説明

ファイバ保護構造、レーザ加工装置及びファイバ保護方法

【課題】ファイバと保護部材との接着部分におけるファイバの発熱による影響を小さく抑えることが可能なファイバ保護構造を提供する。
【解決手段】第1接続部24において、ドープファイバDとスリーブ41との接着部分におけるファイバ発熱量は、第1伝送用ファイバF1とスリーブ41との接着部分におけるファイバ発熱量よりも大きく、ドープファイバD側の接着剤G2の長手方向幅T2は、第1伝送用ファイバF1側の接着剤G1の長手方向幅T1よりも小さい。また、第2接続部25においては、第2伝送用ファイバF2とスリーブ42との接着部分におけるファイバ発熱量は、ドープファイバDとスリーブ41との接着部分におけるファイバ発熱量よりも大きく、第2伝送用ファイバF2側の接着剤G4の長手方向幅T4は、ドープファイバD側の接着剤G3の長手方向幅T3よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバ端部同士の接続部における保護構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ファイバレーザ装置は、光増幅器等において例えば材質の異なる2つのファイバの端部同士の接続箇所を有している。例えば特許文献1に示す構成では、一対のファイバの端部同士が融着されており、その融着部分は保護部材(特許文献1においてスリーブ)にて保護されている。この保護部材は、各ファイバと接着剤にて接着固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−315596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなファイバ保護構造では、ファイバと保護部材との接着部分においてファイバの熱に関する問題が生じ、放熱されずに接着部分に熱がこもってしまうと、各ファイバの熱膨張率の違いからファイバ端部同士の融着部分における光損失が増加してしまったり、接着部分の接着剤が軟化して接着力が低下してしまうといった問題が生じていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ファイバと保護部材との接着部分におけるファイバの発熱による影響を小さく抑えることが可能なファイバ保護構造、レーザ加工装置及びファイバ保護方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、一対のファイバの端部同士が融着され、その融着部分に装着されて該融着部分を保護する保護部材が前記一対のファイバとそれぞれ接着剤にて接着されたファイバ保護構造であって、一方の前記ファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量は、他方の前記ファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量よりも大きく、そのファイバ発熱量が大きい方の接着部分に用いられた前記接着剤の長手方向幅は、他方の接着部分に用いられた前記接着剤の長手方向幅よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0007】
この発明では、一方のファイバと保護部材との接着部分及び他方のファイバと保護部材との接着部分で、ファイバの発熱量が大きい方の接着部分に用いられた接着剤の長手方向幅が、他方の接着部分の接着剤の長手方向幅よりも小さく設定される。これにより、ファイバの発熱量が大きい方の接着部分ではファイバ及び保護部材が接着剤で覆われる面積が小さくなるため、その接着部分で生じた熱を逃がしやすくすることができる。これにより、ファイバと保護部材との接着部分におけるファイバの発熱による影響を小さく抑えることが可能となる。
【0008】
また、ファイバの発熱量が小さい方の接着部分では接着剤の長手方向幅を増やすことで、保護部材と一対のファイバとの各接着部分の接着剤の長手方向幅の合計を減少させないように設定することができるため、一対のファイバに対する保護部材の固定強度(主に長手方向の力に耐える強度)を確保することができる。これにより、ファイバに対する保護部材の固定強度を確保しつつも、ファイバと保護部材との接着部分におけるファイバの発熱による影響を小さく抑えることが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のファイバ保護構造において、前記一対のファイバは、希土類元素を内部に含む光増幅用のドープファイバと、光を伝送する伝送用ファイバとからなることを特徴とする。
【0010】
