説明

ピラゾロン誘導体のエマルジョン製剤

ピラゾロン誘導体のエマルジョン製剤が提供される。そのエマルジョン製剤はピラゾロン誘導体活性剤、例えばエダラボン、油、水、および乳化剤を含有する。またそのエマルジョン製剤の製造や使用方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、35 U.S.C. §119(e)に従い、2007年11月21日付けで出願した米国仮特許出願番号60/989,707(これの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)の出願日を優先日とすることを請求するものである。
【0002】
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン(これはまたエダラボンとしても知られる)は、多種多様な治療用途で用いられる化合物である。エダラボンが用いられているいくつかの用途は、脳血管障害、例えば脳卒中、脳腫瘍、頭部外傷の急性期に観察される脳虚血、脳浮腫などの治療における用途である。
【0003】
(背景技術)
エダラボンを有効成分として含有する注射用製剤が開発された。エダラボンを含有する注射用製剤の一例は、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩およびピロ亜硫酸塩およびシステインから選択される少なくとも1種の化合物が入っているエダラボン水溶液であり、これが有するpHは2.5から6.0の範囲内である(特許文献1)。
【0004】
エダラボンの注射用製剤は、それを調製するには困難を伴う。エダラボンは水に難溶である(25℃において2 mg/mL)。その上、エダラボンが示す化学的安定性は、これの水溶液中濃度が高くなるにつれて低くなる。加うるに、エダラボンは水溶液中で酸化による分解を起こす傾向がある。そのような特性を考慮すると、エダラボンを薬剤として長期間安定にするのは困難であり、かつエダラボンが水中に飽和溶解度を超える量で入っている注射液を調製するのも困難である。
【0005】
エダラボンが高濃度で入っていて貯蔵安定性を示す注射用製剤を開発する必要性が存在する。
【0006】
(先行技術文献)
特許文献1: 特公平7-121861号公報
【0007】
(発明の概要)
ピラゾロン誘導体のエマルジョン製剤を提供する。このエマルジョン製剤はピラゾロン誘導体、例えばエダラボン、油、水および乳化剤を含有する。また、この主題エマルジョン製剤の製造方法および使用方法も提供する。
【0008】
(定義)
化合物、前記化合物を含有する医薬組成物および前記化合物および組成物の使用方法を記述するとき、特に明記しない限り、下記の用語に下記の意味を持たせる。また、以下に定義する部分のいずれも様々な置換基で置換されていてもよくかつ個々の定義はそのような置換されている部分をそれらの範囲内に包含することを意図することも理解されるべきである。
【0009】
“アルキル”は、炭素原子数が10以下または炭素原子数が9以下または炭素原子数が8以下または炭素原子数が3以下の一価飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。その炭化水素鎖は直鎖または分枝のいずれであってもよい。この用語の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、t-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、t-オクチルなどの如き基である。用語“アルキル”にはまた本明細書で定義する如き“シクロアルキル”も含まれる。
【0010】
“シクロアルキル”は、単環式環もしくは多縮合環(縮合環系および橋状環系を包含)を有していて場合により1から3個のアルキル基で置換されていてもよい炭素原子数が3から10の環式ヒドロカルビル基を指す。そのようなシクロアルキル基には、例として、単環構造物、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル、1-メチルシクロプロピル、2-メチルシクロペンチル、2-メチルシクロオクチルなどが含まれる。
【0011】
“ヘテロシクロアルキル”は、N、OおよびSから独立して選択されるヘテロ原子を1個以上含有する安定な複素環式非芳香環および縮合環を指す。縮合複素環式環系は炭素環式環を含有していてもよく、かつ含有する必要のある複素環式環の数は1つのみである。そのような複素環式非芳香環の例には、これらに限定するものでないが、アジリジニル、アゼチジニル、ピペラジニルおよびピペリジニルが含まれる。
【0012】
