説明

ファン組立体

【課題】改良されたファン組立体を提供すること。
【解決手段】空気の流れを生成するためのファン組立体は、空気入口(20)と、空気出口(14)と、インペラ(64)と、前記空気入口から前記空気出口を通過する空気流を生成するため前記インペラを回転させるモータ(68)と、を備える。空気出口(14)は、空気流を受け入れるための内部通路(94)及び空気流を放出するための口部(26)を含む。空気出口は、口部から放出される空気流によってファン組立体の外部からの空気がそこを通って引き込まれる開口(24)を形成する。モータ(68)は、使用時に少なくとも5000rpmの速度で回転することができるロータを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン組立体に関する。好ましい実施形態では、本発明は、部屋、オフィス又は他の家庭環境において空気の流れを生成するためのタワーファンのような家庭用ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の家庭用ファンは、典型的には、軸線の周りで回転するように取り付けられた羽根又はベーンのセットと、羽根のセットを回転させて空気流を発生させるための駆動装置とを含む。空気流の移動及び循環により「風冷」又は微風が生じ、その結果、ユーザは、対流及び蒸発によって熱が放散されると冷却効果を受ける。
【0003】
このようなファンは、様々なサイズ及び形状で利用可能である。例えば、天井ファンは、少なくとも1mの直径にすることができ、通常は、天井から吊り下げた状態で取り付けられて空気の下降側の流れを提供して、部屋を冷却するようにする。他方、卓上ファンは、約30cmの直径であることが多く、通常は自立型及び携帯型である。床置型タワーファンは、一般に、高さ約1mの細長い垂直に延びるケーシングを含み、通常、300から500L/sの範囲の空気流量を発生させるために回転羽根の1つ又はそれ以上のセットを収容する。首振り機構を利用してタワーファンからの出口を回転させることができ、空気流が部屋の広い区域にわたって掃引されるようにする。
【0004】
このタイプの配置の欠点は、ファンの回転羽根によって生成された空気流が、全体的に均一ではない点である。これは、ファンの羽根面及び外向き面にわたる変動に起因する。これらの変動の範囲は、製品毎に異なり、更に個々のファン機械毎に異なる可能性がある。これらの変動は、一連の空気の脈動として感じる場合があり、ユーザにとって心地よいものではない可能性がある、一様でない又は「ムラのある」空気流の発生を生じる結果となる。
【0005】
家庭環境では、電気器具は、空間的制限によって可能な限り小さく小型であることが望ましい。電気器具の部品は、外向きに突出すること、又はユーザが羽根などの何らかの可動部品に触れることは望ましいことではない。多くのファンは、ファンの可動部品からの損傷を防ぐために、羽根の周囲にケージ又はシュラウドのような安全機構を有する傾向があるが、このようなケージ部品は清掃が困難な場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Reba著、Scientific American、第214巻、1996年6月、p84−92
【発明の概要】
【0007】
本発明は、空気の流れを生成するためのファン組立体を提供し、ファン組立体は、空気入口と、空気出口と、インペラと、空気入口から空気出口を通る空気流を生成するためインペラを回転させるモータとを備え、空気出口が、空気流を受け入れるための内部通路及び空気流を放出するための口部を含み、空気出口が、口部から放出される空気流によってファン組立体の外部からの空気が引き込まれる開口を形成し、モータは、使用時に少なくとも5000rpmの速度で回転することができるロータを有する。
【0008】
このファン組立体によって、羽根付きファンを用いることなく空気の流れを発生させ、冷却効果をもたらすことができる。ファン組立体によって生成される空気の流れは、弱い乱流を有し、且つ他の従来技術の装置によって提供されるものに比べてより線形の空気流分布を有する空気流であるという利点を有する。これは、空気流を受け入れるユーザの快適性を向上させることができる。インペラを駆動するための高速モータを設けることによって、口部を通って放出される空気流の運動量は、内部通路への空気流の送給、及びその結果生じる口部通過時の空気流の狭窄によって損なわれることがない。
【0009】
