説明

ビーム照射装置

【課題】光検出器からの信号に基づいて検出されたサーボ光の受光位置と理想の受光位置との差分に、迷光や電気的ノイズ等による外乱成分が含まれる場合にも、適正に、レーザ光を目標領域において走査させ得るビーム照射装置を提供する。
【解決手段】マイコン7は、PSD315からの検出信号に基づいて取得されたサーボ光の受光位置と、理想の受光位置との差分を示す差分信号に基づいて、レーザ光が目標領域上の目標軌道を追従するよう、ミラーアクチュエータ100を制御する。また、マイコン7は、差分信号に外乱成分が含まれるエラー期間を検出し、検出したエラー期間において、差分信号に応じて前記レーザ光を前記目標軌道に追従させる制御を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標領域にレーザ光を照射するビーム照射装置に関し、特に、目標領域にレーザ光を照射したときの反射光をもとに、目標領域内における障害物の有無や障害物までの距離を検出する、いわゆるレーザレーダに搭載されるビーム照射装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、走行時の安全性を高めるために、走行方向前方にレーザ光を照射し、その反射光の状態から、目標領域内における障害物の有無や障害物までの距離を検出するレーザレーダが、家庭用乗用車等に搭載されている。一般に、レーザレーダは、レーザ光を目標領域内でスキャンさせ、各スキャン位置における反射光の有無から、各スキャン位置における障害物の有無を検出する。さらに、各スキャン位置におけるレーザ光の照射タイミングから反射光の受光タイミングまでの所要時間をもとに、そのスキャン位置における障害物までの距離が検出される。
【0003】
目標領域においてレーザ光をスキャンさせるための構成として、ミラーを2軸駆動する構成を用いることができる(特許文献1)。このスキャン機構では、レーザ光を水平方向斜めからミラーに入射させる。ミラーを水平方向と鉛直方向に2軸駆動することにより、レーザ光が目標領域を走査する。
【0004】
ミラーの駆動制御は、たとえば、レーザ光の動きを反映したサーボ光を、PSD(PositionSensitive Detector)等の光検出器で受光することによって行われる。この場合、予め設定された理想の受光位置とサーボ光の実際の受光位置とが比較され、両者の差分に応じて、ミラーが2軸駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−14698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記スキャン機構において、PSD等の光検出器にサーボ光以外の光(迷光)が入射し、あるいは、光検出器からの検出信号に大きな電気的ノイズが重畳されると、検出信号に基づいて検出されるサーボ光の受光位置が、正規の位置から大きくずれることが起こり得る。この場合、このように検出された受光位置と理想の受光位置との差分に基づいてミラーが駆動されると、ミラーが、不所望な位置に大きく振られる惧れがある。こうなると、目標領域において、レーザ光の照射位置が正規の位置から大きく外れ、レーザレーダの検出精度が劣化する。
【0007】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、光検出器からの信号に基づいて検出されたサーボ光の受光位置と理想の受光位置との差分に、迷光や電気的ノイズ等による外乱成分が含まれる場合にも、適正に、レーザ光を目標領域において走査させ得るビーム照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るビーム照射装置は、レーザ光を出射するレーザ光源と、目標領域において前記レーザ光を走査させるアクチュエータと、前記目標領域における前記レーザ光の走査
に伴ってサーボ光の進行方向を変化させるサーボ光学系と、前記サーボ光を受光して受光位置に応じた検出信号を出力する光検出器と、前記検出信号に基づいて取得された前記サーボ光の前記受光位置と、理想の受光位置との差分に基づいて、前記レーザ光が前記目標領域上の目標軌道を追従するよう、前記アクチュエータを制御する制御回路とを備える。前記制御回路は、前記差分に外乱成分が含まれるエラー期間を検出し、検出した前記エラー期間において、前記差分に応じて前記レーザ光を前記目標軌道に追従させる制御を停止させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光検出器からの信号に基づいて検出されたサーボ光の受光位置と理想の受光位置との差分に、迷光や電気的ノイズ等による外乱成分が含まれる場合にも、適正に、レーザ光を目標領域において走査させ得るビーム照射装置を提供することができる。
【0010】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係るミラーアクチュエータの分解斜視図を示す図である。
【図2】実施の形態に係るミラーアクチュエータの組立過程を示す図である。
【図3】実施の形態に係るミラーアクチュエータの組立過程を示す図である。
【図4】実施の形態に係るビーム照射装置の光学系を示す図である。
【図5】実施の形態に係るビーム照射装置の光学系を示す図である。
【図6】実施の形態に係るPSDの構成を示す図である。
【図7】実施の形態に係る位置検出信号の生成方法を説明する図である。
【図8】実施の形態に係るミラーの駆動状態と目標領域における走査用レーザ光の軌道およびPSD上におけるサーボ光の軌道との関係を示す図である。
【図9】実施の形態に係るビーム照射装置の回路構成を示す図である。
【図10】実施の形態に係るミラーアクチュエータの制御方法を説明する図である。
【図11】実施の形態に係るマイコンの要部構成を示す図である。
【図12】実施の形態に係る目標軌道テーブルの構成および制御動作フローを示す図である。
【図13】実施の形態に係るミラーアクチュエータのサーボ動作例を示す図である。
【図14】実施の形態の変更例に係る光検出器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施の形態に係るミラーアクチュエータ100の分解斜視図である。
【0013】
ミラーアクチュエータ100は、チルトユニット110と、パンユニット120と、マグネットユニット130と、ヨークユニット140と、ミラー150と、透過板200とを備えている。
【0014】
チルトユニット110は、支軸111と、チルトフレーム112と、2つのチルトコイル113とを備えている。支軸111には、両端部近傍に2つの溝111aが形成されている。
【0015】
