説明

ピン状フィン一体型ヒートシンクの製造方法及び製造装置

【課題】金型内の円滑な移動を妨げることなく、バリを生じさせないピン状フィン一体型ヒートシンクの製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】多数の孔12を有する成形ダイ13と、成形ダイ13上で金属材料を鍛造して各孔12によりピン状フィンを成形するパンチと、孔12内に挿入状態に収容され、鍛造時の圧力でピン状フィンの先端面を成形するとともに、成形後にピン状フィンを押して孔12から抜き出すエジェクタ−ピン15とを備え、孔12は、鍛造時の圧力で押込まれる金属材料によりピン状フィンを成形するフィン成形部23と、フィン成形部23の先端で内径を縮小するテーパ部22と、テーパ部22から延びる小径のエジェクタ−ピンスライド部24とからなり、エジェクタ−ピン15の先端部には、テーパ部22に面接触可能な逆円錐部31が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大規模集積回路(LSI)等の発熱を伴う電子部品の冷却に用いられるヒートシンクに関し、特に詳しくは、放熱のためのピン状フィンを一体に形成したピン状フィン一体型ヒートシンクの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路(LSI)等の発熱を伴う電子部品においては、電子部品を正常に動作させるために、熱を外部に放散させるヒートシンクが取り付けられる。このヒートシンクの素材としては、熱伝導率が高く、軽量で加工性の良いアルミニウムや銅が用いられる。
このようなヒートシンクとして、放熱のためのフィンをピン状に形成し、ベースとなる板状部に多数のピン状フィンを立設状態に設けたものがあり、その製造方法として、例えば特許文献1及び特許文献2に記載の方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、金属材料に加熱処理を行う加熱工程と、加熱処理後の金属材料を金型を用いて鍛造して目的の形状に成形する鍛造工程と、成形後の金属材料をエジェクターピンで金型の外方に押し出す押出工程とを備え、金型の内側に、鍛造工程時の圧力により金属材料を平板状に成形する凹部を設け、該凹部下面に鍛造工程時の圧力で金属材料を搾伸してピン状に成形する孔部を多数穿設し、鍛造工程時には、金型のすべての孔部に金型の外側からエジェクターピンを挿入し、当該エジェクターピンの外径を金型の孔部の内径よりも0.05mm小さくして、エジェクターピンの外周面と金型の孔部の内周面との間に隙間を画成する製造方法が開示されている。
【0004】
この製造方法によれば、常温では変形抵抗が大きい金属材料であっても、その変形抵抗を小さくして鍛造することができるので、フィンピッチを細かくすることや、大型のヒートシンクを製造することも可能となる。また、孔部にエジェクタ−ピンを挿入しているので、鍛造の圧力により金型が撓むのを抑止して、繰り返し使用による破損を防止でき、鍛造工程後の押出工程時には、エジェクターピンによってすべてのフィン部の外端面に均一な押し出し圧力を加えることができるので、目的の形状に成形された金属材料が歪む恐れが全くない、とされている。
【0005】
一方、特許文献2にも、成形ダイスとパンチとにより多数のピンを鍛造成形する技術が開示されており、この場合も成形ダイスの各孔内にノックアウトピン(エジェクタ−ピン)が挿入されている。また、ダイス孔詰まりとピン高さの不揃いの対策として、成形ダイスのベアリング部の表面粗度を0.05μm以下となし、かつダイスの出側部分に「逃がし」を与えてダイス内壁とピン材料の摩擦を極力ゼロに近づけるようにしている。また、冷間鍛造で先ず若干太めのピン直径にして、その後、苛性ソーダなどのアルカリ溶液で表面を溶解して所望のピン直径及びピン間隔のフィンを得る方法も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−129774号公報
【特許文献2】特許第2828234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献記載の方法においては、ダイの孔の中に挿入状態に設けられるエジェクタ−ピン又はノックアウトピンは、鍛造成形後のフィンを孔から押し出すものであり、孔内にスライド自在に収容されているので、孔とエジェクタ−ピンとの間に隙間が形成される。この隙間が大きいと、鍛造成形時に材料が隙間内に圧入して、形成されるフィンにバリが発生するおそれがあり、隙間が小さ過ぎると、エジェクタ−ピンの円滑なスライドが阻害されて、かじり等が発生する。特許文献1では、この隙間を0.05mm以下としているが、形成されるフィンのバリの解消には不十分であった。
