説明

ファクシミリ装置

【課題】 子機が接続されている場合に回線抜けであるにも関わらずオフフック操作が行われたと誤って検出されるのを抑制することができるファクシミリ装置を提供する。
【解決手段】 DAA回路3からの電圧データに基づいて回線電圧の低下を検出する電圧低下検出部41と、回線電圧の低下が検出された場合に電圧低下の傾きを検出する傾き検出部42と、電圧低下の傾き及び所定の回線抜け傾き閾値を比較する第1の比較部44と、回線電圧及び所定のオフフック閾値を比較する第2の比較部46と、回線電圧及びオフフック閾値よりも小さな回線抜け電圧閾値を比較する第3の比較部48と、第1の比較部44による比較結果、第2の比較部46による比較結果及び第3の比較部48による比較結果に基づいてオフフック操作を検出するオフフック操作検出部49と、オフフックの操作情報をディスプレイ9上に表示する操作情報表示処理部50により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファクシミリ装置に係り、さらに詳しくは、電話回線の回線電圧に基づいて子機に対するオフフック操作を検知するファクシミリ装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
電話回線に接続される子機を有するファクシミリ装置では、NCU(ネットワークコントロールユニット)の回線電流センサ機能、又は、DAA(Data Access Arrangement)の回線電圧モニター機能を利用して、子機に対するオフフック操作を検知することが従来から行われている。電話回線の回線電圧をモニターして子機に対するオフフック操作を検知する従来のファクシミリ装置では、回線電圧をオフフック閾値と比較することにより、オフフック操作が検知される。
【0003】
特許文献1及び2には、回線電圧をモニターしてオフフック操作を検知する際の検知精度を向上させる技術が開示されている。これらの特許文献1及び2には、使用される国や地域が変わってもオフフック閾値を調整しなくても良く、また、ノイズなどの影響により回線電圧が変動しやすい場合であっても、オフフック操作を正しく検知することができる通信端末装置が記載されている。この通信端末装置は、サンプリングした回線電圧を一定時間前にサンプリングした回線電圧と比較し、その電圧差が基準幅よりも大きくなる事象が連続して繰り返された場合にオフフック操作の検知を行っている。
【特許文献1】特開平8−289039号公報
【特許文献2】特開平9−83664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電話回線には、所定の直流電圧が印加されており、オフフックにより電話回線を閉結する子機には、電話回線からの電源供給に基づいて動作するものが少なくない。一般に、オフフック時に電話回線からの電源供給に基づいて動作する子機には、呼び出し信号の検出回路などの回路が設けられ、電話回線に接続されている状態では、上記回路に含まれるコンデンサーが回線電流により充電される。この様な子機が接続された従来のファクシミリ装置では、電話回線との接続が遮断された場合、すなわち、いわゆる回線抜けが生じた場合に、子機のコンデンサーが放電するのに応じて回線電圧が低下することとなる。このため、回線電圧がオフフック閾値を下回ってから回線抜けを検知するための回線抜け閾値を下回るまでの時間が長くなるので、オフフック操作が行われたと誤った判断をしてしまう誤検出の期間が長くなってしまうという問題があった。
【0005】
図8(a)及び(b)は、電話回線に着脱可能に接続される子機を有する従来のファクシミリ装置の動作を示した図であり、オフフック操作の検知時に回線抜けが生じた場合が示されている。図8(a)には、子機が接続されていない場合が示され、図8(b)には、子機が接続されている場合が示されている。装置本体に子機が接続されていない場合、電話回線に接続された状態では、装置本体で検出される回線電圧Vがオフフック閾値V1よりも大きな値となっており、時刻0から時刻t1までの間がオンフック状態であると判別されている。この状態で装置本体を電話回線に接続するためのコネクタが外されるなどの回線抜けが生じると、回線電圧Vは、急激に低下し、オフフック閾値V1よりも小さな回線抜け閾値V2を下回ることとなる。時刻t1から時刻t4までの間は、回線電圧Vが回線抜け閾値V2を下回っており、回線抜けの状態であると判別されている。そして、時刻t4に回線抜けが解消しており、電話回線との接続が再開されている。
