説明

ファスナー

【課題】ピンの操作性に優れ、かつ、複数の板状部材の締結後において、比較的簡易に締結を解除することができる。
【解決手段】ファスナー10は、座部13と座部13から突出する弾性変形可能な垂下部14とを有するグロメット11と、頭部30と頭部30から突出する軸部33とを有するピン12とを含む。座部13は、軸部33の鍔部32が嵌合される環状段差部17を有し、環状段差部17の内面にはカム面22が形成されており、垂下部14はその周方向において等間隔に配置された複数の脚部26を有し、脚部26は、座部13から下方に延びる基部28と、基部28の下端から内方へ延びる作用部29とを有し、脚部26間に間隙34が形成されている。ピン12は、頭部30の下方に位置し、その下端にはカム面22に倣う係合凸部45が形成された鍔部32と、軸部33の下端には先細部36が形成され、先細部36の下方には複数の突起状のガイド部39が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、グロメットとピンからなり、複数の板状部材を互いに重ね合わせて締結するためのファスナー、特に、手動による操作性に優れたファスナーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたファスナーは、グロメットと、グロメットに挿通されるピンとから構成されており、ピンをグロメットの挿通孔に挿入することによって、グロメットの脚部が弾性変形して拡開され、板状部材を互いに安定的に締結することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−105359号公報
【0004】
しかし、特許文献1に係るファスナーにおいては、グロメットの座部にピンの頭部が嵌合されるので、締結後に、ピンの頭部を摘んでそのまま引き上げたり、または、一方側に回転させることができない。したがって、ファスナーで複数の板状部材を締結した後は、ファスナーの嵌合状態を解除することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来のファスナーの改良であって、ピンの操作性に優れ、かつ、複数の板状部材の締結後において、比較的簡易に締結を解除することのできるファスナーの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、座部と前記座部から突出する弾性変形可能な垂下部とを有するグロメットと、頭部と前記頭部から突出する軸部とを有するピンとを含み、互いに重ねられた第1及び第2板状部材の取付孔に挿入され、それらを締結するためのファスナーの改良に関わる。
【0007】
本発明に係るファスナーは、前記座部は、環状段差部を有し、前記環状段差部の内面にはカム面が形成されており、前記垂下部はその周方向において等間隔に配置された複数の脚部を有し、前記脚部は、前記座部から下方に延びる基部と、前記基部の下端から内方へ延びる作用部とを有し、前記脚部間には間隙が形成されており、
前記ピンは、前記頭部の下方に位置し、その下端には前記カム面に倣う形状を有する係合凸部が形成された鍔部と、前記軸部の下端には先細部が形成され、前記先細部の下方には複数の突起状のガイド部が形成されており、前記ピンの前記軸部を前記グロメットの垂下部に挿入し、前記ガイド部を前記脚部間の前記間隙に位置させることによって、前記カム面と前記係合凸部とが離間対向し、前記ピンをそのまま下方へさらに押し込むことによって、前記鍔部と前記環状段差部とが嵌合されるとともに、前記脚部の作用部に前記軸部の先細部が上方から下方へ向かって摺動して前記脚部が押し広げられて前記垂下部が拡径し、前記座部と前記脚部とによって前記第1及び第2板状部材が締結される一方、前記締結状態から前記ピンを回転させることによって前記脚部の前記作用部に前記軸部の先細部が下方から上方へ向かって摺動して前記垂下部が弾性復帰し、前記鍔部が前記環状段差部から離間して、前記締結状態が解除されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るファスナーによれば、グロメットの垂下部にピンを挿入し、かつ、ピンの軸部に形成されたガイド部を垂下部の脚部間の空隙に位置させることによって、垂下部の座部の環状段差部に形成されたカム面とそれに倣うピンの鍔部の下端に形成された係合凸部とが離間対向し、そのままさらにピンをグロメットに押し込むことによって、第1及び第2板状部材を互いに締結することができる。また、締結の解除時には、ピンの頭部を指で摘んで一方向に回転させ、係合凸部をカム面に摺動させることによって、グロメットの垂下部が弾性復帰し、
ピンの鍔部を環状段差部から離脱させることができるので、解除操作を比較的容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ファスナーの斜視図。
【図2】グロメットの斜視図。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図。
