説明

ファン装置

【課題】筐体に対する吸気、排気または内部で、効率よく送風可能なファン装置を提供する。
【解決手段】ファン装置10は、電子機器12を収容する筐体11に設けられた取付面に垂直に回転軸を向けて前記取付面に平行に2次元に配列される複数の第1軸流ファンと、前記取付面に平行に2次元に配列され、前記複数の第1軸流ファンの前記回転軸と回転軸が一致するとともに、前記複数の第1軸流ファンにそれぞれ近接する複数の第2軸流ファンと、を備え、前記複数の第1軸流ファンが、第1の回転方向に回転して前記筐体へのエアの導入、排出または前記筐体内部での送風を行い、前記複数の第2軸流ファンが、前記第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転して前記複数の第1の軸流ファンと同方向のエアの流れを発生し、前記複数の第1軸流ファンの複数の第1ハウジングが、連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器を収容する筐体に取り付けられるファン装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子機器を収容する筐体に、複数のファンを備える様々なファン装置が取り付けられる。例えば、特開2008−140406号公報の明細書段落0033ないし0035、0040、並びに、図6および図8では、ファン/LANトレイスロット23を備えるラック装着システム10が開示される。ファン/LANトレイスロット23は8個の空気移動装置を備える。
【0003】
特開2008−251067号公報の明細書段落0068〜0070、並びに、図14(a)および(b)では、ディスクアレイ装置に用いられる電源モジュール40が開示される。電源モジュール40のファン部42では、前後方向に2つ(二重)のファン43を縦列(タンデム)構成、すなわち、同一構成のファンを軸方向に並べた構成で備える。
【特許文献1】特開2008−140406号公報
【特許文献2】特開2008−251067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子機器の高性能化および高密度化に伴い、電子機器を収容する筐体では、さらなる換気効率が求められる。本発明の目的は、筐体に対する吸気、排気または内部で、効率よく送風可能なファン装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る例示的なファン装置は、電子機器を収容する筐体に設けられた取付面に垂直に回転軸を向けて前記取付面に平行に2次元に配列される複数の第1軸流ファンと、前記取付面に平行に2次元に配列され、前記複数の第1軸流ファンの前記回転軸と回転軸が一致するとともに、前記複数の第1軸流ファンにそれぞれ近接する複数の第2軸流ファンと、を備え、前記複数の第1軸流ファンが、第1の回転方向に回転して前記筐体へのエアの導入、排出または前記筐体内部での送風を行い、前記複数の第2軸流ファンが、前記第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転して前記複数の第1の軸流ファンと同方向のエアの流れを発生し、前記複数の第1軸流ファンの複数の第1ハウジングが、連結されている、または、1つながりの部材であり、前記複数の第2軸流ファンの複数の第2ハウジングが、連結されている、または、1つながりの部材である。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る例示的なファン装置によれば、電子機器を収容する筐体に対して、吸気、排気または内部で効率よく送風可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るラック型電子システムの正面図である。
【図2】図2は、ラック型電子システムの右側面図である。
【図3】図3は、第1ファントレイの平面図である。
【図4】図4は、第2ファントレイの平面図である。
【図5】図5は、第1ファントレイの他の例を示す平面図である。
【図6】図6は、第2の実施形態に係るラック型電子システムの正面図である。
【図7】図7は、ラック型電子システムの右側面図である。
【図8】図8は、二重反転ファンを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の例示的な第1の実施形態に係るラック型電子システム1を示す正面図である。図2は、ラック型電子システム1の右側面図である。ラック型電子システム1は、筐体11、電子機器12、電源ユニット13、第1ファントレイ14および第2ファントレイ15を備える。