【0006】
一方、装置本体に子機が接続されている場合、電話回線に接続された状態では、回線電圧Vがオフフック閾値V1よりも大きな値となっているが、この状態で回線抜けが生じると、回線電圧Vは、子機のコンデンサーが放電されるのに時間を要することから、緩やかに一定の割合で低下することとなる。この場合、回線電圧Vがオフフック閾値V1を下回ってからさらに回線抜け閾値V2を下回るまでに要する時間(t3−t2)は、子機が接続されていない場合に比べて、長くなる。この時刻t2から時刻t3までの間は、回線電圧Vがオフフック閾値V1と回線抜け閾値V2との間にあることから、回線抜けであるにも関わらず、オフフック状態であると誤判別してしまうという問題があった。通常、オフフック操作が行われたと判別されると、子機に関するオフフックの操作情報、例えば、メッセージ「子機が電話中です」が装置本体のディスプレイ上に表示される。この様なファクシミリ装置では、装置本体の移動時などに電話回線のコネクタを外すと、電話回線との接続が遮断されているにも関わらず、オフフック操作情報が表示されるので、ユーザを混乱させてしまうこととなる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電話回線の回線電圧に基づいて子機に対するオフフック操作を検知する際の誤検知を抑制することができるファクシミリ装置を提供することを目的としている。特に、電話回線からの電源供給に基づいて動作する子機が接続されている場合に、回線抜けであるにも関わらずオフフック操作が行われたと誤って検出されるのを抑制することができるファクシミリ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明によるファクシミリ装置は、電話回線の回線電圧を検出する回線電圧検出手段と、上記回線電圧検出手段による検出結果に基づいて、回線電圧の低下を検出する電圧低下検出手段と、上記電圧低下検出手段により回線電圧の低下が検出された場合に、上記回線電圧検出手段による検出結果に基づいて電圧低下の傾きを検出する傾き検出手段と、上記傾き検出手段により検出された電圧低下の傾き及び所定の回線抜け傾き閾値を比較する第1の比較手段と、上記回線電圧検出手段により検出された回線電圧及び所定のオフフック閾値を比較する第2の比較手段と、上記回線電圧検出手段により検出された回線電圧及び上記オフフック閾値よりも小さな回線抜け電圧閾値を比較する第3の比較手段と、上記第1の比較手段による比較結果、上記第2の比較手段による比較結果及び上記第3の比較手段による比較結果に基づいて、子機に対するオフフック操作を検出するオフフック操作検出手段とを備えて構成される。
【0009】
このファクシミリ装置では、回線電圧の低下が検出された場合に、電圧低下の傾きが検出され、その検出結果と回線抜け傾き閾値との比較結果、回線電圧とオフフック閾値との比較結果及び回線電圧と回線抜け電圧閾値との比較結果に基づいて子機に対するオフフック操作の検出が行われる。この様な構成により、回線電圧とオフフック閾値及び回線抜け電圧閾値との比較結果だけでなく、電圧低下の傾きも考慮してオフフック操作の検出が行われるので、子機が接続されている状態で回線抜けが生じた場合であっても、オフフック操作が行われたか否かを正しく判別させることができる。従って、電話回線からの電源供給に基づいて動作する子機が接続されている場合に、回線抜けであるにも関わらずオフフック操作が行われたと検出してしまう誤検出を抑制することができ、電話回線の回線電圧に基づいてオフフック操作を検知する際の誤検知を抑制することができる。ここでいう電圧低下の傾きは、単位時間当たりの回線電圧の変化量に限定されるものではない。
【0010】
