ピロロキノリンキノンおよびその使用
本発明は、実質的に精製されたピロロキノリンキノンを含有する組成物を含み、この組成物は、低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷の処置および防止のための方法において有用である。本発明はまた、本発明の組成物をヒト患者と接触させることを含む心臓損傷の処置および防止のための方法も含む。特定の実施形態では、本発明は、虚血−再灌流損傷を防止、処置、または低減するための方法であって、それを必要としている被験体に、治療的に有効な量のピロロキノリンキノンを投与し、それによって該被験体の臓器および組織を、虚血性傷害により引き起こされる再灌流損傷から保護することを含む、方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
心臓は、酸素および栄養分の送達ならびに有害代謝産物の除去について、絶え間ない血流に決定的に依存する。虚血は、心筋の代謝および細胞損傷における急速な変化に至り、その損傷の程度は、虚血の重篤度に依存する。連続した虚血は、数時間で、全組織壊死に至る。
【0002】
再灌流は、一般に有益であると考えられるが、いくつかの機構により組織損傷を引き起こす。臨床的には、開胸手術、心臓移植、および心臓疾患の逆転において、虚血−再灌流による損傷に対する心筋の保護は、最大の臨床的関心となっている問題である。さらに、再灌流による酸素付加の回復(再酸素付加)後の低酸素損傷の悪化は、他のタイプの臓器移植における細胞損傷、ならびに肝臓、腸、脳、腎臓、および他の虚血性症候群における細胞損傷の重要な機構である。細胞の低酸素および再酸素付加は、反応性酸素種(ROS)を生成することにより部分的に虚血−再灌流損傷を引き起こす。
【0003】
1970年代末期における細菌からの遊離PQQの最初の単離以来、さらなる研究は、PQQが脊椎動物にとっての必須栄養素であり、おそらくビタミンB群に属することを示している(非特許文献1)。遊離PQQは、赤血球、好中球、脳脊髄液、滑液、胆汁において(非特許文献2)、および人乳(非特許文献3)において確認されている。痕跡量の遊離PQQもまた、ヒトの脾臓、膵臓、肺、脳、心臓、腸、肝臓、および精巣、血漿および尿、ならびにラットの小腸、肝臓および精巣において検出されている(非特許文献4)。PQQ依存性デヒドロゲナーゼ酵素は、マウスにおけるアミノ酸リジン分解経路にとって極めて重要である。この反応において、PQQは哺乳動物レドックス補因子として作用する(非特許文献5)。ヒトの組織および体液中のPQQレベルは、食品中で見出されるレベルよりも5〜10倍低いので、ヒトの組織中のPQQが、少なくとも部分的に、野菜および肉を含む食事源に由来する可能性がある(非特許文献6)。PQQを欠く食餌をマウスに与えた場合、マウスは成長が遅く、脆い皮膚および低下した免疫応答を有し、繁殖が良好ではない。PQQの補充により、化学的に既定された、ただし他の点では栄養的に完全な食餌を供給されたマウスにおいて、繁殖能力、成長を改善することができ、新生仔の細胞外マトリックス生産および成熟の指数を調節し得ることが示されている(非特許文献7)。グルタミン酸受容体のN−メチル−D−アスパルテート(NMDA)サブタイプの過剰な活性化は、低酸素/虚血におけるニューロン損傷プロセスにおいて決定的であり、NMDAアンタゴニストはグルタミン酸媒介性神経毒性のインビトロモデルおよびインビボモデル両方においてニューロン損傷を改善し得る。以前の研究の結果は、PQQが脳低酸素/虚血の齧歯類モデルにおいて脳損傷に対する保護効果を有することを証明し、PQQが発作の治療における潜在的用途を有し得ることを示唆した(非特許文献8)。PQQは限局性脳虚血および癲癇の動物モデルにおいて有効なことが示されているが、保護機構は十分に理解されていない(非特許文献9)。
【0004】
1つの報告だけが、PQQの潜在的心臓保護効果を調査した。この研究は、心臓排出液中に放出されるLDH活性で測定したところ、PQQが、単離されたウサギ心臓を再酸素付加損傷から保護することを示した(非特許文献10)。しかしながら、この情報に基づいて、PQQが、予防的に(前処置)または虚血発症後の再灌流時(処置)のいずれかで与えられた場合に梗塞サイズを低減するのに有効な薬剤であるか否かは、決定できなかった。
【非特許文献1】Paz MAら,The biomedical significance of PQQ.Davidson VL編:Principles and Applications of Quinoproteins,1992,by Marcel Dekker,Inc.P381−393.,Kasahara T,およびKato T.,Nature 2003;422:832
【非特許文献2】Gallop PMら,Connect Tissue Res 1993;29:153−161
【非特許文献3】Mitchell AEら,Analytical Biochemistry 1999;269:317−325
【非特許文献4】Kumazawa Tら,Biochim Biophys Acta 1992;1156:62−66
【非特許文献5】Kasahara,T.およびKato,T.,Nature 200;422:832
【非特許文献6】Kumazawa Tら,Biochem J 1995;307:331−333
【非特許文献7】Steinberg Fら,Exp Biol Med (Maywood)2003;228:160−166,Steinberg FMら,J Nutr 1994;124:744−753
【非特許文献8】Jensen FEら,Neuroscience 1994;62(2):399−406
【非特許文献9】Zhang YおよびRosenberg PA.European J Neuroscience 2002;16:1015−1024.,Jensen FEら
【非特許文献10】Xu Fら,Biochemical Biophysical Research Communications 1993,193:434−439
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書において、本発明者らは、PQQを用いた前処置または処置が、虚血または虚血−再灌流損傷のインタクトなラットモデルの心筋梗塞サイズを著しく低減し得ることを初めて証明する。
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、心筋の酸化的ストレスが、特定の心臓保護因子の投与によって防止または最小化され得、従って、心血管疾患および他の疾患を処置することに関して利点があるという知見に関する。特に、無毒性投与量のピロロキノリンキノン(「PQQ」)薬が心臓保護剤として有用であり、従って、例えば、冠動脈遮断に起因した、例えば虚血−再灌流損傷、鬱血性心不全、心停止および心筋梗塞のような種々の様々な心臓関連の病気の処置において、ならびに心臓保護のために、有益であることが見出されている。PQQは特に、(酸化的ストレスの対象である)心筋細胞が細胞死から保護されるように、心筋の酸化的ストレスを調節することが見出されている。
【0007】
本発明の組成物および方法は、インビボおよびエキソビボでの低酸素/虚血性の心臓損傷の減少または除去、ならびに心血管疾患の予防および/または処置の必要のあるヒトなどの哺乳動物における心血管疾患の予防および/または処置に驚くほど役立つ。
【0008】
本発明の別の態様において、PQQは、ミトコンドリアチャネルmitoKATP、一酸化窒素−プロテインキナーゼC経路、およびアンジオテンシン変換酵素経路のような、心臓保護シグナリング経路を調節、例えば、その効果を増強または維持することが見出されている。
【0009】
本発明の別の態様において、本発明は、心筋細胞が細胞死から保護されるように心筋の酸化的ストレスを調節する薬剤を投与することにより、被験体の心筋細胞における心筋の酸化的ストレスを処置または防止することに関した。
【0010】
本発明の別の態様において、本発明は、心筋細胞が細胞死から保護されるように心筋の低酸素性損傷または虚血性損傷を調節する薬剤を投与することにより、被験体における心筋の低酸素性損傷または虚血性損傷を処置または防止することに関した。
【0011】
本発明の別の態様において、PQQは、心筋の酸化的ストレスによって引き起こされるフリーラジカル損傷を調節することが見出された。虚血条件または低酸素条件によって生成されるフリーラジカルは、心筋死に至る心筋損傷の重大な原因であることが見出されている。従って、インビボで無毒性投与量において投与されるPQQの投与は、心筋の酸化的ストレスのフリーラジカル損傷を阻害または防止するための有効な処置である。
【0012】
本発明はさらに、冠動脈血流を改善されるように、無毒性量のPQQを被験体に投与することにより、冠動脈血流を改善する方法に関する。
【0013】
一つの態様において、本発明は、ピロロキノリンキノンを、例えば、心臓損傷を処置または防止するのに有効な量、投与することにより、被験体における低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷を処置または防止することに関する。PQQは一般的に、無毒性濃度、例えば、900μM未満、700μM未満、500μM未満、300μM未満、100μM未満、または50μM未満を含む約1nM〜10μM未満、で投与される。他の実施形態において、PQQは、約1〜10μMの濃度で投与され得る。他の実施形態において、PQQは、被験体の体重に応じて投与される。PQQは一般的に、被験体の体重1Kg当たり、500mg/kg未満、250mg/kg未満、100mg/kg未満、10mg/kg未満、5mg/kg未満、3mg/kg未満、2mg/kg未満、1mg/kg未満、500μg/kg未満、250μg/kg未満、100μg/kg未満、10μg/kg未満、5μg/kg未満、2μg/kg未満または1μg/kg未満を含む約1μg/kg〜1g/kgの濃度で投与され得る。
【0014】
本発明は、例えば、心臓保護をもたらすのに有効な量のPQQ、および薬学的に許容されるキャリアを含有する心臓保護薬をさらに含む。また、心臓損傷、発作、または片頭痛の危険性がある患者を処置するためのキットであって、1つ以上の容器中に、有効量のピロロキノリンキノン、薬学的に許容されるキャリア、および使用説明書を含むキットも含まれる。
【0015】
別の態様において、本発明は、NADPH依存性メトヘモグロビンレダクターゼ基質の投与による、インビボで低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷の処置または防止;ならびに有効量のNADPH依存性メトヘモグロビンレダクターゼ基質、薬学的に許容されるキャリア、および使用説明書を含む、心臓損傷の処置または防止に使用するためのキットに関する。本発明のいくつかの実施形態において、NADPH依存性メトヘモグロビンレダクターゼ基質は、哺乳動物赤血球(例えば、ヒト、ウシ、もしくはマウス)または非哺乳動物赤血球(例えば、Rana catesbeiana)のような赤血球から精製される。
【0016】
さらに別の態様において、本発明は、臓器または組織移植中の臓器損傷を防止する方法であって、PQQが、臓器または組織の取り出し前に、および/または取り出しと同時に臓器ドナーに投与される方法、ならびに、臓器または組織移植中の臓器損傷を防止するために使用されるキットであって、有効量のピロロキノリンキノン、薬学的に許容されるキャリア、および使用説明書を備えるキットに関する。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、所望の保護効果を得るのに有効な量のPQQを投与することにより、例えば、心不全を患っている被験体において、発作を防止するための方法に関する。PQQは、望ましくは、例えば、約1〜10μMの濃度で投与され得る。1つの実施形態において、PQQは、発作を患う危険にさらされている被験体における発作を防止するために、治療的に有効な量のタモキシフェンと同時投与され得る。
【0018】
本発明は、PQQおよび1つ以上の付加的な治療用化合物を投与することによって、被験体における心不全を処置するための方法を含む。いくつかの実施形態において、付加的な治療用化合物は、抗血小板薬、抗凝固薬および/または抗血栓薬、あるいはそれらの組み合わせであり得る。
【0019】
別の態様において、本発明は、心筋梗塞が低減または安定化されるようなレベルでPQQを投与することによって、被験体における心筋梗塞を処置する方法に関する。
【0020】
さらに別の態様では、本発明は、PQQで被験体を処置することによって、被験体における片頭痛を防止する方法に関する。PQQは望ましくは、例えば、約1〜約10μMの濃度で投与され得る。
【0021】
さらに別の態様では、本発明は、PQQで被験体を処置することによって、低体温症を患っているかまたは低体温症の危険性がある被験体における再灌流損傷を防止する方法に関する。PQQは望ましくは、例えば、約1〜約10μMの濃度で投与され得る。
【0022】
本発明はさらに、PQQで被験体を予め処置することによって、被験体におけるバルーン血管形成術後の血管閉塞を防止するための方法に関する。被験体はまた、PQQおよび1つ以上の付加的な治療用化合物(例えば、クマジン、カプトプリル、ベナゼプリル、エナラプリル、ホシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラミプリル、イミダプリル、ペリドプリルエルブミンおよびトランドラプリルのようなアンギオテンシン変換酵素(ACE)インヒビター、ならびにロサルタン、イルベサルタン、カンデサルタンシレキセチルおよびバルサルタンのようなACE受容体遮断薬で予め処置されてもよい。いくつかの実施形態において、付加的な治療用化合物は、抗血小板薬、抗凝固薬および/もしくは抗血栓薬、あるいはそれらの組み合わせであり得る。
【0023】
別の態様において、本発明は、被験体にPQQを投与することによって、低体温損傷を患う被験体における再灌流損傷を防止または低減するための方法を含む。
【0024】
本発明はさらに、治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンおよび治療的に有効な用量のメトプロロールを含む、心筋梗塞の処置を必要とする被験体における心筋梗塞を処置するための薬学的組成物に関する。心筋梗塞を処置するための薬学的組成物の1つの実施形態において、ピロロキノリンキノンの治療的に有効な用量は、3mg/kgである。心筋梗塞を処置するための薬学的組成物の別の実施形態において、メトプロロールの治療的に有効な用量は、1mg/kgである。
【0025】
本発明はさらに、低酸素または虚血に関連した心臓損傷を処置または防止するためのキットに関し、このキットは、1つ以上の容器中に、ピロロキノリンキニーネ、メトプロロール、薬学的に許容されるキャリア、およびこのキットの使用説明書を含む。
【0026】
本発明はさらに、心筋の酸化的ストレスの処置または防止を必要とする被験体に治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンおよび治療的に有効な用量のメトプロロールを投与することを含む、被験体における心筋の酸化的ストレスを処置または防止する方法に関する。
【0027】
本発明はさらに、心筋梗塞の処置または防止を必要とする被験体に治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンおよび治療的に有効な用量のメトプロロールを投与することを含む、被験体における心筋梗塞を処置または防止する方法に関する。
【0028】
本発明はさらに、低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷の処置または防止を必要とする被験体に治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンおよび治療的に有効な用量のメトプロロールを投与することを含む、被験体における低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷を処置または防止する方法に関する。
【0029】
本発明はさらに、蛋白質ニトロ化に起因する血管損傷また疾患の処置を必要とする被験体に治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンを単独で、または尿酸塩と組み合わせて投与することにより、蛋白質ニトロ化に起因する血管損傷または疾患を処置するための方法を提供する。
【0030】
本発明はまた、PQQ投与に関連した腎毒性の低減を必要とする被験体に治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンをプロベネシソ、シラスタチン、または他の通管流遮断剤と組み合わせて被験体に投与することにより、PQQ投与に関連した腎毒性を低減する方法も提供する。
【0031】
本発明のこれらおよび他の目的は、以下に提供する発明の詳細な説明から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(発明の詳細な説明)
本発明の特徴および他の詳細は、添付の図面を参照してより詳細に記載され、特許請求の範囲において示される。本明細書に記載される特定の実施形態が例示として示され、そして、本発明の限定ではないことが理解される。本発明の主な特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、各種実施形態において使用され得る。全ての部および百分率は、他に特定しない場合には、重量による。
【0033】
(定義)
便宜上、明細書、実施例および添付の特許請求の範囲において使用される特定の用語をここで集める。他に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。しかしながら、これらの定義が当該分野内で広まっている意味から変化する場合には、下記の定義が優先するものとする。
【0034】
「虚血」は、身体のいずれかの臓器または組織への血流の減少または停止を含む。本明細書で用いられるように、用語「虚血」は、例えば、血管虚血(例えば、心臓および肺)、肝臓虚血、腸虚血、脳虚血、腎臓虚血、および肢虚血を含むいかなる虚血症候群にも関する。
【0035】
「低酸素」は、身体組織に到達する酸素量の欠乏を含む。
【0036】
「低酸素または虚血関連損傷」は、心臓損傷を含むが、これに限定されない。
【0037】
「再灌流」は、心臓発作または発作の後のように、その血液供給が中断された臓器または組織への血流の回復を含む。
【0038】
「酸化的ストレス」は、過剰のフリーラジカル、抗酸化剤レベルの減少、またはその両方が存在する場合に発生する状態を含む。
【0039】
「壊死」は、特に、心筋のような身体の局部における損傷または疾患による細胞または組織の死を含む。
【0040】
「アポトーシス」とは、プログラム細胞死をいう。
【0041】
「β遮断剤」としては、アテノロール、メトプロロールおよびプロプラノロールのようなアドレナリンβ受容体において競合的アンタゴニストとして作用する薬剤が含まれる。このような薬剤はまた、減少した全身性副作用を許容する、心臓(β−1)受容体に関してより選択的な薬剤も含む。β遮断剤は、高血圧、心臓不整脈、片頭痛、および交感神経系に関連した他の障害と関係がある症状を低減させる。β遮断剤はまた、時々、心臓発作後に、心拍を安定させるために与えられる。交感神経系の中で、βアドレナリン作用性受容体は主に、心臓、肺、腎臓、および血管中に位置する。β遮断剤は、神経刺激ホルモンエピネフリンとこれらの受容体部位を競合し、従って、エピネフリンの作用を妨害し、血圧および心拍数を低下させ、不整脈を止め、そして片頭痛を防止する。
【0042】
「心臓損傷」は、虚血−再灌流損傷;鬱血性心不全;心停止;心筋梗塞;薬物(例えば、ドキソルビシン、ハーセプチン、チオリダジンおよびシサプリド)のような化合物によって引き起こされる心臓毒性;寄生生物感染(細菌、菌類、リケッチア、およびウイルス、例えば、梅毒、慢性Trypanosoma cruzi感染)に起因する心臓損傷;劇症心臓アミロイドーシス;心臓手術;心臓移植;および外傷性心臓損傷(例えば、穿通性もしくは閉鎖性心臓損傷、大動脈弁破裂)を含む、心臓および/または関連組織(例えば、心膜、大動脈および他の関連血管)を含む任意の慢性または急性の病理学的事象を含む。
【0043】
「被験体」は、ヒト、サル、雌ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、畜牛、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、それらからの培養細胞、およびそれらのトランスジェニック種のような生きている生物体を含む。好ましい実施形態において、被験体は、ヒトである。処置される被験体に対する本発明の組成物の投与は、公知の手順を用いて、被験体における状態を処置するのに有効な投与量でかつ有効な期間にわたって実行され得る。治療効果を達成するのに必要な治療用化合物の有効量は、被験体の年齢、性別、および体重のような要因、ならびに治療用化合物が被験体における外来因子を処置する能力に従って変化し得る。投与量のレジメンは、最適治療応答を提供するように調節され得る。例えば、いくつかに分割された用量が毎日投与されてもよく、または用量は治療状態の緊急性により示されるように比例して減少されてもよい。
【0044】
「実質的に純粋な」とは、化合物、例えば、天然では付随する成分から分離された、薬剤、タンパク質またはポリペチドを含む。典型的には、試料中の全材料の(体積、湿重量または乾燥重量、あるいはモルパーセントまたはモル分率によって)少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、そして最も好ましくは少なくとも99%が目的の化合物である場合、その化合物は実質的に純粋である。純度は、任意の適切な方法、例えば、ポリペチドの場合、カラムクロマトグラフィ、ゲル電気泳動またはHPLC分析、によって測定され得る。化合物、例えば、タンパク質はまた、天然で会合している成分を実質的に含まない場合、または天然の状態で付随している天然の夾雑物から分離されている場合、実質的に精製されている。用語「実質的に純粋な」の意味の範囲内に含まれるのは、試料中の総タンパク質の(体積、湿重量または乾燥重量、あるいはモルパーセントまたはモル分率によって)少なくとも95%が目的のタンパク質またはポリペチドである、均一に純粋である化合物、例えば、タンパク質またはポリペチドである。
【0045】
「投与する」は、本発明の組成物がその意図された機能、例えば、低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷の処置または防止、を発揮し得る投与経路を含む。処置されるべき疾患または状態に依存して、非経口投与(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下の注射)、経口投与(例えば、食事)、局所、鼻、直腸、または徐放性マイクロキャリアが含まれるが、これらに必ずしも限定されるわけではない様々な投与経路が可能である。口腔投与、非経口投与および静脈内投与は好ましい投与形態である。投与されるべき化合物の処方物は、選択される投与経路(例えば、液剤、乳剤、ゲル剤、エアゾール剤、カプセル剤)に従って変化する。投与されるべき化合物を含む適切な組成物は、生理的に受容され得るビヒクルまたはキャリアおよび必要に応じて佐剤および保存剤中で調製され得る。液剤または乳剤に関して、適切なキャリアとしては、例えば、生理的食塩水および緩衝化媒質、滅菌水、クリーム、軟膏、ローション、オイル、ペーストおよび固体キャリアを含む、水性またはアルコール性/水性溶液、乳液または懸濁液が含まれる。非経口的ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲルまたは不揮発性油が含まれ得る。静脈内ビヒクルとしては、様々な添加剤、保存剤または流体、栄養分もしくは電解質補充剤が含まれ得る(一般に、Remington’s Pharmaceutical Science,第16版,Mack、Ed.(1980)を参照のこと)。
【0046】
「有効量」は、その意図された機能、例えば、本明細書に記載される通りの低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷を部分的または完全に処置または防止すること、を実行することを可能にするピロロキノリンキノン量を含む。有効量は、生物学的活性、年齢、体重、性別、全般的健康状態、処置されるべき状態の重篤度、ならびに適切な薬物動態学的特性を含む多くの要因に依存する。例えば、活性物質の投与量は、約0.0lmg/kg/日〜約500mg/kg/日、有利には、0.lmg/kg/日〜約100mg/kg/日であり得る。活性物質の治療上有効な量は、一回用量または複数回用量で、適切な経路により投与され得る。さらに、活性物質の投与量は、治療状況または予防状況の緊急性により示されるように、比例して増減され得る。
【0047】
「特異的結合」または「特異的に結合する」は、ピロロキノリンキノンまたはそのリガンドを認識して結合するが、試料中の他の分子を実質的には認識も結合もしない抗体のようなタンパク質が含まれる。
【0048】
「薬学的に許容されるキャリア」としては、化合物の活性と適合性がありかつ被験体にとって生理的に受容され得る、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等が含まれる。薬学的に許容されるキャリアの例は、緩衝化通常生理食塩水(0.15M NaCl)である。薬学的に活性な物質のためのこのような媒質および薬剤の使用は、当該分野で周知である。任意の従来の媒質または薬剤が治療用化合物と適合性がない場合を除いて、薬学的投与に適する組成物におけるその使用が意図される。補助的な活性化合物もまた、組成物に組み込まれ得る。
【0049】
「薬学的に許容されるエステル」としては、本発明の治療用化合物の比較的無毒性のエステル型生成物が含まれる。これらのエステルは、治療用化合物の最終的な単離および精製中に、またはその遊離酸形態もしくはヒドロキシルの精製された治療用化合物を適切なエステル化剤と別々に反応させることによって、現場で調製することができ;いずれも、当業者に公知の方法である。酸は、例えば、触媒存在下でのアルコールを用いた処理によって、当業者に周知の方法に従って、エステルに変換され得る。
【0050】
「付加的な成分」としては、以下のうちの1つ以上が含まれるがこれらに限定されない:賦形剤;界面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;顆粒化および崩壊剤;結合剤;滑沢剤;甘味料;フレーバー剤;着色剤;保存剤;ゼラチンのような生理的に分解可能な組成物;水性ビヒクルおよび溶媒;油性ビヒクルおよび溶媒;懸濁剤;分散または湿潤剤;乳化剤、粘滑剤;緩衝剤;塩;増粘剤;充填材;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定剤;および薬学的に許容されるポリマー材料または疎水性材料。本発明の薬学的組成物に含まれ得る他の「付加的な成分」は、当該分野で公知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0051】
「単位用量」は、所定量の活性成分を含む、別々の量の薬学的組成物を含む。
【0052】
ピロロキノリンキノン(PQQ)は、様々な還元剤と酸化剤との間で触媒的に電子を移動させ得る水溶性アニオン性キノンであり、真核生物細胞における可溶性電子伝達系の一部であり得る。本来のPQQは、以下の一般構造のものである:
【0053】
【化1】
本明細書で用いられるように、「ピロロキノリンキノン」すなわち「PQQ」は、PQQの密接に関連した異性体類似物および立体異性体類似物を含む、化学的類似性を有するピロロキノリンキノンファミリーの任意のメンバーを含み(例えば、Zhangら,1995,Biochem.Biophys.Res.Commun.212:41−47,1995参照)、さらに任意のPQQ連結ポリマー(例えば、PQQ連結ポリビニルポリマー)を含む。PQQは、メトキサチンとしても知られている。PQQは、動物の組織および体液中に見出される。理論により束縛されることを望まないが、PQQは、特に反応性酸素種(ROS)のフリーラジカルスカベンジャーとして部分的に作用し得る。従って、PQQは、NADPH依存性メトヘモグロビンレダクターゼ基質として機能し得る(例えば、Xuら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1992,89(6):2130−4参照)。他のNADPH依存性メトヘモグロビンレダクターゼ基質は、低酸素または虚血に関連した心臓損傷を減少させるかまたは除去するように機能し得る。
【0054】
実質的に精製されたピロロキノリンキノンを含む組成物は、ピロロキノリンキノンを単独で、またはβ遮断剤のような他の成分、およびフェニレフリン、スフィンゴシン−1−リン酸またはガングリオシドGM−1のような心臓保護シグナリング経路を好都合に調節するのに効果的である化合物と組み合わせて含み得る。ピロロキノリンキノンは、当業者に周知の方法のいずれかによって実質的に精製され得る(例えば、E.J.CoreyおよびAlfonso Tramontano,J.Am.Chem.Soc.,103,5599−5600(1981);J.A.Duine,Review Ann.Rev.Biochem.58,403(1989)参照)。
【0055】
1つの実施形態において、本発明は、1つ以上のポリマーに連結させられ、それによって組織保護のためのPQQの薬物動態学、薬力学、効力、および安全性を改善するPQQを提供する。PQQが連結させられ得るポリマーとしては、ポリビニルアルコール、PEG−NH2、または以下の実施例7および参照書類A(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるポリマーのいずれかが含まれるが、それらに限定されない。
【0056】
本発明のピロロキノリンキノンは、1つの実施形態において、薬学的組成物の1つの成分であり、薬学的組成物はまた、薬学的組成物として受容され得る、緩衝剤、塩、他のタンパク質、および他の成分を含み得る。本発明はまた、ピロロキノリンキノンの改変形態を含み、これは、本明細書に記載される通りの低酸素/虚血性の心臓損傷を防止または低減し得る。
【0057】
本発明の治療用化合物の構造は、不斉炭素原子を含み得る。このような非対称性から生じる異性体(例えば、エナンチオマーおよびジアステレオマー)は本発明の範囲内に含まれることがしたがって理解されるべきである。このような異性体は、古典的分離技術によって、および立体配置的に制御された合成によって、実質的に純粋な形態で入手され得る。本出願の目的のため、明示的にそうでないと注記されない限り、治療用化合物は各キラル中心においてR立体異性体またはS立体異性体の両方を含むと解釈されるものとする。特定の実施形態において、本発明の治療用化合物は、カチオンを含む。カチオン性基が水素H+であれば、治療用化合物は酸と考えられる。水素が金属イオンまたはその等価物と置き換えられれば、治療用化合物は酸の塩である。治療用化合物の薬学的に許容される塩は、本発明の範囲内にあり、例えば、薬学的に許容されるアルカリ金属(例えば、Li+、Na+、またはK+)塩、アンモニウムカチオン塩、アルカリ土類カチオン塩(例えば、Ca2+、Ba2+、Mg2+)、より高原子価のカチオン塩、またはポリカチオン性対イオン塩(例えば、ポリアンモニウムカチオン)である(例えば、Bergeら(1977)「Pharmaceutical Salts」,J.Pharm.Sci.66:1−19参照)。塩形成対イオン(もしあれば)に対するアニオン性化合物の化学量論が、この化合物のアニオン性部分の電荷(もしあれば)およびこの対イオンの電荷に依存して変化することが理解される。好ましい薬学的に許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩が含まれるが、他の塩もまた、それらの薬学的に許容される範囲内で意図される。
【0058】
本発明は、被験体における、低酸素または虚血によって引き起こされるような、心筋の酸化的ストレスを処置または防止する方法にも関する。これは、その必要のある被験体に、酸化的ストレスの標的である心筋細胞が細胞死から保護されるように、好ましくは無毒性量のPQQのような心筋の酸化的ストレスを調節する薬剤を投与することによって行われる。細胞死は、例えば、壊死またはアポトーシスに起因し得る。
【0059】
心臓保護シグナリング経路は、当該分野で公知である。これらの経路は、心臓保護シグナリング経路の効果を強化または維持するのに有効な量のピロロキノリンキノンを投与することによって、心臓保護を必要とする患者における強化のために目標とされ得る。
【0060】
虚血性条件または低酸素条件によって発生されるフリーラジカルが、心筋の死に至る心筋損傷の重大な原因であることが見出されている。従って、例えば、無毒性投与量において、インビボで投与されるPQQの投与は、PQQ媒介性フリーラジカルスカベンジング、またはフリーラジカル生成阻害のいずれかによって、心筋の酸化的ストレスのフリーラジカル損傷を阻害または防止するための有効な処置である。
【0061】
臨床的に必要であるかまたは望ましい場合、例えば、再灌流の開始時、または再灌流の前に、本発明の化合物の投与がなされ得る。
【0062】
冠動脈流の改善の必要のある被験体に無毒性量のピロロキノリンキノンを投与することによって、被験体、例えば、低血流状態を患う被験体において冠動脈流が有益に改善され得ることもまた、驚くべきことに見出された。これは、実施例において、例示される。冠動脈流は、左心室拡張期圧(「LVDP」)または左心室拡張末期圧(「LVEDP」)のような、いくつかの指標によって測定され得る。LVDPまたはLVEDPを決定することによるような、冠動脈流の測定は、当業者の技術範囲内である。
【0063】
従って、心筋梗塞のような、低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷は、好ましくは無毒性投与量の、例えば、約10μM未満の濃度のピロロキノリンキノンの投与によって処置または防止され得る。
【0064】
ラットを、2つの異なるモデルに準拠するPQQ処置にかけた。モデル1(図10Aに模式的に示される)において、雄性Sprague−Dawleyラットを、再灌流なしで2時間の左前下行(LAD)冠動脈結紮に供した。モデル2(虚血−再灌流、図10Bに示される)において、ラットは、左心室(LV)血行力学をモニタリングしつつ17分間または30分間のLAD閉塞および2時間の再灌流に供した。PQQ(15〜20mg/kg)を、ヒトにおける臨床状態を模倣するために、LAD閉塞の30分前にi.p.注射によって(前処置)、または再灌流の開始時にi.v.注射によって(処置)のいずれかで与えた。対照は、ビヒクル(2% NaHCO3)を受けた。
【0065】
モデル1において、PQQ処置の後の梗塞サイズ(梗塞量/LV量)は、対照より小さかった(19.1±2.1%の対照に対して、PQQ処置は10.0±1.5の梗塞サイズの結果になった;n=9、P<0.01)。モデル2において、PQQでの前処置または処置のいずれもが、梗塞サイズ(梗塞量/危険領域)の減少をもたらした(PQQ前処置の梗塞サイズが18.4±2.3、処置の梗塞サイズが25.6±3.5%、これに対し、対照は38.1±2.6%、P<0.01)。PQQは、1〜2の後、より高いLV発生圧力、LV(+)dP/dtおよびより低いLV(−)dP/dtにおいて、虚血誘発性の心臓機能不全を防止した。
【0066】
要約すると、PQQは、虚血か虚血−再灌流からなる2つの別々のインタクトなラットの梗塞形成モデルにおいて心臓保護効果を有した。PQQは、虚血もしくは虚血−再灌流の前に与えられた場合、または再灌流の開始時に与えられた場合のいずれにおいても、梗塞サイズを低下させた。さらに、PQQは、1〜2時間の再灌流において増加した左心室(LV)発生圧力およびLV(+)dP/dtにより証明されたように、有益な血行力学的効果を有した。PQQでの前処置は、ラットあたりの心室性細動(VF)の平均エピソードおよびVFを有するラットのパーセンテージを減少させたのに対し、PQQでの処置は、虚血および再灌流中にVFを有するラットのパーセンテージを減少させた。PQQの用量は、梗塞サイズに逆相関した。PQQは、虚血心筋における脂質過酸化の指標である、マロンジアルデヒド(MDA)のレベルを低下させた。
【0067】
モデル2における3つの群の虚血−再灌流期間中の死亡率は、PQQ後に減少する傾向があった(対照:28.6%、前処置:12.9%、処置:21.7%)。しかしながら、これらの結果は、統計的有意差には達しなかった。研究が梗塞サイズおよび血行力学の測定に集中しており、より多数の動物を必要とする死亡率試験として設計されなかった点に留意すべきである。
【0068】
PQQは、再灌流の開始時に与えられる場合も効果的である。チオバルビツール酸と反応する脂質過酸化産物であるマロンジアルデヒド(MDA)の心筋組織レベルの研究を完了した。虚血/再灌流は、MDAレベルを上昇させ、PQQはこの上昇を防止した。虚血/再灌流(I/R)後のPQQと偽対照とを比較した値は、3倍異なった。同様の効果が、離れた「正常」心筋において見られた。
【0069】
前処置としてまたは再灌流の開始時の処置としてのいずれかで与えられるPQQは、虚血および虚血−再灌流のラットモデルにおいて用量関連様式で、心筋梗塞サイズを減らして、心機能を改善することに非常に効果的である。脂質過酸化のこの指標がPQQによって減少したことを示すマロンジアルデヒド(MDA)の結果は、PQQが虚血心筋においてフリーラジカルスカベンジャーとして作用することを示唆する。
【0070】
理論に束縛されることを望まないが、1つの考え得るPQQ作用機構は、PQQがフリーラジカルスカベンジャーとして作用するということである。最近の研究は、PQQがキノンタンパク質酵素の補因子として作用することに加えてフリーラジカルスカベンジャーとして機能することを示す(Urakami Tら,J Nutr Sci Vitaminol(Tokyo)1997;43:19−33,He Kら,Biochemical Pharmacology 2003;65:67−74)。PQQは、ペルオキシ硝酸形成を抑制することによって、神経保護剤として作用し得る(Zhang YおよびRosenberg PA)。PQQは、ミトコンドリアを酸化的ストレス誘発性脂質過酸化、タンパク質カルボニル形成およびミトコンドリア呼吸鎖の不活化から保護する有効な抗酸化剤であった(He Kら,Miyauchi Kら,Antioxid Redox Signal 1999;1:547−554)。単球および好中球のような食細胞は、刺激に応答して超酸化物を生成する。PQQのレドックスサイクリングのいくつかのインヒビターは、刺激された好中球および単球双方による超酸化物放出についての遮断剤であることが証明された。これは、PQQがマクロファージおよび好中球双方の呼吸バーストに関係していることを示唆する(Bishop Aら,Free Radic Bio Med 1995;18:617−620,Bishop Aら,Free Radic Bio Med 1994;17:311−320)。
【0071】
本発明者らの結果は、上記の研究と一致している。本発明者らは、PQQでの前処置が梗塞ゾーンの、および離れた「正常」心筋の心筋MDAレベルを有意に低下させることを見出した。本発明者らのデータは、MDAがこの推定上の正常領域においてI/Rによって増加させられたことを示しており、ヒトおよび動物における急性虚血中の離れた心筋におけるLV機能不全の存在を示している他の研究者による報告と一致する(Yang Zら,Circulation 2004;109:1161−1167,Kramer CMら,Circulation 1996;94:660−666)。本発明者らの観察は、PQQが脂質過酸化を減らし、虚血性心筋および非虚血性心筋双方の超酸化物を不活化するという仮説と一致する。従って、虚血−再灌流損傷に対するPQQの保護効果は、フリーラジカルスカベンジャーとしてのその作用に起因し得る。本発明者らの研究において、前処置または処置のいずれかとして与えられるPQQはまた、心室性細動の発生率を低下させた。さらに、PQQは、直接的な抗不整脈効果を有することができ、その抗虚血特性によってVFの減少を引き起こし得る。
【0072】
下記の実施例5に示されるデータは、PQQが脂質過酸化を減らすとともに超酸化物をスカベンジングすることを示唆する。I/R損傷に対するPQQの保護効果がフリーラジカルスカベンジャーとしてのその作用に起因するというさらなる証拠。MDAが推定の正常領域においてI/R後に増加したという観察は、ヒトおよび動物モデル双方において、梗塞ゾーンから離れた心筋が抑制された機能を呈することを示す他の研究者により報告された観察と一致する。
【0073】
再灌流時に梗塞サイズを減らすのに効果的であるPQQの最少用量もまた、実施例5に示されるように決定した。加えて、本発明者らは、ミトコンドリア機能に対するこの用量のPQQの効果を決定した。これらの研究のために、以前に記載された組織調製法を用いた。心臓を、左前下行冠動脈によって灌流される領域を含む前部分と、非梗塞性後部部分とに目視で長手方向に分割した。ラットを、2時間の再灌流の開始の直前の30分間の虚血(I/R)後、PQQにより処置、または処置しなかった(偽対照)。
【0074】
1mg/kgのPQQを用いた再灌流開始時の処置は、心臓も単離されたインタクトなミトコンドリアも、I/R損傷から保護しなかった。しかしながら、3mg/kgのPQQのみでの処置は、梗塞サイズを49%減少させるのに、そしてミトコンドリア呼吸を回復させるのに非常に効果的であった。これらの実験において、血行力学の結果は、以前の報告に記載されている結果と異ならなかった。
【0075】
本発明者らのデータはまた、高危険度患者におけるPQQの予防的投与または活性な虚血性エピソード時の処置のいずれもが、梗塞サイズおよび心室性不整脈を減らすことによって有益であることを示す。本発明者らの結果はまた、これらの手順が急性心筋梗塞の早期処置として使用される場合、PQQでの処置が、化学的血栓崩壊またはバルーン血管形成術/ステント術と同時に発生する再灌流時にも有効であることを示す。この研究において全身血行力学に対する抑制効果がないことも有望である。フリーラジカル生成が損傷の最大の原因である虚血−再灌流損傷の他のモデルにおけるさらなる調査が所望され得る。急性毒性、特にラットにおいて記載された腎機能に対する有害な副作用(Watanabe Aら,Hiroshima J Med Sci 1989;38:49−51)、およびヒトにおけるPQQの潜在的利点は、あるとしても、未決定のままである。
【0076】
それゆえ、虚血前の前処置として、または虚血後の再灌流開始時の処置としてのいずれかで与えられるPQQは、インタクトなラットにおいて用量関連様式で、心筋梗塞サイズを減らして、心機能を改善することに非常に効果的である。PQQは、虚血心筋においてフリーラジカルスカベンジャーとして作用するようである。
【0077】
メトプロロールは、β1選択的(心選択性)アドレナリン作用性受容体遮断剤である。メトプロロールは、心臓の酸素要求量を減らし、心拍数を減らし、そして安静時および運動時の心拍出量を減らし;とりわけ、収縮期血圧を減らす。この薬物は、50mgおよび100mgの錠剤として、酒石酸塩(LOPRESSOR(登録商標),Geigy Pharmaceuticals)として米国内で入手可能である。有効な1日用量は100mg〜450mgであり、LOPRESSOR(登録商標)は通常、2つの1日用量で与えられる100mgとして投与される。メトプロロールは、コハク酸塩(TOPROL XL(登録商標),Astra Pharmaceutical Products,Inc.)として50mg、100mgおよび200mgの長期放出錠剤として米国内で入手可能であり、これは、1日に1回投与され得る)
PQQは、メトプロロールと同時投与され得る。下記の実施例6に示される結果は、PQQおよびメトプロロールの併用により、PQQまたはメトプロロールを単独で使用するよりも大きく梗塞サイズを減らす傾向があったことを示す。1つの実施形態において、メトプロロールは、1:3の比でPQQの用量と共に投与される。例えば、3mg/kgの用量のPQQには、1mg/kgの用量のメトプロロールが付随する。別の実施形態において、メトプロロールは、1日あたり約50mg〜約500mg/日の1日用量のPQQと組み合わせて、約50mg〜約450mgの1日用量で投与される。心筋の酸化的ストレスは、PQQとメトプロロールとの組み合せの投与によって、防止または最小化することができ、それゆえ、心血管および他の疾患を処置することに関して利点を有する。特に、PQQとメトプロロールとの組み合せは、心臓保護剤として有効であり、従って、冠動脈妨害に起因するような虚血−再灌流損傷、鬱血性心不全、心停止および心筋梗塞などの種々の様々な心臓関連の病気の処置において、そして、心臓保護のために有用である。この組み合せは特に、心筋細胞(これは、酸化的ストレスの対象である)を細胞死から保護するように心筋の酸化的ストレスを調節するのに有用である。
【0078】
本発明は、被験体における低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷を処置または防止する方法を包含し、ここで、PQQは、低酸素または虚血に関連した損傷が防止または減少させられるように、その必要のある被験体に投与される。特定の実施形態において、PQQは、約10μM未満の濃度で投与される。他の実施形態では、PQQは、約10nM〜約10μM、約10nM〜約1μM、100nM〜約10μM、および100nM〜約500nMの範囲の濃度で投与される。本発明のさらに他の実施形態では、PQQは、心臓の組織部位におけるPQQの濃度が10nM〜約10μMの範囲にあるような濃度で投与される。PQQはまた、被験体の体重の関数として投与され得る。本発明のいくつかの実施形態では、PQQは、500mg/kg未満、250mg/kg未満、100mg/kg未満、10mg/kg未満、5mg/kg未満、3mg/kg未満、2mg/kg未満、1mg/kg未満、500μg/kg未満、250μg/kg未満、100μg/kg未満、10μg/kg未満、5μg/kg未満、2μg/kg未満または1μg/kg未満を含む、被験体の体重1kgあたり約1μgと1gとの間の濃度で投与される。本発明のさらなる実施形態では、PQQは、無毒性濃度で投与され、この無毒性濃度は、細胞増殖阻害性であるが細胞毒性ではないPQQ濃度、および意図された1つ以上の細胞型(例えば、心筋細胞)以外の細胞型に対して細胞毒性である濃度を含む。1つ以上の細胞型に対する既知濃度のPQQの細胞毒性の決定は、当業者の能力範囲内である。非限定的な例として、培養された成体マウス心筋細胞に対する毒性は、100μMのPQQの濃度で観察される。いくつかの実施形態では、PQQは、抗血小板薬、抗凝固薬および抗血栓薬のような他の化合物と共に投与される。