【図4】(a)ピンの斜視図、(b)係合凸部の拡大図。
【図5】図1のV−V線に沿う断面図。
【図6】ファスナーを第1及び第2板状部材の第1及び第2取付孔に挿入する前の状態を示す図。
【図7】第1及び第2取付孔に挿入されたファスナーの図。
【図8】ピンをグロメットに押し込んだ状態におけるファスナーの図。
【図9】締結状態におけるファスナーの図。
【図10】締結状態における係合凸部とカム面との位置関係を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照して、本発明に係るファスナー10の実施形態を説明すると以下のとおりである。
図1〜図3を参照すると、ファスナー10は、中心軸C−Cに関して対称に形成されており、円筒状のグロメット11と、グロメット11に挿入されるピン12とを含む。
【0011】
グロメット11は、ABS樹脂やポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂等の弾性変形可能な熱可塑性合成樹脂の成形品であって、略円形の開口13aを有するフランジ状の座部13と、座部13から下方へ延びる垂下部14とを含む。グロメット11の中央部には、座部13と垂下部14とを貫通する挿通孔15が形成されている。
【0012】
座部13は、その内周面、すなわち、挿通孔15の周縁に環状段差部17が形成されている。環状段差部17には、座部13の周方向において交互に連続して位置する第1傾斜面20と第2傾斜面21とからなるカム面22が形成されている。隣り合う第1傾斜面20と第2傾斜面21との間には、起伏を繰り返すように、頂部24と、座部13の周方向において頂部24間に位置する底部25とが形成されており、底部25は溝状である。
【0013】
垂下部14は、4つに分割された略円筒状であって、周方向において等間隔に離間して互いに隣接する第1〜4脚部26を有し、周方向において互いに隣り合う脚部26間には、その上端部から下端部まで延びる間隙34が形成されている。また、各脚部26の上端部の座部13側には、4つの突起27が形成されている。
【0014】
垂下部14の各脚部26は、座部13の下端から下方へ延びる基部28と、基部28の下端から内方へ屈曲して延びる作用部29とを有する。作用部29は、脚部26の内面側において基部28の下端から内方へ斜めに延びる傾斜部位29aと、傾斜部位29aから下方へ直状に延びる内端部位29bとを有する。
【0015】
ピン12は、グロメット11と異なり弾性変形が不要であるので、硬質な材料、例えば、ABS樹脂やポリアセタ―ル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性合成樹脂や金属から形成することができる。図4及び5に示すとおり、ピン12は、断面略十字状の頭部30と、頭部30の下方に位置する頸部31と、頸部31から下方へ延出する鍔部32と、鍔部32から下方へ延びる軸部33とを有する。頭部30は、その周方向において離間する4つの操作部位35を有する。また、軸部33はその下端部が先細状を有しており、先細部位36が形成されている。先細部位36からさらに下方へ延びる延出部位37には、4条のリブ状のガイド部39とガイド部39間に位置する溝部40とが形成されている。延出部位37の下端には、軸部33とほぼ同径のストッパ部42が形成されている。ストッパ部42は、下端が下方へ僅かに凸となる曲状を有しており、その外形寸法はグロメット11の垂下部14の下端部位の外形寸法よりも大きいものであって、図1に示すとおり、グロメット11に対するピン12の抜け止めとして作用する。
【0016】
ピン12の鍔部32の下端には、下方へ向ってテーパ状に延びる、一対の係合凸部45を有する。図4(b)に示すとおり、係合凸部45は、グロメット11の座部13の内面に形成されたカム面22の第1及び第2傾斜面20,21の形状に倣う斜面状の第1摺動部46と第2摺動部47とを有し、第1摺動部46と第2摺動部47との間には先端部48が形成されている。
【0017】
図1及び図5に示すとおり、ピン12はグロメット11に挿入された状態(嵌合する前の状態)において、軸部33がグロメット11の挿通孔15に挿通され、かつ、ピン12のガイド部39がグロメット11の間隙34に挿入されており、グロメット11内におけるピン12の回転が防止されている。また、ピン12の鍔部32はグロメット11の座部13の上方に位置して離間した状態にある。なお、ピン12をグロメット11の挿通孔15に挿通するときに、垂下部14は、ストッパ部42によって弾性変形して拡径され、ストッパ部42が脚部26の作用部29を通過した後に弾性復帰してピン12の軸部33に当接する。
【0018】
図6は、ファスナー10を第1板状部材51と第2板状部材52とに挿通する前の状態を示す図、図7は、第1及び第2取付孔53,54に挿入されたファスナー10の図、図8は、ピン12をグロメット11に押し込んだ状態を示す図である。