第2の本発明によるファクシミリ装置は、上記構成に加え、上記オフフック操作検出手段が、電圧低下の傾きが上記回線抜け傾き閾値よりも大きく、さらに、回線電圧が上記オフフック閾値よりも小さく、かつ、上記回線抜け電圧閾値よりも高い場合にオフフック操作が行われたと判断し、電圧低下の傾きが回線抜け傾き閾値よりも小さい場合と、電圧低下の傾きが回線抜け傾き閾値よりも大きく、かつ、回線電圧が回線抜け電圧閾値よりも低い場合とにはオフフック操作ではなく回線抜けであると判断するように構成される。
【0011】
第3の本発明によるファクシミリ装置は、上記構成に加え、上記傾き検出手段が、上記電圧低下の傾きとして、所定時間内における回線電圧の変化量を求めるように構成される。
【0012】
第4の本発明によるファクシミリ装置は、上記構成に加え、上記傾き検出手段が、上記電圧低下の傾きとして、回線電圧が所定の開始電圧から終了電圧まで低下するのに要する時間を求めるように構成される。
【0013】
第5の本発明によるファクシミリ装置は、上記構成に加え、上記オフフック操作検出手段が、回線電圧が上記オフフック閾値を下回ったときから所定時間が経過するまでに回線電圧が上記回線抜け電圧閾値よりも低下した場合に、オフフック操作ではなく回線抜けであると判断するように構成される。この様な構成によれば、回線電圧がオフフック閾値を下回ってから所定時間内に回線抜け電圧閾値よりも低下した場合には回線抜けであると判断されるので、子機が接続されていない場合や、オフフック時に電話回線から電源供給を受けることなく動作する子機だけが接続されている場合に、オフフック操作を正しく検出させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるファクシミリ装置によれば、回線電圧とオフフック閾値及び回線抜け電圧閾値との比較結果だけでなく、電圧低下の傾きも考慮してオフフック操作の検出が行われるので、オフフック時に電話回線からの電源供給に基づいて動作する子機が接続されている状態で回線抜けが生じた場合であっても、オフフック操作が行われたか否かを正しく判別させることができる。従って、電話回線からの電源供給に基づいて動作する子機が接続されている場合に、回線抜けであるにも関わらずオフフック操作が行われたと検出してしまう誤検出を抑制することができ、電話回線の回線電圧に基づいてオフフック操作を検知する際の誤検知を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるファクシミリ装置1の概略構成の一例を示したブロック図である。このファクシミリ装置1は、コネクタ2,5,7、DAA回路3、制御部4、リレー回路6,8、ディスプレイ9、スキャナ部10a及びプリンタ部10bからなる装置本体11と、子機21により構成される。
【0016】
スキャナ部10aは、読み取り対象とする原稿に光を照射しながら走査させ、当該原稿による反射光を受光して画像データを生成する撮像装置である。ここでは、原稿(用紙)の紙送り方向に照射光を走査(スキャン)させることにより、原稿上の手書き文字や印刷パターンが読み取られるものとする。生成された画像データは、制御部4へ出力される。
【0017】
プリンタ部10bは、制御部4から入力される画像データの出力装置であり、例えば、LEDプリントヘッド、駆動制御部、感光体ドラム、帯電器、現像部、転写部及び定着部により構成される。LEDプリントヘッドは、複数のLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を直線上に配置させたLEDアレイを備え、画像データに基づいて光を感光体ドラムに照射する動作を行っている。
【0018】
駆動制御部は、感光体ドラム、帯電器、現像部、転写部及び定着部からなるプリンタ機構の制御を行っている。感光体ドラムは、表面に感光体層が形成された円筒状の回転体であり、印刷時には、帯電器により表面が一様に帯電される。この様に帯電された感光体ドラムの表面に光を照射させることにより、静電潜像が形成される。
【0019】
現像部は、静電潜像が形成された感光体ドラムの表面にトナーを付着させてトナー像を形成させる動作を行っている。転写部は、感光体ドラムの表面に形成されたトナー像を印刷用紙に転写させる動作を行っている。定着部は、トナー像が転写された印刷用紙を加熱処理及び加圧処理し、画像を印刷用紙表面に定着させる動作を行っている。
【0020】
ディスプレイ9は、制御部4から入力される表示データの出力装置であり、子機21に対するオフフックの操作情報などを画面表示するのに用いられる。