この発明では、光増幅のパワーによってドープファイバ又は伝送用ファイバでの発熱が大きくなりやすいため、ファイバ発熱量が大きい方の接着部分に用いられた接着剤の長手方向幅が、他方の接着部分の接着剤の長手方向幅よりも小さくされることによる放熱効果をより効果的なものとすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のファイバ保護構造において、前記保護部材は、円筒状のスリーブであり、前記一対のファイバの端部同士の融着部分を覆うように外挿されていることを特徴とする。
【0012】
この発明では、ファイバの端部同士の融着部分がスリーブによって全周に亘って覆われるため、ファイバ同士の融着部分をより効果的に保護することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のファイバ保護構造において、前記一対のファイバは、石英又はガラスよりなり、前記保護部材は、ガラスよりなることを特徴とする。
【0013】
この発明では、ファイバと保護部材に熱膨張係数が近い材質が用いられるため、ファイバと保護部材の熱膨張の影響を小さく抑えることができる。例えば、ファイバの発熱によってファイバと保護部材が長手方向に熱膨張したときに、ファイバと保護部材との接着部分での位置ずれが生じにくく、これにより、接着不良の発生を抑えることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のファイバ保護構造において、前記保護部材は、金属材料よりなることを特徴とする。
この発明では、保護部材が放熱性に優れた金属材料よりなるため、ファイバで生じた熱を効率的に放出することが可能となる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のファイバ保護構造において、ファイバ発熱量が大きい方の前記接着部分に用いられた前記接着剤の長手方向幅は、他方の前記接着部分に用いられた前記接着剤の長手方向幅の1/2以下に設定されていることを特徴とする。
【0016】
この発明では、ファイバ発熱量が大きい方の接着部分の接着剤の長手方向幅を放熱に適した小さな幅としたときに、他方の接着剤の長手方向幅が、ファイバ発熱量が大きい方の接着剤の長手方向幅の2倍以上となる。このため、各接着剤の合計幅を大きくとることができ、ファイバに対する保護部材の固定強度をより好適に確保することが可能となる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、伝送用ファイバと希土類元素を内部に含む光増幅用のドープファイバの端部同士が融着され、その融着部分に装着されて該融着部分を保護する保護部材と前記伝送用ファイバ及び前記ドープファイバとがそれぞれ接着剤にて接着されたファイバ保護構造を有するレーザ加工装置であって、前記伝送用ファイバと前記ドープファイバのうち、一方のファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量は、他方のファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量よりも大きく、そのファイバ発熱量が大きい方の接着部分に用いられた前記接着剤の長手方向幅は、他方の接着部分に用いられた前記接着剤の長手方向幅よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0018】
この発明では、伝送用ファイバ側の接着部分とドープファイバ側の接着部分でファイバの発熱量が大きい方の接着剤の長手方向幅が、他方の接着部分の接着剤の長手方向幅よりも小さく設定される。これにより、ファイバの発熱量が大きい方の接着部分ではファイバ及び保護部材が接着剤で覆われる面積が小さくなるため、その接着部分で生じた熱を逃がしやすくすることができる。これにより、ファイバと保護部材との接着部分におけるファイバの発熱による影響を小さく抑えることが可能となる。
【0019】
また、ファイバの発熱量が小さい方の接着部分では接着剤の長手方向幅を増やすことで、保護部材と一対のファイバとの各接着部分の接着剤の長手方向幅の合計を減少させないように設定することができるため、ファイバに対する保護部材の固定強度(主に長手方向の力に耐える強度)を確保することができる。これにより、ファイバに対する保護部材の固定強度を確保しつつも、ファイバと保護部材との接着部分におけるファイバの発熱による影響を小さく抑えることが可能となる。
【0020】
また、ドープファイバと伝送用ファイバとの接続部では、光増幅のパワーによってドープファイバ又は伝送用ファイバでの発熱が大きくなりやすいため、ファイバ発熱量が大きい方の接着部分に用いられた接着剤の長手方向幅が、他方の接着部分の接着剤の長手方向幅よりも小さくされることによる放熱効果をより効果的なものとすることができる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のレーザ加工装置において、前記伝送用ファイバは、前記ドープファイバの入射側端部に接続され、種光源からの信号用レーザ光及び励起光源からの励起光を前記ドープファイバに伝送するものであり、前記ドープファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量は、前記伝送用ファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量よりも大きく、前記ドープファイバ側の前記接着剤の長手方向幅は、前記伝送用ファイバ側の前記接着剤の長手方向幅よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0022】
