説明

ピッキング作業支援装置

【課題】貯蔵箱の配置を変更しても、検出器の位置を変更するセッティング作業をしなくても済むピッキング作業支援装置を、また、貯蔵箱の数が増大しても、検出器の増設をしなくても済むピッキング作業支援装置を提供することである。
【解決手段】一群の収納ボックスと、光学式センサと、コンピュータとを具備するピッキング作業支援装置によって解決することができる。一群の収納ボックスは、それぞれピッキング対象物を収納する。光学式センサは、一群の収納ボックスの手前側に、パネル状の監視範囲を形成すると共に、ピッキング作業中に、監視範囲を通過する監視対象物を検出すると、位置情報を含む検出制御信号を送出する。コンピュータは、検出制御信号を受信し、監視対象物が、正しい収納ボックスの位置に対応する位置を通過したか否かを判定し、正しい収納ボックスの位置に対応する位置を通過していなかったときには、その旨を通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピッキング作業支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場の組立ラインや、物流センターの仕分け段階で行われているピッキング作業を支援する装置が知られる。ピッキング作業支援装置は、誰でも簡単に、素早く、かつ正確なピッキング作業が行えるように、ピッキング作業を支援する。
【0003】
特開2006−321590号公報(特許文献1参照)には、取出口にある遮蔽物の横方向の位置を示す信号と、遮蔽物の縦方向の位置を示す信号とを用いて、作業者が正しい取出口からピッキングをしたか否かを検出するピッキング支援装置が記載されている。作業者が間違った取出口からピッキングをしようとすると、警告を出力する警告部を作動させ、作業者に注意を喚起することが可能である。
【0004】
特許文献1記載のピッキング支援装置では、貯蔵箱が横方向に並ぶ行の数だけの検出器と、貯蔵箱が縦方向に並ぶ列の数だけの検出器とを用いているので、貯蔵箱の数が増大すると、多数の検出器を取り付けなければならなくなる。また、貯蔵箱の配置を変更すると、検出器の位置を変更するセッティング作業をしなければならなくなる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−321590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、貯蔵箱の配置を変更しても、検出器の位置を変更するセッティング作業をしなくても済むピッキング作業支援装置を提供することである。本発明の別の課題は、貯蔵箱の数が増大しても、検出器の増設をしなくても済むピッキング作業支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、[発明を実施するための最良の形態]で使用される番号・符号を用いて、[課題を解決するための手段]を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための最良の形態]との対応関係を明らかにするために括弧付きで付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0008】
本発明の一つのアスペクトによるピッキング作業支援装置は、一群の収納ボックス(34)と、光学式センサ(12,14)と、コンピュータとを具備する。一群の収納ボックス(34)は、それぞれピッキング対象物を収納する。光学式センサ(12,14)は、一群の収納ボックス(34)の手前側に、パネル状の監視範囲(10)を形成すると共に、ピッキング作業中に、監視範囲(10)を通過する監視対象物(16)を検出すると、位置情報を含む検出制御信号を送出する。コンピュータは、検出制御信号を受信し、監視対象物(16)が、正しい収納ボックスの位置に対応する位置を通過したか否かを判定し、正しい収納ボックスの位置に対応する位置を通過していなかったときには、その旨を通知する。
【0009】