好ましくは、ロータは、少なくとも8000rpmの速度で、より好ましくは、少なくとも9000rpmの速度で回転することができる。モータは、好ましくはDCブラシレスモータを含む。これにより、従来のブラシ付きモータで用いるブラシによる摩擦損失及びカーボン屑を回避することが可能になる。カーボン屑及び排出物質の減少は、病院又はアレルギーを起こす人の周囲など、クリーンな又は汚染物質に敏感な環境において有利である。羽根付きファンにおいて一般に用いられる誘導モータもブラシレスであるが、DCブラシレスモータは、誘導モータよりも遙かに広範囲の作動速度をもたらすことができる。インペラは、好ましくは混成流インペラである。モータ及びインペラは、好ましくは、ファン組立体のベース内に位置付けられ、空気出口は、好ましくは、ベース上に取り付けられる。ベースは、好ましくは、ベースの側壁に位置付けられる空気入口を含む。例えば、ベースの空気入口は、アパーチャのアレイを有するグリルを含むことができる。ベースは、好ましくは空気出口を有し、該空気出口は、空気流を実質的に垂直方向で空気出口の内部通路に搬送するように配置される。ベースは、好ましくは円筒形状であり、好ましくは、100から300mmの範囲の高さを有する。ファン組立体は、好ましくは、400から1500mmの範囲の高さを有する。
【0010】
ファン組立体及び特に好ましい実施形態のファンに関する以下の説明では、用語「羽根無し」は、可動羽根を用いることなく空気流がファン組立体から前方に放出又は噴射されるファン組立体を説明するのに用いられる。この定義により、羽根無しファン組立体は、空気流がユーザに向けて又は部屋中に配向される可動羽根の無い出力区域又は放出ゾーンを有すると考えることができる。羽根無しファン組立体の出力区域には、ポンプ、発電機、モータ、或いは、空気流を発生させるモータロータ及び/又は羽根付きインペラのような回転装置を含むことができる他の流体移送装置など、種々の異なる供給源の1つによって発生される一次空気流を供給することができる。発生した一次空気流は、ファン組立体の外側の部屋空間又は他の環境から内部通路を介して口部を通過し、次いで、空気出口の口部を通り部屋空間に出ることができる。
【0011】
従って、羽根無しとしてのファン組立体の説明は、電源及び二次的なファン機能に必要なモータなどの構成部品の説明にまで及ぶものではない。二次ファン機能の例としては、ファン組立体の照明、調節及び首振りを含むことができる。
【0012】
空気が口部から放出される方向は、好ましくは、空気流が内部通路の少なくとも一部を通って流れる方向に対して実質的に直角である。好ましい実施形態では、空気流は、内部通路の少なくとも一部を通って実質的に垂直方向に流れ、空気は、口部から実質的に水平方向に放出される。内部通路は、好ましくは、空気出口の前部に向けて配置され、口部は、好ましくは、空気出口の後方に向けて配置され、且つ空気出口の前部に向けて開口を通して空気を配向するように配置される。その結果、好ましい実施形態では、口部は、空気流の各部分が内部通路から口部の出口を通過するときにその流れ方向を実質的に反転するように成形される。口部は、好ましくは、実質的にU字形の断面であり、その出口に向かって狭くなるのが好ましい。
【0013】
空気出口の形状は、羽根付きファンのための空間を含む要件によって制約されない。好ましくは、空気出口は、好ましくは開口を囲むノズルを含む。例えば、ノズルは、50から250cmの範囲の距離を開口の付近に延びることができる。好ましい実施形態では、空気出口は、好ましくは、500から1000mmの範囲の高さ、及び100から300mmの範囲の幅を有する細長い環状ノズルである。或いは、空気出口は、実質的に円形とすることができる。空気出口は、好ましくは、一方の端部で空気流を受け入れて、該空気流を2つの気流に分割するように成形され、好ましくは、各気流は、開口のそれぞれの細長い側面に沿って流れる。
【0014】
空気出口は、好ましくは、内部通路、口部及び開口を形成する環状内側ケーシングセクション及び環状外側ケーシングセクションを含む、ケーシングを備える。各ケーシングセクションは、複数の構成部品を含むことができるが、好ましい実施形態では、これらのセクションの各々は単一の環状構成部品から形成される。外側ケーシングセクションは、好ましくは、部分的に内側ケーシングセクションと重なり合い、内側ケーシングセクションの外面と外側ケーシングセクションの内面との重なり部分間に口部の少なくとも1つの出口を形成するように成形される。上記または各出口は、好ましくはスロットの形態であり、0.5から5mmの範囲の幅を有するのが好ましい。従って口部は、好ましくは、空気流がファン組立体から放出されるスロットを含む。好ましい実施形態では、口部は、開口の周りに離間された複数のこのような出口を含む。例えば、1つ又はそれよりも多いシール部材が口部内に配置されて、離間して配置された複数の出口を形成することができる。好ましくは、出口は実質的に同じサイズのものである。空気出口が環状の細長ノズルの形態である好ましい実施形態では、各出口は、好ましくはノズルの内周のそれぞれの細長い側面に沿って配置される。