“ヘテロアリール”は、N、OおよびSから独立して選択されるヘテロ原子を1個以上含有する安定な複素環式芳香環および縮合環を指す。縮合複素環式環系は炭素環式環を含有していてもよく、かつ含有する必要のある複素環式環の数は1つのみである。そのような複素環式芳香環の例には、これらに限定するものでないが、ピリジン、ピリミジンおよびピラジニルが含まれる。
【0013】
“アリール”は、親(parent)芳香環系の1個の炭素原子から1個の水素原子が取り除かれることで生じた一価芳香炭化水素基を指す。典型的なアリール基には、これらに限定するものでないが、ベンゼン、エチルベンゼン、メシチレン、トルエン、キシレン、アニリン、クロロベンゼン、ニトロベンゼンなどから生じた基が含まれる。
【0014】
“アラルキル”または“アリールアルキル”は、上記で定義した如き1個以上のアリール基で置換されている上記で定義した如きアルキル基を指す。
【0015】
“ハロゲン”は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを指す。いくつかの態様におけるハロゲンはフルオロまたはクロロである。
【0016】
“置換されている”は、1個以上の水素原子が各々独立して同じもしくは異なる置換基1種または2種以上に置き換わっている基を指す。“置換されている”基は、特に、アミノ、置換されているアミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、シアノ、シクロアルキル、置換されているシクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、ニトロ、チオアルコキシ、置換されているチオアルコキシ、チオアリール、置換されているチオアリール、チオケト、チオール、アルキル-S(O)-、アリール-S(O)-、アルキル-S(O)2-およびアリール-S(O)2-から成る群より選択される1個以上の置換基、例えば1から5個の置換基、特に1から3個の置換基を有する基を指す。
【0017】
(詳細な説明)
ピラゾロン誘導体のエマルジョン製剤を提供する。このエマルジョン製剤は、ピラゾロン誘導体、例えばエダラボン、油、水および乳化剤を含有する。また、この主題エマルジョン製剤の製造方法および使用方法も提供する。
【0018】
本発明をより詳細に記述するに先立って、本発明は記述する個々の態様に限定されるものでなくて、それ自体勿論多様であり得ることを理解されるべきである。また、本明細書で用いる用語は単に個々の態様を記述する目的で用いるものであり、限定を意図するものでないことも理解されるべきである、と言うのは、添付請求項によってのみ本発明の範囲を限定するからである。
【0019】
ある範囲の値を示す場合、文脈で特に明示しない限り下限の単位の少数第一位まで介在する各値、その範囲の上限と下限の間に介在する各値、および、いかなるその他の記述された、つまりその記述された範囲内に介在する各値が本発明の範囲内に含まれると理解する。記述された範囲における具体的に排除されたいかなる限界値に従って、これらのより小さい範囲の上限および下限は独立的にその小さい範囲内に含まれるかもしれないし、かつ、本発明の範囲内に含まれるかもしれない。その記述された範囲が限界値の片方もしくは両方を含む場合は、それらの含まれる限界値の片方もしくは両方が排除された範囲もまた本発明に含まれる。
【0020】
本明細書では、数値の前に用語“約”を付けて特定の範囲を示す。用語“約”が本明細書で用いられることによって、用語が先行する正確な数とともに、用語が先行する正確な数字に近いまたは近似する数に対して文字通りの支持を与える。ある数が具体的に示した数に近いか或は近似するかどうかを決定する際に、近いか或は近似する示されなかった数は、数が示された文脈において、その具体的に示された数に実質的に相当する数であり得る。
【0021】
特に明記しない限り、本明細書で用いる技術および科学用語の全ては、本発明が属する技術における当業者が通常理解する意味と同じ意味を有する。また、本明細書に記述する方法および材料に類似または同等のいかなる方法および材料もまた本発明の実施または試験において使用可能であるが、代表例的な方法および材料がここでは記述される。
【0022】
本明細書に引用される刊行物および特許文献の全ては参照されることによって本明細書に組み入れられるが、各刊行物または各特許文献が具体的かつ個別に示されていたものが参照により組み入れられ、かつ、参照によって本明細書に組み入れられることによって、引用される刊行物に関連する方法および/または材料を開示かつ記載するかのごとく組み入れられる。いかなる刊行物の引用は出願日前のその開示のためであり、先願発明を理由として本願発明がそのような刊行物に先立つ資格が与えられないことの承認として解釈されるべきものではない。さらに、その示された公開日は、独立して確認される必要があるかもしれない実際の公開日と異なるかもしれない。