この発明では、ドープファイバとそのドープファイバの入射側に接続された伝送用ファイバとの接続部において、保護部材の固定強度を確保しつつも、ファイバと保護部材との接着部分におけるファイバの発熱による影響を小さく抑えることが可能となる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載のレーザ加工装置において、前記伝送用ファイバは、前記ドープファイバの出射側端部に接続され、前記ドープファイバにて増幅されたレーザ光を導入するものであり、前記伝送用ファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量は、前記ドープファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量よりも大きく、前記伝送用ファイバ側の前記接着剤の長手方向幅は、前記ドープファイバ側の前記接着剤の長手方向幅よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0024】
この発明では、ドープファイバとそのドープファイバの出射側に接続された伝送用ファイバとの接続部において、保護部材の固定強度を確保しつつも、ファイバと保護部材との接着部分におけるファイバの発熱による影響を小さく抑えることが可能となる。
【0025】
請求項10に記載の発明は、一対のファイバの端部同士を融着し、その融着部分に保護部材を装着し、該保護部材と前記一対のファイバとをそれぞれ接着剤にて接着するファイバ保護方法であって、一方の前記ファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量は、他方の前記ファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量よりも大きく、そのファイバ発熱量が大きい方の接着部分の前記接着剤の長手方向幅を、他方の接着部分の前記接着剤の長手方向幅よりも小さく設定することを特徴とする。
【0026】
この発明では、一方のファイバと保護部材との接着部分及び他方のファイバと保護部材との接着部分で、ファイバの発熱量が大きい方の接着部分に用いられた接着剤の長手方向幅が、他方の接着部分の接着剤の長手方向幅よりも小さく設定される。これにより、ファイバの発熱量が大きい方の接着部分ではファイバ及び保護部材が接着剤で覆われる面積が小さくなるため、その接着部分で生じた熱を逃がしやすくすることができる。これにより、ファイバと保護部材との接着部分におけるファイバの発熱による影響を小さく抑えることが可能となる。
【0027】
また、ファイバの発熱量が小さい方の接着部分では接着剤の長手方向幅を増やすことで、保護部材と一対のファイバとの各接着部分の接着剤の長手方向幅の合計を減少させないように設定することができるため、一対のファイバに対する保護部材の固定強度(主に長手方向の力に耐える強度)を確保することができる。これにより、ファイバに対する保護部材の固定強度を確保しつつも、ファイバと保護部材との接着部分におけるファイバの発熱による影響を小さく抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
従って、上記記載の発明によれば、ファイバと保護部材との接着部分におけるファイバの発熱による影響を小さく抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態のレーザ加工装置を示す概略構成図。
【図2】本実施形態のファイバ保護構造を示す模式図。
【図3】別例のファイバ保護構造を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態のレーザ加工装置10は、本体部11と、本体部11にファイバケーブル10a及び電気ケーブル(図示略)を介して接続されたヘッド部12とを備えている。
【0031】
本体部11は、信号用レーザ光を出力する種光源21を備えている。種光源21には、該種光源21から出力された信号用レーザ光を伝送する第1伝送用ファイバF1が接続されている。第1伝送用ファイバF1は例えば石英よりなり、光の伝送に適したシングルクラッドファイバよりなる。
【0032】
