ビードコアの成型装置および製造方法
【課題】底面に対し垂直な側面部を有する断面多角形状のビードコアを、簡易かつ効率的に製造するためのビードコアの成型装置および製造方法を提供する。
【解決手段】金属ワイヤ1を巻き取るためのガイド部21を有するビードフォーマと、ビードフォーマに近接して配置され、金属ワイヤ1を担持する開口部を有し、開口部に担持した金属ワイヤ1をガイド部21の幅方向に移動可能なピッチローラと、を備えるビードコアの成型装置である。ガイド部21が、底部21Aに対し垂直な壁部12Bと、底部21Aおよび壁部21Bを繋ぐ傾斜部21Cと、を有する。底面に対し垂直な側面部を有する断面多角形状のビードコアを製造するにあたり、上記ビードコアの成型装置を用いて断面多角形状ビードコアの成型を行うビードコアの製造方法である。
【解決手段】金属ワイヤ1を巻き取るためのガイド部21を有するビードフォーマと、ビードフォーマに近接して配置され、金属ワイヤ1を担持する開口部を有し、開口部に担持した金属ワイヤ1をガイド部21の幅方向に移動可能なピッチローラと、を備えるビードコアの成型装置である。ガイド部21が、底部21Aに対し垂直な壁部12Bと、底部21Aおよび壁部21Bを繋ぐ傾斜部21Cと、を有する。底面に対し垂直な側面部を有する断面多角形状のビードコアを製造するにあたり、上記ビードコアの成型装置を用いて断面多角形状ビードコアの成型を行うビードコアの製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビードコアの成型装置および製造方法(以下、単に「成型装置」および「製造方法」とも称する)に関し、詳しくは、底面に対し垂直な側面部を有する断面多角形状のビードコアを製造する際に用いられるビードコアの成型装置、およびそれを用いたビードコアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気入りタイヤのビード部には、リムに対しタイヤを嵌合させるために、金属ワイヤを巻き回して形成された円環状のビードコアが埋設されている。かかるビードコアとしては、従来、製造のしやすさやビード部耐久性を確保できるなどの点から、金属ワイヤを幅方向および高さ方向の双方に複数本段列的に配列、積層して、断面形状を六角形状に形成したものが多く用いられている。
【0003】
このような断面六角形状のビードコアは、底面と、その両側に続く傾斜面とを有するガイド部を備えたビードフォーマを用いて、簡易に製造することが可能である(例えば、特許文献1の図9参照)。
【0004】
ビードコアに係る改良技術としては、例えば、特許文献2に、ビードコア−プライ間のフレッティングの発生と、折り返しプライのウェーブとをともに防止することを目的として、ビードコアの断面形状を実質的に十角形形状とする技術が開示されている。また、ビードコアの製造方法に関しては、例えば、特許文献3,4等に開示がある。
【特許文献1】特開平6−286022号公報([図9]等)
【特許文献2】特開2007−55465号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開平6−15764号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献4】特開2006−137381号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、断面六角形状のビードコアの場合、慣用のビードフォーマを用いて、容易に製造することが可能である。しかしながら、例えば、特許文献2に開示されているような、断面において角部をより多くとって底面部に対し垂直な側面部を有するものとした断面多角形状のビードコアにおいては、側面部の垂直形状を金属ワイヤの積み上げにより形成する必要があり、従来のビードフォーマでは成型が困難であるという問題があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、上記問題を解決して、底面に対し垂直な側面部を有する断面多角形状のビードコアを、簡易かつ効率的に製造するためのビードコアの成型装置および製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、ビードコアの成型に用いられるビードフォーマのガイド部に、側面部における金属ワイヤの垂直積み上げを補助するための垂直な壁部を設けることで、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のビードコアの成型装置は、金属ワイヤを巻き取るためのガイド部を有するビードフォーマと、該ビードフォーマに近接して配置され、前記金属ワイヤを担持する開口部を有し、該開口部に担持した金属ワイヤを前記ガイド部の幅方向に移動可能なピッチローラと、を備えるビードコアの成型装置において、
