レベルに基づいて色判定を行い、色判定した信号レベルの基準値を生成する基準値生成手段と、前記色差信号と前記基準値とを比較して、所定の偏差内にある場合に一致すると判断する色比較手段と、予め定めた所定の重畳映像信号を発生する重畳映像発生手段と、前記色比較手段により一致すると判断した前記色差信号に対応する輝度信号と前記重畳映像発生手段の重畳映像信号とを混合する混合手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明による第2の態様のビューファインダ表示回路は、本発明による第1の態様のビューファインダ表示回路において、前記重畳映像発生手段は、重畳映像信号としてゼブラパターンを発生する発生手段と、前記色比較手段は、前記色比較手段により一致すると判断した場合に、前記発生手段の出力を制御することを特徴とする。
【0011】
また、本発明による第3の態様のビューファインダ表示回路は、第1の態様のビューファインダ表示回路において、前記基準値は、前記色検出エリア内に含まれる前記色差信号の信号レベルの複数回のサンプリングにて決定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明による第4の態様のビューファインダ表示回路は、第1の態様のビューファインダ表示回路において、前記色検出エリアは、前記表示画面の中心に位置する設定可能な領域として規定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、所定領域内の信号レベルに基づいた色判定基準値を作成するため、所定領域をカメラマンが指定することにより、フレキシブルに色の指定が可能となり、光景が変わる度に特定の色を設定する必要がなくなるため、カメラマンにとっても好適なものとなる効果を有する。また、色比較を二つの色差信号で行うことにより、三原色で行う構成に比べてコンパクトとなる。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、ゼブラパターンを映像信号に重畳することにより、ビューファインダ上で色の違いが明確になる効果を有する。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、所定領域内に含まれる色差信号のレベルがほぼ同一となるものより、言い換えると一番多く含まれる色が基準値となる。統計的に処理することにより、基準値のばらつきが少なくなり、安定した基準値を得ることによって、基準値のばらつきによる変動が小さくなるため、安定した色の検出が可能という効果を有する。
【0016】
本発明の第4の態様によれば、所定領域を画面の中心とした設定可能な領域とすることにより検出対象物に対して適切な色検出領域の設定が可能となり、好みの色設定が可能となる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明による一実施例のビューファインダ表示回路を図1〜図6を参照して説明する。
【0018】
[回路構成]
図1は、本発明のビューファインダ表示回路のブロック図である。本実施例のビューファインダ表示回路は、マトリックス回路10と、色比較回路11と、色検出回路12と、色検出枠発生回路13と、枠オンオフスイッチ14と、重畳映像信号発生回路15と、混合器16とを備える。
【0019】
マトリックス回路10は、テレビカメラのカメラ信号処理回路(図示せず)で得られたRGB信号を、一方では式(1)に基づいて、Y信号を生成して混合器16に送出するとともに、他方では、R信号及びB信号からそれぞれY信号の減算を行った、Pr(R-Y)信号及びPb(B-Y)信号に変換し、色比較回路11及び色検出回路12に送出する。
【0020】
Y=0.299R+0.587G+0.114B (1)
【0021】
色比較回路11は、入力されるPr信号及びPb信号を色検出回路12からの設定値と比較して一致するか否かを検出する。この比較結果として一致する場合は、重畳映像信号発生回路15に対して重畳映像信号を発生させるように制御する。また、この比較結果として一致しない場合は、重畳映像信号発生回路15に対して重畳映像信号を発生させない旨を表す制御信号を出力する。ここで、一致するか否かの判定には、設定値に対してある偏差内にあるか否かで判定するようにする。
【0022】
色検出回路12は、色検出枠発生回路13からの色検出枠(「色検出エリア」とも称する)内にてPr信号及びPb信号の最も多い信号レベルの方の値を設定値して出力する。この設定値は、2つのPr信号及びPb信号に対する基準値から色判定される。例えば、任意にサイズ設定可能な色検出エリア内で赤の要素が多い場合は、Pr信号のレベルが大きくなり、青の要素が多い場合は、Pb信号のレベルが大きくなる。これについては、詳細に後述する。尚、色検出エリアは、前記表示画面の中心に位置する設定可能な領域として規定するのが好適である。このように、色検出回路12は、映像信号によって表示される表示画面内の予め定めた色検出エリアにて、2種類の色差信号の信号レベルに基づいて色判定を行い、色判定した信号レベルの基準値を生成する。
