説明

ピリミジン誘導体及び医薬

【課題】 優れたc−kitチロシンキナーゼ阻害活性を有する新規なピリミジン誘導体又はその医薬上許容される塩を提供することにある。
【解決手段】 特定の構造を有する(5−ピリミジニル)ピリミジン誘導体又はその医薬上許容される塩、及びそれらを有効成分とする医薬組成物で構成される。 本発明化合物は、c−kitチロシンキナーゼ阻害剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリミジン誘導体又はその医薬上許容される塩、及び、それを有効成分として含有する医薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
c−kitチロシンキナーゼは、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)や血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)などと同じタイプIII受容体型チロシンキナーゼであり、その特異的リガンドとしてSCF(stem cell factor)が同定されている(例えば、非特許文献1参照。)。また、c−kitチロシンキナーゼは、造血幹細胞、造血前駆細胞、マスト細胞、メラノサイト、生殖細胞、カハール介在細胞などに高発現しており、これらの分化、増殖、生存に重要な役割を果たしている(例えば、非特許文献2〜4参照。)。
【0003】
c−kitチロシンキナーゼが高発現しているマスト細胞は、多能性造血幹細胞に由来し(例えば、非特許文献5〜6参照。)、未分化のまま骨髄から血流中に入り、局所組織に移行した後、増殖・分化することにより成熟マスト細胞となる(例えば、非特許文献7〜8参照。)。c−kitチロシンキナーゼは、この増殖・分化に必須の因子である(例えば、非特許文献9参照。)。
【0004】
またマスト細胞は、脱顆粒によるヒスタミンやトリプターゼの放出、脂質代謝によるロイコトリエン、PGD2の産生遊離により、即時性アレルギー反応を惹起する。加えて、マスト細胞は、Th2型サイトカインやMIP−1α、MCP−1等のケモカインを産生することにより(例えば、非特許文献10〜11参照。)、遅発相のアレルギー反応を惹起し、炎症の慢性化あるいは線維化病変の形成につながる(例えば、非特許文献12〜14参照。)。
【0005】
従って、c−kitチロシンキナーゼを阻害することにより、マスト細胞の関与する疾患、例えば、喘息、鼻炎、副鼻腔炎、アナフィラキシー、蕁麻疹、血管性浮腫、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎(例えば、特許文献1〜2参照。)、リウマチ様関節炎、結膜炎、リウマチ様脊椎炎、変形性関節症、痛風性関節炎等の関節炎(例えば、特許文献3〜5参照。)、間質性膀胱炎(例えば、特許文献6参照。)、潰瘍性大腸炎、クローン病等の自己免疫疾患(例えば、特許文献4参照。)に代表される各種炎症性の疾患の予防又は治療に有用である。
【0006】
一方、c−kitチロシンキナーゼは、肺小細胞癌(例えば、非特許文献15〜17参照。)。骨髄性白血病(例えば、非特許文献18参照。)、神経細胞腫(例えば、非特許文献19及び特許文献7参照。)、乳癌(例えば、非特許文献20参照。)、結腸癌(例えば、非特許文献21〜22参照。)、子宮頚部癌(例えば、非特許文献23参照。)、卵巣癌(例えば、非特許文献23参照。)においても高発現しており、これらの癌の予防又は治療にも有用である。
【0007】
また、c−kit陽性の消化管間質腫瘍(Gastro−Intestinal Stromal Tumor:GIST)は、カハール介在細胞を由来とする間葉系の腫瘍であり、c−kitチロシンキナーゼの機能獲得性(チロシンキナーゼ活性亢進)突然変異が見られる。従って、c−kitチロシンキナーゼ阻害剤は、該疾患の予防又は治療にも有用である。
【0008】
マストサイトーシスは、皮膚や全身諸臓器にマスト細胞の異常増殖が見られる状態である。その一部でc−kitチロシンキナーゼの活性化変異が恒常的なマスト細胞の増殖を誘導している。c−kitチロシンキナーゼがマストサイトーシスの病態形成に重要な役割を果たしていることから(例えば、特許文献8参照。)、c−kitチロシンキナーゼ阻害剤は、該疾患の予防又は治療にも有用である。
【0009】
グリベック(登録商標)(例えば、特許文献9参照。)は、下記構造の医薬を有効成分として含有するbcr−ablチロシンキナーゼ阻害剤であり、慢性骨髄性白血病等の治療剤として上市されている。
【0010】
【化3】