前記ガイド部が、底部に対し垂直な壁部と、該底部および壁部を繋ぐ傾斜部と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の成型装置においては、前記ピッチローラのローラ幅が、前記開口部の幅より0.2〜0.6mm大きいことが好ましい。
【0010】
また、本発明のビードコアの製造方法は、底面に対し垂直な側面部を有する断面多角形状のビードコアを製造するにあたり、上記本発明のビードコアの成型装置を用いて、該断面多角形状ビードコアの成型を行うことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の製造方法においては、前記ガイド部における前記壁部の下端高さを、前記断面多角形状ビードコアの垂直側面部の下端を形成する前記金属ワイヤの段数に基づき決定することができる。また、前記断面多角形状ビードコアの垂直側面部近傍における前記金属ワイヤの巻取りは、変則小ピッチ送りにより好適に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記構成としたことにより、底面に対し垂直な側面部を有する断面多角形状のビードコアを簡易かつ効率的に製造することができるビードコアの成型装置および製造方法を実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明のビードコアの成型装置に係る概略説明図を示す。図示するように、本発明のビードコアの成型装置は、金属ワイヤ1を巻き取るためのガイド部を有するビードフォーマ20と、ビードフォーマ20に近接して配置されたピッチローラ10と、を備えている。ピッチローラ10は、後述するように、金属ワイヤ1を担持するための開口部を有しており、開口部に担持した金属ワイヤ1を、ビードフォーマ20のガイド部の幅方向に移動させることができるものである。
【0014】
図2に、本発明に係るビードフォーマにおけるガイド部の一好適例の断面形状を示す。図示するように、本発明においては、ビードフォーマにおけるガイド部21が、底部21Aに対し垂直な壁部21Bと、これら底部21Aおよび壁部21Bを繋ぐ傾斜部21Cと、を有している。ガイド部21に垂直な壁部21Bを設けたことにより、図示するような、底面に対し垂直な側面部を有する断面多角形状のビードコア40を成型するに際して、かかる垂直側面部を形成する金属ワイヤ1の積み上げを容易に行うことが可能となる。
【0015】
図2に示すガイド部21は、断面八角形状のビードコア40の成型を行うためのものである。また、図3は、断面十角形状のビードコア50の成型を行う場合に用いられるガイド部31を示す。この断面十角形状のビードコア50に対応するガイド部31は、図示するように、底部31Aに対し垂直な壁部31Bと、これら底部31Aおよび壁部31Bを繋ぐ傾斜部31Cと、を有しており、この場合の傾斜部31Cは、断面が直線状の部分と階段状の部分とからなる。
【0016】
すなわち、本発明においては、上記壁部を備える点以外の具体的なガイド部形状については、目的とするビードコアの断面多角形状に合わせて適宜決定することができ、特に制限されるものではない。例えば、底部と壁部とを繋ぐ傾斜部の断面形状は、目的とするビードコア形状に合わせて、直線状、2以上の直線を繋いだ形状、階段状および曲線状の他、これらを組み合わせたいかなる形状としてもよい。
【0017】
特には、ガイド部における壁部21B,31Bの下端高さhは、断面多角形状ビードコアの垂直側面部の下端を形成する金属ワイヤ1の段数に基づき決定することが好適である。図4(a)に示すように、壁部41Bの下端高さが妥当であれば、金属ワイヤ1の垂直方向への積み上げを容易に行うことができるが、同図(b)に示すように、壁部41Bの下端高さが妥当でないと、垂直積み上げ部の形状が崩れてしまう場合があり、本発明による壁部を設けるメリットが小さくなってしまう。
【0018】
この場合、図5に示すように、金属ワイヤ1を被覆したインシュレーションゴム2は金属ワイヤの積み上げに伴い潰れるため、上記壁部の下端高さの設定は、この潰れ分を予測して適正に行うことが必要である。このインシュレーションゴムの潰れ量は、金属ワイヤを被覆するインシュレーションゴムの量により変動するので、インシュレーションゴム量に合わせて設定する。積み上げ金属ワイヤ高さの一例の、実測値、および、インシュレーションゴムの潰れを考慮しない場合の計算値を、図6のグラフに示す。