【0023】
なお、本明細書および添付請求項で用いられるように、単数形“a”、“an”および“the”は、文脈において特に明確に示されない限り、複数の指示対象を包含する。さらに、任意要素のいずれかを排除するように本請求項を作成することも可能である。このような記述それ自体は、請求項の要素の記述または“否定的”制限の使用に関連して、“だけ”、“のみ”などの如き排他的用語を用いるための先行詞としての代わりになることを意図する。
【0024】
本開示を読んだ当業者に明らかであろうように、本明細書に記述および例示される個々の実施形態の各々は、本発明の範囲または精神から逸脱することなしに、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離または結合されるだろう別々の要素および特徴を有する。示される方法のいずれもは、示される事象の順序、または、理論的に可能ないかなる他の順序で実施可能である。
【0025】
主題発明のさらなる記述において、最初に主題のエマルジョン製剤をより詳細に記述し、その後、本製剤の調製方法の概説、主題製剤が使用可能ないくつかの実例的な用途の考察と続く。
エマルジョン製剤
【0026】
本発明の態様は、ピラゾロン誘導体のエマルジョン製剤を包含する。本製剤はエマルジョンであることから、本製剤は、1番目の液体が混ざり合わない2番目の液体の中にある液体の小球体のサスペンジョンである液状製剤である。本発明に従うエマルジョンには、ピラゾロン誘導体活性薬剤、油、水および乳化剤が入っている。
【0027】
本発明の態様には、貯蔵安定性を示すエマルジョン製剤が含まれる。貯蔵安定性は、当該組成物を有意な相分離および/またはピラゾロン活性薬剤の有意な活性低下無しに長期間に渡って貯蔵することができることを意味する。ある態様における主題組成物は、これを25℃に維持したとき、2カ月以上、例えば4カ月以上(6カ月以上、例えば1年以上、1.5年以上などを包含)に亘って安定である。語句“ピラゾロン誘導体活性薬剤の実質的な活性低下無しに”は、ピラゾロン誘導体活性薬剤が貯蔵期間終了時に示す活性が貯蔵期間開始時のそれに比べて低下している度合が約10%未満であることを意味する。ある態様における製剤は、これを25℃に維持したときに長期間に渡って色変化を実質的に(もしあるとしても)示さず、ここで、“長期間”は2カ月以上、例えば4カ月以上(6カ月以上、例えば1年以上、1.5年以上などを包含)を意味する。
【0028】
ある態様における本発明のエマルジョン製剤はアルコールを含有しない。従って、そのような製剤は、アルコール、例えばエタノールなどを含有しない。ある態様における製剤は還元剤を含有せず、例えばそれらは亜硫酸塩を含有しない。ある態様における製剤は安定剤、例えばエチレンジアミン、エデト酸カルシウムジナトリウムまたはエデト酸ジナトリウムなどの如きキレート剤などを含有しない。
【0029】
上記に要約したように、本発明の製剤はピラゾロン誘導体活性薬剤を含有するが、この活性薬剤はピラゾロン誘導体、例えば以下に示す如きピラゾロン誘導体またはこれの生理学的に許容される塩または水和物であってもよい。下記の式(I)
【0030】

【0031】
[式中、R1は水素原子、アリール、炭素原子数が1から5のアルキルまたは炭素原子数が全体で3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素原子数が1から5のアルキルまたは炭素原子数が1から3のヒドロキシアルキルを表すか、或はR1とR2が一緒になって炭素原子数が3から5のアルキレンを形成しており、そして
R3は水素原子、炭素原子数が1から5のアルキル、炭素原子数が5から7のシクロアルキル、炭素原子数が1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニルであるか、或は炭素原子数が1から5のアルコキシ、炭素原子数が1から3のヒドロキシアルキル、炭素原子数が全体で2から5のアルコキシカルボニル、炭素原子数が1から3のアルキルメルカプト、炭素原子数が1から4のアルキルアミノ、炭素原子数が全体で2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、ヒドロキシル基、ニトロ、アミノおよびアセトアミドから成る群より選択される同一もしくは異なってもよい1から3個の置換基で置換されているフェニルである]