【0079】
本発明の方法および組成物により処置または防止され得る心臓損傷としては、低酸素および/または虚血によって引き起こされるかまたはそれらによって影響を受ける全ての心臓損傷が含まれる。このような損傷としては、虚血−再灌流損傷、鬱血性心不全、心筋梗塞、薬物(例えば、ドキソルビシン)のような化合物によって引き起こされる心臓毒性、寄生生物感染、劇症心臓アミロイドーシス、心臓手術、心臓移植、および外傷性心臓損傷に起因する心臓損傷が含まれるが、これらに限定されない。関連する血管および/または心膜のような組織を含む、心臓の全体または一部が損傷し得る。
【0080】
本発明はまた、低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷を処置または防止する必要のある被験体にNADPH依存性メトヘモグロビンレダクターゼ基質を投与し、その結果、低酸素または虚血関連の損傷が防止または減少させられるように、被験体における低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷を処置または防止する方法を含む。本発明の実施形態では、NADPH依存性メトヘモグロビンレダクターゼ基質は、哺乳動物(例えば、ヒト、ウシまたはマウス)の赤血球または非哺乳動物(例えば、ウシガエル:Rana catesbeiana)の赤血球から精製される。当業者は、最小の実験を用いてNADPH依存性メトヘモグロビンレダクターゼ基質を単離および精製する方法を知っている。
【0081】
本発明は、臓器または組織の再灌流によって引き起こされる損傷が減少または防止されるように、臓器または組織の取り出しより前にまたは取り出しと同時にピロロキノリンキノンをドナーに投与することにより、臓器移植または組織移植中の臓器または組織の損傷を防止する方法をさらに包含する。好ましい実施形態において、移植されるべき臓器または組織は、心臓または心臓組織である。PQQは、ドナーからの臓器または組織の外科的取り出し後に、臓器または組織と接触され得る。いくつかの実施形態では、PQQは、ウィスコンシン大学溶液またはCelsior溶液のような公知の臓器保存溶液または組織保存溶液に加えて添加される(例えば、Thabutら,Am J Respir Crit Care Med,2001,164(7):1204−8;Faenzaら,Transplantation,2001,72(7):1274−7参照)。
【0082】
本発明はまた、虚血時に臓器または組織が保護されるように、治療的に有効な量のPQQを単独でまたは別の生物学的に活性な薬剤と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与することにより、腸虚血、肝臓虚血、脳虚血、腎臓虚血、血管虚血、または肢虚血のような虚血症候群の結果生じる臓器不全または組織損傷を処置、または低減させるための方法も提供する。保護され得る臓器および組織としては、腎臓、肺、肝臓、心臓、胃、膵臓、虫垂、脳、眼、生殖器、心臓組織、および皮膚組織が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
本発明はまた、治療的に有効な量のテトラヨードサイロ酢酸(Tetrac)および/またはPQQを、それを必要とする被験体に投与することにより、上昇した肺血圧のような急性高山病または高度病もしくは高高度肺水腫のような症状を処置、または低減させるための方法も提供する。保護され得る臓器および組織としては、腎臓、肺、肝臓、心臓、胃、膵臓、虫垂、脳、眼、生殖器、心臓組織、および皮膚組織が含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
本発明は、ピロロキノリンキノンおよび薬学的に許容されるキャリアで被験体を処置することによって、心不全を患っている被験体(例えば、ヒト)の発作を防止することにより神経保護を提供する方法をさらに包含する。いくつかの実施形態において、ピロロキノリンキノンは、約10μM未満の濃度で被験体に投与される。PQQは、患者における発作の可能性を増大させ得る外科的手順の前またはその手順と同時に投与され得る。1つの実施形態において、手順は、バルーン血管形成術である。他の手順としては、冠動脈バイパス手術および弁置換手術が含まれる。PQQは、抗血栓剤(例えば、クマジン)の前、抗血栓剤と同時または抗血栓剤後に投与され得る。さらに別の実施形態において、神経保護は、治療的に有効な用量のタモキシフェンが発作の危険性がある被験体に投与される前、投与と同時に、または投与後にPQQを投与することにより達成され得る。
【0085】
本発明はまた、ピロロキノリンキノンおよび薬学的に許容されるキャリアで被験体を処置することによって、被験体(例えば、ヒト)の頭痛を低減または予防する方法も包含する。このような頭痛としては、急性および慢性の片頭痛および副鼻洞頭痛が含まれる。
【0086】
本発明は、ピロロキノリンキノンおよび薬学的に許容されるキャリアで被験体を処置することによって、低体温を患う被験体(例えば、ヒト)の再灌流損傷を防止する方法をさらに包含する。被験体は、当該分野で一般に公知であるように、低体温症を患っている人を処置するための標準復温手順の前またはこの手順と同時にPQQで処置され得る。
【0087】
上記のように、PQQとメトプロロールとの併用治療は、本発明の一部である。本発明の併用治療は、患者における心筋梗塞の所望の処置を得るために、任意の適切な様式によって投与される。実質的に同時の投与は、例えば、固定されたPQQ対メトプロロール比を有する単一の注入液、または複数の単一注射を被験体に投与することによって達成され得る。併用治療の成分は、上記のように、同じ経路によって、または異なる経路によって投与され得る。例えば、PQQは経口投与され、その一方で、メトプロロールは静脈内に投与される;あるいは、全ての治療剤は、静脈内注射により投与され得る。治療剤が投与される順序は、決定的であるとは考えられない。
【0088】
PQQはまた、腎毒性を低減または防止するために、腎臓保護剤と同時投与され得る。PQQとの同時投与に適する腎臓保護剤としては、通管流にとってのインピーダンス遮断剤である任意の化合物、すなわち、腎毒性を引き起こす化合物の通管流を妨げる化合物が含まれる。代表的な化合物としては、プロベネシドおよびシラスタチンが含まれる。プロベネシドは現在、慢性の痛風および痛風性関節炎の処置において使用するために市販されている。プロベネシドは、痛風に関連する発作がひとたび起きた場合にその発作を処置するためではなく、その発作を防止するために用いられる。プロベネシドは、腎臓に対して作用して(尿細管分泌を抑制)、体が尿酸を除去するのを助ける。プロベネシドはまた、体が特定の抗生物質を尿中に通すことを防止することにより、それらの抗生物質をより効果的にするためにも用いられる。
【0089】
高用量のPQQ単独での腎毒性が、ラットにおいて観察されている(実施例5参照)。PQQは、腎毒性を低減または防止するために、プロベネシドと同時投与され得る。以下の実施例8の結果は、PQQとプロベネシドとの併用が腎毒性を低減する傾向があったことを示している。1つの実施形態において、PQQは、プロベネシドの用量と1:4〜1:100の比率で投与される。例えば、25mg/kg用量のPQQは、100mg/kg用量のプロベネシドにより随伴され、もしくは1mg/kg用量のPQQは、100mg/kg用量のプロベネシドにより随伴され、または2mg/kg用量のPQQは、100mg/kg用量のプロベネシドにより随伴され、あるいは、3mg/kg用量のPQQは、100mg/kg用量のプロベネシドにより随伴される。腎毒性は、PQQとプロベネシドとの組み合わせの投与により防止または最小限にされ得る。従って、PQQをプロベネシドと組み合わせて投与することにより、PQQを用いた様々な徴候の処置(例えば、心臓保護)が可能になる一方で、腎毒性を防止または最小限にすることができる。
【0090】
別の実施形態において、本発明は、腎毒性および/または腎不全を防止または低減するためのPQQとシラスタチンとの併用治療を提供する。シラスタチンは、腎臓のデヒドロペプチダーゼ−Iおよびロイコトリエンジペプチダーゼ阻害薬インヒビターである。シラスタチンは一般に、腎臓によるその分解を妨げることによりその有効性を増大するために抗生物質イミペネムと共に投与される。
【0091】
各治療剤の逐次的なまたは実質的に同時の投与は、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、および粘膜組織を通した直接吸収を含むがこれらに限定されない任意の適切な経路によって行われ得る。治療剤は、同じ経路によって投与されてもよく、または異なる経路によって投与されてもよい。例えば、選択される組合せの第1の治療剤は静脈内注射により投与されることができ、一方、組合せの他の治療剤は経口投与され得る。あるいは、例えば、全ての治療剤は経口投与されてもよく、または、全ての治療剤は、静脈内注射により投与されてもよい。治療剤が投与される順序は、厳密に決定的というわけではない。
【0092】
PQQと腎臓保護剤との組み合わせについて、腎臓保護剤は、PQQの前に、PQQと同時に、またはPQQの後に投与され得る。好ましい実施形態において、腎臓保護剤は、PQQ投与の前に投与され、その結果、腎臓保護剤は、血流中に存在してPQQのどのような潜在的な毒作用も阻止する。逐次投与ができない急性のケースのような別の実施形態において、腎臓保護剤は、PQQと同時に、またはPQQの後に投与され得る。1つの特に好ましい実施形態としては、200mg/kgのプロベネシドをPQQ投与前に投与し、そして100mg/kgのプロベネシドをPQQ投与後に投与することが含まれる。
【0093】
「併用治療」はまた、他の生物学的に活性な成分および非薬物療法とさらに組合せた上記の通りの治療剤の投与を包含し得る。併用治療が非薬物処置をさらに含む場合、治療剤と非薬物処置との組合せの協働による有益な効果が達成される限り、非薬物療法は任意の適切な時点で実施され得る。例えば、適切な場合、非薬物処置が治療剤の投与から一時的に、おそらく数日間または数週間にもわたり、取り除かれたときに、有益な効果は依然として達成される。
【0094】
従って、本発明の化合物および他の薬理活性薬剤は、同時に、逐次的に、または併用して、患者に投与され得る。逐次投与される場合、投与の間隔は、0.1〜約48時間まで一般に変化する。本発明の組合せを使用する場合、本発明の化合物および他の薬理活性薬剤が同じ薬学的に許容されるキャリア中に存在してもよく、従って、同時に投与され得ることが認識される。それらは、同時に採られる従来の経口投与形態のような別々の薬学的キャリア中に存在し得る。用語「併用」は、複数の化合物が別々の投与形態において提供されて逐次投与される場合をさらにいう。
【0095】
本発明の併用組成物の有益な効果としては、治療剤の併用から得られる薬物動態学的協働または薬力学的協働が含まれるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、治療剤の協働は、相加的である。別の実施形態では、治療剤の協働は、相乗的である。別の実施形態では、治療剤の協働は、薬剤の一方または両方の治療レジメンを改善する。
【0096】
本発明は、心筋梗塞を患う患者を処置するためのキットにさらに関し、このキットは、治療的に有効な用量の少なくとも一つのメトプロロールおよびPQQを同じかまたは別々の包装中に含み、そしてその使用指示書を備える。メトプロロールは、約0.1mg/kg〜約10mg/kgの用量で投与される。メトプロロールは、PQQと約2:1〜約1:3の比率で投与される。例えば、1mg/kgのメトプロロールが投与される場合、同時投与すべき1つの適切な用量は、1mg/kgのPQQである。別の適切なPQQの用量は、2mg/kgである。別の用量は、3mg/kgのPQQである。
【0097】
患者が(処置)によって利益を得ているか否かを評価するために、定量的方法で、再発頻度の減少によって、または持続した進行までの時間の増加によって患者の症状を調べる。成功した処置において、患者の状態は改善し、再発の測定数または再発頻度は減少し、または持続した進行までの時間は増加する。
【0098】
あらゆる薬物に関して、投与量は、処置の成功および患者の健康の重要な部分である。あらゆる場合において、指定された範囲内で、医師は、性別、年齢、体重、身長、病理学的状態および他のパラメータに従って、所定の患者に関して最良の投与量を決めなければならない。
【0099】
本発明の薬学的組成物は、治療に有効な量の活性薬剤を含む。化合物の量は、処置される患者次第である。患者の体重、病気の重篤度、投与様式および処方医の判断は、適当な量を決定する際に考慮されるべきである。PQQまたはメトプロロールの治療に有効な量の決定は、十分に当業者の技術範囲内である。
【0100】
場合によっては、患者を処置するために薬学的包装の添付書類中で述べられる範囲外の投与量を使用することが必要なことがある。それらの場合は、処方医にとって明らかである。それが必要な場合、医師はまた、特定の患者の応答に関連して、どのようにいつ処置を中断、調節または終了するかがわかる。
【0101】
本発明は、低酸素/虚血性の心臓損傷の防止または減少に役立つ化合物を活性成分として含む薬学的組成物の調製および使用を包含する。このような薬学的組成物は、被験体に対する投与に適した形態の活性成分単独からなっていてもよく、または薬学的組成物は、活性成分および1つ以上の薬学的に許容されるキャリア、1つ以上のさらなる成分またはこれらのなんらかの組合せを含んでもよい。当該分野で周知のように、活性成分は、例えば、生理的に許容されるカチオンまたはアニオンとともに、薬学的に許容されるエステルまたは塩の形態で薬学的組成物中に存在してもよい。さらに、ピロロキノリンキノンは、例えば、虚血または再灌流損傷を減少させるかまたは阻害する際に、調製物の効力に悪影響を与えない限り、薬学的製品に一般に使用される薬理学的に許容される添加剤(例えば、キャリア、ビヒクルおよび希釈剤)、安定剤または調製物を処方するために必要な成分を含み得る。
【0102】
添加剤および安定剤の例としては、単糖(例えば、グルコースおよびフルクトース)、二糖(例えば、スクロース、ラクトースおよびマルトース)および糖アルコール(例えば、マンニトールおよびソルビトール)のような糖;クエン酸、マレイン酸および酒石酸のような有機酸ならびにその塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩およびカルシウム塩));グリシン、アスパラギン酸およびグルタミン酸のようなアミノ酸ならびにその塩(例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩またはカリウム塩);ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのような界面活性剤;ヘパリン;ならびにアルブミンが含まれる。
【0103】
本明細書に記載される薬学的組成物の処方物は、薬理学の分野で公知であるかまたは今後開発される任意の方法によって調製され得る。一般に、このような予備的な方法は、活性成分をキャリアまたは1つ以上の他の補助成分と合わせること、次いで、必要であるかまたは望ましい場合、生成物を成形するかまたは包装して望ましい単一用量単位または複数用量単位にすることを含む。
【0104】
本明細書において提供される薬学的組成物の説明は、主にヒトへの要処方箋投与に適する薬学的組成物に関するが、このような組成物が一般に、全ての種類の動物への投与に適していることが当業者によって理解される。組成物を様々な動物への投与に適するようにするための、ヒトに対する投与に適している薬学的組成物の改変は十分に理解され、そして当該分野の獣医学薬理学者は、あったとしても単なる通常の実験によってこのような改変を設計および実施し得る。本発明の薬学的組成物の投与が意図される被験体としては、ヒトおよび他の霊長類が含まれるがこれらに限定されない。
【0105】
本発明の方法に役立つ薬学的組成物は、口腔投与、直腸投与、膣投与、非経口投与、局所投与、肺投与、鼻腔内投与、頬内投与、眼投与、または別の投与経路に適した処方物において調製、包装または販売され得る。好適な形態は、静脈内投与である。
【0106】
ピロロキノリンキノンおよび上記の成分は適切に混合されて、散剤、顆剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤等が得られる。他の意図される処方物としては、計画されたナノ粒子、リポソーム処方物、活性成分を含有する再封止された赤血球、および免疫学に基づいた処方物が含まれる。
【0107】
本発明の薬学的組成物は、バルクで、単一の単位用量として、または複数の単一単位用量として、調製、包装または販売され得る。活性成分の量は一般に、被験体に投与される活性成分の投与量、または、例えばこのような投与量の半分または3分の1のようなこのような投与量の便利な画分に等しい。
【0108】
本発明の薬学的組成物中の活性成分、薬学的に許容されるキャリア、および任意の付加的な成分の相対量は、処置されるべき被験体の正体、サイズ、および状態に応じて、そして組成物が投与されるべき経路にさらに応じて変化する。例えば、組成物は、0.1%(w/w)と100%(w/w)との間の活性成分を含み得る。
【0109】
活性成分に加えて、本発明の薬学的組成物は、1つ以上の付加的な薬学的に活性な薬剤をさらに含み得る。
【0110】
特に意図される付加的な薬剤としては、制吐剤ならびにシアン化物およびシアン酸塩スカベンジャーのようなスカベンジャーが含まれる。本発明の薬学的組成物の制御放出処方物または徐放性処方物は、従来技術を使用して製造され得る。
【0111】
経口投与に適している本発明の薬学的組成物の処方物は、各々が所定量の活性成分を含む、錠剤、硬質カプセル剤もしくは軟質カプセル剤、カシェ剤、トローチ剤または菓子錠剤を含むがこれらに限定されない別々の固体用量単位の形態で調製、包装または販売され得る。経口投与に適している他の処方物としては、粉末化処方物もしくは顆粒状処方物、水性懸濁剤もしくは油性懸濁剤、水溶液もしくは油性溶液、または乳濁液が含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
活性成分を含む錠剤は、例えば、活性成分と、必要に応じて1つ以上の付加的な成分を圧縮または成形することによって作製され得る。圧縮錠剤は、適切なデバイスにおいて、粉末または顆粒状調製物のような自由流動形態の活性成分を、必要に応じて結合剤、滑沢剤、ビヒクル、界面活性剤および分散剤のうちの1つ以上と混合して圧縮することにより調製され得る。成形錠剤は、適切なデバイスにおいて、活性成分、薬学的に許容されるキャリアおよび少なくとも混合物を湿らせるために充分な液体の混合物を成形することによって作製され得る。錠剤の製造において使用される薬学的に許容されるビヒクルとしては、不活性希釈剤、顆粒化および崩壊剤、結合剤および滑沢剤が含まれるがこれらに限定されない。公知の分散剤としては、馬鈴薯澱粉および澱粉グリコール酸ナトリウムが含まれる。公知の表面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。公知の希釈剤としては、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、およびリン酸ナトリウムが含まれる。公知の顆粒化および崩壊剤としては、トウモロコシ澱粉およびアルギン酸が含まれる。公知の結合剤としては、ゼラチン、アカシア、予め糊化されたトウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドン、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。公知の滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、二酸化ケイ素およびタルクが含まれる。
【0113】
錠剤は非被覆でもよく、または錠剤は、被験体の胃腸管における遅延崩壊を達成し、それによって、活性成分の持続的な放出および吸収を提供するために公知の方法を使用して被覆されてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンのような材料が、錠剤を被覆するために用いられ得る。さらに例えば、錠剤は、浸透圧的に制御された放出の錠剤を形成するために、例えば、米国特許第4,256,108号、同第4,160,452号、および同第4,265,874号に記載される方法を使用して被覆され得る。錠剤は、薬学的に洗練されて口当たりの良い調製物を提供するために、甘味料、香料、着色剤、保存剤またはこれらのなんらかの組み合せをさらに含み得る。
【0114】
活性成分を含む硬質カプセル剤は、ゼラチンのような生理的に分解可能な組成物を使用して作製され得る。このような硬質カプセル剤は活性成分を含み、そして付加的な成分(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンのような不活性固体希釈剤をさらに含み得る。
【0115】
活性成分を含む軟質ゼラチンカプセルは、ゼラチンのような生理的に分解可能な組成物を使用して作製され得る。このような軟質カプセルは、活性成分を含み、そしてこれは、水または落花生油、流動パラフィンもしくはオリーブ油のような油性媒体と混合され得る。
【0116】
経口投与に適している本発明の薬学的組成物の液状処方物は、液体形態において、または使用前に水もしくは他の適切なビヒクルを用いて再構成することが意図される乾燥製品の形態のいずれかで調製、包装または販売され得る。
【0117】
液体懸濁液は、活性成分の水性ビヒクルまたは油性ビヒクル中での懸濁を達成するために従来法を使用して調製され得る。水性ビヒクルとしては、例えば、水および等張性生理食塩水が含まれる。油性ビヒクルとしては、例えば、扁桃油、油性エステル、エチルアルコール、落花生油、オリーブ油、ゴマ油またはヤシ油、分画植物油のような植物油、および流動パラフィンのような鉱油が含まれる。液体懸濁液は、懸濁剤、分散剤または湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、保存剤、緩衝剤、塩、フレーバー剤、着色料および甘味料を含むがこれらに限定されない1つ以上の付加的な成分をさらに含み得る。油性懸濁液は、増粘剤をさらに含み得る。公知の懸濁剤としては、ソルビトールシロップ、水素添加食用脂、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アラビアゴム、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース誘導体が含まれるがこれらに限定されない。公知の分散剤または湿潤剤としては、天然に存在するレシチンのような燐脂質、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、アルキレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、脂肪酸およびヘキシトールから誘導された部分エステルとアルキレンオキシドとの縮合生成物、または脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとアルキレンオキシドとの縮合生成物(例えば、それぞれ、ポリオキシエチレンステアレート、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレート、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)が含まれる。公知の乳化剤としては、レシチンおよびアカシアが含まれる。公知の保存剤としては、メチル−パラ−ヒドロキシベンゾエート、エチル−パラ−ヒドロキシベンゾエートまたはn−プロピル−パラ−ヒドロキシベンゾエート、アスコルビン酸、およびソルビン酸が含まれる。公知の甘味料としては、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロース、およびサッカリンが含まれる。油性懸濁液のための公知の増粘剤としては、例えば、蜜蝋、固形パラフィン、およびセチルアルコールが含まれる。
【0118】
水性溶媒または油性溶媒中の活性成分の液体溶液は、液体懸濁液と実質的に同じ様式で調製することができ、主な違いは、活性成分が溶媒中に懸濁されるよりはむしろ、溶解されるということである。本発明の薬学的組成物の液体溶液は、液体懸濁液に関して記載されている成分の各々を含むことができ、懸濁剤は、溶媒中に活性成分を溶解するのを必ずしも補助しないことが理解される。水性溶媒としては、例えば、水および等張生理食塩水が含まれる。油性溶媒は、例えば、扁桃油、油性エステル、エチルアルコール、落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはヤシ油、分画植物油のような植物油、および流動パラフィンのような鉱油が含まれる。
【0119】
本発明の薬学的調製物の粉末状および顆粒状の処方物は、公知の方法を使用して調製され得る。このような処方物は、被験体に直接投与されてもよく、あるいは、例えば、錠剤を形成するか、カプセルを充填するか、または、水性もしくは油性のビヒクルを添加することによって水性もしくは油性の懸濁液もしくは溶液を調製するために使用されてもよい。これらの処方物の各々は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤および保存剤のうちの1つ以上をさらに含み得る。充填剤および甘味料、フレーバー剤、または着色剤のような付加的な賦形剤も、これらの処方物に含まれ得る。
【0120】
本発明の薬学的組成物はまた、水中油型乳剤または油中水型乳剤の形態で調製、包装または販売され得る。油相は、オリーブ油または落花生油のような植物油、流動パラフィンのような鉱油、あるいはこれらの組み合せであり得る。このような組成物は、アラビアゴムまたはトラガカントゴムのような天然に存在するゴム、ダイズ燐脂質またはレシチン燐脂質のような天然に存在する燐脂質、ソルビタンモノオレエートのような脂肪酸とヘキシトール無水物との組み合せに由来するエステルまたは部分エステル、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートのようなこのような部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物のような1つ以上の乳化剤をさらに含み得る。これらの乳剤はまた、例えば、甘味剤またはフレーバー剤を含む付加的な成分も含み得る。
【0121】
本発明の薬学的組成物は、直腸投与に適する処方物において調製、包装または販売され得る。このような組成物は、例えば、坐剤、停留浣腸調製物、および直腸灌注または結腸灌注用の溶液の形態であり得る。
【0122】
坐剤処方物は、通常の室温(すなわち、約20℃)では固体であって、被験体の直腸温(すなわち、健常なヒトでは約37℃)では液体である非刺激性の薬学的に許容される賦形剤と活性成分とを組み合わせることによって作製され得る。好適な薬学的に許容される賦形剤としては、カカオバター、ポリエチレングリコール、および様々なグリセリドが含まれるが、これらに限定されない。坐剤処方物は、抗酸化剤および保存剤を含むがこれらに限定されない様々な付加的な成分をさらに含み得る。
【0123】
停留浣腸調製物または直腸灌注もしくは結腸灌注用の溶液は、活性成分と薬学的に許容される液体キャリアとを合わせることによって作製され得る。当該分野で周知のように、浣腸調製物は、被験体の直腸の解剖学的構造に適応した送達デバイスを使用して投与することができ、そしてこのような送達デバイス内に包装することができる。浣腸用調製物は、抗酸化剤および保存剤を含むがこれらに限定されない様々な付加的な成分をさらに含み得る。
【0124】
本発明の薬学的組成物は、膣内投与に適する処方物において調製、包装または販売され得る。このような組成物は、例えば、坐剤、タンポンのような含浸または被覆された膣挿入可能材料、灌注調製物、ゲルもしくはクリームないしは膣洗浄用溶液の形態であり得る。
【0125】
化学組成物を材料に含浸またはコーティングする方法は当該分野で公知であり、そして化学組成物を表面上へ堆積させるかまたは結合する方法、材料の合成中に化学組成物を材料の構造に組み込む方法(すなわち、例えば、生理的に分解可能な材料を用いる場合のような)、および水性または油性の溶液または懸濁液を吸収材料に吸収させる方法(その後の乾燥を伴っても伴わなくてもよい)が含まれるが、これらに限定されない。
【0126】
灌注調製物または膣洗浄用溶液は、活性成分と薬学的に許容される液体キャリアとを組み合わせることによって作製され得る。当該分野で公知のように、灌注調製物は、被験体の膣の解剖学的構造に適応した送達デバイスを用いて投与することができ、そしてこの送達デバイス中に包装することができる。
【0127】
灌注調製物は、抗酸化剤、抗生物質、抗真菌剤および保存剤を含むがこれらに限定されない様々な付加的な成分をさらに含み得る。
【0128】
化合物の投与のための付加的な送達方法としては、米国特許第5,928,195号に記載されている薬物送達デバイスのような薬物送達デバイスが含まれる。
【0129】
本明細書中で使用される場合、薬学的組成物の「非経口投与」は、被験体の組織の物理的破損によって特徴付けられる投与および組織の裂け目を通る薬学的組成物の投与の任意の経路を含む。従って、非経口投与は、組成物の注射による薬学的組成物の投与、外科的切開部を通した組成物の適用による薬学的組成物の投与、組織を貫通する非外科的創傷を通した組成物の適用による薬学的組成物の投与などを含むが、これらに限定されない。特に、非経口投与は、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、胸骨内注射、および腎臓透析注入技術を含むことが意図されるが、これらに限定されない。
【0130】
非経口投与に適する薬学的組成物の処方物は、滅菌水または滅菌等張生理食塩水のような薬学的に許容されるキャリアと組み合わされた活性成分を含む。このような処方物は、ボーラス投与または連続投与に適する形態で調製、包装、または販売され得る。注射可能な処方物は、アンプルのような単位用量形態において、または保存剤を含む複数用量容器において、調製、包装、または販売され得る。非経口投与用処方物としては、油性または水性のビヒクル中の懸濁剤、液剤、乳剤、ペースト剤および埋め込み可能な徐放性または生分解性の処方物が含まれるが、これらに限定されない。このような処方物は、懸濁剤、安定剤または分散剤を含むがこれらに限定されない1つ以上の付加的な成分をさらに含み得る。非経口投与のための処方物の1つの実施形態において、活性成分は、再構成された組成物の非経口投与の前に、適切なビヒクル(例えば、発熱性物質を含まない滅菌水)を用いて再構成するための乾燥した(すなわち、粉末または顆粒状)形態で提供される。
【0131】
薬学的組成物は、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁剤または液剤の形態で調製、包装、または販売され得る。この懸濁剤または液剤は、当該分野の技術に従って処方することができ、そして活性成分に加えて、本明細書に記載される分散剤、湿潤剤または懸濁剤のような付加的な成分を含み得る。このような無菌の注射可能な処方物は、例えば水または1,3−ブタンジオールのような、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒を使用して調製され得る。他の許容される希釈液および溶媒としては、リンゲル溶液、等張性塩化ナトリウム溶液、および合成のモノグリセリドまたはジグリセリドのような不揮発性油が含まれるが、これらに限定されない。他の非経口的投与可能な有用な処方物としては、活性成分を、微結晶形態で、リポソーム調製物中に、または生分解性ポリマー系の一成分として含む処方物が含まれる。徐放または埋め込みのための組成物は、乳濁液、イオン交換樹脂、溶解性の高くないポリマー、または溶解性の高くない塩のような、薬学的に許容されるポリマー性または疎水性の材料を含み得る。
【0132】
局所投与に適している処方物としては、液体または半液体の調製物(例えば、糊膏、ローション剤、水中油型乳剤または油中水型乳剤(例えば、クリーム剤、軟膏またはペースト)および液剤または懸濁剤が含まれるが、これらに限定されない。局所投与可能な処方物は、例えば、約1%〜約10%(w/w)の活性成分を含み得るが、活性成分の濃度は、溶媒中での活性成分の溶解限界と同程度に高くてもよい。局所投与用処方物は、本明細書に記載される付加的な成分のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0133】
本発明の薬学的組成物は、口腔前庭を介した肺投与に適している処方物において、調製、包装、または販売され得る。このような処方物は、乾燥粒子を含むことができ、この乾燥粒子は、活性成分を含み、かつ約0.5〜約7ナノメートル、好ましくは約1〜約6ナノメートルの範囲の直径を有する。このような組成物は、便利には、噴射剤の流れが向けられて粉末を分散し得る乾燥粉末レザーバを備えるデバイスを使用する、または自己噴射式の溶媒/粉末分散容器(例えば、密封容器中の低沸点噴射剤に溶解または懸濁した活性成分を備えるデバイス)を使用する、投与のための乾燥粉末の形態である。好ましくは、このような粉末は粒子を含み、粒子の少なくとも98重量%が0.5ナノメートルより大きい直径を有し、そして粒子数の少なくとも95%が7ナノメートル未満の直径を有する。より好ましくは、粒子の少なくとも95重量%は1ナノメートルより大きい直径を有し、粒子数の少なくとも90%は6ナノメートル未満の直径を有する。乾燥粉末組成物は好ましくは、糖のような固体の微細粉希釈剤を含み、そして単位用量形態で便利に提供される。
【0134】
低沸点噴射剤は一般に、大気圧で65°F(18.3℃)未満の沸点を有する液体噴射剤を含む。一般に、噴射剤は組成物の50〜99.9%(w/w)を構成することができ、活性成分は組成物の0.1〜20%(w/w)を構成し得る。噴射剤は、(好ましくは、活性成分を含む粒子と同じオーダーの粒子サイズを有する)液体の非イオン性界面活性剤または固体のアニオン界面活性剤もしくは固体の希釈剤のような付加的な成分をさらに含み得る。
【0135】
肺送達用に処方される本発明の薬学的組成物はまた、溶液または懸濁液の液滴の形態で活性成分を提供し得る。このような処方物は、活性成分を含む、必要に応じて無菌の、水性または希アルコール性の溶液もしくは懸濁液として調製、包装または販売され得、そして任意のネブライズデバイスまたはアトマイズデバイスを使用して便利に投与され得る。このような処方物は、サッカリンナトリウムのようなフレーバー剤、揮発性油、緩衝剤、界面活性剤、またはメチルヒドロキシベンゾエートのような保存剤を含むがこれらに限定されない1つ以上の付加的な成分をさらに含み得る。この投与経路によって提供される液滴は好ましくは、約0.1〜約200ナノメートルの範囲の平均直径を有する。
【0136】
肺送達に有用であるとして本明細書中で記載される処方物はまた、本発明の薬学的組成物の鼻腔内送達にも有用である。
【0137】
鼻腔内投与に適している別の処方物は、活性成分を含んでおり、かつ約0.2〜500マイクロメートルの平均粒子を有している粗粉末である。このような処方物は、嗅ぎタバコが服用されるやり方で、すなわち、鼻の近くに保持された粉末容器からの鼻通路を介した迅速な吸入によって投与される。
【0138】
経鼻投与に適する処方物は、例えば、わずか0.1%(w/w)の、そして100%(w/w)もの多くの活性成分を含み得、そして本明細書に記載される付加的な成分のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0139】
本発明の薬学的組成物は、頬内投与に適する処方物において、調製、包装または販売され得る。このような処方物は、例えば、従来法を使用して作製される錠剤または菓子錠剤の形態であり得、そして例えば0.1〜20%(w/w)の活性成分を含み得、残りは、経口的に溶解性であるかまたは分解可能な組成物、および必要に応じて、本明細書に記載される付加的な成分のうちの1つ以上を含み得る。あるいは、頬内投与に適する処方物は、活性成分を含んでいる、粉末、またはエアロゾル化もしくはアトマイズした溶液もしくは懸濁液を含み得る。このような粉末化、エアロゾル化またはアトマイズ化された処方物は、分散される場合、好ましくは約0.1〜約200ナノメートルの範囲の平均粒子サイズまたは液滴サイズを有し、そして本明細書に記載される付加的な成分のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0140】
本発明の薬学的組成物は、眼への投与に適する処方物において、調製、包装または販売され得る。このような処方物は、例えば、水性または油性の液体キャリア中の例えば、0.1〜1.0%(w/w)の活性成分の液剤または懸濁剤を含む、点眼剤の形態であり得る。このような点眼剤は、緩衝剤、塩、または本明細書に記載される付加的な成分のうちの1つ以上の他のものをさらに含み得る。眼に投与可能な有用な他の処方物としては、微結晶形態の、またはリポソーム調製物中に活性成分を含む処方物が含まれる。
【0141】
ピロロキノリンキノンと薬理学的に許容される添加剤との混合物は好ましくは、凍結乾燥製品として調製され、そして使用時に溶解される。このような調製物は、注射用蒸留水または滅菌精製水にピロロキノリンキノンを溶解することによって、約0.01〜100.0mg/mlのピロロキノリンキノンを含む溶液に調製され得る。より好ましくは、この調製物は、生理的に等張の塩濃度および生理的に望ましいpH値(pH6〜8)を有するように調節される。
【0142】
用量は症状、体重、性別、動物種等に応じて適切に決定されるが、血中濃度を約1μMに保持する処置選択肢が好ましいと一般に想定される。この血漿濃度は、1日につき1用量〜数用量の投与によって達成され得る。ピロロキノリンキノンが被験体に投与されるべきである場合、0.1ng〜10mg/kg体重(例えば、1ng〜1mg/kg体重)のピロロキノリンキノンを静脈内に投与できる。
【0143】
化合物は、1日に数回の頻度で動物に与えられてもよく、または化合物は、1日に一度、1週間に一度、2週間に一度、1ヶ月に一度、または数ヶ月に一度、もしくは1年に一度ないしはそれ未満のより低い頻度で投与されてもよい。用量の頻度は、当業者には容易に明らかになり、処置される疾患の種類および重篤度、動物の種類および年齢等の多くの要因に依存するが、これらに限定されない。
【実施例】
【0144】
これらの実施例は例示のみを目的として提供されており、本発明はこれらの実施例に限定されるとは決して解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書中に提供される教示の結果として明白になるあらゆるおよび全てのバリエーションを包含すると解釈されるべきである。
【0145】
実施例1.心筋細胞生存率のPQQ保存のインビトロ研究
培養された成体マウス心筋細胞のインビトロモデルを、PQQによる心臓保護を研究するために開発した。これらの細胞は、生理的pHで48時間まで培養して生存可能であり、>90%が桿状細胞からなる。これらの細胞は、トリパンブルー排除による細胞生存率の決定のために、そして、生化学研究、免疫化学研究および分子研究のために容易に用いられ得る。このモデルでは、低酸素チャンバ中で0%酸素に2〜3時間さらされると、細胞の約35%は死ぬ。図1に示されるように、細胞を高度の低酸素(0%酸素で2〜3時間)に供する1時間前に添加された1μM PQQは、トリパンブルー排除によって示されたように、生存可能細胞の比率の有意な増加を生じる。より高濃度のPQQ(100μM)は、100%細胞死により証明されたように、正常酸素条件下では非常に毒性がある。図2は、低酸素誘発性の細胞死に対する1μM PQQ保護が10μM 5−ヒドロキシデカン酸(ミトコンドリアのKATPチャネルインヒビター)により阻害されないことを実証する。理論に束縛されることを望まないが、これらのデータは、PQQがミトコンドリアKATPチャネルを開くことによって心臓保護を発揮するわけではないことを示唆する。
【0146】
実施例2.心機能のPQQ保存のエキソビボ研究
ランゲンドルフ技術を使用して単離されたマウス心臓調製物を使用してエキソビボ研究を実施した。このアプローチでは、心臓を取り出して灌流装置に載せ、この灌流装置においては、薬物を大動脈のカニューレを介して与えることができる。心臓は、一定速度でペーシングされ、そして左心室発生圧力[LVDP;(左心室収縮期圧)−(左心室拡張末期圧)]、左心室拡張末期圧[LVEDP]、および左心室圧の正および負の最大一次導関数[+dP/dtmaxおよび−dP/dtmax]を記録する。心臓を20分間平衡化する。薬物またはビヒクルの注入後、心臓を20分間の虚血[冠動脈流完全停止]、続いて30分間の再灌流に供する。冠動脈血流の反射としての冠状静脈洞血流も測定する。このプロトコルにより、血行力学的パラメータで測定した場合に重篤な心筋損傷がもたらされる。
【0147】
図3に見られるように、冠動脈血流の完全停止前に2分間のみ注入した100nMのPQQは、LVDPベースライン1の有意な保存を生じる。VDPは、平均60mmHgである。類似の結果が、LVEDPを用いて得られる[図4]。LVEDPベースラインは平均8mmHgである。(LVEDPの増加が有害な応答を表すことに注意されたい)。予想通り、+dP/dtmaxおよび−dP/dtmaxに関するデータは、LVDPの結果を追う[図5および図6]。同様に、冠動脈流は、対照と比較して、PQQ前処置によって有意に改善される[図7]。
【0148】
図8において、示される濃度におけるPQQでの2分間の前処置が10nMと1μMとの間では次第に好ましい応答を有するが、10μMでは毒性が生じることが示される。主に興味深いことは、再灌流(PQQ処置)開始時に与えられた100nM PQQが前処置と同等であることである。従って、PQQは、前処置、例えば、心臓手順または他の外科的手順において、および症状が発生した後、例えば、急性の重大な事象の両方において有用である。
【0149】
図9は、PQQ前処置後の梗塞サイズの測定実験結果を示す。示されるように、10nMと1μMとの間では梗塞サイズが漸減し、血行力学のデータに対応する。後者と一致して、梗塞サイズは10μM PQQでは減少しない。
【0150】
実施例3.酸化的ストレスを受けた細胞のPQQ保存
培養された心筋細胞を、H2O2のインビトロ投与によって、酸化的ストレスに供する。2つの研究を行い、一方の研究では、心臓筋細胞に10nMと10μM未満との間の濃度のPQQを添加し、その後、H2O2を添加する。他方の研究では、心筋細胞を2時間のH2O2の損傷インビトロ投与に供し、その後、PQQを10nMと10μM未満との間の濃度で添加する。両方の研究において、PQQは保護することが見出される。
【0151】
実施例4.インビボでの酸化的ストレスの防止/減少のためのPQQの使用
雄性Sprague−Dawleyラットを、虚血または虚血−再灌流の前にピロロキノリンキノン(PQQ)によって、ランダムに処置した。PQQ(15〜20mg/kg)を、腹腔内投与によって左前下行冠動脈(LAD)閉塞の30分前に(前処置)、または、静脈内注射によって再灌流開始時に(処置)与えた。左心室(LV)血行力学をモニタリングしながら、ラットを17分間または30分間のLAD閉塞および2時間の再灌流に供した。前処置または処置のいずれかとして与えられたPQQは、これらのラットモデルにおいて梗塞サイズを減少させた。PQQは、虚血により誘発される心臓機能不全から保護し、1〜2時間の再灌流後、LV発生圧力、LV(+)dP/dtはより高く、LV(−)dP/dtはより低かった。PQQ処置ラットにおいては、心室性細動(VF)エピソードはより少なかった。心筋のマロンジアルデヒド(MDA)(脂質過酸化の指標)は、PQQによって減少した。従って、前処置としてまたは再灌流の開始時の処置のいずれかとして与えられたPQQは、虚血および虚血−再灌流のラットモデルにおいて用量関連様式で心筋梗塞サイズを減らし、心機能を改善することに非常に効果的である。MDAの結果は、PQQが虚血心筋においてフリーラジカルスカベンジャーとして働くことを示唆する。
【0152】
統計解析
全ての結果は、平均±SEMとして示される。2つの投与群(前処置および処置)を、複数群比較のための回帰式を用いて一元分散分析(ANOVA)を使用して正常対照群と比較した。3つの群の間での閉塞および再灌流期間中の死亡率の差を、χ二乗検定により評価した。VFを有するラットのパーセンテージを、フィッシャーの正確確率検定により評価した。全ての計算を、Minitabバージョン7.2(Minitab Statistical Software)またはPrimor of Biostatistics:The programバージョン3.03(McGraw−Hill)の一般線形モデル手順を使用して行った。統計的有意性を、p<0.05に設定した。
【0153】
虚血および虚血−再灌流モデル
PQQをビヒクル(2% NaHCO3)に溶解した。腹膜内(i.p.)または静脈内(i.v.)のいずれかで与えられた体積は、1mlであった。全ての対照を1mlのビヒクルにより処置した。モデル1において、20mg/kgのPQQを、LAD結紮により誘発される2時間の虚血の30分前に、i.p.で与えた。モデル2において、15mg/kgのPQQを、17分間か30分間の虚血の30分前にi.p.で与え、続いて2時間の再灌流を行った(前処置)。他のモデル2の実験において、15mg/kgのPQQを、再灌流の開始時に大腿静脈を介してi.v.ボーラス注射によって与えた(処置)。これらのプロトコルを、図10にまとめる。
【0154】