【0019】
また、ピッチローラ10は、図7の断面図に示すように、金属ワイヤ1を担持する開口部11を有しており、この開口部に担持した金属ワイヤ1を、ガイド部21の幅方向に移動させるものである。本発明において、ピッチローラ10は、ローラ幅Waが開口部11の幅Wbよりも0.2〜0.6mm大きくなるよう設定することが好ましい。これは、以下のような理由による。
【0020】
すなわち、ピッチローラ10は、金属ワイヤ1を開口部11により担持して、ピッチ送りにより所定位置に金属ワイヤ1を誘導するものであるが、図8に示すように、本発明に係るガイド部21には垂直な壁部21Bがあるため、ローラ幅Waが大きすぎると、ピッチ送りに伴いピッチローラ10と壁部21Bとが接触して、金属ワイヤ1が外れてしまう場合がある。一方、開口部11の幅Wbは、金属ワイヤ1を確実に担持するために、そのワイヤ径(インシュレーション径)wと同一とすることが必要となるので(図7参照)、上記ピッチローラ10と壁部21Bとの接触を防止して、金属ワイヤ1の外れを防止するためには、ピッチローラ10のローラ幅Waを、開口部11の幅Wbとの関係で上記のように適正化することが有効となる。なお、開口部11の幅Wbを狭くし過ぎると金属ワイヤ1の外れが発生するため、好ましくない。
【0021】
ここで、図8中に点線で示す部分が従来のピッチローラの概略形状であり、そのローラ幅は、従来、金属ワイヤ径(インシュレーション径)+3〜3.4mm程度に形成されていた。
【0022】
より具体的には、例えば、本発明に係るピッチローラ10は、ローラ幅Waがインシュレーション径+0.2mm、開口部11の幅Wbがインシュレーション径となるように、すなわち、ローラ幅Waが開口部11の幅Wbよりも0.2mm大きくなるように設定することができる。
【0023】
本発明においては、上記のような垂直壁部を有するガイド部を有するビードフォーマを備えた成型装置を用いてビードコアの成型を行う点が重要であり、これにより、底面に対し垂直な側面部を有する断面多角形状のビードコアを、容易に得ることが可能となる。本発明の成型装置は、かかるビードフォーマを備えるものであれば、それ以外の点については常法に従い構成することができ、特に制限されるものではない。
【0024】
また、かかる本発明の成型装置を用いてビードコアを成型、製造する際の具体的な巻取り条件等についても、目的とするビードコア形状に基づき、常法に従い適宜決定することができ、特に制限されるものではないが、好適には例えば、以下のように実施することができる。
【0025】
金属ワイヤ1の巻取りに際しては、通常は図9に示すように、同じ段の平行配列部分については、ピッチローラ10を、インシュレーション径wを1ピッチPとしてピッチ送りし、1段上に積み上げる際には0.5ピッチ、すなわち、インシュレーション径wの半分のピッチP/2で送ることにより、所望のビードコア形状を形成することができる。但し、本発明に係る断面多角形状ビードコアの垂直側面部近傍における金属ワイヤ1の巻取りに際しては、変則小ピッチ送りにより巻取りを行うことが好ましい。前述したように、断面多角形状ビードコアの垂直側面部における金属ワイヤの巻取りに際しては、ピッチローラ10とガイド部21の壁部21Bとが接触しやすいため、図10に示すように、ビードコアの垂直側面部近傍においてはピッチローラ10を変則的に小ピッチpで送り、巻き圧で落下させるものとすることで、上記接触による金属ワイヤの外れを防止することができる。
【0026】
より具体的には、例えば、図11に示すように、同じ段の配列部分を図中の左方向に巻き取って平行移動した後、ガイド部21の壁部21Bに接する金属ワイヤ1Cを巻取る際のピッチ送り量cは、インシュレーション径wを1ピッチとして0.6〜1.0ピッチでピッチ送りし、金属ワイヤ1Cの位置から1段上の金属ワイヤ1Dの位置に積上げる次のピッチ送り量dについては、金属ワイヤ1Cのピッチ送り量c−0.5ピッチで送って、ワイヤ位置を修正すればよい。また一方、同じ段の配列部分を図中の右方向に巻き取って平行移動した後、1段上でガイド部21の壁部21Bに接する金属ワイヤ1Aを巻取る際のピッチ送り量aは0.1〜0.5ピッチでピッチ送りし、金属ワイヤ1Aの位置から図中の左方向に平行移動させて、金属ワイヤ1Bを巻取る次のピッチ送り量bについては、金属ワイヤ1Aの場合のピッチ送り量a+0.5ピッチで送って、ワイヤ位置を修正すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のビードコアの成型装置に係る説明図である。
