説明

ビームプロファイル調整装置とこれを備えるイオン注入装置

【課題】イオンビームの強度分布調整において、イオンビームの短辺方向寸法を大きくことを可能にする。
【解決手段】イオンビームは、その進行方向と垂直な断面形状を有し、断面形状は、第1方向に長く、第1方向と直交する第2方向に短くなっている。イオンビームに対し磁界を印加する磁石17を備え、磁石17は、イオンビームが通過する領域の近傍に配置されて第2方向にイオンビームと対向するとともに、第1方向に位置調整可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン源から発生されたイオンビームの強度分布を調整するビームプロファイル調整装置とこれを備えるイオン注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン注入装置は、例えばガラス基板上の薄膜にイオンビームを不純物(リンPやボロンBなど)として注入する装置である。イオン源は、イオンビームを発生させる装置であり、例えば、プラズマを生成しこのプラズマからイオンを引き出し加速し、これによりイオンビームを発生させる装置である。
【0003】
ガラス基板上に形成された薄膜トランジスタは、主に液晶パネルや有機ELパネルを駆動するためのデバイスとして利用される。基板サイズは、年々大型化しており、イオン注入装置に要求されるイオンビームサイズも大きくなっている。
【0004】
一般に使用されるイオンビームの断面形状は、一辺(以下、長辺という)が他の一辺(以下、短辺という)よりも数〜十数倍大きいリボン状の長方形である。このようなイオンビームを、基板全体に均一に注入する。大型の基板に対しては、短辺方向に基板を移動させながら、イオンビームを基板に注入する。なお、イオンビームは、真空容器内を進行して基板に注入される。
生成するデバイスの品質を一定以上に維持するためには、長辺方向に関するイオンビームの強度分布は、均一性を有していなければならない。強度分布が規定の均一性より悪い場合、何らかの方法で前記強度分布を調整する必要がある。
【0005】
従来におけるビーム強度分布の調整方法には、次の(1)、(2)の方法がある。
【0006】
(1)図8(A)に示すように、コイル31内において磁極33を長辺方向に複数配置し、各磁極33を短辺方向に移動させることで、長辺方向に関するビーム強度分布を調整する(例えば特許文献1)。この方法では、複数の磁極33の一部をビームに対して挿入したり、引き抜いたりすることによって、局所的な磁場を調整することにより、その部分の磁場を感じるイオンの位置を調整することによって長辺方向のビーム強度分布を調整している。
例えば、長辺が800mm程度、短辺が10mm〜50mm程度のイオンビームを調整するとする。複数の磁極33は、イオンビームの短辺方向に磁場が発生するように配置され、ビームの短辺方向に挿入できたり、引き抜いたりできるようになっている。その磁極33を挿入すれば、局所的に磁場は強くなり、その部分の磁場を感じるイオンは、他のイオンに対し位置調整される。イオンの多い部分(プロファイルの山)の磁場を強くしたり弱くするなど、イオンの少ない部分(プロファイルの谷)にイオンが到達するよう局所的な磁場強度を調整することで、長辺方向のビーム強度分布を調整する。
【0007】
(2)図8(B)に示すように、磁極35にコイル37が巻かれた電磁石39を長辺方向に複数配置し、これら電磁石39による磁界強度をそれぞれ独立した電流供給手段により調整する(例えば特許文献2)。即ち、ビームの長辺方向に沿って配置された多数の電磁石39と同数の電流供給手段によって、独立に局所的な磁場強度を調整することができる。これにより、上記(1)の方法と同様に、局所的な磁場強度を調整して、長辺方向のビーム強度分布を調整することができる。
【特許文献1】特許第2878112号
【特許文献2】特許第4049163号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記(1)の方法では、磁極が短辺方向に移動する分、真空容器の短辺方向寸法を小さくする必要がある。即ち、真空容器の短辺方向寸法を小さくすることで、短辺方向の磁極移動範囲におけるいずれの位置からも、磁界がイオンビームに作用するようにする。従って、ビームの短辺方向幅を大きくすることができない。ビームの短辺方向幅を大きくすることにより、ビーム電流を大きくすることができるので、上記(1)の方法では大電流化が難しい。ビームの短辺方向寸法を大きくしなくても電流密度を増すことによって大電流化は可能であるが、イオン同士が同電荷により反発し合ってビームが拡がってしまう可能性がある。