第1伝送用ファイバF1には、ファイバカプラ等よりなる光結合部22が設けられている。第1伝送用ファイバF1は、光結合部22を介して励起光源23(レーザダイオード)と接続されており、励起光源23から出力された励起光は、光結合部22を介して第1伝送用ファイバF1に入射されるようになっている。
【0033】
第1伝送用ファイバF1の後段には、第1接続部24にて第1伝送用ファイバF1と接続されたドープファイバDが配置されている。ドープファイバDは例えば石英よりなり、希土類元素である例えばイッテルビウム(Yb)を含む可撓性を有するダブルクラッドファイバであり、図示しないボビンに巻回されることで所要の長さの光路が確保されている。ドープファイバDは、その入射側端部が第1接続部24で第1伝送用ファイバF1と接続されるとともに、出射側端部が第2接続部25で後段の第2伝送用ファイバF2と接続されている。
【0034】
第2伝送用ファイバF2は例えば石英よりなり、光の伝送に適したシングルクラッドファイバよりなる。第2伝送用ファイバF2は、その出射側端部が前記ファイバケーブル10aの入射側端部と図示しないファイバコネクタを介して接続されており、第2伝送用ファイバF2から出力されたレーザ光がファイバケーブル10aを介してヘッド部12に伝送されるようになっている。
【0035】
ここで、上記した構成の光増幅の態様を説明する。
励起光源23から出力された励起光は、光結合部22を介して第1伝送用ファイバF1に入射され、その第1伝送用ファイバF1から第1接続部24を介してドープファイバDに入射する。すると、その励起光によってドープファイバD内の希土類元素が励起状態とされる。この状態で、種光源21から出力された信号用レーザ光が第1伝送用ファイバF1及び第1接続部24を介してドープファイバDに入射されると、その信号用レーザ光は、ドープファイバD内においてワークWへの印字が可能なレベルに増幅される。そして、その増幅光は、第2接続部25を介して第2伝送用ファイバF2に入射され、その第2伝送用ファイバF2からファイバケーブル10aを介してヘッド部12に伝送される。
【0036】
ヘッド部12は、ファイバケーブル10aから出射されるレーザ光Lを平行光あるいは収束光に絞るコリメータレンズ31を備えている。コリメータレンズ31を通じて絞られたレーザ光は、ヘッド部12に設けられた光走査機構32によって所要の方向に反射される。光走査機構32は、レーザ光を反射する2つのガルバノミラーを有して構成されるものであって、各ガルバノミラーの傾斜角度を変化させることにより、コリメータレンズ31を通じて絞られたレーザ光を所要の方向に走査させるものである。光走査機構32にて反射されたレーザ光は、集光レンズ33によりスポットレーザ光に絞り込まれる。そして、その絞り込まれたレーザ光LがワークW(加工対象)の表面上を走査することにより所望のマーキングが行われる。
【0037】
本体部11に設けられた制御部20は、ドライバ26を介して種光源21の出力を制御するとともに、ドライバ27を介して励起光源23の出力を制御する、また、制御部20は、ヘッド部12に設けられたドライバ34を介して光走査機構32の駆動を制御する。
【0038】
[ファイバ保護構造]
上記のように構成されたレーザ加工装置10において、第1接続部24における第1伝送用ファイバF1とドープファイバDとの融着部分の保護構造(保持構造)、及び第2接続部25におけるドープファイバDと第2伝送用ファイバF2との融着部分の保護構造(保持構造)について、図2に従って説明する。
【0039】
第1接続部24では、第1伝送用ファイバF1の出射側端部F1a(出射側端面)と、ドープファイバDの入射側端部Da(入射側端面)とが融着されており、その融着部分には、第1伝送用ファイバF1側とドープファイバD側とに跨って保護部材(保持部材)としての円筒状のガラスよりなるスリーブ41が外挿されている。尚、スリーブ41は、第1伝送用ファイバF1とドープファイバDとの融着後に装着されてもよいし、また、スリーブ41に第1伝送用ファイバF1の出射側端部F1a及びドープファイバDの入射側端部Daを挿入し、その出射側端部F1aと入射側端部Daとをスリーブ41内で融着するようにしてもよい。
【0040】
スリーブ41の入射側端部は、第1伝送用ファイバF1と第1の接着剤G1(熱可塑性樹脂)にて接着されている。接着剤G1は、スリーブ41と第1伝送用ファイバF1とに跨って塗布されるとともに、スリーブ41と第1伝送用ファイバF1の全周に亘って塗布されている。また、スリーブ41の出射側端部は、ドープファイバDと第2の接着剤G2(熱可塑性樹脂)にて接着されている。接着剤G2は、スリーブ41とドープファイバDとに跨って塗布されるとともに、スリーブ41とドープファイバDの全周に亘って塗布されている。このように、スリーブ41は、その長手方向両端部でファイバF1,Dとそれぞれ接着されているため、ファイバF1,D端部の融着部分から接着部分(接着剤G1,G2)までの間隔が確保され、これにより、ファイバF1,Dに加わる外力の影響を融着部分に伝わりにくくなっている。