チルトフレーム112には、左右に、チルトコイル113を装着するためのコイル装着部112aが形成されている。チルトフレーム112には、支軸111が嵌め込まれる溝112bが形成され、さらに、上下に並ぶ2つの孔112cが形成されている。
【0016】
支軸111は、両端に軸受け116a、116b、Eリング117a、117b、ポリスライダーワッシャ118が取り付けられた状態で、チルトフレーム112に形成された溝112bに嵌め込まれ、接着固定される。さらに、2つの孔112cに、それぞれ、上下から軸受け112dが嵌め込まれる。これにより、図2(a)に示すように、チルトユニット110の組み立てが完了する。
【0017】
完成したチルトユニット110には、後述の如くして、パンユニット120が装着される。その後、チルトユニット110は、軸受け116a、116bと、Eリング117a、117bと、ポリスライダーワッシャ118と、軸固定部材142を用いて、後述の如く、ヨーク141に取り付けられる。
【0018】
図1に戻り、パンユニット120は、パンフレーム121と、支軸122と、パンコイル123を備えている。パンフレーム121には、凹部121aを挟んで上板部121bと下板部121cが形成されている。これら上板部121bと下板部121cには、支軸122を通すための孔121dが上下に並ぶように形成されている。また、上板部121bと下板部121cの前面には、ミラー150を嵌め込むための段部121eが形成されている。さらに、下板部121cからは、下方向に足部121fが形成され、この足部121fに、透過板200を嵌め込むための凹部121gが形成されている。なお、パンフレーム121の背面には、パンコイル123を装着するためのコイル装着部(図示せず)が形成されている。支軸122の上端には、バランサ122aが装着されている。
【0019】
マグネットユニット130は、フレーム131と、2つのパンマグネット133と、8つのチルトマグネット132とを備えている。フレーム131は、前側に凹部131aを有する形状となっている。フレーム131の上板部131bには、前後方向に、2つの切り欠き131cが形成され、さらに、中央に、ネジ穴131dが形成されている。8つのチルトマグネット132は、フレーム131の左右の内側面に、上下2段に分けて装着されている。また、2つのパンマグネット133は、図示の如く、フレーム131の内側面に、前後方向に傾くように装着されている。
【0020】
ヨークユニット140は、ヨーク141と、軸固定部材142を備えている。ヨーク141は、磁性部材からなっている。ヨーク141には、左右に壁部141aが形成され、これら壁部141aの下端には、チルトユニット110の支軸111を装着するための凹部141bが形成されている。ヨーク141の上部には上下に貫通する2つのネジ穴141cが形成され、さらに、マグネットユニット130のネジ穴131dに対応する位置に、孔141dが形成されている。2つの壁部141aの内側面間の距離は、支軸111の2つの溝111a間の距離よりも大きくなっている。
【0021】
軸固定部材142は、可撓性を有する金属性の薄板部材である。軸固定部材142の前側には、板ばね部142a、142bが形成され、これら板ばね部142a、142bの下端には、それぞれ、チルトユニット110の軸受け116a、116bの脱落を規制するための受け部142c、142dが形成されている。また、軸固定部材142の上板部には、ヨーク141側の2つのネジ穴141cに対応する位置にそれぞれ孔142eが形成され、さらに、ヨーク141側の孔141dに対応する位置に孔142fが形成されている。
【0022】
ミラーアクチュエータ100の組み立て時には、上記の如くして、図2(a)に示すチルトユニット110が組み立てられた後、以下のようにして、パンユニット120がチルトユニット110に装着される。
【0023】
まず、チルトフレーム112がパンフレーム121の凹部121a内に収容され、チル
トフレーム112の孔112cに装着された2つ軸受け112dとパンフレーム121の孔121dとが上下に並ぶように、パンフレーム121が位置づけられる。このとき、上側の軸受け112dと上板部121bとの間に、ポリスライダーワッシャ112eが介挿される。そして、その状態で、2つ軸受け112dとパンフレーム121の孔121dに支軸122が通され、支軸122がパンフレーム121に接着剤により固定される。
【0024】
しかる後、パンフレーム121の背面にパンコイル123が装着される。さらに、パンフレーム121の凹部121gに透過板200を嵌め込み、透過板固定金具201で透過板200をパンフレーム121の足部121fに固定する。これにより、図2(b)に示すように、パンユニット120がチルトユニット110に装着される。この状態で、パンフレーム121は、支軸122の周りに回動可能となり、また、支軸122に沿って上下に僅かに移動可能となる。
【0025】
こうしてパンユニット120が装着された後、パンフレーム121の段部121eにミラー150が嵌め込まれて固定される。その後、チルトユニット110の支軸111の両端に装着された軸受け116a、116bを、図1に示すヨーク141の凹部141b、141bに嵌め込む。そして、この状態で、軸受け116a、116bが凹部141b、141bから脱落しないように、軸固定部材142をヨーク141に装着する。すなわち、受け部142cが軸受け116aを下から支え、且つ、受け部142dが軸受け116bを前方から挟むようにして軸固定部材142をヨーク141に装着する。この状態で、軸固定部材142の2つの孔142eを介して2つのネジ143をヨーク141のネジ穴141cに螺着する。これにより、図2(b)に示す構成体がヨークユニット140に装着される。
【0026】
こうして、図3(a)に示す構成体が完成する。この状態で、チルトフレーム112は、パンフレーム121と一体的に、支軸111の周りに回動可能となり、また、支軸111に沿って左右に僅かに移動可能となる。なお、支軸111の両端は、上記の如く、軸固定部材142によって、弾性変位可能に、ヨーク141の凹部141bに取り付けられている。
【0027】
こうして組み立てられた図3(a)の構成体は、ヨーク141の2つの壁部141aが、それぞれ、マグネットユニット130側のフレーム131の切り欠き131cに挿入されるようにして、マグネットユニット130に装着される。そして、この状態で、軸固定部材142の孔142fを介して、ネジ144が、ヨーク141の孔141dとマグネットユニット130のネジ穴131dに螺着される。これにより、図3に示す構成体が、マグネットユニット130に固着される。こうして、図3(b)に示すように、ミラーアクチュエータ100の組み立てが完了する。
【0028】