【0008】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、金型内の円滑な移動を妨げることなく、バリを生じさせないピン状フィン一体型ヒートシンクの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のピン状フィン一体型ヒートシンクの製造装置は、板状部の一面側に多数のピン状フィンが立設されたピン状フィン一体型ヒートシンクを製造する装置であって、多数の孔を有する成形ダイと、該成形ダイ上で金属材料を鍛造して各孔により前記ピン状フィンを成形するパンチと、前記孔内に挿入状態に収容され、鍛造時の圧力で前記ピン状フィンの先端面を成形するとともに、成形後に前記ピン状フィンを押して前記孔から抜き出すエジェクタ−ピンとを備え、前記孔は、鍛造時の圧力で押込まれる金属材料により前記ピン状フィンを成形するフィン成形部と、該フィン成形部から延びて内径を縮小するテーパ部と、該テーパ部から延びる小径のエジェクタ−ピンスライド部とからなり、前記エジェクタ−ピンの先端部には、前記テーパ部に面接触可能な逆円錐部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の製造方法は、本発明の製造装置を用いてピン状フィン一体型ヒートシンクを製造する方法であって、金属材料を加熱する加熱工程と、加熱後の金属材料を前記成形ダイとパンチとにより鍛造して、成形ダイの孔内に金属材料の一部を押し込むことにより前記ピン状フィンを成形する鍛造工程と、成形後に前記孔内のピン状フィンをエジェクタ−ピンにより押して前記孔から抜き出す抜き出し工程とを備え、前記鍛造工程時の圧力により、前記エジェクタ−ピンの逆円錐部を前記孔のテーパ部に押し付けることを特徴とする。
【0011】
鍛造工程時には、成形ダイの孔内に挿入状態のエジェクタ−ピンの逆円錐部の先端面と孔のフィン成形部の内周面とにより、ピン状フィンの外形が成形される。このとき、エジェクタ−ピンには鍛造による圧力が作用し、その圧力によって逆円錐部が孔のテーパ部に押し付けられて、逆円錐部とテーパ部とは面接触して、隙間のない接触状態となる。これにより、孔の内周面とエジェクタ−ピンの外周面との間に金属材料が入り込むことがなく、バリの発生が防止される。また、逆円錐部とテーパ部とが密接して、この部分でバリの発生を防止するので、エジェクタ−ピンと孔のエジェクタ−ピンスライド部との間には比較的大きい隙間を形成することができ、エジェクタ−ピンのスライド移動を円滑にすることができる。
【0012】
本発明の製造装置において、前記逆円錐部は、縦断面の開き角度が10°〜45°であるとよい。
10°未満では、鍛造成形時の圧力で逆円錐部がテーパ部に食い込んで、抜き出し工程時に抜き出し難くなる。45°を超えると、逆円錐部の先端周縁部の角度が小さくなって損耗し易くなる。
【0013】
本発明の製造装置において、前記逆円錐部の先端に、その周縁から延びる円柱部が一体に形成されており、該円柱部の長さが0.5mm〜1.2mmであり、前記孔のフィン成形部の内径と前記円柱部の外径との差が0.01mm〜0.05mmであるものとしてもよい。
円柱部を形成することにより、逆円錐部の先端周縁部の厚さを確保して補強することができる。円柱部の長さが0.5mm未満ではその効果が期待できない。この円柱部を設ける場合、フィン成形部の孔の内径と円柱部の外径との差は、0.01mm未満では、隙間が小さ過ぎて円滑なスライドを阻害するおそれがあり、0.05mmを超えると鍛造成形時に金属材料が押し込まれてバリが発生する。ただし、円柱部の長さが1.2mmを超えると、その円滑な上下移動を確保するためには、フィン成形部の孔の内径との隙間を、0.05mmを超えて大きくする必要が生じ、バリ発生の原因となるので好ましくない。
【0014】
本発明の製造装置において、前記円柱部の外周面の表面粗さが最大高さRmaxで6.3μmより大きく、25μm以下であるとよい。
円柱部の外周面の表面粗さを上記の範囲に設定することにより、円柱部と孔との隙間への材料の侵入を確実に阻止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、鍛造成形時にエジェクタ−ピンの逆円錐部が成形ダイの孔のテーパ部に押し付けられ、これらが面接触して隙間のない接触状態となるので、形成されるフィンのバリの発生を防止することができる。また、この逆円錐部を有する先端部以外の部分では、成形ダイの孔との間に隙間を確保することができるので、エジェクタ−ピンの円滑な移動を妨げることがなく、安定した生産を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のピン状フィン一体型ヒートシンクの製造装置の一実施形態を示す要部の縦断面図である。