【図2】本発明に係るビードフォーマにおけるガイド部の一好適例を示す断面図である(断面八角形状のビードコア)。
【図3】本発明に係るビードフォーマにおけるガイド部の一好適例を示す断面図である(断面十角形状のビードコア)。
【図4】(a)は壁部の下端高さが妥当な場合、(b)は壁部の下端高さが妥当でない場合の金属ワイヤの積み上げ状態をそれぞれ示す説明図である。
【図5】金属ワイヤを被覆したインシュレーションゴムの積み上げに伴う潰れの状態を示す説明図である。
【図6】積み上げ金属ワイヤ高さの一例の、実測値、および、インシュレーションゴムの潰れを考慮しない場合の計算値を示すグラフである。
【図7】ピッチローラに形成された開口部形状を示す拡大断面図である。
【図8】ピッチローラとガイド部の壁部とが接触した状態を示す説明図である。
【図9】金属ワイヤの巻取り工程を示す説明図である。
【図10】ビードコアの垂直側面部近傍におけるピッチローラの変則小ピッチ送りを示す説明図である。
【図11】金属ワイヤの巻取り工程の好適具体例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 金属ワイヤ
2 インシュレーションゴム
10 ピッチローラ
11 開口部
20 ビードフォーマ
21,31 ガイド部
21A,31A 底部
21B,31B,41B 壁部
21C,31C 傾斜部
40,50 断面多角形状ビードコア
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビードコアの成型装置および製造方法(以下、単に「成型装置」および「製造方法」とも称する)に関し、詳しくは、底面に対し垂直な側面部を有する断面多角形状のビードコアを製造する際に用いられるビードコアの成型装置、およびそれを用いたビードコアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気入りタイヤのビード部には、リムに対しタイヤを嵌合させるために、金属ワイヤを巻き回して形成された円環状のビードコアが埋設されている。かかるビードコアとしては、従来、製造のしやすさやビード部耐久性を確保できるなどの点から、金属ワイヤを幅方向および高さ方向の双方に複数本段列的に配列、積層して、断面形状を六角形状に形成したものが多く用いられている。
【0003】
このような断面六角形状のビードコアは、底面と、その両側に続く傾斜面とを有するガイド部を備えたビードフォーマを用いて、簡易に製造することが可能である(例えば、特許文献1の図9参照)。
【0004】
ビードコアに係る改良技術としては、例えば、特許文献2に、ビードコア−プライ間のフレッティングの発生と、折り返しプライのウェーブとをともに防止することを目的として、ビードコアの断面形状を実質的に十角形形状とする技術が開示されている。また、ビードコアの製造方法に関しては、例えば、特許文献3,4等に開示がある。
【特許文献1】特開平6−286022号公報([図9]等)
【特許文献2】特開2007−55465号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開平6−15764号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献4】特開2006−137381号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、断面六角形状のビードコアの場合、慣用のビードフォーマを用いて、容易に製造することが可能である。しかしながら、例えば、特許文献2に開示されているような、断面において角部をより多くとって底面部に対し垂直な側面部を有するものとした断面多角形状のビードコアにおいては、側面部の垂直形状を金属ワイヤの積み上げにより形成する必要があり、従来のビードフォーマでは成型が困難であるという問題があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、上記問題を解決して、底面に対し垂直な側面部を有する断面多角形状のビードコアを、簡易かつ効率的に製造するためのビードコアの成型装置および製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、ビードコアの成型に用いられるビードフォーマのガイド部に、側面部における金属ワイヤの垂直積み上げを補助するための垂直な壁部を設けることで、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のビードコアの成型装置は、金属ワイヤを巻き取るためのガイド部を有するビードフォーマと、該ビードフォーマに近接して配置され、前記金属ワイヤを担持する開口部を有し、該開口部に担持した金属ワイヤを前記ガイド部の幅方向に移動可能なピッチローラと、を備えるビードコアの成型装置において、