【0019】
図6に示すとおり、第1板状部材51の中央部には矩形の第1取付孔53が形成されており、第2板状部材52の中央部には略円形の第2取付孔54が形成されている。なお、通常、上下に重なる板状部材のうちの下側の板状部材、すなわち、第2板状部材52が固定されており、第1板状部材51を第2板状部材52に締結するためにファスナー10は使用される。また、第1及び第2板状部材51,52の大きさ及び形状は、本願発明による効果を奏する限りにおいて、適宜変更することができる。前記のとおり、使用前の状態においてピン12はグロメット11の垂下部14に挿通されており、ピン12のガイド部39がグロメット11の間隙34に挿入され、また、作用部29の内端縁29bが延出部位37の溝40に当接し、ピン12の回転が防止されている。なお、ピン12をグロメット11に挿入するときに、ピン12の頭部30を指で摘んでピンを一方方向に回転させながら位置を合わせることによって、容易にガイド部39を間隙34に挿入させることができる。
【0020】
かかる状態において、鍔部32の係合凸部45と座部13のカム面22とは、前者の先端部48と後者の底部25とが互いに対向するように位置している。したがって、ピン12をそのまま下方へ押し込むことによって係合凸部45の第1摺動部46と第2摺動部47とをそれらに対応するカム面22の第1及び第2斜面20,21に当接させ、鍔部32を座部13の環状段差部17に嵌合させることができる。このように、ガイド部39と間隙34とは、グロメット11内におけるピン12の回転止め手段であるとともに、係合凸部45とカム面22とが適正に嵌合するようにピン12をグロメット11に対して位置決めするための手段であるといえる。
【0021】
ファスナー10を用いて第1板状部材51と第2板状部材52とを締結する手順を述べると、まず、図7に示すとおり、第1板状部材51と第2板状部材52とを第1取付孔53と第2取付孔54とが連通された状態で重ね合わせ、第1及び第2取付孔53,54にその上方側からファスナーを挿入する。第1取付孔53は、ピン12の鍔部32よりもその外形が小さく、かつ、その外形が第2取付孔34のそれよりも大きいものであって、ファスナー10を挿入した状態において、グロメット11の座部13の下端が第1板状部材51の上面51aに当接し、
突起27が第1板状部材51の第1取付孔53の内周縁53aに当接している。一方、垂下部14と対向する第2板状部材52の第2取付孔54の内周縁54aは垂下部14と当接しておらず、空隙Sが形成されている。なお、ファスナー10を第1及び第2取付孔51,52に挿入する手順について言えば、ピン12をグロメット11に挿入した状態のままそれらに挿入してもよいし、まずグロメット11のみを第1及び第2取付孔53,54に挿通し、その後に、グロメット11にピン12を挿入してガイド部39を間隙34に位置させることによって、後記の締結を行うこともできる。
【0022】
かかる状態において、ピン12をさらにグロメット11に押しこむと、垂下部14の作用部29にはピン12の先細部36が摺接して作用部39は延出部位37の溝40から離間するとともに、ガイド部39は間隙34から抜け出る。先細部36がその下方側から上方側に向かって作用部29と摺接することによって、脚部26が弾性変形して押し広げられ、脚部26間の間隙34が下方へ向かって幅広となり、垂下部14は次第に拡径される。また、ピン12がグロメット11に徐々に押し込まれることによって、鍔部32の係合凸部45が次第に垂下部14のカム面22に近づく。垂下部14が拡径されることによって、各脚部26は次第に第2板状部材52の第2取付孔54の内周縁54aに近づき、空隙Sは次第に小さくなり、作用部29の内端部位29bが円筒状部33と先細部36との境界に位置する屈曲部位33aと摺接するときに、拡開された脚部26が第2取付孔54の内周縁54aに押し当てられた状態となる。また、これと同時に、係合凸部45の第1及び第2摺動部46,47はそられに対応するカム面22の第1及び第2傾斜面20,21に当接し、鍔部32は座部13の環状段差部17に嵌合される。このように、脚部26は弾性変形して第2取付孔54の内周縁54aに押し当てられたままの状態で保持されているので、第1及び第2板状部材51,53は座部13と脚部26とによって上下から挟圧された状態となり、それらを締結して積層された板状部材とすることができる。
【0023】
締結状態において、係合凸部45の全体がカム面22に面状に当接し、かつ、それらが嵌合されることによってピン12とグロメット11とが安定的に締結されるので、外部からの衝撃によって締結が解除されるおそれはない。また、ピン12を回転させることなくそれをグロメット11に押し込むだけで、それらを嵌合することができるので、操作が容易である。なお、脚部26を弾性変形させることによって第1板状部材51と第2板状部材52とを締結させることができる限りにおいて、第1及び第2取付孔53,54は、矩形、円形、それ以外の多角形であってもよい。ただし、本実施形態のように、第1取付孔53が矩形の場合には、垂下部14の突起27が第1取付孔53の1辺をなす直状の内周縁に接し、それが円形状を有する場合に比して、よりがた付きを抑制することができる。