麻酔(ケタミン80mg/kg、キシラジン4mg/kg体重、腹膜内)導入後、気管切開術を実施し、動物をHarvard Rodent Respirator(モデル683、Harvard Apparatus)において通気した。モデル1のラットを再灌流のない2時間の近位左前下行(LAD)冠動脈結紮に供した。モデル2は、以前に記載された通りの虚血−再灌流(Sievers REら,Magn Reson Med 1989;10:172−81)を使用した。このモデルにおいて、可逆冠動脈係蹄オクルーダーを、正中線胸骨切開術により近位LAD冠動脈周辺に配置した。次いで、ラットを17分間または30分間のLAD閉塞および120分の再流動に供した。加えて、モデル2ラットは、血行力学的測定値を記録された。4F Millarカテーテルを、右頸動脈を通して左心室(LV)に挿入した。20分間の平衡化後、心拍数(HR)、収縮期圧(LVSP)、拡張末期期圧(LVEDP)、LV(+)dP/dtmax、LV(−)dP/dtmaxを、MacLab/4S(Milford,MA)を使用してモニタリングした。LV発生圧力(LVDP)を、LVEDPをLVSPから差し引くことにより算出した。
【0155】
モデル1およびモデル2、セット1およびセット2の両方における3群のラットにおける体重は異ならなかった(対照群、前処置群および処置群についての値はそれぞれ、以下の通りであった:320±16、321±22、および306±18g;分散分析(ANOVA)によって、p=0.799)。
【0156】
ベースラインではモデル2の対照群、前処置群および投与群の間で心拍数、LVSP、LVEDP、LV(+)dP/dt、およびLV(−)dP/dtに有意差は皆無であった。前処置によって与えられるかまたは処置として与えられるかにかかわらず、PQQは、虚血誘発性の心臓機能不全を防止し、1〜2時間の再灌流後、より高いLVSP、LVDP、LV(+)dP/dt、およびより低いLV(−)dP/dtを有した(図11A〜B;12A〜B)。
【0157】
梗塞サイズ
梗塞サイズを、以前に記載された通りに測定した(Sievers REら,Magn Reson Med 1989;10:172−81、Zhu B−Qら,J Am Coll Cardiol 1997;30:1878−85)。モデル1において、心臓を、2時間の虚血期間の終わりに切り出した。次いで、切片を、生存可能な心筋が赤レンガ色に着色されるまで塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)の1%溶液中で10〜15分間インキュベートした。
【0158】
モデル2において、2時間の再灌流後、LADを再閉塞し、そして、フタロシアニン色素(Engelhard Cooperation,Louiseville,KY)をLV腔に注射し、通常に灌流された心筋を青色に染色した。次いで、心臓を切り出し、過剰な色素をすすぎ洗いし、そして頂部から基部に向かって横断的にスライスして2mm厚の切片にした。切片を、上記の通りにTTC中でインキュベートした。梗塞を起こした心筋は、TTCで染色できない。次いで、組織切片を、10%ホルマリン溶液中で固定し、計量した。各横断スライスの両面のカラーディジタル画像を、顕微鏡(Stereo Zoom 6 Photo,Leica)に接続したビデオカメラ(Leica DC 300F)を使用して得た。青に染色された組織(非虚血性)、赤に染色された組織(虚血性であるが、非梗塞性)および染色されていない組織(梗塞性)を示す領域を、各色画像上で輪郭を描き、NIH Image 1.59(国立衛生研究所,Bethesda,MD)を使用して盲検様式で測定した。それぞれの面で、梗塞関連組織を表すLV面積の割合(2つの画像の平均)にその切片の重量を掛けることにより、梗塞関連組織の絶対重量を決定した。各心臓についての梗塞サイズを、以下のように表現した:
【0159】
【数1】
次いで、危険領域のパーセンテージとしての梗塞サイズを、以下の通り計算した:
【0160】
【数2】
虚血モデル(モデル1)では、PQQ後の梗塞サイズ(梗塞量/LV量、フタロシアニン青色色素は注射されていない)は、対照よりも小さかった(図13)。モデル2における実験の第1セットにおいて、虚血は17分間であり、その後、2時間の再灌流が行われ、梗塞サイズ(梗塞量/危険領域、梗塞量/LV量)は、20mg/kgのPQQでの前処置によって減少した(図14)。モデル2の実験の第2セットにおいて、虚血は30分間であり、その後、2時間の再灌流が行われ、15mg/kgのPQQでの前処置または処置のいずれかの後での梗塞サイズは、対照よりも小さかった(図15)。
【0161】
図16は、前処置として与えられたPQQの用量が、梗塞サイズと逆に相関したことを示す。これらの実験において、17分間の虚血に続いて2時間の再灌流を行った。
【0162】
心室性細動(VF)
皮下針電極を四肢に挿入することによって心電図(ECG、誘導II)を得た。ECGを虚血および再灌流の間モニタリングし、そして発作性VFのエピソードを記録した。ラット1匹当たりのVFのエピソード数および各群におけるVFを有するラットのパーセンテージを算出した。閉塞および再灌流の前または間に抗不整脈剤を受けたラットは皆無であった。露出した心筋を1つの手の親指および人さし指で迅速に打つことによってVFエピソードを好首尾に処置した。
【0163】
15または20mg/kgのPQQでの前処置は、ラット1匹あたりのVFの平均エピソードを減少させた(図17A)。15または20mg/kgのPQQでの前処置または処置は、VFを有するラットのパーセンテージを低下させた(図17B)。
【0164】
マロンジアルデヒドを測定した別の付加的な実験(下記参照)において、偽群またはPQQ群(各々n=5)のいずれにおいてもVFのエピソードは皆無であった。しかしながら、I/R群(30分間の虚血、続いて2時間の再灌流)におけるVFは平均1.8±0.4エピソード/ラットであり、15mg/kgのPQQでの前処置によって0.2±0.2エピソード/ラット(各群n=5、二元ANOVAによってP<0.001、PQQとI/Rとの間でP=0.002の有意な相互作用を有する)に減少した。
【0165】
心筋マロンジアルデヒド(MDA)測定
心筋組織MDA(チオバルビツール酸と反応する脂質過酸化生成物)を、532nmの吸光度にて分光測光法により決定した。試料の濃度を、1.56×105/Mcmの吸光係数を使用して算出し、結果をnmol/g湿重量心臓として表した(Ohkawa Hら,Analytical Biochemistry 1979;95:351−358、Moritz Fら,Cardiovascular Research 2003;59:834−843)。
【0166】
心筋組織MDA(脂質過酸化の指標)の測定のために、種々の組織調製法を用いた。心臓を、LADによって灌流される領域を含む前部分と残りの非虚血性部分に、頂部から基部まで目視で分けた。ラットを、15mg/kgのPQQによって予め処置しまたは処置せず(偽対照)、そして30分間の虚血および2時間の再灌流に供した。これらの付加的な実験において、血行力学的結果は、上記の結果と異ならなかった。図18Aに見られるように、I/RはMDAレベルを上昇させ、PQQはこの上昇を妨げた。I/R後のPQQ値および対照値は3倍異なった(図18A)。同様の効果が、離れた「正常」心筋において見られた(図18B)。再灌流の開始時に与えた場合、15mg/kgのPQQはまた、虚血心筋におけるMDAレベルを176±16から123±17nmol/gへと低下させた(n=8,P<0.05)。
【0167】
実施例5.PQQは、ミトコンドリア呼吸を低濃度で回復させ、虚血/再灌流損傷のインビボモデルにおいて心臓保護的である
成体雄ラットは、30分間の左前下行(LAD)冠動脈閉塞および2時間の再灌流を受けた。ヒトにおける再灌流治療の潜在的利益を評価するために、PQQを、再灌流の開始時に、1および3mg/kg体重の用量でi.v.注射によって与えた。取り出し後、心臓を、頂部から基部まで、LAD灌流した領域を含む前部と後部セグメントとに分け、ミトコンドリアを単離した。各心筋セグメントのミトコンドリア呼吸を測定し、(PQQなしで)あらかじめ馴化して偽手術を行った心臓から単離したミトコンドリア呼吸と比較した。
【0168】
1mg/kgのPQQでの処置は、ミトコンドリアをI/R損傷から保護しなかった。しかしながら、3mg/kgのPQQでの処置は、ミトコンドリア呼吸の回復に非常に効果的であった。虚血領域の呼吸調節およびADP−酸素消費率(RCR:8.0±0.5、ADP/O;4.5)、ならびに状態3呼吸速度(RR:41nmol O atom/分/mgタンパク質、n=5)は、偽のものと一致し(RCR:8.2±0.3、ADP/O:3.7、RR=43nmol O atom/分/mgタンパク質)、一方で、PQQなしであらかじめ馴化した心臓のRCR値は、驚くべきことに20%低かった。虚血性の未処置の心臓のミトコンドリアからの呼吸応答は、50〜100%減少した。PQQで処置した組織およびミトコンドリアの電子顕微鏡写真は、心筋損傷に典型的な形態を示さなかった。PQQはまた、梗塞サイズおよび心筋のマロンジアルデヒド(MDA)組織濃度をそれぞれ、49%および61%低下させた。
【0169】
再灌流時に与えられた低用量の3mg/kgのPQQは、虚血によって阻害されたミトコンドリア呼吸を非常に効果的に回復させ、ミトコンドリアに対する酸化的損傷およびI/R損傷における梗塞サイズを減少させる。PQQは、脂質過酸化インヒビターまたはラジカルスカベンジャーとしてその心臓保護機能を発揮し得る。それゆえ、PQQ処置は、急性虚血症候群の強力な治療剤として出現し得る。
【0170】
虚血性領域の呼吸調節およびADP−酸素消費率(RCR:8.0 0.5、ADP/O、4.5)、ならびに状態3呼吸速度(RR:41nmol O atom/分/mgタンパク質、n=5)は、偽のものと一致し、一方、PQQなしであらかじめ馴化された心臓のRCR値は、驚くべきことに20%低かった。虚血性の未処置の心臓のミトコンドリアからの呼吸応答は、50〜100%減少した。RCRデータを、図19に視覚的に示す。PQQ処置した組織およびミトコンドリアの電子顕微鏡写真は、心筋損傷に典型的な形態を示さなかった。それゆえ、再灌流時に与えられた低用量の3mg/kgのPQQは、虚血により阻害されるミトコンドリア呼吸を非常に効果的に回復させ、ミトコンドリアに対する酸化的損傷およびI/R損傷における梗塞サイズを減少させた。
【0171】
毒性研究も実行した。本発明者らは、3mg/kgまたは10mg/kgの用量で腎毒性も肝臓毒性も見出さなかった(表1参照)。上記のように、再灌流時に与えられた3mg/kgのPQQは、有効な心臓保護用量であるように思われた。15mg/kgにおいて、7/8の動物は、腎毒性も肝臓毒性も全く示さなかったが、表1に示されるデータから除外した1匹のラットは、4日目に尿毒症を発症して10日目に死んだ。20mg/kgを受けたラットは、予め2週間、30mg/kgの累積用量で10mg/kgを受けていた。表1に示すように、これらの動物の全ては尿毒症を発症して10日目に死んだ。全ての実験室研究を、San Francisco VA Medical Centerの臨床実験室によって盲検様式で実施した。アルブミンのような、いくつかの尺度のベースラインレベルが、ヒトにおけるよりもラットにおいて低いが、その一方で、クレアチンキナーゼ(CK)のような他のものはより高いことに留意されたい。
【0172】
【表1】
実施例6.心機能に対するPQQおよびメトプロロールの効果の研究
15mg/kgのPQQでの前処置または処置は、梗塞サイズを低減させ、虚血/再灌流(I/R)のラットモデルにおける心機能を改善した。β遮断剤メトプロロールは、急性心筋梗塞症患者における標準処置として使用される。従って、メトプロロールおよび低用量PQQを用いた心筋梗塞の併用処置を各薬物単独と比較して研究するために実験を行った。心臓保護機構を決定するために、変化を、ミトコンドリア機能および脂質過酸化において測定した。
【0173】
インタクトな雄ラットを、左心室血行力学をモニタリングしながら、30分間の左前下行冠動脈閉塞および2時間の再灌流に供した。予備実験において、1mg/kgの用量のメトプロロールは、梗塞サイズを減少させるために、このシステムにおいて最適であるとわかった。従って、臨床処置を模倣するために、メトプロロール(1mg/kg)および/またはPQQ(3mg/kg)を、再灌流の開始時に大腿静脈注射によって与えた。別々の実験において、虚血/再灌流後、虚血性心筋および非虚血性心筋のミトコンドリア呼吸調節およびADP−酸素消費率(RCR)、ならびにマロンジアルデヒド(MDA)(脂質過酸化の指標)のレベルを測定した。
【0174】
結果は、メトプロロールまたはPQQのいずれかを用いた処置が心筋梗塞サイズ(梗塞重量/危険領域)を低減させたことを示す。これらの薬剤を組み合わせて使用することは、梗塞サイズをさらに減らす傾向があった。メトプロロールおよび/またはPQQはまた、1〜2時間の再灌流後、虚血により誘発された左心室(LV)機能不全から保護した。それゆえ、LV発生圧力は増加し、そしてLV拡張末期圧力は減少した。メトプロロールおよび/またはPQQはまた、CK放出を減少させた。虚血性心筋および非虚血性心筋におけるミトコンドリアRCRは、主にPQQによって強化され、そしてメトプロロールによってはそれほどではなかった。PQQは、虚血性心筋および非虚血心筋におけるMDAを減少させた。これらの結果は、下記の表2にまとてある。
【0175】
これらの実験は、PQQおよびメトプロロールが心筋梗塞の処置に有効であるが、PQQとメトプロロールとの組み合せはいずれかの薬剤単独よりも効果的であり得ることを示唆する。ミトコンドリア保護については、PQQが優れている。メトプロロールまたはプラセボにランダム化された45,852人の急性心筋梗塞症患者の最近の大規模研究において、心臓性ショックの発生率がメトプロロール群において約30%より高かった点に留意すべきである(Collins Rら,COMMIT/CCS−2;Placebo−controlled trial of early metoprolol in 46,000 acute myocardial infarction patients.Late−breaking trials presented at the American College of Cardiology Annual Scientific Session 2005.March 6−9,2005.Orlando,Fla.)。これは、メトプロロールがミトコンドリア機能を回復することができないことに少なくとも一部起因し得る。
【0176】
【表2】
実施例7:PQQ連結ポリビニルアルコールおよびPQQ連結ポリマーの合成
PQQを最初に活性化させ、次いで、ポリマーと反応させてPQQ連結ポリマーを得た。9k〜100の異なる分子量のポリ(ビニルアルコール)(PVA)を、本出願において試験した。PVAは、その多くの望ましい特徴のため、特に様々な薬学的お生物医学的用途にとって大いに関心のあるポリマーである。
【0177】
合成手続は、図20Aに示してある。これは2ステップ反応である。第1のステップにおいて、PQQは、脱水剤(例えば、DCCまたはCDI)と反応して活性なimmediateを得た。第2のステップにおいて、活性PQQはPVAと反応し、エステル結合が形成され、PQQは、PVA主鎖に化学的に結合された。
【0178】
実験の設計が表3に示してある。PQQ負荷レベルは1〜10%であり、反応温度は、0、25および50℃に制御した。
【0179】
【表3】
*実験は、DMF溶液中で実施した。3つの分子量のPVAを試験した(M.W.〜10K、40K、および10K)。
【0180】
合成および精製手順:
1. PQQは、制御された温度(0℃、25℃、および50℃)でN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液に溶解した。
【0181】
2. 脱水剤(DCCまたはCDI)を溶液に添加して活性化PQQimmediateを形成した。
【0182】
3. PVAを溶液に添加し、反応を20時間保持した。
【0183】
4. 溶液を透析管(COMW 4,000)に移送し、脱イオン水中で2日間透析を行った。水は1日3回交換した。
【0184】
5. 透析後、溶液を真空下で濃縮し、真空オーブン中にて50℃で乾燥した。
【0185】
H−NMR分析
受け取られたPQQおよびPQQ/PVA連結物のプロトンNMRスペクトルを、図45および図46に示す。8.58ppmおよび7.19ppmに2つのピークが示され、これらのピークは、PQQ中に示される2つの芳香族プロトンに割り当てられた。d6−DMSOピークは2.50ppmに現れ、水残留物からのピークは3.31ppmに示された。純度は、プロトン積分面積を比較することにより算出し、2つのリソースについて>95±5%であった。PQQ/PVA連結物のNMRスペクトルは、連結結合の形成を明確に示した。低フィールドでは、8.58ppmおよび7.19ppmの2つのピークはPQQからであり、高フィールドの4〜1ppmの複数ピークは、PVAからであった。
【0186】
PQQおよびPVAのFT−IRスペクトル
PVA、PQQ、および連結されたPQQ/PVAのATRモードFT−IRスペクトルを、図47、図48、および図49に示す。3,000cm−1近くの特性ピークは、PVA中のヒドロキシル基からである。PQQ/PVA連結物において、このピークは、連結反応により明らかに減少されられている。さらに、1720cm−1の強いピークが、新しいエステル結合の結果として形成された。
【0187】
PVA粉末のXRDスペクトル
X線回折は、Shimadzu XRD−6000において実施した。結晶化度は、PQQ放出動力学に対し大きな効果がある。結晶化度は、多くの要因(例えば、分子量および分子量多分散、熱履歴、等)によって決定される。受け取られたPVA(MW:10K)は、同様な結晶化度を示し、この結晶過度は、図50に示されるように、約32〜34%であり、19〜20(2θ)に主ピークを有する。PQQがPVAと反応してPQQ/PVA連結物を形成する場合、生成物は、非晶質ピークのみを示した。この連結反応は、微視的構造を完全に変えた。
【0188】
HPCLによるPQQの定量アッセイ
標準較正曲線が図51に示してあり、これは、0.1ng/20μlまでのPQQ量を検出することができる。量の限界および検出限界はそれぞれ、0.2ng/20μlおよび0.1ng/20μlであり、このことは、PQQ量が>0.1ng/20μlである場合、PQQは、効果的に検出され得ることを意味する(図52および図53)。PQQ量が>0.2ng/20μlである場合、この量は、較正曲線を用いて知ることができ。
【0189】
GPCによるPQQ連結PVA系の確認
透析の間に、UVランプにより、溶液を流出PQQについてチェックした。2日間の透析後、検出可能な量のPQQは皆無であった。PQQ連結PVA溶液を、ロータリーエバポレータにより濃縮し、最終複合物をオーブンで乾燥した。
【0190】
ポリマーへのPQQの結合を確認するため、GPC分析は実施した。図21は、蛍光検出器を用いた、PQQのGPCスペクトルを示している。鋭いピークが14.90分に現れ、これは、この操作条件における純PQQの保持である。ピークの構造は、図22に示されるようなUV吸収スペクトルにより確認された。
【0191】
PVAが蛍光検出器により検出された場合、強度はPQQの強度に比べて非常に弱かった。これは、PVAがほとんど蛍光を示さなかったためである。
【0192】
PQQ連結PVAのGPCスペクトルは、図23に示してあり、ピークが10.19分、13.67分に、そしてオーバーラップピークが14.90分に示された。計算から、分子量は、約40K、10Kおよび低分子量分子であった。PQQは蛍光検出器によって検出できるので、すべての分子はPQQを含んでいた。さらなる確認を、各ピークのUV吸収スペクトルを調べることにより行った。一般に、それらのピークは、分子中の新たなエステル結合形成に起因するわずかな違いがあるが、同じである(図24)。
【0193】
様々な分析方法を、このPQQ連結PVA生成物ように用いることができる。プロトンNMR試験は、GPCを除き、PVAとのPQQの結合をさらに詳細に調べるために実施した。
【0194】
PQQ−PVA連結物は、20wt%のPQQおよび80wt%のPVAも含み得る。言い換えれば、すべての30反復PVA単位が1つのPQQ分子を含有し、すべてのPVA分子が約6〜約16個のPQQ分子、好ましくは約7〜約8個のPQQ分子を含有する。図20Bおよび図20C参照。PQQ/PVA連結物は、CDIをを脱水剤として用いて、PQQをDMF溶液中のPVAと反応させて合成した。一般的な負荷レベルは、約20wt%である。純粋生成物を、加水分解および凍結乾燥後に得た。純度は、HPLSにより確認した。連結生成物は、様々な方法により特性決定した。
【0195】
PQQ連結ポリマー
以下でおよび図54A〜JJに開示されるように、付加的なPQQ連結ポリマーを合成することができる。これらの化合物は、PQQ放出を制御するための多様な候補を提供する。PEG−PNH2は、候補の1つである。種々の分子量(数千〜20K)および主鎖末端の1ないし2個のアミン基が商業的に利用可能である。アミド結合は、PQQ連結PVA系におけるエステル結合と比較して、より長い放出時間を有することが期待される。
【0196】
PQQ連結ポリマー:係留マスキングおよび非係留マスキング
1. 中性電荷および最小原子容を有するポリマーとの連結
2. 最低/最小親油性のポリマーとの連結
3. 中間レベル親油性のポリマーとの連結
4. 高親油性ポリマーとの連結
5. 高親水性ポリマーとの連結
6. 両性ポリマーとの連結
7. 塩基性特性のポリマーとの連結
8. ボーダーライン酸性特性のポリマーとの連結
9. 長さの短いポリマーとの連結−生体吸着増大のため
10. バックボーン長さの長いポリマーとの連結−生体吸着抑制のため
11. 短鎖脂肪族アルコール部分(<C6)との連結
12. 長鎖脂肪族部分(>C6〜C14)との連結
13. 極長鎖脂肪族部分(>C14)との連結
14. テレケリックポリマーおよび非テレケリックポリマーポリマーとの連結
15. 芳香族非生理活性アルコールとの連結
16. 小型アミンとの連結(非加水分解可能生成物)
17. 中型アミンとの連結
18. 大型アミン(長い半減期)との連結
19. 膨潤性/ヒドロゲルポリマーとの連結
20. 感熱性ポリマーとの連結
21. 電気活性ポリマーとの連結
22. 時間分解リンカー媒介ポリマーとの連結
23. pH反応性ポリマー連結
24. 光反応性ポリマー連結
25. 表面&マトリックス支援吸着可能ポリマー連結
26. カイネチックポリマー連結
27. 生体透過性ポリマーとの連結
28. 細胞吸収ポリマー連結
29. 熱力学的平衡(往復)ポリマー連結
30. アイソタクチック、シンジオタクチックおよびアタクチックな性質のホモおよびヘテロポリマーとの連結
インビトロでのPQQ放出動力学
PQQ放出動力学は、ヒト血漿または純粋なエステラーゼを用いてインビトロで試験することができ、これは将来の臨床研究のための結果をもたらす。確立されたHPLC方法はもまた、この研究のために用いることができる。
【0197】
実施例8:プロベネシドと組み合わせたPQQは、腎毒性を低減する
方法:
PQQ/プロベネシド/PQQ類似物−ラット
実施日時:2005年1月11日〜1月13日
用量PQQ:25mg/kg
PQQ類似物:総重量によってではなく、PQQ当量(25mg/kg)に基づく。
【0198】
容量プロベネシド:100mg/kg IP(20mg/ml溶液の5ml/kg)
処方物:
PQQ:
使用直前に2%NaHCO3から作られる:
1) 2グラムのNaHCO3にDD H2Oを加えて100mlとする=2%NaHCO3
2) 75mgPQQ+15ml 2%NaHCO3=5mgPQQ/ml
プロベネシド:
1) 600mgプロベネシドを秤量
2) 27mlのDD H2O添加
3) 4〜5滴の19.1N NaOHOH
4) 撹拌
5) 1.0N KH2PO4でpHを7.4にする
(1.36グラムのリン酸二水素カリウムにDD H2Oを加えて10mlとする)
(0.5ml〜1.2mlを必要とする)
6) DD H2Oを加えて30mlとする
使用直前にft
PQQ類似物:生理食塩水中で10mg/ml溶液とする。類似物81は、溶液100%にならなかったことに留意のこと。
【0199】
実験:5雌SD/群
群1:対照−無処置
群2:5ml PQQ/kgIV
群3:5mlプロベネシド/kg IP;5ml PQQ IV 30分間、6.0時間後にプロベネシド反復
群4:PVA−PQQ−80、1.9mgPQQ/ml、13.2ml/kg
群5:PVA−PQQ−81、2.2mgPQQ/ml、11.3ml/kg
48時間後動物を殺し、BUN、クレアチニン、血清リン用に血を抜き取り、重量および組織病理学用に腎臓を取り出す。
【0200】
【表3A−1】
【0201】
【表3A−2】
【0202】
【表3A−3】
【0203】
【表3A−4】
【0204】
【表3A−5】
【0205】
【表3A−6】
【0206】
【表3A−7】
【0207】
【表3A−8】
【0208】
【表3A−9】
結論:
図27は、単独投与のPQQと対照とが有意に異なることを示している。しかしながら、プロベネシドと組み合わせたPQQ(または類似物80および81)は、対照と比較して有意には異ならなかった。従って、プロベネシドと組み合わせて投与されたPQQは、腎毒性を低減するのに有用である。
【0209】
実施例9:PQQは、内皮細胞単層におけるアクチンニトロ化およびTNF誘発性障壁不全を防止する
小さな肺動脈は、肺動脈圧および血管抵抗の主要な決定因子である。それらの内皮は、肺抵抗、リモデリング、および血液流動性を調整する。肺微細血管内皮細胞培養に対するPQQの効果を研究して、血管損傷および血管損傷関連疾患の処置するためのPQQの使用の利点を決定した。
【0210】
材料/試薬:
すべての試薬は、特に言及されない限り、Sigma Chemical Company(St.Louis,MO)から入手した。
【0211】
肺微細血管内皮細胞培養
ラットの肺微細血管内皮細胞(RLMVEC)およびウシの肺微細血管内皮細胞(BLMVEC)を、第4パッセージで入手した(Vec Technologies,Rensselaer,NY)。調製物は、Vec Technologiesによって、以下のことにより純粋な個体群であると確認された:(i)位相差顕微鏡で評価した場合の特徴的な「敷石状」外観、(ii)ファクターVIII関連抗原の存在、(iii)アシル化低密度リポタンパク質の取り込みおよび(iv)平滑筋アクチンの不在(間接免疫蛍光法)。すべての研究について、RLMVECおよびBLMVECは両方とも、BLMVECについては、20%胎仔ウシ血清(Hyclone,Hyclone Laboratories,Logan,Utah)、15μg/mlEndothelial Cell Growth Supplement(Upstate Biotechnology,Lake Placid,New York)および1%非必須アミノ酸(Gibco−BRL)を補ったDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM;Gibco,Grand Island,NY)を含有する培地中で、RLMVECについては、10%胎仔ウシ血清(VEC Technologies)を含有するMCDB−131完全培地中で、4〜12パッセージ培養された。両方の細胞系は、37℃で5%CO2+湿潤空気中で維持した。融合性肺微細血管内皮細胞単層(PMEM)には、3日〜4日かかった2ないし3回の個体群倍加で達した。
【0212】
処置
TNF処置:10μg/mlの原液中のEscherichia coli(Calbiochem−Novabiochme,La Jolla,CA)からの高度に精製された組み換えヒトTNFαを用いた。標準のリムルスアッセイによって決定した場合、内毒素レベルは、TNFα 0.1ng/μg未満であった。本発明者らはかねて、TNFαを0.75時間煮沸するにより、内毒素汚染を全く示さない本発明者らの系(14)におけるTNFの効果が阻止されることを示した。PMEMは、100ng/mlにおいてTNFαで処理した。なぜならば、用量応答研究によりこの用量が透過性増大を一貫して引き起こすことが示されるからである。
【0213】
抗ONOO−剤:用いたONOO−インヒビターは、尿酸塩(5FM)およびPQQ(1μM)であった。本発明者らはかねて、尿酸塩が、TNF誘発性ONOO−をスカベンジングし、かつ内皮における細胞生育能力に全く影響しないことを示している(30)。PQQは、推定されるビタミンおよび超酸化物アニオンラジカルスカベンジャーである。細胞は、尿酸塩またはPQQ単独で処理するか、あるいは尿酸塩、PQQおよびTNFで同時処理した。
【0214】
処置媒体:すべての研究について、TNF、PQQ、尿酸塩およびすべての対応する対照を用いたPMEMのインキュベーションを、フェノールの潜在的な抗酸化効果を回避するために10%FBSを補ったフェノールフリーDMEM(pf−DMEM,Gibco BRL)により実施した。
【0215】
内皮透過性アッセイ
Nucleopore Track−Etch Polycarbonate Membrane(直径13mm、孔サイズ0.8mm;Corning Costar,Cambridge,MA)を、ゼラチン(ウシ皮膚からのタイプB;Sigma)で被覆し、修正型Boyden化学走性チャンバ(内径9mm;Adaps,Dedham,MA)にMFセメントno.1(Mllipore,Bedford,MA)でマウントし、かねて記載されたように、12.0〜24.0時間紫外光で滅菌した(8,16)。BLMVECまたはRLMVEC(DMEM 0.50ml中の1.5×105)を、ゼラチン化膜上で培養し、3〜5日以内での融合に到達させた(37℃、5%CO2)。
【0216】
静水圧および膠質浸透圧の勾配のない経内皮輸送の研究の実験装置は、記載されている(16)。簡単に言えば、このシステムは、上記のように内皮細胞単層でライニングされた微孔質ポリカーボネート膜によって分離された2つのコンパートメントから成る。luminal(上部)コンパートメント(0.7ml)を、abluminal(下部)コンパートメント(25ml)中に吊り下げた。下部コンパートメントを、完全混合のために連続的に撹拌した。システム全体を、37℃の一定温度で、水槽中で保持した。両方のコンパートメント中の流体高さは、対流を排除するために同じであった。
【0217】
内皮透過性は、Pattersonら(29)により記載されたオリジナル技術の筆者らの改造(16)を用いて、Evans Blue−labeledアルブミンのクリアランスレートにより特性決定した。0.5%ウシ血清アルブミンおよび20mM(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)バッファを含有するHanks’Blaransed Salt Solution(HBSS,Gibco−BRL)を含有するバッファ溶液を単層の両側で用いた。luminalコンパートメントバッファは、容量700μl中の0.057%エバンスブルー色素の最終濃度でラベルした。luminalコンパートメントおよびabluminalコンパートメント中の遊離Evans Blueの吸光度は、バッファ中のエバンスブルーの全吸光度の1%未満であった。各研究の最初に、luminalコンパートメント試料を、そのコンパートメントの初期吸光度を決定するために、1:100に希釈した。abluminalコンパートメント試料(300ml)を、5分毎に60分間採取した。試料の吸光度は、SpectraMax Plusマイクロプレート分光光度計(Molecular Devices,Sunnyvale,California)により620nmで測定した。エバンスブルーでラベルしたアルブミンのクリアランスレートは、対照および実験群について、10分〜60分の間で最小自乗線形回帰により求めた。
【0218】
免疫蛍光および共焦点顕微鏡
細胞調製および抗体処置:RLMVECかBLMVEC(1×104/0.20mlの培地)を、35mm培養皿内の18mmカバースリップ上で培養し、37℃で2時間インキュベートして付着させ、次に、付加的な2mlの培地中で融合まで生育させた(16)。PMEMを、示されるように処置し、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS,Gibco BRL)で洗い、3.7%ホルムアルデヒド溶液により間室温(RT)で20分間固定し、次いで、DPBS中の1%Triton X−100によりRTで5分間透過化処理した。細胞をDPBSで洗い、次に、10%正常ヤギ血清(Ngs,Gibco BRL)中で、RTで5分間ブロックした。PMEMを、10%NGS中で1:1000希釈したマウスモノクロナール抗ニトロチロシン抗体(クローン1A6,Upstate)でインキュベートした。二次抗体、Alexa Fluor488ラベルしたヤギ抗マウスIgG(Molecular Probes,Eugene,OR)を10%NGS中に1:1000希釈で添加し、RTで1時間インキュベートし、次に十分に洗った。全βアクチンをマウスモノクロナール抗βアクチン抗体(クローンAC74)で、続いて、Alexa Fluor568ラベルしたヤギ抗マウスIgG(Molecular Probes)染色した。
【0219】
蛍光画像のための定量化手順は、以下の通りである。PMEMは、Leica Confocal System TCS SP2(Leica MicrosystemsInc.,Exton,PA)を用いて共焦点顕微鏡により視覚化および定量化される。1つの研究あたり4の処置群および2つの処置時間がある4つの別々な研究があった。すべてのフィールドを、インタクトな内皮単層内の別の領域への顕微鏡ステージの無作為移動により選んだ。処置群あたり6つの全フィールドを、フィールドあたり1つの画像によって分析した。全処置群を、最大蛍光を有するスライドによって決定されるように、ノイズ、輝度およびコントラストについて設定を最初に調整することによって蛍光強度について正規化した(16)。
【0220】
抗ニトロチロシン抗体の特異性は、抗体−抗原競合によって確認した。10:1のモル比のニトロチロシン抗体とニトロチロシン抗原とを、PMEMへの適用前に、10%NGS中で30分間、37℃でプレインキュベートした。カバースリップを、清浄なガラススライド上にPermafluor封入剤(Thermo Shandon,Pittsburgh PA)でマウントした。PMEMを、位相、光、および蛍光検出のために装備されたOlympus IX70倒立顕微鏡(Olympus America,Inc.,Melville,NY)上に設置されたSpot RTカラーカメラ(Diagnostic Instruments,Inc.,SterlingHeights,MI)で視覚化した。例示のためのイメージは、倍率100倍、露出時間8秒でキャプチャし、イメージをSpot RTイメージングソフトウェア(Diagnostic Instruments,Inc.)にダウンロードした(16)。
【0221】
統計学
一元配置分散分析(ANOVA)を用いて処置間の値を比較した。もし処置間に有意性が確認されれば、事後多重比較検定をBonferrone(パラメトリック−等分散)またはDuncan(ノンパラメトリック−不等分散)検定と共に実施して、群間の有意差を決定した(37)。適切な時に、データを平滑化するため、log10変換を実行した。各PMEMウェルおよびフラスコは、単一の実験を表す。全データを、平均±SEMとして報告する。優位性は、p<0.05であった。全研究において、1群あたり試料は5〜10である。
【0222】
結論
本発明者らは、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)が、ニトロ化β−アクチン(NO2−β−アクチン)に関連する肺微細血管内皮単層(PMEM)の透過性においてペルオキシ亜硝酸塩(ONOO−)依存性増大を引き起こすという仮説を検定した。PMEMの透過性は、エバンスブルーでラベルしたアルブミンのクリアランスレートにより評価した。NO2−β−アクチンの細胞区画化は、β−アクチン−免疫蛍光を伴うニトロチロシン−免疫蛍光の共焦点局在を示すことにより表示した。TNF(100ng/ml)を用いたPMEMの0.5時間および4.0時間のインキュベーションは、アルブミンの透過性増大という結果になった。0.5時間の時点で、β−アクチン−免疫蛍光を伴うニトロチロシン−免疫蛍光の共焦点局在があった。TNF誘発性のβ−アクチン−免疫蛍光を伴うニトロチロシン−免疫蛍光の共焦点局在および透過性の増大は、抗ONOO−薬剤の尿酸塩(5μM)およびPQQ(1μM)により防止された。このデータは、NO2−β−アクチンの生成に関連するONOO−依存性の障壁不全をTNFが引き起こすことを示す。
【0223】
本発明者らの研究は、PQQが、(i)TNF−誘発性のニトロチロシン増大、(ii)ニトロチロシンとβ−アクチンとの共存、および(iii)肺微細血管内皮単層の透過性増大を防止することをさらに示す。従って、PQQは、TNF誘発性のONOO−依存性の内皮細胞不全を防止する。従って、PQQおよび尿酸塩を用いる戦略の開発により、血管損傷および血管損傷関連疾患の療法のための新たな方向が提供される。
【0224】
実施例10:PQQによる神経保護
ピロロキノリンキノン(PQQ)は、遊離した水溶性の陰イオン化合物であり、これは、潜在的なフリーラジカルスカベンジャー特性を有する酸化還元サイクリング平面オルトキノンである。メチルアルコールおよびアルコールデヒドロゲナーゼのようなPQQ依存性酵素は補欠分子団としてPQQに結合し、また、電子を受け入れ、それらの電子を、ミトコンドリア呼吸鎖における電子キャリアとして機能するユビキノンに提供するチトクロムcも含む。
【0225】
PQQは、N−メチル−D−アスパルテート(NMDA)誘発性の電気応答を抑制することが実証されており、インビトロでNMDA媒介性神経毒損傷に対して神経保護性であJensenら(Neuroscience 62(1994)399−406)は、低酸素30分前に腹腔内投与したPQQが、生後7日の仔ラットにおけるインビボの脳低酸素/虚血(低酸素と組み合わせた両側頚動脈結紮)モデルにおいて神経行動学的副作用を引き起こすことなく、梗塞サイズを低減することを示した。しかしながら、全身的に与えられたPQQが、神経行動学的結果を改善し、成体動物における限局的脳虚血モデルに起因する梗塞脳を守ることができるか否かを決定するために実施された以前の研究は皆無である。従って、成体ラットにおける神経行動学的測定および梗塞サイズ測定に続き2時間の可逆的な中大脳動脈閉塞(rMCAo)により評価されるような神経保護をもたらす際のPQQの有効性を評価した。梗塞体積に対するPQQについての用量応答曲線も特性決定した。
【0226】
材料および方法
動物モデル
すべての動物実験手順は、実験用動物の管理と使用に関する指針に従い、Institutional Animal Care and Use Committeeにより承認された。雄性Sprague−Dawleyラット(300〜350g、Taconic,Germantown,NY)を、50mg/kg硫酸アトロピン(Sigma,St.Louis,MO)を筋肉内注射で与えた後に、密閉チャンバ内でイソフルランで麻酔した。次に、それらのラットに気管挿入し、30%O2/残分N2中の2.0%イソフルランにより機械的に通気した。血液ガス分析により、PaCO2が30mm〜45mmHg、PaO2が90mmHg以上であることが立証された。体温は、直腸プローブでモニタリングし、加熱パッドを用いて37.0℃〜37.5℃の間に維持した。側頭筋温度を、脳温度を反映するために用い、加熱ランプを用いて36.0℃〜37.0℃の間に維持した。圧力モニタリングおよび血液ガスサンプリングのために、1つの大腿部動脈にカニューレ挿入した。
【0227】
可逆的な中大脳動脈閉塞を、本発明者らの研究室で以前用いたように、Longら(Stroke20(1989)84−91)により記載されるように、実行した。4−0ナイロン腔内縫合糸を、外頚動脈動脈(ECA)を介して右内頚動脈(ICA)に導入した。総頚動脈およびICAを一時的にクリップ止めし、縫合糸をECA断端内に設置し、ICAに遠し、抵抗が感じられるまで〜20mm穏やかに進めた。縫合糸を適切な位置に2時間残し、次に回収した。PQQ(10mg/kg、Sigma,St.Louis,MO)を、リン酸緩衝生理食塩水に溶解し(10mM溶液)、1mlの容量を、虚血開始の直前または3時間後に、10、3、または1mg/kgの用量を送達するために頚静脈に注射した。ビヒクル処置した対照は、等容量のリン酸緩衝生理食塩水を受けた。動物がビヒクルで処置されたか、PQQ注射で処置されたかについて、研究者は知らされなかった。体温および脳温度は、動物が麻酔から完全に回復させられて、そのケージに戻されるまで、実験全体を通して維持した。72時間後、動物を殺し、脳を調べた。
【0228】
神経行動学的欠損スコアリング
神経行動学的欠損スコアリングは、Garciaら(Stroke26(1995)627−634)により記載された18ポイントスケールに基づいた。神経学的状態は、各ラットにおいて、虚血の24時間後に開始して、3日間、毎日記録した。各被験体は、概日リズムのどのような効果も回避するため、午後遅く試験した。神経行動学的欠損を評価す研究者は、ビヒクルが投与されたのか、またはPQQが投与されたのかについて知らされなかった。神経行動学的尺度は、以下の6つの試験から構成された:1)自発的活動(0〜3ポイント);2)四肢の動きの対称性(0〜3ポイント);3)前肢伸ばし(0〜3ポイント);4)クライミング(1〜3ポイント);5)身体自己受容性(1〜3ポイント)、および6)鼻毛接触応答(1〜3ポイント)。評価完了時に各ラットに与えられたスコアは、合計6つの個別試験の合計である。最小神経学的スコアは3であり、最大は18である。
【0229】
梗塞体積の測定
梗塞体積は、本発明者らの研究室で以前用いた(Neuroreport 11(2000)2675−2679)ように、塩化2,3,5−トリフェニルテトラゾリウム(TTC)(Sigma,St.Louis,MO)染色を用いて評価した。虚血の72時間後、ラットに120mgのペントバルビタールを注射した。次に脳を取り出し、2mmセクションに切った。スライスを、2%TTCを含有するペトリ皿中に30分間置き、どのスライスも底部に留まらないように周期的に撹拌し、次いで、10%ホルムアルデヒド中に入れた。未染色組織の測定面積(mm2)(SigmaScan Pro,SPSSソフトウェア)を合計したものに、2mmスライス厚さを掛けて、損傷体積を算出した。
【0230】
統計解析
神経行動学的スコアの統計的評価は、繰り返し測定ANOVA(Statistica,StatSoft Inc.)により行った。梗塞体積の評価のために、処置群と対応するビヒクル群との間で比較を行った。非正規分布の体積の評価のため、ノンパラメトリックMann−Whitney検定を用いた。差は、P<0.05で統計的に有意であると見なされた。
【0231】
結果
10mg/kgのPQQによる神経保護
PQQは最初、Jensenらによる以前の報告(Neuroscience 62(1994)399−406)に基づき10mg/kgの用量で研究した。梗塞体積は、ビヒクル処置した動物においては319mm3(SD:96.2;n=7)であり、虚血開始直前に10mg/kgのPQQを与えた動物では50mm3(SD:39;n=8)で有意に少なかった(p<0.01;Mann−Whitney検定)。梗塞体積は、ビヒクル処置した動物において362mm3(SD:110;n=5)であり、虚血開始3時間後にPQQを与えた動物では67mm3(SD:53;n=8)で有意に少なかった(p<0.05;Mann−Whitney検定)。これらのデータを、図31Aおよび図32に示す。行動スコアもまた、図33Aおよび図33Bに示されるように、虚血開始直前および虚血開始3時間後にPQQが与えられた場合、対応するビヒクル処置対照と比較してPQQ処置群においてより良好であった。
【0232】
3mg/kgおよび1mg/kgにおけるPQQによる神経保護
虚血開始3時間後に与えた10mg/kgのPQQが、虚血と同時のPQQ投与と同程度に効果的と思われたので、虚血開始3時間後の異なる容量の効果を試験した。なぜならば、虚血開始後の3時間は、処置のための治療機会を提供するからである(Stroke 30(1999)2752−2758)。虚血開始3時間後に3mg/kgでPQQを与えた場合、梗塞体積は、ビヒクル処置した動物においては406mm3(SD:114;n=10)であり、PQQ処置した動物では120mm3(SD:47;n=8)で有意に少なかった(p<0.01;Mann−Whitney検定;図2A、図3)。この用量では、行動スコアもまた、ビヒクル群と比較してPQQ群においてより良好であった(図33C)。用量応答曲線が図31Bに示してある。
【0233】
虚血3時間後に1mg/kgでPQQを与えた場合、梗塞体積は、ビヒクル処置した動物においては316mm3(SD:132;n=6)であり、PQQ処置した動物では328mm3(SD:112;n=6)であり、有意差は全く見られなかった(p>0.05;Mann−Whitney検定;図2A)。行動スコアもまた、ビヒクル処置群と比較してPQQ処置群において有意に異ならなかった(図33D)。
【0234】
図32は、正常な偽対照動物、ビヒクル処置動物、PQQ10mg/kg処置動物およびPQQ3mg/kg処置動物の4つの代表的スライドを示す。
【0235】
考察
本研究は、成体ラットにおける限局的可逆性中大脳虚血/再灌流の広く用いられるモデルにおける梗塞体積および神経行動学的結果の両方で評価したPQQの神経保護を調べる最初の研究である。データは、PQQが虚血前または再灌流の1時間後に与えられた場合に行動面および梗塞体積面での神経保護をもたらす上で効果的であること、および、PQQによりもたらされる神経保護が容量関連であることを実証している。
【0236】
PQQのいくつかの特性は、神経保護に含まれ得るであろう。第1に、PQQはペルオキシ亜硝酸塩形成を抑制し得る。虚血性発作における酸化窒素の神経毒性は、ペルオキシ亜硝酸塩へのその変換に依存すると提案されてきた。フリーラジカルスカベンジャーおよびキノプロテイン酵素にとっての補因子として、PQQは、ペルオキシ亜硝酸塩形成を抑制し得る。第2に、PQQは、NMDA受容体酸化還元部位を酸化し得る。NMDA受容体の病的活性化は、虚血を含む様々なCNS疾患に関係してきた。第3に、PQQは、ミトコンドリア脂質およびタンパク質を保護する際の効果的な酸化防止剤として機能することができ、さらに、酸化損傷からミトコンドリア機能を保護することが明らかにされている。