前記ガイド部が、底部に対し垂直な壁部と、該底部および壁部を繋ぐ傾斜部と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の成型装置においては、前記ピッチローラのローラ幅が、前記開口部の幅より0.2〜0.6mm大きいことが好ましい。
【0010】
また、本発明のビードコアの製造方法は、底面に対し垂直な側面部を有する断面多角形状のビードコアを製造するにあたり、上記本発明のビードコアの成型装置を用いて、該断面多角形状ビードコアの成型を行うことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の製造方法においては、前記ガイド部における前記壁部の下端高さを、前記断面多角形状ビードコアの垂直側面部の下端を形成する前記金属ワイヤの段数に基づき決定することができる。また、前記断面多角形状ビードコアの垂直側面部近傍における前記金属ワイヤの巻取りは、変則小ピッチ送りにより好適に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記構成としたことにより、底面に対し垂直な側面部を有する断面多角形状のビードコアを簡易かつ効率的に製造することができるビードコアの成型装置および製造方法を実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明のビードコアの成型装置に係る概略説明図を示す。図示するように、本発明のビードコアの成型装置は、金属ワイヤ1を巻き取るためのガイド部を有するビードフォーマ20と、ビードフォーマ20に近接して配置されたピッチローラ10と、を備えている。ピッチローラ10は、後述するように、金属ワイヤ1を担持するための開口部を有しており、開口部に担持した金属ワイヤ1を、ビードフォーマ20のガイド部の幅方向に移動させることができるものである。
【0014】
図2に、本発明に係るビードフォーマにおけるガイド部の一好適例の断面形状を示す。図示するように、本発明においては、ビードフォーマにおけるガイド部21が、底部21Aに対し垂直な壁部21Bと、これら底部21Aおよび壁部21Bを繋ぐ傾斜部21Cと、を有している。ガイド部21に垂直な壁部21Bを設けたことにより、図示するような、底面に対し垂直な側面部を有する断面多角形状のビードコア40を成型するに際して、かかる垂直側面部を形成する金属ワイヤ1の積み上げを容易に行うことが可能となる。
【0015】
図2に示すガイド部21は、断面八角形状のビードコア40の成型を行うためのものである。また、図3は、断面十角形状のビードコア50の成型を行う場合に用いられるガイド部31を示す。この断面十角形状のビードコア50に対応するガイド部31は、図示するように、底部31Aに対し垂直な壁部31Bと、これら底部31Aおよび壁部31Bを繋ぐ傾斜部31Cと、を有しており、この場合の傾斜部31Cは、断面が直線状の部分と階段状の部分とからなる。
【0016】
すなわち、本発明においては、上記壁部を備える点以外の具体的なガイド部形状については、目的とするビードコアの断面多角形状に合わせて適宜決定することができ、特に制限されるものではない。例えば、底部と壁部とを繋ぐ傾斜部の断面形状は、目的とするビードコア形状に合わせて、直線状、2以上の直線を繋いだ形状、階段状および曲線状の他、これらを組み合わせたいかなる形状としてもよい。
【0017】
特には、ガイド部における壁部21B,31Bの下端高さhは、断面多角形状ビードコアの垂直側面部の下端を形成する金属ワイヤ1の段数に基づき決定することが好適である。図4(a)に示すように、壁部41Bの下端高さが妥当であれば、金属ワイヤ1の垂直方向への積み上げを容易に行うことができるが、同図(b)に示すように、壁部41Bの下端高さが妥当でないと、垂直積み上げ部の形状が崩れてしまう場合があり、本発明による壁部を設けるメリットが小さくなってしまう。
【0018】
この場合、図5に示すように、金属ワイヤ1を被覆したインシュレーションゴム2は金属ワイヤの積み上げに伴い潰れるため、上記壁部の下端高さの設定は、この潰れ分を予測して適正に行うことが必要である。このインシュレーションゴムの潰れ量は、金属ワイヤを被覆するインシュレーションゴムの量により変動するので、インシュレーションゴム量に合わせて設定する。積み上げ金属ワイヤ高さの一例の、実測値、および、インシュレーションゴムの潰れを考慮しない場合の計算値を、図6のグラフに示す。
