説明

ピラゾロン誘導体製剤

ピラゾロン誘導体製剤を提供する。該製剤は、ピラゾロン誘導体活性剤、例えば、エダラボン、および両親媒性可溶化剤を含む。該製剤の製造および使用方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
35 U.S.C. § 119 (e)に基づき、本願は仮特許出願第61/116,564号(出願日2008年11月20日)の優先権を主張する(この内容は本明細書の一部を構成する)。
【背景技術】
【0002】
(序論)
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン(エダラボン(edaravone)としても知られる)は、種々の異なる治療用途に用いられる化合物である。エダラボンが用いられる用途には、脳血管障害、例えば、脳卒中、脳腫瘍、脳外傷の急性期にみられる脳虚血、脳水腫などの治療がある。
【0003】
エダラボンを活性成分として含む注射用製剤が開発されている。エダラボンの注射用製剤の例には、pHが2.5〜6.0の範囲の、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、およびピロ亜硫酸塩、およびシステインから選ばれる少なくとも1の化合物を含むエダラボンの水性溶液がある(日本特許公告公報、特公平7-121861)。
【0004】
エダラボンの注射用製剤は製造するのが困難である。エダラボンは水に溶けにくい(25℃で2mg/ml)。さらに、エダラボンは、水溶液中の濃度が増加するにつれて化学安定性が低くなる。さらに、エダラボンは、水溶液中で酸化により分解する傾向がある。そのような特性を考慮すると、エダラボンを医薬として長期間安定化させることや、水中で飽和溶解度を超える量のエダラボンを含む注射剤を製造することは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(要約)
ピラゾロン誘導体製剤を提供する。該製剤は、ピラゾロン誘導体活性剤、例えばエダラボン、および両親媒性可溶化剤を含む。該製剤の製造および使用方法も提供する。
(定義)
【0006】
該化合物、該化合物を含む医薬組成物、および該化合物および組成物の使用方法について記載するとき、特記しない限り以下の用語は以下の意味を有する。下記のあらゆる部分は、種々の置換基で置換されていてよく、各定義はその範囲内にそのような置換された部分を含むことを意図すると理解すべきである。
【0007】
「アルキル」は、10個以下の炭素原子、もしくは9個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、または3個以下の炭素原子を有する一価飽和脂肪族ヒドロカルビル基を表す。該炭化水素鎖は直鎖または分枝状(分岐鎖)でありうる。この用語の例には、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、tert-オクチルなどのような基がある。用語「アルキル」には、本明細書に記載の「シクロアルキル」も含まれる。
【0008】
「シクロアルキル」は、3〜10個の炭素原子を有し、1個の環もしくは多縮合環(融合(縮合)および架橋環系を含む)を有する環式ヒドロカルビル基を表し、1〜3個のアルキル基で置換されていることがあり得る。そのようなシクロアルキル基の例には、単環構造、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル、1-メチルシクロプロピル、2-メチルシクロペンチル、2-メチルシクロオクチルなどが含まれる。
【0009】
「ヘテロシクロアルキル」は、N、O、およびSから独立して選ばれる1またはそれ以上の異種原子を含む安定な複素環非芳香族環および縮合環を表す。縮合複素環は炭素環を含み、複素環を1個だけ含んでいればよい。そのような複素環非芳香族環の例には、限定されるものではないが、アジリジニル、アゼチジニル、ピペラジニル、およびピペリジニルが含まれる。
【0010】
「ヘテロアリール」は、N、O、およびSから独立して選ばれる1またはそれ以上の異種原子を含む安定な複素環芳香族環および縮合環を表す。縮合複素環系は炭素環を含み、複素環を1個だけ含んでいればよい。そのような複素環芳香族環の例には、限定されるものではないが、ピリジン、ピリミジン、およびピラジニルが含まれる。
【0011】
「アリール」は、親芳香族環系の1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することにより得られる一価芳香族炭化水素基を表す。典型的なアリール基には、限定されるものではないが、ベンゼン、エチルベンゼン、メシチレン、トルエン、キシレン、アニリン、クロロベンゼン、ニトロベンゼンなどから誘導される基が含まれる。