【0237】
要約すると、本発明者らは、2時間のrMCAoの開始3時間後に単一用量として与えられた場合に、PQQは、梗塞サイズを低減し、行動スコアを改善することを見出した。これらの条件の下で、PQQは、3mg/kgおよび10mg/kgで有効であるが、1mg/kgでは有効ではない。従って、様々な系において必須栄養素、酸化防止剤および酸化還元モジュレーターとして働くPQQは、効果的な神経保護をもたらし、成人発作の治療における潜在的な使用を有する新しい種類の薬剤である。
【0238】
実施例11:ラットにおけるPQQの薬物動態学
プロベネシドがある場合およびプロベネシドがない場合のPQQに対する反応を評価するため、ラット血漿中の経時的なPQQ濃度測定に着手した。群A(ラット1〜3)には、20mgPQQ/kgをi.v.で投与した。群B(ラット4〜6)には、100mgプロベネシド/kgをi.p.で投与し、30分後に20mgPQQ/kgをi.v.で投与した。投与の0分後、5分後、および30分後、ならびに投与の1時間後、2時間後、4時間後、および6時間後に、群Aおよび群B両方のラットから血液を採取した。
【0239】
試料調製:
ラット血液:100μlラット血液+60μlヘパリン処理生理食塩水を、遠心分離;60μl血漿を試験管に定量的にピペットで取り、分析まで−80℃で冷凍した。
【0240】
較正試料:ラット血漿を生理食塩水で希釈し(80:60,v/v)、これを用いて1組の較正曲線試料を、PQQ標準を31.25〜2500ng/mlラット血漿の範囲で加えることにより準備した。図34参照。
【0241】
結果:
群Aおよび群Bのラットの各々についてのラット血漿中PQQ濃度の結果は、以下の図35および表4に示される。ラット血漿試料は、2段階抽出によって調製し、HPLC分析前に2〜100倍に希釈した。
【0242】
【表4】
図36は、群Aおよび群Bにおける各時点について平均値の血漿PQQ濃度−時間曲線の比較を例示している。
【0243】
実施例12.インビボにおける酸化的ストレス防止/低減のためのPQQおよびプロベネシドの使用
雄性Sprague−Dawleyラットを、虚血か虚血−再灌流の前に、ピロロキノリンキノン(PQQ)、プロベネシド、または両方で無作為に処理した。PQQ(1〜3mg/kg)および/またはプロベネシド(100mg/kg)を、左前下行冠動脈(LAD)閉塞の30分前に腹腔内注射(前処置)により、または再灌流開始時に静脈注射(処置)により与えた。ラットを、左心室(LV)血行力学モニタリングしつつ、15分間または30分間のLAD閉塞および30分間、1時間または2時間の再灌流に供した。プロベネシドと組み合わせたPQQは、これらのラットモデルにおいて梗塞サイズを減少させた。プロベネシドと組み合わせたPQQは、虚血誘発性の心臓機能不全を防止し、30分〜2時間の再灌流後、より高いLV収縮期圧、LV発生圧力、LV(+)dP/dtおよびより低いLV(−)dP/dtを有した。クレアチンキナーゼ(CK)産生は、プロベネシドと組み合わせたPQQにより低減された。従って、プロベネシドと組み合わせたPQQは、虚血および虚血−再灌流のラットモデルにおいて用量に関連して心筋梗塞サイズを低減し心機能を改善するのに非常に効果的である。
【0244】
統計分析
すべての結果を、平均±SEMとして示す。2つの処置群(前処置および処置)を、複数群比較のための回帰式を用いて一元分散分析(ANOVA)を使用して正常対照群と比較した。3つの群の間での閉塞および再灌流期間中の死亡率の差を、χ二乗検定により評価した。VFを有するラットのパーセンテージを、フィッシャーの正確確率検定により評価した。全ての計算を、Minitabバージョン7.2(Minitab Statistical Software)またはPrimor of Biostatistics:The programバージョン3.03(McGraw−Hill)の一般線形モデル手順を使用して行った。統計的有意性を、p<0.05に設定した。
【0245】
虚血および虚血−再灌流モデル
PQQをビヒクル(2% NaHCO3)に溶解した。腹膜内(i.p.)または静脈内(i.v.)のいずれかで与えられた体積は、1mlであった。全ての対照を1mlのビヒクルにより処置した。1〜3mg/kgのPQQを、15分間か30分間の虚血の30分前にi.v.で与え、続いて30分間、1時間または2時間の再灌流を行った。
【0246】
600mgのプロベネシドを、27mlのddH2Oに溶解した。4〜5滴の19.1N NaOHを添加し、pHを、1.0N KH2PO4で7.4に調節した。プロベネシドを、15分間か30分間の虚血の30分前に与え、続いて30分間、1時間または2時間の再灌流を行った。
【0247】
麻酔(ケタミン80mg/kg、キシラジン4mg/kg体重、腹膜内)導入後、気管切開術を実施し、動物をHarvard Rodent Respirator(モデル683、Harvard Apparatus)において通気した。梗塞サイズ測定ラットを、再灌流のない2時間の近位左前下行(LAD)冠動脈結紮に供した。虚血に再流動が続くこのモデルは、以前に記載された通りの虚血−再灌流(Sievers REら,Magn Reson Med 1989;10:172−81)を使用した。このモデルにおいて、可逆冠動脈係蹄オクルーダーを、正中線胸骨切開術により近位LAD冠動脈周辺に配置した。次いで、ラットを15分間または30分間のLAD閉塞および30分間、60分間または120分の再流動に供した。加えて、これらのラットは、血行力学的測定値を記録された。4F Millarカテーテルを、右頸動脈を通して左心室(LV)に挿入した。20分間の平衡化後、心拍数(HR)、収縮期圧(LVSP)、拡張末期期圧(LVEDP)、LV(+)dP/dtmax、LV(−)dP/dtmaxを、MacLab/4S(Milford,MA)を使用してモニタリングした。LV発生圧力(LVDP)を、LVEDPをLVSPから差し引くことにより算出した。
【0248】
ベースラインでは、対照群、前処置群および投与群の間で心拍数、LVSP、LVEDP、LV(+)dP/dt、およびLV(−)dP/dtに有意差は皆無であった。前処置によって与えられるかまたは処置として与えられるかにかかわらず、プロベネシドと組み合わせたPQQは、虚血誘発性の心臓機能不全を防止し、図5〜9に示されるように、30分間、1時間または2時間の再灌流後、より高いLVSP、LVDP、LV(+)dP/dt、およびより低いLV(−)dP/dtを有した。(*<0.05対Student−Newman−Keuls検定を用いたANOVAによる以前刊行されたI/R(対照)データ。Zhura.,Jouranal of Cardiovascular Pharmacology and Theapeutics;11(2):119−128(2006))および図37〜図41。
【0249】
【表5】
【0250】
【表6】
【0251】
【表7】
【0252】
【表8】
【0253】
【表9】
梗塞サイズ
虚血−再灌流ラットモデルを用い、ラットを、17分間または30分間の左前下降冠動脈結紮および2時間の再灌流に供し、梗塞サイズを、以前に記載された通りに測定した(Sievers REら,Magn Reson Med 1989;10:172−81、Zhu B−Qら,J Am Coll Cardiol 1997;30:1878−85)。心臓を、2時間の虚血期間の終わりに切り出した。次いで、切片を、生存可能な心筋が赤レンガ色に着色されるまで塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)の1%溶液中で10〜15分間インキュベートした。
【0254】
モデル2において、2時間の再灌流後、LADを再閉塞し、そして、フタロシアニン色素(Engelhard Cooperation,Louiseville,KY)をLV腔に注射し、通常に灌流された心筋を青色に染色した。次いで、心臓を切り出し、過剰な色素をすすぎ洗いし、そして頂部から基部に向かって横断的にスライスして2mm厚の切片にした。切片を、上記の通りにTTC中でインキュベートした。梗塞を起こした心筋は、TTCで染色できない。次いで、組織切片を、10%ホルマリン溶液中で固定し、計量した。各横断スライスの両面のカラーディジタル画像を、顕微鏡(Stereo Zoom 6 Photo,Leica)に接続したビデオカメラ(Leica DC 300F)を使用して得た。青に染色された組織(非虚血性)、赤に染色された組織(虚血性であるが、非梗塞性)および染色されていない組織(梗塞性)を示す領域を、各色画像上で輪郭を描き、NIH Image 1.59(国立衛生研究所,Bethesda,MD)を使用して盲検様式で測定した。それぞれの面で、梗塞関連組織を表すLV面積の割合(2つの画像の平均)にその切片の重量を掛けることにより、梗塞関連組織の絶対重量を決定した。各心臓についての梗塞サイズを、以下のように表現した:
【0255】
【数3】
次いで、危険領域のパーセンテージとしての梗塞サイズを、以下の通り計算した:
【0256】
【数4】
虚血モデル(モデル1)では、PQQ後の梗塞サイズ(梗塞量/LV量、フタロシアニン青色色素は注射されていない)は、対照よりも小さかった(図13)。モデル2における実験の第1セットにおいて、虚血は17分間であり、その後、2時間の再灌流が行われ、梗塞サイズ(梗塞量/危険領域、梗塞量/LV量)は、20mg/kgのPQQでの前処置によって減少した(図14)。モデル2の実験の第2セットにおいて、虚血は30分間であり、その後、2時間の再灌流が行われ、15mg/kgのPQQでの前処置または処置のいずれかの後での梗塞サイズは、対照よりも小さかった(図15)。
【0257】
図42および図43は、PQQとプロベネシドとの組み合わせが、危険領域の百分率および左心室量の百分率の両方としての梗塞サイズを減少させることを示す。図44は、PQQとプロベネシドとの組み合わせが、クレアチンキナーゼの増加を減少させたことを示す。従って、PQQとクレアチンキナーゼとの組み合わせは、特に心臓の病理に関連するインビボにおける酸化性ストレスの防止および低減に効果的である。以下の表10〜15は、PQQ投与の毒性をより完全に例示する。
【0258】
【表10】
【0259】
【表11】
【0260】
【表12−1】
【0261】
【表12−2】
【0262】
【表13−1】
【0263】
【表13−2】
(表14 病理学)
生理食塩水 対照
1−5 正常な組織学的構造
100mgプロベネシド
6−10 正常な組織学的構造
10mgPQQ/kg
11−15 正常な組織学的構造
20mgPQQ/kg
16−20 細管が若干拡張
40mgPQQ/kg
21 非常に重篤な皮質細管上皮外傷
全面的な細管上皮壊死(近位および遠位細管上皮)
糸球体および集合管は存続
22 #21に同じ
23 軽度の外傷、5%壊死細管
24 #21に同じ
25 #21に同じ
100mgプロベネシド/kg、10mg PQQ/kg
26−30 正常な組織学的構造
100mgプロベネシド/kg、10mg PQQ/kg
31−35 16−20と同様に、細管が若干拡張
100mgプロベネシド/kg、10mg PQQ/kg
36−40 本質的に#21に同じ
イヌを用いた予備的研究におけるプロベネシドと併用または併用しないPQQ投与の毒性学研究を以下の表15に示す。
【0264】
【表15】
イヌ1357:注入毒性無;2日目および3日目に重篤な外傷;用量がMTDを十分上回ると思われたため3日目に屠殺;臨床所感は、もう1日も持たないであろうと思われた。
【0265】
イヌ1475:処置1時間後に嘔吐および悪心(注入毒性);その後は完全に正常と思われた。
【0266】
虚血−再灌流についてラットにおけるプロベネシドを用いた処置の結果を以下に示す。第1の注射が、虚血の30分後のプロベネシドおよびPQQまたはNSであることに留意されたい。第2の注射は、再灌流の1時間のプロベネシドである。P値は、PQQ群対対照群の場合、2試料t検定によるものである。
【0267】
【表16−1】
【0268】
【表16−2】
均等物
当業者は、本明細書に記載される特定の手順に対する多数の均等物を認識するか、または慣例的実験法に過ぎないものを使用してこれを確認することが可能である。このような均等物は、本発明の範囲内にあると考えられ、特許請求の範囲によりカバーされる。様々な置換、変更、および改変は、特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に対して行われ得る。他の態様、利点、および改変は、本発明の範囲内である。本出願全体にわたって引用される全ての参照文献、発行特許、および公開された特許出願の内容は、参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0269】
【図1】図1は、PQQでの前処置による、低酸素後に生存可能な成体マウス心筋細胞の増加を示す棒グラフである。
【図2】図2は、PQQ保護が10μMの5−ヒドロキシデカン酸(ミトコンドリアKATPチャネルインヒビター)により阻害されないことを示す棒グラフである。
【図3】図3は、虚血前のPQQ処置が左心室発生圧(LVDP)を保つことを示す折れ線グラフである。
【図4】図4は、虚血前のPQQ処置が左心室拡張末期圧(LVEDP)(左心室収縮期圧−左心室拡張末期圧)を保つことを示す折れ線グラフである。
【図5】図5は、左心室圧(LVDP)の正の最大一次導関数によって測定した場合の、虚血前のPQQ処置の効果を示す折れ線グラフである。
【図6】図6は、左心室圧(LVDP)の負の最大一次導関数によって測定した場合の、虚血前のPQQ処置の効果を示す折れ線グラフである。
【図7】図7は、冠動脈血流が、PQQ処置によって、対照と比較して有意に改善されることを示す折れ線グラフである。
【図8】図8は、示されるいくつかの濃度でのPQQを用いた2分間の前処置が、10nMと1μMとの間で次第に好ましい応答を有するが、毒性が10μMで発生することを示す棒グラフである。
【図9】図9は、PQQ前処置後の心筋梗塞サイズの変化を示す棒グラフである。10nMと1μMとの間では梗塞形成サイズが漸減するが、梗塞形成サイズは10μM PQQでは低減されない。
【図10】図10は、実験プロトコルのモデル1(2時間虚血)およびモデル2(虚血/再灌流)を示す概略図である。モデル2は、2つの別々の実験セット、セット1:(虚血17分/再灌流2時間)およびセット2:(虚血30分/再灌流2時間)を含んでいた。前処置ラットは、30分間の虚血の前にi.p.注射によってPQQを受けた。処置群において、PQQは、再灌流開始時にi.v.注射によって与えられた。対照ラットは、示される時間に、等体積のビヒクルを与えられた。矢印は、PQQ投与のタイミングを示す。i.p.=腹腔内;i.v.=静脈内;I=虚血;LAD=左前下行冠動脈。
【図11A】図11Aは、虚血/再灌流時のモデル2ラットにおける左心室収縮期圧(LVSP)を示す折れ線グラフである。PQQでの前処置(30分間の虚血の前のi.p.注射によるPQQ)かPQQでの処置(再灌流開始時のi.v.注射によるPQQ)が、2時間の再灌流においてLVSPの増加をもたらした。B=ベースライン;I=虚血;R=再灌流。
【図11B】図11Bは、虚血/再灌流中のモデル2ラットにおける左心室発生圧(LVDP)を示す折れ線グラフである。PQQでの処置は、30分間の再灌流後および2時間の再灌流後の両方でLVDPを増加させた。PQQでの前処置は、2時間の再灌流においてLVDPを増加させた。B=ベースライン;I=虚血;R=再灌流。
【図12A】図12Aは、虚血/再灌流時のモデル2ラットにおける左心室(LV)(+)dP/dtを示す折れ線グラフである。PQQでの前処置かPQQでの処置が、2時間の再灌流においてLV(+)dP/dtを有意に増加させた。B=ベースライン;I=虚血;R=再灌流。
【図12B】図12Bは、虚血/再灌流時のモデル2ラットにおける左心室(LV)(−)dP/dtを示す折れ線グラフである。PQQでの前処置かPQQでの処置が、2時間の再灌流においてLV(−)dP/dtを有意に減少させた。B=ベースライン;I=虚血;R=再灌流。
【図13】図13は、モデル1(虚血のみ)における心筋梗塞サイズを示す棒グラフである。20mg/kgのPQQでの前処置は、梗塞サイズ(梗塞量/LV量%)を有意に減少させた。虚血は、再灌流のなしでの2時間のLAD結紮により誘発された。
【図14】図14は、モデル2(虚血/再灌流)における心筋梗塞サイズを示す棒グラフである。これらの実験において、虚血は、17分間のLAD閉塞、続いての2時間の還流(再灌流)により誘発された。20mg/kgのPQQでの前処置は、梗塞サイズを有意に減少させた(梗塞量/危険領域%または梗塞量/LV量%のいずれかで測定した場合)。
【図15】図15は、モデル2(虚血/再灌流)における付加的な実験の心筋梗塞サイズを示す棒グラフである。これらの実験において、30分間の虚血後に、2時間の再灌流が続いた。15mg/kgのPQQでの前処置が15mg/kgのPQQでの処置が、梗塞サイズを有意に減少させた(梗塞量/危険領域%または梗塞量/LV量%のいずれかで測定した場合)。P値は、それぞれのI/R梗塞サイズ測定を指す。
【図16】図16は、i.p.注射によって、示された範囲のPQQ用量で前処置された5群のラットの梗塞サイズに対する異なる用量のPQQでの前処置の効果を示す折れ線グラフである。梗塞サイズとPQQの用量との間には強い負の相関が存在した。
【図17A】図17Aは、モデル1およびモデル2双方からのデータを組み合わせた際の、ラット1匹あたりの心室性細動(VF)の平均エピソードを示す棒グラフである。15〜20mg/kgのPQQでの前処置は、ラット1匹あたりのVFの平均エピソードを有意に減少させた。分析は、一元分散分析(ANOVA)により行った。
【図17B】図17Bは、モデル1およびモデル2からの久美合わせたデータを使用している、VFを有するラットのパーセンテージを示す棒グラフである。15〜20mg/kgのPQQでの前処置または15〜20mg/kgのPQQでの処置は、VFを有するラットのパーセンテージを有意に低下させた。分析をフィッシャーの正確確率検定によって行った。
【図18A】図18Aは、30分間のLAD閉塞、続いて2時間の再灌流に供したLVの前部セグメントからの心筋のMDAレベルを示す折れ線グラフである。15mg/kgのPQQでの前処置は、虚血心筋におけるMDAを有意に減少させた。I/Rおよび処置に供したラットとそうでないラット(対照)との差は、二元分散分析によって有意であった。偽=全研究期間について閉塞のないLAD冠動脈単離に供したラット。
【図18B】図18Bは、LVの後部セグメント(非虚血性)からの心筋のMDAレベルを示す折れ線グラフである。15mg/kgのPQQでの前処置も、この非虚血性の離れた心筋におけるMDAを減少させた。
【図19】図19は、以下の条件下でラット心臓から単離されたミトコンドリアの呼吸制御比を示す棒グラフである:(i)対照:3時間のペントバルビタール麻酔、n=4、(ii)PQQ処置:3mg/kg、20分間の平衡化期間、30分間の虚血、PQQ注射、2時間の再灌流、n=5;および(iii)虚血/再灌流:20分間の平衡化期間、30分間の虚血、続いて2時間の再灌流、n=3。
【図20A】図20Aは、PQQ連結PVAの合成機構を示す概略図である。
【図20B】図20Bは、1つのPQQ分子を有するPVA単位を示す概略図である。
【図20C】図20Cは、複数のPQQ分子を有するPVA分子を示す概略図である。
【図21】図21は、蛍光検出器を用いたPQQの保持時間を示す。
【図22】図22は、水中のPQQの吸収スペクトルを示す。
【図23】図23は、PQQ連結PVAのGPCスペクトルを示す。
【図24】図24は、蛍光検出器を用いたPQQのGPCスペクトルを示す。
【図25A】図25Aは、以下のUV吸収スペクトルを示す:(A)10.19分間の保持時間を有するPQQ連結PVA(40K分子量)。
【図25B】図25Bは、以下のUV吸収スペクトルを示す:(B)13.67分間の保持時間を有するPQQ連結PVA(10K分子量)。
【図25C】図25Cは、以下のUV吸収スペクトルを示す:(C)PQQ残分。
【図26】図26は、8.45ppmおよび7.25ppmにおける芳香族ピークならびに3.84ppm、1.93ppmおよび1.50ppmにおける脂肪族ピークの積分面積に基づき、ローディングレベルは、約1〜1.5(±0.4)(PVA分子鎖あたりPQQ単位)であった。ロードダンプレベルは、連結生成物において約4(±2)wt%PQQである。
【図27】図27は、対照マウス、PQQ単独で処置したマウス、プロベネシドと組み合わせたPQQで処置したマウス、およびPVAと組み合わせたPQQで処置したマウスにおける腎臓の肉眼的病理学の写真。
【図28】図28は、抗ニトロチロシン免疫細胞学的特異性ならびにTNF誘導性ニトロチロシン増大に対する尿酸塩およびPQQの効果を示す、モノクロナール抗ニトロチロシンで免疫染色されたPMEMのニトロチロシン蛍光の代表的な顕微鏡写真(ウシ細胞)である。3−ニトロチロシンを用いた10:1の抗原:抗体比での30分間の抗体の前保温後に、同じ抗体で免疫染色したPMEMの顕微鏡写真。0.5時間後ないし4時間後のラットおよびウシ双方の対照、尿酸塩、PQQおよびTNF処置PMEMから得られたニトロチロシン蛍光の共焦点ヒストグラム分析(N=4,処置ごとに6回のサンプリング)。統計学的な差は、Kruskal−Wallisの順位による一元配置分散分析を用い、続いてDunnの方法を用いる多重比較により決定される。*=対照群と異なる#=それぞれのTNF群と異なる
【図29A】図29A〜B。尿酸塩およびPQQは、ニトロチロシンおよびPMEM中のβ−アクチンとのTNF誘発性共存を防止する。0.5時間後(A)および4.0時間後(B)の対照、PQQ、尿酸塩およびTNF処置PMEMの共焦点顕微鏡写真(ウシ細胞)を表す。ニトロチロシンは、抗ニトロチロシンで免疫染色されており緑色蛍光として現れry。β−アクチンは、抗β−アクチンで免疫染色されており赤色蛍光として現れる。組み合わされた赤色および緑色の顕微鏡写真の結果として生じる色変化は、共存が消磁ている場合には黄色として現れる(挿入図:矢印)。合計4つの調製物が、各処置および時点についてラットおよびウシPMEM双方から生成された。
【図29B】図29A〜B。尿酸塩およびPQQは、ニトロチロシンおよびPMEM中のβ−アクチンとのTNF誘発性共存を防止する。0.5時間後(A)および4.0時間後(B)の対照、PQQ、尿酸塩およびTNF処置PMEMの共焦点顕微鏡写真(ウシ細胞)を表す。ニトロチロシンは、抗ニトロチロシンで免疫染色されており緑色蛍光として現れry。β−アクチンは、抗β−アクチンで免疫染色されており赤色蛍光として現れる。組み合わされた赤色および緑色の顕微鏡写真の結果として生じる色変化は、共存が消磁ている場合には黄色として現れる(挿入図:矢印)。合計4つの調製物が、各処置および時点についてラットおよびウシPMEM双方から生成された。
【図30】図30。尿酸塩およびPQQは、TNF誘導性のPMEMにおけるアルブミンクリアランス速度の増加を防止する。組み合わされたデータのアルブミンクリアランス応答は、ラットおよびウシPMEMから得られた。処置は、4.0時間にわたる対照、尿酸塩、PQQおよびTNFである。統計学的な差は、Kruskal−Wallisの順位による一元配置分散分析を用い、続いてDunnの方法を用いる多重比較により決定される。*=対照群と異なる#=TNF群と異なる
【図31A】図31。PQQ10mg/kg、3mg/kgおよび1mg/kg(i.v.)を用いた処置の脳梗塞サイズに対する効果(31A)。虚血の直前(0時間、ビヒクルおよびPQQ10mg群)および3時間後(3時間、ビヒクルおよびPQQ10mg群)に投与されたPQQは、梗塞体積を有意に減少させた(p<0.05;Mann−Whitney検定)。虚血の3時間後に投与された場合、1mg/kg(3時間、ビヒクルPQQ1mg群)ではなく3mg/kg(3時間、ビヒクルPQQ3mg群)でのPQQが、梗塞体積を減少させた。3mg/kg群においては有意な処置効果がある(p<0.05;Mann−Whitney検定)が、1mg/kg群においては有意な効果はない(p>0.05;Mann−Whitney検定)。
【図31B】図31。PQQ10mg/kg、3mg/kgおよび1mg/kg(i.v.)を用いた処置の用量応答曲線(31B)。虚血の直前(0時間、ビヒクルおよびPQQ10mg群)および3時間後(3時間、ビヒクルおよびPQQ10mg群)に投与されたPQQは、梗塞体積を有意に減少させた(p<0.05;Mann−Whitney検定)。虚血の3時間後に投与された場合、1mg/kg(3時間、ビヒクルPQQ1mg群)ではなく3mg/kg(3時間、ビヒクルPQQ3mg群)でのPQQが、梗塞体積を減少させた。3mg/kg群においては有意な処置効果がある(p<0.05;Mann−Whitney検定)が、1mg/kg群においては有意な効果はない(p>0.05;Mann−Whitney検定)。
【図32】図32。正常な動物の切片標本(A);ビヒクル処置した動物の切片標本(B);PQQ10mg/kg処置(虚血後3時間)した動物の切片標本(C);PQQ3mg/kg処置した動物の切片標本(D)を表す。
【図33A】図33。PQQ10mg/kg、3mg/kgおよび1mg/kg(i.v.)を用いた処置の神経行動学的スコアに対する効果。虚血の直前(33A)および3時間後(33B)のPQQ10mg/kgを用いた処置は、24、48および72時間時点における神経行動学的スコアを改善するという結果になる。32A群および32B群双方において有意な処置効果がある(p<0.05;反復測定ANOVA)。虚血の3時間後のPQQ3mg/kgによる処置は、24、48および72時間時点における神経行動学的スコアを改善するという結果になる。3mg/kg群においては虚血の3時間後に与えられた場合に有意な処置効果がある(4C、p<0.05;反復測定ANOVA)が、1mg/kg群においては虚血の3時間後に与えられた場合に有意な処置効果はない(33D、p>0.05、反復測定ANOVA)。
【図33B】図33。PQQ10mg/kg、3mg/kgおよび1mg/kg(i.v.)を用いた処置の神経行動学的スコアに対する効果。虚血の直前(33A)および3時間後(33B)のPQQ10mg/kgを用いた処置は、24、48および72時間時点における神経行動学的スコアを改善するという結果になる。32A群および32B群双方において有意な処置効果がある(p<0.05;反復測定ANOVA)。虚血の3時間後のPQQ3mg/kgによる処置は、24、48および72時間時点における神経行動学的スコアを改善するという結果になる。3mg/kg群においては虚血の3時間後に与えられた場合に有意な処置効果がある(4C、p<0.05;反復測定ANOVA)が、1mg/kg群においては虚血の3時間後に与えられた場合に有意な処置効果はない(33D、p>0.05、反復測定ANOVA)。
【図33C】図33。PQQ10mg/kg、3mg/kgおよび1mg/kg(i.v.)を用いた処置の神経行動学的スコアに対する効果。虚血の直前(33A)および3時間後(33B)のPQQ10mg/kgを用いた処置は、24、48および72時間時点における神経行動学的スコアを改善するという結果になる。32A群および32B群双方において有意な処置効果がある(p<0.05;反復測定ANOVA)。虚血の3時間後のPQQ3mg/kgによる処置は、24、48および72時間時点における神経行動学的スコアを改善するという結果になる。3mg/kg群においては虚血の3時間後に与えられた場合に有意な処置効果がある(4C、p<0.05;反復測定ANOVA)が、1mg/kg群においては虚血の3時間後に与えられた場合に有意な処置効果はない(33D、p>0.05、反復測定ANOVA)。
【図33D】図33。PQQ10mg/kg、3mg/kgおよび1mg/kg(i.v.)を用いた処置の神経行動学的スコアに対する効果。虚血の直前(33A)および3時間後(33B)のPQQ10mg/kgを用いた処置は、24、48および72時間時点における神経行動学的スコアを改善するという結果になる。32A群および32B群双方において有意な処置効果がある(p<0.05;反復測定ANOVA)。虚血の3時間後のPQQ3mg/kgによる処置は、24、48および72時間時点における神経行動学的スコアを改善するという結果になる。3mg/kg群においては虚血の3時間後に与えられた場合に有意な処置効果がある(4C、p<0.05;反復測定ANOVA)が、1mg/kg群においては虚血の3時間後に与えられた場合に有意な処置効果はない(33D、p>0.05、反復測定ANOVA)。
【図34】図34は、2ステップ抽出で処理され、HPLC蛍光検出器(360/460nm)で求めたラット血漿におけるPQQ(31.25〜2500ng/ml)の較正曲線を示す。
【図35】図35は、A群(PQQ単独)およびB群(PQQ+プロベネシド)のラットについてのラット血漿PQQ濃度を示す。
【図36】図36は、A群(20mgPQQ/kg、i.v.)およびB群(100mgプロベネシド/kg、i.p.で前処置し、続いて20mgPQQ/kg、i.v.)のラット(n=3)における血漿QQ濃度−時間曲線を示す。
【図37】図37は、100mg/kgのプロベネシドと2または3mg/kgのPQQとの併用による処置をしたまたはしない、ベースライン、15分間の閉塞、30分間の閉塞、30分間の再灌流、60分間の再灌流および120分間の再灌流におけるラットの左心室収縮期圧(LVSP)を示すグラフである。
【図38】図38は、100mg/kgのプロベネシドと2または3mg/kgのPQQとの併用による処置をしたまたはしない、ベースライン、15分間の閉塞、30分間の閉塞、30分間の再灌流、60分間の再灌流および120分間の再灌流におけるラットの左心室拡張末期圧(LVEDP)をすグラフである。
【図39】図39は、100mg/kgのプロベネシドと2または3mg/kgのPQQとの併用による処置をしたまたはしない、ベースライン、15分間の閉塞、30分間の閉塞、30分間の再灌流、60分間の再灌流および120分間の再灌流におけるラットの左心室発生圧力(LVDP)を示すグラフである。
【図40】図40は、100mg/kgのプロベネシドと2または3mg/kgのPQQとの併用による処置をしたまたはしない、ベースライン、15分間の閉塞、30分間の閉塞、30分間の再灌流、60分間の再灌流および120分間の再灌流におけるラットの左心室の正の最大一次導関数(LV+dp/dt)を示すグラフである。
【図41】図41は、100mg/kgのプロベネシドと2または3mg/kgのPQQとの併用による処置をしたまたはしない、ベースライン、15分間の閉塞、30分間の閉塞、30分間の再灌流、60分間の再灌流および120分間の再灌流におけるラットの左心室の負の最大一次導関数(LV−dp/dt)を示すグラフである。
【図42】図42は、100mg/kgのプロベネシドと2または3mg/kgのPQQとの併用による処置をしたまたはしないラットにおける梗塞サイズ百分率を示す棒グラフである。
【図43】図43は、100mg/kgのプロベネシドと2または3mg/kgのPQQとの併用による処置をしたまたはしないラットにおける、梗塞サイズ/危険領域百分率および梗塞サイズ/左心室量を示す棒グラフである。
【図44】図44は、100mg/kgのプロベネシドと2または3mg/kgのPQQとの併用による処置をしたまたはしないラットにおける、クレアチンキナーゼの増加を示す棒グラフである。
【図45】図45は、2.50ppmでラベルされた溶媒としてd6−DMSOを用いた、受け取られたPQQおよびPQQ/PVA連結物のプロトンNMRスペクトルである。
【図46】図46は、PQQ/PVA連結物のプロトンH−NMRスペクトルである(4.79ppmで内部基準としてラベルされた溶媒としてD2Oを用いる)。
【図47】図47は、PVA粉末のATRモードFT−IRスペクトルである。
【図48】図48は、PVA粉末のATRモードFT−IRスペクトルである。
【図49】図49は、PVA/PQQ連結物粉末のATRモードFT−IRスペクトルである。
【図50A】図50は、2つのPVA粉末のXRDスペクトルである。(A)PQQ/PVA連結物。(B)PVA粉末。(D)PQQ粉末。(D)スチール基板。
【図50B】図50は、2つのPVA粉末のXRDスペクトルである。(A)PQQ/PVA連結物。(B)PVA粉末。(D)PQQ粉末。(D)スチール基板。
【図50C】図50は、2つのPVA粉末のXRDスペクトルである。(A)PQQ/PVA連結物。(B)PVA粉末。(D)PQQ粉末。(D)スチール基板。
【図50D】図50は、2つのPVA粉末のXRDスペクトルである。(A)PQQ/PVA連結物。(B)PVA粉末。(D)PQQ粉末。(D)スチール基板。
【図51】図51は、HPLC−FLDを用いたPQQ(10〜1,000ng/ml)アッセイの標準較正曲線である。
【図52】図52は、PQQアッセイについてのHPLC−FLD法の量的限界(0.2ng/20μl)である。
【図53】図53は、PQQアッセイについてのHPLC−FLD法の検出限界(0.1ng/20μl)である。
【図54A】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54B】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54C】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54D】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54E】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54F】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54G】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54H】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54I】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54J】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54K】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54L】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54M】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54N】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54O】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54P】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54Q】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54R】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54S】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54T】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54U】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54V】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54W】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54X】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54Y】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54Z】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54AA】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54BB】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54CC】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54DD】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54EE】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54FF】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54GG】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54HH】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54II】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54JJ】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
心臓は、酸素および栄養分の送達ならびに有害代謝産物の除去について、絶え間ない血流に決定的に依存する。虚血は、心筋の代謝および細胞損傷における急速な変化に至り、その損傷の程度は、虚血の重篤度に依存する。連続した虚血は、数時間で、全組織壊死に至る。
【0002】
再灌流は、一般に有益であると考えられるが、いくつかの機構により組織損傷を引き起こす。臨床的には、開胸手術、心臓移植、および心臓疾患の逆転において、虚血−再灌流による損傷に対する心筋の保護は、最大の臨床的関心となっている問題である。さらに、再灌流による酸素付加の回復(再酸素付加)後の低酸素損傷の悪化は、他のタイプの臓器移植における細胞損傷、ならびに肝臓、腸、脳、腎臓、および他の虚血性症候群における細胞損傷の重要な機構である。細胞の低酸素および再酸素付加は、反応性酸素種(ROS)を生成することにより部分的に虚血−再灌流損傷を引き起こす。
【0003】
1970年代末期における細菌からの遊離PQQの最初の単離以来、さらなる研究は、PQQが脊椎動物にとっての必須栄養素であり、おそらくビタミンB群に属することを示している(非特許文献1)。遊離PQQは、赤血球、好中球、脳脊髄液、滑液、胆汁において(非特許文献2)、および人乳(非特許文献3)において確認されている。痕跡量の遊離PQQもまた、ヒトの脾臓、膵臓、肺、脳、心臓、腸、肝臓、および精巣、血漿および尿、ならびにラットの小腸、肝臓および精巣において検出されている(非特許文献4)。PQQ依存性デヒドロゲナーゼ酵素は、マウスにおけるアミノ酸リジン分解経路にとって極めて重要である。この反応において、PQQは哺乳動物レドックス補因子として作用する(非特許文献5)。ヒトの組織および体液中のPQQレベルは、食品中で見出されるレベルよりも5〜10倍低いので、ヒトの組織中のPQQが、少なくとも部分的に、野菜および肉を含む食事源に由来する可能性がある(非特許文献6)。PQQを欠く食餌をマウスに与えた場合、マウスは成長が遅く、脆い皮膚および低下した免疫応答を有し、繁殖が良好ではない。PQQの補充により、化学的に既定された、ただし他の点では栄養的に完全な食餌を供給されたマウスにおいて、繁殖能力、成長を改善することができ、新生仔の細胞外マトリックス生産および成熟の指数を調節し得ることが示されている(非特許文献7)。グルタミン酸受容体のN−メチル−D−アスパルテート(NMDA)サブタイプの過剰な活性化は、低酸素/虚血におけるニューロン損傷プロセスにおいて決定的であり、NMDAアンタゴニストはグルタミン酸媒介性神経毒性のインビトロモデルおよびインビボモデル両方においてニューロン損傷を改善し得る。以前の研究の結果は、PQQが脳低酸素/虚血の齧歯類モデルにおいて脳損傷に対する保護効果を有することを証明し、PQQが発作の治療における潜在的用途を有し得ることを示唆した(非特許文献8)。PQQは限局性脳虚血および癲癇の動物モデルにおいて有効なことが示されているが、保護機構は十分に理解されていない(非特許文献9)。
【0004】
1つの報告だけが、PQQの潜在的心臓保護効果を調査した。この研究は、心臓排出液中に放出されるLDH活性で測定したところ、PQQが、単離されたウサギ心臓を再酸素付加損傷から保護することを示した(非特許文献10)。しかしながら、この情報に基づいて、PQQが、予防的に(前処置)または虚血発症後の再灌流時(処置)のいずれかで与えられた場合に梗塞サイズを低減するのに有効な薬剤であるか否かは、決定できなかった。
【非特許文献1】Paz MAら,The biomedical significance of PQQ.Davidson VL編:Principles and Applications of Quinoproteins,1992,by Marcel Dekker,Inc.P381−393.,Kasahara T,およびKato T.,Nature 2003;422:832
【非特許文献2】Gallop PMら,Connect Tissue Res 1993;29:153−161
【非特許文献3】Mitchell AEら,Analytical Biochemistry 1999;269:317−325
【非特許文献4】Kumazawa Tら,Biochim Biophys Acta 1992;1156:62−66
【非特許文献5】Kasahara,T.およびKato,T.,Nature 200;422:832
【非特許文献6】Kumazawa Tら,Biochem J 1995;307:331−333
【非特許文献7】Steinberg Fら,Exp Biol Med (Maywood)2003;228:160−166,Steinberg FMら,J Nutr 1994;124:744−753
【非特許文献8】Jensen FEら,Neuroscience 1994;62(2):399−406
【非特許文献9】Zhang YおよびRosenberg PA.European J Neuroscience 2002;16:1015−1024.,Jensen FEら
【非特許文献10】Xu Fら,Biochemical Biophysical Research Communications 1993,193:434−439
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書において、本発明者らは、PQQを用いた前処置または処置が、虚血または虚血−再灌流損傷のインタクトなラットモデルの心筋梗塞サイズを著しく低減し得ることを初めて証明する。
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、心筋の酸化的ストレスが、特定の心臓保護因子の投与によって防止または最小化され得、従って、心血管疾患および他の疾患を処置することに関して利点があるという知見に関する。特に、無毒性投与量のピロロキノリンキノン(「PQQ」)薬が心臓保護剤として有用であり、従って、例えば、冠動脈遮断に起因した、例えば虚血−再灌流損傷、鬱血性心不全、心停止および心筋梗塞のような種々の様々な心臓関連の病気の処置において、ならびに心臓保護のために、有益であることが見出されている。PQQは特に、(酸化的ストレスの対象である)心筋細胞が細胞死から保護されるように、心筋の酸化的ストレスを調節することが見出されている。
【0007】
本発明の組成物および方法は、インビボおよびエキソビボでの低酸素/虚血性の心臓損傷の減少または除去、ならびに心血管疾患の予防および/または処置の必要のあるヒトなどの哺乳動物における心血管疾患の予防および/または処置に驚くほど役立つ。
【0008】
本発明の別の態様において、PQQは、ミトコンドリアチャネルmitoKATP、一酸化窒素−プロテインキナーゼC経路、およびアンジオテンシン変換酵素経路のような、心臓保護シグナリング経路を調節、例えば、その効果を増強または維持することが見出されている。
【0009】
本発明の別の態様において、本発明は、心筋細胞が細胞死から保護されるように心筋の酸化的ストレスを調節する薬剤を投与することにより、被験体の心筋細胞における心筋の酸化的ストレスを処置または防止することに関した。
【0010】
本発明の別の態様において、本発明は、心筋細胞が細胞死から保護されるように心筋の低酸素性損傷または虚血性損傷を調節する薬剤を投与することにより、被験体における心筋の低酸素性損傷または虚血性損傷を処置または防止することに関した。
【0011】
本発明の別の態様において、PQQは、心筋の酸化的ストレスによって引き起こされるフリーラジカル損傷を調節することが見出された。虚血条件または低酸素条件によって生成されるフリーラジカルは、心筋死に至る心筋損傷の重大な原因であることが見出されている。従って、インビボで無毒性投与量において投与されるPQQの投与は、心筋の酸化的ストレスのフリーラジカル損傷を阻害または防止するための有効な処置である。
【0012】
本発明はさらに、冠動脈血流を改善されるように、無毒性量のPQQを被験体に投与することにより、冠動脈血流を改善する方法に関する。
【0013】
一つの態様において、本発明は、ピロロキノリンキノンを、例えば、心臓損傷を処置または防止するのに有効な量、投与することにより、被験体における低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷を処置または防止することに関する。PQQは一般的に、無毒性濃度、例えば、900μM未満、700μM未満、500μM未満、300μM未満、100μM未満、または50μM未満を含む約1nM〜10μM未満、で投与される。他の実施形態において、PQQは、約1〜10μMの濃度で投与され得る。他の実施形態において、PQQは、被験体の体重に応じて投与される。PQQは一般的に、被験体の体重1Kg当たり、500mg/kg未満、250mg/kg未満、100mg/kg未満、10mg/kg未満、5mg/kg未満、3mg/kg未満、2mg/kg未満、1mg/kg未満、500μg/kg未満、250μg/kg未満、100μg/kg未満、10μg/kg未満、5μg/kg未満、2μg/kg未満または1μg/kg未満を含む約1μg/kg〜1g/kgの濃度で投与され得る。