で表されるピラゾロン誘導体またはこれらの生理学的に許容される塩または水和物もしくは溶媒和物に興味が持たれる。
【0032】
ある態様におけるピラゾロン誘導体は3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン(非専売名:“エダラボン”、Mitsubishi Pharma Corporationが製造販売している商標名:“ラジカット”、本明細書では以降エダラボンと呼ぶ)であり、これはまた3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾロンとも呼ばれる。この特定のピラゾロン誘導体は構造(II):
【0033】


で表される。
【0034】
このピラゾロン活性薬剤をピラゾロン化合物、これの生理学的に許容される塩または水和物として存在させてもよい。
【0035】
主題製剤の態様は、活性薬剤の濃度が高いことを特徴とする。ある態様では、本組成物中のピラゾロン活性薬剤量を1.0 mg/ml以上(1.5 mg/ml以上を包含)にし、ある態様では1.0から30 mg/ml、例えば1.5から15 mg/ml(1.5から6.0 mg/mlを包含)の範囲にする。
【0036】
本発明のエマルジョンである製剤は水と油のエマルジョンである。本製剤はエマルジョンであることから、それらは混和しない(混ざり合わない)2種類の流体の混合物であり、一方の流体(油または水)(分散相)がもう一方の流体(油または水)(連続相)の中に分散している。本発明では、脂質エマルジョンを得ることができる限り、油と乳化剤の組み合わせ比率には特に制限がない。
【0037】
主題組成物は油と水のエマルジョンを含有することから、それらに存在させる水の含有量をある態様では約70%から約99%、例えば約80%から約95%などの範囲の量にしてもよい。その水は便利な如何なる水であってもよく、それには脱イオン水、注射用水(WFI)などが含まれる。
【0038】
主題エマルジョン製剤にまた油相も存在させる。興味の持たれる油は生理学的に許容される油であり、それには、これらに限定するものでないが、単純な脂質、誘導脂質と複合脂質(天然植物油と脂肪、動物油と脂肪、鉱油から誘導される)、または、これらの混合物が含まれる。ある態様では、そのような油を大豆油、オリーブ油、ゴマ油、ヒマシ油、コーン油、ピーナッツ油、サフラワー油、菜種油、ユーカリ油、中鎖脂肪酸エステルおよび短鎖脂肪酸エステルから選択する。興味の持たれる動物油および脂肪には、これらに限定するものでないが、タラの肝油、アザラシ油、イワシ油、ドコサヘキサエン酸およびエイコサペンタエン酸が含まれる。興味の持たれる鉱油には、これらに限定するものでないが、液状パラフィンが含まれる。それらの中の1種または2種以上の組み合わせを用いることができる。ある態様では大豆油、オリーブ油およびゴマ油を用いる。ある態様では高度に精製された油および脂肪を用いる。ある態様では大豆油およびオリーブ油を用いる。本製剤組成物に入れる油の量を一般に0.1から100 mg/ml、例えば0.1から10 mg/ml(0.1から3 mg/mlを包含)などにすべきである。
【0039】
主題エマルジョン製剤にまた乳化剤も存在させる。本発明で用いるべき乳化剤には、製薬学的製剤で用いられている如何なる種類の乳化剤も含まれ、それには燐脂質、非イオン性界面活性剤またはそのような作用剤の混合物が含まれる。ある態様では、精製された燐脂質、例えば卵黄レシチンおよび大豆レシチンなどを用いる。精製された燐脂質には、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリンおよびスフィンゴミエリン(ホスファチジルコリンを主材料として有する)が含まれ得る。興味の持たれる非イオン性界面活性剤には、これらに限定するものでないが、ポリエチレングリコール、ポリオキシアルキレン共重合体およびソルビタンの脂肪酸エステルが含まれる。そのような乳化剤の中の1種または2種以上の組み合わせを用いることができる。ある態様では、精製された乳化剤を用いる。ある態様では、卵黄もしくは大豆油から誘導された精製燐脂質(ホスファチジルコリンを主材料として有する)を用いる。そのような乳化剤の量は多様であり得、ある態様では0.01から30 mg/ml、例えば0.1から20 mg/mlの範囲であり得る。
【0040】