【0015】
空気出口は、内側ケーシングセクション及び外側ケーシングセクションの重なり部分を強制的に引き離すようにするための複数のスペーサを含むことができる。これにより、実質的に均一な出口幅が開口の周りで得られるようにすることができる。出口幅の均一性は、口部からの空気の比較的滑らかで実質的に均等な出力をもたらす。
【0016】
空気出口は、口部に隣接して位置付けられた表面、好ましくはコアンダ面を含むことができ、口部が配置されて、そこから放出される空気流をコアンダ面上に配向する。好ましい実施形態では、内側ケーシングセクションの外面は、コアンダ面を形成するように成形される。コアンダ面は、表面に近い出力オリフィスから出る流体流がコアンダ効果を示す公知のタイプの表面である。流体は、表面全体に近接し、ほぼ「密着して」又は「張り付いて」流れる傾向がある。コアンダ効果は、一次空気流がコアンダ面上に配向される同伴に関しての既に証明され且つ十分に立証された方法である。コアンダ面の特徴及びコアンダ面上の流体流の効果に関する説明は、Reba著、Scientific American、第214巻、1996年6月、p84−92のような記事で見ることができる。コアンダ面を使用することにより、ファン組立体の外部からの大量の空気が、口部から放出される空気により開口を通って引き込まれる。
【0017】
好ましい実施形態では、空気流は、ファン組立体を通って生成される。以下の説明では、この空気流を一次空気流と呼ぶ。一次空気流は、口部から放出され、好ましくはコアンダ面上を通過する。一次空気流は、ノズルの口部を囲む空気を同伴し、これは、一次空気流及び同伴空気の両方をユーザに供給する空気増量器としての役割を果たす。同伴空気は、本明細書では二次空気流と呼ぶ。二次空気流は、口部を囲む部屋空間、領域又は外部環境から、更に移動によってファン組立体の周囲の他の領域から引き込まれ、大部分は開口を通って流れる。コアンダ面上に配向された一次空気流と同伴二次空気流と組み合わせたものが、開口から前方に放出又は噴射される総空気流に等しい。総空気流は、ファン組立体が冷却に好適な空気の流れを生成するのに十分である。好ましくは、口部を囲む空気の同伴は、滑らかな全体の出力を維持しながら、一次空気流が少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍に増幅されるようなものである。好ましくは、空気出口は、コアンダ面の下流側に位置付けられるディフューザを含む。ディフューザは、滑らかで均等な出力を維持しながら放出された空気流をユーザの場所に向けて配向し、ユーザが「ムラのある」流れを感じることなく好適な冷却効果を発生させる。
【0018】
空気出口が細長いノズルの形態である場合、ノズルは、内部通路内に配置され且つ各々が空気流の一部分を口部に向けて配向するための、複数の固定ガイドベーンを含む。このようなガイドベーンの使用は、口部を通る空気流の実質的に均一な分布を生成するのを助けることができる。
【0019】
ベースの空気入口は、アパーチャのアレイを有するグリルを含むことができる。ベースの出口は、好ましくは、実質的に垂直方向の空気流をノズル内に搬送するように配置される。ベースは、好ましくは円筒形状であり、好ましくは、100から300mmの範囲の高さを有する。ファン組立体は、好ましくは、400から1500mmの範囲の高さを有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】タワーファンの正面図である。
【図2】図1のファンの斜視図である。
【図3】図1のファンのベースの断面図である。
【図4】図1のファンのノズルの分解図である。
【図5】図4に示す区域Aの拡大図である。
【図6】図4のノズルの正面図である。
【図7】図6の線E−Eに沿ったノズルの断面図である。
【図8】図6の線D−Dに沿ったノズルの断面図である。
【図9】図8に示すノズルの断面の拡大図である。
【図10】図6の線C−Cに沿ったノズルの断面図である。
【図11】図10に示すノズルの断面の拡大図である。
【図12】図6の線B−Bに沿ったノズルの断面図である。
【図13】図12に示すノズルの断面の拡大図である。