【0014】
本発明は、例えば、心臓保護をもたらすのに有効な量のPQQ、および薬学的に許容されるキャリアを含有する心臓保護薬をさらに含む。また、心臓損傷、発作、または片頭痛の危険性がある患者を処置するためのキットであって、1つ以上の容器中に、有効量のピロロキノリンキノン、薬学的に許容されるキャリア、および使用説明書を含むキットも含まれる。
【0015】
別の態様において、本発明は、NADPH依存性メトヘモグロビンレダクターゼ基質の投与による、インビボで低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷の処置または防止;ならびに有効量のNADPH依存性メトヘモグロビンレダクターゼ基質、薬学的に許容されるキャリア、および使用説明書を含む、心臓損傷の処置または防止に使用するためのキットに関する。本発明のいくつかの実施形態において、NADPH依存性メトヘモグロビンレダクターゼ基質は、哺乳動物赤血球(例えば、ヒト、ウシ、もしくはマウス)または非哺乳動物赤血球(例えば、Rana catesbeiana)のような赤血球から精製される。
【0016】
さらに別の態様において、本発明は、臓器または組織移植中の臓器損傷を防止する方法であって、PQQが、臓器または組織の取り出し前に、および/または取り出しと同時に臓器ドナーに投与される方法、ならびに、臓器または組織移植中の臓器損傷を防止するために使用されるキットであって、有効量のピロロキノリンキノン、薬学的に許容されるキャリア、および使用説明書を備えるキットに関する。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、所望の保護効果を得るのに有効な量のPQQを投与することにより、例えば、心不全を患っている被験体において、発作を防止するための方法に関する。PQQは、望ましくは、例えば、約1〜10μMの濃度で投与され得る。1つの実施形態において、PQQは、発作を患う危険にさらされている被験体における発作を防止するために、治療的に有効な量のタモキシフェンと同時投与され得る。
【0018】
本発明は、PQQおよび1つ以上の付加的な治療用化合物を投与することによって、被験体における心不全を処置するための方法を含む。いくつかの実施形態において、付加的な治療用化合物は、抗血小板薬、抗凝固薬および/または抗血栓薬、あるいはそれらの組み合わせであり得る。
【0019】
別の態様において、本発明は、心筋梗塞が低減または安定化されるようなレベルでPQQを投与することによって、被験体における心筋梗塞を処置する方法に関する。
【0020】
さらに別の態様では、本発明は、PQQで被験体を処置することによって、被験体における片頭痛を防止する方法に関する。PQQは望ましくは、例えば、約1〜約10μMの濃度で投与され得る。
【0021】
さらに別の態様では、本発明は、PQQで被験体を処置することによって、低体温症を患っているかまたは低体温症の危険性がある被験体における再灌流損傷を防止する方法に関する。PQQは望ましくは、例えば、約1〜約10μMの濃度で投与され得る。
【0022】
本発明はさらに、PQQで被験体を予め処置することによって、被験体におけるバルーン血管形成術後の血管閉塞を防止するための方法に関する。被験体はまた、PQQおよび1つ以上の付加的な治療用化合物(例えば、クマジン、カプトプリル、ベナゼプリル、エナラプリル、ホシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラミプリル、イミダプリル、ペリドプリルエルブミンおよびトランドラプリルのようなアンギオテンシン変換酵素(ACE)インヒビター、ならびにロサルタン、イルベサルタン、カンデサルタンシレキセチルおよびバルサルタンのようなACE受容体遮断薬で予め処置されてもよい。いくつかの実施形態において、付加的な治療用化合物は、抗血小板薬、抗凝固薬および/もしくは抗血栓薬、あるいはそれらの組み合わせであり得る。
【0023】
別の態様において、本発明は、被験体にPQQを投与することによって、低体温損傷を患う被験体における再灌流損傷を防止または低減するための方法を含む。
【0024】
本発明はさらに、治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンおよび治療的に有効な用量のメトプロロールを含む、心筋梗塞の処置を必要とする被験体における心筋梗塞を処置するための薬学的組成物に関する。心筋梗塞を処置するための薬学的組成物の1つの実施形態において、ピロロキノリンキノンの治療的に有効な用量は、3mg/kgである。心筋梗塞を処置するための薬学的組成物の別の実施形態において、メトプロロールの治療的に有効な用量は、1mg/kgである。
【0025】
本発明はさらに、低酸素または虚血に関連した心臓損傷を処置または防止するためのキットに関し、このキットは、1つ以上の容器中に、ピロロキノリンキニーネ、メトプロロール、薬学的に許容されるキャリア、およびこのキットの使用説明書を含む。
【0026】
本発明はさらに、心筋の酸化的ストレスの処置または防止を必要とする被験体に治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンおよび治療的に有効な用量のメトプロロールを投与することを含む、被験体における心筋の酸化的ストレスを処置または防止する方法に関する。
【0027】
本発明はさらに、心筋梗塞の処置または防止を必要とする被験体に治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンおよび治療的に有効な用量のメトプロロールを投与することを含む、被験体における心筋梗塞を処置または防止する方法に関する。
【0028】
本発明はさらに、低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷の処置または防止を必要とする被験体に治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンおよび治療的に有効な用量のメトプロロールを投与することを含む、被験体における低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷を処置または防止する方法に関する。
【0029】
本発明はさらに、蛋白質ニトロ化に起因する血管損傷また疾患の処置を必要とする被験体に治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンを単独で、または尿酸塩と組み合わせて投与することにより、蛋白質ニトロ化に起因する血管損傷または疾患を処置するための方法を提供する。
【0030】
本発明はまた、PQQ投与に関連した腎毒性の低減を必要とする被験体に治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンをプロベネシソ、シラスタチン、または他の通管流遮断剤と組み合わせて被験体に投与することにより、PQQ投与に関連した腎毒性を低減する方法も提供する。
【0031】
本発明のこれらおよび他の目的は、以下に提供する発明の詳細な説明から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(発明の詳細な説明)
本発明の特徴および他の詳細は、添付の図面を参照してより詳細に記載され、特許請求の範囲において示される。本明細書に記載される特定の実施形態が例示として示され、そして、本発明の限定ではないことが理解される。本発明の主な特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、各種実施形態において使用され得る。全ての部および百分率は、他に特定しない場合には、重量による。
【0033】
(定義)
便宜上、明細書、実施例および添付の特許請求の範囲において使用される特定の用語をここで集める。他に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。しかしながら、これらの定義が当該分野内で広まっている意味から変化する場合には、下記の定義が優先するものとする。
【0034】
「虚血」は、身体のいずれかの臓器または組織への血流の減少または停止を含む。本明細書で用いられるように、用語「虚血」は、例えば、血管虚血(例えば、心臓および肺)、肝臓虚血、腸虚血、脳虚血、腎臓虚血、および肢虚血を含むいかなる虚血症候群にも関する。
【0035】
「低酸素」は、身体組織に到達する酸素量の欠乏を含む。
【0036】
「低酸素または虚血関連損傷」は、心臓損傷を含むが、これに限定されない。
【0037】
「再灌流」は、心臓発作または発作の後のように、その血液供給が中断された臓器または組織への血流の回復を含む。
【0038】
「酸化的ストレス」は、過剰のフリーラジカル、抗酸化剤レベルの減少、またはその両方が存在する場合に発生する状態を含む。
【0039】
「壊死」は、特に、心筋のような身体の局部における損傷または疾患による細胞または組織の死を含む。
【0040】
「アポトーシス」とは、プログラム細胞死をいう。
【0041】
「β遮断剤」としては、アテノロール、メトプロロールおよびプロプラノロールのようなアドレナリンβ受容体において競合的アンタゴニストとして作用する薬剤が含まれる。このような薬剤はまた、減少した全身性副作用を許容する、心臓(β−1)受容体に関してより選択的な薬剤も含む。β遮断剤は、高血圧、心臓不整脈、片頭痛、および交感神経系に関連した他の障害と関係がある症状を低減させる。β遮断剤はまた、時々、心臓発作後に、心拍を安定させるために与えられる。交感神経系の中で、βアドレナリン作用性受容体は主に、心臓、肺、腎臓、および血管中に位置する。β遮断剤は、神経刺激ホルモンエピネフリンとこれらの受容体部位を競合し、従って、エピネフリンの作用を妨害し、血圧および心拍数を低下させ、不整脈を止め、そして片頭痛を防止する。
【0042】
「心臓損傷」は、虚血−再灌流損傷;鬱血性心不全;心停止;心筋梗塞;薬物(例えば、ドキソルビシン、ハーセプチン、チオリダジンおよびシサプリド)のような化合物によって引き起こされる心臓毒性;寄生生物感染(細菌、菌類、リケッチア、およびウイルス、例えば、梅毒、慢性Trypanosoma cruzi感染)に起因する心臓損傷;劇症心臓アミロイドーシス;心臓手術;心臓移植;および外傷性心臓損傷(例えば、穿通性もしくは閉鎖性心臓損傷、大動脈弁破裂)を含む、心臓および/または関連組織(例えば、心膜、大動脈および他の関連血管)を含む任意の慢性または急性の病理学的事象を含む。
【0043】
「被験体」は、ヒト、サル、雌ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、畜牛、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、それらからの培養細胞、およびそれらのトランスジェニック種のような生きている生物体を含む。好ましい実施形態において、被験体は、ヒトである。処置される被験体に対する本発明の組成物の投与は、公知の手順を用いて、被験体における状態を処置するのに有効な投与量でかつ有効な期間にわたって実行され得る。治療効果を達成するのに必要な治療用化合物の有効量は、被験体の年齢、性別、および体重のような要因、ならびに治療用化合物が被験体における外来因子を処置する能力に従って変化し得る。投与量のレジメンは、最適治療応答を提供するように調節され得る。例えば、いくつかに分割された用量が毎日投与されてもよく、または用量は治療状態の緊急性により示されるように比例して減少されてもよい。
【0044】
「実質的に純粋な」とは、化合物、例えば、天然では付随する成分から分離された、薬剤、タンパク質またはポリペチドを含む。典型的には、試料中の全材料の(体積、湿重量または乾燥重量、あるいはモルパーセントまたはモル分率によって)少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、そして最も好ましくは少なくとも99%が目的の化合物である場合、その化合物は実質的に純粋である。純度は、任意の適切な方法、例えば、ポリペチドの場合、カラムクロマトグラフィ、ゲル電気泳動またはHPLC分析、によって測定され得る。化合物、例えば、タンパク質はまた、天然で会合している成分を実質的に含まない場合、または天然の状態で付随している天然の夾雑物から分離されている場合、実質的に精製されている。用語「実質的に純粋な」の意味の範囲内に含まれるのは、試料中の総タンパク質の(体積、湿重量または乾燥重量、あるいはモルパーセントまたはモル分率によって)少なくとも95%が目的のタンパク質またはポリペチドである、均一に純粋である化合物、例えば、タンパク質またはポリペチドである。
【0045】
「投与する」は、本発明の組成物がその意図された機能、例えば、低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷の処置または防止、を発揮し得る投与経路を含む。処置されるべき疾患または状態に依存して、非経口投与(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下の注射)、経口投与(例えば、食事)、局所、鼻、直腸、または徐放性マイクロキャリアが含まれるが、これらに必ずしも限定されるわけではない様々な投与経路が可能である。口腔投与、非経口投与および静脈内投与は好ましい投与形態である。投与されるべき化合物の処方物は、選択される投与経路(例えば、液剤、乳剤、ゲル剤、エアゾール剤、カプセル剤)に従って変化する。投与されるべき化合物を含む適切な組成物は、生理的に受容され得るビヒクルまたはキャリアおよび必要に応じて佐剤および保存剤中で調製され得る。液剤または乳剤に関して、適切なキャリアとしては、例えば、生理的食塩水および緩衝化媒質、滅菌水、クリーム、軟膏、ローション、オイル、ペーストおよび固体キャリアを含む、水性またはアルコール性/水性溶液、乳液または懸濁液が含まれる。非経口的ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲルまたは不揮発性油が含まれ得る。静脈内ビヒクルとしては、様々な添加剤、保存剤または流体、栄養分もしくは電解質補充剤が含まれ得る(一般に、Remington’s Pharmaceutical Science,第16版,Mack、Ed.(1980)を参照のこと)。
【0046】
「有効量」は、その意図された機能、例えば、本明細書に記載される通りの低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷を部分的または完全に処置または防止すること、を実行することを可能にするピロロキノリンキノン量を含む。有効量は、生物学的活性、年齢、体重、性別、全般的健康状態、処置されるべき状態の重篤度、ならびに適切な薬物動態学的特性を含む多くの要因に依存する。例えば、活性物質の投与量は、約0.0lmg/kg/日〜約500mg/kg/日、有利には、0.lmg/kg/日〜約100mg/kg/日であり得る。活性物質の治療上有効な量は、一回用量または複数回用量で、適切な経路により投与され得る。さらに、活性物質の投与量は、治療状況または予防状況の緊急性により示されるように、比例して増減され得る。
【0047】
「特異的結合」または「特異的に結合する」は、ピロロキノリンキノンまたはそのリガンドを認識して結合するが、試料中の他の分子を実質的には認識も結合もしない抗体のようなタンパク質が含まれる。
【0048】
「薬学的に許容されるキャリア」としては、化合物の活性と適合性がありかつ被験体にとって生理的に受容され得る、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等が含まれる。薬学的に許容されるキャリアの例は、緩衝化通常生理食塩水(0.15M NaCl)である。薬学的に活性な物質のためのこのような媒質および薬剤の使用は、当該分野で周知である。任意の従来の媒質または薬剤が治療用化合物と適合性がない場合を除いて、薬学的投与に適する組成物におけるその使用が意図される。補助的な活性化合物もまた、組成物に組み込まれ得る。
【0049】
「薬学的に許容されるエステル」としては、本発明の治療用化合物の比較的無毒性のエステル型生成物が含まれる。これらのエステルは、治療用化合物の最終的な単離および精製中に、またはその遊離酸形態もしくはヒドロキシルの精製された治療用化合物を適切なエステル化剤と別々に反応させることによって、現場で調製することができ;いずれも、当業者に公知の方法である。酸は、例えば、触媒存在下でのアルコールを用いた処理によって、当業者に周知の方法に従って、エステルに変換され得る。
【0050】
「付加的な成分」としては、以下のうちの1つ以上が含まれるがこれらに限定されない:賦形剤;界面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;顆粒化および崩壊剤;結合剤;滑沢剤;甘味料;フレーバー剤;着色剤;保存剤;ゼラチンのような生理的に分解可能な組成物;水性ビヒクルおよび溶媒;油性ビヒクルおよび溶媒;懸濁剤;分散または湿潤剤;乳化剤、粘滑剤;緩衝剤;塩;増粘剤;充填材;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定剤;および薬学的に許容されるポリマー材料または疎水性材料。本発明の薬学的組成物に含まれ得る他の「付加的な成分」は、当該分野で公知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0051】
「単位用量」は、所定量の活性成分を含む、別々の量の薬学的組成物を含む。
【0052】
ピロロキノリンキノン(PQQ)は、様々な還元剤と酸化剤との間で触媒的に電子を移動させ得る水溶性アニオン性キノンであり、真核生物細胞における可溶性電子伝達系の一部であり得る。本来のPQQは、以下の一般構造のものである:
【0053】
【化1】
本明細書で用いられるように、「ピロロキノリンキノン」すなわち「PQQ」は、PQQの密接に関連した異性体類似物および立体異性体類似物を含む、化学的類似性を有するピロロキノリンキノンファミリーの任意のメンバーを含み(例えば、Zhangら,1995,Biochem.Biophys.Res.Commun.212:41−47,1995参照)、さらに任意のPQQ連結ポリマー(例えば、PQQ連結ポリビニルポリマー)を含む。PQQは、メトキサチンとしても知られている。PQQは、動物の組織および体液中に見出される。理論により束縛されることを望まないが、PQQは、特に反応性酸素種(ROS)のフリーラジカルスカベンジャーとして部分的に作用し得る。従って、PQQは、NADPH依存性メトヘモグロビンレダクターゼ基質として機能し得る(例えば、Xuら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1992,89(6):2130−4参照)。他のNADPH依存性メトヘモグロビンレダクターゼ基質は、低酸素または虚血に関連した心臓損傷を減少させるかまたは除去するように機能し得る。
【0054】
実質的に精製されたピロロキノリンキノンを含む組成物は、ピロロキノリンキノンを単独で、またはβ遮断剤のような他の成分、およびフェニレフリン、スフィンゴシン−1−リン酸またはガングリオシドGM−1のような心臓保護シグナリング経路を好都合に調節するのに効果的である化合物と組み合わせて含み得る。ピロロキノリンキノンは、当業者に周知の方法のいずれかによって実質的に精製され得る(例えば、E.J.CoreyおよびAlfonso Tramontano,J.Am.Chem.Soc.,103,5599−5600(1981);J.A.Duine,Review Ann.Rev.Biochem.58,403(1989)参照)。
【0055】
1つの実施形態において、本発明は、1つ以上のポリマーに連結させられ、それによって組織保護のためのPQQの薬物動態学、薬力学、効力、および安全性を改善するPQQを提供する。PQQが連結させられ得るポリマーとしては、ポリビニルアルコール、PEG−NH2、または以下の実施例7および参照書類A(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるポリマーのいずれかが含まれるが、それらに限定されない。
【0056】
本発明のピロロキノリンキノンは、1つの実施形態において、薬学的組成物の1つの成分であり、薬学的組成物はまた、薬学的組成物として受容され得る、緩衝剤、塩、他のタンパク質、および他の成分を含み得る。本発明はまた、ピロロキノリンキノンの改変形態を含み、これは、本明細書に記載される通りの低酸素/虚血性の心臓損傷を防止または低減し得る。
【0057】
本発明の治療用化合物の構造は、不斉炭素原子を含み得る。このような非対称性から生じる異性体(例えば、エナンチオマーおよびジアステレオマー)は本発明の範囲内に含まれることがしたがって理解されるべきである。このような異性体は、古典的分離技術によって、および立体配置的に制御された合成によって、実質的に純粋な形態で入手され得る。本出願の目的のため、明示的にそうでないと注記されない限り、治療用化合物は各キラル中心においてR立体異性体またはS立体異性体の両方を含むと解釈されるものとする。特定の実施形態において、本発明の治療用化合物は、カチオンを含む。カチオン性基が水素H+であれば、治療用化合物は酸と考えられる。水素が金属イオンまたはその等価物と置き換えられれば、治療用化合物は酸の塩である。治療用化合物の薬学的に許容される塩は、本発明の範囲内にあり、例えば、薬学的に許容されるアルカリ金属(例えば、Li+、Na+、またはK+)塩、アンモニウムカチオン塩、アルカリ土類カチオン塩(例えば、Ca2+、Ba2+、Mg2+)、より高原子価のカチオン塩、またはポリカチオン性対イオン塩(例えば、ポリアンモニウムカチオン)である(例えば、Bergeら(1977)「Pharmaceutical Salts」,J.Pharm.Sci.66:1−19参照)。塩形成対イオン(もしあれば)に対するアニオン性化合物の化学量論が、この化合物のアニオン性部分の電荷(もしあれば)およびこの対イオンの電荷に依存して変化することが理解される。好ましい薬学的に許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩が含まれるが、他の塩もまた、それらの薬学的に許容される範囲内で意図される。
【0058】
本発明は、被験体における、低酸素または虚血によって引き起こされるような、心筋の酸化的ストレスを処置または防止する方法にも関する。これは、その必要のある被験体に、酸化的ストレスの標的である心筋細胞が細胞死から保護されるように、好ましくは無毒性量のPQQのような心筋の酸化的ストレスを調節する薬剤を投与することによって行われる。細胞死は、例えば、壊死またはアポトーシスに起因し得る。
【0059】
心臓保護シグナリング経路は、当該分野で公知である。これらの経路は、心臓保護シグナリング経路の効果を強化または維持するのに有効な量のピロロキノリンキノンを投与することによって、心臓保護を必要とする患者における強化のために目標とされ得る。
【0060】
虚血性条件または低酸素条件によって発生されるフリーラジカルが、心筋の死に至る心筋損傷の重大な原因であることが見出されている。従って、例えば、無毒性投与量において、インビボで投与されるPQQの投与は、PQQ媒介性フリーラジカルスカベンジング、またはフリーラジカル生成阻害のいずれかによって、心筋の酸化的ストレスのフリーラジカル損傷を阻害または防止するための有効な処置である。
【0061】
臨床的に必要であるかまたは望ましい場合、例えば、再灌流の開始時、または再灌流の前に、本発明の化合物の投与がなされ得る。
【0062】
冠動脈流の改善の必要のある被験体に無毒性量のピロロキノリンキノンを投与することによって、被験体、例えば、低血流状態を患う被験体において冠動脈流が有益に改善され得ることもまた、驚くべきことに見出された。これは、実施例において、例示される。冠動脈流は、左心室拡張期圧(「LVDP」)または左心室拡張末期圧(「LVEDP」)のような、いくつかの指標によって測定され得る。LVDPまたはLVEDPを決定することによるような、冠動脈流の測定は、当業者の技術範囲内である。
【0063】
従って、心筋梗塞のような、低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷は、好ましくは無毒性投与量の、例えば、約10μM未満の濃度のピロロキノリンキノンの投与によって処置または防止され得る。
【0064】
ラットを、2つの異なるモデルに準拠するPQQ処置にかけた。モデル1(図10Aに模式的に示される)において、雄性Sprague−Dawleyラットを、再灌流なしで2時間の左前下行(LAD)冠動脈結紮に供した。モデル2(虚血−再灌流、図10Bに示される)において、ラットは、左心室(LV)血行力学をモニタリングしつつ17分間または30分間のLAD閉塞および2時間の再灌流に供した。PQQ(15〜20mg/kg)を、ヒトにおける臨床状態を模倣するために、LAD閉塞の30分前にi.p.注射によって(前処置)、または再灌流の開始時にi.v.注射によって(処置)のいずれかで与えた。対照は、ビヒクル(2% NaHCO3)を受けた。
【0065】
モデル1において、PQQ処置の後の梗塞サイズ(梗塞量/LV量)は、対照より小さかった(19.1±2.1%の対照に対して、PQQ処置は10.0±1.5の梗塞サイズの結果になった;n=9、P<0.01)。モデル2において、PQQでの前処置または処置のいずれもが、梗塞サイズ(梗塞量/危険領域)の減少をもたらした(PQQ前処置の梗塞サイズが18.4±2.3、処置の梗塞サイズが25.6±3.5%、これに対し、対照は38.1±2.6%、P<0.01)。PQQは、1〜2の後、より高いLV発生圧力、LV(+)dP/dtおよびより低いLV(−)dP/dtにおいて、虚血誘発性の心臓機能不全を防止した。
【0066】
要約すると、PQQは、虚血か虚血−再灌流からなる2つの別々のインタクトなラットの梗塞形成モデルにおいて心臓保護効果を有した。PQQは、虚血もしくは虚血−再灌流の前に与えられた場合、または再灌流の開始時に与えられた場合のいずれにおいても、梗塞サイズを低下させた。さらに、PQQは、1〜2時間の再灌流において増加した左心室(LV)発生圧力およびLV(+)dP/dtにより証明されたように、有益な血行力学的効果を有した。PQQでの前処置は、ラットあたりの心室性細動(VF)の平均エピソードおよびVFを有するラットのパーセンテージを減少させたのに対し、PQQでの処置は、虚血および再灌流中にVFを有するラットのパーセンテージを減少させた。PQQの用量は、梗塞サイズに逆相関した。PQQは、虚血心筋における脂質過酸化の指標である、マロンジアルデヒド(MDA)のレベルを低下させた。
【0067】
モデル2における3つの群の虚血−再灌流期間中の死亡率は、PQQ後に減少する傾向があった(対照:28.6%、前処置:12.9%、処置:21.7%)。しかしながら、これらの結果は、統計的有意差には達しなかった。研究が梗塞サイズおよび血行力学の測定に集中しており、より多数の動物を必要とする死亡率試験として設計されなかった点に留意すべきである。
【0068】
PQQは、再灌流の開始時に与えられる場合も効果的である。チオバルビツール酸と反応する脂質過酸化産物であるマロンジアルデヒド(MDA)の心筋組織レベルの研究を完了した。虚血/再灌流は、MDAレベルを上昇させ、PQQはこの上昇を防止した。虚血/再灌流(I/R)後のPQQと偽対照とを比較した値は、3倍異なった。同様の効果が、離れた「正常」心筋において見られた。
【0069】
前処置としてまたは再灌流の開始時の処置としてのいずれかで与えられるPQQは、虚血および虚血−再灌流のラットモデルにおいて用量関連様式で、心筋梗塞サイズを減らして、心機能を改善することに非常に効果的である。脂質過酸化のこの指標がPQQによって減少したことを示すマロンジアルデヒド(MDA)の結果は、PQQが虚血心筋においてフリーラジカルスカベンジャーとして作用することを示唆する。
【0070】
理論に束縛されることを望まないが、1つの考え得るPQQ作用機構は、PQQがフリーラジカルスカベンジャーとして作用するということである。最近の研究は、PQQがキノンタンパク質酵素の補因子として作用することに加えてフリーラジカルスカベンジャーとして機能することを示す(Urakami Tら,J Nutr Sci Vitaminol(Tokyo)1997;43:19−33,He Kら,Biochemical Pharmacology 2003;65:67−74)。PQQは、ペルオキシ硝酸形成を抑制することによって、神経保護剤として作用し得る(Zhang YおよびRosenberg PA)。PQQは、ミトコンドリアを酸化的ストレス誘発性脂質過酸化、タンパク質カルボニル形成およびミトコンドリア呼吸鎖の不活化から保護する有効な抗酸化剤であった(He Kら,Miyauchi Kら,Antioxid Redox Signal 1999;1:547−554)。単球および好中球のような食細胞は、刺激に応答して超酸化物を生成する。PQQのレドックスサイクリングのいくつかのインヒビターは、刺激された好中球および単球双方による超酸化物放出についての遮断剤であることが証明された。これは、PQQがマクロファージおよび好中球双方の呼吸バーストに関係していることを示唆する(Bishop Aら,Free Radic Bio Med 1995;18:617−620,Bishop Aら,Free Radic Bio Med 1994;17:311−320)。
【0071】
本発明者らの結果は、上記の研究と一致している。本発明者らは、PQQでの前処置が梗塞ゾーンの、および離れた「正常」心筋の心筋MDAレベルを有意に低下させることを見出した。本発明者らのデータは、MDAがこの推定上の正常領域においてI/Rによって増加させられたことを示しており、ヒトおよび動物における急性虚血中の離れた心筋におけるLV機能不全の存在を示している他の研究者による報告と一致する(Yang Zら,Circulation 2004;109:1161−1167,Kramer CMら,Circulation 1996;94:660−666)。本発明者らの観察は、PQQが脂質過酸化を減らし、虚血性心筋および非虚血性心筋双方の超酸化物を不活化するという仮説と一致する。従って、虚血−再灌流損傷に対するPQQの保護効果は、フリーラジカルスカベンジャーとしてのその作用に起因し得る。本発明者らの研究において、前処置または処置のいずれかとして与えられるPQQはまた、心室性細動の発生率を低下させた。さらに、PQQは、直接的な抗不整脈効果を有することができ、その抗虚血特性によってVFの減少を引き起こし得る。
【0072】
下記の実施例5に示されるデータは、PQQが脂質過酸化を減らすとともに超酸化物をスカベンジングすることを示唆する。I/R損傷に対するPQQの保護効果がフリーラジカルスカベンジャーとしてのその作用に起因するというさらなる証拠。MDAが推定の正常領域においてI/R後に増加したという観察は、ヒトおよび動物モデル双方において、梗塞ゾーンから離れた心筋が抑制された機能を呈することを示す他の研究者により報告された観察と一致する。
【0073】
再灌流時に梗塞サイズを減らすのに効果的であるPQQの最少用量もまた、実施例5に示されるように決定した。加えて、本発明者らは、ミトコンドリア機能に対するこの用量のPQQの効果を決定した。これらの研究のために、以前に記載された組織調製法を用いた。心臓を、左前下行冠動脈によって灌流される領域を含む前部分と、非梗塞性後部部分とに目視で長手方向に分割した。ラットを、2時間の再灌流の開始の直前の30分間の虚血(I/R)後、PQQにより処置、または処置しなかった(偽対照)。
【0074】
1mg/kgのPQQを用いた再灌流開始時の処置は、心臓も単離されたインタクトなミトコンドリアも、I/R損傷から保護しなかった。しかしながら、3mg/kgのPQQのみでの処置は、梗塞サイズを49%減少させるのに、そしてミトコンドリア呼吸を回復させるのに非常に効果的であった。これらの実験において、血行力学の結果は、以前の報告に記載されている結果と異ならなかった。
【0075】
本発明者らのデータはまた、高危険度患者におけるPQQの予防的投与または活性な虚血性エピソード時の処置のいずれもが、梗塞サイズおよび心室性不整脈を減らすことによって有益であることを示す。本発明者らの結果はまた、これらの手順が急性心筋梗塞の早期処置として使用される場合、PQQでの処置が、化学的血栓崩壊またはバルーン血管形成術/ステント術と同時に発生する再灌流時にも有効であることを示す。この研究において全身血行力学に対する抑制効果がないことも有望である。フリーラジカル生成が損傷の最大の原因である虚血−再灌流損傷の他のモデルにおけるさらなる調査が所望され得る。急性毒性、特にラットにおいて記載された腎機能に対する有害な副作用(Watanabe Aら,Hiroshima J Med Sci 1989;38:49−51)、およびヒトにおけるPQQの潜在的利点は、あるとしても、未決定のままである。
【0076】
それゆえ、虚血前の前処置として、または虚血後の再灌流開始時の処置としてのいずれかで与えられるPQQは、インタクトなラットにおいて用量関連様式で、心筋梗塞サイズを減らして、心機能を改善することに非常に効果的である。PQQは、虚血心筋においてフリーラジカルスカベンジャーとして作用するようである。
【0077】
メトプロロールは、β1選択的(心選択性)アドレナリン作用性受容体遮断剤である。メトプロロールは、心臓の酸素要求量を減らし、心拍数を減らし、そして安静時および運動時の心拍出量を減らし;とりわけ、収縮期血圧を減らす。この薬物は、50mgおよび100mgの錠剤として、酒石酸塩(LOPRESSOR(登録商標),Geigy Pharmaceuticals)として米国内で入手可能である。有効な1日用量は100mg〜450mgであり、LOPRESSOR(登録商標)は通常、2つの1日用量で与えられる100mgとして投与される。メトプロロールは、コハク酸塩(TOPROL XL(登録商標),Astra Pharmaceutical Products,Inc.)として50mg、100mgおよび200mgの長期放出錠剤として米国内で入手可能であり、これは、1日に1回投与され得る)
PQQは、メトプロロールと同時投与され得る。下記の実施例6に示される結果は、PQQおよびメトプロロールの併用により、PQQまたはメトプロロールを単独で使用するよりも大きく梗塞サイズを減らす傾向があったことを示す。1つの実施形態において、メトプロロールは、1:3の比でPQQの用量と共に投与される。例えば、3mg/kgの用量のPQQには、1mg/kgの用量のメトプロロールが付随する。別の実施形態において、メトプロロールは、1日あたり約50mg〜約500mg/日の1日用量のPQQと組み合わせて、約50mg〜約450mgの1日用量で投与される。心筋の酸化的ストレスは、PQQとメトプロロールとの組み合せの投与によって、防止または最小化することができ、それゆえ、心血管および他の疾患を処置することに関して利点を有する。特に、PQQとメトプロロールとの組み合せは、心臓保護剤として有効であり、従って、冠動脈妨害に起因するような虚血−再灌流損傷、鬱血性心不全、心停止および心筋梗塞などの種々の様々な心臓関連の病気の処置において、そして、心臓保護のために有用である。この組み合せは特に、心筋細胞(これは、酸化的ストレスの対象である)を細胞死から保護するように心筋の酸化的ストレスを調節するのに有用である。
【0078】
本発明は、被験体における低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷を処置または防止する方法を包含し、ここで、PQQは、低酸素または虚血に関連した損傷が防止または減少させられるように、その必要のある被験体に投与される。特定の実施形態において、PQQは、約10μM未満の濃度で投与される。他の実施形態では、PQQは、約10nM〜約10μM、約10nM〜約1μM、100nM〜約10μM、および100nM〜約500nMの範囲の濃度で投与される。本発明のさらに他の実施形態では、PQQは、心臓の組織部位におけるPQQの濃度が10nM〜約10μMの範囲にあるような濃度で投与される。PQQはまた、被験体の体重の関数として投与され得る。本発明のいくつかの実施形態では、PQQは、500mg/kg未満、250mg/kg未満、100mg/kg未満、10mg/kg未満、5mg/kg未満、3mg/kg未満、2mg/kg未満、1mg/kg未満、500μg/kg未満、250μg/kg未満、100μg/kg未満、10μg/kg未満、5μg/kg未満、2μg/kg未満または1μg/kg未満を含む、被験体の体重1kgあたり約1μgと1gとの間の濃度で投与される。本発明のさらなる実施形態では、PQQは、無毒性濃度で投与され、この無毒性濃度は、細胞増殖阻害性であるが細胞毒性ではないPQQ濃度、および意図された1つ以上の細胞型(例えば、心筋細胞)以外の細胞型に対して細胞毒性である濃度を含む。1つ以上の細胞型に対する既知濃度のPQQの細胞毒性の決定は、当業者の能力範囲内である。非限定的な例として、培養された成体マウス心筋細胞に対する毒性は、100μMのPQQの濃度で観察される。いくつかの実施形態では、PQQは、抗血小板薬、抗凝固薬および抗血栓薬のような他の化合物と共に投与される。
【0079】
本発明の方法および組成物により処置または防止され得る心臓損傷としては、低酸素および/または虚血によって引き起こされるかまたはそれらによって影響を受ける全ての心臓損傷が含まれる。このような損傷としては、虚血−再灌流損傷、鬱血性心不全、心筋梗塞、薬物(例えば、ドキソルビシン)のような化合物によって引き起こされる心臓毒性、寄生生物感染、劇症心臓アミロイドーシス、心臓手術、心臓移植、および外傷性心臓損傷に起因する心臓損傷が含まれるが、これらに限定されない。関連する血管および/または心膜のような組織を含む、心臓の全体または一部が損傷し得る。
【0080】
本発明はまた、低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷を処置または防止する必要のある被験体にNADPH依存性メトヘモグロビンレダクターゼ基質を投与し、その結果、低酸素または虚血関連の損傷が防止または減少させられるように、被験体における低酸素または虚血によって引き起こされる心臓損傷を処置または防止する方法を含む。本発明の実施形態では、NADPH依存性メトヘモグロビンレダクターゼ基質は、哺乳動物(例えば、ヒト、ウシまたはマウス)の赤血球または非哺乳動物(例えば、ウシガエル:Rana catesbeiana)の赤血球から精製される。当業者は、最小の実験を用いてNADPH依存性メトヘモグロビンレダクターゼ基質を単離および精製する方法を知っている。
【0081】
本発明は、臓器または組織の再灌流によって引き起こされる損傷が減少または防止されるように、臓器または組織の取り出しより前にまたは取り出しと同時にピロロキノリンキノンをドナーに投与することにより、臓器移植または組織移植中の臓器または組織の損傷を防止する方法をさらに包含する。好ましい実施形態において、移植されるべき臓器または組織は、心臓または心臓組織である。PQQは、ドナーからの臓器または組織の外科的取り出し後に、臓器または組織と接触され得る。いくつかの実施形態では、PQQは、ウィスコンシン大学溶液またはCelsior溶液のような公知の臓器保存溶液または組織保存溶液に加えて添加される(例えば、Thabutら,Am J Respir Crit Care Med,2001,164(7):1204−8;Faenzaら,Transplantation,2001,72(7):1274−7参照)。
【0082】
本発明はまた、虚血時に臓器または組織が保護されるように、治療的に有効な量のPQQを単独でまたは別の生物学的に活性な薬剤と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与することにより、腸虚血、肝臓虚血、脳虚血、腎臓虚血、血管虚血、または肢虚血のような虚血症候群の結果生じる臓器不全または組織損傷を処置、または低減させるための方法も提供する。保護され得る臓器および組織としては、腎臓、肺、肝臓、心臓、胃、膵臓、虫垂、脳、眼、生殖器、心臓組織、および皮膚組織が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
本発明はまた、治療的に有効な量のテトラヨードサイロ酢酸(Tetrac)および/またはPQQを、それを必要とする被験体に投与することにより、上昇した肺血圧のような急性高山病または高度病もしくは高高度肺水腫のような症状を処置、または低減させるための方法も提供する。保護され得る臓器および組織としては、腎臓、肺、肝臓、心臓、胃、膵臓、虫垂、脳、眼、生殖器、心臓組織、および皮膚組織が含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
本発明は、ピロロキノリンキノンおよび薬学的に許容されるキャリアで被験体を処置することによって、心不全を患っている被験体(例えば、ヒト)の発作を防止することにより神経保護を提供する方法をさらに包含する。いくつかの実施形態において、ピロロキノリンキノンは、約10μM未満の濃度で被験体に投与される。PQQは、患者における発作の可能性を増大させ得る外科的手順の前またはその手順と同時に投与され得る。1つの実施形態において、手順は、バルーン血管形成術である。他の手順としては、冠動脈バイパス手術および弁置換手術が含まれる。PQQは、抗血栓剤(例えば、クマジン)の前、抗血栓剤と同時または抗血栓剤後に投与され得る。さらに別の実施形態において、神経保護は、治療的に有効な用量のタモキシフェンが発作の危険性がある被験体に投与される前、投与と同時に、または投与後にPQQを投与することにより達成され得る。
【0085】
本発明はまた、ピロロキノリンキノンおよび薬学的に許容されるキャリアで被験体を処置することによって、被験体(例えば、ヒト)の頭痛を低減または予防する方法も包含する。このような頭痛としては、急性および慢性の片頭痛および副鼻洞頭痛が含まれる。
【0086】
本発明は、ピロロキノリンキノンおよび薬学的に許容されるキャリアで被験体を処置することによって、低体温を患う被験体(例えば、ヒト)の再灌流損傷を防止する方法をさらに包含する。被験体は、当該分野で一般に公知であるように、低体温症を患っている人を処置するための標準復温手順の前またはこの手順と同時にPQQで処置され得る。
【0087】
上記のように、PQQとメトプロロールとの併用治療は、本発明の一部である。本発明の併用治療は、患者における心筋梗塞の所望の処置を得るために、任意の適切な様式によって投与される。実質的に同時の投与は、例えば、固定されたPQQ対メトプロロール比を有する単一の注入液、または複数の単一注射を被験体に投与することによって達成され得る。併用治療の成分は、上記のように、同じ経路によって、または異なる経路によって投与され得る。例えば、PQQは経口投与され、その一方で、メトプロロールは静脈内に投与される;あるいは、全ての治療剤は、静脈内注射により投与され得る。治療剤が投与される順序は、決定的であるとは考えられない。
【0088】
PQQはまた、腎毒性を低減または防止するために、腎臓保護剤と同時投与され得る。PQQとの同時投与に適する腎臓保護剤としては、通管流にとってのインピーダンス遮断剤である任意の化合物、すなわち、腎毒性を引き起こす化合物の通管流を妨げる化合物が含まれる。代表的な化合物としては、プロベネシドおよびシラスタチンが含まれる。プロベネシドは現在、慢性の痛風および痛風性関節炎の処置において使用するために市販されている。プロベネシドは、痛風に関連する発作がひとたび起きた場合にその発作を処置するためではなく、その発作を防止するために用いられる。プロベネシドは、腎臓に対して作用して(尿細管分泌を抑制)、体が尿酸を除去するのを助ける。プロベネシドはまた、体が特定の抗生物質を尿中に通すことを防止することにより、それらの抗生物質をより効果的にするためにも用いられる。
【0089】
高用量のPQQ単独での腎毒性が、ラットにおいて観察されている(実施例5参照)。PQQは、腎毒性を低減または防止するために、プロベネシドと同時投与され得る。以下の実施例8の結果は、PQQとプロベネシドとの併用が腎毒性を低減する傾向があったことを示している。1つの実施形態において、PQQは、プロベネシドの用量と1:4〜1:100の比率で投与される。例えば、25mg/kg用量のPQQは、100mg/kg用量のプロベネシドにより随伴され、もしくは1mg/kg用量のPQQは、100mg/kg用量のプロベネシドにより随伴され、または2mg/kg用量のPQQは、100mg/kg用量のプロベネシドにより随伴され、あるいは、3mg/kg用量のPQQは、100mg/kg用量のプロベネシドにより随伴される。腎毒性は、PQQとプロベネシドとの組み合わせの投与により防止または最小限にされ得る。従って、PQQをプロベネシドと組み合わせて投与することにより、PQQを用いた様々な徴候の処置(例えば、心臓保護)が可能になる一方で、腎毒性を防止または最小限にすることができる。
【0090】
別の実施形態において、本発明は、腎毒性および/または腎不全を防止または低減するためのPQQとシラスタチンとの併用治療を提供する。シラスタチンは、腎臓のデヒドロペプチダーゼ−Iおよびロイコトリエンジペプチダーゼ阻害薬インヒビターである。シラスタチンは一般に、腎臓によるその分解を妨げることによりその有効性を増大するために抗生物質イミペネムと共に投与される。
【0091】
各治療剤の逐次的なまたは実質的に同時の投与は、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、および粘膜組織を通した直接吸収を含むがこれらに限定されない任意の適切な経路によって行われ得る。治療剤は、同じ経路によって投与されてもよく、または異なる経路によって投与されてもよい。例えば、選択される組合せの第1の治療剤は静脈内注射により投与されることができ、一方、組合せの他の治療剤は経口投与され得る。あるいは、例えば、全ての治療剤は経口投与されてもよく、または、全ての治療剤は、静脈内注射により投与されてもよい。治療剤が投与される順序は、厳密に決定的というわけではない。
【0092】