【0024】
図9は、締結状態におけるファスナーの様子を示す図、図10は、締結状態における係合凸部とカム面との位置関係を説明する図である。なお、図10では、Q方向へピン12を回転させたときの係合凸部45の状態を仮想線で示している。
【0025】
次に、第1板状部材53と第2板状部材54との締結を解除するときの操作について説明すると、図9に示すとおり、まず、ピン12の操作部30を指で摘んで矢印P又はQのいずれか一方の方向(ピン12の軸心の回転方向)に回転させる。図10に示すとおり、操作部30にそれを回転させようとする力が加わると、カム面22の底部25と当接していた係合凸部45の先端部48は、カム面22の第1傾斜面20(頭部30を矢印Q方向に回転させた場合)または第2傾斜面21(頭部30を矢印P方向に回転させた場合)に対してそれをせり上がるように摺動しながら上方に移動する。それと同時に、ピン12の軸部33も回転しながら上方へ移動して、作用部29には先細部36がその上方側から下方側に向かって回転しながら摺接される。それとともに、垂下部14は拡径された状態から解放されて弾性復帰し、脚部26は第2取付孔52の内周面52aから離間して、空隙Sが形成され、ファスナーによる第1及び第2板状部材51,52の締結は解除される(図7参照)。
【0026】
ピン12は、それをP又はQ方向へ約45°回転させることによって係合凸部45がカム面22から離脱して先端部48がカム面22の頂部24と当接した状態となり、同方向にさらに45°回転させることによって、締結状態において任意の間隙34の下方に位置していたガイド部39とは異なる、その回転方向側に隣接するガイド部39が該間隙34に挿入される。かかる状態では、係合凸部45の先端部48とカム面22の底部25とが互いに対向する位置にあるので、そのままピン12をグロメット11に押し込むことによって、再び締結状態とすることができる。なお、このようにピン12を回転させなくとも、締結状態から頭部30を摘んでそのまま引き上げることによって、ピン12をグロメット11から引き抜いて締結を解除することができる。しかし、その場合には、比較的に強い力でピン12を引き抜くことになるので、第2板状部材52にグロメット11の脚部26が圧接されて、その一部が破損するおそれがある。ピン12を回転させる場合には、垂下部14の弾性復帰しようとする力の反動でピン12が上方に僅かに撥ね上がるので、比較的に小さい回転力でも容易に締結を解除することができる。
【0027】
本願発明では、グロメット11が予め第1及び第2板状部材51,52に取り付けられているものではないので、締結を解除した後に、ファスナーを第1及び第2板状部材51,52から容易に取り外すことができる。また、締結の解除時において頭部30を回転させるときに、頭部30が略十字形を有することによって、指で摘み易く、操作が比較的に簡易である。また、第1板状部材51の第1取付孔53が、略円形の場合にはピン12を回転させたときにグロメット11がそれと一緒に回転するおそれがあるが、第1取付孔53は略矩形であって、垂下部14の突起27と当接されているので、かかる不利益が生じるおそれはない。
【0028】
以上に記載した本発明に関する開示は、少なくとも下記事項に要約することができる。
【0029】
座部13と座部13から突出する弾性変形可能な垂下部14とを有するグロメット11と、頭部30と頭部30から突出する軸部33とを有するピン12とを含み、互いに重ねられた第1及び第2板状部材51,52の取付孔53,54に挿入され、それらを締結するためのファスナー10に関する。座部13は、環状段差部17を有し、環状段差部17の内面にはカム面22が形成されており、垂下部14はその周方向において等間隔に配置された複数の脚部26を有し、脚部26は、座部13から下方に延びる基部28と、基部28の下端から内方へ延びる作用部29とを有し、脚部26間には間隙34が形成されている。ピン12は、頭部30の下方に位置し、その下端にはカム面22に倣う形状を有する係合凸部45が形成された鍔部32と、軸部33の下端には先細部36が形成され、先細部36の下方には複数の突起状のガイド部39が形成されている。ピン12の軸部33をグロメット11の垂下部14に挿入し、ガイド部39を脚部26間の間隙34に位置させることによって、カム面22と係合凸部45とが離間対向し、ピン12をそのまま下方へさらに押し込むことによって、鍔部32と環状段差部17とが嵌合されるとともに、脚部26の作用部29に軸部33の先細部36が上方から下方へ向かって摺動して脚部26が押し広げられて垂下部14が拡径し、座部13と脚部26とによって第1及び第2板状部材51,52が締結される一方、締結状態からピン12を回転させることによって脚部26の作用部29に軸部33の先細部36が下方から上方へ向かって摺動して垂下部14が弾性復帰し、鍔部32が環状段差部17から離間して、締結状態が解除される。