【図14】図1のファンのノズルの一部を通る空気流を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、例示として、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0022】
図1及び2は、羽根無しファン組立体の1つの実施形態を示す。この実施形態では、羽根無しファン組立体は、ベース12と、ベース12上に取り付けられて支持されるノズル14の形の空気出口とを含む、家庭用携帯型タワーファン10の形態である。ベース12は、ディスク状ベースプレート18上に任意選択的に取り付けられた実質的に円筒形の外側ケーシング16を含む。外側ケーシング16は、外側ケーシング16内に形成されたアパーチャの形態で複数の空気入口20を含み、これを通って一次空気流が外部環境からベース12に引き込まれる。ベース12は更に、ファン10の動作を制御するためにユーザ操作可能なボタン21及びユーザ操作可能なダイヤル22を含む。この実施形態では、ベース12は、100から300mmの範囲の高さを有し、外側ケーシング16は、100から200mmの範囲の直径を有する。
【0023】
ノズル14は、細長い環状形状を有し、細長い中心開口24を形成する。ノズル14は、500から1200mmの範囲の高さと、150から400mmの範囲の幅とを有する。この実施例では、ノズルの高さは約750mmであり、ノズルの幅は約190mmである。ノズル14は、開口24を通してファン10から空気を放出するためにファン10の後方に向けて配置された口部26を含む。口部26は、少なくとも部分的に開口24のまわりに延びる。ノズル14の内周は、口部26に隣接して配置され且つその上で口部26がファン10から放出される空気を配向する、コアンダ面28と、コアンダ面28の下流側に配置されるディフューザ表面30と、ディフューザ表面30の下流側に配置されるガイド表面32とを含む。ディフューザ表面30は、ファン10から放出される空気流を助けるように、開口24の中心軸線Xから離れて先細に構成される。ディフューザ表面30と開口24の中心軸線Xとの間に定められる角度は、5から15°の範囲内であり、この実施形態では約7°である。ガイド表面32は、ディフューザ表面30に対してある角度で配置されて、ファン10からの冷却空気流の効率的な送給を更に助ける。図示の実施形態では、ガイド表面32は、開口24の中心軸線Xに対して実質的に平行に配置されて、口部26から放出される空気流に対して実質的に平坦で且つ実質的に滑らかな面を提示する。視覚的に魅力的な先細面34は、ガイド表面32から下流側に配置され、開口24の中心軸線Xに対して実質的に垂直に位置する先端面36で終端する。先細面34と開口24の中心軸線Xとの間に定められる角度は、好ましくは約45°である。開口24の中心軸線Xに沿って延びる方向のノズル24の全体の深さは、100から150mmの範囲であり、この実施例では約110mmである。
【0024】
図3は、ファン10のベース12の断面図を示す。ベース12の外側ケーシング16は、下側ケーシングセクション40及び下側ケーシングセクション40上に取り付けられた主ケーシングセクション42を含む。下側ケーシングセクション40は、図1及び2に示すユーザ操作可能ボタン21の押下及び/又はユーザ操作可能ダイヤル22の操作に応答してファン10の動作を制御するために、全体を符号44で示したコントローラを収容する。下側ケーシングセクション40は、任意選択的に、遠隔の制御器(図示せず)から制御信号を受け取るため、及びこれらの制御信号をコントローラ44に伝達するためのセンサ46を含むことができる。これらの制御信号は、好ましくは赤外線信号である。センサ46は、制御信号が、ベース12の外側ケーシング16の下側ケーシングセクション40に入るウィンドウ47の後方に位置付けられる。発光ダイオード(図示せず)は、ファン10が待機モード状態にあるかどうかを示すために設けることができる。下側ケーシングセクション40はまた、下側ケーシングセクション40に対して主ケーシングセクション42を首振り動作させるために、全体を符号48で示した機構を収容する。下側ケーシングセクション40に対する主ケーシングセクション42の各首振りサイクルの範囲は、好ましくは、60°から120°であり、この実施形態では約90°である。この実施形態では、首振り機構48は、1分間当たりに約3から5の首振りサイクルを実施するよう構成される。主電源ケーブル50は、電力をファン10に供給するために下側ケーシングセクション40に形成されたアパーチャを貫通して延びる。
【0025】