特許文献1のように、格子状の監視網を形成しようとすると、検出器の数が増大する恐れがあったが、本発明では、パネル状の監視範囲(10)を形成する光学式センサ(12,14)を利用しているので、少ないセンサ数で、監視対象物(16)を検出することが可能になる。また、そのような光学式センサ(12,14)としては、表示パネルに触れる指先を検出する光学式タッチパネル用センサを流用できるので、安価な量産品を適用可能である。タッチパネル用センサは、一般に、表示パネルにおける一つの辺の両端二箇所に二個取り付ければ、表示パネル全体をカバーできるので、本発明では、二つの光学式センサ(12,14)のみで、パネル状の監視範囲(10)を形成することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、貯蔵箱の配置を変更しても、検出器の位置を変更するセッティング作業をしなくても済むピッキング作業支援装置を提供することができる。また、貯蔵箱の数が増大しても、検出器の増設をしなくても済むピッキング作業支援装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態の一つについて、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施の形態におけるピッキング作業支援装置が設置されたピッキング作業現場の説明図である。図1において、作業現場には、四段のラックが設けられ、各段のラックには、組立部品を入れる収納ボックスが取り付けられている。図中、最上段のラックには六つの収納ボックスが、上から二段目のラックには六つの収納ボックスが、三段目のラックには五つの収納ボックスが、最下段のラックには三つの収納ボックスが取り付けられている。
【0012】
ラックの手前には、フレーム枠が組み立てられている。図示するように、このフレーム枠は、奥側のラックの段数に対応して、四段の枠組み構成になっている。ピッキング作業者は、フレーム枠の間に手を伸ばして、奥側の収納ボックスに入った組立部品を取り出すことになる。
【0013】
フレーム枠には、それぞれの収納ボックスに対応して、作業者の手が通過する間口が観念される。すなわち、水平パイプ22の下には六つの間口が、水平パイプ23の下には六つの間口が、水平パイプ24の下には五つの間口が、水平パイプ25の下には三つの間口が、それぞれ観念される。各間口に対応して、水平パイプ22〜25には、ランプ付きボタンが設けられている。ピッキング作業者は、後述するように、ランプが点灯したボタンの下の間口に手を伸ばして、対応する収納ボックスから、所望の組立部品をピッキングする。
【0014】
収納ボックス34の間口には、ランプ付きボタン30と共に、数量表示器32が設けられている。この数量表示器32には、収納ボックス34から取り出す組立部品の数量が表示される。ピッキング作業者は、ランプ付きボタン30が点灯していた場合、収納ボックス34から、数量表示器32に表示された数量だけ、組立部品をピッキングする。
【0015】
フレーム枠の最上段には、水平支持板21が組まれていて、この水平支持板21の裏側における両端二箇所には、赤外線センサ12,14が取り付けられている。赤外線センサ12,14は、パネル状の監視範囲10を形成し、この監視範囲10は、間口の全てをカバーしている。赤外線センサ12,14は、ピッキング作業者の手が監視範囲10を通過するのを監視可能である。
【0016】
赤外線センサ12,14は、タッチパネル用に開発されたものを流用している。タッチパネル用のセンサとしては、圧力式のものと、光学式のものとが良く知られるが、本実施の形態においては、光学式タッチパネル用センサを用いている。例えば、(公序良俗違反につき、不掲載)などを参照すれば分かるように、現在、様々な業者が、赤外線センサ12,14として適用可能な光学式タッチパネル用センサを市販している。
【0017】
図中、ディスプレイ40と、キーボード41と、マウス42とは、不図示の管理用コンピュータに接続されている。机上には、その他、ピッキング作業者によって利用されるバーコード44が印刷された作業シート45と、バーコードリーダ43とが置かれている。ピッキング作業者がバーコードリーダ43を用いてバーコード44を読み込むと、不図示の管理用コンピュータが、ピッキング作業支援動作を開始する。
【0018】
不図示の管理用コンピュータは、垂直パイプ10や水平パイプ22〜25を経由して、それぞれのランプ付きボタン、数量表示器と電気的に接続されている。また、警報音を鳴動し、警報ランプを点灯する警報器26と、二つの赤外線センサ12,14とも接続されている。すなわち、不図示の管理用コンピュータから、ランプ付きボタン、数量表示器、赤外線センサ12,14、警報器26へ、また、その逆方向に、制御信号を流すことが可能になっている。
【0019】
図1に示す作業現場は、一人のピッキング作業者が担当する一つのゾーンを想定してデモ用に仮設されたものである。実際の工場の組立ラインや、物流センターでは、多数のゾーンが並ぶので、多数のフレーム枠が組み立てられることになる。なお、管理用コンピュータは、多数のゾーンに共通に使用することができるので、一台あれば良い。
【0020】
