説明

フィブリル化繊維及びその製造方法

【課題】分散性が高く、かつ良好に分割されたフィブリル化繊維を製造する方法を提供する。
【解決手段】相分離した複数の樹脂で構成された複合繊維を叩解処理により分割してフィブリル化繊維を製造する方法において、前記叩解処理は(a)0.1〜0.3mmのディスククリアランスを使用するリファイナー処理、及び(b)9〜19MPaの圧力で圧送するホモジナイズ処理から選択された少なくとも一種である。前記製造方法では、リファイナー処理(a)を行った後、ホモジナイズ処理(b)を行ってもよい。
前記複合繊維としては、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びポリアミド系樹脂から選択された少なくとも一種で構成された繊維を用いてもよい。また、断面構造が、放射状配列型、サイドバイサイド型、海島型、又は芯鞘型である複合繊維を用いてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合繊維を用いて、分散性が高く、かつ、良好に分割されたフィブリル化繊維を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィブリル化繊維は、不織布や紙などに広く使用されている。このようなフィブリル化繊維は、様々な方法で製造することができる。
【0003】
例えば、前記フィブリル化繊維は、複合繊維を分割して得られることが知られている。特開平10−204764号公報(特許文献1)、特開2001−3228号公報(特許文献2)、特許第3526358号公報(特許文献3)、及び特開2005−220472(特許文献4)には、多種多様な複合繊維が開示されている。例えば、放射状に配置された剥離型、サイドバイサイド型、海島型、芯鞘型などの分割型複合繊維、及びこれらの中空、非中空繊維が記載されている。また、分割方法としては、アルカリ処理、アルコール処理、熱収縮などの化学的処理方法、高圧ジェット水流、ローラー間での加圧処理、超音波処理、揉み処理、パルパー、ビーターなどの機械的処理方法などが記載されている。これらの分割方法では、分割が不十分であるため、一部が未分割のまま残る場合がある。
【0004】
また、繊維を高度にフィブリル化するために、ディスクリファイナー、ホモジナイザーなどの大きな剪断力を与える処理手段が使用されている。例えば、特開2004−68240号公報(特許文献5)には、アクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースとの混合物を主成分とし、酢酸セルロースに対し可塑化能力を有する可塑剤を含む組成物からなる複合繊維が開示されている。また、特許文献5には、ディスクリファイナー装置にてディスククリアランス0.05mm、回転数5000rpmの条件で繰り返し5回叩解処理することが記載されている。
【0005】
特許第3218112号公報(特許文献6)には、ポリオレフィンパルプを水に懸濁し、これを300〜1000kg/cm(29.4〜98.1MPa)の圧力差で高速で小径オリフィスを通過させ、器壁に衝突させて急速に減速させることによりパルプに剪断力を与える操作を繰り返し行い、得られたスラリー状懸濁液を脱水して得られる微細繊維状ポリオレフィンが開示されている。また、特許文献6には、パルプの割繊装置としては、高圧ホモジナイザーが有効であることが記載されている。
【0006】
これらの方法では、繊維に大きな剪断力を与えることにより、ある程度フィブリル化した微細繊維を得ることができる。しかし、微細繊維同士が強固に絡み合い、微細繊維の分散性が低下し取扱いが困難になる。
【0007】
また、特許第3300165号公報(特許文献7)には、オレフィン系重合体とスチレン系重合体とを主成分として含む樹脂組成物で形成され、平均アスペクト比が3以上の島を有する海島構造の複合体に、剪断力を作用させて微細繊維を得る微細繊維の製造方法が開示されている。また、特許文献7には、海島構造の複合体を溶媒に分散させた分散液を少なくとも200kg/cm(19.6MPa)の圧力差で小径オリフィスを通過させることが記載されている。この方法では、高圧で処理するため、フィブリル化した微細繊維を得ることができる。しかし、使用できる繊維の構造及び構成成分が限られ、さらに、繊維の切断、ねじれなどが生じ、繊維の特性が失われる。また、微細繊維同士が絡み合うため、微細繊維の分散性が低下する。
【特許文献1】特開平10−204764号公報(段落番号[0024]及び[0032])
【特許文献2】特開2001−3228号公報(段落番号[0019]及び[0020])
【特許文献3】特許第3526358号公報(段落番号[0011]及び[0019])
【特許文献4】特開2005−220472号公報(段落番号[0015]及び[0032])
【特許文献5】特開2004−68240号公報(請求項1及び5)
【特許文献6】特許第3218112号公報(特許請求の範囲及び段落番号[0016])
【特許文献7】特許第3300165号公報(請求項1及び7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、複合繊維を用いて、分散性が高く、かつ、良好に分割されたフィブリル化繊維を製造する方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、簡便にかつ効率よくフィブリル化繊維を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、相分離した複数の樹脂で構成された複合繊維を用いて特定の叩解処理を行うと、繊維同士が絡まり合うことなく、分散性が高く、かつ良好に分割されたフィブリル化繊維が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の製造方法は、相分離した複数の樹脂で構成された複合繊維を叩解処理により分割してフィブリル化繊維を製造する方法であって、叩解処理が(a)0.1〜0.3mmのディスククリアランスを使用するリファイナー処理、及び(b)9〜19MPaの圧力で圧送するホモジナイズ処理から選択された少なくとも一種である前記フィブリル化繊維の製造方法である。前記製造方法では、リファイナー処理(a)を行った後、ホモジナイズ処理(b)を行ってもよい。