【0009】
筐体11の外形は直方体である。筐体11は、それぞれ複数個の、電子機器12、電源ユニット13、第1ファントレイ14および第2ファントレイ15を収容する。電子機器12は、略板状のいわゆるブレードサーバである。電子機器12は、起立姿勢にて水平方向に配列される。電子機器12の配列は、上下方向の3箇所に設けられる。図2に示すように、電源ユニット13は、電子機器12の配列の後方に配置される。電源ユニット13の近くには、制御機器や通信機器等の他の構成が適宜配置される。
【0010】
電子機器12の配列の上側および下側の4箇所には、第1ファントレイ14および第2ファントレイ15が配置される。第2ファントレイ15は、第1ファントレイ14の上に重ねられる。換言すれば、第1ファントレイ14および第2ファントレイ15により、ファン装置10が構成される。このファン装置10が、ラック型電子システム1の4箇所に配置される。図2に示すように、第1ファントレイ14および第2ファントレイ15は、それぞれ筐体11の正面から筐体11に対して水平方向に挿脱可能となっている。
【0011】
図3は、第1ファントレイ14の平面図である。図3において、下側が筐体11の正面に対応する。第1ファントレイ14では、左右方向に3個、奥行き方向に4個の合計12個の第1軸流ファン2が配列される。各第1軸流ファン2は、モータ、インペラ21およびハウジング22を備える。第1軸流ファン2の回転軸J2は、上下方向に配置される。モータは直流ブラシレスモータである。インペラ21は、中央のカップ部211および複数の翼212を備える。翼212は、カップ部211の外側面から径方向外方に突出する。モータはカップ部211内に位置する。ハウジング22はインペラ21の外周を囲む。図3において、インペラ21は、矢印R2にて示すように反時計回りに回転する。
【0012】
図4は、第2ファントレイ15の平面図である。図4において、下側が筐体11の正面に対応する。第2ファントレイ15は、各第2軸流ファン3の回転方向が異なるという点を除いて、第1ファントレイ14と同様の構造である。すなわち、各第2軸流ファン3は、モータ、インペラ31およびハウジング32を備える。第2軸流ファン3の回転軸J3は上下方向を向く。図4において、インペラ31は、矢印R3にて示す時計回りに回転する。インペラ31は、中央のカップ部311および複数の翼312を備える。
【0013】
第1ファントレイ14のフレーム141を筐体11における第1軸流ファン2用の水平な取付面と捉えた場合、複数の第1軸流ファン2は、取付面に垂直に回転軸J2を向けて取付面に平行に2次元に配列される。同様に、第2ファントレイ15のフレーム151を、筐体11における第2軸流ファン3用の水平な取付面と捉えた場合、複数の第2軸流ファン3は、取付面に垂直に回転軸J3を向けて取付面に平行に2次元に配列される。複数の第1軸流ファン2の回転軸J2と複数の第2軸流ファン3の回転軸J3とが、それぞれ一致するように、第1ファントレイ14と第2ファントレイ15とが重ねられる。また、複数の第1軸流ファン2と複数の第2軸流ファン3とは、回転軸方向において近接する。
【0014】
なお、「第1軸流ファン2と第2軸流ファン3とが近接する」とは、吸気側の軸流ファンからのエアの回転成分が、排気側の軸流ファンによるエアの送出効率を向上する状態を指し、ファントレイ同士を重ねて筐体11にセットした際の距離だけ離間している状態を含む。相互作用が得られるのであれば、第1軸流ファン2と第2軸流ファン3とは、さらに離れていてもよい。
【0015】
第1軸流ファン2のハウジング22は、第1ファントレイ14のフレーム141に取り付けられることにより、実質的に水平方向に連結される。第2軸流ファン3のハウジング32も、フレーム151に取り付けられることにより、実質的に水平方向に連結される。これにより、図2を参照して説明したように、複数の第1軸流ファン2の集合体が、筐体11に対して取付面に平行な方向に挿脱可能となっている。複数の第2軸流ファン3の集合体も、筐体11に対して取付面に平行な同方向に挿脱可能となっている。
【0016】
第1軸流ファン2では、インペラ21が反時計回りに回転することにより、下方から上方に向かうエアの流れが生じる。第2軸流ファン3では、インペラ31が時計回りに回転することにより、第1軸流ファン2と同方向のエアの流れが生じる。筐体11は上部および下部に開口を有する。最も下のファン装置10により、筐体11の下部から筐体11内へとエアが導入される。下から2段目および3段目のファン装置10により、筐体11内部にて送風され、エアがさらに上方へと導かれる。そして、最も上のファン装置10により、筐体11からエアが排出される。