【0021】
コネクタ2は、装置本体11を電話回線に接続するためのコネクタであり、電話回線用の通信ケーブルがDAA回路3に着脱可能に接続される。この電話回線は、例えば、交換機により呼び出し信号が中継されるアナログ回線又はデジタル回線からなる公衆回線であり、音声信号や通信データが2本の通信ケーブルを介して伝送される。この電話回線には、所定の直流電圧(電圧値V0)が印加されている。例えば、V0=48ボルトの電圧が印加されている。
【0022】
DAA(Data Access Arrangement)回路3は、電話回線を介して行われる音声信号及び通信データの入出力を制御するインターフェース回路であり、電話回線の回線電圧をモニターする機能を備えている。電話回線の回線電圧は、一定の時間間隔で繰り返し検出され、検出された電圧データは、制御部4へ出力される。制御部4は、通信制御、表示処理及び画像処理などを行うコントローラであり、マイクロプロセッサからなる。
【0023】
コネクタ5及び7は、いずれも子機を装置本体11に接続するためのコネクタであり、電話回線と同様の通信ケーブルがDAA回路3及び制御部4に着脱可能に接続される。子機は、通信ケーブルを介して装置本体11に接続される電話機であり、受話用レシーバ及び送話用マイクロホンからなる。子機は、着信時や発信時にオフフックされると、子機内部において電話回線を閉結し、通信可能な状態となる。このため、子機がオフフックされると、電話回線の回線電圧は、急激に低下し、例えば、6〜10ボルト程度となる。
【0024】
リレー回路6及び8は、それぞれコネクタ5及び7を介して子機を電話回線又は制御部4のいずれかに接続するスイッチ回路であり、制御部4からの指示により接続が切り替えられる。
【0025】
ここで、コネクタ5及び7に接続可能な子機には、電話回線からの電源供給に基づいて動作する子機21と、オフフック時に電話回線から電源供給を受けることなく動作する子機とがあるものとする。電話回線から電源供給を受けて動作する子機21には、交換機からの呼び出し信号を検出する検出回路などの回路が設けられている。この回路には、安定な電源を必要とする半導体素子が含まれており、その様な半導体素子に安定して電源供給するためのコンデンサー(容量素子)も設けられている。この様な子機21が電話回線に接続された状態では、上記回路に含まれるコンデンサーが回線電流により充電される。
【0026】
本実施の形態によるファクシミリ装置1では、この様な少なくとも1台の子機21が、装置本体11に着脱可能に接続される。ここでは、子機21がコネクタ5を介して装置本体11に接続されており、コネクタ7には子機が接続されていないものとする。
【0027】
制御部4は、装置本体11への着信があった場合に、リレー回路6及び8を制御部4側に切り替え、呼び出し音を再生させるための制御信号を子機21へ出力する。装置本体11への着信時以外は、リレー回路6及び8は電話回線側に切り替えられる。この制御部4では、DAA回路3からの電圧データに基づいて子機21に対するオフフック操作を検知し、オフフックの操作情報をディスプレイ9上に表示する動作が行われる。子機に対するオフフック操作の検知とは、子機が電話回線を閉結する際の子機における閉結動作の検知のことである。
【0028】
図2は、図1のファクシミリ装置1の動作の一例を示した図であり、オフフック操作の検知時に回線抜けが生じた場合が示されている。装置本体11に子機21が接続されている場合、電話回線に接続された状態では、DAA回路3により検出される回線電圧Vがオフフック閾値V1よりも大きな値V0となっている。この状態で回線抜けが生じる(時刻t11)と、回線電圧Vは、子機21内のコンデンサーが放電されるのに時間を要することから、緩やかに一定の割合で低下することとなる。
【0029】
この場合、回線電圧Vがオフフック閾値V1を下回ってからさらに回線抜け閾値V2を下回るまでに要する時間は、子機21が接続されていない場合に比べて長くなる。
【0030】
制御部4では、DAA回路3からの電圧データに基づいて回線電圧Vの低下が検出され、回線電圧Vの低下が検出された場合に、電圧低下の傾きを検出してオフフック操作が行われたか否かが判別される。