上記医薬は、bcr−ablチロシンキナーゼ阻害作用の他、c−kitチロシンキナーゼ阻害作用も有しており、c−kit陽性消化管間質腫瘍の治療にも用いられている。上述の通り、c−kitチロシンキナーゼ阻害剤は、c−kit陽性消化管間質腫瘍だけでなく、種々の疾患に対しても有効な治療薬となり得ることから、より強力なc−kitチロシンキナーゼ阻害作用を有する医薬の創製が切望されている。
【特許文献1】国際公開第03/002106号パンフレット
【特許文献2】国際公開第02/080925号パンフレット
【特許文献3】国際公開第03/002108号パンフレット
【特許文献4】国際公開第03/002109号パンフレット
【特許文献5】国際公開第03/063844号パンフレット
【特許文献6】国際公開第03/024386号パンフレット
【特許文献7】国際公開第03/066059号パンフレット
【特許文献8】国際公開第03/002114号パンフレット
【特許文献9】特開平6−87834号公報
【特許文献10】国際公開第2004/002963号パンフレット
【非特許文献1】J.Leukoc.Biol.,2000,67,135−148
【非特許文献2】Blood,1992,79,338−346
【非特許文献3】Blood,1992,79,365−371
【非特許文献4】J.Exp.Med.,1991,174,63−71
【非特許文献5】Blood,1999,94,2333−2342
【非特許文献6】Curr.Opin.Immunol.,1993,5,937−943
【非特許文献7】Nature,1979,281,154−155
【非特許文献8】Nature,1981,291,159−160
【非特許文献9】Annu.Rev.Immunol.,1989,7,59−76
【非特許文献10】Rom.J.Intern.Med.,1996,34(3−4),159−72
【非特許文献11】Immunol.Cell Biol.,2001 Apr,79(2),149−53.
【非特許文献12】J.Allergy Clin.Immunol.,1999 Oct,104,132−7
【非特許文献13】Allergy,1997,52(36 Suppl),7−13
【非特許文献14】Chem.Immunol.,1995,62,84−107
【非特許文献15】Oncogene,1991,6,2291−2296
【非特許文献16】Clin.Cancer Res.,2000,6,3319−3326
【非特許文献17】Oncogene,2000,19,3521−3528
【非特許文献18】Blood,1992,80,1199−1206
【非特許文献19】Blood,1994,84,3465−3472
【非特許文献20】Cell Growth Differ.,1995,6,769−779
【非特許文献21】Tumor Biol.,1993,14,295−302
【非特許文献22】Cancer Res.,2002,62,4879
【非特許文献23】Cancer Res.,1994,54,3049−3053
【非特許文献24】J.Org.Chem.,1996,61,1133−1135
【非特許文献25】J.Org.Chem.,2000,65,1144−1157
【非特許文献26】J.Med.Chem.,1975,18,1077−1088
【非特許文献27】J.Org.Chem.,2002,67,5394−5397
【非特許文献28】J.Amer.Chem.Soc.,1927,1368−1373
【非特許文献29】Bioorg.Med.Chem.Lett.,2001,11,2235−2239
【非特許文献30】J.Heterocyclic Chem.,2000,37,1457−1462
【非特許文献31】J.Org.Chem., 1959, 24, 1261−1267
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、主として、医薬として有用な新規なピリミジン誘導体、具体的には、優れたc−kitチロシンキナーゼ阻害活性を有する新規なピリミジン誘導体又はその医薬上許容される塩を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、種々の化合物について鋭意検討したところ、新規な下記ピリミジン誘導体が上記目的を達成することを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明として、次の一般式[1]で表されるピリミジン誘導体又はその医薬上許容される塩(以下、本発明化合物という)を挙げることができる。
【0014】
【化4】

Arは、次の一般式[2]又は[3]のいずれかの基を表す。
【0015】
【化5】

は、アルキル、シクロアルキル又はアルケニルを表す。
【0016】
は、アルキル又はヒドロキシアルキルを表す。
【0017】
また、本発明として、上記ピリミジン誘導体又はその医薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物、詳しくは、上記ピリミジン誘導体又はその医薬上許容される塩を有効成分として含有するc−kitチロシンキナーゼ阻害剤を挙げることができる。具体的な適応疾患としては、例えば、喘息、鼻炎、副鼻腔炎、アナフィラキシー、蕁麻疹、血管性浮腫、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、リウマチ様関節炎、結膜炎、リウマチ様脊椎炎、変形性関節症、痛風性関節炎等の関節炎、間質性膀胱炎、潰瘍性大腸炎、クローン病等の自己免疫疾患に代表される各種炎症性疾患、肺小細胞癌、骨髄性白血病、神経細胞腫、乳癌、結腸癌、子宮頚部癌、卵巣癌、消化管間質腫瘍、マストサイトーシスに代表される癌を挙げることができる。
【0018】
本発明化合物の中で、特に好ましいものとしては、例えば、次の(1)〜(15)の化合物を挙げることができる。
(1)4−(n−プロピル)−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(2)4−エチル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(3)4−イソプロピル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(4)4−メチル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(5)4−シクロプロピル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(6)4−(n−ブチル)−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(7)4−イソブチル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(8)4−(t−ブチル)−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(9)4−(n−ペンチル)−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(10)4−シクロヘキシル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(11)4−ビニル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(12)4−イソプロペニル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(13)N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}−5−メチルチオフェン−2−カルボキサミド
(14)N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}−5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)チオフェン−2−カルボキサミド
(15)N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}−5−イソプロピルチオフェン−2−カルボキサミド
以下に本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明において「アルキル」としては、直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1〜8個のアルキル、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、n−オクチルを挙げることができる。この中で炭素数1〜6のアルキルが好ましく、炭素数1〜3のアルキルがより好ましい。
【0020】
本発明において、「ヒドロキシアルキル」のアルキル部分としては、上記と同じアルキルを挙げることができる。
【0021】
本発明において「シクロアルキル」としては、環状の炭素数3〜8個のシクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルを挙げることができる。この中で炭素数3〜6のシクロアルキルが好ましく、炭素数3〜5のシクロアルキルがより好ましい。
【0022】
本発明において「アルケニル」としては、直鎖状又は分枝鎖状の炭素数2〜8個のアルケニル、例えば、エテニル、1−プロぺニル、2−プロぺニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、1−ヘプテニル、1−オクテニルを挙げることができる。この中で炭素数2〜7のアルケニルが好ましく、炭素数2〜6のアルケニルがより好ましい。
【0023】
本発明において「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明化合物は、公知の化合物又は容易に調製可能な中間体から、例えば下記の方法に従って製造することができる。本発明化合物の製造において、原料が反応に影響を及ぼす置換基を有する場合には、原料をあらかじめ公知の方法により適当な保護基で保護した後に反応を行うのが一般的である。保護基は、反応後に、公知の方法により脱離することができる。
製法1
【0025】
【化6】