【図2】図1の製造装置の全体構成を示す縦断面図である。
【図3】本発明の製造方法により作製されるピン状フィン一体型ヒートシンクの例を示す斜視図である。
【図4】本発明の製造装置の他の実施形態を示す図1同様の要部の縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
ピン状フィン一体型ヒートシンク1は、図3に示すように、板状部2の一面側に多数のピン状フィン3が立設されている。図示例では、一列に並べたピン状フィン3が列ごとに半ピッチ分だけずれて千鳥配列となるように形成されている。これらの諸寸法は特に限定されるものではないが、板状部2は、例えば長さ133mm、幅77mm、厚さ5mmに形成され、ピン状フィン3は、外径が1.5mm〜2mm、長さが6mm〜8mm、ピッチが4mm〜5mmに形成される。材料としてはアルミニウム又はアルミニウム合金、銅又は銅合金などの熱伝導性に優れた金属材料が用いられる。
そして、板状部2においてピン状フィン3が形成されていない他面側の平面部に電子部品(図示略)が搭載され、その熱は板状部2を介して各ピン状フィン3に伝達され、これら板状部2及び各ピン状フィン3の外周面から放散される。
【0018】
そして、このピン状フィン一体型ヒートシンクを製造するための第1実施形態の製造装置11は、図1及び図2に示すように、図示略の鍛造プレスに、ピン状フィン3を形成するための多数の孔12を有する成形ダイ13と、この成形ダイ13上に載せた金属材料Mを鍛造するパンチ14と、成形ダイ13の孔12内に挿入状態に設けられるエジェクタ−ピン15とが備えられた構成とされている。
【0019】
成形ダイ13は、その上面部に、鍛造時に金属材料Mを板状部2に成形するための凹部21が形成され、その凹部21に連通して各孔12が上下貫通状態に形成されている。これら孔12は、長さ方向の途中にテーパ部22が形成されており、このテーパ部22より上方部分が金属材料Mをピン状フィン3に成形するためのフィン成形部23、テーパ部22より下方部分がエジェクタ−ピン15がスライドするエジェクターピンスライド部24とされ、フィン成形部23の内径の方がエジェクタ−ピンスライド部24の内径より大きく形成され、テーパ部22が内径を上方から下方に向けて漸次縮径することによりフィン成形部23とエジェクタ−ピンスライド部24とを連結状態としている。フィン成形部23は内径D1が1.5mm〜2.0mmに形成され、テーパ部22の縦断面の開き角度θは10°〜45°に形成される。
パンチ14は、成形ダイ13の上方から図示略の油圧機構により上下動され、成形ダイ13の凹部21内で金属材料Mを叩くように押圧する。
【0020】
一方、エジェクタ−ピン15は、その先端部に成形ダイ13のテーパ部22に面接触する逆円錐部31が一体に形成されている。この逆円錐部31は、上端が平坦面32に形成され、円錐部分の外周面はテーパ部22の内周面と同じ開き角度θに形成されている。また、この逆円錐部31に連結されるストレート部33は、成形ダイ13のエジェクタ−ピンスライド部24の内径D2より小さい外径D3に形成され、これらの間に0.05mm〜0.1mmの隙間Gが形成されている。エジェクタ−ピン15のストレート部33の外径D3は、逆円錐部31の最大外径に対して0.5mm〜1.0mm小さく設定され、例えば1.0mm以上とされる。これらエジェクタ−ピン15は、その下端部が一枚のプレート34に固定され、このプレート34を図示略の油圧機構等によって上下動させることにより、成形ダイ13の孔12内を一体にスライドする構成である。
なお、このエジェクタ−ピン15と成形ダイ13とは例えば工具鋼(SK材)により形成され、同材質によって形成されることにより、鍛造時の熱膨張を相互に阻害しないようにしている。
【0021】
次に、このように構成した製造装置11を用いて、ピン状フィン一体型ヒートシンク1を製造する方法について説明する。
この製造方法においては、金属材料Mを加熱する加熱工程と、加熱後の金属材料Mを成形ダイ13とパンチ14とにより鍛造して、成形ダイ13の孔12内に金属材料Mの一部を押し込むことによりピン状フィン3を成形する鍛造工程と、成形後に孔12内のピン状フィン3をエジェクタ−ピン15により押して孔12から抜き出す抜き出し工程とを備えている。以下、工程順に説明する。
【0022】
<加熱工程>
加熱工程では、金属材料Mの変形抵抗を減少させるため、金属材料の再結晶温度以上の温度まで加熱する。
【0023】
<鍛造工程>