【0017】
ラック型電子システム1では、互いに反対方向に回転する第1軸流ファン2と第2軸流ファン3とを中心軸方向に並べることにより、ファン装置10の静圧−風量特性を向上できる。その結果、密集する電子機器を収容する筐体11に対して、吸気、排気および内部で適切に送風できる。また、第1軸流ファン2を連結する構造であるフレーム141と、第2軸流ファン3を連結する構造であるフレーム151と、を共通化することにより、ファン装置10の製造コストを削減できる。
【0018】
図5は、第1ファントレイ14の他の例を示す平面図である。第1ファントレイ14では、第1軸流ファン2のハウジングが、1つながりの部材であるハウジング22aとなっている。第1ファントレイ14の他の構成は、図3と同様である。第2ファントレイ15においても、同様に、第2軸流ファン3のハウジングが、1つながりの部材となっていてもよい。
【0019】
<第2の実施形態>
図6は、本発明の例示的な第2の実施形態に係るラック型電子システム1aを示す正面図である。図7は、ラック型電子システム1aの右側面図である。ラック型電子システム1aは、筐体11、電子機器12、電源ユニット13、ファントレイ16を備える。ラック型電子システム1aは、図1および図2に示すラック型電子システム1において、第1ファントレイ14と第2ファントレイ15とを実質的に結合したものである。すなわち、ラック型電子システム1aでは、ファントレイ16が、図1のファン装置10に対応する。他の構成は同様である。以下、図1および図2と同様の構成には、同符号を付して説明する。
【0020】
各ファントレイ16では、下段に複数の第1軸流ファン2が配列され、上段に複数の第2軸流ファン3が配列される。第1軸流ファン2および第2軸流ファン3の水平方向の配列は、図3および図4と同様である。ファントレイ16では、第1軸流ファン2のハウジング22と第2軸流ファン3のハウジング32とが、上下に連結される。これにより、いわゆる二重反転ファンが構成される。
【0021】
図8は、1つの二重反転ファン4を示す部分断面図である。第1軸流ファン2は、モータ23、インペラ21およびハウジング22を備える。ただし、図3の第1軸流ファン2とはインペラとモータとの上下関係が逆転しており、インペラ21が、モータ23の下方に位置する。第2軸流ファン3は、モータ33、インペラ31およびハウジング32を備える。図8では、ハウジング23とハウジング32とを連結する構造の図示を省略している。二重反転ファン4では、モータ23をハウジング22に対して支持するリブ24と、モータ33をハウジング32に対して支持するリブ34とが、上下に当接または近接する。
【0022】
ファントレイ16においても、複数の第1軸流ファン2の回転軸J2と複数の第2軸流ファン3の回転軸J3とは、それぞれ一致する。また、複数の第1軸流ファン2と複数の第2軸流ファン3とは、回転軸方向において近接する。なお、「近接」には、「当接」が含まれる。第1軸流ファン2のインペラ21は、平面視において反時計回りに回転する。これにより、下方から上方に向かうエアの流れが生じる。第2軸流ファン3のインペラ31は、平面視において時計回りに回転する。これにより、第1軸流ファン2と同方向のエアの流れが生じる。
【0023】
ファントレイ16のフレーム161を、筐体11における第1軸流ファン2用の水平な取付面と捉えた場合、複数の第1軸流ファン2は、取付面に垂直に回転軸J2を向けて取付面に平行に2次元に配列される。複数の第2軸流ファン3も、取付面に垂直に回転軸J3を向けて取付面に平行に2次元に配列される。
【0024】
1つの第1軸流ファン2と1つの第2軸流ファン3との組立体は、フレーム161に取り付けられることにより、実質的に水平方向に連結される。その結果、図7に示すように、複数の第1軸流ファン2および複数の第2軸流ファン3の集合体が構成され、この集合体が筐体11に対して取付面に平行な方向に挿脱可能となっている。
【0025】
ラック型電子システム1aでは、最も下のファントレイ16により、筐体11の下部から筐体11内へとエアが導入される。下から2段目および3段目のファントレイ16により、筐体11内部にて送風が行われ、エアがさらに上方へと導かれる。そして、最も上のファントレイ16により、筐体11からのエアが排出される。
【0026】
ラック型電子システム1aにおいても、密集する電子機器を収容する筐体11に対して、吸気、排気および内部で適切に送風できる。また、ファントレイ16は二重反転ファン4を単位とする構造を有するため、ファントレイ16の製造コストを削減できる。