〔式中、Arは、前記と同義である。〕

本反応は、化合物[4]と化合物[5]との縮合反応であって、それ故、縮合反応としてそれ自体公知の方法によって行うことができる。一般式[1]で表される本発明化合物は、化合物[5]で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体と、化合物[4]で表されるアミンを反応させることにより製造することができる。化合物[5]の反応性誘導体としては、例えば、酸ハライド(例えば、酸クロリド、酸ブロミド)、混合酸無水物、イミダゾリド、活性アミド等、アミド縮合形成反応に通常用いられるものを挙げることができる。カルボン酸[5]を用いる場合は、縮合剤(例えば、1,1’−オキサリルジイミダゾール、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、シアノホスホン酸ジエチル、ジフェニルホスホリルアジド、よう化 2−クロロ−1−メチルピリジニウム、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート)が使用でき、塩基(例えば、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピル−N−エチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エンの有機塩基)の存在又は非存在下に、−20〜100℃の範囲で反応を行うことができる。使用しうる溶媒は、反応に関与しなければ特に限定されないが、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、又はこれらの混合溶媒を挙げることができる。この際、添加剤(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシコハク酸イミド等)を加えることもできる。反応時間は、原料及び縮合剤の種類、反応温度等によって異なるが、通常、30分〜24時間の範囲が適当である。化合物[5]及び縮合剤の使用量は、化合物[4]に対して1〜3倍モル量が好ましい。化合物[5]の反応性誘導体として、例えば酸ハライドを用いる場合は、ピリジン、4−メチルピリジンなどのピリジン系溶媒又は前記と同じ塩基と溶媒を使用し、−20〜100℃の範囲で反応を行うことができる。また、添加物として、例えば4−ジメチルアミノピリジンを加えることもできる。反応時間は、使用する酸ハライドの種類、反応温度によって異なるが、通常、30分〜24時間の範囲が適当である。
【0026】
原料化合物である化合物[4]は、例えば特許文献9に記載の方法と同様の方法により製造することができる。
製法2
【0027】
【化7】


〔式中、Arは前記と同義である。XはCl、Br、I、SRを表し、Rはアルキルを表す。〕

一般式[1]で表される本発明化合物は、化合物[6]と化合物[7]を反応させることによって製造することができる。本反応は、無溶媒または適当な溶媒中、塩基の存在または非存在下、20〜200℃の範囲で行われる。使用しうる塩基としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピル−N−エチルアミン、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウムなどを挙げることができる。使用しうる溶媒としては、反応に関与しなければ特に限定されないが、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素類、エチレングリコール、2−メトキシエタノールなどのアルコール類、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシド、又はこれらの混合溶媒を挙げることができる。反応時間は、使用する原料の種類、反応温度によって異なるが、通常、1〜24時間の範囲が適当である。
【0028】
また一般式[1]で表される本発明化合物は、化合物[6]と化合物[7]からパラジウム触媒を用いた方法(例えば、非特許文献24〜25参照。)を用い、製造することもできる。
【0029】
原料化合物である化合物[6]は、例えば、2,4−ジアミノトルエンと化合物[5]で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体を,前記製法1の方法に準じて縮合することにより製造することができる。
【0030】
原料化合物である化合物[7]は、例えば、2,4−ジクロロピリミジンを用いて、後記製法4の方法により製造することができる。
製法3
【0031】
【化8】