【0012】
前記複合繊維として、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びポリアミド系樹脂から選択された少なくとも一種で構成された繊維を用いてもよい。また、断面構造が、放射状配列型、サイドバイサイド型、海島型、又は芯鞘型である複合繊維を用いてもよい。さらに、相分離した二種の樹脂で構成され、第1の樹脂と第2の樹脂との割合(重量比)が、第1の樹脂/第2の樹脂=10/90〜90/10である複合繊維を用いてもよい。
【0013】
本発明には、前記製造方法により得られたフィブリル化繊維も含まれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、相分離した複数の樹脂で構成された複合繊維を用いて、特定の叩解処理を行うため、繊維同士が絡まり合うことなく、高い分散性を有し、かつ良好に分割されたフィブリル化繊維を製造することができる。また、前記複合繊維を用いて、特定の叩解処理を行うため、前記フィブリル化繊維を簡便にかつ効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明では、相分離した複数の樹脂で構成された複合繊維を叩解処理により分割してフィブリル化繊維を製造する。前記複合繊維は、相分離した(又は接触面が非相溶である)複数の樹脂で構成されている。
【0016】
[複合繊維]
前記複合繊維を構成する樹脂は、特に制限されず、熱硬化性樹脂(フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、ポリウレタン、ポリイミドなど)、熱可塑性樹脂(オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂など)などの合成樹脂が挙げられ、通常、熱可塑性樹脂である場合が多い。これらの樹脂のうち、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などが好ましい。
【0017】
オレフィン系樹脂には、オレフィンの単独又は共重合体が含まれる。オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3ーメチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセンなどのα−オレフィン;イソブテンなどの他のオレフィンが挙げられる。
【0018】
オレフィン系樹脂は、オレフィンと共重合可能なモノマーとの共重合体であってもよい。共重合可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸などのエチレン系不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸などのエチレン系不飽和多価カルボン酸とその酸無水物;グリシジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸エステル;カルボン酸のビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど)などのエチレン性不飽和カルボン酸エステル;ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロペンタジエンなどの環状オレフィン;及びブタジエン、イソプレンなどのジエンなどが例示される。これらの共重合可能なモノマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0019】
好ましいオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体;エチレン及び/又はプロピレンと他のモノマーとの共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、プロピレン−(メタ)アクリル酸共重合体などの二元共重合体;エチレン−プロピレン−ブテン−1などの三元共重合体);エポキシ変性ポリオレフィン(例えば、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体)、カルボキシ変性ポリオレフィン(例えば、エチレン−無水マレイン酸共重合体)、エポキシ及びカルボキシ変性ポリオレフィン(例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸−無水マレイン酸共重合体)などの変性ポリオレフィン;オレフィン系エラストマー(エチレンプロピレンゴムなど)などが含まれる。これらのオレフィン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。これらのオレフィン系樹脂の中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが汎用される。
【0020】
アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;(メタ)アクリル酸グリシジルエステルなど]、アクリルアミド、アクリロニトリルなどのアクリル系モノマーの単独重合体又は共重合体;アクリル系モノマーと他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。
【0021】
前記アクリル系単独重合体又は共重合体としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。アクリル系モノマーと他のモノマーとの共重合体としては、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0022】
好ましいアクリル系樹脂には、ポリメタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体などが含まれる。
【0023】
ビニル系樹脂としては、塩化ビニル系樹脂[塩化ビニル系モノマーの単独重合体(ポリ塩化ビニル系樹脂など)、塩化ビニル系モノマーと他のモノマーとの共重合体(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)など]、ビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコールなどのビニルアルコール系モノマーの単独重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系モノマーと他のモノマーとの共重合体など)、ポリビニルホルマールなどのポリビニルアセタール樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂などが挙げられる。これらのビニル系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0024】
ポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸又はその低級アルキルエステルとジオールとから得られるポリエステル;オキシカルボン酸、必要に応じてジカルボン酸又はその低級アルキルエステル及び/又はジオールを併用して得られるポリエステル;ラクトンから得られるポリエステルが挙げられる。
【0025】
前記ジカルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0026】
前記ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジオールなどの脂環族ジオール;ビスフェノールAなどの芳香族ジオール;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド(例えばエチレンオキサイド)付加物などが挙げられる。これらのジオールは、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0027】
前記オキシカルボン酸としては、乳酸、p−オキシ安息香酸などが挙げられる。これらのオキシカルボン酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0028】
前記ラクトンとしては、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、ラウロラクトン、パルミトラクトン、ステアロラクトンなどが挙げられる。これらのラクトンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0029】
前記ポリエステル系樹脂には、ポリエステルエラストマーも含まれる。このエラストマーは、ポリエステルを主成分とし、ポリテトラメチレングリコールなどのセグメントを有していてもよい。また、前記ポリエステル系樹脂は、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合を含有する少量の共重合成分の単位を含んでいてもよい。
【0030】
好ましいポリエステル系樹脂には、芳香族ポリエステル(テレフタル酸単位を含むポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート);脂肪族ポリエステル(アジピン酸単位を含むポリエステル、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペートなどのポリアルキレンアジペート;ポリ乳酸など)などが含まれる。これらのポリエステル系樹脂は、通常、結晶性を有している。なお、結晶性ポリエステルは、構成成分以外のジカルボン酸成分及び/又はグリコール成分により変性されていてもよい。
【0031】
ポリアミド系樹脂としては、ジアミンとジカルボン酸とから誘導されるポリアミド;アミノカルボン酸、必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸を併用して得られるポリアミド;ラクタムから誘導されたポリアミドが挙げられる。また、ポリアミドは、コポリアミドであってもよい。
【0032】
ジアミンとしては、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;フェニレンジアミン、メタキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン;ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンなどの脂環族ジアミンが挙げられる。これらのジアミンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0033】
ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、オクタデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸やシクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸やテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0034】
アミノカルボン酸としては、アミノヘプタン酸、アミノノナン酸、アミノウンデカン酸などが例示される。これらのアミノカルボン酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0035】
ラクタムとしては、例えば、ブチロラクタム、ピバロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ドデカラクタムなどが挙げられる。これらのラクタムは、単独で又は二種以上組み合せて使用してもよい。
【0036】
ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとから得られるポリアミド、アジピン酸とメタキシリレンジアミンとから得られるポリアミド、テレフタル酸とアジピン酸とヘキサメチレンジアミンとから得られるポリアミド;アジピン酸とメタキシリレンジアミンとから得られる芳香族ポリアミド;これらのポリアミドのうち少なくとも二種の異なったポリアミド形成成分により形成されるコポリアミドなどが挙げられる。これらのポリアミドは単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。なお、ポリアミドには、ポリアミドエラストマーも含まれる。
【0037】
好ましいポリアミド系樹脂には、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12などが含まれる。
【0038】
これらの複合繊維を構成する樹脂うち、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びポリアミド系樹脂などが好ましく、好ましい組み合わせとしては、(a)ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂との組み合わせなどの異なるオレフィン系樹脂の組み合わせ、(b)オレフィン系樹脂とアクリル系樹脂との組合せ、(c)オレフィン系樹脂とビニルエステル系樹脂との組合せ、(d)オレフィン系樹脂とポリエステル系樹脂との組合せ、(e)オレフィン系樹脂とポリアミド系樹脂との組み合わせなどが挙げられる。
【0039】
前記複合繊維は、通常、相分離した二種の樹脂で構成されている場合が多く、第1の樹脂と第2の樹脂との割合(重量比)は、第1の樹脂/第2の樹脂=10/90〜90/10、好ましくは30/70〜85/15、さらに好ましくは50/50〜80/20程度であってもよい。
【0040】
前記複合繊維の断面構造(横断面構造)は、特に制限されず、例えば、放射状配列型(又は、1成分が他成分の間に放射状に配置された形状)、サイドバイサイド型(又は並列型又は多層積層型)、海島型、芯鞘型などであってもよい。また、前記複合繊維は、中実であってもよく、中空であってもよい。
【0041】
また、前記複合繊維の断面形状(横断面形状)は、特に制限されず、例えば、円形、多角形(三角形、四角形など)などであってもよい。
【0042】
前記複合繊維の平均繊維径は、特に制限されず、0.1〜50μm、好ましくは0.5〜40μm、さらに好ましくは1〜30μm程度であってもよい。また、前記複合繊維の平均繊維長は、例えば、0.1〜10mm、好ましくは0.5〜8mm、さらに好ましくは0.8〜6mm程度であってもよい。
【0043】
このような複合繊維を用いると、分割性に優れるため、容易にフィブリル化することができる。
【0044】
前記複合繊維は、必要により、他の繊維を含有してもよい。前記他の繊維は、特に制限されず、天然繊維(セルロース繊維など)、合成繊維(オレフィン系繊維、アクリル系繊維、ビニル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維などの前記例示の合成樹脂で構成された合成繊維など)、半合成繊維(アセテートなど)のいずれであってもよい。これらの他の繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0045】
他の繊維の平均繊維径は、例えば、0.01〜30μm、好ましくは0.1〜25μm、さらに好ましくは1〜20μm程度であってもよい。また、他の繊維の平均繊維長は、例えば、0.1〜20mm、好ましくは1〜15mm、さらに好ましくは3〜10mm程度であってもよい。
【0046】
前記複合繊維が、他の繊維を含有する場合、複合繊維の割合は、他の繊維100重量部に対して、0.01〜10,000重量部(例えば、0.05〜1,000重量部)、好ましくは0.1〜500重量部(例えば、0.5〜100重量部)程度の広い範囲から選択できる。
【0047】
前記複合繊維は、その特性を損なわない範囲で、慣用の添加剤、例えば、着色剤、帯電防止剤、界面活性剤、芳香剤、脱臭剤、抗菌剤などを含んでもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0048】
[フィブリル化繊維の製造方法]
本発明では、前記複合繊維を叩解処理により分割してフィブリル化繊維を製造することができ、前記叩解処理は、リファイナー処理及びホモジナイズ処理から選択された少なくとも一種である。
【0049】
(リファイナー処理)
リファイナー処理では、複合繊維を撹拌等により溶媒に分散させ、この分散液(又は懸濁液)をリファイナー処理してもよい。なお、リファイナー処理の効率を高めるため、繊維の切断が生じないような条件で、個々の繊維にほぐすように溶媒に分散させるのが好ましい。