本製剤のある態様はまた1種以上の乳化促進剤も含有する。製薬学的製剤で用いられている如何なる種類の脂肪酸も乳化促進剤として使用可能である。炭素数が6から22の脂肪酸に興味が持たれ、天然もしくは合成のいずれも使用可能でありかつ飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸のいずれも使用可能であり、それらには、これらに限定するものでないが、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、リノレイン酸およびミリスチン酸が含まれる。ある態様では、精製された脂肪酸、例えばオレイン酸などを用いる。ある態様では、そのような乳化促進剤の量を0.002から3 mg/ml、例えば0.02から3 mg/mlなどの範囲にする。
【0041】
ある態様ではまたpH調整剤も存在させる。興味の持たれるpH調整剤には、これらに限定するものでないが、塩酸ナトリウム、塩酸、燐酸緩衝液およびクエン酸緩衝液が含まれる。本発明のエマルジョンのpHをpH調整剤で5.5から7.5に調整してもよい。
【0042】
必要に応じて本製剤に存在させてもよい他の添加剤(例えば安定剤)には、これらに限定するものでないが、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(特に平均分子量が400の)、マルトース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、スクロース、トレハロースおよびイノシトールが含まれる。
調製方法
【0043】
本発明のエマルジョン製剤の調製は便利なプロトコルのいずれかを用いて実施可能である。1つの態様では、注射用溶媒、例えばWFIなどを適切な油の滑らかな混合物に添加する。その混合物を粗く乳化させた後、微細に乳化、例えば高圧乳化機などを用いて乳化させる。粗く乳化させる場合、Homomixer (Mizuho Industrial Co. Ltd.)またはHigh Flex Disperser (SMT)を用いてもよい。微細に乳化させる場合、高圧ホモジナイザー、例えばGaulin Homogenizer (APV-SMT)およびMicrofluidizer (Microfluidics)などを用いることができる。高圧ホモジナイザーを用いる場合には乳化を約500から1000 kg/cm2の圧力を用いて2回から50回、例えば5から20回実施してもよい。その混合および乳化の手順は室温でか或は室温より低い温度で実施可能である。ある態様では、前記調製を窒素ガスを用いて行う。
使用方法
【0044】
主題エマルジョン製剤はピラゾロン誘導体、例えばエダラボンなどを被験体に非経口投与、例えば注射などで非経口投与しようとするときに使用可能である。“非経口投与”は、ある患者に主題エマルジョン製剤をある量で消化管以外の経路、例えば肺経路、筋肉内注射、静脈内送達などで送達するプロトコルによる送達を意味する。ある態様では、注射用送達デバイスを用いた注射で非経口投与を実施する。
【0045】
ある態様における本発明の方法は診断段階を包含する。便利ないかなるプロトコルを用いる主題方法を必要とすると人は診断されるかもしれないし、例えば、対象病状に苦しんでいること、または対象病状に苦しむ危険性があると判断されたことなどで、主題方法を実施する前に人は主題方法の必要を一般的に知らされる。
有用性
【0046】
主題製剤および方法は多様な用途で使用可能である。主題製剤および方法は、ピラゾロン誘導体活性薬剤、例えばエダラボンなどの投与によって被験体が利益を受けるであろう如何なる用途でも使用可能である。ある態様では、主題方法および製剤が抗酸化活性を必要とする症状の治療に使用される。例えばプロスタサイクリン産生量の増加、アラキドン酸のリポオキシゲナーゼ代謝の抑制、アロキサン誘発脂質過酸化の抑制および活性酸素の抑制など。興味の持たれる一般的種類の用途には、これらに限定するものでないが、急性心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症および慢性期の患者が虚血および再潅流後に起こした心筋および血管損傷の治療が含まれる。興味の持たれる具体的用途には、脳血管障害(例えば脳卒中、脳腫瘍、頭部外傷の急性段階に観察される脳虚血、脳浮腫など)、筋萎縮性側索硬化症、ミトコンドリア性筋障害などの治療が含まれる。
【0047】
治療は、宿主を苦しめている疾患に関連した症状を少なくとも改善することを意味し、ここでは、改善を幅広い意味で治療すべき疾患に関連したパラメーター、例えば症状などの大きさを少なくとも軽減することを指す目的で用いる。治療には、それ自体に、また、病理学的状態または少なくともそれに関連した症状が完全に抑制、例えばそれらが起こらないように防止される、または阻止、例えば終了されることによって、当該宿主がもはやその疾患または少なくともその疾患の特徴である症状に苦しまないようにされる状況も含まれる。
【0048】
