説明

ピロロキノリンキノン含有アルコール

【課題】機能が広く知られているPQQを含有するアルコール飲料、もしくは該飲料用に使用でき、該飲料の味や色を変化させないで栄養強化することができるPQQ含有組成物を提供する。
【解決手段】エタノールを3から99.9質量%とピロロキノリンキノンもしくはその塩を2から20mg/L含有する組成物、および該組成物からなるアルコール飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ピロロキノリンキノン(以下「PQQ」と称す)は新たな栄養補助食品として期待されている。本発明はPQQを含有する含アルコール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
PQQは新しいビタミンの可能性があることが提案されて(例えば、非特許文献1参照)注目を集めている。さらには細菌に限らず、真核生物のカビ、酵母に存在し、補酵素として重要な働きを行っている。また、PQQについて近年までに細胞の増殖促進作用、抗白内障作用、肝臓疾患予防治療作用、創傷治癒作用、抗アレルギ−作用、逆転写酵素阻害作用およびグリオキサラ−ゼI阻害作用−制癌作用など多くの生理活性が明らかにされている。このPQQ類は、有機化学的合成法(非特許文献2)および発酵法(特許文献1)などにより製造することが可能である。
【0003】
このPQQは栄養強化としての用途に注目されている(例えば特許文献2)。このPQQの提供方法としては固体食品としての用途である。
PQQに期待される機能としてアルコールの代謝物のアセトアルデヒドの酸化を促進することが報告されている(非特許文献2)。しかし、それに直接対応するPQQ含有食品はなかった。また、エタノールはPQQを製造する際に貧溶媒として使用されることが多く、溶解しないと考えられてきた。また、PQQは赤色に着色しており、添加による色調の変化も危惧されている。さらに、アルコール飲料は嗜好品であることから、味覚を変化させてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−218597号公報
【特許文献2】特開2005−080502号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】nature,vol422, 24April,3003, p832
【非特許文献2】JACS、第103巻、第5599〜5600頁(1981)
【非特許文献3】Pharmocology、37巻、第264〜267頁(1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題はPQQを含有するエタノールの組成物を提供することである。即ち、機能が広く知られているPQQを含有するアルコール飲料、もしくは該飲料用に使用でき、該飲料の味や色を変化させないで栄養強化することができるPQQ含有組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、PQQの濃度とエタノール濃度を限定することで上記の課題を解決できる条件を見出した。
【0008】
即ち本発明は以下の(1)〜(5)である。
(1)エタノールを3から99.9質量%とピロロキノリンキノンもしくはその塩を2から20mg/L含有する組成物。
(2)(1)に記載の組成物からなるアルコール飲料。
(3)ピロロキノリンキノンもしくはその塩を2から20mg/L含有するアルコール飲料。
(4)エタノールの含有量が3から50質量%である請求項3に記載のアルコール飲料。
(5)ピロロキノリンキノンもしくはその塩を2から20mg/L含有する蒸留酒。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、PQQで栄養強化したアルコール飲料を提供することができ、味、色、香りに関して影響せずに強化することができる。また、本発明の濃度では安定に保存することができる。さらには発酵酒でも微量でしかないPQQを強化できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の組成物は、エタノールを3から99.9質量%とPQQもしくはその塩(以下、総称して「PQQ類」と称す)を2から20mg/L含有する。PQQは式(1)で表される構造の化合物である。
【化1】