上記(2)の方法では、電磁石を用いてビーム強度分布を調整する場合、電源を含めた電流供給手段の数が格段に増加するだけでなく、制御が煩雑となりコストアップにつながってしまう。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決することにあり、イオンビームの短辺方向寸法を大きくすることができるビームプロファイル調整装置とこれを備えるイオン注入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明によると、イオン源から発生されたイオンビームの強度分布を調整するビームプロファイル調整装置であって、
前記イオンビームは、その進行方向と垂直な断面形状を有し、該断面形状は、第1方向に長く、第1方向と直交する第2方向に短くなっており、
前記イオンビームに対し磁界を印加する磁石を備え、
該磁石は、前記イオンビームが通過する領域の近傍に配置されて前記第2方向にイオンビームと対向するとともに、前記第1方向に位置調整可能となっている、ことを特徴とするビームプロファイル調整装置が提供される。
【0011】
上述の本発明のビームプロファイル調整装置では、前記イオンビームに対し磁界を印加する磁石を備え、該磁石は、前記イオンビームが通過する領域の近傍に配置されて前記第2方向(イオンビームの短辺方向)にイオンビームと対向するとともに、前記第1方向に位置調整可能となっているので、磁石を第1方向(イオンビームの長辺方向)に移動させることで、磁場強度を局所的に調整し、第1方向に関するビーム強度分布を均一に近づけるように調整することができる。
しかも、イオンビームへ印加する磁界の調整を、磁石を第1方向に位置調整して行い、磁石を第2方向に位置調整して行わないので、第2方向におけるイオンビーム通過領域幅を大きく取れる。従って、イオンビームの第2方向寸法を大きく取ることができ、その結果、第2方向に幅広い大電流イオンビームを用いることができる。よって、イオンビーム電流値の増加は、対象物(例えば基板)1枚当たりの照射時間の短縮につながるので、生産性が向上する。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によると、前記磁石は、可動磁極部と、該可動磁極部を囲むように巻かれ静止したコイルと、を有する電磁石であり、
前記コイルは、前記可動磁極部が配置される内部空間を有し、該内部空間は、前記可動磁極部が前記内部空間内で前記第1方向に移動できるように前記第1方向に延びており、前記可動磁極部が第1方向に移動可能である。
【0013】
このように、磁石を電磁石とする場合に、コイルの内部空間は、前記可動磁極部が前記第1方向に移動できるように前記第1方向に延びており、前記可動磁極部が第1方向に移動可能であるので、コイルを移動させる必要がなく、可動磁極部のみを移動させればよい。
【0014】
好ましくは、前記内部空間には、複数の前記可動磁極部が配置されている。
【0015】
このように、前記内部空間には、複数の前記可動磁極部が配置されているので、各可動磁極部をコイルの内部空間において第1方向に移動させることで、第1方向に関するビーム強度分布をより細かく調整することができる。
また、複数の可動磁極部に対し1つのコイルを設ければよい。
【0016】
本発明の他の実施形態によると、前記磁石は、前記第1方向に複数設けられている。
【0017】
例えば、可動磁極部(鉄心など)とこれに巻かれるコイルとからなる電磁石を、第1方向に複数個設けてもよいし、永久磁石を第1方向に複数個設けてもよい。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明によると、イオンビームを対象物に注入するイオン注入装置であって、
イオンビームを発生させるイオン源と、
前記イオンビームを対象物まで通すための空間を内部に有する容器と、
上述のビームプロファイル調整装置と、を備える、ことを特徴とするイオン注入装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
上述した本発明によると、イオンビームの強度分布調整において、イオンビームの短辺方向寸法を大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通または対応する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明のビームプロファイル調整装置が適用可能なイオン注入装置の構成図である。図1(A)は、部分的に透視した平面図であり、図1(B)は図1(A)のB−B線矢視図である。イオン注入装置20は、イオンビームを対象物1に注入する装置であって、容器3、イオン源5、質量分離型磁石7、ビームプロファイル調整装置10、ビームプロファイルモニタ9などを備える。
【0022】