主題方法および組成物が使用可能な個々の用途には、米国特許第7,211,596号明細書(これの開示は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されているそれらが含まれる。また、Higashi他、“Edaravone (3-Methyl-1-Phenyl-2-Pyrazolin-5-one)、A Novel Free Radical Scavenger,for Treatment of Cardiovascular Diseases,” Recent patents on Cardiovascular Drug Discovery (2006) 1:85-93(これの開示は引用することによって全体が本明細書に組み入れら)も参照のこと。
キット
【0049】
また、上述した如き主題方法を実施するときに使用可能なキットも提供する。例えば、主題方法を実施するためのキットは、単位投薬物、例えばアンプルなどまたは多投薬フォーマットの中に本エマルジョン組成物がある量で存在するキットなどであってもよい。ある態様におけるキットは、それ自体、本エマルジョン製剤が入っている1個以上の単位投薬物(例えばアンプル)であってもよい。更に他の態様におけるキットは、多投薬量の本エマルジョン製剤が単独で入っているキットであってもよい。
【0050】
上記に示した成分に加えて、主題キットに更に主題方法を実施するための使用説明書を含有させることも可能である。そのような使用説明書を主題キットの中に様々な形態で存在させることができ、それらの中の1つ以上をキットの中に存在させてもよい。そのような使用説明書を存在させることが可能な1つの形態は、情報を適切な媒体または基質の上に印刷した形態、例えば情報を印刷した紙片1枚または2枚以上などであり、それをキットの包装材、パッケージ挿入片などの中に入れてもよい。更に別の手段は、情報を記憶させておいたコンピューター読み取り可能媒体、例えばディスケット、CDなどである。存在可能な更に別の手段は、遠く離れた場所の情報にインターネットを通してアクセスするのに用いられるウェブサイトアドレスである。本キットに存在させる手段は便利な如何なる手段であってもよい。
【0051】
以下の実施例は通常の当業者に本発明の製造および使用方法の完全な開示および説明を与える目的で示すものであり、本発明者らが発明であると見なす事項の範囲を限定することを意図するものでなくかつ以下に示す実験が実施した全ての実験または実施した実験のみであることを示すことを意図するものでもない。用いる数(例えば量、温度など)に関して正確さを確保する努力を行ったが、いくらかの実験誤差および偏差を考慮に入れるべきである。特に明記しない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度でありそして圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
実験
A. 製剤調製
【0052】
実施例1
200 mgの精製大豆油、3.6 gの精製卵黄レシチンおよび480 mgのオレイン酸を窒素ガスと一緒に40℃で撹拌した。その混合物に300 mgのエダラボンを加えた後、40℃で窒素ガスと一緒に撹拌した。その混合物に前以て一緒にしておいた4.42 gのプロピレングリコールと20 gのマンニトールと150 mlの注射用蒸留水を加えた後、それにHigh Flex Disperser (11,300 rpm × 15分)を用いた粗い乳化を窒素ガスを用いて40℃で受けさせた。そのエマルジョンに蒸留水を加えることでそれを200 mlにした。その脂質エマルジョンに水酸化ナトリウムを適切な量で加えることでpHが6.0から6.5の中性範囲内に入るように調整した後、それに高圧ホモジナイザー(800 kg/cm2)を用いたさらなる乳化を受けさせた。そのエマルジョンを膜フィルター(孔径が0.45μm)に通して濾過した。その濾過した脂質エマルジョンを5 mlのアンプルの中に注ぎ込んだ後、そのアンプルに窒素を加えながらそれを密封した。そのアンプルに滅菌を121℃の条件下で10分間受けさせ、それをサンプルとして用いた。
【0053】
実施例2