【0012】
「アラルキル」または「アリールアルキル」は、1またはそれ以上の上記アリール基で置換された上記アルキル基を表す。
【0013】
「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを表す。ある態様において、ハロゲンはフルオロまたはクロロである。
【0014】
「置換された」は、1またはそれ以上の水素原子がそれぞれ独立して同じまたは異なる置換基で置換されている基を表す。「置換された」基は、特に、1またはそれ以上の置換基、例えば1〜5個の置換基、特に1〜3個の置換基を有する基を表す。該置換基には、限定されるものではないが、アミノ、置換された(置換)アミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、ニトロ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリール、置換チオアリール、チオケト、チオール、アルキル-S(O)-、アリール-S(O)-、アルキル-S(O)2-、およびアリール-S(O)2-が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(詳細な説明)
ピラゾロン誘導体製剤を提供する。該製剤は、ピラゾロン誘導体活性剤(例えばエダラボン)および両親媒性可溶化剤を含む。該ピラゾロン誘導体製剤には非エマルジョン製剤が含まれる。製剤を非エマルジョンとして説明する場合は、「非エマルジョン」は、エマルジョンでない組成物を表す。エマルジョンの製剤は、第1の液体が混合しない第2の液体中の1の液体の小球のサスペンジョンである液体製剤である。該製剤の製造および使用方法も提供する。
【0016】
本発明をより詳細に説明する前に、本発明は説明する特定の態様に限定されず、言うまでもなく変化しうると理解すべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるものであり、本明細書で用いる用語は特定の態様を説明するだけのためのものであり、限定を意図するものではないことも理解すべきである。
【0017】
値の範囲を示す場合は、特記しない限り、範囲の下限の単位の10分の1までの、その範囲の上限と下限の間の、およびあらゆる他の記載した値もしくはその記載した範囲の間の値が本発明内に含まれると理解される。これらのより小さな範囲の上限と下限は、独立してより小さな範囲に含まれることがあり、本発明内に含まれ、記載した範囲内のあらゆる具体的に排除した制限を受ける。記載した範囲が上限および下限の一方または両方を含む場合は、それらを含む限界のいずれかまたは両方を排除する範囲も本発明に含まれる。
【0018】
本明細書において、ある範囲は、用語「約」が前に来る数値で示される。本明細書で用いる用語「約」は、それが先に来る正確な数字、および該用語が先に来る数字に近いかもしくはそのおおよその数字に対する文字通りの裏付けを提供する。数字が具体的に示した数字に近いかもしくはそのおおよそであるか否かの決定において、記載していない近似するかもしくはそのおおよその数字は、それが示された文脈において、具体的に言及された数字の実質的等価物をもたらす数字でありうる。
【0019】
特記しない限り、本明細書で用いるすべての技術的および科学的用語は、当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様もしくは等価なあらゆる方法もしくは物質を本発明の実施もしくは試験に用いることもできるが、典型的な例示的方法および物質について記載する。
【0020】
本明細書に記載のすべての刊行物および特許は、それぞれ個々の刊行物または特許が具体的および個々に本明細書の一部を構成することを示すように本明細書の一部を構成し、それらに記載の方法および/または物質を開示および記載するために本明細書の一部を構成する。あらゆる刊行物の引用は、出願日前の開示を示すものであり、本発明が先行発明のためにそのような刊行物に先行する権利を与えないことの承認と解釈すべきではない。さらに、示した刊行物の日付は、実際の公表日と異なるかも知れず、独立して確認する必要があるかも知れない。
【0021】
本明細書および特許請求の範囲で用いている、単数形「a」、「an」、および「the」には、特記しない限り複数形を含むことを意味する。さらに、特許請求の範囲は、あらゆる任意の要素を排除するよう作製しうることを意味する。したがって、この陳述は、発明特定事項の記載に関連して「単に」、「のみ」などの排他的用語を用いるための、または「ネガティブ」な限定を用いるための先行詞の役割を果たすことを意図する。