容器3は、この例では内部が真空にされる真空容器であり、内部に互いに連通したプラズマ室3a、ビーム加速室3b、ビーム通過室3c、処理室3dを有する。プラズマ室3aでは、プラズマが生成され、ビーム加速室3bでは、プラズマから引き出されたイオンビームが加速され、このイオンビームがビーム通過室3cを通って処理室3d内の対象物1(例えばガラス基板上の薄膜)に注入される。
【0023】
イオン源5は、イオンビームを発生させる装置である。この例では、イオン源5は、図示を省略するが、プラズマ室3aに材料ガスを導入するガス導入装置と、熱電子を発生しこの熱電子を材料ガスに衝突させることで材料ガスをプラズマにするフィラメントと、プラズマからイオンビームを引き出してビーム加速室3bにおいて加速する引出し電極と、を有する。
【0024】
質量分離型磁石7は、イオンビームに磁界を印加することで、イオンビーム中の各イオンをその電荷と質量に依存した曲率半径で回転させるものである。この例では、質量分離型磁石7は、図1(B)に示すように、イオンビームを挟むように互いに対向して配置された1対の電磁石11からなる。各電磁石11は、鉄などで形成された磁極部11aと、磁極部11aに巻かれたコイル11bとからなる。このような構成により、イオンビームに対し一様な磁界が印加され、各イオンはその電荷と質量に依存した曲率半径で回転する。
この質量分離型磁石7の下流に、分離スリット13が設けられる。分離スリット13は、イオンビームを通過させる隙間を有し、この隙間の形状は、分離スリット13を通過したイオンビームの断面形状に相当する横長(例えば、長方形)であってよい。
このような質量分離型磁石7と分離スリット13により、所望のイオンが選別されて分離スリット13の隙間を通過するようになっている。分離スリット13を通過することで、イオンビームは所望のイオンのみで構成される。
【0025】
ビームプロファイル調整装置10は、イオン源5から発生されたイオンビームの第1方向(即ち、ビームの長辺方向)における強度分布を調整するものである。この例では、ビームプロファイル調整装置10は、分離スリット13を通過したイオンビームの強度分布を調整するものである。例えば、分離スリット13を通過したイオンビームの第1方向における強度分布は、理想的には均一であるが、実際には不均一となっている。そのため、ビームプロファイル調整装置10により、第1方向のイオンビーム強度分布を均一に調整する。なお、前記強度分布とは、詳しく述べると、第1方向の単位長さあたりにおける第2方向のビーム存在範囲内の総電流量についての第1方向の分布である。
【0026】
ビームプロファイルモニタ9は、イオンビームの第1方向における強度分布を検出する。この検出は、対象物1とこれを短辺方向に移動させる移動ステージ15を取り除いた状態で行われる。例えば、ビームプロファイルモニタ9は、イオンビームの進行方向と垂直な面内の各位置におけるイオンビーム強度(即ち、電流密度を)を検出するファラデーカップアレイを有する。
【0027】
ビームプロファイル調整装置10を、より詳しく説明する。図2は、図1(B)に示すビーム調整装置10の拡大図である。図3は、図2のIII−III線断面図である。
【0028】
ビームプロファイル調整装置10は、イオンビームに対し磁界を印加する磁石17を備える。磁石17は、イオンビームが通過する領域の近傍に配置されて第2方向にイオンビームと対向するとともに、第1方向に位置調整可能となっている。図3の例では、磁石17は、第2方向にイオンビームを挟むように2箇所に設けられる。
【0029】
本実施形態によると、磁石17は、例えば鉄で形成された可動磁極部17aと、該可動磁極部17aを囲むように巻かれ静止したコイル17bと、を有する電磁石である。この場合、コイル17bは、可動磁極部17aが配置される内部空間19を有し、該内部空間19は、可動磁極部17aが内部空間19内で第1方向に移動できるように第1方向に延びており、可動磁極部17aが第1方向に移動自在である。
また、各可動磁極部17aは、第2方向を向く磁界をイオンビームに印加する。図3の例では、右側の可動磁極部17aと左側の可動磁極部17aとは、同じ方向(例えば図3の左から右への方向)を向く磁界を発生させて、該磁界を強め合う。これにより、第2方向におけるイオンビーム幅は大きくても、ビームの第1方向の強度分布調整が可能になる。
各コイル17bに流れる電流値は、一定であってもよいし、調節可能であってもよい。
【0030】
好ましくは、内部空間19には、複数の可動磁極部17aが配置され、各可動磁極部17aは第1方向に移動可能である。これら可動磁極部17aは、互いに独立して第1方向に移動可能であるのがよい。
図3に示すように、各可動磁極部17aの第1方向への移動を案内するガイド部21が設けられてもよい。このガイド部21は、各可動磁極部17aを第1方向へのみ移動可能とし、各可動磁極部17aが他の方向へ移動することを防止する機構であってよい。