【0031】
回線電圧Vの低下は、例えば、回線電圧Vと所定の電圧閾値V11とを比較し、その比較結果に基づいて検出することができる。具体的には、回線電圧Vが電圧閾値V11を下回った時点(時刻t12)で電圧低下が生じたものと判断される。電圧閾値V11は、ノイズによる回線電圧の変動幅などに基づいて、オフフック閾値V1よりも大きな値として予め定められる。すなわち、V11は、V0とオフフック閾値V1との間に定められる(V1<V11<V0)。
【0032】
電圧低下の傾きは、例えば、所定時間T1内における回線電圧Vの変化量ΔVを求め、変化量ΔVの絶対値が電圧低下の傾きとして検出される。子機21に対するオフフック操作は、変化量ΔVの絶対値を所定の回線抜け傾き閾値Vthと比較し、その比較結果に基づいて検出される。
【0033】
この例では、時刻t12から時刻t13までの間の変化量がΔVとなっている。また、時刻t14に回線電圧Vがオフフック閾値V1となっている。また、オフフック閾値V1=20ボルト、回線抜け電圧閾値V2=3ボルトとなっている。
【0034】
回線電圧Vの低下が検出された場合に電圧低下の傾きを判別させることにより、ノイズなどによる電圧変動の影響が抑制されるので、傾き検出の精度を向上させることができる。
【0035】
図3は、図1のファクシミリ装置1の要部における構成例を示したブロック図であり、制御部4内の機能構成の一例が示されている。この制御部4は、電圧低下検出部41、傾き検出部42、第1の比較部44、第2の比較部46、第3の比較部48、オフフック操作検出部49及び操作情報表示処理部50により構成される。電圧低下検出部41は、DAA回路3からの電圧データに基づいて、回線電圧Vの低下を検出する動作を行っている。
【0036】
傾き検出部42は、電圧低下検出部41により回線電圧Vの低下が検出された場合に、DAA回路3からの電圧データに基づいて、電圧低下の傾きを検出する動作を行っている。第1の比較部44は、傾き検出部52により検出された電圧低下の傾きと、回線抜け傾き閾値Vthとを比較し、比較結果をオフフック操作検出部49へ出力する動作を行っている。回線抜け傾き閾値Vthは、不揮発性メモリ43内に予め格納されている。
【0037】
第2の比較部46は、DAA回路3からの電圧データに基づく回線電圧Vと、オフフック閾値V1とを比較し、比較結果をオフフック操作検出部49へ出力する動作を行っている。オフフック閾値V1は、不揮発性メモリ45内に予め格納されている。第3の比較部48は、DAA回路3からの電圧データに基づく回線電圧Vと、回線抜け電圧閾値V2とを比較し、比較結果をオフフック操作検出部49へ出力する動作を行っている。回線抜け電圧閾値V2は、不揮発性メモリ47内に予め格納されている。
【0038】
オフフック操作検出部49は、第1の比較部44による比較結果と、第2の比較部46による比較結果と、第3の比較部48による比較結果に基づいて、子機21に対するオフフック操作を検出し、検出結果を操作情報表示処理部50へ出力する動作を行っている。
【0039】
具体的には、電圧低下の傾き(ΔV)が回線抜け傾き閾値Vthよりも大きく、さらに、回線電圧Vがオフフック閾値V1よりも小さく、かつ、回線抜け電圧閾値V2よりも高い場合に、オフフック操作が行われたと判断される。一方、電圧低下の傾きが回線抜け傾き閾値Vthよりも小さい場合と、電圧低下の傾きが回線抜け傾き閾値Vthよりも大きく、かつ、回線電圧Vが回線抜け電圧閾値V2よりも低い場合とには、オフフック操作ではなく回線抜けであると判断される。
【0040】
ここでは、回線電圧Vがオフフック閾値V1を下回ったときから所定時間が経過するまでに回線電圧Vが回線抜け電圧閾値V2よりも低下した場合に、オフフック操作ではなく回線抜けであると判断されるものとする。この様に構成することにより、回線電圧Vがオフフック閾値V1を下回ってから所定時間内に回線抜け電圧閾値V2よりも低下した場合には、回線抜けであると判断されるので、子機21が接続されていない場合や、オフフック時に電話回線から電源供給を受けることなく動作する子機だけが接続されている場合に、オフフック操作を正しく検出させることができる。
【0041】