図2は、本実施の形態におけるピッキング作業監視方法についての説明図である。光学式センサには、光の遮蔽を検出する遮蔽式の光学式センサと、光の反射を検出する反射式の光学式センサとがある。ピッキング作業者の負担を軽減するという観点からは、遮蔽式の光学式センサの利用が望ましいと言えるが、ピッキング作業支援装置の構造を簡素化するという観点からは、反射式の光学式センサの利用が望ましい。本実施の形態においては、反射式の光学式センサを利用している。
【0021】
図2に示すように、ピッキング作業者は、反射式の赤外線センサ12,14による検出を容易化する部材を装着してピッキング作業を行う。図2では、赤外線を反射する光学的反射テープ16を手首に巻くことにしているが、光学的反射テープ16に限定されず、任意の光学的反射部材を適用可能である。光学的反射部材は、自転車用、警備服用など、多数多様なものが市販されている。
【0022】
図2において、二つの赤外線センサ12,14のみで、パネル状の監視範囲10がカバーされている。タッチパネル用に開発された二つの赤外線センサ12,14は、監視範囲10に接触する位置に存在する監視対象物を検出することが可能である。図2では、光学的反射テープ16がその監視対象物になっている。なお、二つの赤外線センサ12,14は、監視対象物となる光学的反射テープ16の位置を測定することが可能である。
【0023】
光学的反射テープ16を身に着けたピッキング作業者が、いずれかの収納ボックスに手90を伸ばすと、光学的反射テープ16が監視範囲10を貫通する。このとき、二つの赤外線センサ12,14は、光学的反射テープ16を検出したことを示す制御信号、及び、光学的反射テープ16が検出された位置を示す制御信号を、管理用コンピュータへ送信する。管理用コンピュータは、赤外線センサ12,14から受信する制御信号に基づいて、光学的反射テープ16がどの収納ボックスの間口を通過したかを判定する。
【0024】
図3及び図4に、本実施の形態におけるピッキング作業支援装置の初期設定方法を説明する画面イメージを示す。ピッキング作業に先立って、作業管理者により、ピッキング作業支援装置の初期設定が行われる。まず、作業管理者は、図3に示すように、キーボード41やマウス42を操作して、ロケーション設定画面を開き、間口情報と、機器情報とを入力する。図3の間口アドレス・テーブルには、間口ごとに、アドレスと、組付けと、間口アドレスと、間口位置情報とが入力される。
【0025】
図3に示す間口アドレス・テーブルにおいて、アドレスは、管理用コンピュータが管理対象とするものに対して、一意に割り振られる論理アドレスである。組付けは、組立ライン等におけるゾーンごとに一意に割り振られる番号である。間口アドレスは、作業管理者が各間口を識別するために付与する番号である。左端、上端、幅、高さは、それぞれの間口の間口位置情報である。また、図3に示す機器アドレス・テーブルには、各機器を特定する情報が入力される。
【0026】
作業管理者は、図3の間口アドレス・テーブルに入力された各種情報を確認するプレビュー画面を、ディスプレイ40に表示することができる。図4は、図3の入力内容をプレビュー画面に表示したものである。図4の画面左側には、二十個の間口がイメージ的に表示されている。また、画面右上には、間口アドレス・テーブルにおける間口位置情報に基づいて、監視範囲10に関する情報が表示されている。
【0027】
作業管理者がテストのため、光学的反射テープ16を装着して18番の間口に手を伸ばすと、赤外線センサ12,14が、その光学的反射テープ16を検出する。このとき、図4に示すように、画面左側に手のアイコンが現れて、18番の間口がハイライト表示され、さらに、画面右下には、光学的反射テープ16の影情報(赤外線センサ12,14が検出した反射光の太さ(幅)のこと)、及び、光学的反射テープ16から反射される反射光の太さ(幅)の中心位置座標が表示される。
【0028】
作業管理者による初期設定が終わると、ピッキング作業者によるピッキング作業が行われる。まず、ピッキング作業者は、バーコードリーダ43で、バーコード44を読み込む。図5は、ピッキング作業が開始されたときに、管理用コンピュータのディスプレイ40に表示されるピッキング作業監視画面を示している。ピッキング作業者によるピッキング作業は、図5に示す作業手順テーブルの内容に従って行われる。
【0029】
図5の作業手順テーブルに示されるように、ピッキング作業者は、最初に、部品コード「0001」の組立部品をピッキングする。管理用コンピュータから、部品コード「0001」の組立部品を収納した収納ボックスの間口の上にあるランプ付きボタンを点灯する制御信号が出力される。この制御信号により、一つのランプ付きボタンが点灯する。ピッキング作業者は、ランプの点灯を視認して、その間口を通して、部品コード「0001」の組立部品をピッキングする。
【0030】