〔式中、Arは前記と同義である。〕

一般式[1]で表される本発明化合物は、化合物[8]又は該化合物の酸付加塩と、化合物[9]を反応させることにより製造することができる。本反応は適当な溶媒中、20〜200℃の範囲で行うことができる。使用しうる溶媒としては、反応に関与しなければ特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノールなどのアルコール類を挙げることができる。化合物[9]の使用量は、化合物[8]に対して1〜2倍モル量、好適には、1〜1.2倍モル量の範囲であり、反応時間は、使用する原料の種類、反応温度によって異なるが、通常30分〜30時間の範囲が適当である。化合物[8]の酸付加塩を用いる場合は、適当な塩基(例えば炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)を添加し、反応を行うことができる。
【0032】
原料化合物である化合物[8]は、化合物[6]を文献記載の方法(例えば、非特許文献26参照。)によりシアナミドと反応させることにより、遊離または酸付加塩の形態で製造することができる。
【0033】
原料化合物である化合物[9]は、例えば、特許文献9に記載の方法に準じて製造することができる。
製法4
【0034】
【化9】


〔式中、Arは前記と同義である。R及びRは、同一又は異なって、アルキル又はヒドロキシを表し、R、R及びRはアルキルを表し、Xはハロゲンを表す。〕

本反応は化合物[10]と、有機ホウ素化合物[11]又は有機スズ化合物[12]を用いたクロスカップリング反応であり、公知の方法によって一般式[1]で表される本発明化合物を製造することができる。本反応は、例えばパラジウム触媒存在下、適当な溶媒中、20〜200℃の範囲で行う。一般的にパラジウム触媒として、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウムなどが使用され、反応溶媒は、反応に関与しなければ特に限定されないが、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、メタノール、エタノールなどのアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、ピリジン、トリエチルアミンなどの有機アミン類、又はこれらの混合溶媒を挙げることができる。化合物[11]を用いる場合、塩基(例えば水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、りん酸三カリウム)の添加が必須である。反応時間は、使用する原料の種類、反応温度によって異なるが、通常、1〜48時間の範囲が適当である。また有機ホウ素化合物[11]は、臭素体から非特許文献27に記載の方法によって、有機スズ化合物[12]は非特許文献28に記載の方法によって製造するとことができる。
【0035】
原料化合物である化合物[10]は、例えば、化合物[6]と4−ヒドロキシ−2−(メチルチオ)ピリミジンと反応させた後、オキシ塩化りんで処理(例えば、非特許文献29参照。)するか、又は、化合物[6]と2,4−ジクロロピリミジンを用いて文献(例えば、非特許文献30参照。)記載の方法によっても製造することができる。
【0036】
本発明化合物は、遊離の塩基のまま医薬として用いることができるが、公知の方法により医薬上許容される塩の形にして用いることもできる。このような塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、燐酸などの鉱酸の塩、酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機酸の塩などを挙げることができる。
【0037】
例えば、塩酸塩は、フリー体を塩化水素のアルコール溶液、酢酸エチル溶液又はエーテル溶液に溶解することにより得ることができる。
【0038】
本発明化合物は、後記の試験例に示すように、特許文献9に具体的に開示されている化合物に比して、c−kitチロシンキナーゼ阻害活性が非常に高いことから、本発明化合物は、医薬として非常に有用である。
【0039】
本発明化合物を医薬として投与する場合、そのまま又は医薬上許容され得る無毒性かつ不活性の担体中に、例えば 0.1〜99.5%、好ましくは 0.5〜90%を含有する医薬組成物として、人を含む哺乳動物に投与することができる。
【0040】
担体としては、固形、半固形又は液状の希釈剤、充填剤及びその他の処方用の助剤一種以上が用いられる。医薬組成物は、投与単位形態で投与することが望ましい。本発明にかかる医薬組成物は、静脈内投与、経口投与、組織内投与、局所投与(経皮投与など)又は経直腸的に投与することができる。これらの投与方法に適した剤型で投与されるのはもちろんである。
【0041】
c−kitチロシンキナーゼ阻害剤としての用量は、病気の性質と程度、年齢、体重などの患者の状態、投与経路などを考慮した上で設定することが望ましいが、通常は、成人に対して本発明化合物の有効成分量として、1日あたり、0.1〜1000mg/ヒトの範囲、好ましくは 1〜500mg/ヒトの範囲が一般的である。
【0042】
場合によっては、これ以下で足りるし、また逆にこれ以上の用量を必要とすることもある。また1日2〜3回に分割して投与することもできる。
【実施例】
【0043】
以下に参考例、実施例及び試験例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
参考例1 4−シクロプロピル安息香酸
水酸化ナトリウム2.17gの水溶液15mlを氷水冷下攪拌し、臭素3.50gをゆっくり滴下した。氷水冷下で15分攪拌後、4’−シクロプロピルアセトフェノン(例えば、非特許文献31参照。)1.00gの1,4−ジオキサン溶液(12ml)を滴下した。滴下終了後室温で18時間攪拌した。亜硫酸水素ナトリウム740mgを添加した後、氷水冷下で濃塩酸を滴下し酸性とした。酢酸エチルで2回抽出し、有機層を合わせて2回水洗後、10%水酸化ナトリウム水溶液で2回逆抽出した。逆抽出した水層を合わせ、10%塩酸で中和後、析出晶を濾取し、目的化合物201mgを白色結晶として得た。
融点161℃