【0041】
ここで、この第1接続部24では、光の増幅時において励起光が第1伝送用ファイバF1からドープファイバDに伝送され、ドープファイバD内の希土類元素が励起される。このとき、励起光は第1伝送用ファイバF1内においては伝搬されるだけであるため、その伝搬時の伝送用ファイバF1の発熱は極めて小さい。これに対し、ドープファイバDでは、その内部の希土類元素が励起光によって励起状態とされることで発熱しやすいため、ドープファイバDの発熱量は、第1伝送用ファイバF1の発熱量よりも大きくなっている。
【0042】
そして、このドープファイバDとスリーブ41との接着部分に用いられた第2の接着剤G2の長手方向幅T2(ファイバの長手方向における幅)は、第1伝送用ファイバF1とスリーブ41との接着部分に用いられた第1の接着剤G1の長手方向幅T1よりも小さく設定されている。これにより、ドープファイバDとスリーブ41との接着部分において、ファイバD及びスリーブ41が接着剤G2で覆われる面積が小さくなるため、その接着部分内のドープファイバDで生じた熱がこもらずに放熱しやすくなっている。
【0043】
また、第1伝送用ファイバF1及びドープファイバDに対するスリーブ41の固定強度(主に長手方向の力に耐える強度)は、主に、第1及び第2の接着剤G1,G2の長手方向幅T1,T2の合計幅で決まる。このため、第2の接着剤G2の長手方向幅T2を小さく設定した分、第1の接着剤G1の長手方向幅T1を大きく設定することで、スリーブ41の固定強度を確保することが可能となっている。また、第2の接着剤G2の長手方向幅T2は、第1の接着剤G1の長手方向幅T1の1/2以下に設定されるのが好ましい。
【0044】
一方、第2接続部25では、ドープファイバDの出射側端部Db(出射側端面)と、第2伝送用ファイバF2の入射側端部F2a(入射側端面)とが融着されており、その融着部分には、ドープファイバD側と第2伝送用ファイバF2側とに跨って保護部材(保持部材)としての円筒状のガラスよりなるスリーブ42が外挿されている。尚、スリーブ42は、第1接続部24のスリーブ41と同様の部材であり、ドープファイバDと第2伝送用ファイバF2の融着後に装着されてもよい。また、これ以外に、スリーブ42にドープファイバDの出射側端部Db及び第2伝送用ファイバF2の入射側端部F2aを挿入し、その出射側端部Dbと入射側端部F2aとをスリーブ42内で融着するようにしてもよい。
【0045】
スリーブ42の入射側端部は、ドープファイバDと第3の接着剤G3(熱可塑性樹脂)にて接着されている。接着剤G3は、スリーブ42とドープファイバDとに跨って塗布されるとともに、スリーブ42とドープファイバDの全周に亘って塗布されている。また、スリーブ42の出射側端部は、第2伝送用ファイバF2と第4の接着剤G4(熱可塑性樹脂)にて接着されている。接着剤G4は、スリーブ42と第2伝送用ファイバF2とに跨って塗布されるとともに、スリーブ42と第2伝送用ファイバF2の全周に亘って塗布されている。このように、スリーブ42は、その長手方向両端部でファイバD,F2とそれぞれ接着されているため、ファイバD,F2端部の融着部分から接着部分(接着剤G3,G4)までの間隔が確保され、これにより、ファイバD,F2に加わる外力の影響を融着部分に伝わりにくくなっている。
【0046】
ここで、この第2接続部25では、第1伝送用ファイバF1からドープファイバDに入射された励起光のうち、ドープファイバD内での励起に使われなかった励起光(残留励起光)が、ドープファイバDの出射側端部Dbから第2伝送用ファイバF2へと入射される。このとき、ドープファイバDと第2伝送用ファイバF2の伝搬条件の違いから、第2伝送用ファイバF2では残留励起光が上手く伝搬されず、その残留励起光の影響で熱が発生する。このため、この第2伝送用ファイバF2とスリーブ42との接着部分における該ファイバF2の発熱量は、ドープファイバDとスリーブ42との接着部分における該ファイバDの発熱量よりも大きくなっている。
【0047】
そして、この第2伝送用ファイバF2とスリーブ42との接着部分に用いられた第4の接着剤G4の長手方向幅T4は、ドープファイバDとスリーブ42との接着部分に用いられた第3の接着剤G3の長手方向幅T3よりも小さく設定されている。これにより、第2伝送用ファイバF2とスリーブ42との接着部分において、ファイバF2及びスリーブ42が接着剤G4で覆われる面積が小さくなるため、その接着部分内の第2伝送用ファイバF2で生じた熱がこもらずに放熱しやすくなっている。
【0048】