赤外線センサ12,14は、ピッキング作業者が装着した光学的反射テープ16の通過を監視している。ピッキング作業者が、部品コード「0001」の組立部品をピッキングするとき、赤外線センサ12,14は、光学的反射テープ16の通過を検出し、その検出内容を示す制御情報を管理用コンピュータに送出する。管理用コンピュータは、ピッキング作業者が正しい間口からピッキングを行ったか否かを判定し、誤った間口からピッキングを行っていた場合には、その旨を通知するために、誤り通知制御信号を送出する。警報器26は、この誤り通知制御信号を受信すると、警報音を鳴動し、警報ランプを点灯する。ピッキング作業者は、誤りに気付き、作業をやり直すことになる。
【0031】
ピッキング作業者は、部品コード「0001」の組立部品をピッキングし終えると、点灯しているランプ付きボタンを押下する。この押下を知らせる制御信号が、ランプ付きボタンから管理コンピュータへ送信される。この制御信号に応答して、管理用コンピュータは、部品コード「0001」の組立部品が正しくピッキングされたことを確認し、また、部品コード「0001」の組立部品を収納した収納ボックスの間口の上にあるランプ付きボタンを消灯し、部品コード「0002」の組立部品を収納した収納ボックスの間口の上にあるランプ付きボタンを点灯する制御信号を出力する。また、部品コード「0001」の組立部品について、図5に示す作業手順テーブルの状態フラグを、「未了」から「ピック」に更新する。
【0032】
最初のランプ付きボタンが消灯し、次のランプ付きボタンが点灯すると、ピッキング作業者は、部品コード「0002」の組立部品をピッキングする。以下同様に、部品コード「0005」の組立部品、部品コード「0006」の組立部品、・・・、部品コード「0022」の組立部品についてピッキング作業が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ピッキング作業現場の説明図
【図2】ピッキング作業監視方法についての説明図
【図3】初期設定時のロケーション設定画面を示す図
【図4】初期設定時のプレビュー画面を示す図
【図5】ピッキング作業時の監視画面を示す図
【符号の説明】
【0034】
10 監視範囲
12,14 赤外線センサ
16 光学的反射テープ
20,22〜25 パイプ
21 水平支持板
26 警報器
30 ランプ付きボタン
32 数量表示器
34 収納ボックス
40 ディスプレイ
41 キーボード
42 マウス
43 バーコードリーダ
44 バーコード
45 作業シート
90 手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピッキング対象物を収納する一群の収納ボックスと、
前記一群の収納ボックスの手前側に、パネル状の監視範囲を形成すると共に、ピッキング作業中に、前記監視範囲を通過する監視対象物を検出すると、位置情報を含む検出制御信号を送出する光学式センサと、
前記検出制御信号を受信し、前記監視対象物が、正しい収納ボックスの位置に対応する位置を通過したか否かを判定し、正しい収納ボックスの位置に対応する位置を通過していなかったときには、その旨を通知するコンピュータとを具備する
ピッキング作業支援装置。
【請求項2】
前記光学式センサは、
表示パネルに取り付けることにより、前記表示パネルに触れる指先を検出するタッチパネル用センサに流用できるものである
請求項1記載のピッキング作業支援装置。
【請求項3】
前記光学式センサは、
前記一群の収納ボックスの手前側の矩形領域における一つの辺の両端二箇所に二個取り付けることにより、前記パネル状の監視範囲を形成する
請求項2記載のピッキング作業支援装置。
【請求項4】
前記光学式センサは、
光の反射を検出する反射式の光学式センサであり、
前記監視対象物として、ピッキング作業者が装着する光学的反射部材を検出する
請求項3記載のピッキング作業支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−13223(P2010−13223A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174014(P2008−174014)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 博覧会名 :2008自動車部品生産システム展 主催者名 :株式会社日刊工業新聞社 開催日 :平成20年6月18日から同年6月21日まで
【公序良俗違反の表示】
特許法第64条第2項第4号の規定により明細書の一部または全部を不掲載とする。
【出願人】(594057842)株式会社アイオイ・システム (7)
【Fターム(参考)】