参考例2 4−イソプロペニル安息香酸
工程1 4−イソプロペニル安息香酸エチル
アルゴン雰囲気下、臭化メチルトリフェニルホスホニウム2.15gの無水テトラヒドロフラン(43ml)懸濁液を氷水冷下で攪拌し、t−ブチルリチウム(1.6M n−ペンタン溶液)4.3mlを滴下した。滴下終了後、室温で25分攪拌した後、再び氷水冷下で攪拌しながら、4−アセチル安息香酸エチル961mgの無水テトラヒドロフラン(10ml)溶液を滴下した。滴下終了後、室温で30分攪拌した後、反応液に水を加え水層を分離した。水層を酢酸エチルで2回抽出し、有機層を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、目的化合物149mgを無色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.40(3H,t), 2.17(3H,dd), 4.38(2H,q), 5.19(1H,qn), 5.46(1H,dd), 7.48−7.55(2H,m), 7.97−8.03(2H,m)
工程2 4−イソプロペニル安息香酸
工程1で得られた4−イソプロペニル安息香酸エチル141mgをメタノール3mlに溶解し、1N水酸化ナトリウム水溶液1.1mlを添加後、1時間加熱還流した。放冷し、メタノールを減圧留去後、水を加えジエチルエーテルで1回洗浄した。水層に1N塩酸1.5mlを加え酸性(pH4)とした後、析出晶を濾取し、水で2回洗浄して、目的化合物97mgを白色結晶として得た。
融点164〜166℃

参考例3 5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)チオフェン−2−カルボン酸
工程1 5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)チオフェン−2−カルボン酸
アルゴン雰囲気下、チオフェン−2−カルボン酸1.00gを無水テトラヒドロフラン20mlに溶解し、ドライアイス−アセトン浴で冷却攪拌した。リチウムジイソプロピルアミド(2.0M ヘプタン/テトラヒドロフラン/エチルベンゼン溶液)8.58mlを20分かけて滴下し、滴下後15分冷却攪拌した。無水アセトン573μlを添加後、ドライアイス−アセトン浴を外し、1.5時間攪拌した。反応液に氷水を加え、水層を酢酸エチルで2回洗浄した。水層に2N塩酸を加え酸性にした後、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して、粗化合物1.33gを得た。
工程2 5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)チオフェン−2−カルボン酸メチル
工程1で得られた5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)チオフェン−2−カルボン酸2.56gを無水テトラヒドロフラン−メタノール(62ml−16ml)に溶解し、氷水冷下で攪拌した。トリメチルシリルジアゾメタン(2.0M ヘキサン溶液)8.6mlを添加し、氷水冷下で20分攪拌後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、得られた粗結晶をn‐ヘキサンで洗浄して目的化合物1.12gを微褐色結晶として得た。
融点64.5℃
工程3 5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)チオフェン−2−カルボン酸
工程2で得られた5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)チオフェン−2−カルボン酸メチル150mgをメタノール3mlに溶解し、1N水酸化ナトリウム水溶液1.13mlを添加して、30分加熱還流した。メタノールを減圧留去後、残渣に水を加え、1N塩酸1.13mlを加えて中和した。水を減圧留去後、残留物にメタノールを加えて水を共沸除去する操作を3回繰り返した。残渣に無水メタノールを加えて攪拌し、不溶物を濾去後、濾液の溶媒を減圧留去する操作を2回繰り返して、目的化合物163mgを白色結晶として得た。
融点138〜139℃

参考例4 5−イソプロピルチオフェン−2−カルボン酸
工程1 5−イソプロピルチオフェン−2−カルボン酸メチル
アルゴン雰囲気下、四ヨウ化二りん342mgを無水ベンゼン20mlに加熱溶解させた後、5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)チオフェン−2−カルボン酸メチル(参考例3(工程2))200mgの無水ベンゼン10ml溶液を添加し、6時間加熱還流した。反応液を放冷した後、10%亜硫酸ナトリウム水溶液を加え攪拌後、水層を分離し、水層はジエチルエーテルで2回抽出した。有機層を合わせ水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的化合物106mgを橙色油状物として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.34(6H,d), 3.19(1H,qn), 3.86(3H,s), 6.82(1H,dd), 7.64(1H,d)
工程2 5−イソプロピルチオフェン−2−カルボン酸
工程1で得られた5−イソプロピルチオフェン−2−カルボン酸メチル132mgをメタノール3mlに溶解し、1N水酸化ナトリウム水溶液1.07mlを添加して、1時間加熱還流した。メタノールを減圧留去後、残渣に水を加え、ジエチルエーテルで1回洗浄した。1N塩酸1.5mlを加えて酸性(pH5)とした後、酢酸エチルで2回抽出し、有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥後溶媒を減圧留去して、目的化合物119mgを微黄色結晶として得た。
融点77〜78℃
実施例1 4−(n−プロピル)−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]アニリン(例えば、特許文献10参照。)100mgおよび4−(n−プロピル)安息香酸65mgを無水N,N−ジメチルホルムアミド2mlに溶解し、N,N−ジイソプロピルエチルアミン125μl、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(BOP)191mgを順次添加後、室温で24時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加えて希釈し、氷水と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の混合液に注ぎ込んだ後水層を分離し、水層は酢酸エチルで1回抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた粗結晶はエタノールで熱時スラリー洗浄後、濾取し、次いでジエチルエーテルで洗浄して、目的化合物103mgを得た。
黄色結晶 融点210〜212℃(分解)
元素分析値 (C2524O・0.2EtOH・0.2HOとして)
計算値(%) C:69.76 H: 5.90 N:19.22
実測値(%) C:69.83 H: 6.07 N:18.85

