説明

ファイル差し替えによりデザイン変更可能な車両用計器

【課題】従来の車両用計器のデザインは、その設計段階で決定しており、変更は容易ではない。このデザインを好みや視認性に応じて、ユーザー自身が容易に変更できるシステムを提供することを課題とする。
【解決手段】車両用計器のデザインをXML文章等で記述したデザインファイルC2としてモジュール化し、車両用計器本体と独立させる。そして、ユーザーは車両メーカーやデザイナー・サードパーティーから配信されるデザインファイルを差し替えることで、その計器デザインを変更することができる車両用計器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の走行速度、或いはエンジン回転数等の車両状態を文字、絵やグラフで表示する車両用計器に関するものであり、特に、その車両状態を液晶ディスプレイ(なお、本明細書では液晶ディスプレイを『LCD』という)等を用いて表示させることにより、走行速度等の車両状態を認識できるようにした車両用計器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては、その走行状態や各種装置の状態を運転者に知らせ、走行時の危険を防止し、安全性、快適性を確保するために、スピードメータやタコメータ、或いは時計等の種々の計器または表示装置(メータ装置)が設けられている。
【0003】
そして、この表示形式としては、走行速度等の車両状態に応じて回動する指針の回りに目盛を付した文字盤を配置し、その目盛上での指針の位置により速度等を表示するようにしたアナログ式が最も一般的である。アナログ式だけでなく、蛍光表示管やLCDを用いて車両状態を数値やグラフ表示として表現するデジタル式も採用されている。
【0004】
近年、車両の高級化、多様化等にも伴って、車両用計器の持つ役割は、走行速度等の車両状態を認識するための装置であると共に、車両の外装色、シート素材等と同様に車両デザインの一部としての役割を持ち、そのデザイン性が重要視されるようになった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の車両用計器の場合、そこに表示する車両状態を示す文字やグラフの大きさ、位置、色及び形状などの描画属性の値、すなわちデザインはその設計段階で決定している。一般的に、ユーザー自身による車両購入後の計器デザインの変更は容易ではなく、たとえ変更するとしても、車両用計器装置を丸ごと交換する必要があり、高い技術とコストが掛かる。
【0006】
本発明は、車両用計器のデザインを好みや視認性に応じて、ユーザー自身が容易に変更できるシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、車両用計器のデザインをXML文章等で記述したデザインファイルとしてモジュール化し、車両用計器本体と独立させる。そして、このファイルの差し替えで、計器デザインを変更することを特徴とする車両用計器。
【発明の効果】
【0008】
本発明は次のような効果をもたらします。
【0009】
車両メーカーにとっては、ファイルの差し替えだけでデザイン変更ができるので、そのコストを安価にすることができる。また、『購入後デザイン変更可能な車両用計器搭載車』という新しい付加価値を持った車両を提供することで、車両の持つ個性や高級感を上げ、車両の商品価値を向上することができる。
【0010】
ユーザーにとっては、視認性や趣味嗜好に応じた車両用計器のデザインを選択することができるので、より安全で快適なドライビング・ライフを送ることができる。特に、色弱などの視覚障害を持ったドライバにとっては視認性の良い色を使用したデザインを選択することで、より安全な走行が可能となる。
【0011】
また、XML文章等の言語仕様を理解することで、車両メーカーや車種の違いを意識することなくデザインファイルを作成することが可能となる。これにより、車両メーカーだけでなく、デザイナー・サードパーティー等もデザインファイルの作成が可能となるので、新たなコンテンツ産業が発展する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面とともに本発明による車両用計器の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明による車両用計器を構成するシステムブロック図である。
【0013】
図1に示す車両用計器のシステム構造は、コンテンツファイルブロックB1、プラットフォームブロックB2及びメーカーブロックB3の3ブロックで構成されている。
【0014】
コンテンツファイルブロックB1、プラットフォームブロックB2、メーカーブロックB3の順に車両用計器のシステム構造を詳細に説明する。
【0015】
まずは、コンテンツファイルブロックB1について説明する。
【0016】
コンテンツファイルブロックB1は、メーカーやデザイナー・サードパーティーから提供されるデザインファイル(XML文章)C2と、それを管理するための画面を有するデザインファイルマネージャー(XML文章)C1で構成される。
【0017】
デザインファイル(XML文章)C2は、計器に表示する車両状態を示す文字やグラフの大きさ、位置、色及び形状などの描画属性の値を定義したファイルである。デザインファイルマネージャー(XML文章)C1は、デザインファイル(XML文章)C2の追加、削除及び選択することができる画面をユーザーに提供する。車両用計器に適用するデザインファイル(XML文章)C2を一覧から選択することで、車両用計器のデザインを変更することができる。
【0018】
次に、プラットフォームブロックB2について説明する。
【0019】
プラットフォームブロックB2は、XML解析モジュールP1、システムコールP2及びオペレーティングシステムP3のソフトウェアモジュールとマイコンH5のハードウェアで構成される。
【0020】