【0050】
前記溶媒としては、複合繊維を溶解しない溶媒、例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノールなどアルカノール)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル)、ケトン類(アセトンなどのジアルキルケトン)、エステル類(酢酸エチルなどアルカン酸エステル)などが挙げられ、特に水が好ましい。
【0051】
分散液中の複合繊維の濃度(固形分濃度)は、0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%程度であってもよい。なお、分散処理は、慣用の分散機(超音波分散機、ホモディスパー、スリーワンモーターなど)などを用いて行ってもよい。
【0052】
リファイナー処理では、ディスクリファイナー(シングルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナーなど)を使用することができる。前記ディスクリファイナーのディスククリアランスは、0.1〜0.3mm、好ましくは0.12〜0.28mm、さらに好ましくは0.13〜0.25mm(例えば、0.14〜0.23mm)程度であってもよい。
【0053】
ディスクの回転数は、特に制限されず、1,000〜10,000rpmの広い範囲から選択でき、例えば、1,000〜8,000rpm、好ましくは1,300〜6,000rpm、さらに好ましくは1,600〜4,000rpm程度であってもよい。
【0054】
前記リファイナー処理では、処理回数(パス回数)は、1〜20回、好ましくは、2〜15回、さらに好ましくは3〜10回(例えば、4〜9回)程度であってもよい。
【0055】
複合繊維の叩解処理の度合いは、ディスククリアランス及びリファイナー処理回数で調節することができる。ディスククリアランスが狭すぎたり、処理回数が多すぎると、複合繊維が大きな剪断力を受け、フィブリル化が進行し、ねじれや表面の荒れが生じ、繊維同士が絡まりやすくなり、リファイナー処理して得られたフィブリル化繊維の分散性が低下する。また、ディスククリアランスが広すぎると、複合繊維に加わる剪断力が小さくなり、未分割部分が残る。
【0056】
(ホモジナイズ処理)
ホモジナイズ処理では、複合繊維を撹拌等により溶媒に分散させ、この分散液(又は懸濁液)をホモジナイズ処理してもよい。なお、ホモジナイズ処理の効率を高めるため、繊維の切断が生じないような条件で、個々の繊維にほぐすように溶媒に分散させるのが好ましい。
【0057】
前記溶媒としては、例えば、前記リファイナー処理の項で例示の溶媒などが挙げられ、特に水が好ましい。
【0058】
分散液中の複合繊維の濃度(固形分濃度)は、0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%程度であってもよい。なお、分散処理は、前記リファイナー処理の項で例示の分散機などを用いて行ってもよい。
【0059】
ホモジナイズ処理では、ホモジナイザー(例えば、高圧ホモジナイザーなど)を使用することができる。
【0060】
高圧ホモジナイザーへ圧送する圧力(又は処理圧力)は、例えば、9〜19MPa、好ましくは10〜18MPa、さらに好ましくは11〜17MPa(例えば、13〜15MPa)程度であってもよい。
【0061】
前記ホモジナイズ処理では、処理回数(パス回数)は、1〜20回、好ましくは、2〜15回、さらに好ましくは3〜10回(例えば、4〜9回)程度であってもよく、4回以下であってもよい。
【0062】
複合繊維の叩解処理の度合いは、処理圧力及びホモジナイズ処理回数で調節することができる。処理圧力が高すぎたり、処理回数が多すぎると、複合繊維が大きな剪断力を受け、繊維の切断、ねじれなどが生じ、繊維の特性が失われる場合がある。また、繊維のフィブリル化が進行し、繊維同士の強固な絡み合いが生じるため、ホモジナイズ処理して得られたフィブリル化繊維の分散性が低下する。
【0063】
本発明では、前記の条件でリファイナー処理及び/又はホモジナイズ処理するため、分散性が高く、良好に分割されたフィブリル化繊維を製造できる。特に、前記リファイナー処理及びホモジナイズ処理を行うと、分割性を向上させることができる。前記リファイナー処理及びホモジナイズ処理を行う場合、処理の順番は特に制限されず、リファイナー処理を行った後、ホモジナイズ処理を行ってもよい。
【0064】
このように、相分離した複数の樹脂で構成された複合繊維を用いて特定の叩解処理を行うため、フィブリル化繊維を高い分割性で、簡便にかつ効率よく製造することができる。
【0065】
前記フィブリル化繊維は、繊維同士が絡まり合うことなく、十分に分割されているため、水などに対する分散性が高い。フィブリル化繊維は、前記複合繊維を分割して得られる複数種の繊維で構成されている。各繊維は、分割して得られる単独の樹脂で構成された繊維であってもよいが、複合繊維由来の複数の樹脂で構成された複合繊維であってもよい。
【0066】
また、前記フィブリル化繊維の平均繊維径は、0.01〜30μmの広い範囲から選択でき、例えば、0.05〜25μm、好ましくは、0.1〜20μm、さらに好ましくは0.3〜20μm程度の微細な繊維も製造できる。また、前記フィブリル化繊維の平均繊維長は、0.1〜5mmの広い範囲から選択でき、例えば、0.1〜4mm、好ましくは0.3〜4mm、さらに好ましくは0.3〜3mm程度の微細な繊維も製造できる。
【0067】
前記フィブリル化繊維の集合体(以下、単に「フィブリル化繊維集合体」と記載する)としての嵩密度は、0.1〜30kg/m、好ましくは1〜25kg/m、さらに好ましくは3〜20kg/m程度であってもよい。