【0031】
第1方向への各可動磁極部17aの移動は、図3のように、各可動磁極部17aに固定された操作部23を操作することで行われてもよい。この場合、ビームプロファイルモニタ9による第1方向の強度分布の検出結果がディスプレイ(図示せず)に表示され、その表示結果により、操作部23を操作してよい。なお、コイル17bへ電流を供給する電流供給装置(図示せず)を人が操作することで、各コイル17bへ流す電流も調整してもよい。
代わりに、図4のように、ビームプロファイルモニタ9によるビーム強度分布検出結果に基づいて、強度分布を均一に近づけるように、制御装置25が駆動装置27を制御することで行ってもよい。各駆動装置27は、対応する可動磁極部17aを第1方向に移動させる装置である。また、制御装置25は、ビーム強度分布検出結果に基づいて、駆動装置27だけでなく、コイル17bへ電流を供給する電流供給装置(図示せず)を制御することで、コイル17bへ流す電流も調整してもよい。この電流調整は、コイル17b毎に独立して行ってもよい。なお、図4は図3に対応する。
このような調整により、イオンビームの前記強度分布を、均一に調整でき、または、均一に近づけることができる。
【0032】
ビームプロファイル調整装置10の作用について説明する。
例えば、分離スリット13を通過してきたイオンビームの長辺方向における強度分布が、図5(A)に示す分布であるとする。この場合、3つの可動磁極部17aをそれぞれ図5(A)の位置P1、P2、P3へ移動させることで、図5(A)の矢印方向に、強度分布を調整して、図5(B)に示す均一性の高い分布に調整することができる。
なお、各可動磁極部17aは、コイル17b(例えば、ガイド部21)に対し着脱可能であり、コイル17bの内部空間19に配置する可動磁極部17aの数を調節するようにしてもよい。これにより、一層細かくイオンビームの前記強度分布を調整できる。
【0033】
上述した本発明の実施形態のビームプロファイル調整装置によると以下の効果(A)〜(D)が得られる。
(A)イオンビームに対し磁界を印加する磁石17を備え、該磁石17(可動磁極部17a)は、イオンビームが通過する領域の近傍に配置されて第2方向にイオンビームと対向するとともに、第1方向に位置調整可能となっているので、磁石17(可動磁極部17a)を第1方向(イオンビームの長辺方向)に移動させることで、磁場強度を局所的に調整し、第1方向に関するビーム強度分布を均一に調整することができる。
【0034】
(B)しかも、イオンビームへ印加する磁界の調整を、磁石17(可動磁極部17a)を第1方向に位置調整して行い、磁石17を第2方向に位置調整して行わないので、調第2方向におけるイオンビーム通過領域幅を大きく取れる。従って、イオンビームの第2方向寸法を大きく取ることができ、その結果、第2方向に幅広い大電流イオンビームを用いることができる。よって、イオンビーム電流値の増加は、1枚の対象物1(例えば基板)を照射する時間の短縮につながるので、生産性が向上する。
【0035】
(C)また、磁石17を電磁石とする場合に、コイル17bの内部空間19は、可動磁極部17aが内部空間19内で第1方向に移動できるように第1方向に延びており、可動磁極部17aが第1方向に移動可能であるので、コイル17bを移動させる必要がなく、可動磁極部17aのみを移動させればよい。
【0036】
(D)内部空間19には、複数の可動磁極部17aが配置されているので、各可動磁極部17aをコイル17bの内部空間19において第1方向に移動させることで、第1方向に関するビーム強度分布をより細かく調整することができる。また、複数の可動磁極部17aに対し1つのコイル17bを設ければよくなる。
【0037】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【0038】
例えば、ビームプロファイル調整装置10は、図6に示すように、第1方向に配列された複数の電磁石17を備えるものであってもよい。この場合、以下の構成であってよい。
各磁石17は、可動磁極部17aと、これに巻かれたコイル17bをと有し、第2方向を向く磁界をイオンビームに印加する。各磁石17は第1方向に移動可能である。これら磁石17は、互いに独立して第1方向に移動可能であるのがよい。また、各磁石17の第1方向への移動を案内するガイド部(図示せず)が設けられてもよい。このガイド部は磁石17を第1方向へのみ移動可能とし、磁石17が他の方向へ移動することを防止する機構であってよい。