PQQと腎臓保護剤との組み合わせについて、腎臓保護剤は、PQQの前に、PQQと同時に、またはPQQの後に投与され得る。好ましい実施形態において、腎臓保護剤は、PQQ投与の前に投与され、その結果、腎臓保護剤は、血流中に存在してPQQのどのような潜在的な毒作用も阻止する。逐次投与ができない急性のケースのような別の実施形態において、腎臓保護剤は、PQQと同時に、またはPQQの後に投与され得る。1つの特に好ましい実施形態としては、200mg/kgのプロベネシドをPQQ投与前に投与し、そして100mg/kgのプロベネシドをPQQ投与後に投与することが含まれる。
【0093】
「併用治療」はまた、他の生物学的に活性な成分および非薬物療法とさらに組合せた上記の通りの治療剤の投与を包含し得る。併用治療が非薬物処置をさらに含む場合、治療剤と非薬物処置との組合せの協働による有益な効果が達成される限り、非薬物療法は任意の適切な時点で実施され得る。例えば、適切な場合、非薬物処置が治療剤の投与から一時的に、おそらく数日間または数週間にもわたり、取り除かれたときに、有益な効果は依然として達成される。
【0094】
従って、本発明の化合物および他の薬理活性薬剤は、同時に、逐次的に、または併用して、患者に投与され得る。逐次投与される場合、投与の間隔は、0.1〜約48時間まで一般に変化する。本発明の組合せを使用する場合、本発明の化合物および他の薬理活性薬剤が同じ薬学的に許容されるキャリア中に存在してもよく、従って、同時に投与され得ることが認識される。それらは、同時に採られる従来の経口投与形態のような別々の薬学的キャリア中に存在し得る。用語「併用」は、複数の化合物が別々の投与形態において提供されて逐次投与される場合をさらにいう。
【0095】
本発明の併用組成物の有益な効果としては、治療剤の併用から得られる薬物動態学的協働または薬力学的協働が含まれるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、治療剤の協働は、相加的である。別の実施形態では、治療剤の協働は、相乗的である。別の実施形態では、治療剤の協働は、薬剤の一方または両方の治療レジメンを改善する。
【0096】
本発明は、心筋梗塞を患う患者を処置するためのキットにさらに関し、このキットは、治療的に有効な用量の少なくとも一つのメトプロロールおよびPQQを同じかまたは別々の包装中に含み、そしてその使用指示書を備える。メトプロロールは、約0.1mg/kg〜約10mg/kgの用量で投与される。メトプロロールは、PQQと約2:1〜約1:3の比率で投与される。例えば、1mg/kgのメトプロロールが投与される場合、同時投与すべき1つの適切な用量は、1mg/kgのPQQである。別の適切なPQQの用量は、2mg/kgである。別の用量は、3mg/kgのPQQである。
【0097】
患者が(処置)によって利益を得ているか否かを評価するために、定量的方法で、再発頻度の減少によって、または持続した進行までの時間の増加によって患者の症状を調べる。成功した処置において、患者の状態は改善し、再発の測定数または再発頻度は減少し、または持続した進行までの時間は増加する。
【0098】
あらゆる薬物に関して、投与量は、処置の成功および患者の健康の重要な部分である。あらゆる場合において、指定された範囲内で、医師は、性別、年齢、体重、身長、病理学的状態および他のパラメータに従って、所定の患者に関して最良の投与量を決めなければならない。
【0099】
本発明の薬学的組成物は、治療に有効な量の活性薬剤を含む。化合物の量は、処置される患者次第である。患者の体重、病気の重篤度、投与様式および処方医の判断は、適当な量を決定する際に考慮されるべきである。PQQまたはメトプロロールの治療に有効な量の決定は、十分に当業者の技術範囲内である。
【0100】
場合によっては、患者を処置するために薬学的包装の添付書類中で述べられる範囲外の投与量を使用することが必要なことがある。それらの場合は、処方医にとって明らかである。それが必要な場合、医師はまた、特定の患者の応答に関連して、どのようにいつ処置を中断、調節または終了するかがわかる。
【0101】
本発明は、低酸素/虚血性の心臓損傷の防止または減少に役立つ化合物を活性成分として含む薬学的組成物の調製および使用を包含する。このような薬学的組成物は、被験体に対する投与に適した形態の活性成分単独からなっていてもよく、または薬学的組成物は、活性成分および1つ以上の薬学的に許容されるキャリア、1つ以上のさらなる成分またはこれらのなんらかの組合せを含んでもよい。当該分野で周知のように、活性成分は、例えば、生理的に許容されるカチオンまたはアニオンとともに、薬学的に許容されるエステルまたは塩の形態で薬学的組成物中に存在してもよい。さらに、ピロロキノリンキノンは、例えば、虚血または再灌流損傷を減少させるかまたは阻害する際に、調製物の効力に悪影響を与えない限り、薬学的製品に一般に使用される薬理学的に許容される添加剤(例えば、キャリア、ビヒクルおよび希釈剤)、安定剤または調製物を処方するために必要な成分を含み得る。
【0102】
添加剤および安定剤の例としては、単糖(例えば、グルコースおよびフルクトース)、二糖(例えば、スクロース、ラクトースおよびマルトース)および糖アルコール(例えば、マンニトールおよびソルビトール)のような糖;クエン酸、マレイン酸および酒石酸のような有機酸ならびにその塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩およびカルシウム塩));グリシン、アスパラギン酸およびグルタミン酸のようなアミノ酸ならびにその塩(例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩またはカリウム塩);ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのような界面活性剤;ヘパリン;ならびにアルブミンが含まれる。
【0103】
本明細書に記載される薬学的組成物の処方物は、薬理学の分野で公知であるかまたは今後開発される任意の方法によって調製され得る。一般に、このような予備的な方法は、活性成分をキャリアまたは1つ以上の他の補助成分と合わせること、次いで、必要であるかまたは望ましい場合、生成物を成形するかまたは包装して望ましい単一用量単位または複数用量単位にすることを含む。
【0104】
本明細書において提供される薬学的組成物の説明は、主にヒトへの要処方箋投与に適する薬学的組成物に関するが、このような組成物が一般に、全ての種類の動物への投与に適していることが当業者によって理解される。組成物を様々な動物への投与に適するようにするための、ヒトに対する投与に適している薬学的組成物の改変は十分に理解され、そして当該分野の獣医学薬理学者は、あったとしても単なる通常の実験によってこのような改変を設計および実施し得る。本発明の薬学的組成物の投与が意図される被験体としては、ヒトおよび他の霊長類が含まれるがこれらに限定されない。
【0105】
本発明の方法に役立つ薬学的組成物は、口腔投与、直腸投与、膣投与、非経口投与、局所投与、肺投与、鼻腔内投与、頬内投与、眼投与、または別の投与経路に適した処方物において調製、包装または販売され得る。好適な形態は、静脈内投与である。
【0106】
ピロロキノリンキノンおよび上記の成分は適切に混合されて、散剤、顆剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤等が得られる。他の意図される処方物としては、計画されたナノ粒子、リポソーム処方物、活性成分を含有する再封止された赤血球、および免疫学に基づいた処方物が含まれる。
【0107】
本発明の薬学的組成物は、バルクで、単一の単位用量として、または複数の単一単位用量として、調製、包装または販売され得る。活性成分の量は一般に、被験体に投与される活性成分の投与量、または、例えばこのような投与量の半分または3分の1のようなこのような投与量の便利な画分に等しい。
【0108】
本発明の薬学的組成物中の活性成分、薬学的に許容されるキャリア、および任意の付加的な成分の相対量は、処置されるべき被験体の正体、サイズ、および状態に応じて、そして組成物が投与されるべき経路にさらに応じて変化する。例えば、組成物は、0.1%(w/w)と100%(w/w)との間の活性成分を含み得る。
【0109】
活性成分に加えて、本発明の薬学的組成物は、1つ以上の付加的な薬学的に活性な薬剤をさらに含み得る。
【0110】
特に意図される付加的な薬剤としては、制吐剤ならびにシアン化物およびシアン酸塩スカベンジャーのようなスカベンジャーが含まれる。本発明の薬学的組成物の制御放出処方物または徐放性処方物は、従来技術を使用して製造され得る。
【0111】
経口投与に適している本発明の薬学的組成物の処方物は、各々が所定量の活性成分を含む、錠剤、硬質カプセル剤もしくは軟質カプセル剤、カシェ剤、トローチ剤または菓子錠剤を含むがこれらに限定されない別々の固体用量単位の形態で調製、包装または販売され得る。経口投与に適している他の処方物としては、粉末化処方物もしくは顆粒状処方物、水性懸濁剤もしくは油性懸濁剤、水溶液もしくは油性溶液、または乳濁液が含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
活性成分を含む錠剤は、例えば、活性成分と、必要に応じて1つ以上の付加的な成分を圧縮または成形することによって作製され得る。圧縮錠剤は、適切なデバイスにおいて、粉末または顆粒状調製物のような自由流動形態の活性成分を、必要に応じて結合剤、滑沢剤、ビヒクル、界面活性剤および分散剤のうちの1つ以上と混合して圧縮することにより調製され得る。成形錠剤は、適切なデバイスにおいて、活性成分、薬学的に許容されるキャリアおよび少なくとも混合物を湿らせるために充分な液体の混合物を成形することによって作製され得る。錠剤の製造において使用される薬学的に許容されるビヒクルとしては、不活性希釈剤、顆粒化および崩壊剤、結合剤および滑沢剤が含まれるがこれらに限定されない。公知の分散剤としては、馬鈴薯澱粉および澱粉グリコール酸ナトリウムが含まれる。公知の表面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。公知の希釈剤としては、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、およびリン酸ナトリウムが含まれる。公知の顆粒化および崩壊剤としては、トウモロコシ澱粉およびアルギン酸が含まれる。公知の結合剤としては、ゼラチン、アカシア、予め糊化されたトウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドン、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。公知の滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、二酸化ケイ素およびタルクが含まれる。
【0113】
錠剤は非被覆でもよく、または錠剤は、被験体の胃腸管における遅延崩壊を達成し、それによって、活性成分の持続的な放出および吸収を提供するために公知の方法を使用して被覆されてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンのような材料が、錠剤を被覆するために用いられ得る。さらに例えば、錠剤は、浸透圧的に制御された放出の錠剤を形成するために、例えば、米国特許第4,256,108号、同第4,160,452号、および同第4,265,874号に記載される方法を使用して被覆され得る。錠剤は、薬学的に洗練されて口当たりの良い調製物を提供するために、甘味料、香料、着色剤、保存剤またはこれらのなんらかの組み合せをさらに含み得る。
【0114】
活性成分を含む硬質カプセル剤は、ゼラチンのような生理的に分解可能な組成物を使用して作製され得る。このような硬質カプセル剤は活性成分を含み、そして付加的な成分(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンのような不活性固体希釈剤をさらに含み得る。
【0115】
活性成分を含む軟質ゼラチンカプセルは、ゼラチンのような生理的に分解可能な組成物を使用して作製され得る。このような軟質カプセルは、活性成分を含み、そしてこれは、水または落花生油、流動パラフィンもしくはオリーブ油のような油性媒体と混合され得る。
【0116】
経口投与に適している本発明の薬学的組成物の液状処方物は、液体形態において、または使用前に水もしくは他の適切なビヒクルを用いて再構成することが意図される乾燥製品の形態のいずれかで調製、包装または販売され得る。
【0117】
液体懸濁液は、活性成分の水性ビヒクルまたは油性ビヒクル中での懸濁を達成するために従来法を使用して調製され得る。水性ビヒクルとしては、例えば、水および等張性生理食塩水が含まれる。油性ビヒクルとしては、例えば、扁桃油、油性エステル、エチルアルコール、落花生油、オリーブ油、ゴマ油またはヤシ油、分画植物油のような植物油、および流動パラフィンのような鉱油が含まれる。液体懸濁液は、懸濁剤、分散剤または湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、保存剤、緩衝剤、塩、フレーバー剤、着色料および甘味料を含むがこれらに限定されない1つ以上の付加的な成分をさらに含み得る。油性懸濁液は、増粘剤をさらに含み得る。公知の懸濁剤としては、ソルビトールシロップ、水素添加食用脂、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アラビアゴム、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース誘導体が含まれるがこれらに限定されない。公知の分散剤または湿潤剤としては、天然に存在するレシチンのような燐脂質、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、アルキレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、脂肪酸およびヘキシトールから誘導された部分エステルとアルキレンオキシドとの縮合生成物、または脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとアルキレンオキシドとの縮合生成物(例えば、それぞれ、ポリオキシエチレンステアレート、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレート、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)が含まれる。公知の乳化剤としては、レシチンおよびアカシアが含まれる。公知の保存剤としては、メチル−パラ−ヒドロキシベンゾエート、エチル−パラ−ヒドロキシベンゾエートまたはn−プロピル−パラ−ヒドロキシベンゾエート、アスコルビン酸、およびソルビン酸が含まれる。公知の甘味料としては、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロース、およびサッカリンが含まれる。油性懸濁液のための公知の増粘剤としては、例えば、蜜蝋、固形パラフィン、およびセチルアルコールが含まれる。
【0118】
水性溶媒または油性溶媒中の活性成分の液体溶液は、液体懸濁液と実質的に同じ様式で調製することができ、主な違いは、活性成分が溶媒中に懸濁されるよりはむしろ、溶解されるということである。本発明の薬学的組成物の液体溶液は、液体懸濁液に関して記載されている成分の各々を含むことができ、懸濁剤は、溶媒中に活性成分を溶解するのを必ずしも補助しないことが理解される。水性溶媒としては、例えば、水および等張生理食塩水が含まれる。油性溶媒は、例えば、扁桃油、油性エステル、エチルアルコール、落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはヤシ油、分画植物油のような植物油、および流動パラフィンのような鉱油が含まれる。
【0119】
本発明の薬学的調製物の粉末状および顆粒状の処方物は、公知の方法を使用して調製され得る。このような処方物は、被験体に直接投与されてもよく、あるいは、例えば、錠剤を形成するか、カプセルを充填するか、または、水性もしくは油性のビヒクルを添加することによって水性もしくは油性の懸濁液もしくは溶液を調製するために使用されてもよい。これらの処方物の各々は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤および保存剤のうちの1つ以上をさらに含み得る。充填剤および甘味料、フレーバー剤、または着色剤のような付加的な賦形剤も、これらの処方物に含まれ得る。
【0120】
本発明の薬学的組成物はまた、水中油型乳剤または油中水型乳剤の形態で調製、包装または販売され得る。油相は、オリーブ油または落花生油のような植物油、流動パラフィンのような鉱油、あるいはこれらの組み合せであり得る。このような組成物は、アラビアゴムまたはトラガカントゴムのような天然に存在するゴム、ダイズ燐脂質またはレシチン燐脂質のような天然に存在する燐脂質、ソルビタンモノオレエートのような脂肪酸とヘキシトール無水物との組み合せに由来するエステルまたは部分エステル、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートのようなこのような部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物のような1つ以上の乳化剤をさらに含み得る。これらの乳剤はまた、例えば、甘味剤またはフレーバー剤を含む付加的な成分も含み得る。
【0121】
本発明の薬学的組成物は、直腸投与に適する処方物において調製、包装または販売され得る。このような組成物は、例えば、坐剤、停留浣腸調製物、および直腸灌注または結腸灌注用の溶液の形態であり得る。
【0122】
坐剤処方物は、通常の室温(すなわち、約20℃)では固体であって、被験体の直腸温(すなわち、健常なヒトでは約37℃)では液体である非刺激性の薬学的に許容される賦形剤と活性成分とを組み合わせることによって作製され得る。好適な薬学的に許容される賦形剤としては、カカオバター、ポリエチレングリコール、および様々なグリセリドが含まれるが、これらに限定されない。坐剤処方物は、抗酸化剤および保存剤を含むがこれらに限定されない様々な付加的な成分をさらに含み得る。
【0123】
停留浣腸調製物または直腸灌注もしくは結腸灌注用の溶液は、活性成分と薬学的に許容される液体キャリアとを合わせることによって作製され得る。当該分野で周知のように、浣腸調製物は、被験体の直腸の解剖学的構造に適応した送達デバイスを使用して投与することができ、そしてこのような送達デバイス内に包装することができる。浣腸用調製物は、抗酸化剤および保存剤を含むがこれらに限定されない様々な付加的な成分をさらに含み得る。
【0124】
本発明の薬学的組成物は、膣内投与に適する処方物において調製、包装または販売され得る。このような組成物は、例えば、坐剤、タンポンのような含浸または被覆された膣挿入可能材料、灌注調製物、ゲルもしくはクリームないしは膣洗浄用溶液の形態であり得る。
【0125】
化学組成物を材料に含浸またはコーティングする方法は当該分野で公知であり、そして化学組成物を表面上へ堆積させるかまたは結合する方法、材料の合成中に化学組成物を材料の構造に組み込む方法(すなわち、例えば、生理的に分解可能な材料を用いる場合のような)、および水性または油性の溶液または懸濁液を吸収材料に吸収させる方法(その後の乾燥を伴っても伴わなくてもよい)が含まれるが、これらに限定されない。
【0126】
灌注調製物または膣洗浄用溶液は、活性成分と薬学的に許容される液体キャリアとを組み合わせることによって作製され得る。当該分野で公知のように、灌注調製物は、被験体の膣の解剖学的構造に適応した送達デバイスを用いて投与することができ、そしてこの送達デバイス中に包装することができる。
【0127】
灌注調製物は、抗酸化剤、抗生物質、抗真菌剤および保存剤を含むがこれらに限定されない様々な付加的な成分をさらに含み得る。
【0128】
化合物の投与のための付加的な送達方法としては、米国特許第5,928,195号に記載されている薬物送達デバイスのような薬物送達デバイスが含まれる。
【0129】
本明細書中で使用される場合、薬学的組成物の「非経口投与」は、被験体の組織の物理的破損によって特徴付けられる投与および組織の裂け目を通る薬学的組成物の投与の任意の経路を含む。従って、非経口投与は、組成物の注射による薬学的組成物の投与、外科的切開部を通した組成物の適用による薬学的組成物の投与、組織を貫通する非外科的創傷を通した組成物の適用による薬学的組成物の投与などを含むが、これらに限定されない。特に、非経口投与は、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、胸骨内注射、および腎臓透析注入技術を含むことが意図されるが、これらに限定されない。
【0130】
非経口投与に適する薬学的組成物の処方物は、滅菌水または滅菌等張生理食塩水のような薬学的に許容されるキャリアと組み合わされた活性成分を含む。このような処方物は、ボーラス投与または連続投与に適する形態で調製、包装、または販売され得る。注射可能な処方物は、アンプルのような単位用量形態において、または保存剤を含む複数用量容器において、調製、包装、または販売され得る。非経口投与用処方物としては、油性または水性のビヒクル中の懸濁剤、液剤、乳剤、ペースト剤および埋め込み可能な徐放性または生分解性の処方物が含まれるが、これらに限定されない。このような処方物は、懸濁剤、安定剤または分散剤を含むがこれらに限定されない1つ以上の付加的な成分をさらに含み得る。非経口投与のための処方物の1つの実施形態において、活性成分は、再構成された組成物の非経口投与の前に、適切なビヒクル(例えば、発熱性物質を含まない滅菌水)を用いて再構成するための乾燥した(すなわち、粉末または顆粒状)形態で提供される。
【0131】
薬学的組成物は、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁剤または液剤の形態で調製、包装、または販売され得る。この懸濁剤または液剤は、当該分野の技術に従って処方することができ、そして活性成分に加えて、本明細書に記載される分散剤、湿潤剤または懸濁剤のような付加的な成分を含み得る。このような無菌の注射可能な処方物は、例えば水または1,3−ブタンジオールのような、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒を使用して調製され得る。他の許容される希釈液および溶媒としては、リンゲル溶液、等張性塩化ナトリウム溶液、および合成のモノグリセリドまたはジグリセリドのような不揮発性油が含まれるが、これらに限定されない。他の非経口的投与可能な有用な処方物としては、活性成分を、微結晶形態で、リポソーム調製物中に、または生分解性ポリマー系の一成分として含む処方物が含まれる。徐放または埋め込みのための組成物は、乳濁液、イオン交換樹脂、溶解性の高くないポリマー、または溶解性の高くない塩のような、薬学的に許容されるポリマー性または疎水性の材料を含み得る。
【0132】
局所投与に適している処方物としては、液体または半液体の調製物(例えば、糊膏、ローション剤、水中油型乳剤または油中水型乳剤(例えば、クリーム剤、軟膏またはペースト)および液剤または懸濁剤が含まれるが、これらに限定されない。局所投与可能な処方物は、例えば、約1%〜約10%(w/w)の活性成分を含み得るが、活性成分の濃度は、溶媒中での活性成分の溶解限界と同程度に高くてもよい。局所投与用処方物は、本明細書に記載される付加的な成分のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0133】
本発明の薬学的組成物は、口腔前庭を介した肺投与に適している処方物において、調製、包装、または販売され得る。このような処方物は、乾燥粒子を含むことができ、この乾燥粒子は、活性成分を含み、かつ約0.5〜約7ナノメートル、好ましくは約1〜約6ナノメートルの範囲の直径を有する。このような組成物は、便利には、噴射剤の流れが向けられて粉末を分散し得る乾燥粉末レザーバを備えるデバイスを使用する、または自己噴射式の溶媒/粉末分散容器(例えば、密封容器中の低沸点噴射剤に溶解または懸濁した活性成分を備えるデバイス)を使用する、投与のための乾燥粉末の形態である。好ましくは、このような粉末は粒子を含み、粒子の少なくとも98重量%が0.5ナノメートルより大きい直径を有し、そして粒子数の少なくとも95%が7ナノメートル未満の直径を有する。より好ましくは、粒子の少なくとも95重量%は1ナノメートルより大きい直径を有し、粒子数の少なくとも90%は6ナノメートル未満の直径を有する。乾燥粉末組成物は好ましくは、糖のような固体の微細粉希釈剤を含み、そして単位用量形態で便利に提供される。
【0134】
低沸点噴射剤は一般に、大気圧で65°F(18.3℃)未満の沸点を有する液体噴射剤を含む。一般に、噴射剤は組成物の50〜99.9%(w/w)を構成することができ、活性成分は組成物の0.1〜20%(w/w)を構成し得る。噴射剤は、(好ましくは、活性成分を含む粒子と同じオーダーの粒子サイズを有する)液体の非イオン性界面活性剤または固体のアニオン界面活性剤もしくは固体の希釈剤のような付加的な成分をさらに含み得る。
【0135】
肺送達用に処方される本発明の薬学的組成物はまた、溶液または懸濁液の液滴の形態で活性成分を提供し得る。このような処方物は、活性成分を含む、必要に応じて無菌の、水性または希アルコール性の溶液もしくは懸濁液として調製、包装または販売され得、そして任意のネブライズデバイスまたはアトマイズデバイスを使用して便利に投与され得る。このような処方物は、サッカリンナトリウムのようなフレーバー剤、揮発性油、緩衝剤、界面活性剤、またはメチルヒドロキシベンゾエートのような保存剤を含むがこれらに限定されない1つ以上の付加的な成分をさらに含み得る。この投与経路によって提供される液滴は好ましくは、約0.1〜約200ナノメートルの範囲の平均直径を有する。
【0136】
肺送達に有用であるとして本明細書中で記載される処方物はまた、本発明の薬学的組成物の鼻腔内送達にも有用である。
【0137】
鼻腔内投与に適している別の処方物は、活性成分を含んでおり、かつ約0.2〜500マイクロメートルの平均粒子を有している粗粉末である。このような処方物は、嗅ぎタバコが服用されるやり方で、すなわち、鼻の近くに保持された粉末容器からの鼻通路を介した迅速な吸入によって投与される。
【0138】
経鼻投与に適する処方物は、例えば、わずか0.1%(w/w)の、そして100%(w/w)もの多くの活性成分を含み得、そして本明細書に記載される付加的な成分のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0139】
本発明の薬学的組成物は、頬内投与に適する処方物において、調製、包装または販売され得る。このような処方物は、例えば、従来法を使用して作製される錠剤または菓子錠剤の形態であり得、そして例えば0.1〜20%(w/w)の活性成分を含み得、残りは、経口的に溶解性であるかまたは分解可能な組成物、および必要に応じて、本明細書に記載される付加的な成分のうちの1つ以上を含み得る。あるいは、頬内投与に適する処方物は、活性成分を含んでいる、粉末、またはエアロゾル化もしくはアトマイズした溶液もしくは懸濁液を含み得る。このような粉末化、エアロゾル化またはアトマイズ化された処方物は、分散される場合、好ましくは約0.1〜約200ナノメートルの範囲の平均粒子サイズまたは液滴サイズを有し、そして本明細書に記載される付加的な成分のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0140】
本発明の薬学的組成物は、眼への投与に適する処方物において、調製、包装または販売され得る。このような処方物は、例えば、水性または油性の液体キャリア中の例えば、0.1〜1.0%(w/w)の活性成分の液剤または懸濁剤を含む、点眼剤の形態であり得る。このような点眼剤は、緩衝剤、塩、または本明細書に記載される付加的な成分のうちの1つ以上の他のものをさらに含み得る。眼に投与可能な有用な他の処方物としては、微結晶形態の、またはリポソーム調製物中に活性成分を含む処方物が含まれる。
【0141】
ピロロキノリンキノンと薬理学的に許容される添加剤との混合物は好ましくは、凍結乾燥製品として調製され、そして使用時に溶解される。このような調製物は、注射用蒸留水または滅菌精製水にピロロキノリンキノンを溶解することによって、約0.01〜100.0mg/mlのピロロキノリンキノンを含む溶液に調製され得る。より好ましくは、この調製物は、生理的に等張の塩濃度および生理的に望ましいpH値(pH6〜8)を有するように調節される。
【0142】
用量は症状、体重、性別、動物種等に応じて適切に決定されるが、血中濃度を約1μMに保持する処置選択肢が好ましいと一般に想定される。この血漿濃度は、1日につき1用量〜数用量の投与によって達成され得る。ピロロキノリンキノンが被験体に投与されるべきである場合、0.1ng〜10mg/kg体重(例えば、1ng〜1mg/kg体重)のピロロキノリンキノンを静脈内に投与できる。
【0143】
化合物は、1日に数回の頻度で動物に与えられてもよく、または化合物は、1日に一度、1週間に一度、2週間に一度、1ヶ月に一度、または数ヶ月に一度、もしくは1年に一度ないしはそれ未満のより低い頻度で投与されてもよい。用量の頻度は、当業者には容易に明らかになり、処置される疾患の種類および重篤度、動物の種類および年齢等の多くの要因に依存するが、これらに限定されない。
【実施例】
【0144】
これらの実施例は例示のみを目的として提供されており、本発明はこれらの実施例に限定されるとは決して解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書中に提供される教示の結果として明白になるあらゆるおよび全てのバリエーションを包含すると解釈されるべきである。
【0145】
実施例1.心筋細胞生存率のPQQ保存のインビトロ研究
培養された成体マウス心筋細胞のインビトロモデルを、PQQによる心臓保護を研究するために開発した。これらの細胞は、生理的pHで48時間まで培養して生存可能であり、>90%が桿状細胞からなる。これらの細胞は、トリパンブルー排除による細胞生存率の決定のために、そして、生化学研究、免疫化学研究および分子研究のために容易に用いられ得る。このモデルでは、低酸素チャンバ中で0%酸素に2〜3時間さらされると、細胞の約35%は死ぬ。図1に示されるように、細胞を高度の低酸素(0%酸素で2〜3時間)に供する1時間前に添加された1μM PQQは、トリパンブルー排除によって示されたように、生存可能細胞の比率の有意な増加を生じる。より高濃度のPQQ(100μM)は、100%細胞死により証明されたように、正常酸素条件下では非常に毒性がある。図2は、低酸素誘発性の細胞死に対する1μM PQQ保護が10μM 5−ヒドロキシデカン酸(ミトコンドリアのKATPチャネルインヒビター)により阻害されないことを実証する。理論に束縛されることを望まないが、これらのデータは、PQQがミトコンドリアKATPチャネルを開くことによって心臓保護を発揮するわけではないことを示唆する。
【0146】
実施例2.心機能のPQQ保存のエキソビボ研究
ランゲンドルフ技術を使用して単離されたマウス心臓調製物を使用してエキソビボ研究を実施した。このアプローチでは、心臓を取り出して灌流装置に載せ、この灌流装置においては、薬物を大動脈のカニューレを介して与えることができる。心臓は、一定速度でペーシングされ、そして左心室発生圧力[LVDP;(左心室収縮期圧)−(左心室拡張末期圧)]、左心室拡張末期圧[LVEDP]、および左心室圧の正および負の最大一次導関数[+dP/dtmaxおよび−dP/dtmax]を記録する。心臓を20分間平衡化する。薬物またはビヒクルの注入後、心臓を20分間の虚血[冠動脈流完全停止]、続いて30分間の再灌流に供する。冠動脈血流の反射としての冠状静脈洞血流も測定する。このプロトコルにより、血行力学的パラメータで測定した場合に重篤な心筋損傷がもたらされる。
【0147】
図3に見られるように、冠動脈血流の完全停止前に2分間のみ注入した100nMのPQQは、LVDPベースライン1の有意な保存を生じる。VDPは、平均60mmHgである。類似の結果が、LVEDPを用いて得られる[図4]。LVEDPベースラインは平均8mmHgである。(LVEDPの増加が有害な応答を表すことに注意されたい)。予想通り、+dP/dtmaxおよび−dP/dtmaxに関するデータは、LVDPの結果を追う[図5および図6]。同様に、冠動脈流は、対照と比較して、PQQ前処置によって有意に改善される[図7]。
【0148】
図8において、示される濃度におけるPQQでの2分間の前処置が10nMと1μMとの間では次第に好ましい応答を有するが、10μMでは毒性が生じることが示される。主に興味深いことは、再灌流(PQQ処置)開始時に与えられた100nM PQQが前処置と同等であることである。従って、PQQは、前処置、例えば、心臓手順または他の外科的手順において、および症状が発生した後、例えば、急性の重大な事象の両方において有用である。
【0149】
図9は、PQQ前処置後の梗塞サイズの測定実験結果を示す。示されるように、10nMと1μMとの間では梗塞サイズが漸減し、血行力学のデータに対応する。後者と一致して、梗塞サイズは10μM PQQでは減少しない。
【0150】
実施例3.酸化的ストレスを受けた細胞のPQQ保存
培養された心筋細胞を、H2O2のインビトロ投与によって、酸化的ストレスに供する。2つの研究を行い、一方の研究では、心臓筋細胞に10nMと10μM未満との間の濃度のPQQを添加し、その後、H2O2を添加する。他方の研究では、心筋細胞を2時間のH2O2の損傷インビトロ投与に供し、その後、PQQを10nMと10μM未満との間の濃度で添加する。両方の研究において、PQQは保護することが見出される。
【0151】
実施例4.インビボでの酸化的ストレスの防止/減少のためのPQQの使用
雄性Sprague−Dawleyラットを、虚血または虚血−再灌流の前にピロロキノリンキノン(PQQ)によって、ランダムに処置した。PQQ(15〜20mg/kg)を、腹腔内投与によって左前下行冠動脈(LAD)閉塞の30分前に(前処置)、または、静脈内注射によって再灌流開始時に(処置)与えた。左心室(LV)血行力学をモニタリングしながら、ラットを17分間または30分間のLAD閉塞および2時間の再灌流に供した。前処置または処置のいずれかとして与えられたPQQは、これらのラットモデルにおいて梗塞サイズを減少させた。PQQは、虚血により誘発される心臓機能不全から保護し、1〜2時間の再灌流後、LV発生圧力、LV(+)dP/dtはより高く、LV(−)dP/dtはより低かった。PQQ処置ラットにおいては、心室性細動(VF)エピソードはより少なかった。心筋のマロンジアルデヒド(MDA)(脂質過酸化の指標)は、PQQによって減少した。従って、前処置としてまたは再灌流の開始時の処置のいずれかとして与えられたPQQは、虚血および虚血−再灌流のラットモデルにおいて用量関連様式で心筋梗塞サイズを減らし、心機能を改善することに非常に効果的である。MDAの結果は、PQQが虚血心筋においてフリーラジカルスカベンジャーとして働くことを示唆する。
【0152】
統計解析
全ての結果は、平均±SEMとして示される。2つの投与群(前処置および処置)を、複数群比較のための回帰式を用いて一元分散分析(ANOVA)を使用して正常対照群と比較した。3つの群の間での閉塞および再灌流期間中の死亡率の差を、χ二乗検定により評価した。VFを有するラットのパーセンテージを、フィッシャーの正確確率検定により評価した。全ての計算を、Minitabバージョン7.2(Minitab Statistical Software)またはPrimor of Biostatistics:The programバージョン3.03(McGraw−Hill)の一般線形モデル手順を使用して行った。統計的有意性を、p<0.05に設定した。
【0153】
虚血および虚血−再灌流モデル
PQQをビヒクル(2% NaHCO3)に溶解した。腹膜内(i.p.)または静脈内(i.v.)のいずれかで与えられた体積は、1mlであった。全ての対照を1mlのビヒクルにより処置した。モデル1において、20mg/kgのPQQを、LAD結紮により誘発される2時間の虚血の30分前に、i.p.で与えた。モデル2において、15mg/kgのPQQを、17分間か30分間の虚血の30分前にi.p.で与え、続いて2時間の再灌流を行った(前処置)。他のモデル2の実験において、15mg/kgのPQQを、再灌流の開始時に大腿静脈を介してi.v.ボーラス注射によって与えた(処置)。これらのプロトコルを、図10にまとめる。
【0154】
麻酔(ケタミン80mg/kg、キシラジン4mg/kg体重、腹膜内)導入後、気管切開術を実施し、動物をHarvard Rodent Respirator(モデル683、Harvard Apparatus)において通気した。モデル1のラットを再灌流のない2時間の近位左前下行(LAD)冠動脈結紮に供した。モデル2は、以前に記載された通りの虚血−再灌流(Sievers REら,Magn Reson Med 1989;10:172−81)を使用した。このモデルにおいて、可逆冠動脈係蹄オクルーダーを、正中線胸骨切開術により近位LAD冠動脈周辺に配置した。次いで、ラットを17分間または30分間のLAD閉塞および120分の再流動に供した。加えて、モデル2ラットは、血行力学的測定値を記録された。4F Millarカテーテルを、右頸動脈を通して左心室(LV)に挿入した。20分間の平衡化後、心拍数(HR)、収縮期圧(LVSP)、拡張末期期圧(LVEDP)、LV(+)dP/dtmax、LV(−)dP/dtmaxを、MacLab/4S(Milford,MA)を使用してモニタリングした。LV発生圧力(LVDP)を、LVEDPをLVSPから差し引くことにより算出した。
【0155】
モデル1およびモデル2、セット1およびセット2の両方における3群のラットにおける体重は異ならなかった(対照群、前処置群および処置群についての値はそれぞれ、以下の通りであった:320±16、321±22、および306±18g;分散分析(ANOVA)によって、p=0.799)。
【0156】
ベースラインではモデル2の対照群、前処置群および投与群の間で心拍数、LVSP、LVEDP、LV(+)dP/dt、およびLV(−)dP/dtに有意差は皆無であった。前処置によって与えられるかまたは処置として与えられるかにかかわらず、PQQは、虚血誘発性の心臓機能不全を防止し、1〜2時間の再灌流後、より高いLVSP、LVDP、LV(+)dP/dt、およびより低いLV(−)dP/dtを有した(図11A〜B;12A〜B)。
【0157】
梗塞サイズ
梗塞サイズを、以前に記載された通りに測定した(Sievers REら,Magn Reson Med 1989;10:172−81、Zhu B−Qら,J Am Coll Cardiol 1997;30:1878−85)。モデル1において、心臓を、2時間の虚血期間の終わりに切り出した。次いで、切片を、生存可能な心筋が赤レンガ色に着色されるまで塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)の1%溶液中で10〜15分間インキュベートした。
【0158】
モデル2において、2時間の再灌流後、LADを再閉塞し、そして、フタロシアニン色素(Engelhard Cooperation,Louiseville,KY)をLV腔に注射し、通常に灌流された心筋を青色に染色した。次いで、心臓を切り出し、過剰な色素をすすぎ洗いし、そして頂部から基部に向かって横断的にスライスして2mm厚の切片にした。切片を、上記の通りにTTC中でインキュベートした。梗塞を起こした心筋は、TTCで染色できない。次いで、組織切片を、10%ホルマリン溶液中で固定し、計量した。各横断スライスの両面のカラーディジタル画像を、顕微鏡(Stereo Zoom 6 Photo,Leica)に接続したビデオカメラ(Leica DC 300F)を使用して得た。青に染色された組織(非虚血性)、赤に染色された組織(虚血性であるが、非梗塞性)および染色されていない組織(梗塞性)を示す領域を、各色画像上で輪郭を描き、NIH Image 1.59(国立衛生研究所,Bethesda,MD)を使用して盲検様式で測定した。それぞれの面で、梗塞関連組織を表すLV面積の割合(2つの画像の平均)にその切片の重量を掛けることにより、梗塞関連組織の絶対重量を決定した。各心臓についての梗塞サイズを、以下のように表現した:
【0159】
【数1】
次いで、危険領域のパーセンテージとしての梗塞サイズを、以下の通り計算した:
【0160】
【数2】
虚血モデル(モデル1)では、PQQ後の梗塞サイズ(梗塞量/LV量、フタロシアニン青色色素は注射されていない)は、対照よりも小さかった(図13)。モデル2における実験の第1セットにおいて、虚血は17分間であり、その後、2時間の再灌流が行われ、梗塞サイズ(梗塞量/危険領域、梗塞量/LV量)は、20mg/kgのPQQでの前処置によって減少した(図14)。モデル2の実験の第2セットにおいて、虚血は30分間であり、その後、2時間の再灌流が行われ、15mg/kgのPQQでの前処置または処置のいずれかの後での梗塞サイズは、対照よりも小さかった(図15)。
【0161】
図16は、前処置として与えられたPQQの用量が、梗塞サイズと逆に相関したことを示す。これらの実験において、17分間の虚血に続いて2時間の再灌流を行った。
【0162】
心室性細動(VF)
皮下針電極を四肢に挿入することによって心電図(ECG、誘導II)を得た。ECGを虚血および再灌流の間モニタリングし、そして発作性VFのエピソードを記録した。ラット1匹当たりのVFのエピソード数および各群におけるVFを有するラットのパーセンテージを算出した。閉塞および再灌流の前または間に抗不整脈剤を受けたラットは皆無であった。露出した心筋を1つの手の親指および人さし指で迅速に打つことによってVFエピソードを好首尾に処置した。
【0163】
15または20mg/kgのPQQでの前処置は、ラット1匹あたりのVFの平均エピソードを減少させた(図17A)。15または20mg/kgのPQQでの前処置または処置は、VFを有するラットのパーセンテージを低下させた(図17B)。
【0164】
マロンジアルデヒドを測定した別の付加的な実験(下記参照)において、偽群またはPQQ群(各々n=5)のいずれにおいてもVFのエピソードは皆無であった。しかしながら、I/R群(30分間の虚血、続いて2時間の再灌流)におけるVFは平均1.8±0.4エピソード/ラットであり、15mg/kgのPQQでの前処置によって0.2±0.2エピソード/ラット(各群n=5、二元ANOVAによってP<0.001、PQQとI/Rとの間でP=0.002の有意な相互作用を有する)に減少した。
【0165】
心筋マロンジアルデヒド(MDA)測定
心筋組織MDA(チオバルビツール酸と反応する脂質過酸化生成物)を、532nmの吸光度にて分光測光法により決定した。試料の濃度を、1.56×105/Mcmの吸光係数を使用して算出し、結果をnmol/g湿重量心臓として表した(Ohkawa Hら,Analytical Biochemistry 1979;95:351−358、Moritz Fら,Cardiovascular Research 2003;59:834−843)。
【0166】
心筋組織MDA(脂質過酸化の指標)の測定のために、種々の組織調製法を用いた。心臓を、LADによって灌流される領域を含む前部分と残りの非虚血性部分に、頂部から基部まで目視で分けた。ラットを、15mg/kgのPQQによって予め処置しまたは処置せず(偽対照)、そして30分間の虚血および2時間の再灌流に供した。これらの付加的な実験において、血行力学的結果は、上記の結果と異ならなかった。図18Aに見られるように、I/RはMDAレベルを上昇させ、PQQはこの上昇を妨げた。I/R後のPQQ値および対照値は3倍異なった(図18A)。同様の効果が、離れた「正常」心筋において見られた(図18B)。再灌流の開始時に与えた場合、15mg/kgのPQQはまた、虚血心筋におけるMDAレベルを176±16から123±17nmol/gへと低下させた(n=8,P<0.05)。
【0167】
実施例5.PQQは、ミトコンドリア呼吸を低濃度で回復させ、虚血/再灌流損傷のインビボモデルにおいて心臓保護的である
成体雄ラットは、30分間の左前下行(LAD)冠動脈閉塞および2時間の再灌流を受けた。ヒトにおける再灌流治療の潜在的利益を評価するために、PQQを、再灌流の開始時に、1および3mg/kg体重の用量でi.v.注射によって与えた。取り出し後、心臓を、頂部から基部まで、LAD灌流した領域を含む前部と後部セグメントとに分け、ミトコンドリアを単離した。各心筋セグメントのミトコンドリア呼吸を測定し、(PQQなしで)あらかじめ馴化して偽手術を行った心臓から単離したミトコンドリア呼吸と比較した。
【0168】
1mg/kgのPQQでの処置は、ミトコンドリアをI/R損傷から保護しなかった。しかしながら、3mg/kgのPQQでの処置は、ミトコンドリア呼吸の回復に非常に効果的であった。虚血領域の呼吸調節およびADP−酸素消費率(RCR:8.0±0.5、ADP/O;4.5)、ならびに状態3呼吸速度(RR:41nmol O atom/分/mgタンパク質、n=5)は、偽のものと一致し(RCR:8.2±0.3、ADP/O:3.7、RR=43nmol O atom/分/mgタンパク質)、一方で、PQQなしであらかじめ馴化した心臓のRCR値は、驚くべきことに20%低かった。虚血性の未処置の心臓のミトコンドリアからの呼吸応答は、50〜100%減少した。PQQで処置した組織およびミトコンドリアの電子顕微鏡写真は、心筋損傷に典型的な形態を示さなかった。PQQはまた、梗塞サイズおよび心筋のマロンジアルデヒド(MDA)組織濃度をそれぞれ、49%および61%低下させた。
【0169】
再灌流時に与えられた低用量の3mg/kgのPQQは、虚血によって阻害されたミトコンドリア呼吸を非常に効果的に回復させ、ミトコンドリアに対する酸化的損傷およびI/R損傷における梗塞サイズを減少させる。PQQは、脂質過酸化インヒビターまたはラジカルスカベンジャーとしてその心臓保護機能を発揮し得る。それゆえ、PQQ処置は、急性虚血症候群の強力な治療剤として出現し得る。
【0170】