また、第1接続部24の場合と同様に、ドープファイバD及び第2伝送用ファイバF2に対するスリーブ42の固定強度は、主に、第3及び第4の接着剤G3,G4の長手方向幅T3,T4の合計幅で決まる。このため、第4の接着剤G4の長手方向幅T4を小さく設定した分、第3の接着剤G3の長手方向幅T3を大きく設定することで、スリーブ42の固定強度を確保することが可能となっている。また、第4の接着剤G4の長手方向幅T4は、第3の接着剤G3の長手方向幅T3の1/2以下に設定されるのが好ましい。
【0049】
次に、上記実施形態の作用について説明する。
本実施形態のファイバ保護構造では、第1接続部24及び第2接続部25において、発熱量が大きい方の接着部分の接着剤G2(接着剤G4)が、他方の接着剤G1(接着剤G3)よりも長手方向幅が小さいため、その発熱量が大きい接着部分で生じた熱を逃がしやすくなっている。また、接着剤G2,G4の長手方向幅T2,T4を小さくした分、接着剤G1,G3の長手方向幅T1,T3を大きくして、第1接続部24の接着剤G1,G2の合計幅、及び第2接続部25の接着剤G3,G4の合計幅を固定に必要な大きさとすることで、スリーブ41,42の固定強度が確保されるようになっている。
【0050】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)第1接続部24において、ドープファイバDとスリーブ41との接着部分におけるファイバ発熱量は、第1伝送用ファイバF1とスリーブ41との接着部分におけるファイバ発熱量よりも大きい。そして、ドープファイバD側の接着剤G2の長手方向幅T2は、第1伝送用ファイバF1側の接着剤G1の長手方向幅T1よりも小さく設定される。これにより、ドープファイバD側の接着部分において、ドープファイバD及びスリーブ41が接着剤G2で覆われる面積が小さくなるため、その接着部分で生じた熱を逃がしやすくすることができる。これにより、ドープファイバDとスリーブ41との接着部分におけるファイバの発熱による影響を小さく抑えることが可能となる。
【0051】
また、第1伝送用ファイバF1側の接着剤G1の長手方向幅T1を増やすことで、接着剤G1,G2の合計幅を減少させないように設定することができるため、スリーブ41の固定強度を確保することができる。これにより、スリーブ41の固定強度を確保しつつも、接着部分におけるドープファイバDの発熱による影響を小さく抑えることが可能となる。
【0052】
一方、第2接続部25においては、第2伝送用ファイバF2とスリーブ42との接着部分におけるファイバ発熱量は、ドープファイバDとスリーブ41との接着部分におけるファイバ発熱量よりも大きい。そして、第2伝送用ファイバF2側の接着剤G4の長手方向幅T4は、ドープファイバD側の接着剤G3の長手方向幅T3よりも小さく設定される。これにより、第2伝送用ファイバF2側の接着部分において、該伝送用ファイバF2及びスリーブ42が接着剤G4で覆われる面積が小さくなるため、その接着部分で生じた熱を逃がしやすくすることができる。これにより、伝送用ファイバF2とスリーブ42との接着部分におけるファイバの発熱による影響を小さく抑えることが可能となる。
【0053】
また、ドープファイバD側の接着剤G3の長手方向幅T3を増やすことで、接着剤G3,G4の合計幅を減少させないように設定することができるため、スリーブ42の固定強度を確保することができる。これにより、スリーブ42の固定強度を確保しつつも、接着部分における伝送用ファイバF2の発熱による影響を小さく抑えることが可能となる。
【0054】
また、上記のようなドープファイバDと伝送用ファイバF1,F2との接続部24,25では、光増幅のパワーによってドープファイバD又は伝送用ファイバF2での発熱が大きくなりやすい。このため、接着剤G2,G4の長手方向幅T2,T4を小さくすることによる放熱効果をより効果的なものとすることができる。
【0055】
(2)第1及び第2接続部24,25の保護部材に円筒状のスリーブ41,42が用いられており、そのスリーブ41,42は、ファイバ融着部分を覆うように外挿される。これにより、ファイバ融着部分がスリーブ41,42によって全周に亘って覆われるため、その融着部分をより効果的に保護することができる。
【0056】
(3)ファイバD,F1,F2が石英で構成され、スリーブ41,42がガラスで構成されるため、ファイバD,F1,F2とスリーブ41,42の熱膨張係数を近くすること(合わせるようにすること)ができる。このため、ファイバD,F1,F2とスリーブ41,42の熱膨張の影響を小さく抑えることができる。例えば、ファイバD,F1,F2の発熱によってファイバD,F1,F2とスリーブ41,42が長手方向に熱膨張したときに、ファイバD,F1,F2とスリーブ41,42との接着部分での位置ずれが生じにくく、これにより、接着不良の発生を抑えることができる。
【0057】