実施例2 4−エチル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
4−エチル安息香酸を用いて、実施例1と同様の方法により目的化合物を得た。ただし、得られた粗結晶はエタノールで熱時スラリー洗浄後、次いで酢酸エチルで洗浄した。
淡黄色結晶 融点242〜244℃(分解)
元素分析値 (C2422O・0.1EtOH・0.2HOとして)
計算値(%) C:69.42 H: 5.54 N:20.07
実測値(%) C:69.53 H: 5.60 N:19.77

実施例3 4−イソプロピル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
4−イソプロピル安息香酸を用いて、実施例1と同様の方法により目的化合物を得た。ただし、得られた粗結晶は酢酸エチルで洗浄した。
淡黄色結晶 融点149℃以上(分解)
H−NMR(DMSO−d)δ:1.22(3H,t), 2.14(3H,s), 2.23(3H,s), 2.38(8H,br), 2.75(2H,q), 3.50(2H,s), 7.21(1H,d), 7.38(1H,d), 7.48(1H,d), 7.51(1H,d), 7.61(1H,d), 7.75(1H,s), 8.12(1H,s), 8.57(1H,d), 9.09(1H,s), 9.30(1H,s), 9.46(2H,s), 10.15(1H,s)

実施例4 4−メチル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
4−トルイル酸を用いて、実施例1と同様の方法により目的化合物を得た。ただし、得られた粗結晶は酢酸エチルで洗浄した。
黄色結晶 融点218℃以上(分解)
元素分析値 (C2320O・0.1HOとして)
計算値(%) C:69.37 H: 5.11 N:21.20
実測値(%) C:69.35 H: 5.17 N:21.18

実施例5 4−シクロプロピル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
4−シクロプロピル安息香酸(参考例1)を用いて、実施例1と同様の方法により目的化合物を得た。ただし、得られた粗結晶をアセトニトリルに加熱溶解後、熱時濾過で不溶物を濾去し、濾液を冷却して析出した結晶を濾取した。
淡黄色結晶 融点235〜238℃(分解)
元素分析値 (C2522O・0.25HOとして)
計算値(%) C:70.32 H: 5.31 N:19.68
実測値(%) C:70.49 H: 5.36 N:19.39
実施例6 4−(n−ブチル)−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
4−(n−ブチル)安息香酸を用いて、実施例1と同様の方法により目的化合物を得た。
黄色結晶 融点154〜156℃(分解)
元素分析値 (C2626O・0.25HOとして)
計算値(%) C:70.49 H: 6.03 N:18.97
実測値(%) C:70.64 H: 5.97 N:18.64

実施例7 4−イソブチル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
4−イソブチル安息香酸を用いて、実施例1と同様の方法により目的化合物を得た。
淡黄色結晶 融点196〜198℃
元素分析値 (C2626O・0.2HOとして)
計算値(%) C:70.63 H: 6.02 N:19.01
実測値(%) C:70.60 H: 6.17 N:18.84

実施例8 4−(t−ブチル)−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
4−(t−ブチル)安息香酸を用いて、実施例1と同様の方法により目的化合物を得た。ただし、後処理は水層分離後、有機層に析出した結晶を濾取し、エタノールで洗浄した。
淡黄色結晶 融点178〜183℃(分解)
元素分析値 (C2626O・0.37CHCOOC・0.2HOとして)
計算値(%) C:69.53 H: 6.23 N:17.70
実測値(%) C:69.42 H: 6.26 N:17.38

実施例9 4−(n−ペンチル)−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
4−(n−ペンチル)安息香酸を用いて、実施例1と同様の方法により目的化合物を得た。ただし、得られた粗結晶は酢酸エチルで再結晶後、エタノールで再び再結晶した。
微黄色結晶 融点157〜159℃(分解)
元素分析値 (C2728O・0.2HOとして)
計算値(%) C:71.09 H: 6.28 N:18.42
実測値(%) C:71.34 H: 6.32 N:18.13