図3(b)に示す組み立て状態において、パンフレーム121が支軸122を軸として回動すると、これに伴ってミラー150が回動する。また、チルトフレーム112が支軸111を軸として回動すると、これに伴ってパンユニット120が回動し、パンユニット120と一体的にミラー150が回動する。このように、ミラー150は、互いに直交する支軸111によって回動可能に支持され、チルトコイル113およびパンコイル123への通電によって、支軸111の周りに回動する。このとき、パンユニット120に装着された透過板200も、ミラー150の回動に伴って回動する。
【0029】
なお、バランサ122aは、図2(b)に示す構成体が、支軸111を軸として回動するとき、かかる回動がバランス良く行われるよう調整するためのものである。かかる回動のバランスは、バランサ122aの重さによって調整される。この他、バランサ122aが上下に変位可能であれば、下方向の位置を微調整することにより、回動のバランスを調
整可能である。
【0030】
図3(b)に示すアセンブル状態において、8個のチルトマグネット132は、チルトコイル113に電流を印加することにより、チルトフレーム112に支軸111を軸とする回動力が生じるよう、配置および極性が調整されている。したがって、チルトコイル113に電流を印加すると、チルトコイル113に生じる電磁駆動力によって、チルトフレーム112が、支軸111を軸として回動し、これに伴って、ミラー150と透過板200が回動する。
【0031】
また、図3(b)に示すアセンブル状態において、2個のパンマグネット133は、パンコイル123に電流を印加することにより、パンフレーム121に支軸122を軸とする回動力が生じるよう、配置および極性が調整されている。したがって、パンコイル123に電流を印加すると、パンコイル123に生じる電磁駆動力によって、パンフレーム121が、支軸122を軸として回動し、これに伴って、ミラー150と透過板200が回動する。
【0032】
なお、図2に示す構成体は、支軸122の周りにおける重量バランスが取れるように各部の配置が調整されている。よって、パンコイル123に電流を印加してパンフレーム121を回動させた後、パンコイル123への電流印加を停止すると、パンフレーム121は、電流印加停止時の位置から慣性によりやや回転した位置に停止する。また、図2に示す構成体は、バランサ122aによって、支軸111の周りにおける重量バランスが取れるように各部の配置が調整されている。よって、チルトコイル113に電流を印加してチルトフレーム112とパンフレーム121を一体的に回動させた後、チルトコイル113への電流印加を停止すると、チルトフレーム112とパンフレーム121は、電流印加停止時の位置から慣性によりやや回転した位置に停止する。
【0033】
このように、本実施の形態に係るミラーアクチュエータ100では、チルトコイル113とパンコイル123に電流を印加するとミラー150が回動し、電流の印加を停止すると、略その位置に、ミラー150が停止する。
【0034】
ところで、本実施の形態に係るミラーアクチュエータ100では、支軸111が、左右方向に移動可能となっている。これにより、温度変化によってヨーク141が変形し、ヨーク141の2つの壁部141aの傾き(開き具合)が変化しても、支軸111に対し左右方向に不所望な力が掛かることが防止され、支軸111を円滑に回動させることができる。同様の観点から、支軸122も上下方向に移動可能となっている。ミラーアクチュエータ100が車載用のレーザレーダに搭載される場合には、特に、温度変化が大きいため、このように支軸111を移動可能にしておく必要がある。
【0035】
しかし、このように支軸111が左右に移動可能になっていると、ミラー150の駆動時に、ミラー150の左右方向(パン方向)の回動に伴って、支軸111の端部が左右方向に移動して、軸受け116a、116bに衝突するとの問題が生じる。ミラーアクチュエータ100がレーザレーダに搭載される場合、ミラー150が高速かつ短周期でパン方向に回動する。このため、ミラー150の駆動時には、短周期で軸受け116a、116bに対する支軸111の衝突が繰り返される。かかる衝突が繰り返されると、騒音が発生し、また、ミラーアクチュエータ100の特性に劣化が生じる惧れもある。なお、支軸122は、重力により下方向の力を受けるため、このような衝突は起こりにくい。
【0036】
そこで、本実施の形態では、2つのEリング117a、117bのうち、右側のEリング117aのみを磁性材料により形成し、左側のEリング117bは、非磁性材料により形成されている。このように右側のEリング117aのみを磁性材料により形成すると、
このEリング117aとマグネットユニット130の右側のチルトマグネット132との間に磁力が生じ、この磁力により、支軸111が右方向に付勢される。この付勢によって、ポリスライダーワッシャ118がEリング117aに押されて、軸受け116aに押し付けられる。これにより、ミラー150がパン方向に回動された際の、支軸111の左右の移動が抑制される。
【0037】
なお、Eリング117aと軸受け116aとの間には、3枚のポリスライダーワッシャ118が配されているため、このように支軸111が付勢されても、支軸111は円滑に回動できる。よって、ミラー150の上下方向(チルト方向)の回動は、良好に行われ得る。
【0038】
図4および図5は、上記ミラーアクチュエータ100が配されたビーム照射装置の構成を示す図である。
【0039】
図4は、走査光学系を示す図である。図中、500は、ベースである。同図では、ベース500の上面が水平になっている。ベース500には、ミラーアクチュエータ100の設置位置に開口503aが形成され、この開口503aに透過板200が挿入されるようにして、ミラーアクチュエータ100がベース500上に装着されている。ミラーアクチュエータ100は、図1に示す上下方向が、図4に示す鉛直方向となるように、ベース500に装着される。
【0040】
ベース500の上面には、レーザ光源401と、ビーム整形用のレンズ402、403が配置されている。レーザ光源401は、ベース500の上面に配されたレーザ光源用の基板401aに装着されている。
【0041】
レーザ光源401から出射されたレーザ光(以下、「走査用レーザ光」という)は、レンズ402、403によって、それぞれ、水平方向および鉛直方向の収束作用を受ける。レンズ402、403は、目標領域(たとえば、ビーム照射装置のビーム出射口から前方100m程度の位置に設定される)におけるビーム形状が、所定の大きさ(たとえば、縦2m、横1m程度の大きさ)になるよう設計されている。
【0042】