成形ダイ13の各孔12の中にエジェクタ−ピン15を図1及び図2に示すように挿入状態としておき、エジェクタ−ピン15の逆円錐部31の上端の平坦面32と孔12のフィン成形部23の内周面との間でピン状フィン3を成形するための空間を形成しておく。そして、加熱された金属材料Mを成形ダイ13の凹部21に設置し、パンチ14により叩くように押圧すると、金属材料Mは成形ダイ13とパンチ14とにより押しつぶされて、凹部21内に広がりながら板状部2が成形されるとともに、その一部が孔12内に圧入され、エジェクタ−ピン15の逆円錐部31の上端の平坦面32まで達して押圧されることにより、この逆円錐部32の平坦面32と孔12のフィン成形部23の内周面とに囲まれた空間内に緊密に充填されてピン状フィン3の外形が成形される。このとき、逆円錐部31の上端の平坦面32には図1の矢印で示すように鍛造による圧力が作用し、その圧力が逆円錐部31の円錐面を介して成形ダイ13のテーパ部22に作用する。これら逆円錐部31とテーパ部22とは同じ開き角度θに設定されているので、両者が面接触状態に押圧される。このため、これらの間に隙間が生じることがなく、金属材料Mは逆円錐部31の平坦面32により確実に堰き止められ、逆円錐部31とテーパ部22との間に侵入することはない。
【0024】
<抜き出し工程>
このようにして板状部2及びピン状フィン3を成形した後、パンチ14を上方に退避させ、プレート34を上昇させると、このプレート34に固定された各エジェクタ−ピン15が孔12内を上昇して、フィン成形部23内のピン状フィン3を押し上げ、孔12から抜き出す。エジェクタ−ピン15は、そのストレート部33と孔12のスライド部24との間に比較的大きい隙間G1が形成されているので、この抜き出し工程時の上下移動が妨げられず、円滑に移動する。
【0025】
図4は第2実施形態の製造装置の要部を示している。
この製造装置は、全体構成は図2に示す第1実施形態と共通するが、エジェクタ−ピン15の逆円錐部31の先端に、その周縁から延びる円柱部41が一体に形成されている。この円柱部41は、その長さHが0.5mm〜1.2mmであり、成形ダイ13の孔12のフィン成形部23の内径D1に対して0.01mm〜0.05mm小さい外径D4に形成されている。また、円柱部41の外周面は、表面粗さが最大高さRmaxで6.3μmより大きく、25μm以下とされ、JIS B0031に規定される三角記号二つ(▽▽)に相当する区分に属している。このエジェクタ−ピン15においては、上端の平坦面32は円柱部41の上端に形成される。
【0026】
この円柱部41を設けたことにより、逆円錐部31の先端周縁部の厚さを確保して補強することができる。円柱部41の長さHが0.5mm未満ではその効果が期待できない。また、この円柱部42を設ける場合、孔12の内径D1と円柱部41の外径D4との差は、0.01mm未満では、隙間G2が小さ過ぎて円滑なスライドを阻害するおそれがあり、0.05mmを超えると鍛造成形時に金属材料Mが隙間G2に押し込まれてバリが発生する。ただし、円柱部41の長さが1.2mmを超えて大きくなると、その円滑な上下移動を確保するためにはフィン成形部23の内周面との間の隙間G2を0.05mmを超えて大きくする必要が生じ、バリ発生の原因となるので好ましくない。また、円柱部41の外周面の表面粗さを上記の範囲に設定することにより、円柱部41と孔12との隙間G2への材料の侵入を確実に阻止することができる。
【実施例】
【0027】
金属材料として無酸素銅を用い、ヒートシンクとしては、板状部は、長さ133mm、幅77mm、厚さ5mmとし、ピン状フィンは、外径が1.5mm、高さ8mm、ピッチが4mmで、一列に並べたピン状フィンが列ごとに半ピッチ分だけずれて千鳥配列としたものを成形した。
成形ダイの孔の内径が1.5mm、テーパ部及びエジェクタ−ピンの逆円錐部の開き角度を表1に示す数種類のものを作製した。比較例として、逆円錐部を有しない従来タイプ(開き角度θ=0°)の金型も作製した。これら金型の材料は工具鋼(SK材)を用いた。
金属材料のブロックを700℃に加熱した後、成形ダイに載せて鍛造した。鍛造時の圧力は100Pa〜150Paとした。同一の条件で繰り返し20回鍛造し、金型の動作確認、耐久性確認も行った。
これらの結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1に示される結果から明らかなように、No.1〜6のようにテーパ部を設けることにより、バリの発生は認められなかった。No.7の開き角度θ=0°の場合は、複数回の鍛造を繰り返したが、いずれもバリが発生したので、耐久的な試験は実施しなかった。逆円錐部の開き角度は10°〜45°で設計した場合(No.2〜5)に、エジェクタ−ピンを円滑に移動でき、逆円錐部の周縁部の損耗も認められなかった。