【0068】
前記フィブリル化繊維集合体の形状は、特に制限されず、例えば、シート状(又は平面状)、ウェブ状、塊状などであってもよく、通常、シート状(特に、抄紙により得られるシート状など)である場合が多い。
【0069】
シート状フィブリル化繊維集合体の厚みは、特に制限されず、例えば、0.01〜20mm、好ましくは0.05〜10mm、さらに好ましくは0.1〜5mm程度であってもよい。また、シート状フィブリル化繊維集合体の目付けは10〜300g/m、好ましくは20〜200g/m、さらに好ましくは30〜150g/m程度であってもよい。
【0070】
このようなシート状フィブリル化繊維集合体の引張強度は、1〜25N/25mm、好ましくは1.2〜20N/25mm、さらに好ましくは1.5〜15N/25mm程度であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明では、複合繊維を用いて、分散性が高く、かつ良好に分割されたフィブリル化繊維を製造できるため、フィブリル化繊維の工業的な製造方法などに有用である。また、本発明の製造方法により得られたフィブリル化繊維は、良好に分割され、水などに対する分散性が高いため、医薬、化粧品分野などにおける添加剤;紙、不織布などの強度を改善するための添加剤(強化剤、紙力強化剤など);衛生用品(おむつ、生理用品など)などの液体吸収材;水解紙[包装材料(薬品、洗剤、入浴剤などの分包など)、トイレットペーパー、ティッシュペーパーなど]などにも利用できる。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0073】
フィブリル化繊維の特性は以下の方法により測定又は評価した。
【0074】
(分割性)
フィブリル化繊維に水を加えて固形分濃度0.3重量%にし、ホモディスパー(特殊機化工業(株)製)で5,000rpmで5分間撹拌した。この分散液を吸引濾過し、JIS P3801に規定される5種Aの濾紙に、200g/mの積層量で積層させたフィブリル化繊維に対して水200mlを通過させ、通過時間を測定し、フィブリル化繊維の分割性の指標とした。
【0075】
(分散性)
フィブリル化繊維に水を加えて固形分濃度0.2重量%にし、スリーワンモーター(新東科学(株)製 HEIDON)で1,000rpmで1分間撹拌し、分散状態を目視により、以下の基準で評価した。
【0076】
○…均一に分散した
△…未分散部分があるがほぐれる
×…未分散部分がほぐれにくい。
【0077】
(実施例1〜6、比較例1〜3)
ポリエチレンとポリプロピレンとで構成された複合繊維(チッソ(株)製、EDC810、平均繊維径約20μm、平均繊維長5mm、繊度1.7dtex)を使用し、表1に示す条件で叩解処理を行った。ディスクリファイナーは、長谷川鉄工(株)製 SUPERFIBRATER 400−TFSを使用し、ディスクの回転数は、1,750rpmであった。また、高圧ホモジナイザーは、ADV GAULIN社製 M−6を使用した。得られた繊維の分割性及び分散性を測定又は評価した。
【0078】
結果を表1に示す。なお、実施例4及び6では、リファイナー処理を行った後、ホモジナイズ処理を行った。実施例1〜6で得られた繊維の平均繊維径は3〜7μm程度、平均繊維長は、目視で2mm程度であるフィブリル化繊維であり、比較例2及び3得られた繊維の平均繊維径は1〜5μm程度、平均繊維長は目視で2mm程度であるフィブリル化繊維であった。
【0079】
【表1】

【0080】
表1から明らかなように、比較例に比べ、実施例では、複合繊維を用いて特定の条件で叩解処理を行うため、分散性が高く、かつ良好に分割されたフィブリル化繊維が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相分離した複数の樹脂で構成された複合繊維を叩解処理により分割してフィブリル化繊維を製造する方法であって、叩解処理が(a)0.1〜0.3mmのディスククリアランスを使用するリファイナー処理、及び(b)9〜19MPaの圧力で圧送するホモジナイズ処理から選択された少なくとも一種である前記フィブリル化繊維の製造方法。
【請求項2】
リファイナー処理(a)を行った後、ホモジナイズ処理(b)を行う請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
複合繊維として、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びポリアミド系樹脂から選択された少なくとも一種で構成された繊維を用いる請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
断面構造が、放射状配列型、サイドバイサイド型、海島型、又は芯鞘型である複合繊維を用いる請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
複合繊維が、相分離した二種の樹脂で構成され、第1の樹脂と第2の樹脂との割合(重量比)が、第1の樹脂/第2の樹脂=10/90〜90/10である複合繊維を用いる請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の製造方法により得られたフィブリル化繊維。

【公開番号】特開2008−179922(P2008−179922A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15526(P2007−15526)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】