【0019】
また、ピッチローラ10は、図7の断面図に示すように、金属ワイヤ1を担持する開口部11を有しており、この開口部に担持した金属ワイヤ1を、ガイド部21の幅方向に移動させるものである。本発明において、ピッチローラ10は、ローラ幅Waが開口部11の幅Wbよりも0.2〜0.6mm大きくなるよう設定することが好ましい。これは、以下のような理由による。
【0020】
すなわち、ピッチローラ10は、金属ワイヤ1を開口部11により担持して、ピッチ送りにより所定位置に金属ワイヤ1を誘導するものであるが、図8に示すように、本発明に係るガイド部21には垂直な壁部21Bがあるため、ローラ幅Waが大きすぎると、ピッチ送りに伴いピッチローラ10と壁部21Bとが接触して、金属ワイヤ1が外れてしまう場合がある。一方、開口部11の幅Wbは、金属ワイヤ1を確実に担持するために、そのワイヤ径(インシュレーション径)wと同一とすることが必要となるので(図7参照)、上記ピッチローラ10と壁部21Bとの接触を防止して、金属ワイヤ1の外れを防止するためには、ピッチローラ10のローラ幅Waを、開口部11の幅Wbとの関係で上記のように適正化することが有効となる。なお、開口部11の幅Wbを狭くし過ぎると金属ワイヤ1の外れが発生するため、好ましくない。
【0021】
ここで、図8中に点線で示す部分が従来のピッチローラの概略形状であり、そのローラ幅は、従来、金属ワイヤ径(インシュレーション径)+3〜3.4mm程度に形成されていた。
【0022】
より具体的には、例えば、本発明に係るピッチローラ10は、ローラ幅Waがインシュレーション径+0.2mm、開口部11の幅Wbがインシュレーション径となるように、すなわち、ローラ幅Waが開口部11の幅Wbよりも0.2mm大きくなるように設定することができる。
【0023】
本発明においては、上記のような垂直壁部を有するガイド部を有するビードフォーマを備えた成型装置を用いてビードコアの成型を行う点が重要であり、これにより、底面に対し垂直な側面部を有する断面多角形状のビードコアを、容易に得ることが可能となる。本発明の成型装置は、かかるビードフォーマを備えるものであれば、それ以外の点については常法に従い構成することができ、特に制限されるものではない。
【0024】
また、かかる本発明の成型装置を用いてビードコアを成型、製造する際の具体的な巻取り条件等についても、目的とするビードコア形状に基づき、常法に従い適宜決定することができ、特に制限されるものではないが、好適には例えば、以下のように実施することができる。
【0025】
金属ワイヤ1の巻取りに際しては、通常は図9に示すように、同じ段の平行配列部分については、ピッチローラ10を、インシュレーション径wを1ピッチPとしてピッチ送りし、1段上に積み上げる際には0.5ピッチ、すなわち、インシュレーション径wの半分のピッチP/2で送ることにより、所望のビードコア形状を形成することができる。但し、本発明に係る断面多角形状ビードコアの垂直側面部近傍における金属ワイヤ1の巻取りに際しては、変則小ピッチ送りにより巻取りを行うことが好ましい。前述したように、断面多角形状ビードコアの垂直側面部における金属ワイヤの巻取りに際しては、ピッチローラ10とガイド部21の壁部21Bとが接触しやすいため、図10に示すように、ビードコアの垂直側面部近傍においてはピッチローラ10を変則的に小ピッチpで送り、巻き圧で落下させるものとすることで、上記接触による金属ワイヤの外れを防止することができる。
【0026】
より具体的には、例えば、図11に示すように、同じ段の配列部分を図中の左方向に巻き取って平行移動した後、ガイド部21の壁部21Bに接する金属ワイヤ1Cを巻取る際のピッチ送り量cは、インシュレーション径wを1ピッチとして0.6〜1.0ピッチでピッチ送りし、金属ワイヤ1Cの位置から1段上の金属ワイヤ1Dの位置に積上げる次のピッチ送り量dについては、金属ワイヤ1Cのピッチ送り量c−0.5ピッチで送って、ワイヤ位置を修正すればよい。また一方、同じ段の配列部分を図中の右方向に巻き取って平行移動した後、1段上でガイド部21の壁部21Bに接する金属ワイヤ1Aを巻取る際のピッチ送り量aは0.1〜0.5ピッチでピッチ送りし、金属ワイヤ1Aの位置から図中の左方向に平行移動させて、金属ワイヤ1Bを巻取る次のピッチ送り量bについては、金属ワイヤ1Aの場合のピッチ送り量a+0.5ピッチで送って、ワイヤ位置を修正すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のビードコアの成型装置に係る説明図である。