(4)接着剤G2の長手方向幅T2(接着剤G4の長手方向幅T4)は、接着剤G1の長手方向幅T1(接着剤G3の長手方向幅T3)の1/2以下に設定される。このため、接着剤G2の長手方向幅T2(接着剤G4の長手方向幅T4)を放熱に適した小さな幅としたときに、他方の接着剤G1の長手方向幅T1(接着剤G3の長手方向幅T3)が、接着剤G2の長手方向幅T2(接着剤G4の長手方向幅T4)の長手方向幅の2倍以上となる。このため、接着剤G1,G2の合計幅(接着剤G3,G4の合計幅)を大きくとることができ、スリーブ41,42の固定強度をより好適に確保することが可能となる。
【0058】
(5)スリーブ41(スリーブ42)は、その長手方向両端部でファイバF1,D(ファイバD,F2)とそれぞれ接着される。これにより、ファイバF1,D(ファイバD,F2)の融着部分から接着部分までの間隔を確保することができ、その結果、ファイバF1,D(ファイバD,F2)に加わる外力の影響を融着部分に伝わりにくくすることが可能となる。
【0059】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、ドープファイバDと伝送用ファイバF1,F2との融着部分を保護する保護部材にガラスよりなるスリーブ41,42を用いたが、これ以外に例えば、保護部材に金属材料よりなる円筒状のスリーブを用いてもよい。この構成によれば、スリーブが放熱性に優れた金属材料よりなるため、ファイバD,F1,F2で生じた熱を効率的に放出することが可能となる。
【0060】
また、スリーブ41,42の代わりに図3に示すような保護部材51を用いてもよい。尚、図3では、上記実施形態の第1接続部24のスリーブ41を保護部材51に変更した例を示している。
【0061】
保護部材51は、略直方体状の金属部材よりなり、その上面には長手方向に沿ったV字状の保持溝51aが形成されている。保持溝51aには、第1伝送用ファイバF1及びドープファイバDがV字の各斜面と当接するように配置されており、その第1伝送用ファイバF1の出射側端部F1aとドープファイバDの入射側端部Daとは融着されている。この状態で、保護部材51に対して第1伝送用ファイバF1及びドープファイバDをそれぞれ接着すべく接着剤G1,G2が保護部材51の上側から塗布されている。そして、接着剤G1の長手方向幅T1は、接着剤G2の長手方向幅T2よりも小さく設定されている。
【0062】
この図3に示すような構成によっても、上記実施形態の作用及び効果を得ることができる。また、同構成では、保護部材51が放熱性に優れた金属材料よりなるため、ファイバD,F1,F2で生じた熱を効率的に放出することが可能となる。尚、保護部材51は金属以外に例えばガラスで形成してもよい。この構成によっても、上記実施形態の効果(3)と同様の効果を得ることができる。
【0063】
・上記実施形態では、ファイバD,F1,F2を石英ファイバとしたが、これ以外に例えば、ガラスファイバとしてもよい。この構成によっても、上記実施形態の効果(3)と同様の効果を得ることができる。
【0064】
・上記実施形態では、光増幅部(ドープファイバD)を1つのみ設けたが、これに特に限定されるものではなく、2つ以上設けてもよい。
・上記実施形態では、接着剤G1〜G4に熱可塑性樹脂を用いたが、これに特に限定されるものではなく、例えば熱硬化樹脂を用いてもよい。
【0065】
・上記実施形態では、レーザ加工装置10におけるドープファイバDと伝送用ファイバF1,F2との接続部24,25における保護構造に本発明を適用したが、これ以外に例えば、光通信装置におけるファイバ接続部の保護構造に適用してもよい。
【符号の説明】
【0066】
10…レーザ加工装置、21…種光源、23…励起光源、41,42…スリーブ(保護部材)、51…保護部材、D…ドープファイバ、Da…ドープファイバの入射側端部、Db…ドープファイバの出射側端部、F1…第1伝送用ファイバ、F1a…第1伝送用ファイバの出射側端部、F2…第2伝送用ファイバ、F2a…第2伝送用ファイバの入射側端部、G1〜G4…第1〜第4の接着剤、T1〜T4…第1〜第4の接着剤の長手方向幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のファイバの端部同士が融着され、その融着部分に装着されて該融着部分を保護する保護部材が前記一対のファイバとそれぞれ接着剤にて接着されたファイバ保護構造であって、
一方の前記ファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量は、他方の前記ファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量よりも大きく、そのファイバ発熱量が大きい方の接着部分に用いられた前記接着剤の長手方向幅は、他方の接着部分に用いられた前記接着剤の長手方向幅よりも小さく設定されていることを特徴とするファイバ保護構造。
【請求項2】
請求項1に記載のファイバ保護構造において、