【0022】
この開示を読んだ当業者に明らかであろうように、本明細書に記載し例示した個々の態様は、それぞれ、本発明の範囲もしくは精神から逸脱することなく、あらゆる他の種々の態様の特徴と組み合わせ、またはそれらと容易に分離することができる分離した要素および特徴を有する。あらゆる記載した方法は、記載した事情の順番または論理的に可能なあらゆる他の順番で行うことができる。
【0023】
本明細書の以下の項において、最初に目的とする製剤の種々の態様をより詳細に記載し、次いで本発明の態様に従った製剤の製造方法の局面を説明し、該製剤の用途を示す種々の例示的適用について考察する。
(製剤)
【0024】
本発明の局面には、ピラゾロン誘導体の保存安定性のある製剤が含まれる。「保存安定性のある」は、該組成物が有意な相分離および/またはピラゾロン活性剤の活性の有意な低下を伴わずに長期間保存することができることを意味する。ある態様において、対象組成物は、25℃に維持したときに、2ヶ月間またはそれ以上、例えば、4ヶ月間またはそれ以上(6ヶ月間またはそれ以上を含む)、例えば、1年間またはそれ以上、1.5年間またはそれ以上安定である。用語「ピラゾロン誘導体活性剤の活性を実質的に低下させない」は、保存開始時に比べて保存終了時のピラゾロン誘導体活性剤の活性の低下が約10%以下であることを意味する。ある態様において、該製剤は、25℃に維持したときに長期間にわたり色素変化がなく(もしあるとしても)、ここで、「長期間」は、2ヶ月間またはそれ以上、例えば、4ヶ月間またはそれ以上(6ヶ月間またはそれ以上を含む)、例えば、1年間またはそれ以上、1.5年間またはそれ以上などを意味する。
【0025】
ある態様において、本発明の製剤はアルコール不含である。アルコール不含は、該組成物がアルコールをもし含んでいたとしてもほとんど含まないことを意味する。したがって、存在するとしても、アルコールは、該組成物の3%またはそれ以下、例えば、2%またはそれ以下(1%またはそれ以下および0.5%v/v以下の量を含む)である。例えば、アルコールの量は0%v/vである。したがって、該製剤は、アルコール、例えばエタノールを含まないことがある。ある態様において、該製剤は還元剤不含、例えば、亜硫酸塩不含である。還元剤不含とは、組成物が還元剤を含んでいるとしてもそれがわずかであることを意味する。したがって、存在するとしても還元剤は、製剤の3%またはそれ以下、例えば、2%またはそれ以下(1%またはそれ以下および0.5%v/v以下を含む)である。例えば、還元剤の量は0%v/vである。ある態様において、該製剤は、安定化剤、例えば、キレート剤、例えば、エチレンジアミン、エデト酸カルシウム二ナトリウム、またはエデト酸二ナトリウムを含まない。安定化剤不含とは、該組成物がもし含んでいたとしても安定化剤をほとんど含まないことを意味する。したがって、存在する場合は、安定化剤は、組成物の3%またはそれ以下、例えば、2%またはそれ以下(1%またはそれ以下を含む、0.5%v/v以下の量を含む)である。ある場合には、安定化剤の量は0%v/vである。
(ピラゾロン誘導体)
【0026】
上記をまとめると、本発明の製剤はピラゾロン誘導体活性剤を含み、該活性剤は例えば下記のピラゾロン誘導体、またはその生理学的に許容される塩もしくはその水和物を含む。下記式(I)のピラゾロン誘導体が興味深い。

(I)
[式中、
R1は、水素原子、アリール、1〜5個の炭素原子を有するアルキル、または合計3〜6個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルアルキルを表し、
R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、1〜5個の炭素原子を有するアルキル、または1〜3個の炭素原子を有するヒドロキシアルキルを表すか、またはR1およびR2が一緒に結合して3〜5個の炭素原子を有するアルキレンを形成し、
R3は、水素原子、1〜5個の炭素原子を有するアルキル、5〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル、1〜3個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチル、もしくはフェニル、または1〜3個の置換基で置換されたフェニルであり、これらは、同じか異なっていてよく、1〜5個の炭素原子を有するアルコキシ、1〜3個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル、合計2〜5個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル、1〜3個の炭素原子を有するアルキルメルカプト、1〜4個の炭素原子を有するアルキルアミノ、合計2〜8個の炭素原子を有するジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、ヒドロキシル基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる。」。