虚血性領域の呼吸調節およびADP−酸素消費率(RCR:8.0 0.5、ADP/O、4.5)、ならびに状態3呼吸速度(RR:41nmol O atom/分/mgタンパク質、n=5)は、偽のものと一致し、一方、PQQなしであらかじめ馴化された心臓のRCR値は、驚くべきことに20%低かった。虚血性の未処置の心臓のミトコンドリアからの呼吸応答は、50〜100%減少した。RCRデータを、図19に視覚的に示す。PQQ処置した組織およびミトコンドリアの電子顕微鏡写真は、心筋損傷に典型的な形態を示さなかった。それゆえ、再灌流時に与えられた低用量の3mg/kgのPQQは、虚血により阻害されるミトコンドリア呼吸を非常に効果的に回復させ、ミトコンドリアに対する酸化的損傷およびI/R損傷における梗塞サイズを減少させた。
【0171】
毒性研究も実行した。本発明者らは、3mg/kgまたは10mg/kgの用量で腎毒性も肝臓毒性も見出さなかった(表1参照)。上記のように、再灌流時に与えられた3mg/kgのPQQは、有効な心臓保護用量であるように思われた。15mg/kgにおいて、7/8の動物は、腎毒性も肝臓毒性も全く示さなかったが、表1に示されるデータから除外した1匹のラットは、4日目に尿毒症を発症して10日目に死んだ。20mg/kgを受けたラットは、予め2週間、30mg/kgの累積用量で10mg/kgを受けていた。表1に示すように、これらの動物の全ては尿毒症を発症して10日目に死んだ。全ての実験室研究を、San Francisco VA Medical Centerの臨床実験室によって盲検様式で実施した。アルブミンのような、いくつかの尺度のベースラインレベルが、ヒトにおけるよりもラットにおいて低いが、その一方で、クレアチンキナーゼ(CK)のような他のものはより高いことに留意されたい。
【0172】
【表1】
実施例6.心機能に対するPQQおよびメトプロロールの効果の研究
15mg/kgのPQQでの前処置または処置は、梗塞サイズを低減させ、虚血/再灌流(I/R)のラットモデルにおける心機能を改善した。β遮断剤メトプロロールは、急性心筋梗塞症患者における標準処置として使用される。従って、メトプロロールおよび低用量PQQを用いた心筋梗塞の併用処置を各薬物単独と比較して研究するために実験を行った。心臓保護機構を決定するために、変化を、ミトコンドリア機能および脂質過酸化において測定した。
【0173】
インタクトな雄ラットを、左心室血行力学をモニタリングしながら、30分間の左前下行冠動脈閉塞および2時間の再灌流に供した。予備実験において、1mg/kgの用量のメトプロロールは、梗塞サイズを減少させるために、このシステムにおいて最適であるとわかった。従って、臨床処置を模倣するために、メトプロロール(1mg/kg)および/またはPQQ(3mg/kg)を、再灌流の開始時に大腿静脈注射によって与えた。別々の実験において、虚血/再灌流後、虚血性心筋および非虚血性心筋のミトコンドリア呼吸調節およびADP−酸素消費率(RCR)、ならびにマロンジアルデヒド(MDA)(脂質過酸化の指標)のレベルを測定した。
【0174】
結果は、メトプロロールまたはPQQのいずれかを用いた処置が心筋梗塞サイズ(梗塞重量/危険領域)を低減させたことを示す。これらの薬剤を組み合わせて使用することは、梗塞サイズをさらに減らす傾向があった。メトプロロールおよび/またはPQQはまた、1〜2時間の再灌流後、虚血により誘発された左心室(LV)機能不全から保護した。それゆえ、LV発生圧力は増加し、そしてLV拡張末期圧力は減少した。メトプロロールおよび/またはPQQはまた、CK放出を減少させた。虚血性心筋および非虚血性心筋におけるミトコンドリアRCRは、主にPQQによって強化され、そしてメトプロロールによってはそれほどではなかった。PQQは、虚血性心筋および非虚血心筋におけるMDAを減少させた。これらの結果は、下記の表2にまとてある。
【0175】
これらの実験は、PQQおよびメトプロロールが心筋梗塞の処置に有効であるが、PQQとメトプロロールとの組み合せはいずれかの薬剤単独よりも効果的であり得ることを示唆する。ミトコンドリア保護については、PQQが優れている。メトプロロールまたはプラセボにランダム化された45,852人の急性心筋梗塞症患者の最近の大規模研究において、心臓性ショックの発生率がメトプロロール群において約30%より高かった点に留意すべきである(Collins Rら,COMMIT/CCS−2;Placebo−controlled trial of early metoprolol in 46,000 acute myocardial infarction patients.Late−breaking trials presented at the American College of Cardiology Annual Scientific Session 2005.March 6−9,2005.Orlando,Fla.)。これは、メトプロロールがミトコンドリア機能を回復することができないことに少なくとも一部起因し得る。
【0176】
【表2】
実施例7:PQQ連結ポリビニルアルコールおよびPQQ連結ポリマーの合成
PQQを最初に活性化させ、次いで、ポリマーと反応させてPQQ連結ポリマーを得た。9k〜100の異なる分子量のポリ(ビニルアルコール)(PVA)を、本出願において試験した。PVAは、その多くの望ましい特徴のため、特に様々な薬学的お生物医学的用途にとって大いに関心のあるポリマーである。
【0177】
合成手続は、図20Aに示してある。これは2ステップ反応である。第1のステップにおいて、PQQは、脱水剤(例えば、DCCまたはCDI)と反応して活性なimmediateを得た。第2のステップにおいて、活性PQQはPVAと反応し、エステル結合が形成され、PQQは、PVA主鎖に化学的に結合された。
【0178】
実験の設計が表3に示してある。PQQ負荷レベルは1〜10%であり、反応温度は、0、25および50℃に制御した。
【0179】
【表3】
*実験は、DMF溶液中で実施した。3つの分子量のPVAを試験した(M.W.〜10K、40K、および10K)。
【0180】
合成および精製手順:
1. PQQは、制御された温度(0℃、25℃、および50℃)でN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液に溶解した。
【0181】
2. 脱水剤(DCCまたはCDI)を溶液に添加して活性化PQQimmediateを形成した。
【0182】
3. PVAを溶液に添加し、反応を20時間保持した。
【0183】
4. 溶液を透析管(COMW 4,000)に移送し、脱イオン水中で2日間透析を行った。水は1日3回交換した。
【0184】
5. 透析後、溶液を真空下で濃縮し、真空オーブン中にて50℃で乾燥した。
【0185】
H−NMR分析
受け取られたPQQおよびPQQ/PVA連結物のプロトンNMRスペクトルを、図45および図46に示す。8.58ppmおよび7.19ppmに2つのピークが示され、これらのピークは、PQQ中に示される2つの芳香族プロトンに割り当てられた。d6−DMSOピークは2.50ppmに現れ、水残留物からのピークは3.31ppmに示された。純度は、プロトン積分面積を比較することにより算出し、2つのリソースについて>95±5%であった。PQQ/PVA連結物のNMRスペクトルは、連結結合の形成を明確に示した。低フィールドでは、8.58ppmおよび7.19ppmの2つのピークはPQQからであり、高フィールドの4〜1ppmの複数ピークは、PVAからであった。
【0186】
PQQおよびPVAのFT−IRスペクトル
PVA、PQQ、および連結されたPQQ/PVAのATRモードFT−IRスペクトルを、図47、図48、および図49に示す。3,000cm−1近くの特性ピークは、PVA中のヒドロキシル基からである。PQQ/PVA連結物において、このピークは、連結反応により明らかに減少されられている。さらに、1720cm−1の強いピークが、新しいエステル結合の結果として形成された。
【0187】
PVA粉末のXRDスペクトル
X線回折は、Shimadzu XRD−6000において実施した。結晶化度は、PQQ放出動力学に対し大きな効果がある。結晶化度は、多くの要因(例えば、分子量および分子量多分散、熱履歴、等)によって決定される。受け取られたPVA(MW:10K)は、同様な結晶化度を示し、この結晶過度は、図50に示されるように、約32〜34%であり、19〜20(2θ)に主ピークを有する。PQQがPVAと反応してPQQ/PVA連結物を形成する場合、生成物は、非晶質ピークのみを示した。この連結反応は、微視的構造を完全に変えた。
【0188】
HPCLによるPQQの定量アッセイ
標準較正曲線が図51に示してあり、これは、0.1ng/20μlまでのPQQ量を検出することができる。量の限界および検出限界はそれぞれ、0.2ng/20μlおよび0.1ng/20μlであり、このことは、PQQ量が>0.1ng/20μlである場合、PQQは、効果的に検出され得ることを意味する(図52および図53)。PQQ量が>0.2ng/20μlである場合、この量は、較正曲線を用いて知ることができ。
【0189】
GPCによるPQQ連結PVA系の確認
透析の間に、UVランプにより、溶液を流出PQQについてチェックした。2日間の透析後、検出可能な量のPQQは皆無であった。PQQ連結PVA溶液を、ロータリーエバポレータにより濃縮し、最終複合物をオーブンで乾燥した。
【0190】
ポリマーへのPQQの結合を確認するため、GPC分析は実施した。図21は、蛍光検出器を用いた、PQQのGPCスペクトルを示している。鋭いピークが14.90分に現れ、これは、この操作条件における純PQQの保持である。ピークの構造は、図22に示されるようなUV吸収スペクトルにより確認された。
【0191】
PVAが蛍光検出器により検出された場合、強度はPQQの強度に比べて非常に弱かった。これは、PVAがほとんど蛍光を示さなかったためである。
【0192】
PQQ連結PVAのGPCスペクトルは、図23に示してあり、ピークが10.19分、13.67分に、そしてオーバーラップピークが14.90分に示された。計算から、分子量は、約40K、10Kおよび低分子量分子であった。PQQは蛍光検出器によって検出できるので、すべての分子はPQQを含んでいた。さらなる確認を、各ピークのUV吸収スペクトルを調べることにより行った。一般に、それらのピークは、分子中の新たなエステル結合形成に起因するわずかな違いがあるが、同じである(図24)。
【0193】
様々な分析方法を、このPQQ連結PVA生成物ように用いることができる。プロトンNMR試験は、GPCを除き、PVAとのPQQの結合をさらに詳細に調べるために実施した。
【0194】
PQQ−PVA連結物は、20wt%のPQQおよび80wt%のPVAも含み得る。言い換えれば、すべての30反復PVA単位が1つのPQQ分子を含有し、すべてのPVA分子が約6〜約16個のPQQ分子、好ましくは約7〜約8個のPQQ分子を含有する。図20Bおよび図20C参照。PQQ/PVA連結物は、CDIをを脱水剤として用いて、PQQをDMF溶液中のPVAと反応させて合成した。一般的な負荷レベルは、約20wt%である。純粋生成物を、加水分解および凍結乾燥後に得た。純度は、HPLSにより確認した。連結生成物は、様々な方法により特性決定した。
【0195】
PQQ連結ポリマー
以下でおよび図54A〜JJに開示されるように、付加的なPQQ連結ポリマーを合成することができる。これらの化合物は、PQQ放出を制御するための多様な候補を提供する。PEG−PNH2は、候補の1つである。種々の分子量(数千〜20K)および主鎖末端の1ないし2個のアミン基が商業的に利用可能である。アミド結合は、PQQ連結PVA系におけるエステル結合と比較して、より長い放出時間を有することが期待される。
【0196】
PQQ連結ポリマー:係留マスキングおよび非係留マスキング
1. 中性電荷および最小原子容を有するポリマーとの連結
2. 最低/最小親油性のポリマーとの連結
3. 中間レベル親油性のポリマーとの連結
4. 高親油性ポリマーとの連結
5. 高親水性ポリマーとの連結
6. 両性ポリマーとの連結
7. 塩基性特性のポリマーとの連結
8. ボーダーライン酸性特性のポリマーとの連結
9. 長さの短いポリマーとの連結−生体吸着増大のため
10. バックボーン長さの長いポリマーとの連結−生体吸着抑制のため
11. 短鎖脂肪族アルコール部分(<C6)との連結
12. 長鎖脂肪族部分(>C6〜C14)との連結
13. 極長鎖脂肪族部分(>C14)との連結
14. テレケリックポリマーおよび非テレケリックポリマーポリマーとの連結
15. 芳香族非生理活性アルコールとの連結
16. 小型アミンとの連結(非加水分解可能生成物)
17. 中型アミンとの連結
18. 大型アミン(長い半減期)との連結
19. 膨潤性/ヒドロゲルポリマーとの連結
20. 感熱性ポリマーとの連結
21. 電気活性ポリマーとの連結
22. 時間分解リンカー媒介ポリマーとの連結
23. pH反応性ポリマー連結
24. 光反応性ポリマー連結
25. 表面&マトリックス支援吸着可能ポリマー連結
26. カイネチックポリマー連結
27. 生体透過性ポリマーとの連結
28. 細胞吸収ポリマー連結
29. 熱力学的平衡(往復)ポリマー連結
30. アイソタクチック、シンジオタクチックおよびアタクチックな性質のホモおよびヘテロポリマーとの連結
インビトロでのPQQ放出動力学
PQQ放出動力学は、ヒト血漿または純粋なエステラーゼを用いてインビトロで試験することができ、これは将来の臨床研究のための結果をもたらす。確立されたHPLC方法はもまた、この研究のために用いることができる。
【0197】
実施例8:プロベネシドと組み合わせたPQQは、腎毒性を低減する
方法:
PQQ/プロベネシド/PQQ類似物−ラット
実施日時:2005年1月11日〜1月13日
用量PQQ:25mg/kg
PQQ類似物:総重量によってではなく、PQQ当量(25mg/kg)に基づく。
【0198】
容量プロベネシド:100mg/kg IP(20mg/ml溶液の5ml/kg)
処方物:
PQQ:
使用直前に2%NaHCO3から作られる:
1) 2グラムのNaHCO3にDD H2Oを加えて100mlとする=2%NaHCO3
2) 75mgPQQ+15ml 2%NaHCO3=5mgPQQ/ml
プロベネシド:
1) 600mgプロベネシドを秤量
2) 27mlのDD H2O添加
3) 4〜5滴の19.1N NaOHOH
4) 撹拌
5) 1.0N KH2PO4でpHを7.4にする
(1.36グラムのリン酸二水素カリウムにDD H2Oを加えて10mlとする)
(0.5ml〜1.2mlを必要とする)
6) DD H2Oを加えて30mlとする
使用直前にft
PQQ類似物:生理食塩水中で10mg/ml溶液とする。類似物81は、溶液100%にならなかったことに留意のこと。
【0199】
実験:5雌SD/群
群1:対照−無処置
群2:5ml PQQ/kgIV
群3:5mlプロベネシド/kg IP;5ml PQQ IV 30分間、6.0時間後にプロベネシド反復
群4:PVA−PQQ−80、1.9mgPQQ/ml、13.2ml/kg
群5:PVA−PQQ−81、2.2mgPQQ/ml、11.3ml/kg
48時間後動物を殺し、BUN、クレアチニン、血清リン用に血を抜き取り、重量および組織病理学用に腎臓を取り出す。
【0200】
【表3A−1】
【0201】
【表3A−2】
【0202】
【表3A−3】
【0203】
【表3A−4】
【0204】
【表3A−5】
【0205】
【表3A−6】
【0206】
【表3A−7】
【0207】
【表3A−8】
【0208】
【表3A−9】
結論:
図27は、単独投与のPQQと対照とが有意に異なることを示している。しかしながら、プロベネシドと組み合わせたPQQ(または類似物80および81)は、対照と比較して有意には異ならなかった。従って、プロベネシドと組み合わせて投与されたPQQは、腎毒性を低減するのに有用である。
【0209】
実施例9:PQQは、内皮細胞単層におけるアクチンニトロ化およびTNF誘発性障壁不全を防止する
小さな肺動脈は、肺動脈圧および血管抵抗の主要な決定因子である。それらの内皮は、肺抵抗、リモデリング、および血液流動性を調整する。肺微細血管内皮細胞培養に対するPQQの効果を研究して、血管損傷および血管損傷関連疾患の処置するためのPQQの使用の利点を決定した。
【0210】
材料/試薬:
すべての試薬は、特に言及されない限り、Sigma Chemical Company(St.Louis,MO)から入手した。
【0211】
肺微細血管内皮細胞培養
ラットの肺微細血管内皮細胞(RLMVEC)およびウシの肺微細血管内皮細胞(BLMVEC)を、第4パッセージで入手した(Vec Technologies,Rensselaer,NY)。調製物は、Vec Technologiesによって、以下のことにより純粋な個体群であると確認された:(i)位相差顕微鏡で評価した場合の特徴的な「敷石状」外観、(ii)ファクターVIII関連抗原の存在、(iii)アシル化低密度リポタンパク質の取り込みおよび(iv)平滑筋アクチンの不在(間接免疫蛍光法)。すべての研究について、RLMVECおよびBLMVECは両方とも、BLMVECについては、20%胎仔ウシ血清(Hyclone,Hyclone Laboratories,Logan,Utah)、15μg/mlEndothelial Cell Growth Supplement(Upstate Biotechnology,Lake Placid,New York)および1%非必須アミノ酸(Gibco−BRL)を補ったDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM;Gibco,Grand Island,NY)を含有する培地中で、RLMVECについては、10%胎仔ウシ血清(VEC Technologies)を含有するMCDB−131完全培地中で、4〜12パッセージ培養された。両方の細胞系は、37℃で5%CO2+湿潤空気中で維持した。融合性肺微細血管内皮細胞単層(PMEM)には、3日〜4日かかった2ないし3回の個体群倍加で達した。
【0212】
処置
TNF処置:10μg/mlの原液中のEscherichia coli(Calbiochem−Novabiochme,La Jolla,CA)からの高度に精製された組み換えヒトTNFαを用いた。標準のリムルスアッセイによって決定した場合、内毒素レベルは、TNFα 0.1ng/μg未満であった。本発明者らはかねて、TNFαを0.75時間煮沸するにより、内毒素汚染を全く示さない本発明者らの系(14)におけるTNFの効果が阻止されることを示した。PMEMは、100ng/mlにおいてTNFαで処理した。なぜならば、用量応答研究によりこの用量が透過性増大を一貫して引き起こすことが示されるからである。
【0213】
抗ONOO−剤:用いたONOO−インヒビターは、尿酸塩(5FM)およびPQQ(1μM)であった。本発明者らはかねて、尿酸塩が、TNF誘発性ONOO−をスカベンジングし、かつ内皮における細胞生育能力に全く影響しないことを示している(30)。PQQは、推定されるビタミンおよび超酸化物アニオンラジカルスカベンジャーである。細胞は、尿酸塩またはPQQ単独で処理するか、あるいは尿酸塩、PQQおよびTNFで同時処理した。
【0214】
処置媒体:すべての研究について、TNF、PQQ、尿酸塩およびすべての対応する対照を用いたPMEMのインキュベーションを、フェノールの潜在的な抗酸化効果を回避するために10%FBSを補ったフェノールフリーDMEM(pf−DMEM,Gibco BRL)により実施した。
【0215】
内皮透過性アッセイ
Nucleopore Track−Etch Polycarbonate Membrane(直径13mm、孔サイズ0.8mm;Corning Costar,Cambridge,MA)を、ゼラチン(ウシ皮膚からのタイプB;Sigma)で被覆し、修正型Boyden化学走性チャンバ(内径9mm;Adaps,Dedham,MA)にMFセメントno.1(Mllipore,Bedford,MA)でマウントし、かねて記載されたように、12.0〜24.0時間紫外光で滅菌した(8,16)。BLMVECまたはRLMVEC(DMEM 0.50ml中の1.5×105)を、ゼラチン化膜上で培養し、3〜5日以内での融合に到達させた(37℃、5%CO2)。
【0216】
静水圧および膠質浸透圧の勾配のない経内皮輸送の研究の実験装置は、記載されている(16)。簡単に言えば、このシステムは、上記のように内皮細胞単層でライニングされた微孔質ポリカーボネート膜によって分離された2つのコンパートメントから成る。luminal(上部)コンパートメント(0.7ml)を、abluminal(下部)コンパートメント(25ml)中に吊り下げた。下部コンパートメントを、完全混合のために連続的に撹拌した。システム全体を、37℃の一定温度で、水槽中で保持した。両方のコンパートメント中の流体高さは、対流を排除するために同じであった。
【0217】
内皮透過性は、Pattersonら(29)により記載されたオリジナル技術の筆者らの改造(16)を用いて、Evans Blue−labeledアルブミンのクリアランスレートにより特性決定した。0.5%ウシ血清アルブミンおよび20mM(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)バッファを含有するHanks’Blaransed Salt Solution(HBSS,Gibco−BRL)を含有するバッファ溶液を単層の両側で用いた。luminalコンパートメントバッファは、容量700μl中の0.057%エバンスブルー色素の最終濃度でラベルした。luminalコンパートメントおよびabluminalコンパートメント中の遊離Evans Blueの吸光度は、バッファ中のエバンスブルーの全吸光度の1%未満であった。各研究の最初に、luminalコンパートメント試料を、そのコンパートメントの初期吸光度を決定するために、1:100に希釈した。abluminalコンパートメント試料(300ml)を、5分毎に60分間採取した。試料の吸光度は、SpectraMax Plusマイクロプレート分光光度計(Molecular Devices,Sunnyvale,California)により620nmで測定した。エバンスブルーでラベルしたアルブミンのクリアランスレートは、対照および実験群について、10分〜60分の間で最小自乗線形回帰により求めた。
【0218】
免疫蛍光および共焦点顕微鏡
細胞調製および抗体処置:RLMVECかBLMVEC(1×104/0.20mlの培地)を、35mm培養皿内の18mmカバースリップ上で培養し、37℃で2時間インキュベートして付着させ、次に、付加的な2mlの培地中で融合まで生育させた(16)。PMEMを、示されるように処置し、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS,Gibco BRL)で洗い、3.7%ホルムアルデヒド溶液により間室温(RT)で20分間固定し、次いで、DPBS中の1%Triton X−100によりRTで5分間透過化処理した。細胞をDPBSで洗い、次に、10%正常ヤギ血清(Ngs,Gibco BRL)中で、RTで5分間ブロックした。PMEMを、10%NGS中で1:1000希釈したマウスモノクロナール抗ニトロチロシン抗体(クローン1A6,Upstate)でインキュベートした。二次抗体、Alexa Fluor488ラベルしたヤギ抗マウスIgG(Molecular Probes,Eugene,OR)を10%NGS中に1:1000希釈で添加し、RTで1時間インキュベートし、次に十分に洗った。全βアクチンをマウスモノクロナール抗βアクチン抗体(クローンAC74)で、続いて、Alexa Fluor568ラベルしたヤギ抗マウスIgG(Molecular Probes)染色した。
【0219】
蛍光画像のための定量化手順は、以下の通りである。PMEMは、Leica Confocal System TCS SP2(Leica MicrosystemsInc.,Exton,PA)を用いて共焦点顕微鏡により視覚化および定量化される。1つの研究あたり4の処置群および2つの処置時間がある4つの別々な研究があった。すべてのフィールドを、インタクトな内皮単層内の別の領域への顕微鏡ステージの無作為移動により選んだ。処置群あたり6つの全フィールドを、フィールドあたり1つの画像によって分析した。全処置群を、最大蛍光を有するスライドによって決定されるように、ノイズ、輝度およびコントラストについて設定を最初に調整することによって蛍光強度について正規化した(16)。
【0220】
抗ニトロチロシン抗体の特異性は、抗体−抗原競合によって確認した。10:1のモル比のニトロチロシン抗体とニトロチロシン抗原とを、PMEMへの適用前に、10%NGS中で30分間、37℃でプレインキュベートした。カバースリップを、清浄なガラススライド上にPermafluor封入剤(Thermo Shandon,Pittsburgh PA)でマウントした。PMEMを、位相、光、および蛍光検出のために装備されたOlympus IX70倒立顕微鏡(Olympus America,Inc.,Melville,NY)上に設置されたSpot RTカラーカメラ(Diagnostic Instruments,Inc.,SterlingHeights,MI)で視覚化した。例示のためのイメージは、倍率100倍、露出時間8秒でキャプチャし、イメージをSpot RTイメージングソフトウェア(Diagnostic Instruments,Inc.)にダウンロードした(16)。
【0221】
統計学
一元配置分散分析(ANOVA)を用いて処置間の値を比較した。もし処置間に有意性が確認されれば、事後多重比較検定をBonferrone(パラメトリック−等分散)またはDuncan(ノンパラメトリック−不等分散)検定と共に実施して、群間の有意差を決定した(37)。適切な時に、データを平滑化するため、log10変換を実行した。各PMEMウェルおよびフラスコは、単一の実験を表す。全データを、平均±SEMとして報告する。優位性は、p<0.05であった。全研究において、1群あたり試料は5〜10である。
【0222】
結論
本発明者らは、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)が、ニトロ化β−アクチン(NO2−β−アクチン)に関連する肺微細血管内皮単層(PMEM)の透過性においてペルオキシ亜硝酸塩(ONOO−)依存性増大を引き起こすという仮説を検定した。PMEMの透過性は、エバンスブルーでラベルしたアルブミンのクリアランスレートにより評価した。NO2−β−アクチンの細胞区画化は、β−アクチン−免疫蛍光を伴うニトロチロシン−免疫蛍光の共焦点局在を示すことにより表示した。TNF(100ng/ml)を用いたPMEMの0.5時間および4.0時間のインキュベーションは、アルブミンの透過性増大という結果になった。0.5時間の時点で、β−アクチン−免疫蛍光を伴うニトロチロシン−免疫蛍光の共焦点局在があった。TNF誘発性のβ−アクチン−免疫蛍光を伴うニトロチロシン−免疫蛍光の共焦点局在および透過性の増大は、抗ONOO−薬剤の尿酸塩(5μM)およびPQQ(1μM)により防止された。このデータは、NO2−β−アクチンの生成に関連するONOO−依存性の障壁不全をTNFが引き起こすことを示す。
【0223】
本発明者らの研究は、PQQが、(i)TNF−誘発性のニトロチロシン増大、(ii)ニトロチロシンとβ−アクチンとの共存、および(iii)肺微細血管内皮単層の透過性増大を防止することをさらに示す。従って、PQQは、TNF誘発性のONOO−依存性の内皮細胞不全を防止する。従って、PQQおよび尿酸塩を用いる戦略の開発により、血管損傷および血管損傷関連疾患の療法のための新たな方向が提供される。
【0224】
実施例10:PQQによる神経保護
ピロロキノリンキノン(PQQ)は、遊離した水溶性の陰イオン化合物であり、これは、潜在的なフリーラジカルスカベンジャー特性を有する酸化還元サイクリング平面オルトキノンである。メチルアルコールおよびアルコールデヒドロゲナーゼのようなPQQ依存性酵素は補欠分子団としてPQQに結合し、また、電子を受け入れ、それらの電子を、ミトコンドリア呼吸鎖における電子キャリアとして機能するユビキノンに提供するチトクロムcも含む。
【0225】
PQQは、N−メチル−D−アスパルテート(NMDA)誘発性の電気応答を抑制することが実証されており、インビトロでNMDA媒介性神経毒損傷に対して神経保護性であJensenら(Neuroscience 62(1994)399−406)は、低酸素30分前に腹腔内投与したPQQが、生後7日の仔ラットにおけるインビボの脳低酸素/虚血(低酸素と組み合わせた両側頚動脈結紮)モデルにおいて神経行動学的副作用を引き起こすことなく、梗塞サイズを低減することを示した。しかしながら、全身的に与えられたPQQが、神経行動学的結果を改善し、成体動物における限局的脳虚血モデルに起因する梗塞脳を守ることができるか否かを決定するために実施された以前の研究は皆無である。従って、成体ラットにおける神経行動学的測定および梗塞サイズ測定に続き2時間の可逆的な中大脳動脈閉塞(rMCAo)により評価されるような神経保護をもたらす際のPQQの有効性を評価した。梗塞体積に対するPQQについての用量応答曲線も特性決定した。
【0226】
材料および方法
動物モデル
すべての動物実験手順は、実験用動物の管理と使用に関する指針に従い、Institutional Animal Care and Use Committeeにより承認された。雄性Sprague−Dawleyラット(300〜350g、Taconic,Germantown,NY)を、50mg/kg硫酸アトロピン(Sigma,St.Louis,MO)を筋肉内注射で与えた後に、密閉チャンバ内でイソフルランで麻酔した。次に、それらのラットに気管挿入し、30%O2/残分N2中の2.0%イソフルランにより機械的に通気した。血液ガス分析により、PaCO2が30mm〜45mmHg、PaO2が90mmHg以上であることが立証された。体温は、直腸プローブでモニタリングし、加熱パッドを用いて37.0℃〜37.5℃の間に維持した。側頭筋温度を、脳温度を反映するために用い、加熱ランプを用いて36.0℃〜37.0℃の間に維持した。圧力モニタリングおよび血液ガスサンプリングのために、1つの大腿部動脈にカニューレ挿入した。
【0227】
可逆的な中大脳動脈閉塞を、本発明者らの研究室で以前用いたように、Longら(Stroke20(1989)84−91)により記載されるように、実行した。4−0ナイロン腔内縫合糸を、外頚動脈動脈(ECA)を介して右内頚動脈(ICA)に導入した。総頚動脈およびICAを一時的にクリップ止めし、縫合糸をECA断端内に設置し、ICAに遠し、抵抗が感じられるまで〜20mm穏やかに進めた。縫合糸を適切な位置に2時間残し、次に回収した。PQQ(10mg/kg、Sigma,St.Louis,MO)を、リン酸緩衝生理食塩水に溶解し(10mM溶液)、1mlの容量を、虚血開始の直前または3時間後に、10、3、または1mg/kgの用量を送達するために頚静脈に注射した。ビヒクル処置した対照は、等容量のリン酸緩衝生理食塩水を受けた。動物がビヒクルで処置されたか、PQQ注射で処置されたかについて、研究者は知らされなかった。体温および脳温度は、動物が麻酔から完全に回復させられて、そのケージに戻されるまで、実験全体を通して維持した。72時間後、動物を殺し、脳を調べた。
【0228】
神経行動学的欠損スコアリング
神経行動学的欠損スコアリングは、Garciaら(Stroke26(1995)627−634)により記載された18ポイントスケールに基づいた。神経学的状態は、各ラットにおいて、虚血の24時間後に開始して、3日間、毎日記録した。各被験体は、概日リズムのどのような効果も回避するため、午後遅く試験した。神経行動学的欠損を評価す研究者は、ビヒクルが投与されたのか、またはPQQが投与されたのかについて知らされなかった。神経行動学的尺度は、以下の6つの試験から構成された:1)自発的活動(0〜3ポイント);2)四肢の動きの対称性(0〜3ポイント);3)前肢伸ばし(0〜3ポイント);4)クライミング(1〜3ポイント);5)身体自己受容性(1〜3ポイント)、および6)鼻毛接触応答(1〜3ポイント)。評価完了時に各ラットに与えられたスコアは、合計6つの個別試験の合計である。最小神経学的スコアは3であり、最大は18である。
【0229】
梗塞体積の測定
梗塞体積は、本発明者らの研究室で以前用いた(Neuroreport 11(2000)2675−2679)ように、塩化2,3,5−トリフェニルテトラゾリウム(TTC)(Sigma,St.Louis,MO)染色を用いて評価した。虚血の72時間後、ラットに120mgのペントバルビタールを注射した。次に脳を取り出し、2mmセクションに切った。スライスを、2%TTCを含有するペトリ皿中に30分間置き、どのスライスも底部に留まらないように周期的に撹拌し、次いで、10%ホルムアルデヒド中に入れた。未染色組織の測定面積(mm2)(SigmaScan Pro,SPSSソフトウェア)を合計したものに、2mmスライス厚さを掛けて、損傷体積を算出した。
【0230】
統計解析
神経行動学的スコアの統計的評価は、繰り返し測定ANOVA(Statistica,StatSoft Inc.)により行った。梗塞体積の評価のために、処置群と対応するビヒクル群との間で比較を行った。非正規分布の体積の評価のため、ノンパラメトリックMann−Whitney検定を用いた。差は、P<0.05で統計的に有意であると見なされた。
【0231】
結果
10mg/kgのPQQによる神経保護
PQQは最初、Jensenらによる以前の報告(Neuroscience 62(1994)399−406)に基づき10mg/kgの用量で研究した。梗塞体積は、ビヒクル処置した動物においては319mm3(SD:96.2;n=7)であり、虚血開始直前に10mg/kgのPQQを与えた動物では50mm3(SD:39;n=8)で有意に少なかった(p<0.01;Mann−Whitney検定)。梗塞体積は、ビヒクル処置した動物において362mm3(SD:110;n=5)であり、虚血開始3時間後にPQQを与えた動物では67mm3(SD:53;n=8)で有意に少なかった(p<0.05;Mann−Whitney検定)。これらのデータを、図31Aおよび図32に示す。行動スコアもまた、図33Aおよび図33Bに示されるように、虚血開始直前および虚血開始3時間後にPQQが与えられた場合、対応するビヒクル処置対照と比較してPQQ処置群においてより良好であった。
【0232】
3mg/kgおよび1mg/kgにおけるPQQによる神経保護
虚血開始3時間後に与えた10mg/kgのPQQが、虚血と同時のPQQ投与と同程度に効果的と思われたので、虚血開始3時間後の異なる容量の効果を試験した。なぜならば、虚血開始後の3時間は、処置のための治療機会を提供するからである(Stroke 30(1999)2752−2758)。虚血開始3時間後に3mg/kgでPQQを与えた場合、梗塞体積は、ビヒクル処置した動物においては406mm3(SD:114;n=10)であり、PQQ処置した動物では120mm3(SD:47;n=8)で有意に少なかった(p<0.01;Mann−Whitney検定;図2A、図3)。この用量では、行動スコアもまた、ビヒクル群と比較してPQQ群においてより良好であった(図33C)。用量応答曲線が図31Bに示してある。
【0233】
虚血3時間後に1mg/kgでPQQを与えた場合、梗塞体積は、ビヒクル処置した動物においては316mm3(SD:132;n=6)であり、PQQ処置した動物では328mm3(SD:112;n=6)であり、有意差は全く見られなかった(p>0.05;Mann−Whitney検定;図2A)。行動スコアもまた、ビヒクル処置群と比較してPQQ処置群において有意に異ならなかった(図33D)。
【0234】
図32は、正常な偽対照動物、ビヒクル処置動物、PQQ10mg/kg処置動物およびPQQ3mg/kg処置動物の4つの代表的スライドを示す。
【0235】
考察
本研究は、成体ラットにおける限局的可逆性中大脳虚血/再灌流の広く用いられるモデルにおける梗塞体積および神経行動学的結果の両方で評価したPQQの神経保護を調べる最初の研究である。データは、PQQが虚血前または再灌流の1時間後に与えられた場合に行動面および梗塞体積面での神経保護をもたらす上で効果的であること、および、PQQによりもたらされる神経保護が容量関連であることを実証している。
【0236】
PQQのいくつかの特性は、神経保護に含まれ得るであろう。第1に、PQQはペルオキシ亜硝酸塩形成を抑制し得る。虚血性発作における酸化窒素の神経毒性は、ペルオキシ亜硝酸塩へのその変換に依存すると提案されてきた。フリーラジカルスカベンジャーおよびキノプロテイン酵素にとっての補因子として、PQQは、ペルオキシ亜硝酸塩形成を抑制し得る。第2に、PQQは、NMDA受容体酸化還元部位を酸化し得る。NMDA受容体の病的活性化は、虚血を含む様々なCNS疾患に関係してきた。第3に、PQQは、ミトコンドリア脂質およびタンパク質を保護する際の効果的な酸化防止剤として機能することができ、さらに、酸化損傷からミトコンドリア機能を保護することが明らかにされている。
【0237】
要約すると、本発明者らは、2時間のrMCAoの開始3時間後に単一用量として与えられた場合に、PQQは、梗塞サイズを低減し、行動スコアを改善することを見出した。これらの条件の下で、PQQは、3mg/kgおよび10mg/kgで有効であるが、1mg/kgでは有効ではない。従って、様々な系において必須栄養素、酸化防止剤および酸化還元モジュレーターとして働くPQQは、効果的な神経保護をもたらし、成人発作の治療における潜在的な使用を有する新しい種類の薬剤である。
【0238】
実施例11:ラットにおけるPQQの薬物動態学
プロベネシドがある場合およびプロベネシドがない場合のPQQに対する反応を評価するため、ラット血漿中の経時的なPQQ濃度測定に着手した。群A(ラット1〜3)には、20mgPQQ/kgをi.v.で投与した。群B(ラット4〜6)には、100mgプロベネシド/kgをi.p.で投与し、30分後に20mgPQQ/kgをi.v.で投与した。投与の0分後、5分後、および30分後、ならびに投与の1時間後、2時間後、4時間後、および6時間後に、群Aおよび群B両方のラットから血液を採取した。
【0239】
試料調製:
ラット血液:100μlラット血液+60μlヘパリン処理生理食塩水を、遠心分離;60μl血漿を試験管に定量的にピペットで取り、分析まで−80℃で冷凍した。
【0240】
較正試料:ラット血漿を生理食塩水で希釈し(80:60,v/v)、これを用いて1組の較正曲線試料を、PQQ標準を31.25〜2500ng/mlラット血漿の範囲で加えることにより準備した。図34参照。
【0241】
結果:
群Aおよび群Bのラットの各々についてのラット血漿中PQQ濃度の結果は、以下の図35および表4に示される。ラット血漿試料は、2段階抽出によって調製し、HPLC分析前に2〜100倍に希釈した。
【0242】
【表4】
図36は、群Aおよび群Bにおける各時点について平均値の血漿PQQ濃度−時間曲線の比較を例示している。
【0243】
実施例12.インビボにおける酸化的ストレス防止/低減のためのPQQおよびプロベネシドの使用
雄性Sprague−Dawleyラットを、虚血か虚血−再灌流の前に、ピロロキノリンキノン(PQQ)、プロベネシド、または両方で無作為に処理した。PQQ(1〜3mg/kg)および/またはプロベネシド(100mg/kg)を、左前下行冠動脈(LAD)閉塞の30分前に腹腔内注射(前処置)により、または再灌流開始時に静脈注射(処置)により与えた。ラットを、左心室(LV)血行力学モニタリングしつつ、15分間または30分間のLAD閉塞および30分間、1時間または2時間の再灌流に供した。プロベネシドと組み合わせたPQQは、これらのラットモデルにおいて梗塞サイズを減少させた。プロベネシドと組み合わせたPQQは、虚血誘発性の心臓機能不全を防止し、30分〜2時間の再灌流後、より高いLV収縮期圧、LV発生圧力、LV(+)dP/dtおよびより低いLV(−)dP/dtを有した。クレアチンキナーゼ(CK)産生は、プロベネシドと組み合わせたPQQにより低減された。従って、プロベネシドと組み合わせたPQQは、虚血および虚血−再灌流のラットモデルにおいて用量に関連して心筋梗塞サイズを低減し心機能を改善するのに非常に効果的である。
【0244】
統計分析
すべての結果を、平均±SEMとして示す。2つの処置群(前処置および処置)を、複数群比較のための回帰式を用いて一元分散分析(ANOVA)を使用して正常対照群と比較した。3つの群の間での閉塞および再灌流期間中の死亡率の差を、χ二乗検定により評価した。VFを有するラットのパーセンテージを、フィッシャーの正確確率検定により評価した。全ての計算を、Minitabバージョン7.2(Minitab Statistical Software)またはPrimor of Biostatistics:The programバージョン3.03(McGraw−Hill)の一般線形モデル手順を使用して行った。統計的有意性を、p<0.05に設定した。
【0245】
虚血および虚血−再灌流モデル
PQQをビヒクル(2% NaHCO3)に溶解した。腹膜内(i.p.)または静脈内(i.v.)のいずれかで与えられた体積は、1mlであった。全ての対照を1mlのビヒクルにより処置した。1〜3mg/kgのPQQを、15分間か30分間の虚血の30分前にi.v.で与え、続いて30分間、1時間または2時間の再灌流を行った。
【0246】
600mgのプロベネシドを、27mlのddH2Oに溶解した。4〜5滴の19.1N NaOHを添加し、pHを、1.0N KH2PO4で7.4に調節した。プロベネシドを、15分間か30分間の虚血の30分前に与え、続いて30分間、1時間または2時間の再灌流を行った。
【0247】
麻酔(ケタミン80mg/kg、キシラジン4mg/kg体重、腹膜内)導入後、気管切開術を実施し、動物をHarvard Rodent Respirator(モデル683、Harvard Apparatus)において通気した。梗塞サイズ測定ラットを、再灌流のない2時間の近位左前下行(LAD)冠動脈結紮に供した。虚血に再流動が続くこのモデルは、以前に記載された通りの虚血−再灌流(Sievers REら,Magn Reson Med 1989;10:172−81)を使用した。このモデルにおいて、可逆冠動脈係蹄オクルーダーを、正中線胸骨切開術により近位LAD冠動脈周辺に配置した。次いで、ラットを15分間または30分間のLAD閉塞および30分間、60分間または120分の再流動に供した。加えて、これらのラットは、血行力学的測定値を記録された。4F Millarカテーテルを、右頸動脈を通して左心室(LV)に挿入した。20分間の平衡化後、心拍数(HR)、収縮期圧(LVSP)、拡張末期期圧(LVEDP)、LV(+)dP/dtmax、LV(−)dP/dtmaxを、MacLab/4S(Milford,MA)を使用してモニタリングした。LV発生圧力(LVDP)を、LVEDPをLVSPから差し引くことにより算出した。
【0248】
ベースラインでは、対照群、前処置群および投与群の間で心拍数、LVSP、LVEDP、LV(+)dP/dt、およびLV(−)dP/dtに有意差は皆無であった。前処置によって与えられるかまたは処置として与えられるかにかかわらず、プロベネシドと組み合わせたPQQは、虚血誘発性の心臓機能不全を防止し、図5〜9に示されるように、30分間、1時間または2時間の再灌流後、より高いLVSP、LVDP、LV(+)dP/dt、およびより低いLV(−)dP/dtを有した。(*<0.05対Student−Newman−Keuls検定を用いたANOVAによる以前刊行されたI/R(対照)データ。Zhura.,Jouranal of Cardiovascular Pharmacology and Theapeutics;11(2):119−128(2006))および図37〜図41。
【0249】
【表5】
【0250】
【表6】
【0251】
【表7】
【0252】
【表8】
【0253】
【表9】
梗塞サイズ
虚血−再灌流ラットモデルを用い、ラットを、17分間または30分間の左前下降冠動脈結紮および2時間の再灌流に供し、梗塞サイズを、以前に記載された通りに測定した(Sievers REら,Magn Reson Med 1989;10:172−81、Zhu B−Qら,J Am Coll Cardiol 1997;30:1878−85)。心臓を、2時間の虚血期間の終わりに切り出した。次いで、切片を、生存可能な心筋が赤レンガ色に着色されるまで塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)の1%溶液中で10〜15分間インキュベートした。
【0254】
モデル2において、2時間の再灌流後、LADを再閉塞し、そして、フタロシアニン色素(Engelhard Cooperation,Louiseville,KY)をLV腔に注射し、通常に灌流された心筋を青色に染色した。次いで、心臓を切り出し、過剰な色素をすすぎ洗いし、そして頂部から基部に向かって横断的にスライスして2mm厚の切片にした。切片を、上記の通りにTTC中でインキュベートした。梗塞を起こした心筋は、TTCで染色できない。次いで、組織切片を、10%ホルマリン溶液中で固定し、計量した。各横断スライスの両面のカラーディジタル画像を、顕微鏡(Stereo Zoom 6 Photo,Leica)に接続したビデオカメラ(Leica DC 300F)を使用して得た。青に染色された組織(非虚血性)、赤に染色された組織(虚血性であるが、非梗塞性)および染色されていない組織(梗塞性)を示す領域を、各色画像上で輪郭を描き、NIH Image 1.59(国立衛生研究所,Bethesda,MD)を使用して盲検様式で測定した。それぞれの面で、梗塞関連組織を表すLV面積の割合(2つの画像の平均)にその切片の重量を掛けることにより、梗塞関連組織の絶対重量を決定した。各心臓についての梗塞サイズを、以下のように表現した:
【0255】
【数3】
次いで、危険領域のパーセンテージとしての梗塞サイズを、以下の通り計算した:
【0256】
【数4】
虚血モデル(モデル1)では、PQQ後の梗塞サイズ(梗塞量/LV量、フタロシアニン青色色素は注射されていない)は、対照よりも小さかった(図13)。モデル2における実験の第1セットにおいて、虚血は17分間であり、その後、2時間の再灌流が行われ、梗塞サイズ(梗塞量/危険領域、梗塞量/LV量)は、20mg/kgのPQQでの前処置によって減少した(図14)。モデル2の実験の第2セットにおいて、虚血は30分間であり、その後、2時間の再灌流が行われ、15mg/kgのPQQでの前処置または処置のいずれかの後での梗塞サイズは、対照よりも小さかった(図15)。