【0027】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、第2の実施形態に係るファントレイ16において、2つのハウジング22,32が1つながりの部材として構成されてもよい。第1および第2の実施形態において、複数のハウジングの中心軸に垂直な方向における連結は、ファントレイのフレームにより行われず、ハウジング同士により直接行われてもよい。
【0028】
第1および第2の実施形態において、モータとインペラとの上下関係は、第1軸流ファン2および第2軸流ファン3において適宜変更されてよい。さらに、ハウジング同士の中心軸に垂直な方向における連結は、例えば、ハウジングの側面に連結具が別途設けられることにより行われてもよい。
【0029】
第1軸流ファン2および第2軸流ファン3が取り付けられる取付面は、筐体11の内部だけでなく表面に設けられてもよい。また、取付面は水平でなくてもよく、例えば、垂直であってもよい。取付は、筐体11に対して間接的であってもよい。ファン装置により、筐体に対する吸気、排気または内部での送風のいずれかのみが行われてもよい。筐体は、様々な電子機器を収容する筐体であってよく、筐体が電子機器の一部と捉えられてもよい。筐体が収容する電子機器は、パーソナルコンピュータやディスク駆動装置等であってもよい。すなわち、ファン装置は、トレイ型でなくてもよい。また、電子機器は、電源や光源等のように、電子機器システムの一部であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、電子機器を収容する様々な筐体に取り付けられるファン装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0031】
2 第1軸流ファン
3 第2軸流ファン
11 筐体
12 電子機器
22,22a,23 ハウジング
141,151,161 フレーム
J2,J3 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を収容する筐体に設けられた取付面に垂直に回転軸を向けて前記取付面に平行に2次元に配列される複数の第1軸流ファンと、
前記取付面に平行に2次元に配列され、前記複数の第1軸流ファンの前記回転軸と回転軸が一致するとともに、前記複数の第1軸流ファンにそれぞれ近接する複数の第2軸流ファンと、
を備え、
前記複数の第1軸流ファンが、第1の回転方向に回転して前記筐体へのエアの導入、排出または前記筐体内部での送風を行い、前記複数の第2軸流ファンが、前記第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転して前記複数の第1の軸流ファンと同方向のエアの流れを発生し、
前記複数の第1軸流ファンの複数の第1ハウジングが、連結されている、または、1つながりの部材であり、前記複数の第2軸流ファンの複数の第2ハウジングが、連結されている、または、1つながりの部材である、ファン装置。
【請求項2】
前記複数の第1軸流ファンの集合体が、前記筐体に対して前記取付面に平行な方向に挿脱可能であり、前記複数の第2軸流ファンの集合体も、同方向に脱可能である、請求項1に記載のファン装置。
【請求項3】
電子機器を収容する筐体に設けられた取付面に垂直に回転軸を向けて前記取付面に平行に2次元に配列される複数の第1軸流ファンと、
前記取付面に平行に2次元に配列され、前記複数の第1軸流ファンの前記回転軸と回転軸が一致するとともに前記複数の第1軸流ファンにそれぞれ近接する複数の第2軸流ファンと、
を備え、
前記複数の第1軸流ファンが、第1の回転方向に回転して前記筐体へのエアの導入、排出または前記筐体内部での送風を行い、前記複数の第2軸流ファンが、前記第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転して前記複数の第1の軸流ファンと同方向のエアの流れを発生し、
前記複数の第1軸流ファンの各第1軸流ファンのハウジングと、前記各第1軸流ファンに近接する第2軸流ファンのハウジングとが、連結されている、または、1つながりの部材であり、
前記複数の第1軸流ファンおよび前記複数の第2軸流ファンの集合体が、前記筐体に対して前記取付面に平行な方向に挿脱可能である、ファン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−40693(P2011−40693A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189523(P2009−189523)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】