第1方向への各磁石17の移動は、図6のように、各可動磁極部17aに固定された操作部23を操作することで行われてもよい。この場合、ビームプロファイルモニタ9による第1方向の強度分布の検出結果がディスプレイ(図示せず)に表示され、その表示結果により、操作部23を操作してよい。なお、コイル17bへ電流を供給する電流供給装置(図示せず)を人が操作することで、各コイル17bへ流す電流も調整してもよい。代わりに、図7のように、ビームプロファイルモニタ9によるビーム強度分布検出結果に基づいて、強度分布を均一に近づけるように、制御装置25が各駆動装置27を制御することで、磁石17を第1方向に移動させてもよい。各駆動装置27は、対応する磁石17を第1方向に移動させる装置である。また、制御装置25は、前記ビーム強度分布検出結果に基づいて、駆動装置27だけでなく、各コイル17bへ電流を供給する電流供給装置(図示せず)を制御することで、コイル17bへ流す電流も調整してもよい。この電流調整は、コイル17b毎に独立して行ってもよい。なお、図7は図6に対応する。このような調整により、イオンビームの前記強度分布を、所望の均一にでき、または、均一に近づけることができる。
この場合における他の構成、動作などは上述の実施形態と同じであってよい。なお、図6または図7において、電磁石17の代わりに永久磁石17を用いてもよい。
【0039】
また、本発明のビームプロファイル調整装置は、上述した実施形態によるイオン注入装置以外のイオン注入装置にも適用できる。例えば、本発明のビームプロファイル調整装置は、質量分離型磁石7を有さないイオン注入装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のビームプロファイル調整装置が適用可能なイオン注入装置の構成図である。
【図2】図1(B)に示すビームプロファイル調整装置付近を示す部分拡大図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】ビームプロファイル調整装置を自動で制御する場合の構成図である。
【図5】本発明の実施形態による作用の説明図である。
【図6】本発明のビームプロファイル調整装置の他の実施形態を示す。
【図7】図6に対応するビームプロファイル調整装置を自動で制御する場合の構成図である。
【図8】イオンビームの強度分布を調整する従来の構成である。
【符号の説明】
【0041】
1 対象物、3 容器、3a プラズマ室、3b ビーム加速室、3c ビーム通過室、3d 処理室、5 イオン源、7 質量分離型磁石、9 ビームプロファイルモニタ、10 ビームプロファイル調整装置、11a 磁極部、11b コイル、13 分離スリット、15 移動ステージ、17 磁石、17a 可動磁極部、17b コイル 19 内部空間、20 イオン注入装置、21 ガイド部、23 操作部、25 制御装置、27 駆動装置、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源から発生されたイオンビームの強度分布を調整するビームプロファイル調整装置であって、
前記イオンビームは、その進行方向と垂直な断面形状を有し、該断面形状は、第1方向に長く、第1方向と直交する第2方向に短くなっており、
前記イオンビームに対し磁界を印加する磁石を備え、
該磁石は、前記イオンビームが通過する領域の近傍に配置されて前記第2方向にイオンビームと対向するとともに、前記第1方向に位置調整可能となっている、ことを特徴とするビームプロファイル調整装置。
【請求項2】
前記磁石は、可動磁極部と、該可動磁極部を囲むように巻かれ静止したコイルと、を有する電磁石であり、
前記コイルは、前記可動磁極部が配置される内部空間を有し、該内部空間は、前記可動磁極部が前記内部空間内で前記第1方向に移動できるように前記第1方向に延びており、前記可動磁極部が第1方向に移動可能である、ことを特徴とする請求項1に記載のビームプロファイル調整装置。
【請求項3】
前記内部空間には、複数の前記可動磁極部が配置されている、ことを特徴とする請求項2に記載のビームプロファイル調整装置。
【請求項4】
前記磁石は、前記第1方向に複数設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のビームプロファイル調整装置。
【請求項5】
イオンビームを対象物に注入するイオン注入装置であって、
イオンビームを発生させるイオン源と、
前記イオンビームを対象物まで通すための空間を内部に有する容器と、
請求項1〜4のいずれか一項に記載のビームプロファイル調整装置と、を備える、ことを特徴とするイオン注入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−44915(P2010−44915A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207149(P2008−207149)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】