200 mgの精製大豆油、3.6 gの精製卵黄レシチンおよび480 mgのオレイン酸を窒素ガスと一緒に40℃で撹拌した。その混合物に600 mgのエダラボンを加えた後、窒素ガスと一緒に40℃で撹拌した。その混合物に前以て一緒にしておいた4.42 gのプロピレングリコールと20 gのマンニトールと150 mlの注射用蒸留水を加えた後、それにHigh Flex Disperser (11,300 rpm × 15分)を用いた粗い乳化を窒素ガスを用いて40℃で受けさせた。そのエマルジョンに蒸留水を加えることでそれを200 mlにした。その脂質エマルジョンに水酸化ナトリウムを適切な量で加えることでpHが6.0から6.5の中性範囲内になるように調整した後、それに高圧ホモジナイザー(800 kg/cm2)を用いたさらなる乳化を受けさせた。そのエマルジョンを膜フィルター(孔径が0.45μm)に通して濾過した。その濾過した脂質エマルジョンを5 mlのアンプルの中に注ぎ込んだ後、そのアンプルに窒素を加えながらそれを密封した。そのアンプルに滅菌を121℃の条件下で10分間受けさせ、それをサンプルとして用いた。
【0054】
実施例3
200 mgの精製大豆油、3.6 gの精製卵黄レシチンおよび480 mgのオレイン酸を窒素ガスと一緒に40℃で撹拌した。その混合物に300 mgのエダラボンを加えた後、窒素ガスと一緒に40℃で撹拌した。その混合物に前以て一緒にしておいた4.42 gのプロピレングリコールと20 gのソルビトールと150 mlの注射用蒸留水を加えた後、それにHigh Flex Disperser (11,300 rpm × 15分)を用いた粗い乳化を窒素ガスを用いて40℃で受けさせた。そのエマルジョンに蒸留水を加えることでそれを200 mlにした。その脂質エマルジョンに水酸化ナトリウムを適切な量で加えることでpHが6.0から6.5の中性範囲内になるように調整した後、それに高圧ホモジナイザー(800 kg/cm2)を用いたさらなる乳化を受けさせた。そのエマルジョンを膜フィルター(孔径が0.45μm)に通して濾過した。その濾過した脂質エマルジョンを5 mlのアンプルの中に注ぎ込んだ後、そのアンプルに窒素を加えながらそれを密封した。そのアンプルに滅菌を121℃の条件下で10分間受けさせ、それをサンプルとして用いた。
【0055】
実施例4
200 mgの精製大豆油、3.6 gの精製卵黄レシチンおよび480 mgのオレイン酸を窒素ガスと一緒に40℃で撹拌した。その混合物に600 mgのエダラボンを加えた後、窒素ガスと一緒に40℃で撹拌した。その混合物に前以て一緒にしておいた4.42 gのプロピレングリコールと20 gのソルビトールと150 mlの注射用蒸留水を加えた後、それにHigh Flex Disperser (11,300 rpm × 15分)を用いた粗い乳化を窒素ガスを用いて40℃で受けさせた。そのエマルジョンに蒸留水を加えることでそれを200 mlにした。その脂質エマルジョンに水酸化ナトリウムを適切な量で加えることでpHが6.0から6.5の中性範囲内になるように調整した後、それに高圧ホモジナイザー(800 kg/cm2)を用いたさらなる乳化を受けさせた。そのエマルジョンを膜フィルター(孔径が0.45μm)に通して濾過した。その濾過した脂質エマルジョンを5 mlのアンプルの中に注ぎ込んだ後、そのアンプルに窒素を加えながらそれを密封した。そのアンプルに滅菌を121℃の条件下で10分間受けさせ、それをサンプルとして用いた。
【0056】
B. 製剤の評価
1. 含有量の測定
実施例1-4で調製したサンプルに入っているエダラボンの含有量に加えてMitsubhishi Pharma Corporation (日本)がラジカットの名称で販売している市販のエダラボン製剤に入っているエダラボンの含有量の測定をHPLCによって下記の条件で実施した。
【0057】
カラム: Nova-Pak 4μm、C18 (3.9×150mm)
移動相: H2O: MeOH=6:4
流速: 0.5ml/分
検出器:紫外線検出器(244nm)
カラム温度: 35℃
【0058】
C. 実施例1-4を比較した結果
実施例1-4で調製した化合物が示す安定性を試験して、ラジカット(Mitsubishi Pharma Corporation)のそれと比較した。表1に、本実施例で得たサンプルおよびラジカットに入っているエダラボンの量を以下に示す期間に渡って示す。
【0059】
【表1】

【0060】
以上において、本発明の理解を明瞭にする目的で例示および実施例によって、いくらか詳細に記述してきたが、本発明の教示を考慮することで添付請求項の精神からも範囲からも逸脱することのない特定の変形および変更を成すことができることは通常の当業者に容易に明らかであろう。
【0061】