レンズ402、403を透過した走査用レーザ光は、ミラーアクチュエータ100のミラー150に入射し、ミラー150によって目標領域に向かって反射される。ミラーアクチュエータ100によってミラー150が二軸駆動されることにより、走査用レーザ光が目標領域内においてスキャンされる。
【0043】
ミラーアクチュエータ100は、ミラー150が中立位置にあるときに、レンズ403からの走査用レーザ光がミラー150のミラー面に対し水平方向において45度の入射角で入射するよう配置されている。なお、「中立位置」とは、ミラー面が鉛直方向に対し平行で、且つ、走査用レーザ光がミラー面に対し水平方向において45度の入射角で入射するときのミラー150の位置をいう。
【0044】
ベース500の下面には、回路基板300が配されている。さらに、ベース500の裏面と側面にも回路基板301、302が配されている。
【0045】
図5(a)は、ベース500を裏面側から見たときの一部平面図である。同図(a)には、ベース500の裏側に配されたサーボ光学系とその周辺の構成が示されている。
【0046】
図示の如く、ベース500の裏側周縁には、壁501、502が形成されており、壁501、502よりも中央側は、壁501、502よりも一段低い平面503となっている
。壁501には、半導体レーザ310を装着するための開口が形成されている。この開口に半導体レーザ310を挿入するようにして、半導体レーザ310が装着された回路基板301が壁501の外側面に装着されている。他方、壁502の近傍には、PSD315が装着された回路基板302が装着されている。
【0047】
ベース500裏側の平面503には、取り付け具314によって集光レンズ311と、アパーチャ312と、ND(ニュートラルデンシティ)フィルタ313が装着されている。さらに、この平面503には上記開口503aが形成されており、この開口503aを介して、ミラーアクチュエータ100に装着された透過板200がベース500の裏側に突出している。ここで、透過板200は、ミラーアクチュエータ100のミラー150が中立位置にあるときに、2つの平面が、鉛直方向に平行で、且つ、半導体レーザ310の出射光軸に対し45度傾くように位置づけられる。
【0048】
半導体レーザ310から出射されたレーザ光(以下、「サーボ光」という)は、集光レンズ311を透過した後、アパーチャ312によってビーム径が絞られ、さらにNDフィルタ313によって減光される。その後、サーボ光は、透過板200に入射され、透過板200によって屈折作用を受ける。しかる後、透過板200を透過したサーボ光は、PSD315によって受光され、PSD315から、受光位置に応じた位置検出信号が出力される。
【0049】
図5(b)は、透過板200の回動位置とサーボ光の光路との関係を模式的に示す図である。なお、同図では、便宜上、図5(a)の透過板200、半導体レーザ310、PSD315のみが図示されている。
【0050】
サーボ光は、レーザ光軸に対し傾いて配置された透過板200によって屈折され、PSD315に受光される。ここで、透過板200が破線の位置から破線矢印のように回動すると、サーボ光の光路が図中の点線から実線のように変化し、PSD315上におけるサーボ光の受光位置が変化する。これにより、PSD315にて検出されるサーボ光の受光位置によって、透過板200の回動位置を検出することができる。透過板200の回動位置は、目標領域における走査用レーザ光の走査位置に対応する。よって、PSD315からの信号をもとに目標領域における走査用レーザ光の走査位置を検出することができる。
【0051】
図6(a)は、PSD315の構成を示す図(側断面図)、図6(b)はPSD315の受光面を示す図である。
【0052】
図6(a)を参照して、PSD315は、N型高抵抗シリコン基板の表面に、受光面と抵抗層を兼ねたP型抵抗層を形成した構造となっている。抵抗層表面には、同図(b)の横方向における光電流を出力するための電極X1、X2と、縦方向における光電流を出力するための電極Y1、Y2(同図(a)では図示省略)が形成されている。また、裏面側には共通電極が形成されている。
【0053】
受光面にレーザ光が照射されると、照射位置に光量に比例した電荷が発生する。この電荷は光電流として抵抗層に到達し、各電極までの距離に逆比例して分割されて、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される。ここで、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流は、レーザ光の照射位置から各電極までの距離に逆比例して分割された大きさを有している。よって、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流値をもとに、受光面上における光の照射位置を検出することができる。
【0054】
たとえば、図7の位置Pにサーボ光が照射されたとする。この場合、受光面のセンターを基準点とする位置Pの座標(x,y)は、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される
電流量をそれぞれIx1、Ix2、Iy1、Iy2、X方向およびY方向における電極間の距離をLx、Lyとすると、たとえば、以下の式によって算出される。
【0055】
【数1】

図8は、ミラーの駆動状態と目標領域における走査用レーザ光の軌道およびPSD上におけるサーボ光の軌道との関係を模式的に示す図である。なお、本実施の形態では、走査用レーザ光の走査は、目標領域において水平方向に伸びた3つの走査軌道に沿って行われる。以下では、支軸111を軸とするミラー150の回動方向をPan方向といい、支軸122を軸とするミラー150の回動方向をTilt方向という。
【0056】
各図の中段のラインは、ミラー150を、中立位置から水平方向にのみ回動させた場合を示している。また、図中の破線は、Pan方向のミラーの回動位置が中立位置と同じ位置にある場合を示している。各図の中段のラインよりも上の領域では、ミラー150が水平方向よりも上を向いており、中段のラインよりも下の領域では、ミラー150が水平方向よりも下を向いている。
【0057】
たとえば、同図(b−1)のように、Tilt方向の角度がLb1、Lb2、Lb3に固定された状態で、ミラー150をPan方向に回動させると、目標領域における走査用レーザ光の軌道(以下、「走査軌道」という)は、角度Lb1〜Lb3に対応して、同図(a−1)中のLa1〜La3のようになる。また、このようにミラー150が駆動されると、PSD315の受光面上におけるサーボ光の軌道(以下、「照射軌道」という)は、角度Lb1〜Lb3に対応して、同図(c−1)中のLc1〜Lc3のようになる。
【0058】