主ケーシングセクション42は、ベース12の外側ケーシング16の空気入口20を設けるためにアパーチャ62のアレイが形成された円筒形グリル60を含む。主ケーシングセクション42は、アパーチャ62を通って一次空気流をベース12に引き込むためのインペラ64を収容する。好ましくは、インペラ64は、混成流インペラの形態である。インペラ64は、モータ68から外向きに延びる回転シャフト66に接続される。この実施形態では、モータ68は、ダイヤル22のユーザ操作及び/又は遠隔コントローラから受け取る信号に応答して、コントローラ44により可変にされる速度を有するDCブラシレスモータである。モータ68の最高速度は、好ましくは、5,000から10,000rpmの範囲内である。モータ68は、下側部分72に接続された上側部分70を含むモータバケット内に収容される。モータバケットの上側部分70は、らせん状羽根を有する固定ディスクの形態のディフューザ74を含む。モータバケットは、主ケーシングセクション42に接続されたほぼ裁頭円錐インペラハウジング76内に位置付けられ、この上に取り付けられる。インペラ64及びインペラハウジング76は、インペラ64が、インペラハウジング76の内面に近接するが接触しないように成形される。実質的に環状の入口部材78は、一次空気流をインペラハウジング76に導くためにインペラハウジング76の底部に接続される。インペラハウジング76は、一次空気流が、インペラハウジング76から実質的に垂直方向に排出されるような向きにされる。
【0026】
輪郭上側ケーシングセクション80は、例えば、スナップ嵌め接続82によってベース12の主ケーシングセクション42の開放上端に接続される。Oリングシール部材84を用いて、ベース12の主ケーシングセクション42と上側ケーシングセクション80との間に気密シールを形成する。上側ケーシングセクション80は、主ケーシングセクション42から一次空気流を受け入れるためのチャンバ86と、ベース12からそこを通って一次空気流がノズル14に移動するアパーチャ88とを含む。
【0027】
好ましくは、ベース12は更に、ベース12からの騒音放射を低減するための消音発泡体を含む。この実施形態では、ベース12の主ケーシングセクション42は、グリル60の下に位置付けられる第1のほぼ円筒形の発泡部材89aと、インペラハウジング76と入口部材78との間に位置付けられる第2の実質的に環状の発泡部材89bと、モータバケット内に位置付けられる第3の実質的に環状の発泡部材89cとを含む。
【0028】
ここで、ファン10のノズル14を図4から図13を参照して説明する。ノズル14は、細長い環状内側ケーシングセクション92に接続されてこの付近から延びる細長い環状外側ケーシングセクション90を含むケーシングを備える。内側ケーシングセクション92は、ノズル14の中心開口24を形成し、コアンダ面28、ディフューザ表面30、ガイド表面32及び先細面34を形成するように成形された外周面93を有する。
【0029】
外側ケーシングセクション90及び内側ケーシングセクション92は共に、ノズル14の環状内部通路94を形成する。内部通路94は、ファン10の前部に向かって位置付けられる。内部通路94は、開口24の付近に延びて、従って、中心開口24のそれぞれの細長側面に各々隣接する2つの実質的に垂直に延びるセクション、すなわち、垂直に延びるセクションの上端を接合する上側湾曲部と、垂直に延びるセクションの下端を接合する下側湾曲部とを含む。内部通路94は、外側ケーシングセクション90の内周面96及び内側ケーシングセクション92の内周面98によって境界付けられる。外側ケーシングセクション90は、例えば、スナップ嵌め接続によってベース12の上側ケーシングセクション80に及びこの上に接続されるベース100を含む。外側ケーシングセクション90のベース100は、ベース12の上側ケーシングセクション80のアパーチャ88と整列されたアパーチャ102を含み、これを通って一次空気流がファン10のベース12からノズル14の内部通路94の下側湾曲部に流入する。
【0030】