実施例10 4−シクロヘキシル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
4−シクロヘキシル安息香酸を用いて、実施例1と同様の方法により目的化合物を得た。ただし、得られた粗結晶は酢酸エチルで洗浄した。
淡黄色結晶 融点183〜184℃
H−NMR(DMSO−d)δ:1.20−1.58(6H,m), 1.64−1.84(4H,m), 2.22(3H,s), 2.52−2.65(1H,m), 7.20(1H,d), 7.37(2H,d), 7.47(1H,d), 7.51(1H,d), 7.86(2H,d), 8.13(1H,s), 8.57(1H,d), 9.08(1H,s), 9.30(1H,s), 9.46(2H,s), 10.13(1H,s)
実施例11 4−ビニル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
4−ビニル安息香酸を用いて、実施例1と同様の方法により目的化合物を得た。ただし、粗生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、得られた粗結晶を酢酸エチルで洗浄した。
淡黄色結晶 融点218〜219℃
元素分析値 (C2420O・0.2CHCOOC・0.3HOとして)
計算値(%) C:69.03 H: 5.19 N:19.48
実測値(%) C:69.02 H: 5.10 N:19.36

実施例12 4−イソプロペニル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
4−イソプロペニル安息香酸(参考例2)を用いて、実施例1と同様の方法により目的化合物を得た。ただし、得られた粗結晶は酢酸エチルで熱時スラリー洗浄した。
淡黄色結晶 融点220〜223℃
H−NMR(DMSO−d)δ:2.16(3H,s), 2.23(3H,s), 5.22(1H,s), 5.57(1H,s), 7.22(1H,d), 7.48(1H,dd), 7.51(1H,d), 7.65(2H,d), 7.95(2H,d), 8.14(1H,d), 8.58(1H,d), 9.09(1H,s), 9.30(1H,s), 9.46(2H,s), 10.21(1H,s)

実施例13 N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}−5−メチルチオフェン−2−カルボキサミド
5−メチルチオフェン−2−カルボン酸を用いて、実施例1と同様の方法により目的化合物を得た。ただし、得られた粗結晶は酢酸エチルで熱時スラリー洗浄した。
淡黄色結晶 融点188〜190℃(分解)
元素分析値 (C2118OS・0.35HOとして)
計算値(%) C:61.70 H: 4.61 N:20.56
実測値(%) C:62.00 H: 4.80 N:20.17

実施例14 N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}−5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)チオフェン−2−カルボキサミド
5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)チオフェン−2−カルボン酸(参考例3、工程3)を用いて、実施例1と同様の方法により目的化合物を得た。ただし、得られたアモルファスは酢酸エチルで結晶化した。
微黄色結晶 融点190〜193℃(分解)
元素分析値 (C2322S・0.25HOとして)
計算値(%) C:61.25 H: 5.03 N:18.63
実測値(%) C:61.39 H: 4.97 N:18.28

実施例15 N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}−5−イソプロピルチオフェン−2−カルボキサミド
5−イソプロピルチオフェン−2−カルボン酸(参考例4、工程2)を用いて、実施例1と同様の方法により目的化合物を得た。ただし、得られた粗結晶は酢酸エチルで熱時スラリー洗浄した。
黄土色結晶 融点215〜220℃(分解)
H−NMR(DMSO−d)δ:1.30(6H,d), 2.22(3H,s), 3.19(1H,qn), 6.97(1H,dd), 7.20(1H,d), 7.43(1H,dd), 7.51(1H,d), 7.84(1H,d), 8.01(1H,d), 8.57(1H,d), 9.08(1H,s), 9.30(1H,s), 9.44(2H,s), 10.06(1H,s)
試験例1 c−kitチロシンキナーゼ自己リン酸化抑制作用
10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS)(GIBCO BRL社製)含有 RPMI−1640培地(GIBCO BRL社製)にて継代を行い、対数増殖期にあるNCI−H526細胞(American Type Culture Collection)を0.1%FCS含有RPMI−1640培地にて2×10cells/wellとなるように 6穴平底プレート(Falcon社製)に3 mlずつ播種した後、37℃、5%CO下に24時間インキュベートした。10%DMSO(nacalai tesque社製)溶液で調製した各薬物を1ウェルあたり30μlずつ添加し(最終DMSO濃度:0.1%)、90分間前処理をし、r−h− SCF(R&D Systems社製)最終濃度50ng/mlにより10分間刺激した。刺激後の細胞をPBS(−)で2回遠心洗浄(1200rpm、3分)し、上清を除いた後、500μlのRIPAバッファー(50mM HEPES (pH 7.5)、150mM NaCl、10%Glycerol、1%Triton X−100、1.5mM MgCl、1 mM EGTA、2mM NaVO、Protease inhibitor cocktail)を加えて氷上に20分間放置することで細胞を可溶化し、高速遠心(15000rpm、15分)により不溶性画分を除去した。さらに得られた総細胞抽出液にプロテインGアガロースビーズ(oncogene社製)を20μl添加し2時間室温でインキュベートすることにより、ビーズへの非特異的吸着分子を除去した。このようにして調製した総細胞抽出液より、抗ヒトCD117抗体(BioSourc社製)を用いてc−kit分子を免疫沈降した。沈降物を6%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した後、PVDF膜(Millipore 社製)に転写した。その後、常法に従い膜上で抗c−kit抗体(Santa Cruz社製)もしくは抗リン酸化チロシン抗体(BD Biosciences社製)と反応させ、アルカリフォスファターゼ化学発色法によりc−kitおよびチロシンリン酸化c−kitのバンドを検出した。チロシンリン酸化c−kitに相当するバンドの相対濃度をEpi−Light UV (F−2000、アイシンコスモス研究所)を用いて測定し、control群(薬物非処理群)に対する薬物処理群のリン酸化阻害率及びIC50を算出した。
【0044】
試験例1の結果(薬物0.1μM添加時のリン酸化阻害率及びIC50)を表1に示す。
なお、対象薬物としては、4−(4−メチルピペラジン−1イルメチル)−N−[4−メチル−3−[4−(3−ピリジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル]ベンズアミド(例えば、特許文献9参照。)を用いた。
【0045】
【表1】