【0030】
次に、逆円錐部の開き角度が30°のものについて、その逆円錐部に円柱部を形成したエジェクタ−ピンを作製した。この場合、円柱部の長さ、外周面の表面粗さ(最大高さRmax)、フィン成形部との隙間を表2に示すように設定して、上記のヒートシンクを作製した。
【0031】
【表2】

【0032】
この表2に示される結果からわかるように、No.11〜14のように円柱部の長さが0.5mm〜1.2mmで、孔のフィン成形部の内径と円柱部の外径との差が0.01mm〜0.05mmであるものについては、バリの発生は認められなかった。円柱部の外周面の表面粗さもJISの三角記号で表せば▽▽が好ましい。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの記載に限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、成形ダイのフィン成形部に、その深さに応じて0°〜5°の抜きテーパを付けておき、このフィン成形部により形成されるフィンが、この抜きテーパの範囲で先端に向けてわずかに細くなるテーパ状に形成されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 ピン状フィン一体型ヒートシンク
2 板状部
3 ピン状フィン
11 製造装置
12 孔
13 成形ダイ
14 パンチ
15 エジェクタ−ピン
21 凹部
22 テーパ部
23 フィン成形部
24 エジェクタ−ピンスライド部
31 逆円錐部
32 平坦面
33 ストレート部
35 プレート
41 円柱部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部の一面側に多数のピン状フィンが立設されたピン状フィン一体型ヒートシンクを製造する装置であって、多数の孔を有する成形ダイと、該成形ダイ上で金属材料を鍛造して各孔により前記ピン状フィンを成形するパンチと、前記孔内に挿入状態に収容され、鍛造時の圧力で前記ピン状フィンの先端面を成形するとともに、成形後に前記ピン状フィンを押して前記孔から抜き出すエジェクタ−ピンとを備え、前記孔は、鍛造時の圧力で押込まれる金属材料により前記ピン状フィンを成形するフィン成形部と、該フィン成形部から延びて内径を縮小するテーパ部と、該テーパ部から延びる小径のエジェクタ−ピンスライド部とからなり、前記エジェクタ−ピンの先端部には、前記テーパ部に面接触可能な逆円錐部が形成されていることを特徴とするピン状フィン一体型ヒートシンクの製造装置。
【請求項2】
前記逆円錐部は、縦断面の開き角度が10°〜45°であることを特徴とする請求項1記載のピン状フィン一体型ヒートシンクの製造装置。
【請求項3】
前記逆円錐部の先端に、その周縁から延びる円柱部が一体に形成されており、該円柱部の長さが0.5mm〜1.2mmであり、前記孔のフィン成形部の内径と前記円柱部の外径との差が0.01mm〜0.05mmであることを特徴とする請求項1又は2記載のピン状フィン一体型ヒートシンクの製造装置。
【請求項4】
前記円柱部の外周面の表面粗さが最大高さRmaxで6.3μmより大きく、25μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のピン状フィン一体型ヒートシンクの製造装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載のピン状フィン一体型ヒートシンクの製造装置を用いてピン状フィン一体型ヒートシンクを製造する方法であって、金属材料を加熱する加熱工程と、加熱後の金属材料を前記成形ダイとパンチとにより鍛造して、成形ダイの孔内に金属材料の一部を押し込むことにより前記ピン状フィンを成形する鍛造工程と、成形後に前記孔内のピン状フィンをエジェクタ−ピンにより押して前記孔から抜き出す抜き出し工程とを備え、前記鍛造工程時の圧力により、前記エジェクタ−ピンの逆円錐部を前記孔のテーパ部に押し付けることを特徴とするピン状フィン一体型ヒートシンクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−199324(P2012−199324A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61465(P2011−61465)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000176822)三菱伸銅株式会社 (116)
【Fターム(参考)】