【0023】
色検出枠発生回路13は、回路外の領域信号に応じた色検出枠(即ち、「色検出エリア」)を発生する。色検出枠発生回路13に入力される領域の情報は、表示画面の中心として規定した任意のサイズの色検出エリアとして、テレビカメラの設定画面(図示せず)で設定を行うようにする。或いは又、複数のエリア群を表示して選択するように構成してもよい。更に、時間を単位として色検出エリアを規定してもよいし、画素数を単位として表示画面の水平軸−垂直軸(X−Y軸)の座標値で色検出エリアを規定してもよい。いずれにしても、テレビカメラの表示画面の検出対象物(オブジェクト)内に収まるように、色検出エリアを設定する。
【0024】
枠オンオフスイッチ14は、ユーザが色検出枠の必要に応じてオンオフするスイッチである。色検出枠(即ち、「色検出エリア」)の設定が終了してその設定が不要となる場合にはオフするし、色検出枠の設定が必要となる場合にはオンする。このオンオフ制御は、例えば、テレビカメラのユーザインタフェースを介して、テレビカメラ内の制御部(図示せず)によって制御する。
【0025】
重畳映像信号発生回路15は、色比較回路11によって制御され、マトリックス回路10を経て供給される映像信号(Y信号)に重畳するための重畳映像信号を発生する。
【0026】
図2は、重畳映像信号発生回路15の詳細図である。重畳映像信号発生回路15は、ゼブラパターン発生回路20と制御付きスイッチ21とを備える。ゼブラパターン発生回路20は、ビューファインダ(VF)17に表示したときにゼブラとなる重畳映像信号を発生する回路である。ゼブラパターン発生回路20は、常時、重畳映像信号を発生する。
【0027】
制御付きスイッチ21は、色比較回路11によってゼブラパターンの重畳映像信号を混合器16に供給するか否かを制御するスイッチである。色比較回路11による比較結果が一致する旨を示す場合は、制御付きスイッチ21をスイッチオンし、その比較結果が一致しない旨を示す場合は、制御付きスイッチ21をスイッチオフするように制御される。
【0028】
混合器16は、マトリックス回路10のY出力に対して重畳映像信号発生回路15からの重畳映像信号を混合する。混合器16の出力は、ビューファインダ(VF)17に供給され、ビューファインダ(VF)17は、混合された映像信号を表示することができる。
【0029】
本実施例のビューファインダ表示回路による実際の動作を、図3〜図6を参照して説明する。
【0030】
[回路動作]
図3〜図6は、ビューファインダ(VF)17の表示画面17aの一例を示したものである。図3に示すように、画面中央の下にある赤の丸(矢印で示す部分)以外は、全て青の丸又は青の三角の画面表示があるとする。「色検出エリア」は、画面の中央の四角で囲んだ部分である。この四角で表す「色検出エリア」は、色検出枠発生回路13で発生したものである。図3では、青の丸が画面中央で色検出エリアの四角に入るように位置している本回路の動作前の様子を示している。
【0031】
一方、図3の画面表示状態から、ユーザが赤を検出することを所望する場合には、赤の丸が画面中央で色検出エリアの四角に入るようにテレビカメラの画角を移動する(図4参照)。ここで、色検出回路12は、表示画面中央に位置する色検出エリア内の映像信号に対して設定値を算出する。
【0032】
例えば、色検出回路12は、この検出エリア内のPr信号のレベルを例えば10回のサンプリングを行って、デジタル値(十進数)として、200,202,204,199,200,201,200,200,199及び200の10個を得たとする。色検出回路12は、例えば、同じレベルを発生する多数決処理で基準値を判断するか、これらの値を平均するか、又は所定の諧調数に区切られた値で近似するレベルを基準値として決定する。例えば、色検出回路12は、これらの10個のデジタル値(十進数)について、200を基準として±4以内にあるのでほぼ同一レベルと決定することができ、200の値に丸めることができる。従って、この場合の色検出回路12が決定するPr信号の基準値となる設定値は、例えば200となる。このような基準値の偏差は、任意に選定可能である。
【0033】
同様に、色検出回路12は、Pb信号に対してもデジタル値(十進数)として、10,11,9,10,10,13,11,10,10及び9の10個が得たとする。この場合、10を基準として±3以内にあるので、ほぼ同一レベルと決定することができ、10の値に丸めることができる。従って、この場合の色検出回路12が決定するPb信号の基準値となる設定値は、例えば10となる。
【0034】
サンプリングした中で基準値となりうる同じ値がない場合には、このように予め偏差を設けて丸め操作を行ってから統計的処理(同一レベルが多い信号レベルを基準値とする)を行うようにしてもよい。図4の例では、色検出エリアの四角に入る色が、赤なのでPr信号がPb信号に比べて圧倒的に大きい値となり、ユーザが表示画面から視覚的に識別不可でも、色検出回路12は色判定を行うことができる。