従って、前記は単に本発明の原理の説明である。当業者が、本明細書に明確に記述または示されなかったけれども、本発明の原理を具体化する様々な配置を考案することができるだろうし、それらも本発明の精神および範囲の中に含まれることは理解されるであろう。その上、本明細書に示した実施例および条件語句の全ては、当該技術の促進に本発明者らによって貢献される本発明の原理および概念の理解において読者を助けることを主に意図するものであり、そのように具体的に示した実施例および条件への限定ではないと解釈されるべきである。その上、本発明の原理、態様、実施形態を列記する本明細書における全ての陳述は、その具体的実施例同様に、それらの構造的および機能的両方の均等物を包含することを意図する。加えて、そのような均等物は、現在公知の均等物と、将来開発される均等物(つまり、同じ機能を果たすいかなる開発された要素)の両方を構造に関係なく含むことを意図する。従って、本発明の範囲は本明細書に示され記述された例的な実施形態に限定されることを意図するものでない。むしろ、本発明の範囲および精神は添付請求項によって具体化される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピラゾロン誘導体活性剤、油、水、および乳化剤を含有して成るエマルジョン製剤。
【請求項2】
5.5から7.5の範囲のpHを有する請求項1記載のエマルジョン製剤。
【請求項3】
アルコールを含有しない請求項1記載のエマルジョン製剤。
【請求項4】
還元剤を含有しない請求項1記載のエマルジョン製剤。
【請求項5】
キレート剤を含有しない請求項1記載のエマルジョン製剤。
【請求項6】
ピラゾロン誘導体活性剤が1.0から30 mg/mlの範囲の量で存在する請求項1記載のエマルジョン製剤。
【請求項7】
油が0.1から10 mg/mlの範囲の量で存在する請求項1記載のエマルジョン製剤。
【請求項8】
乳化剤が卵黄燐脂質または大豆燐脂質である請求項1記載のエマルジョン製剤。
【請求項9】
エマルジョンが更に乳化促進剤も含有してなる請求項1記載のエマルジョン製剤。
【請求項10】
ピラゾロン誘導体活性剤がエダラボンまたはその生理学的に許容される塩または水和物である請求項1記載のエマルジョン製剤。
【請求項11】
ピラゾロン誘導体活性剤、油、水、および乳化剤を含有してなるエマルジョン製剤を被験体に非経口投与する方法。
【請求項12】
エマルジョン製剤が5.5から7.5の範囲のpHを有する請求項11記載の方法。
【請求項13】
エマルジョン製剤がアルコールを含有しない請求項11記載の方法。
【請求項14】
エマルジョン製剤が還元剤を含有しない請求項11記載の方法。
【請求項15】
エマルジョン製剤がキレート剤を含有しない請求項11記載の方法。
【請求項16】
ピラゾロン誘導体活性剤が1.0から30 mg/mlの範囲の量で存在する請求項11記載の方法。
【請求項17】
油が0.1から10 mg/mlの範囲の量で存在する請求項11記載の方法。
【請求項18】
乳化剤が卵黄燐脂質または大豆燐脂質である請求項11記載の方法。
【請求項19】
エマルジョン製剤が更に乳化促進剤を含有してなる請求項11記載の方法。
【請求項20】
ピラゾロン誘導体活性薬剤がエダラボンまたはその生理学的に許容される塩または水和物である請求項11記載の方法。
【請求項21】
ピラゾロン誘導体活性薬剤、油、水、および乳化剤を含有してエマルジョン製剤を含有してなるキット。
【請求項22】
エマルジョン製剤が5.5から7.5の範囲のpHを有する請求項21記載のキット。
【請求項23】
エマルジョン製剤がアルコールを含有しない請求項21記載のキット。
【請求項24】
エマルジョン製剤が還元剤を含有しない請求項21記載のキット。
【請求項25】
エマルジョン製剤がキレート剤を含有しない請求項21記載のキット。
【請求項26】
ピラゾロン誘導体活性剤が1.0から30 mg/mlの範囲の量で存在する請求項21記載のキット。
【請求項27】
油が0.1から10 mg/mlの範囲の量で存在する請求項21記載のキット。
【請求項28】
乳化剤が卵黄燐脂質または大豆燐脂質である請求項21記載のキット。
【請求項29】
エマルジョンが更に乳化促進剤を含有してなる請求項21記載のキット。
【請求項30】
ピラゾロン誘導体活性剤がエダラボンまたはその生理学的に許容される塩または水和物である請求項21記載のキット。

【公表番号】特表2011−504177(P2011−504177A)
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535000(P2010−535000)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/082842
【国際公開番号】WO2009/067343
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(502346286)テイコク ファーマ ユーエスエー インコーポレーテッド (26)
【出願人】(300025767)テクノガード株式会社 (7)
【Fターム(参考)】