【0027】
さらに、上記化合物の生理学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物も興味深い。
【0028】
ある態様において、該ピラゾロン誘導体は、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン(非商標名:「エダラボン」、商標名:「Radicut」(Mitsubishi Pharma Corporationが製造販売)、以後エダラボンという)であり、3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾロンとも呼ばれる。この特定のピラゾロン誘導体は構造(II)を有する。

(II)
【0029】
ピラゾロン活性剤は、ピラゾロン化合物、その生理学的に許容される塩、またはその水和物もしくは溶媒和物として存在しうる。
【0030】
対象(本発明の)製剤の態様は、高濃度の活性剤を有することを特徴とする。ある態様において、組成物中のピラゾロン活性剤は、1.0mg/mlまたはそれ以上(1.5mg/mlまたはそれ以上を含む)であり、ある態様において、1.0〜30mg/ml、例えば1.5〜15mg/ml(1.5〜6.0mg/mlを含む)の範囲である。ある態様において、組成物中のピラゾロン活性剤は1.0〜3.5mg/ml(1.5〜3.0mg/mlを含む)の範囲である。
両親媒性可溶化剤
【0031】
対象製剤には両親媒性可溶化剤も存在する。本明細書で用いている、「可溶化剤」は、ピラゾロン誘導体活性剤、例えばエダラボンを完全または部分的に溶解もしくは可溶化することができる物質を表す。用語「両親媒性」は、疎水性尾部および極性頭部を含む分子、および複数の非極性部分と複数の極性部分を含む分子を表す。
【0032】
ある場合には、両親媒性化合物の分子は、疎水性尾部および極性頭部を有しうる。該疎水性尾部は炭化水素部分でありうる。ある態様において、該疎水性尾部は、CH3(CH2)n(ここで、n>1、例えば、1〜30(1〜20を含む)である)の形の炭化水素鎖である。極性頭部は、以下のように分類することができる:1)負に荷電した基、例えば、カルボキシレート(-CO2-)、サルフェート(-SO4-)、スルホネート(-SO3-)、ホスフェート(-PO4-);2)正に荷電した基、例えば、アミン(-NH3+)、および3)極性非荷電基、例えば疎水性尾部を有するアルコールは、CH3(CH2)n(ここで、n>1、2、3、または4である)の形の長鎖である。
【0033】
他の場合には、両親媒性化合物の分子は、複数の疎水性(通常、炭化水素の性質の)および複数の親水性(イオン性または非荷電極性官能基により示される)構造領域を有しうる。
【0034】
本発明に用いる可溶化剤には、医薬製剤に用いられるあらゆるタイプの可溶化剤が含まれ、リン脂質、非イオン性界面活性剤、またはそのような薬剤の混合物が含まれる。精製リン脂質、例えば、卵黄レシチンおよびダイズレシチンがある態様において用いられる。精製リン脂質には、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジル エタノールアミン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、およびホスファチジルコリンが含まれうる。対象となる非イオン性界面活性剤には、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、ポリオキシアルキレンコポリマー、およびソルビタン脂肪酸エステルが含まれる。これら可溶化剤の1つまたは2以上の組み合わせを用いることができる。ある態様において、精製可溶化剤を用いる。ある態様において、精製リン脂質を用いる。ある態様において、卵黄レシチンまたはダイズレシチンを用いる。ある態様において、ホスファチジルコリンを用いる。可溶化剤の量は、ある態様において、0.01〜100mg/ml、例えば、0.1〜50mg/mlの範囲で変化しうる。
他の成分
【0035】
対象組成物は、ある態様において、約70%〜約99%、例えば、約80%〜約95%v/vの範囲の量で水を含みうる。水は、脱イオン水、注射用水(WFI)などを含むあらゆる好都合な水であってよい。