【0030】
上記段落0029に開示した本発明は、少なくとも下記の実施の形態を含むことができる。
(1)前記頭部30は、略十字形を有している。
(2)前記カム面22は第1及び第2傾斜面20,21を有し、前記係合凸部45は前記ファスナー10の締結状態において前記第1及び第2傾斜面20,21に圧接される第1及び第2摺動部46,47を有し、前記ピン11を回転させることによって、前記第1及び第2摺動部20,21が前記第1及び第2傾斜面20,21を上方へ向かって摺動し、前記鍔部32が前記環状段差部17から抜け出て前記締結状態が解除される。
(3)前記第1板状部材51の第1取付孔53は略矩形であって、前記垂下部14の上端には前記締結状態において前記第1取付孔53の内周縁53aに当接する突起27が形成されている。
(4)円筒状のストッパ部42が、前記軸部33の下端の下方に形成されており、前記ピン12が前記グロメット11に挿入された状態において前記ストッパ部42は前記垂下部14の下方に位置し、前記ストッパ部42の外形寸法は前記垂下部14の下端の外形寸法よりも大きい。
【0031】
10 ファスナー
11 グロメット
12 ピン
13 座部
14 垂下部
17 環状段差部
22 カム面
20 第1斜面
21 第2斜面
26 脚部
27 突起
28 基部
29 作用部
30 頭部
32 鍔部
33 軸部
34 間隙
36 先細部
39 ガイド部
45 係合凸部
46 第1摺動部
47 第2摺動部
51 第1板状部材
52 第2板状部材
53 第1取付孔
53a 第1取付孔の内周縁
54 第2取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と前記座部から突出する弾性変形可能な垂下部とを有するグロメットと、頭部と前記頭部から突出する軸部とを有するピンとを含み、互いに重ねられた第1及び第2板状部材の取付孔に挿入され、それらを締結するためのファスナーにおいて、
前記座部は、環状段差部を有し、前記環状段差部の内面にはカム面が形成されており、前記垂下部はその周方向において等間隔に配置された複数の脚部を有し、前記脚部は、前記座部から下方に延びる基部と、前記基部の下端から内方へ延びる作用部とを有し、前記脚部間には間隙が形成されており、
前記ピンは、前記頭部の下方に位置し、その下端には前記カム面に倣う形状を有する係合凸部が形成された鍔部と、前記軸部の下端には先細部が形成され、前記先細部の下方には複数の突起状のガイド部が形成されており、
前記ピンの前記軸部を前記グロメットの垂下部に挿入し、前記ガイド部を前記脚部間の前記間隙に位置させることによって、前記カム面と前記係合凸部とが離間対向し、前記ピンをそのまま下方へさらに押し込むことによって、前記鍔部と前記環状段差部とが嵌合されるとともに、前記脚部の作用部に前記軸部の先細部が上方から下方へ向かって摺動して前記脚部が押し広げられて前記垂下部が拡径し、前記座部と前記脚部とによって前記第1及び第2板状部材が締結される一方、
前記締結状態から前記ピンを回転させることによって前記脚部の前記作用部に前記軸部の先細部が下方から上方へ向かって摺動して前記垂下部が弾性復帰し、前記鍔部が前記環状段差部から離間して、前記締結状態が解除されることを特徴とする前記ファスナー。
【請求項2】
前記頭部は、略十字形を有している請求項1に記載のファスナー。
【請求項3】
前記カム面は第1及び第2傾斜面を有し、前記係合凸部は前記ファスナーの締結状態において前記第1及び第2傾斜面に圧接される第1及び第2摺動部を有し、前記締結前記ピンを回転させることによって、前記第1及び第2摺動部が前記第1及び第2傾斜面を上方へ向かって摺動し、前記鍔部が前記環状段差部から抜け出て前記締結状態が解除される請求項1又は2に記載のファスナー。
【請求項4】
前記第1板状部材の第1取付孔は略矩形であって、前記垂下部の上端には、前記締結状態において前記第1取付孔の内周縁に当接する突起が形成されている請求項1〜3のいずれかに記載のファスナー。
【請求項5】
円筒状のストッパ部が、前記軸部の下端の下方に形成されており、前記ピンが前記グロメットに挿入された状態において前記ストッパ部は前記垂下部の下方に位置し、前記ストッパ部の外形寸法は前記垂下部の下端の外形寸法よりも大きい請求項1〜4のいずれかに記載のファスナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−53703(P2013−53703A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193389(P2011−193389)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000152169)株式会社栃木屋 (50)
【Fターム(参考)】