同図(a−1)のように走査軌道La1、La3が曲線状になると、目標領域内における障害物の検出精度が低下する惧れがある。目標領域における走査軌道La1〜La3は、同図(a−2)に示すように、それぞれ、水平方向に直線状になるのが望ましい。
【0059】
このように走査軌道La1〜La3を水平方向に直線状とするには、ミラー150を、同図(b−2)に示すように駆動する必要がある。すなわち、Pan方向の回動に伴い、ミラー150を、Tilt方向にも駆動する必要がある。この場合、PSD315上における照射軌道Lc1〜Lc3は、同図(c−2)のようになる。
【0060】
換言すれば、PSD315上におけるサーボ光の照射位置が、同図(c−2)に示す照射軌道Lc1〜Lc3を追従するように、ミラーアクチュエータ100を制御することで、目標領域における走査軌道La1〜La3は、同図(a−2)に示す如く水平方向に直線状となる。
【0061】
本実施の形態では、PSD315上におけるサーボ光の照射位置が、同図(c−2)に示す照射軌道Lc1〜Lc3を追従するように、ミラーアクチュエータ100が制御される。この制御によって、ミラー150は、同図(b−2)のように、Pan方向とTilt方向に駆動される。
【0062】
図9は、本実施の形態に係るビーム照射装置の回路構成を示す図である。なお、同図には、便宜上、図5(a)に示すサーボ光学系1の主要な構成が示されている。
【0063】
図示の如く、ビーム照射装置は、I/V変換回路2〜5と、位置信号生成回路6と、マイコン7と、アクチュエータ駆動回路8と、サーボレーザ駆動回路9と、走査レーザ駆動回路10、スイッチング回路11とを備えている。
【0064】
サーボ光学系1において、半導体レーザ310から出射されたサーボ光は、上記の如く、透過板200によって屈折された後、PSD315の受光面に入射される。これにより、サーボ光の照射位置に応じた電流信号Ix1、Ix2、Iy1、Iy2(図5中の電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流信号)がPSD315から出力され、それぞれ、I/V変換回路2〜5に入力される。
【0065】
I/V変換回路2〜5は、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流信号Ix1、Ix2、Iy1、Iy2を電圧信号に変換し、位置信号生成回路6に出力する。位置信号生成回路6は、I/V変換回路2〜5から出力される電圧信号をデジタル信号に変換し、さらに、図5を参照して説明した式(1)、(2)に基づき、X軸およびY軸方向の照射位置を示す信号を生成する。かかる照射位置信号は、マイコン7に出力される。
【0066】
マイコン7は、位置信号生成回路6から出力される信号に基づき、目標領域における走査用レーザ光の走査位置を検出し、ミラーアクチュエータ100の駆動制御や、半導体レーザ310とレーザ光源401の駆動制御等を実行する。
【0067】
すなわち、マイコン7は、走査位置が所定の位置に到達したタイミングで、パルス駆動信号を、走査レーザ駆動回路10に出力する。これにより、レーザ光源401がパルス発光され、目標領域にレーザ光が照射される。
【0068】
また、マイコン7は、走査位置を所期の軌道に追従させるためのサーボ信号(Pan方向およびTilt方向の駆動信号)を、アクチュエータ駆動回路8に出力する。これを受けてアクチュエータ駆動回路8はミラーアクチュエータ100を駆動し、走査用レーザ光が所期の軌道に追従するよう目標領域を走査する。さらに、マイコン7は、サーボレーザ駆動回路9に制御信号を出力する。これにより、サーボ光学系1内の半導体レーザ310が、一定パワーレベルにて発光される。
【0069】
本実施の形態では、一定周期T毎に、ミラーアクチュエータ100の制御が行われる。マイコン7には、各制御タイミングにおけるPSD315上の理想の照射位置(以下、「目標照射位置」という)が保持されている。かかる目標照射位置は、走査用レーザ光が適正な走査軌道上に沿って水平方向に走査されるときのサーボ光の照射軌道(図8(c−2)参照)上に位置している。マイコン7は、かかる照射軌道に沿ってサーボ光の照射位置が進むよう、ミラーアクチュエータ100を駆動する。
【0070】
図10は、ミラーアクチュエータ100の制御方法を説明する図である。図中、Pn〜Pn+2は、それぞれ、制御タイミングtn〜tn+2における目標照射位置であり、Qn〜Qn+2は、それぞれ、制御タイミングtn〜tn+2におけるサーボ光の実際の照射位置である。
【0071】
ある制御タイミングtnにおけるサーボ光の実際の照射位置Qnが、目標照射位置PnからX軸方向にXn、Y軸方向にYnずれていると、マイコン7は、ずれ量Xn、Ynに基づき、次の制御タイミングにおいて照射位置Qn+1を目標照射位置Pn+1により接近させるためのPan方向およびTilt方向の制御信号を生成し、生成した制御信号をアクチュエータ駆動回路8に出力する。同様に、制御タイミングtn+1において、マイコン7は、ずれ量Xn+1、Yn+1に基づいてPan方向およびTilt方向の制御信号を生成し、生成した制御信号をアクチュエータ駆動回路8に出力する。
【0072】
このように、マイコン7は、制御タイミングごとに、Pan方向およびTilt方向の制御信号を生成して、アクチュエータ駆動回路8に出力する。アクチュエータ駆動回路8は、入力されたPan方向およびTilt方向の制御信号に応じて、ミラー150を、Pan方向およびTilt方向に駆動する。これにより、ミラー150は、図8(b−2)のように駆動される。
【0073】
なお、本実施の形態では、図9に示す如く、アクチュエータ駆動回路8からの駆動信号が、スイッチング回路11を介して、ミラーアクチュエータ100に供給される。スイッチング回路11は、マイコン7からの制御信号に応じて、アクチュエータ駆動回路8からの駆動信号をミラーアクチュエータ100に供給し、あるいは、ミラーアクチュエータ100に対する駆動信号の供給を遮断する。
【0074】
図11は、ミラーアクチュエータ100の駆動制御に関するマイコン7内の構成を示す図である。
【0075】
図示の如く、マイコン7は、状態管理部21と、目標値生成回路22と、バッファ23、24と、減算回路25、26と、PID制御回路27、28と、比較回路29、30とを備える。
【0076】
状態管理部21は、タイマ21aと、ステップカウンタ21bを含んでいる。ステップカウンタ21bは、タイマ21aが100μsecを計測するごとに、目標値生成回路22に、制御タイミングを規定する信号を出力する。
【0077】