【0036】
ある態様において、pH調整剤も存在する。対象となるpH調整剤には、限定されるものではないが、塩化ナトリウム(sodium hydrochloride)、塩酸、リン酸緩衝溶液、およびクエン酸緩衝溶液が含まれる。本発明製剤のpHは、pH調整剤を使って5.0〜7.5に調整することができる。
【0037】
該製剤のある態様には、1またはそれ以上の可溶化剤増強剤も含まれる。本明細書で用いている「可溶化剤増強剤」は、可溶化剤の効果を増強する成分を意味する。医薬製剤に用いられるあらゆるタイプの脂肪酸を可溶化剤増強剤として用いることができる。天然または合成の炭素数6〜22の脂肪酸が興味深く、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸を用いることができ、これには、限定されるものではないが、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、リノレン酸、およびミリスチン酸が含まれる。ある態様において、精製脂肪酸、例えばオレイン酸を用いる。ある態様において、可溶化剤増強剤の量は、0.002〜5mg/ml、例えば、0.02〜3mg/mlの範囲である。
【0038】
所望により製剤中に存在しうる他の添加物(例えば安定化剤)には、限定されるものではないが、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(特に平均分子量400の)、糖、例えば、D-グルコース、マルトース、ソルビトール、マンニトール、ショ糖、およびトレハロースが含まれる。添加剤は、安定化剤または凍結保護剤として作用しうる。安定化剤または凍結保護剤は、溶液の凝固点を下げることができる。より低い凝固点で溶液中の物質を分解させずに長時間保存することができる。
製造方法
【0039】
本発明の製剤は、あらゆる好都合なプロトコールを用いて製造することができる。ある態様において、注射用溶媒、例えばWFIをピラゾロン誘導体および両親媒性可溶化剤の混合物に加え、粗く混合する。粗く混合するには、あらゆる好都合なプロトコール/用具、例えば、Homomixer(ホモミキサー)(Mizuho Industrial Co.、Ltd.)またはHigh Flex Disperser(ハイフレックスディスパーサー)(SMT)を、例えば使用説明書に従って操作し、使用することができる。混合物を粗く混合し、次いで、例えば高圧乳化機を用いて細かく混合する。細かく混合するには、高圧ホモゲナイザー、例えばGaulin Homogenizer (APV-SMT)およびMicrofluidizer (Microfluidics)を用いることができる。高圧ホモゲナイザーの場合は、混合物を、所望の生成物を得るための圧、例えば約500〜850kg/cm2の圧で、あらゆる好都合な回数、例えば2〜50回(5〜20回を含む)ホモゲナイズすることができる。混合手順は、室温もしくは室温以下の温度で行うことができる。ある態様において、上記製造法は窒素ガスを用いて行われる。
使用方法
【0040】
対象製剤は、例えばピラゾロン誘導体、例えばエダラボンを対象に注射する非経口投与に用いられる。「非経口投与」は、ある量の対象製剤を、消化管以外の経路、例えば、肺経路、筋肉内注射、静脈内送達などにより患者に送達するプロトコールにより送達することを意味する。ある態様において、非経口投与は、注射送達装置を用いる注射による。
【0041】
ある態様において、本発明の方法は診断工程を含む。個体は、あらゆる好都合なプロトコールを用いて対象方法が必要であると診断されており、あらゆる好都合なプロトコールを用いて対象方法が必要であることが知られており、例えば、患者は対象方法を実施する前に標的疾患病状に罹患し、または標的疾患病状に罹患する危険性があることが解っている。
有用性
【0042】
本発明の製剤および方法は、種々の適用に用途がある。本発明の製剤および方法は、対象がピラゾロン誘導体活性剤、例えばエダラボンの投与による利益があるあらゆる適用に用途がある。ある態様において、対象方法および製剤は、例えばプロスタサイクリン産生の増強、アラキドン酸のリポキシゲナーゼ代謝の阻害、アロキサン誘導脂質過酸化の阻害、および活性酸素の減衰による抗酸化活性が望ましい病状の治療に用いられる。興味深い適用の一般的な種類には、限定されるものではないが、急性心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、および慢性期の患者における虚血および再環流後の心筋および血管の損傷の治療が含まれる。興味深い特定の適用には、脳血管障害(例えば、脳卒中、脳腫瘍、脳外傷の急性期にみられる脳虚血、脳水腫など)、筋萎縮性側索硬化症、ミトコンドリア性筋障害などの治療が含まれる。