前記一対のファイバは、希土類元素を内部に含む光増幅用のドープファイバと、光を伝送する伝送用ファイバとからなることを特徴とするファイバ保護構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のファイバ保護構造において、
前記保護部材は、円筒状のスリーブであり、前記一対のファイバの端部同士の融着部分を覆うように外挿されていることを特徴とするファイバ保護構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のファイバ保護構造において、
前記一対のファイバは、石英又はガラスよりなり、
前記保護部材は、ガラスよりなることを特徴とするファイバ保護構造。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のファイバ保護構造において、
前記保護部材は、金属材料よりなることを特徴とするファイバ保護構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のファイバ保護構造において、
ファイバ発熱量が大きい方の前記接着部分に用いられた前記接着剤の長手方向幅は、他方の前記接着部分に用いられた前記接着剤の長手方向幅の1/2以下に設定されていることを特徴とするファイバ保護構造。
【請求項7】
伝送用ファイバと希土類元素を内部に含む光増幅用のドープファイバの端部同士が融着され、その融着部分に装着されて該融着部分を保護する保護部材と前記伝送用ファイバ及び前記ドープファイバとがそれぞれ接着剤にて接着されたファイバ保護構造を有するレーザ加工装置であって、
前記伝送用ファイバと前記ドープファイバのうち、一方のファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量は、他方のファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量よりも大きく、そのファイバ発熱量が大きい方の接着部分に用いられた前記接着剤の長手方向幅は、他方の接着部分に用いられた前記接着剤の長手方向幅よりも小さく設定されていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項8】
請求項7に記載のレーザ加工装置において、
前記伝送用ファイバは、前記ドープファイバの入射側端部に接続され、種光源からの信号用レーザ光及び励起光源からの励起光を前記ドープファイバに伝送するものであり、
前記ドープファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量は、前記伝送用ファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量よりも大きく、前記ドープファイバ側の前記接着剤の長手方向幅は、前記伝送用ファイバ側の前記接着剤の長手方向幅よりも小さく設定されていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項9】
請求項7に記載のレーザ加工装置において、
前記伝送用ファイバは、前記ドープファイバの出射側端部に接続され、前記ドープファイバにて増幅されたレーザ光を導入するものであり、
前記伝送用ファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量は、前記ドープファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量よりも大きく、前記伝送用ファイバ側の前記接着剤の長手方向幅は、前記ドープファイバ側の前記接着剤の長手方向幅よりも小さく設定されていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項10】
一対のファイバの端部同士を融着し、その融着部分に保護部材を装着し、該保護部材と前記一対のファイバとをそれぞれ接着剤にて接着するファイバ保護方法であって、
一方の前記ファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量は、他方の前記ファイバと前記保護部材との接着部分におけるファイバ発熱量よりも大きく、そのファイバ発熱量が大きい方の接着部分の前記接着剤の長手方向幅を、他方の接着部分の前記接着剤の長手方向幅よりも小さく設定することを特徴とするファイバ保護方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−8856(P2013−8856A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140799(P2011−140799)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000106221)パナソニック デバイスSUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】