操作情報表示処理部50は、オフフック操作検出部49による検出結果に基づいて、子機21に関するオフフックの操作情報をディスプレイ9上に表示する処理を行っている。具体的には、オフフック操作が行われたと判別された場合に、その操作情報、例えば、メッセージ「子機が電話中です」を含む表示データがディスプレイ9へ出力される。
【0042】
図4のステップS101〜S109は、図1のファクシミリ装置1における制御部4の動作の一例を示したフローチャートであり、オフフック検出のためのフラグ制御の処理手順が示されている。まず、オフフック操作検出部49は、電圧低下検出部41において回線電圧Vの低下が検出されると、現在の電圧値とオフフック閾値V1との比較結果を参照する(ステップS101,S102)。
【0043】
このとき、現在の電圧値がV1よりも大きくなければ、この処理を終了し、V1よりも大きければ、現在の電圧値をVaとしてメモリ内に格納する(ステップS103)。
【0044】
次に、オフフック操作検出部49は、一定時間(T1)が経過すると、現在の電圧値と、電圧値Vaとを比較する(ステップS104,S105)。このとき、現在の電圧値がVaよりも大きければ、オフフック検出無視フラグを「0」(無効)としてステップS102からの処理手順を繰り返す(ステップS109)。
【0045】
現在の電圧値がVaよりも大きくなければ、現在の電圧値と、回線抜け電圧閾値V2との比較結果が参照される(ステップS106)。このとき、現在の電圧値が回線抜け電圧閾値V2よりも小さければ、オフフック検出無視フラグを「0」としてステップS102からの処理手順を繰り返す(ステップS109)。
【0046】
現在の電圧値が回線抜け電圧閾値V2よりも小さくなければ、電圧低下の変化量、すなわち、Va及び現在の電圧値の差分(Va−現在の電圧値)と回線抜け傾き閾値Vthとの比較結果が参照される(ステップS107)。このとき、差分(Va−現在の電圧値)が回線抜け傾き閾値Vthよりも小さければ、オフフック検出無視フラグを「1」(有効)としてステップS102からの処理手順を繰り返す(ステップS108)。
【0047】
差分(Va−現在の電圧値)が回線抜け傾き閾値Vthよりも小さくなければ、ステップS102からの処理手順を繰り返す。
【0048】
図5のステップS111〜S118は、図1のファクシミリ装置1における制御部4の動作の一例を示したフローチャートであり、子機21に対するオフフック操作の検出動作が示されている。まず、オフフック操作検出部49は、現在の電圧値とオフフック閾値V1との比較結果を参照する(ステップS111)。このとき、現在の電圧値がV1よりも大きければ、この処理を終了し、V1よりも大きくなければ、オフフック検出無視フラグを参照する(ステップS112)。
【0049】
このとき、オフフック検出無視フラグが、「0」、すなわち、無効であれば、現在の電圧値と回線抜け電圧閾値V2との比較結果を参照する(ステップS113)。現在の電圧値がV2よりも小さければ、回線抜けであると判断してこの処理を終了する。一方、現在の電圧値がV2よりも小さくなければ、オフフック操作が行われたと判断され、その操作情報が表示される(ステップS114,S115)。
【0050】
オフフック検出無視フラグが、「1」、すなわち、有効であれば、現在の電圧値と回線抜け電圧閾値V2との比較結果を参照する(ステップS116)。現在の電圧値がV2よりも小さければ、回線抜けであると判断してこの処理を終了する(ステップS117)。一方、現在の電圧値がV2よりも小さくなければ、ただちにこの処理を終了する。オフフック操作の検出時には、この様な処理手順が所定の時間間隔で繰り返される。
【0051】
本実施の形態によれば、回線電圧Vとオフフック閾値V1及び回線抜け電圧閾値V2との比較結果だけでなく、電圧低下の傾きも考慮してオフフック操作の検出が行われるので、子機21が接続されている状態で回線抜けが生じた場合であっても、オフフック操作が行われたか否かを正しく判別させることができる。従って、子機21が接続されている場合に、回線抜けであるにも関わらずオフフック操作が行われたと検出してしまう誤検出を抑制することができ、電話回線の回線電圧Vに基づいてオフフック操作を検知する際の誤検知を防止することができる。
【0052】
実施の形態2.