【0043】
治療(処置)は、宿主が罹患している病状に関連する症状の少なくとも改善が達成されることを意味する。ここで、改善は、治療する病状に関連する症状などのパラメーターの大きさを少なくとも減少させることを表す広い意味で用いる。したがって、治療には、病的状態もしくはそれに関連する少なくとも症状を完全に阻害する、例えば、宿主が病状もしくは該病状を特徴づける少なくとも症状に罹患しないように、発現を予防、もしくは止める、例えば終わらせる状況も含まれる。
【0044】
対象方法および組成物を用いる特定の適用には、米国特許No. 7,211,596に記載のものが含まれる(この内容は本明細書の一部を構成する)。Higashi et al.、「Edaravone (3-Methyl-1-Phenyl-2-Pyrazolin-5-one)、A Novel Free Radical Scavenger、for Treatment of Cardiovascular Diseases,」、Recent patents on Cardiovascular Drug Discovery (2006) 1:85-93も参照のこと(この内容は本明細書の一部を構成する)。
キット
【0045】
上記対象方法を実施する用途があるキットも提供される。例えば、対象方法を実施するためのキットには、ある量の組成物が単位用量、例えばアンプル、もしくは多用量形式で存在することができる。したがって、ある態様において、該キットは、1またはそれ以上の単位用量(例えばアンプル)の製剤でありうる。さらに他の態様において、該キットは単一の多用量製剤を含みうる。
【0046】
上記成分に加えて、対象キットは、さらに対象方法を実施するための指示書を含むことができる。該指示書は、対象キット中に種々の形で存在してよく、その1またはそれ以上がキット中に存在してよい。該指示書が存在しうる1つの形は、キットの包装中、包装挿入物中などの、適切な培地や基質に関する印刷情報、例えば情報が印刷された紙片である。さらなる別の手段は、情報を記録したコンピュータで読める媒体、例えば、ディスケット、CDなどであろう。存在しうるさらに別の手段は、インターネットを介して用いることができる離れた場所の情報にアクセスすることができるウェブサイトアドレスである。あらゆる好都合な手段がキット中に存在しうる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下の実施例は、本発明の実施および使用方法を当業者に完全に開示および説明するために示すものであり、本発明の範囲を限定するものでも、下記実験が行ったすべての実験であるかもしくはその実験だけを行ったことを示すものでもない。用いた数字(例えば、量、温度など)に関する正確さを保証するよう努めたが、いくらかの実験誤差や偏差があるだろう。特記しない限り、部分は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧は大気圧もしくはほぼ大気圧である。
【実施例】
【0048】
実験
A. 製剤の製造
精製卵黄レシチンおよびオレイン酸を40℃で窒素ガスと共に撹拌する。混合物にエダラボンを加え、40℃で窒素ガスと共に撹拌する。混合物に、予め混合したプロピレングリコール、マンニトール、および注射用蒸留水を加え、次いで40℃で窒素ガスと共にHigh Flex Disperser (11,300 rpm × 15 min)で粗く混合する。蒸留水を混合物に所定量となるよう加える。混合物に適切な量の水酸化ナトリウムを加え、pHを中性の範囲の6.0〜6.5になるよう調整し、次いで、高圧ホモゲナイザー(800kg/cm2)でさらに混合する。混合物をメンブランフィルター(ポアサイズ0.45μm)で濾過する。濾過した混合物を5mLアンプルに注ぎ入れ、アンプルを窒素を加えて密封する。アンプルを121℃、10分間の条件下で滅菌し、試料として用いる。
【0049】
試料1および2は表1に記載の量に従って製造することができる。
表1

【0050】
前記発明を、理解を明確にするために例示して幾分詳細に説明したが、本発明の開示に照らして、特許請求の精神もしくは範囲から逸脱することなくある種の変化や修飾を行って良いことは当業者に容易に明らかである。
【0051】