目標値生成回路22は、図12(a)に示す目標軌道テーブルを有している。かかる目標軌道テーブルには、各制御タイミングにおけるX軸方向およびY軸方向の目標照射位置が格納されている。目標軌道テーブルは、図8(c−2)の3つの目標軌道Lc1〜Lc3について準備されている。目標値生成回路22は、ステップカウンタ21bから指定された各制御タイミングにおけるX軸方向およびY軸方向の目標照射位置を、それぞれ、目標軌道テーブルから読み出してバッファ23、24に出力する。
【0078】
バッファ23、24は、それぞれ、目標値生成回路22から出力されるX軸方向およびY軸方向の目標照射位置を格納する。減算回路25は、バッファ23から読み出したX軸方向の目標照射位置から、位置信号生成回路6から出力されるX軸方向の照射位置を減算した差分信号を、PID制御回路27と比較回路29に出力する。減算回路26は、バッファ24から読み出したY軸方向の目標照射位置から、位置信号生成回路6から出力されるY軸方向の照射位置を減算した差分信号を、PID制御回路28と比較回路30に出力する。
【0079】
PID制御回路27は、減算回路25から出力される差分信号に基づいて、PID制御の演算により、ミラーアクチュエータ100をPan方向に制御するための制御信号を生成する。かかるPan方向の制御信号は、アクチュエータ駆動回路8に出力される。PI
D制御回路28は、減算回路26から出力される差分信号に基づいて、PID制御の演算により、ミラーアクチュエータ100をTilt方向に制御するための制御信号を生成する。
【0080】
PID制御回路27、28からは、一定周期のパルス信号が出力される。PID制御回路27、28は、減算回路25、26から入力される差分信号に基づいて、パルス信号のデューティ比を調整する。かかる調整は、PID制御によるフィードバック制御により行われる。アクチュエータ駆動回路8は、入力されたPan方向およびTilt方向のパルス信号(制御信号)をそれぞれ積分してアナログの駆動信号を生成し、生成したPan方向およびTilt方向の駆動信号(電流信号)を、それぞれ、ミラーアクチュエータ100のパンコイル123およびチルトコイル113に供給する。これにより、図10を参照して説明したように、PSD315のサーボ光の照射位置が目標軌道を追従するように、ミラーアクチュエータ100が制御される。
【0081】
比較回路29は、減算回路25からの差分信号と閾値Vshxとを比較し、この差分信号の絶対値が閾値Vshxを超えるときに、エラー信号をスイッチング回路11に出力する。また、比較回路29は、減算回路25からの差分信号の絶対値が閾値Vshxを超えた後、再度、この差分信号の絶対値が閾値Vshx以下になったときに、PID制御回路27にリセット信号を出力する。このリセット信号により、PID制御回路27は、PID制御における積分項と微分項がクリアされる。
【0082】
比較回路30は、減算回路26からの差分信号と閾値Vshyとを比較し、この差分信号の絶対値が閾値Vshyを超えるときに、エラー信号をスイッチング回路11に出力する。また、比較回路30は、減算回路26からの差分信号の絶対値が閾値Vshyを超えた後、再度、この差分信号の絶対値が閾値Vshy以下になったときに、PID制御回路28にリセット信号を出力する。このリセット信号により、PID制御回路28は、PID制御における積分項と微分項がクリア(初期化)される。
【0083】
なお、比較回路29、30からスイッチング回路11にエラー信号が出力されると、スイッチング回路11は、ミラーアクチュエータ100に対するアクチュエータ駆動回路8からの駆動信号の供給を遮断する。ここで、比較回路29のみからエラー信号が入力された場合には、パンコイル123に対する駆動信号の供給が遮断され、チルトコイル113に対する駆動信号の供給は継続される。また、比較回路30のみからエラー信号が入力された場合には、チルトコイル113に対する駆動信号の供給が遮断され、パンコイル123に対する駆動信号の供給は継続される。
【0084】
図12(b)は、サーボ動作時におけるサーボのON/OFF制御を示すフローチャートである。
【0085】
制御タイミングになると(S11:YES)、減算回路25、26により差分信号が取得され(S12)、取得された差分信号の絶対値が閾値VShx、Vshyを超えたかが、比較回路29、30により判別される(S13)。差分信号の絶対値が閾値VShx、Vshyを超えると(S13:YES)、比較回路29、30からエラー信号が出力され、スイッチング回路11により、対応するコイルに対する駆動信号の供給が遮断される。これにより、サーボがOFFされる(S14)。かかるサーボのOFFは、対応する差分信号の絶対値が閾値(VShxまたはVshy)以下となるまで継続される(S14、S15)。
【0086】
その後、対応する差分信号の絶対値が閾値(VShxまたはVshy)以下になると(S15:YES)、PID制御回路28または30にリセット信号が出力され、対応する
PID制御における積分項と微分項がクリア(初期化)される(S16)。同時に、比較回路29または30からスイッチング回路11に対するエラー信号の出力が停止され、対応するコイルに対する駆動信号の供給が再開される。こうしてサーボが再びONされる(S17)。
【0087】
図13は、スイッチング回路11によるサーボのON/OFF制御の一例を示す図である。なお、同図には、Pan方向におけるサーボのON/OFF制御が例示されている。
【0088】
同図(a)は、減算回路25から出力される差分信号の絶対値が示されている。同図中の各プロットは、各制御タイミングにおける差分信号の絶対値に対応している。同図(b)は、スイッチング回路11によるPan方向のサーボのON/OFF制御を示す。同図中、各プロットは、各制御タイミングにおいてPan方向の駆動信号がパンコイル123に供給されているか否かを示している。プロットがONのレベルにあると、Pan方向の駆動信号がパンコイル123に供給され、プロットがOFFのレベルにあると、パンコイル123に対するPan方向の駆動信号の供給が遮断されている。
【0089】
同図の例では、期間TEにおいて、差分信号の絶対値が高くなっている。このように差分信号の絶対値が高くなる原因として、PSD315に対する迷光の入射や、電気的なノイズ等が考えられる。この場合、差分信号Saが閾値Vshxを超える。よって、このタイミングで、スイッチング回路11にエラー信号が入力され、パンコイル123に対する駆動信号の供給が遮断される。これにより、Pan方向のサーボがOFFとなる。Pan方向のサーボのOFFは、その後、5回の制御タイミングにおいて継続される。そして、差分信号Sbが閾値Vshx以下となるタイミングで、スイッチング回路11に対するエラー信号の入力が停止され、パンコイル123に対する駆動信号の供給が開始される。これにより、Pan方向のサーボがONとなる。Tilt方向のサーボのON/OFF制御も、かかるPan方向のサーボのON/OFF制御と同様に行われる。