特に図8及び9を参照すると、ノズル14の口部26は、ファン10の後方に向けて位置付けられる。口部26は、外側ケーシングセクション90の内周面96及び内側ケーシングセクション92の外周面93それぞれの重なり又は対向部分104、106によって形成される。この実施形態では、口部26は、各々がノズル14の中心開口24のそれぞれの細長側面に沿って延び、且つノズル14の内部通路94のそれぞれの垂直に延びるセクションと流体連通した2つのセクションを含む。口部26の各セクションを通る空気流は、ノズル14の内部通路94のそれぞれの垂直に延びる部分を通る空気流に対して実質的に垂直である。口部26の各セクションは、実質的にU字形の断面であり、結果として、空気流の方向は、該空気流が口部26を通って流れるときに実質的に反転される。この実施形態では、外側ケーシングセクション90の内周面96及び内側ケーシングセクション92の外周面93の重なり部分104、106は、口部26の各セクションが、出口110にいくほど狭くなる先細部分108を含むように成形される。各出口110は、実質的に垂直に延びるスロットの形態であり、好ましくは、0.5から5mmの範囲の比較的一定の幅を有する。この実施形態では、各出口110は、約1.1mmの幅を有する。
【0031】
従って、口部26は、中心開口24のそれぞれの側面上に各々配置された2つの出口110を含むと考えることができる。図4に戻ると、ノズル14は更に、ノズル14の内部通路94の湾曲セクションから実質的に空気の漏出がないように、外側ケーシングセクション90と内側ケーシングセクション92との間にシールを各々形成するための2つの湾曲シール部材112、114を含む。
【0032】
一次空気流を口部26内に配向するために、ノズル14は、内部通路94内に配置され、且つ各々が空気流の一部分を口部26に配向するための複数の固定ガイドベーン120を含む。ガイドベーン120は、図4、5、7、10及び11に示される。ガイドベーン120は、好ましくは、ノズル14の内側ケーシングセクション92の内周面98と一体化される。ガイドベーン120は、空気流が口部26内に配向されたときに該空気流の速度の損失があまりないように湾曲される。この実施形態では、ノズル14は、2つのセットのガイドベーン120を含み、該ガイドベーン120の各セットは、内部通路94のそれぞれの垂直に延びる部分に沿って流れる空気を口部26の関連セクションに配向する。各セット内では、ガイドベーン120は、ガイドベーン120間に複数の通路122を形成するように実質的に垂直に整列され且つ均等に離間して配置され、これらを通って空気が口部26内に配向される。ガイドベーン120の均等な間隔は、口部26のセクションの長さに沿って気流の実質的に均等な分布を可能にする。
【0033】
図11を参照すると、ガイドベーン120は、好ましくは、各ガイドベーン120の一部分124が、外側ケーシングセクション90の内周面96及び内側ケーシングセクション92の外周面93の重なり部分104、106を強制的に引き離すように、ノズル24の外側ケーシングセクション90の内周面96と係合するよう成形される。これは、口部26の各セクションの長さに沿って実質的に一定のレベルで各出口110の幅を維持するのを助けることができる。図7、12及び13を参照すると、この実施形態では、同様に外側ケーシングセクション90の内周面96及び内側ケーシングセクション92の外周面93の重なり部分104、106を強制的に引き離すようにするために、付加的なスペーサ126が口部26の各セクションの長さに沿って設けられ、所望のレベルで出口110の幅を維持するようにする。各スペーサ126は、2つの隣接するガイドベーン120間の実質的に中間に位置付けられる。製造を容易にするために、スペーサ126は、好ましくは、ノズル14の内側ケーシングセクション92の外周面98と一体化される。付加的なスペーサ126は、必要に応じて隣接するガイドベーン120間に設けてもよい。
【0034】
使用時には、ユーザがファン10のベース12上のボタン21の適切な1つを押下すると、コントローラ44は、モータ68を作動してインペラ64を回転させ、空気入口20を通るファン10のベース12に一次空気流を引き込ませるようにする。一次空気流は、1秒間当たり最大30リットル、より好ましくは、1秒間当たり最大50リットルとすることができる。一次空気流は、ベース12のインペラハウジング76及び上側ケーシングセクション80を通過し、ノズル14の外側ケーシングセクション90のベース100に流入し、ここから一次空気流がノズル14の内部通路94に入る。
【0035】