したがって、前記は本発明の原理を例示するだけである。当業者は、本明細書に明確に記載または示されていないが本発明の原理を具体化し、その精神および範囲内に含まれる種々のアレンジを考え出すことができると理解されよう。さらに、本明細書に記載の全ての実施例および条件付き用語は、原則的に、読者が、本発明の原理、および当該分野の促進に本発明者らが寄与する概念の理解を助けることを意図し、そのように具体的に記載した実施例および条件を限定するものではないと理解すべきである。さらに、本発明の原理、局面、および態様、並びにその具体例を記載した本明細書のすべての記載は、その構造的および機能的等価物を含むことを意図する。さらに、そのような等価物は、現在知られている等価物および将来開発される等価物、すなわち、構造に関わらず、同じ機能を果たす開発されたあらゆる要素を含むことを意図する。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示し、記載した典型的な態様に限定されるものではない。本発明の範囲および精神は特許請求の範囲に具体化される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピラゾロン誘導体活性剤および両親媒性可溶化剤を含む非エマルジョン製剤。
【請求項2】
両親媒性可溶化剤が疎水性尾部および極性頭部を含む分子である請求項1記載の製剤。
【請求項3】
両親媒性可溶化剤が複数の非極性部分および複数の極性部分を含む分子である請求項1記載の製剤。
【請求項4】
pHが5.0〜7.5の範囲である請求項1記載の製剤。
【請求項5】
アルコール不含である請求項1記載の製剤。
【請求項6】
還元剤不含である請求項1記載の製剤。
【請求項7】
キレート剤不含である請求項1記載の製剤。
【請求項8】
該ピラゾロン誘導体活性剤が1.0〜30mg/mlの範囲の量で存在する請求項1記載の製剤。
【請求項9】
該ピラゾロン誘導体活性剤が1.5〜30mg/mlの範囲の量で存在する請求項1記載の製剤。
【請求項10】
該可溶化剤がリン脂質および非イオン性界面活性剤からなる群から選ばれる請求項1記載の製剤。
【請求項11】
該可溶化剤が、卵黄レシチン、ダイズレシチン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジル エタノールアミン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、およびホスファチジルコリンからなる群から選ばれるリン脂質である請求項10記載の製剤。
【請求項12】
該可溶化剤がポリエチレングリコール、ポリオキシアルキレンコポリマー、およびソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる非イオン性界面活性剤である請求項10記載の製剤。
【請求項13】
該可溶化剤が卵黄レシチンおよびダイズレシチンから選ばれる請求項1記載の製剤。
【請求項14】
該可溶化剤が精製卵黄レシチンである請求項1記載の製剤。
【請求項15】
さらに可溶化剤増強剤を含む請求項1記載の製剤。
【請求項16】
該可溶化剤増強剤が脂肪酸である請求項15記載の製剤。
【請求項17】
さらに安定化剤を含む請求項1記載の製剤。
【請求項18】
該安定化剤が、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、D-グルコース、マルトース、ソルビトール、マンニトール、ショ糖、およびトレハロースからなる群から選ばれる請求項17記載の製剤。
【請求項19】
該ピラゾロン誘導体活性剤が、エダラボンまたはその生理学的に許容される塩もしくは水和物である請求項1記載の製剤。
【請求項20】
対象に、ピラゾロン誘導体活性剤および両親媒性可溶化剤を含む非エマルジョン製剤を非経口投与することを含む方法。
【請求項21】
該両親媒性可溶化剤が疎水性尾部および極性頭部を含む分子である請求項20記載の方法。
【請求項22】
該両親媒性可溶化剤が複数の非極性部分および複数の極性部分を含む分子である請求項20記載の方法。
【請求項23】
pHが5.0〜7.5の範囲である請求項20記載の方法。
【請求項24】
アルコール不含である請求項20記載の方法。
【請求項25】
還元剤不含である請求項20記載の方法。
【請求項26】
キレート剤不含である請求項20記載の方法。
【請求項27】
該ピラゾロン誘導体活性剤が1.0〜30mg/mlの範囲の量で存在する請求項20記載の方法。
【請求項28】
該ピラゾロン誘導体活性剤が1.5〜30mg/mlの範囲の量で存在する請求項20記載の方法。
【請求項29】
該可溶化剤が、リン脂質および非イオン性界面活性剤からなる群から選ばれる請求項20記載の方法。
【請求項30】
該可溶化剤が、卵黄レシチン、ダイズレシチン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジル エタノールアミン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、およびホスファチジルコリンからなる群から選ばれる請求項29記載の方法。