【0011】
本発明で使用可能な塩はナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、コリン塩等が挙げられるが、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩またはアンモニウム塩である。式(1)の化合物はトリカルボン酸であることから、1〜3個の1価カチオンから成る塩を使用できる。もちろん、その塩は1種類からのカチオンでなく混合であってもなんら問題がない。
【0012】
本発明で使用するPQQ類は特にこだわらないが、フリー体(PQQ)、ジナトリウム塩、トリナトリウム塩、トリカリウム塩およびジカリウム塩が手に入れやすく、使用しやすい。
【0013】
エタノールはPQQ類の貧溶媒として知られているが2から20mg/Lの範囲であれば、沈殿することなく使用できる。この範囲以下では機能性飲料としてやPQQ類添加のための溶液としては十分でない。添加量が多すぎる場合には析出をして安定に取り扱えないことがある。さらには着色をしたり、味覚の変化を生じる危険性がある。
【0014】
エタノールの濃度は3から99.9質量%が好ましい。本発明では使用する組成物はアルコール飲料として使用するのが好ましい。この時に飲料として提供される際のアルコール濃度は3から50質量%が好ましい。
【0015】
本発明の組成物は、エタノールを含有する液体、例えばアルコール飲料に、PQQ類を固体または溶液の形で2から20mg/Lの範囲になるように添加することで作ることができる。
本発明で使用可能なアルコール飲料に特に制限はない。より具体的なアルコール飲料の例を示すと焼酎、ジン、ウォッカ、ウイスキー、ブランデー、テキーラ、ラム、リキュール、ワイン、ビール、清酒等の直接飲料として提供されるものに添加でき、または、蒸留により高濃度になった99.7%以上のエタノールに添加し、それをアルコール飲料に混合することで使用することもできる。当然、カクテルのように後で混合する使用でも問題がない。より好ましくは蒸留酒である。
【0016】
本発明の組成物の保存は室温もしくはそれ以下の温度で使用されることが好ましい。もちろん熱燗のように短時間加熱して飲料にすることにはなんら問題がない。
【実施例】
【0017】
以下実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
尚、PQQ類の含有量は以下の方法で分析した。
(PQQ分析)
装置: 島津製作所、高速液体クロマトグラフィー、LC-20A
カラム:YMC-Pack ODS-TMS(5μm)、150x4.6mm I.D.
測定温度:40℃
検出:260nmにおける吸光度
溶離液:100mM CH3COOH/100mM CH3COONH4 (30/70, pH5.1)
溶出速度:1.5mL/min
【0019】
<実施例1>
和光純薬製醸造エタノール99.5%に三菱ガス化学株式会社製PQQのジナトリウム塩を20mg/Lになるように加え、混合した。
固体は全て溶け、均一な溶液になった。室温で1週間保存したが析出物はなく、組成物は安定であった。着色もほとんどなかった。
【0020】
<実施例2>50%エタノール水溶液
蒸留酒のモデルとして以下の調合を行った。
和光純薬製醸造エタノールを使用して50%濃度のエタノール水溶液にした。この水溶液に三菱ガス化学株式会社製PQQのジナトリウム塩を20mg/Lになるように加え、混合した。固体は全て溶け、均一な溶液(組成物)になった。室温で保存したが析出物はなく、組成物は安定であった。着色もなかった。また、PQQ塩添加前に比べ、味に変化はなかった。
上記組成物中のPQQ含有量は保存前後で変化していなかった。
【0021】
<実施例3>ワインへの添加
実験にはサッポロワイン株式会社製ポレールうれしいワインスパークリング(ロゼ、酸化防止剤(亜硫酸塩)入り、アルコール分9%)を使用した。これに20mg/LになるようにPQQのジナトリウム塩を加えた。
PQQ塩添加前に比べ、色、味、香りに変化はなかった。
室温で保存したが析出物はなく、PQQ含有量は保存前後で変化していなかった。
【0022】
<実施例4>ビールへの添加
アサヒビール製ビールであるスーパードライを使用した。アルコール分5%である。これに20mg/LになるようにPQQのジナトリウム塩を加えた。
PQQ塩添加前に比べ、色、味、香りに変化はなかった。
【0023】
<比較例1>50%エタノール水溶液
蒸留酒のモデルとして以下の調合を行った。
和光純薬製醸造エタノールを使用して50%濃度のエタノール水溶液にした。
この水溶液中のPQQ類の含有量を高速液体クロマトグラフィーで分析した。PQQは検出限界(0.05mg/L)以下であった。
【0024】
<比較例2>ワイン
サッポロワイン株式会社製ポレールうれしいワインスパークリング(ロゼ、酸化防止剤(亜硫酸塩)入り、アルコール分9%)中のPQQ類の含有量を高速液体クロマトグラフィーで分析した。
PQQは検出限界(0.05mg/L)以下であった。
【0025】
<比較例3>50%エタノール水溶液
蒸留酒のモデルとして以下の調合を行った。
和光純薬製醸造エタノールを使用して50%濃度のエタノール水溶液にした。この水溶液にPQQのジナトリウム塩を400mg/Lになるように添加した。
溶液は赤く変色した。また、冷蔵庫保存すると赤色の固体が析出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールを3から99.9質量%とピロロキノリンキノンもしくはその塩を2から20mg/L含有する組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物からなるアルコール飲料。
【請求項3】
ピロロキノリンキノンもしくはその塩を2から20mg/L含有するアルコール飲料。
【請求項4】
エタノールの含有量が3から50質量%である請求項3に記載のアルコール飲料
【請求項5】
ピロロキノリンキノンもしくはその塩を2から20mg/L含有する蒸留酒。

【公開番号】特開2011−24476(P2011−24476A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173089(P2009−173089)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】