【0257】
図42および図43は、PQQとプロベネシドとの組み合わせが、危険領域の百分率および左心室量の百分率の両方としての梗塞サイズを減少させることを示す。図44は、PQQとプロベネシドとの組み合わせが、クレアチンキナーゼの増加を減少させたことを示す。従って、PQQとクレアチンキナーゼとの組み合わせは、特に心臓の病理に関連するインビボにおける酸化性ストレスの防止および低減に効果的である。以下の表10〜15は、PQQ投与の毒性をより完全に例示する。
【0258】
【表10】
【0259】
【表11】
【0260】
【表12−1】
【0261】
【表12−2】
【0262】
【表13−1】
【0263】
【表13−2】
(表14 病理学)
生理食塩水 対照
1−5 正常な組織学的構造
100mgプロベネシド
6−10 正常な組織学的構造
10mgPQQ/kg
11−15 正常な組織学的構造
20mgPQQ/kg
16−20 細管が若干拡張
40mgPQQ/kg
21 非常に重篤な皮質細管上皮外傷
全面的な細管上皮壊死(近位および遠位細管上皮)
糸球体および集合管は存続
22 #21に同じ
23 軽度の外傷、5%壊死細管
24 #21に同じ
25 #21に同じ
100mgプロベネシド/kg、10mg PQQ/kg
26−30 正常な組織学的構造
100mgプロベネシド/kg、10mg PQQ/kg
31−35 16−20と同様に、細管が若干拡張
100mgプロベネシド/kg、10mg PQQ/kg
36−40 本質的に#21に同じ
イヌを用いた予備的研究におけるプロベネシドと併用または併用しないPQQ投与の毒性学研究を以下の表15に示す。
【0264】
【表15】
イヌ1357:注入毒性無;2日目および3日目に重篤な外傷;用量がMTDを十分上回ると思われたため3日目に屠殺;臨床所感は、もう1日も持たないであろうと思われた。
【0265】
イヌ1475:処置1時間後に嘔吐および悪心(注入毒性);その後は完全に正常と思われた。
【0266】
虚血−再灌流についてラットにおけるプロベネシドを用いた処置の結果を以下に示す。第1の注射が、虚血の30分後のプロベネシドおよびPQQまたはNSであることに留意されたい。第2の注射は、再灌流の1時間のプロベネシドである。P値は、PQQ群対対照群の場合、2試料t検定によるものである。
【0267】
【表16−1】
【0268】
【表16−2】
均等物
当業者は、本明細書に記載される特定の手順に対する多数の均等物を認識するか、または慣例的実験法に過ぎないものを使用してこれを確認することが可能である。このような均等物は、本発明の範囲内にあると考えられ、特許請求の範囲によりカバーされる。様々な置換、変更、および改変は、特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に対して行われ得る。他の態様、利点、および改変は、本発明の範囲内である。本出願全体にわたって引用される全ての参照文献、発行特許、および公開された特許出願の内容は、参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0269】
【図1】図1は、PQQでの前処置による、低酸素後に生存可能な成体マウス心筋細胞の増加を示す棒グラフである。
【図2】図2は、PQQ保護が10μMの5−ヒドロキシデカン酸(ミトコンドリアKATPチャネルインヒビター)により阻害されないことを示す棒グラフである。
【図3】図3は、虚血前のPQQ処置が左心室発生圧(LVDP)を保つことを示す折れ線グラフである。
【図4】図4は、虚血前のPQQ処置が左心室拡張末期圧(LVEDP)(左心室収縮期圧−左心室拡張末期圧)を保つことを示す折れ線グラフである。
【図5】図5は、左心室圧(LVDP)の正の最大一次導関数によって測定した場合の、虚血前のPQQ処置の効果を示す折れ線グラフである。
【図6】図6は、左心室圧(LVDP)の負の最大一次導関数によって測定した場合の、虚血前のPQQ処置の効果を示す折れ線グラフである。
【図7】図7は、冠動脈血流が、PQQ処置によって、対照と比較して有意に改善されることを示す折れ線グラフである。
【図8】図8は、示されるいくつかの濃度でのPQQを用いた2分間の前処置が、10nMと1μMとの間で次第に好ましい応答を有するが、毒性が10μMで発生することを示す棒グラフである。
【図9】図9は、PQQ前処置後の心筋梗塞サイズの変化を示す棒グラフである。10nMと1μMとの間では梗塞形成サイズが漸減するが、梗塞形成サイズは10μM PQQでは低減されない。
【図10】図10は、実験プロトコルのモデル1(2時間虚血)およびモデル2(虚血/再灌流)を示す概略図である。モデル2は、2つの別々の実験セット、セット1:(虚血17分/再灌流2時間)およびセット2:(虚血30分/再灌流2時間)を含んでいた。前処置ラットは、30分間の虚血の前にi.p.注射によってPQQを受けた。処置群において、PQQは、再灌流開始時にi.v.注射によって与えられた。対照ラットは、示される時間に、等体積のビヒクルを与えられた。矢印は、PQQ投与のタイミングを示す。i.p.=腹腔内;i.v.=静脈内;I=虚血;LAD=左前下行冠動脈。
【図11A】図11Aは、虚血/再灌流時のモデル2ラットにおける左心室収縮期圧(LVSP)を示す折れ線グラフである。PQQでの前処置(30分間の虚血の前のi.p.注射によるPQQ)かPQQでの処置(再灌流開始時のi.v.注射によるPQQ)が、2時間の再灌流においてLVSPの増加をもたらした。B=ベースライン;I=虚血;R=再灌流。
【図11B】図11Bは、虚血/再灌流中のモデル2ラットにおける左心室発生圧(LVDP)を示す折れ線グラフである。PQQでの処置は、30分間の再灌流後および2時間の再灌流後の両方でLVDPを増加させた。PQQでの前処置は、2時間の再灌流においてLVDPを増加させた。B=ベースライン;I=虚血;R=再灌流。
【図12A】図12Aは、虚血/再灌流時のモデル2ラットにおける左心室(LV)(+)dP/dtを示す折れ線グラフである。PQQでの前処置かPQQでの処置が、2時間の再灌流においてLV(+)dP/dtを有意に増加させた。B=ベースライン;I=虚血;R=再灌流。
【図12B】図12Bは、虚血/再灌流時のモデル2ラットにおける左心室(LV)(−)dP/dtを示す折れ線グラフである。PQQでの前処置かPQQでの処置が、2時間の再灌流においてLV(−)dP/dtを有意に減少させた。B=ベースライン;I=虚血;R=再灌流。
【図13】図13は、モデル1(虚血のみ)における心筋梗塞サイズを示す棒グラフである。20mg/kgのPQQでの前処置は、梗塞サイズ(梗塞量/LV量%)を有意に減少させた。虚血は、再灌流のなしでの2時間のLAD結紮により誘発された。
【図14】図14は、モデル2(虚血/再灌流)における心筋梗塞サイズを示す棒グラフである。これらの実験において、虚血は、17分間のLAD閉塞、続いての2時間の還流(再灌流)により誘発された。20mg/kgのPQQでの前処置は、梗塞サイズを有意に減少させた(梗塞量/危険領域%または梗塞量/LV量%のいずれかで測定した場合)。
【図15】図15は、モデル2(虚血/再灌流)における付加的な実験の心筋梗塞サイズを示す棒グラフである。これらの実験において、30分間の虚血後に、2時間の再灌流が続いた。15mg/kgのPQQでの前処置が15mg/kgのPQQでの処置が、梗塞サイズを有意に減少させた(梗塞量/危険領域%または梗塞量/LV量%のいずれかで測定した場合)。P値は、それぞれのI/R梗塞サイズ測定を指す。
【図16】図16は、i.p.注射によって、示された範囲のPQQ用量で前処置された5群のラットの梗塞サイズに対する異なる用量のPQQでの前処置の効果を示す折れ線グラフである。梗塞サイズとPQQの用量との間には強い負の相関が存在した。
【図17A】図17Aは、モデル1およびモデル2双方からのデータを組み合わせた際の、ラット1匹あたりの心室性細動(VF)の平均エピソードを示す棒グラフである。15〜20mg/kgのPQQでの前処置は、ラット1匹あたりのVFの平均エピソードを有意に減少させた。分析は、一元分散分析(ANOVA)により行った。
【図17B】図17Bは、モデル1およびモデル2からの久美合わせたデータを使用している、VFを有するラットのパーセンテージを示す棒グラフである。15〜20mg/kgのPQQでの前処置または15〜20mg/kgのPQQでの処置は、VFを有するラットのパーセンテージを有意に低下させた。分析をフィッシャーの正確確率検定によって行った。
【図18A】図18Aは、30分間のLAD閉塞、続いて2時間の再灌流に供したLVの前部セグメントからの心筋のMDAレベルを示す折れ線グラフである。15mg/kgのPQQでの前処置は、虚血心筋におけるMDAを有意に減少させた。I/Rおよび処置に供したラットとそうでないラット(対照)との差は、二元分散分析によって有意であった。偽=全研究期間について閉塞のないLAD冠動脈単離に供したラット。
【図18B】図18Bは、LVの後部セグメント(非虚血性)からの心筋のMDAレベルを示す折れ線グラフである。15mg/kgのPQQでの前処置も、この非虚血性の離れた心筋におけるMDAを減少させた。
【図19】図19は、以下の条件下でラット心臓から単離されたミトコンドリアの呼吸制御比を示す棒グラフである:(i)対照:3時間のペントバルビタール麻酔、n=4、(ii)PQQ処置:3mg/kg、20分間の平衡化期間、30分間の虚血、PQQ注射、2時間の再灌流、n=5;および(iii)虚血/再灌流:20分間の平衡化期間、30分間の虚血、続いて2時間の再灌流、n=3。
【図20A】図20Aは、PQQ連結PVAの合成機構を示す概略図である。
【図20B】図20Bは、1つのPQQ分子を有するPVA単位を示す概略図である。
【図20C】図20Cは、複数のPQQ分子を有するPVA分子を示す概略図である。
【図21】図21は、蛍光検出器を用いたPQQの保持時間を示す。
【図22】図22は、水中のPQQの吸収スペクトルを示す。
【図23】図23は、PQQ連結PVAのGPCスペクトルを示す。
【図24】図24は、蛍光検出器を用いたPQQのGPCスペクトルを示す。
【図25A】図25Aは、以下のUV吸収スペクトルを示す:(A)10.19分間の保持時間を有するPQQ連結PVA(40K分子量)。
【図25B】図25Bは、以下のUV吸収スペクトルを示す:(B)13.67分間の保持時間を有するPQQ連結PVA(10K分子量)。
【図25C】図25Cは、以下のUV吸収スペクトルを示す:(C)PQQ残分。
【図26】図26は、8.45ppmおよび7.25ppmにおける芳香族ピークならびに3.84ppm、1.93ppmおよび1.50ppmにおける脂肪族ピークの積分面積に基づき、ローディングレベルは、約1〜1.5(±0.4)(PVA分子鎖あたりPQQ単位)であった。ロードダンプレベルは、連結生成物において約4(±2)wt%PQQである。
【図27】図27は、対照マウス、PQQ単独で処置したマウス、プロベネシドと組み合わせたPQQで処置したマウス、およびPVAと組み合わせたPQQで処置したマウスにおける腎臓の肉眼的病理学の写真。
【図28】図28は、抗ニトロチロシン免疫細胞学的特異性ならびにTNF誘導性ニトロチロシン増大に対する尿酸塩およびPQQの効果を示す、モノクロナール抗ニトロチロシンで免疫染色されたPMEMのニトロチロシン蛍光の代表的な顕微鏡写真(ウシ細胞)である。3−ニトロチロシンを用いた10:1の抗原:抗体比での30分間の抗体の前保温後に、同じ抗体で免疫染色したPMEMの顕微鏡写真。0.5時間後ないし4時間後のラットおよびウシ双方の対照、尿酸塩、PQQおよびTNF処置PMEMから得られたニトロチロシン蛍光の共焦点ヒストグラム分析(N=4,処置ごとに6回のサンプリング)。統計学的な差は、Kruskal−Wallisの順位による一元配置分散分析を用い、続いてDunnの方法を用いる多重比較により決定される。*=対照群と異なる#=それぞれのTNF群と異なる
【図29A】図29A〜B。尿酸塩およびPQQは、ニトロチロシンおよびPMEM中のβ−アクチンとのTNF誘発性共存を防止する。0.5時間後(A)および4.0時間後(B)の対照、PQQ、尿酸塩およびTNF処置PMEMの共焦点顕微鏡写真(ウシ細胞)を表す。ニトロチロシンは、抗ニトロチロシンで免疫染色されており緑色蛍光として現れry。β−アクチンは、抗β−アクチンで免疫染色されており赤色蛍光として現れる。組み合わされた赤色および緑色の顕微鏡写真の結果として生じる色変化は、共存が消磁ている場合には黄色として現れる(挿入図:矢印)。合計4つの調製物が、各処置および時点についてラットおよびウシPMEM双方から生成された。
【図29B】図29A〜B。尿酸塩およびPQQは、ニトロチロシンおよびPMEM中のβ−アクチンとのTNF誘発性共存を防止する。0.5時間後(A)および4.0時間後(B)の対照、PQQ、尿酸塩およびTNF処置PMEMの共焦点顕微鏡写真(ウシ細胞)を表す。ニトロチロシンは、抗ニトロチロシンで免疫染色されており緑色蛍光として現れry。β−アクチンは、抗β−アクチンで免疫染色されており赤色蛍光として現れる。組み合わされた赤色および緑色の顕微鏡写真の結果として生じる色変化は、共存が消磁ている場合には黄色として現れる(挿入図:矢印)。合計4つの調製物が、各処置および時点についてラットおよびウシPMEM双方から生成された。
【図30】図30。尿酸塩およびPQQは、TNF誘導性のPMEMにおけるアルブミンクリアランス速度の増加を防止する。組み合わされたデータのアルブミンクリアランス応答は、ラットおよびウシPMEMから得られた。処置は、4.0時間にわたる対照、尿酸塩、PQQおよびTNFである。統計学的な差は、Kruskal−Wallisの順位による一元配置分散分析を用い、続いてDunnの方法を用いる多重比較により決定される。*=対照群と異なる#=TNF群と異なる
【図31A】図31。PQQ10mg/kg、3mg/kgおよび1mg/kg(i.v.)を用いた処置の脳梗塞サイズに対する効果(31A)。虚血の直前(0時間、ビヒクルおよびPQQ10mg群)および3時間後(3時間、ビヒクルおよびPQQ10mg群)に投与されたPQQは、梗塞体積を有意に減少させた(p<0.05;Mann−Whitney検定)。虚血の3時間後に投与された場合、1mg/kg(3時間、ビヒクルPQQ1mg群)ではなく3mg/kg(3時間、ビヒクルPQQ3mg群)でのPQQが、梗塞体積を減少させた。3mg/kg群においては有意な処置効果がある(p<0.05;Mann−Whitney検定)が、1mg/kg群においては有意な効果はない(p>0.05;Mann−Whitney検定)。
【図31B】図31。PQQ10mg/kg、3mg/kgおよび1mg/kg(i.v.)を用いた処置の用量応答曲線(31B)。虚血の直前(0時間、ビヒクルおよびPQQ10mg群)および3時間後(3時間、ビヒクルおよびPQQ10mg群)に投与されたPQQは、梗塞体積を有意に減少させた(p<0.05;Mann−Whitney検定)。虚血の3時間後に投与された場合、1mg/kg(3時間、ビヒクルPQQ1mg群)ではなく3mg/kg(3時間、ビヒクルPQQ3mg群)でのPQQが、梗塞体積を減少させた。3mg/kg群においては有意な処置効果がある(p<0.05;Mann−Whitney検定)が、1mg/kg群においては有意な効果はない(p>0.05;Mann−Whitney検定)。
【図32】図32。正常な動物の切片標本(A);ビヒクル処置した動物の切片標本(B);PQQ10mg/kg処置(虚血後3時間)した動物の切片標本(C);PQQ3mg/kg処置した動物の切片標本(D)を表す。
【図33A】図33。PQQ10mg/kg、3mg/kgおよび1mg/kg(i.v.)を用いた処置の神経行動学的スコアに対する効果。虚血の直前(33A)および3時間後(33B)のPQQ10mg/kgを用いた処置は、24、48および72時間時点における神経行動学的スコアを改善するという結果になる。32A群および32B群双方において有意な処置効果がある(p<0.05;反復測定ANOVA)。虚血の3時間後のPQQ3mg/kgによる処置は、24、48および72時間時点における神経行動学的スコアを改善するという結果になる。3mg/kg群においては虚血の3時間後に与えられた場合に有意な処置効果がある(4C、p<0.05;反復測定ANOVA)が、1mg/kg群においては虚血の3時間後に与えられた場合に有意な処置効果はない(33D、p>0.05、反復測定ANOVA)。
【図33B】図33。PQQ10mg/kg、3mg/kgおよび1mg/kg(i.v.)を用いた処置の神経行動学的スコアに対する効果。虚血の直前(33A)および3時間後(33B)のPQQ10mg/kgを用いた処置は、24、48および72時間時点における神経行動学的スコアを改善するという結果になる。32A群および32B群双方において有意な処置効果がある(p<0.05;反復測定ANOVA)。虚血の3時間後のPQQ3mg/kgによる処置は、24、48および72時間時点における神経行動学的スコアを改善するという結果になる。3mg/kg群においては虚血の3時間後に与えられた場合に有意な処置効果がある(4C、p<0.05;反復測定ANOVA)が、1mg/kg群においては虚血の3時間後に与えられた場合に有意な処置効果はない(33D、p>0.05、反復測定ANOVA)。
【図33C】図33。PQQ10mg/kg、3mg/kgおよび1mg/kg(i.v.)を用いた処置の神経行動学的スコアに対する効果。虚血の直前(33A)および3時間後(33B)のPQQ10mg/kgを用いた処置は、24、48および72時間時点における神経行動学的スコアを改善するという結果になる。32A群および32B群双方において有意な処置効果がある(p<0.05;反復測定ANOVA)。虚血の3時間後のPQQ3mg/kgによる処置は、24、48および72時間時点における神経行動学的スコアを改善するという結果になる。3mg/kg群においては虚血の3時間後に与えられた場合に有意な処置効果がある(4C、p<0.05;反復測定ANOVA)が、1mg/kg群においては虚血の3時間後に与えられた場合に有意な処置効果はない(33D、p>0.05、反復測定ANOVA)。
【図33D】図33。PQQ10mg/kg、3mg/kgおよび1mg/kg(i.v.)を用いた処置の神経行動学的スコアに対する効果。虚血の直前(33A)および3時間後(33B)のPQQ10mg/kgを用いた処置は、24、48および72時間時点における神経行動学的スコアを改善するという結果になる。32A群および32B群双方において有意な処置効果がある(p<0.05;反復測定ANOVA)。虚血の3時間後のPQQ3mg/kgによる処置は、24、48および72時間時点における神経行動学的スコアを改善するという結果になる。3mg/kg群においては虚血の3時間後に与えられた場合に有意な処置効果がある(4C、p<0.05;反復測定ANOVA)が、1mg/kg群においては虚血の3時間後に与えられた場合に有意な処置効果はない(33D、p>0.05、反復測定ANOVA)。
【図34】図34は、2ステップ抽出で処理され、HPLC蛍光検出器(360/460nm)で求めたラット血漿におけるPQQ(31.25〜2500ng/ml)の較正曲線を示す。
【図35】図35は、A群(PQQ単独)およびB群(PQQ+プロベネシド)のラットについてのラット血漿PQQ濃度を示す。
【図36】図36は、A群(20mgPQQ/kg、i.v.)およびB群(100mgプロベネシド/kg、i.p.で前処置し、続いて20mgPQQ/kg、i.v.)のラット(n=3)における血漿QQ濃度−時間曲線を示す。
【図37】図37は、100mg/kgのプロベネシドと2または3mg/kgのPQQとの併用による処置をしたまたはしない、ベースライン、15分間の閉塞、30分間の閉塞、30分間の再灌流、60分間の再灌流および120分間の再灌流におけるラットの左心室収縮期圧(LVSP)を示すグラフである。
【図38】図38は、100mg/kgのプロベネシドと2または3mg/kgのPQQとの併用による処置をしたまたはしない、ベースライン、15分間の閉塞、30分間の閉塞、30分間の再灌流、60分間の再灌流および120分間の再灌流におけるラットの左心室拡張末期圧(LVEDP)をすグラフである。
【図39】図39は、100mg/kgのプロベネシドと2または3mg/kgのPQQとの併用による処置をしたまたはしない、ベースライン、15分間の閉塞、30分間の閉塞、30分間の再灌流、60分間の再灌流および120分間の再灌流におけるラットの左心室発生圧力(LVDP)を示すグラフである。
【図40】図40は、100mg/kgのプロベネシドと2または3mg/kgのPQQとの併用による処置をしたまたはしない、ベースライン、15分間の閉塞、30分間の閉塞、30分間の再灌流、60分間の再灌流および120分間の再灌流におけるラットの左心室の正の最大一次導関数(LV+dp/dt)を示すグラフである。
【図41】図41は、100mg/kgのプロベネシドと2または3mg/kgのPQQとの併用による処置をしたまたはしない、ベースライン、15分間の閉塞、30分間の閉塞、30分間の再灌流、60分間の再灌流および120分間の再灌流におけるラットの左心室の負の最大一次導関数(LV−dp/dt)を示すグラフである。
【図42】図42は、100mg/kgのプロベネシドと2または3mg/kgのPQQとの併用による処置をしたまたはしないラットにおける梗塞サイズ百分率を示す棒グラフである。
【図43】図43は、100mg/kgのプロベネシドと2または3mg/kgのPQQとの併用による処置をしたまたはしないラットにおける、梗塞サイズ/危険領域百分率および梗塞サイズ/左心室量を示す棒グラフである。
【図44】図44は、100mg/kgのプロベネシドと2または3mg/kgのPQQとの併用による処置をしたまたはしないラットにおける、クレアチンキナーゼの増加を示す棒グラフである。
【図45】図45は、2.50ppmでラベルされた溶媒としてd6−DMSOを用いた、受け取られたPQQおよびPQQ/PVA連結物のプロトンNMRスペクトルである。
【図46】図46は、PQQ/PVA連結物のプロトンH−NMRスペクトルである(4.79ppmで内部基準としてラベルされた溶媒としてD2Oを用いる)。
【図47】図47は、PVA粉末のATRモードFT−IRスペクトルである。
【図48】図48は、PVA粉末のATRモードFT−IRスペクトルである。
【図49】図49は、PVA/PQQ連結物粉末のATRモードFT−IRスペクトルである。
【図50A】図50は、2つのPVA粉末のXRDスペクトルである。(A)PQQ/PVA連結物。(B)PVA粉末。(D)PQQ粉末。(D)スチール基板。
【図50B】図50は、2つのPVA粉末のXRDスペクトルである。(A)PQQ/PVA連結物。(B)PVA粉末。(D)PQQ粉末。(D)スチール基板。
【図50C】図50は、2つのPVA粉末のXRDスペクトルである。(A)PQQ/PVA連結物。(B)PVA粉末。(D)PQQ粉末。(D)スチール基板。
【図50D】図50は、2つのPVA粉末のXRDスペクトルである。(A)PQQ/PVA連結物。(B)PVA粉末。(D)PQQ粉末。(D)スチール基板。
【図51】図51は、HPLC−FLDを用いたPQQ(10〜1,000ng/ml)アッセイの標準較正曲線である。
【図52】図52は、PQQアッセイについてのHPLC−FLD法の量的限界(0.2ng/20μl)である。
【図53】図53は、PQQアッセイについてのHPLC−FLD法の検出限界(0.1ng/20μl)である。
【図54A】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54B】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54C】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54D】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54E】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54F】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54G】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54H】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54I】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54J】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54K】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54L】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54M】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54N】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54O】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54P】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54Q】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54R】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54S】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54T】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54U】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54V】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54W】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54X】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54Y】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54Z】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54AA】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54BB】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54CC】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54DD】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54EE】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54FF】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54GG】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54HH】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54II】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【図54JJ】図54A〜JJは、小分子量(SMW)PQQ連結物を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚血−再灌流損傷を防止、処置、または低減するための方法であって、それを必要としている被験体に、治療的に有効な量のピロロキノリンキノンを投与し、それによって該被験体の臓器および組織を、虚血性傷害により引き起こされる再灌流損傷から保護することを含む、方法。
【請求項2】
前記虚血−再灌流損傷が、心臓損傷である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ピロロキノリンキノンが、前記被験体の体重1kgあたり1mgと10mgとの間の量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ピロロキノリンキノンが、前記被験体の体重1kgあたり約3mgの量で投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ピロロキノリンキノンが、前記虚血性傷害の前に前記被験体に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ピロロキノリンキノンが、前記虚血性傷害の後に前記被験体に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ピロロキノリンキノンが、再灌流の開始前、開始時、または開始後に前記被験体に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記虚血−再灌流損傷が、発作である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記発作が、心臓発作の結果である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
治療的に有効な量のタモキシフェンを、それを必要とする被験体に投与することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ピロロキノリンキノンが、前記被験体の体重1kgあたり1mgと10mgとの間の量で投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記ピロロキノリンキノンが、前記虚血性傷害の前に前記被験体に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記ピロロキノリンキノンが、前記虚血性傷害の後に前記被験体に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記ピロロキノリンキノンが、再灌流の開始前、開始時、または開始後に前記被験体に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記虚血−再灌流損傷が、腎臓損傷である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記腎臓損傷が、腸虚血または胃腸管障害の結果である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ピロロキノリンキノンが、前記被験体の体重1kgあたり1mgと10mgとの間の量で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ピロロキノリンキノンが、前記虚血性傷害の前に前記被験体に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ピロロキノリンキノンが、前記虚血性傷害の後に前記被験体に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記ピロロキノリンキノンが、再灌流の開始前、開始時、または開始後に前記被験体に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
虚血−再灌流損傷を処置することを必要とする被験体における虚血−再灌流損傷を処置するための薬学的組成物であって、1つ以上のポリマーに連結されたピロロキノリンキノンの治療的に有効な量を含む、薬学的組成物。
【請求項22】
前記ポリマーが、ポリビニルアルコールである、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
前記ポリマーが、PEG−NH2である、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
虚血−再灌流損傷を処置することを必要とする被験体における虚血−再灌流損傷を処置するための薬学的組成物であって、治療的に有効な量のピロロキノリンキノンおよび腎臓保護剤を含む、薬学的組成物。
【請求項25】
前記腎臓保護剤が、プロベネシドである、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンが、1mg/kgと10mg/kgとの間であり、治療的に有効な用量のプロベネシドが、100mg/kgと200mg/kgとの間である、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
前記腎臓保護剤が、シラスタチンである、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
ピロロキノリンキノンが、1つ以上のポリマーに連結される、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記虚血−再灌流損傷が、発作損害である、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記虚血−再灌流損傷が、四肢において発生する、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
四肢損傷が、糖尿病の結果、または糖尿病関連障害である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記虚血−再灌流損傷が、肺で発生する、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
虚血−再灌流損傷を処置することを必要とする被験体における虚血−再灌流損傷を処置するための薬学的組成物であって、治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンおよびメトプロロールを含む、薬学的組成物。
【請求項34】
前記治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンが、1mg/kgと10mg/kgとの間である、請求項33に記載の薬学的組成物。
【請求項35】
前記治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンが、3mg/kgである、請求項34に記載の薬学的組成物。
【請求項36】
前記治療的に有効な用量のメトプロロールが、1mg/kgである、請求項35に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
前記虚血−再灌流損傷が、心筋硬塞である、請求項33に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
虚血性傷害に起因する損傷を処置または防止するためのキットであって、1つ以上の容器中に、治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンと、薬学的に許容されるキャリアと、該キットの使用説明書と、必要があれば、メトプロロール、プロベネシド、およびシラスタチンから成る群から選ばれる1つ以上の化合物と、を含む、キット。
【請求項39】
前記ピロロキノリンキノンが、1つ以上のポリマーに連結される、請求項38に記載のキット。
【請求項1】
虚血−再灌流損傷を防止、処置、または低減するための方法であって、それを必要としている被験体に、治療的に有効な量のピロロキノリンキノンを投与し、それによって該被験体の臓器および組織を、虚血性傷害により引き起こされる再灌流損傷から保護することを含む、方法。
【請求項2】
前記虚血−再灌流損傷が、心臓損傷である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ピロロキノリンキノンが、前記被験体の体重1kgあたり1mgと10mgとの間の量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ピロロキノリンキノンが、前記被験体の体重1kgあたり約3mgの量で投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ピロロキノリンキノンが、前記虚血性傷害の前に前記被験体に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ピロロキノリンキノンが、前記虚血性傷害の後に前記被験体に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ピロロキノリンキノンが、再灌流の開始前、開始時、または開始後に前記被験体に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記虚血−再灌流損傷が、発作である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記発作が、心臓発作の結果である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
治療的に有効な量のタモキシフェンを、それを必要とする被験体に投与することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ピロロキノリンキノンが、前記被験体の体重1kgあたり1mgと10mgとの間の量で投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記ピロロキノリンキノンが、前記虚血性傷害の前に前記被験体に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記ピロロキノリンキノンが、前記虚血性傷害の後に前記被験体に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記ピロロキノリンキノンが、再灌流の開始前、開始時、または開始後に前記被験体に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記虚血−再灌流損傷が、腎臓損傷である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記腎臓損傷が、腸虚血または胃腸管障害の結果である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ピロロキノリンキノンが、前記被験体の体重1kgあたり1mgと10mgとの間の量で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ピロロキノリンキノンが、前記虚血性傷害の前に前記被験体に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ピロロキノリンキノンが、前記虚血性傷害の後に前記被験体に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記ピロロキノリンキノンが、再灌流の開始前、開始時、または開始後に前記被験体に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
虚血−再灌流損傷を処置することを必要とする被験体における虚血−再灌流損傷を処置するための薬学的組成物であって、1つ以上のポリマーに連結されたピロロキノリンキノンの治療的に有効な量を含む、薬学的組成物。
【請求項22】
前記ポリマーが、ポリビニルアルコールである、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
前記ポリマーが、PEG−NH2である、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
虚血−再灌流損傷を処置することを必要とする被験体における虚血−再灌流損傷を処置するための薬学的組成物であって、治療的に有効な量のピロロキノリンキノンおよび腎臓保護剤を含む、薬学的組成物。
【請求項25】
前記腎臓保護剤が、プロベネシドである、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンが、1mg/kgと10mg/kgとの間であり、治療的に有効な用量のプロベネシドが、100mg/kgと200mg/kgとの間である、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
前記腎臓保護剤が、シラスタチンである、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
ピロロキノリンキノンが、1つ以上のポリマーに連結される、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記虚血−再灌流損傷が、発作損害である、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記虚血−再灌流損傷が、四肢において発生する、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
四肢損傷が、糖尿病の結果、または糖尿病関連障害である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記虚血−再灌流損傷が、肺で発生する、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
虚血−再灌流損傷を処置することを必要とする被験体における虚血−再灌流損傷を処置するための薬学的組成物であって、治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンおよびメトプロロールを含む、薬学的組成物。
【請求項34】
前記治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンが、1mg/kgと10mg/kgとの間である、請求項33に記載の薬学的組成物。
【請求項35】
前記治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンが、3mg/kgである、請求項34に記載の薬学的組成物。
【請求項36】
前記治療的に有効な用量のメトプロロールが、1mg/kgである、請求項35に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
前記虚血−再灌流損傷が、心筋硬塞である、請求項33に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
虚血性傷害に起因する損傷を処置または防止するためのキットであって、1つ以上の容器中に、治療的に有効な用量のピロロキノリンキノンと、薬学的に許容されるキャリアと、該キットの使用説明書と、必要があれば、メトプロロール、プロベネシド、およびシラスタチンから成る群から選ばれる1つ以上の化合物と、を含む、キット。
【請求項39】
前記ピロロキノリンキノンが、1つ以上のポリマーに連結される、請求項38に記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
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【図18A】
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【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
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【図25C】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29A】
【図29B】
【図30】
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【図37】
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【図39】
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【図41】
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【図54FF】
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【図13】
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【図54JJ】
【公表番号】特表2009−535410(P2009−535410A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509708(P2009−509708)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/010721
【国際公開番号】WO2007/130509
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(503441920)シーエルエフ メディカル テクノロジー アクセラレーション プログラム インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/010721
【国際公開番号】WO2007/130509
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(503441920)シーエルエフ メディカル テクノロジー アクセラレーション プログラム インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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