同様に図14を参照すると、符号148で示した一次空気流は、2つの気流に分割され、そのうちの1つが図14に符号150で示され、ノズル14の中心開口24の周りで反対方向に流れる。各気流150は、ノズル14の内部通路94の2つの垂直に延びるセクションのそれぞれ1つに流入し、内部通路94のこれらのセクションの各々を通って実質的に垂直方向上方に搬送される。内部通路94のこれらのセクションの各々内に配置されるガイドベーン120のセットは、気流150を内部通路94のその垂直に延びるセクションに隣接して配置される口部26のセクションに配向する。ガイドベーン120の各々は、口部26のセクションの長さに沿って気流150の実質的に均一な分布があるように、気流150のそれぞれの部分152を口部26のセクションに配向する。ガイドベーン120は、気流150の各部分152が実質的に水平方向で口部26に流入するように成形される。口部26の各セクション内では、気流の一部の流れ方向は、図14に符号154で示すように実質的に反転される。気流の一部は、口部26のセクションがその出口110の方向に向かって先細になるにつれて妨げられ、スペーサ126の周囲に運ばれて、同様に実質的に水平方向で出口110を通って放出される。
【0036】
口部26から放出される一次空気流は、ノズル14のコアンダ面28上に配向され、二次空気流が、外部環境から、特に口部26の出口110周囲の領域からとノズル14の後部の周囲から空気を同伴することによって生成されるようにする。この二次空気流は、大部分はノズル14の中心開口24を通って流れ、ここで、一次空気流と組み合わされて、ノズル14から前方に噴出される総空気流156又は空気の流れを生成する。
【0037】
ノズル14の口部26に沿った一次空気流の均等分布は、ディフューザ表面30の上を均等に通過することを保証する。ディフューザ表面30は、膨張制御の領域を通る空気流を移動させることによって空気流の平均速度を低下させる。開口24の中心軸線Xに対するディフューザ表面30の比較的浅い角度は、空気流の膨張を漸次的に発生させる。過酷な又は急激な発散は、場合によっては空気流を崩壊させるようになり、膨張領域内に渦流が発生する。このような渦流は、空気流における乱流及び関連騒音の増加につながる可能性があり、これは、特にファンのような家庭用製品においては望ましくない場合がある。ガイドベーン120が存在しない場合、一次空気流の大半は、口部26の上側部分を通ってファン10から離れ、開口24の中心軸と鋭角をなして口部26から上方に出る傾向となる。結果として、ファン10によって発生した空気の流れ内には一様でない空気の分布があることになる。更に、ファン10からの空気流の大半は、ディフューザ表面30によって適切には拡散されず、遙かに大きな乱流を有する空気の流れが発生することになる。
【0038】
ディフューザ表面30を越えて前方に噴射された空気流は、継続して発散する傾向になることがある。開口30の中心軸線Xに対して実質的に平行に延びたガイド表面32の存在は、空気流をユーザの方向又は部屋内に集束させる傾向がある。
【0039】
モータ68の速度に応じて、ファン10から前方に噴射される空気の流れの質量流量は、1秒間当たり最大500リットル、好ましい実施形態では1秒間当たり最大700リットルとすることができ、空気の流れの最大速度は、3から4m/sの範囲にすることができる。
【0040】
本発明は、上述の詳細な説明に限定されるものではない。当業者には変形形態が明らかであろう。
【0041】
例えば、ファンのベース及びノズルは、異なる形及び/又は形状のものとすることができる。口部の出口は修正することができる。例えば、口部の出口は、空気流を最大にするような様々な間隔に拡大又は狭窄することができる。口部から放出される空気流は、コアンダ面のような表面上を通過することができるが、代替として、空気流は、口部を通って放出され、隣接する面上を通過することなくファンから前方に噴射されてもよい。コアンダ効果は、多数の異なる表面にわたって作用することができ、或いは、多数の内部又は外部設計を組み合わせて用いて、必要な流れ及び同伴を得ることができる。ディフューザ表面は、様々なディフューザ長さ及び構造から構成することができる。ガイド表面は様々な長さとすることができ、異なるファン要件及び異なるタイプのファン性能の必要に応じて、多数の異なる位置及び向きに配置することができる。照明又は時計、或いはLCDディスプレイのような追加の機能をノズルによって形成された中心開口内に設けることができる。
【0042】
本発明は、例えば以下のような態様であってもよい。
(1)ロータが、少なくとも8000rpmの速度で回転することができる。
(2)ロータが、少なくとも9000rpmの速度で回転することができる。
(3)口部は、内側ケーシングセクションの外面と外側ケーシングセクションの内面との間に配置された出口を含む。
(4)ファン組立体が、400から1500mmの範囲の高さを有する。
【符号の説明】
【0043】
10 ファン
12 ベース
14 ノズル
16 外側ケーシング
18 ディスク状ベースプレート
20 空気入口
21 ユーザ操作可能ボタン