【0090】
以上のように、本実施の形態では、減算回路25からの差分信号の絶対値が閾値Vshxを超えると、スイッチング回路11によって、Pan方向のサーボがオフとされる。これにより、Pan方向におけるミラー150の位置は、サーボがオフとされたタイミングの位置と略同じ位置に保持される。同様に、減算回路26からの差分信号の絶対値が閾値Vshyを超えると、スイッチング回路11によって、Tilt方向のサーボがオフとされる。これにより、Tilt方向におけるミラー150の位置は、サーボがオフとされたタイミングの位置と略同じ位置に保持される。
【0091】
したがって、本実施の形態によれば、PSD315に対する迷光の入射や、電気的なノイズ等によって、減算回路25、26からの差分信号が急峻に変化しても、これにサーボが追従することがない。よって、これらの現象が消滅した後に、ミラー150のサーボを、円滑かつ迅速に、復帰させることができる。
【0092】
なお、閾値Vshx、Vshyは、少なくとも、ミラー150に対するサーボが適正に行われているときの差分信号の変動レンジよりも大きく設定される。たとえば、図13(a)では、差分信号の変動レンジの2倍よりやや低く設定されている。この場合、変動レンジは、実験等によって確認される。そして、この変動レンジを若干上回る値に、閾値Vshx、Vshyが設定される。閾値Vshx、Vshyが変動レンジをどの程度上回れば良いかは、閾値Vshx、Vshyを変えながら測定を行うことによって、経験的に、設定される。
【0093】
なお、走査用レーザ光の照射位置を、図8(a−2)の走査軌道La1の終端から次の走査軌道La2の始端へと移すような場合にも、図10に示す目標軌道が設定され、上記
と同様、ミラーアクチュエータ100にサーボが掛けられる。この場合、この目標軌道に対する目標軌道テーブル(図12(a)参照)が、目標値生成回路22に保持される。
【0094】
ただし、この期間のサーボは、比較的ラフで良い。このため、この期間において、サーボ光をPSD315に照射しないときにPSD315から出力されるオフセット電流(暗電流)の計測が行われる場合がある。この場合、サーボ光が一時的に消灯され、この間、ミラーアクチュエータ100に対するサーボがOFFされる。暗電流の計測が終わると、再び、サーボ光が消灯されミラーアクチュエータ100に対するサーボがONされる。こうして、サーボが再開されたタイミングでは、その前にサーボのOFF期間があるために、減算回路25、26から出力される差分信号(絶対値)が、通常動作時に比べ大きくなる。したがって、閾値Vshx、Vshyは、この場合の差分信号の値よりも大きく設定する必要がある。
【0095】
このように暗電流の計測を行う場合、閾値Vshx、Vshyは、暗電流の計測後にサーボを復帰させる直前の制御タイミングにおける差分信号の値(絶対値)を若干上回る値に設定され得る。閾値Vshx、Vshyは、暗電流の計測を行う度に、設定し直しても良く、あるいは、実験等により想定され得る差分信号のレンジをもとに、固定的に設定されても良い。これらの場合も、閾値Vshx、Vshyがサーボ再開直前の差分信号の値(絶対値)をどの程度上回れば良いかは、閾値Vshx、Vshyを変えながら測定を行うことによって、経験的に、設定される。たとえば、閾値Vshx、Vshyは、かかる差分信号の値(絶対値)の1.2倍程度に設定される。
【0096】
なお、図8(a)に示す通常の走査(La1、La2、La3)と、走査位置を次の走査ラインの開始位置へと移動させる間の走査とにおいて、閾値Vshx、Vshyを変えても良い。たとえば、通常の走査時には、当該走査の際の差分信号の変動レンジに基づいて閾値Vshx、Vshyを設定し、走査位置を次の走査ラインの開始位置へと移動させる期間には、当該走査の際の差分信号の変動レンジ(暗電流の測定を行う場合は、サーボ再開直前の差分信号の値)に基づいて閾値Vshx、Vshyを設定するようにしても良い。
【0097】
以上、本発明の実施の形態によれば、差分信号が閾値Vshx、Vshyを超える期間はサーボがOFFとされるため、差分信号に迷光や電気的ノイズ等による外乱成分が含まれる場合にも、ミラー150が大きく振られることはない。よって、レーザ光を目標領域において適正に走査させることができる。
【0098】
また、本実施の形態によれば、ミラーアクチュエータ100に対するアクチュエータ駆動回路8からの駆動信号の入力が中止されると、入力中止前の位置に、ミラー150が保持されるため、上記のようにサーボをOFFとするのみで、ミラー150をサーボOFF時の位置の近傍に保持しておくことができる。よって、サーボを再開したときに、ミラー150の位置がサーボ再開時の制御タイミングの位置から大きくずれることがなく、よって、サーボ再開時に、円滑かつ迅速に、サーボを復帰させることができる。
【0099】
さらに、本実施の形態によれば、サーボ再開時の制御が、PID制御の積分項と微分項を初期化した状態で実行されるため、積分項と微分項に迷光や電気的ノイズ等による外乱成分が含まれた状態でPID制御が再開されるのを回避することができる。よって、サーボ再開後のサーボ動作を適正かつ精度良く行うことができる。
【0100】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0101】
たとえば、上記実施の形態では、差分信号の値が閾値Vshx、Vshyを超える期間において、アクチュエータ駆動回路8からの駆動信号を、スイッチング回路11により遮断するようにしたが、スイッチング回路11を設けずに、図11のPID制御回路27または28から出力されるパルス信号のデューティ比を、この期間において、50%になるように制御しても良い。こうすると、アクチュエータ駆動回路8から出力されるPan方向またはチルト方向の駆動信号がゼロとなるため、ミラーアクチュエータ100は対応する方向に駆動されず、上記実施の形態と同様の動作が実現される。
【0102】
また、上記実施の形態では、差分信号の絶対値が閾値Vshx、Vshyを超える場合にサーボをOFFにするようにしたが、たとえば、差分信号の絶対値の急激な変化点を検出することに応じて、サーボをOFFするようにしても良い。たとえば、制御タイミング毎に、差分信号の絶対値の傾きを求め、この傾きが、正の方向において、所定の値を超える(差分信号の絶対値が急激に大きくなる)とサーボをOFFし、その後、この傾きが、負の方向において、所定の値を超える(差分信号の絶対値が急激に小さくなる)とサーボを再びONにする。ここで、傾きは、たとえば、傾きを求める制御タイミングの差分信号の絶対値から、それより一つ前の制御タイミングにおける差分信号の絶対値を減算したときの差分値とされる。このように制御しても、上記実施の形態のように閾値Vshx、Vshyをもとに制御する場合と略同様の効果が実現される。