【0035】
図4において、色検出回路12が決定した赤の丸部分の設定値は、色比較回路11でほぼ一致する(例えば、±5以内の所定の偏差内にある)と判断するので、重畳映像信号発生回路15からの重畳映像信号を発生させ、ビューファインダ(VF)17に表示される赤の丸部分は、混合された映像信号、即ち、図5に示すように縞パターン(斜線で示す)となる。図6は、赤の丸が図3の赤の丸以外にあった場合を示す。二つの赤の丸部分が縞パターンとなり、白黒ビューファインダでも色の違いを識別することが可能となる。
【0036】
発明の実施の形態について幾多の変形が可能である。例えば、図2においては、ゼブラパターンを発生するようにしたが、ゼブラパターンでは識別しにくい場合は、ゼブラパターンではない映像信号を発生させて重畳することも可能である。
【0037】
また、色信号の基準値として統計的処理したほぼ同一の値を基準値としたが、ほぼ同一の値に対して平均値を算出する構成としてもよい。
【0038】
このように、上述した実施例のほかにも、本発明には幾多の変形例が可能である。従って、本発明は、上述の実施例に制限されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のビューファインダ表示回路は、放送局で使用する放送用テレビカメラに有用である。或いは又、スタジオ用のライブカメラ又はハンデイカメラに白黒のビューファインダを使用する場合にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明による一実施例のビューファインダ表示回路のブロック図である。
【図2】本発明による一実施例のビューファインダ表示回路における重畳映像信号発生回路の詳細なブロック図である。
【図3】本発明による一実施例のビューファインダ表示回路の制御前のビューファインダ表示画面例を示す図である。
【図4】本発明による一実施例のビューファインダ表示回路で制御する色検出エリアに画角を移動したときのビューファインダ表示画面例を示す図である。
【図5】本発明による一実施例のビューファインダ表示回路の制御後のビューファインダ表示画面例を示す図である。
【図6】本発明による一実施例のビューファインダ表示回路の制御後の、処理対象が2箇所ある場合のビューファインダ表示画面例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10 マトリックス回路
11 色比較回路
12 色検出回路
13 色検出枠発生回路
14 枠オンオフスイッチ
15 重畳映像信号発生回路
16 混合器
17 ビューファインダ(VF)
17a ビューファインダ(VF)の表示画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像信号を処理して得られる映像信号から輝度信号及び2種類の色差信号を生成する変換手段と、
当該映像信号によって表示される表示画面内の予め定めた色検出エリアにて、前記色差信号の信号レベルに基づいて色判定を行い、色判定した信号レベルの基準値を生成する基準値生成手段と、
前記色差信号と前記基準値とを比較して、所定の偏差内にある場合に一致すると判断する色比較手段と、
予め定めた所定の重畳映像信号を発生する重畳映像発生手段と、
前記色比較手段により一致すると判断した前記色差信号に対応する輝度信号と前記重畳映像発生手段の重畳映像信号とを混合する混合手段と、
を備えることを特徴とするビューファインダ表示回路。
【請求項2】
請求項1に記載のビューファインダ表示回路において、
前記重畳映像発生手段は、重畳映像信号としてゼブラパターンを発生する発生手段と、
前記色比較手段は、前記色比較手段により一致すると判断した場合に、前記発生手段の出力を制御することを特徴とするビューファインダ表示回路。
【請求項3】
請求項1に記載のビューファインダ表示回路において、
前記基準値は、前記色検出エリア内に含まれる前記色差信号の信号レベルの複数回のサンプリングにて決定することを特徴とするビューファインダ表示回路。
【請求項4】
請求項1に記載のビューファインダ表示回路において、
前記色検出エリアは、前記表示画面の中心に位置する設定可能な領域として規定されていることを特徴とするビューファインダ表示回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−41507(P2010−41507A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203389(P2008−203389)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000209751)池上通信機株式会社 (123)
【Fターム(参考)】