実施の形態1では、電圧低下の傾きとして所定時間T1内における回線電圧Vの変化量ΔVが求められる場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、回線電圧Vが所定の開始電圧V21から終了電圧V22まで低下するのに要する時間T2を電圧低下の傾きとして求める場合について説明する。
【0053】
図6は、本発明の実施の形態2によるファクシミリ装置の動作の一例を示した図であり、オフフック操作の検知時に回線抜けが生じた場合が示されている。装置本体に子機21が接続されている場合、電話回線に接続された状態では、DAA回路3により検出される回線電圧Vがオフフック閾値V1よりも大きな値V0となっている。この状態で回線抜けが生じる(時刻t21)と、回線電圧Vは、子機21のコンデンサーが放電されるのに時間を要することから、緩やかに一定の割合で低下することとなる。
【0054】
電圧低下の傾きは、回線電圧Vが、開始電圧V21から終了電圧V22まで低下するのに要する時間T2として求められる。この例では、時刻t22に回線電圧VがV21となり、その後の時刻t23にV22となっており、時刻t22から時刻t23までの時間がT2となっている。また、時刻t24に回線電圧Vがオフフック閾値V1となっている。
【0055】
子機21に対するオフフック操作は、時間T2を所定の回線抜け傾き閾値Tthと比較し、その比較結果に基づいて検出される。開始電圧V21は、ノイズによる回線電圧の変動幅などに基づいて、オフフック閾値V1よりも大きな値として予め定められる。ここでは、V21が、回線電圧Vの低下を検出する際の閾値としても用いられるものとする。つまり、開始電圧V21は、回線電圧Vの低下を検知してオフフック操作が行われたか否かの判別処理を開始させるための閾値となっている。
【0056】
終了電圧V22は、V21とオフフック閾値V1との間に予め定められる(V1≦V22<V21<V0)。ここでは、終了電圧V22がオフフック閾値V1と一致させて定められるものとする。
【0057】
図7のステップS201〜S209は、図6のファクシミリ装置における制御部4の動作の一例を示したフローチャートであり、オフフック検出のためのフラグ制御の処理手順が示されている。まず、オフフック操作検出部49は、回線電圧Vが開始電圧V21以下に低下すると、現在の電圧値とオフフック閾値V1との比較結果を参照する(ステップS201,S202)。
【0058】
このとき、現在の電圧値がV1よりも大きくなければ、この処理を終了し、V1よりも大きければ、現在時刻をt1としてメモリ内に格納する(ステップS203)。
【0059】
次に、オフフック操作検出部49は、DAA回路3から電圧データを取得して電圧値を更新し、更新後の電圧値と、回線抜け電圧閾値V2との比較結果を参照する(ステップS204,S205)。このとき、現在の電圧値が回線抜け電圧閾値V2よりも小さければ、オフフック検出無視フラグを「0」とし、ステップS206の処理手順に移行する(ステップS210)。
【0060】
現在の電圧値が回線抜け電圧閾値V2よりも小さくない場合には、オフフック検出無視フラグを参照し、オフフック検出無視フラグが「0」でなければ、ステップS202からの処理手順を繰り返す(ステップS206)。
【0061】
オフフック検出無視フラグが「0」である場合には、現在の電圧値とオフフック閾値V1との比較結果を参照し、現在の電圧値がV1以下でなければ、ステップS202からの処理手順を繰り返す(ステップS207)。
【0062】
現在の電圧値がV1以下である場合には、回線電圧VがV21からV1まで低下するのに要した時間T2、すなわち、現在の時刻及びt1の差分(現在の時刻−t1)と、回線抜け傾き閾値Tthとの比較結果を参照する(ステップS208)。このとき、時間T2=(現在の時刻−t1)が回線抜け傾き閾値Tthよりも大きければ、オフフック検出無視フラグを「1」としてステップS202からの処理手順を繰り返す(ステップS209)。
【0063】
一方、時間T2=(現在の時刻−t1)が回線抜け傾き閾値Tthよりも大きくなければ、ただちにステップS202からの処理手順を繰り返す(ステップS209)。
【0064】
この様な構成であっても、回線電圧Vとオフフック閾値V1及び回線抜け電圧閾値V2との比較結果だけでなく、電圧低下の傾きも考慮してオフフック操作の検出が行われるので、子機21が接続されている状態で回線抜けが生じた場合であっても、オフフック操作が行われたか否かを正しく判別させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態1によるファクシミリ装置1の概略構成の一例を示したブロック図である。