22 ユーザ操作可能ダイヤル
24 開口
30 ディフューザ表面
34 先細面
36 先端面
40 下側ケーシングセクション
42 主ケーシングセクション
47 ウィンドウ
100 ベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の流れを生成するためのファン組立体であって、
前記ファン組立体は、空気入口と、空気出口と、混成流インペラと、前記空気入口から前記空気出口を通過する空気流を生成するため前記インペラを回転させるモータと、を備え、
前記モータは、下側部分に接続された上側部分を含むモータバケット内に収容され、
前記モータバケットの前記上側部分は、ディフューザを有し、
前記空気出口は、前記空気流を受け入れるための内部通路及び前記空気流を放出するための口部を含み、
前記空気出口は、前記口部から放出される空気流によって前記ファン組立体の外部からの空気がそこを通って引き込まれる開口を形成し、
前記モータは、使用時に少なくとも5000rpmの速度で回転することができるロータを有する、
ことを特徴とするファン組立体。
【請求項2】
前記モータバケットは、インペラハウジング内に位置づけられ、この上に取り付けられる、請求項1に記載のファン組立体。
【請求項3】
環状の入口部材が、空気流を前記インペラハウジング内に案内するために、前記インペラハウジングの底部に接続される、請求項2に記載のファン組立体。
【請求項4】
前記空気入口は、前記環状入口部材の周りに延びる、請求項3に記載のファン組立体。
【請求項5】
前記インペラ及びモータを収容するベースを備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のファン組立体。
【請求項6】
前記空気入口は、前記ベースの側壁内に配置される、請求項5に記載のファン組立体。
【請求項7】
前記空気入口は、前記側壁の外周の周りに延びる、請求項6に記載のファン組立体。
【請求項8】
前記ディフューザは、らせん状羽根を有する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のファン組立体。
【請求項9】
前記モータは、DCブラシレスモータである、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のファン組立体。
【請求項10】
前記内部通路は、前記空気流を2つの気流に分割して、各気流を前記開口のそれぞれの側面に沿って配向するように成形される、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のファン組立体。
【請求項11】
前記空気出口は、前記内部通路及び前記口部を共に形成する環状内側ケーシングセクション及び環状外側ケーシングセクションを含む、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のファン組立体。
【請求項12】
前記口部は、前記内側ケーシングセクションと前記外側ケーシングセクションとの間に配置された出口を含む、請求項11に記載のファン組立体。
【請求項13】
前記出口は、スロットの形態である、請求項12に記載のファン組立体。
【請求項14】
前記出口は、0.5から5mmの範囲の幅を有する、請求項12又は請求項13に記載のファン組立体。
【請求項15】
前記空気出口は、前記口部に隣接して配置された表面を含み、前記口部は、前記空気流をその上に配向するように配置される、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のファン組立体。
【請求項16】
前記表面は、コアンダ面である、請求項15に記載のファン組立体。
【請求項17】
前記空気出口は、前記コアンダ面の下流側に配置されているディフューザを含む、請求項16に記載のファン組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−40620(P2013−40620A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−263334(P2012−263334)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2010−76142(P2010−76142)の分割
【原出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(508032310)ダイソン テクノロジー リミテッド (286)
【Fターム(参考)】