【請求項31】
該可溶化剤が、ポリエチレングリコール、ポリオキシアルキレンコポリマー、およびソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる請求項20記載の方法。
【請求項32】
該可溶化剤が、卵黄レシチンおよびダイズレシチンからなる群から選ばれる請求項20記載の方法。
【請求項33】
該可溶化剤が精製卵黄レシチンである請求項20記載の方法。
【請求項34】
さらに可溶化剤増強剤を含む請求項20記載の方法。
【請求項35】
該可溶化剤増強剤が脂肪酸である請求項34記載の方法。
【請求項36】
さらに安定化剤を含む請求項20記載の方法。
【請求項37】
該安定化剤が、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、D-グルコース、マルトース、ソルビトール、マンニトール、ショ糖、およびトレハロースからなる群から選ばれる請求項36記載の方法。
【請求項38】
該ピラゾロン誘導体活性剤がエダラボンまたはその生理学的に許容される塩もしくは水和物である請求項20記載の方法。
【請求項39】
ピラゾロン誘導体活性剤および両親媒性可溶化剤を含む非エマルジョン製剤を含むキット。
【請求項40】
両親媒性可溶化剤が疎水性尾部および極性頭部を含む分子である請求項39記載のキット。
【請求項41】
両親媒性可溶化剤が複数の非極性部分および複数の極性部分を含む分子である請求項39記載のキット。
【請求項42】
pHが5.0〜7.5の範囲である請求項39記載のキット。
【請求項43】
アルコール不含である請求項39記載のキット。
【請求項44】
還元剤不含である請求項39記載のキット。
【請求項45】
キレート剤不含である請求項39記載のキット。
【請求項46】
該ピラゾロン誘導体活性剤が1.0〜30mg/mlの範囲の量で存在する請求項39記載のキット。
【請求項47】
該ピラゾロン誘導体活性剤が1.5〜30mg/mlの範囲の量で存在する請求項39記載のキット。
【請求項48】
該可溶化剤がリン脂質および非イオン性界面活性剤からなる群から選ばれる請求項39記載のキット。
【請求項49】
該可溶化剤が、卵黄レシチン、ダイズレシチン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジル エタノールアミン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、およびホスファチジルコリンからなる群から選ばれるリン脂質である請求項39記載のキット。
【請求項50】
該可溶化剤がポリエチレングリコール、ポリオキシアルキレンコポリマー、およびソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる非イオン性界面活性剤である請求項39記載のキット。
【請求項51】
該可溶化剤が卵黄レシチンおよびダイズレシチンから選ばれる請求項39記載のキット。
【請求項52】
該可溶化剤が精製卵黄レシチンである請求項39記載のキット。
【請求項53】
さらに可溶化剤増強剤を含む請求項39記載のキット。
【請求項54】
該可溶化剤増強剤が脂肪酸である請求項53記載のキット。
【請求項55】
さらに安定化剤を含む請求項39記載のキット。
【請求項56】
該安定化剤が、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、D-グルコース、マルトース、ソルビトール、マンニトール、ショ糖、およびトレハロースからなる群から選ばれる請求項55記載のキット。
【請求項57】
該ピラゾロン誘導体活性剤が、エダラボンまたはその生理学的に許容される塩もしくは水和物である請求項39記載のキット。

【公表番号】特表2012−509339(P2012−509339A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537583(P2011−537583)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/064990
【国際公開番号】WO2010/059727
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(502346286)テイコク ファーマ ユーエスエー インコーポレーテッド (26)
【出願人】(300025767)テクノガード株式会社 (7)
【Fターム(参考)】