上記表1に示す通り、本発明化合物が優れたc−kitチロシンキナーゼの阻害作用を有することは明白である。
製剤例1
錠剤(内服錠)
処方1錠80mg 中
実施例1の本発明化合物 5.0mg
トウモロコシ澱粉 46.6mg
結晶セルロース 24.0mg
メチルセルロース 4.0mg
ステアリン酸マグネシウム 0.4mg
この割合の混合末を通常の方法により打錠成形し内服錠とする。

製剤例2
錠剤(内服錠)
処方1錠80mg 中
実施例2の本発明化合物 5.0mg
トウモロコシ澱粉 46.6mg
結晶セルロース 24.0mg
メチルセルロース 4.0mg
ステアリン酸マグネシウム 0.4mg
この割合の混合末を通常の方法により打錠成形し内服錠とする。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上、本発明化合物は、優れたc−kit阻害活性を有することから、本発明化合物を有効成分として含む医薬組成物は、ヒトを含む哺乳動物に対するc−kit阻害剤として、喘息、鼻炎、副鼻腔炎、アナフィラキシー、蕁麻疹、血管性浮腫、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、リウマチ様関節炎、結膜炎、リウマチ様脊椎炎、変形性関節症、痛風性関節炎等の関節炎、間質性膀胱炎、潰瘍性大腸炎、クローン病等の自己免疫疾患に代表される各種炎症性疾患、肺小細胞癌、骨髄性白血病、神経細胞腫、乳癌、結腸癌、子宮頚部癌、卵巣癌、消化管間質腫瘍、マストサイトーシスに代表される癌などの疾患に対して有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式[1]で表されるピリミジン誘導体又はその医薬上許容される塩。
【化1】

Arは、次の一般式[2]又は[3]のいずれかの基を表す。
【化2】

は、アルキル、シクロアルキル又はアルケニルを表す。
は、アルキル又はヒドロキシアルキルを表す。
【請求項2】
次の(1)〜(15)の化合物からなる群から選択される化合物である、請求項1記載のピリミジン誘導体又はその医薬上許容される塩。
(1)4−(n−プロピル)−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(2)4−エチル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(3)4−イソプロピル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(4)4−メチル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(5)4−シクロプロピル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(6)4−(n−ブチル)−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(7)4−イソブチル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(8)4−(t−ブチル)−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(9)4−(n−ペンチル)−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(10)4−シクロヘキシル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(11)4−ビニル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(12)4−イソプロペニル−N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}ベンズアミド
(13)N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}−5−メチルチオフェン−2−カルボキサミド
(14)N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}−5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)チオフェン−2−カルボキサミド
(15)N−{4−メチル−3−[4−(5−ピリミジニル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル}−5−イソプロピルチオフェン−2−カルボキサミド
【請求項3】
請求項1若しくは2のいずれかに記載のピリミジン誘導体又はその医薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項4】
請求項1若しくは2のいずれかに記載のピリミジン誘導体又はその医薬上許容される塩を有効成分として含有するc−kitチロシンキナーゼ阻害剤。
【請求項5】
請求項1若しくは2のいずれかに記載のピリミジン誘導体又はその医薬上許容される塩を有効成分として含有する炎症性疾患治療剤。
【請求項6】
請求項1若しくは2のいずれかに記載のピリミジン誘導体又はその医薬上許容される塩を有効成分として含有する抗癌剤。
【請求項7】
請求項1若しくは2のいずれかに記載のピリミジン誘導体又はその医薬上許容される塩を有効成分として含有する消化管間質腫瘍治療剤。
【請求項8】
請求項1若しくは2のいずれかに記載のピリミジン誘導体又はその医薬上許容される塩を有効成分として含有するマストサイトーシス治療剤。

【公開番号】特開2006−104195(P2006−104195A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259929(P2005−259929)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000004156)日本新薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】