【0103】
また、上記実施の形態では、チルトコイル113とパンコイル123に対する通電を停止させるとミラー150が通電停止時の位置に保持されるように、ミラーアクチュエータ100が構成されたが、たとえば、チルトコイル113とパンコイル123に対する通電を停止させるとミラー150が、バネ等の付勢によって原点位置に復帰するようミラーアクチュエータ100が構成される場合にも、本発明を適用可能である。この場合、上記差分信号に基づくサーボはOFFとされ、サーボOFF期間には、対応するコイルに、サーボがOFFとされる直前の駆動信号が印加され続ける。こうすると、ミラー150を、サーボがOFFされる直前の位置に保持することができ、再びサーボがONされたときに、迅速かつ円滑に、サーボを復帰させることができる。
【0104】
また、上記実施の形態では、サーボ光の光源として半導体レーザを用いたが、これに替えて、LED(Light Emitting Diode)を用いることもできる。
【0105】
また、上記実施の形態では、透過板200を用いてサーボ光の進行方向を変化させるようにしたが、透過板200に替えてサーボ用のミラーをミラーアクチュエータ100のパンフレーム121に装着し、かかるサーボ用のミラーによってサーボ光を反射させることによりサーボ光の進行方向を変化させるようにしても良い。この他、パンフレーム121にサーボ光を発光する光源を配置するようにしても良い。
【0106】
なお、上記実施の形態では、サーボ光を受光する光検出器としてPSD315を用いたが、これに替えて、4分割センサを用いることもできる。
【0107】
図14は、サーボ光を受光する光検出器として4分割センサ320を用いる場合の構成を示す図である。サーボ光は、ミラー150が中立位置にあるときに、4分割センサ320の中央位置に照射される。サーボ光が4分割センサ320に照射されると、各センサは、図示の如く、電流信号S1、S2、S3、S4を出力する。
【0108】
電流信号S1〜S4は、それぞれ、I/V変換回路2〜5に出力された後、上記実施の形態と同様の信号処理がなされる。すなわち、電流信号S1〜S4は、まず、I/V変換回路2〜5によって電圧信号に変換され、電圧信号Sv1、Sv2、Sv3、Sv4となる。続いて、位置信号生成回路6は、電圧信号Sv1〜Sv4に基づき、サーボ光のX方
向の入射位置xとY方向の入射位置yを、たとえば次式によって求める。
【0109】
【数2】

【0110】
こうして得られたサーボ光の入射位置を示す位置信号が、マイコン7に出力される。マイコン7は、かかる位置信号に基づき、後段のアクチュエータ駆動回路8と、サーボレーザ駆動回路9と、走査レーザ駆動回路10を制御する。
【0111】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 … サーボ光学系
7 … マイコン(制御回路)
8 … アクチュエータ駆動回路(制御回路)
11 … スイッチング回路(制御回路)
100 … ミラーアクチュエータ(アクチュエータ)
110 … チルトユニット(支持部)
120 … パンユニット(支持部)
122a … バランサ
130 … マグネットユニット(固定部)
140 … ヨークユニット(固定部)
150 … ミラー
200 … 透過板(サーボ光学系)
310 … 半導体レーザ(サーボ光学系)
315 … PSD(光検出器)
320 … 4分割センサ(光検出器)
401 … レーザ光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ光源と、
目標領域において前記レーザ光を走査させるアクチュエータと、
前記目標領域における前記レーザ光の走査に伴ってサーボ光の進行方向を変化させるサーボ光学系と、
前記サーボ光を受光して受光位置に応じた検出信号を出力する光検出器と、
前記検出信号に基づいて取得された前記サーボ光の前記受光位置と、理想の受光位置との差分に基づいて、前記レーザ光が前記目標領域上の目標軌道を追従するよう、前記アクチュエータを制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記差分に外乱成分が含まれるエラー期間を検出し、検出した前記エラー期間において、前記差分に応じて前記レーザ光を前記目標軌道に追従させる制御を停止させる、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載のビーム照射装置において、
前記制御回路は、前記差分と閾値とを比較して前記エラー期間を検出する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のビーム照射装置において、
前記アクチュエータは、前記制御回路からの制御信号の入力が中止されると、中止前の位置に、前記アクチュエータの被駆動部の位置が保持される構成を備え、
前記制御回路は、前記エラー期間において、前記アクチュエータに対する前記制御信号の入力を中止する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項4】
請求項3に記載のビーム照射装置において、
前記アクチュエータは、前記レーザ光が入射されるミラーと、前記ミラーを第1の軸の周りに回動可能に支持する支持部と、前記支持部を前記第1の軸に垂直な第2の軸の周りに回動可能に支持する固定部と、前記制御回路からの制御信号の入力が中止されると、中止前の位置に、前記ミラーの位置を保持するためのバランサとを備える、
ことを特徴とするビーム照射装置
【請求項5】
請求項1ないし4に記載のビーム照射装置において、
前記制御回路は、前記エラー期間が終了すると、前記差分に応じて前記レーザ光を前記目標軌道に追従させる制御を再開させる、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項6】
請求項5に記載のビーム照射装置において、
前記制御回路は、前記差分を用いたPID制御により前記レーザ光を前記目標軌道に追従させる制御を行い、前記エラー期間終了後の制御を、前記PID制御の積分項と微分項を初期化した状態で実行する、
ことを特徴とするビーム照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−247619(P2011−247619A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118215(P2010−118215)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】