【図2】本発明に係るビードフォーマにおけるガイド部の一好適例を示す断面図である(断面八角形状のビードコア)。
【図3】本発明に係るビードフォーマにおけるガイド部の一好適例を示す断面図である(断面十角形状のビードコア)。
【図4】(a)は壁部の下端高さが妥当な場合、(b)は壁部の下端高さが妥当でない場合の金属ワイヤの積み上げ状態をそれぞれ示す説明図である。
【図5】金属ワイヤを被覆したインシュレーションゴムの積み上げに伴う潰れの状態を示す説明図である。
【図6】積み上げ金属ワイヤ高さの一例の、実測値、および、インシュレーションゴムの潰れを考慮しない場合の計算値を示すグラフである。
【図7】ピッチローラに形成された開口部形状を示す拡大断面図である。
【図8】ピッチローラとガイド部の壁部とが接触した状態を示す説明図である。
【図9】金属ワイヤの巻取り工程を示す説明図である。
【図10】ビードコアの垂直側面部近傍におけるピッチローラの変則小ピッチ送りを示す説明図である。
【図11】金属ワイヤの巻取り工程の好適具体例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 金属ワイヤ
2 インシュレーションゴム
10 ピッチローラ
11 開口部
20 ビードフォーマ
21,31 ガイド部
21A,31A 底部
21B,31B,41B 壁部
21C,31C 傾斜部
40,50 断面多角形状ビードコア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ワイヤを巻き取るためのガイド部を有するビードフォーマと、該ビードフォーマに近接して配置され、前記金属ワイヤを担持する開口部を有し、該開口部に担持した金属ワイヤを前記ガイド部の幅方向に移動可能なピッチローラと、を備えるビードコアの成型装置において、
前記ガイド部が、底部に対し垂直な壁部と、該底部および壁部を繋ぐ傾斜部と、を有することを特徴とするビードコアの成型装置。
【請求項2】
前記ピッチローラのローラ幅が、前記開口部の幅より0.2〜0.6mm大きい請求項1記載のビードコアの成型装置。
【請求項3】
底面に対し垂直な側面部を有する断面多角形状のビードコアを製造するにあたり、請求項1または2記載のビードコアの成型装置を用いて、該断面多角形状ビードコアの成型を行うことを特徴とするビードコアの製造方法。
【請求項4】
前記ガイド部における前記壁部の下端高さを、前記断面多角形状ビードコアの垂直側面部の下端を形成する前記金属ワイヤの段数に基づき決定する請求項3記載のビードコアの製造方法。
【請求項5】
前記断面多角形状ビードコアの垂直側面部近傍における前記金属ワイヤの巻取りを、変則小ピッチ送りにより行う請求項3または4記載のビードコアの製造方法。
【請求項1】
金属ワイヤを巻き取るためのガイド部を有するビードフォーマと、該ビードフォーマに近接して配置され、前記金属ワイヤを担持する開口部を有し、該開口部に担持した金属ワイヤを前記ガイド部の幅方向に移動可能なピッチローラと、を備えるビードコアの成型装置において、
前記ガイド部が、底部に対し垂直な壁部と、該底部および壁部を繋ぐ傾斜部と、を有することを特徴とするビードコアの成型装置。
【請求項2】
前記ピッチローラのローラ幅が、前記開口部の幅より0.2〜0.6mm大きい請求項1記載のビードコアの成型装置。
【請求項3】
底面に対し垂直な側面部を有する断面多角形状のビードコアを製造するにあたり、請求項1または2記載のビードコアの成型装置を用いて、該断面多角形状ビードコアの成型を行うことを特徴とするビードコアの製造方法。
【請求項4】
前記ガイド部における前記壁部の下端高さを、前記断面多角形状ビードコアの垂直側面部の下端を形成する前記金属ワイヤの段数に基づき決定する請求項3記載のビードコアの製造方法。
【請求項5】
前記断面多角形状ビードコアの垂直側面部近傍における前記金属ワイヤの巻取りを、変則小ピッチ送りにより行う請求項3または4記載のビードコアの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−254398(P2008−254398A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101829(P2007−101829)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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