【図2】図1のファクシミリ装置1の動作の一例を示した図であり、オフフック操作の検知時に回線抜けが生じた場合が示されている。
【図3】図1のファクシミリ装置1の要部における構成例を示したブロック図であり、制御部4内の機能構成の一例が示されている。
【図4】図1のファクシミリ装置1における制御部4の動作の一例を示したフローチャートであり、オフフック検出のためのフラグ制御の処理手順が示されている。
【図5】図1のファクシミリ装置1における制御部4の動作の一例を示したフローチャートであり、子機21に対するオフフック操作の検出動作が示されている。
【図6】本発明の実施の形態2によるファクシミリ装置の動作の一例を示した図であり、オフフック操作の検知時に回線抜けが生じた場合が示されている。
【図7】図6のファクシミリ装置における制御部4の動作の一例を示したフローチャートであり、オフフック検出のためのフラグ制御の処理手順が示されている。
【図8】電話回線に着脱可能に接続される子機を有する従来のファクシミリ装置の動作を示した図であり、オフフック操作の検知時に回線抜けが生じた場合が示されている。
【符号の説明】
【0066】
1 ファクシミリ装置
2,5,7 コネクタ
3 DAA回路
4 制御部
6,8 リレー回路
9 ディスプレイ
10a スキャナ部
10b プリンタ部
11 装置本体
21 子機
41 電圧低下検出部
42 傾き判別部
44 第1の比較部
46 第2の比較部
48 第3の比較部
49 オフフック操作検出部
50 操作情報表示処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話回線の回線電圧を検出する回線電圧検出手段と、
上記回線電圧検出手段による検出結果に基づいて、回線電圧の低下を検出する電圧低下検出手段と、
上記電圧低下検出手段により回線電圧の低下が検出された場合に、上記回線電圧検出手段による検出結果に基づいて電圧低下の傾きを検出する傾き検出手段と、
上記傾き検出手段により検出された電圧低下の傾き及び所定の回線抜け傾き閾値を比較する第1の比較手段と、
上記回線電圧検出手段により検出された回線電圧及び所定のオフフック閾値を比較する第2の比較手段と、
上記回線電圧検出手段により検出された回線電圧及び上記オフフック閾値よりも小さな回線抜け電圧閾値を比較する第3の比較手段と、
上記第1の比較手段による比較結果、上記第2の比較手段による比較結果及び上記第3の比較手段による比較結果に基づいて、子機に対するオフフック操作を検出するオフフック操作検出手段とを備えたことを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項2】
上記オフフック操作検出手段は、電圧低下の傾きが上記回線抜け傾き閾値よりも大きく、さらに、回線電圧が上記オフフック閾値よりも小さく、かつ、上記回線抜け電圧閾値よりも高い場合にオフフック操作が行われたと判断し、電圧低下の傾きが回線抜け傾き閾値よりも小さい場合と、電圧低下の傾きが回線抜け傾き閾値よりも大きく、かつ、回線電圧が回線抜け電圧閾値よりも低い場合とにはオフフック操作ではなく回線抜けであると判断することを特徴とする請求項1に記載のファクシミリ装置。
【請求項3】
上記傾き検出手段は、上記電圧低下の傾きとして、所定時間内における回線電圧の変化量を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載のファクシミリ装置。
【請求項4】
上記傾き検出手段は、上記電圧低下の傾きとして、回線電圧が所定の開始電圧から終了電圧まで低下するのに要する時間を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載のファクシミリ装置。
【請求項5】
上記オフフック操作検出手段は、回線電圧が上記オフフック閾値を下回ったときから所定時間が経過するまでに回線電圧が上記回線抜け電圧閾値よりも低下した場合に、オフフック操作ではなく回線抜けであると判断することを特徴とする請求項1又は2に記載のファクシミリ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−211298(P2008−211298A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43549(P2007−43549)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】