XML解析モジュールP1は、コンテンツファイルブロックB1のXML文章で記述されたデザインファイルの解析能力を有する。また、メーカーブロックB2のモデル吸収層L1とソフトウェア的に関連を持ち、そこから走行速度等の車両状態を取得する。取得した車両状態情報をXML解析結果であるデザインに基づいて描画を行う。
【0021】
システムコールP2は、車両用計器システムのソフトウェアを制御するためのオペレーティングシステムP3をラッピングしている。XML解析モジュールP1とメーカーブロックB3のモデル吸収層L1に対し、オペレーティングシステムP3の機能を提供する。オペレーティングシステムP3への要求を管理し、車両用計器システムの状態を監視する役割を担う。
【0022】
オペレーティングシステムP3は、車両用計器システムのソフトウェアを統合して制御するためのソフトウェアモジュールである。一般的なリアルタイムOSで、タスク制御、メモリ管理等の機能を有する。
【0023】
マイコンH5は、一般的なマイコンである。メーカーブロックB3のハードウェア層L3とハードウェア的に関連を持ち、演算処理を行う。
【0024】
最後に、メーカーブロックB3について説明する。
【0025】
メーカーブロックB3は、モデル吸収層L1、デバイスドライバ層L2及びハードウェア層L3の3層で構成され、車両メーカーが提供するブロックである。
【0026】
モデル吸収層L1は、XML解析モジュールP1へインターフェース関数を提供する。このインターフェース関数の関数名、戻り値、引数の数と型及び使用用途は、メーカーや車両モデルによって変化することはない。メーカーはこのインターフェース関数の実装を車両モデルに応じてプログラミングすることで、車両モデルの差異を吸収することが可能である。
【0027】
また、モデル吸収層L1は、機能ごとにモジュール分割しており、記憶装置API M1、車載センサーAPI M2、基本描画API M3及び外部装置API M4で構成される。
【0028】
記憶装置API M1は、デザインファイルマネージャー(XML文章)C1やデザインファイル(XML文書)C2を保存する記憶装置H1へのアクセスAPIを提供する。
【0029】
車載センサーAPI M2は、走行速度、エンジン回転数、シフト等の車両状態を監視し、上位モジュールの要求や値の変化に応じてその情報を提供するモジュールである。
【0030】
基本描画API M3は、文字、基本図形及び画像の描画を司るモジュールである。LCDドライバD3を介してLCD H3へ描画要求を行う。
【0031】
デバイスドライバ層L2は、車両用計器のハードウェアの差異を吸収するための層である。対象となるデバイス毎にモジュール化されている。
【0032】
デバイスドライバ層L2は、記憶装置ドライバD1、車載センサードライバD2、LCDドライバD3及び外部インターフェース装置ドライバD4で構成されており、それぞれ、記憶装置H1、車載センサーH2、LCD H3及び外部インターフェース装置H4のハードウェアを制御し、上位モジュールからの要求に応答する。
【0033】
ハードウェア層は、車両用計器を構成しているハードウェアである。記憶装置H1、車載センサーH2、LCD H3及び外部インターフェース装置H4で構成される。
【0034】
記憶装置H1は、デザインファイルを保存するためのファイルシステムである。
【0035】
車載センサーH2は、走行速度センサー、エンジン回転数センサー等の車両情報を取得するためのセンサーのことである。
【0036】
LCD H3は車両運転席前面に設置した液晶ディスプレイで、XML解析結果のデザインを考慮した車両情報が描画される。
【0037】
外部インターフェース装置H4は、車両用計器システムと外部とをつなぐ装置である。主な役割は、デザインファイル(XML文書)C2の車両計器へのインストールであり、方式は無線通信、有線通信や記憶媒体のどれか、または、これらを組み合せた方式である。
【0038】
このシステムを使用したデザイン変更の例を示す。
【0039】
車両用計器のデザインをXML文章で記述したデザインファイル(XML文書)C2を用意する。それを車両用計器の記憶装置H1に、通信または記憶媒体などの外部インターフェース装置H4を介して保存する。そして、速度等の車載センサーH2からの情報を、デザインファイル(XML文書)C2に記述しているデザイン情報に基づいて車両用計器のLCD H3に表示する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明による車両用計器を構成するシステムブロック図である。
【符号の説明】
【0041】
B1 コンテンツファイルブロック
B2 プラットフォームブロック
B3 メーカーブロック
C1 デザインファイルマネージャー(XML文章)
C2 デザインファイル(XML文書)
P1 XML解析モジュール
P2 システムコール
P3 オペレーティングシステム
L1 モデル吸収層
L2 デバイスドライバ層
L3 ハードウェア層
M1 記憶装置API
M2 車載センサーAPI
M3 基本描画API
M4 外部装置API
D1 記憶装置ドライバ
D2 車載センサードライバ
D3 LCDドライバ
D4 外部インターフェース装置ドライバ
H1 記憶装置
H2 車載センサー
H3 LCD
H4 外部インターフェース装置
H5 マイコン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイルの差し替えでデザインを変更することを特徴とする車両用計器。
【請求項2】
ファイルの差し替えでデザインを変更することを特徴とする車両用計器で、特にそのファイルをXML文章で記述したもの。



【図1】
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【公開番号】特開2007−153139(P2007−153139A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351376(P2005−351376)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(705000662)
【Fターム(参考)】