説明

フィラメントワインディング成形における樹脂含浸量測定方法と樹脂含浸量測定装置

【課題】樹脂含浸部をフィードバック制御するフィラメントワインディング成形において、繊維に対する樹脂含浸量を精密且つ連続的に測定することが可能な樹脂含浸量測定方法とその装置を提供する。
【解決手段】樹脂Pが含浸された繊維Fの静電容量を計測し、この計測結果に基づいて、繊維に含浸されている樹脂量を測定する。具体的には、静電容量センサ21を構成する2枚の並行平板24・24の間を、樹脂Pが含浸された繊維Fを非接触で走行させて静電容量の変化を計測することにより、繊維Fに含浸されている樹脂量を連続的に測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントワインディング成形において、繊維に含浸された樹脂量を測定する樹脂量測定方法と樹脂量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィラメントワインディング装置は、繊維の供給部、繊維に樹脂を含浸させる樹脂含浸部、および、繊維を被巻付部材に巻き付ける巻付部などから構成されるが、これら樹脂含浸部と巻付部との間に、繊維に対する樹脂含浸量の測定装置を設けて、測定結果を樹脂含浸部にフィードバックすることは、例えば特許文献1に記載されており公知である。そこでは、樹脂含浸部を経た繊維の所定長さの重量を計測し、その計測結果に基づいて樹脂含浸量を測定している。具体的には、樹脂含浸部から所定長さの繊維を引き出し、当該繊維の両端部を支承した状態で、その重量を計測している。
【0003】
以上のように樹脂含浸部をフィードバック制御すると、繊維に対する樹脂含浸量を所定の一定範囲に維持して、良質なフィラメントワインディング成形品を安定的に得ることができる。繊維を被巻付部材に巻き付ける前に含浸不良を検知できることから、不良品の発生を抑えることもできる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−209923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の態様では、重量を計測するためには繊維を把持する必要があり、繊維の流れを止めることなく連続的に測定を行うことは困難であり、フィラメントワインディング成形の高速化に対応できない。また、把持部材や重量計測部の荷重計が繊維に接触するため、樹脂が把持部材等に転移して樹脂含有量が変動するおそれもある。
【0006】
加えて、繊維の両端部を常に一定の力で支承するのは極めて困難であること、およびこの種のフィラメントワインディング成形において繊維に含浸される樹脂量は0.5g/m程度と極めて微量であることなどに鑑みると、支承する力における僅かな誤差が、樹脂含浸量の測定値に多大な影響を及ぼし、正確に樹脂含有量を測定することは実質上不可能であると言わざるを得ない。含浸される樹脂量が極めて微量であることから、ある程度の長さの繊維の重量を計測する必要があり、樹脂量測定装置が大型化する不利もある。
【0007】
本発明の目的は、樹脂含浸部をフィードバック制御するフィラメントワインディング成形において、繊維に対する樹脂含浸量を精密且つ連続的に測定することが可能な樹脂含浸量測定方法とその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る樹脂含浸量測定方法は、樹脂が含浸された繊維の静電容量を計測し、この計測結果に基づいて、繊維に含浸されている樹脂量を測定することを特徴とする。具体的には、静電容量センサを構成する2枚の並行平板の間を、樹脂が含浸された繊維を非接触で走行させて静電容量の変化を計測することにより、繊維に含浸されている樹脂量を連続的に測定する。
【0009】
本発明の他の樹脂含浸量測定方法は、樹脂が含浸された繊維の厚みを光電方式で計測することにより、繊維に含浸されている樹脂量を測定することを特徴とする。具体的には、繊維の幅方向から、樹脂が含浸された繊維に対して光を照射する投光素子と、投光素子と繊維を挟んだ対向位置に設けられて、樹脂が含浸されている繊維の表面形状に対応する画像を撮像する受光素子とを備え、受光素子で得られた像の面積に基づいて、繊維に含浸されている樹脂量を測定する。
【0010】
本発明の他の樹脂含浸量測定方法は、繊維の樹脂含浸面に向けて光を照射し、その反射率に基づいて、繊維に含浸されている樹脂量を測定することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る樹脂含浸量測定装置は、2枚の並行平板を有する静電容量センサと、これら2枚の並行平板の間を、非接触で樹脂が含浸された繊維を走行させる走行装置とを備え、走行装置で繊維を走行させながら、繊維に含浸されている樹脂量を連続的に測定することを特徴とする。
【0012】
本発明の他の樹脂含浸量測定装置は、繊維の幅方向から樹脂が含浸された繊維に対して光を照射する投光素子と、投光素子と繊維を挟んだ対向位置に設けられて、樹脂が含浸されている繊維の表面形状に対応する画像を撮像する受光素子と、これら投光素子と受光素子との間を、非接触で樹脂が含浸された繊維を走行させる走行装置とを備え、走行装置で繊維を走行させながら、前記表面形状に対応する画像を撮像することにより、繊維に含浸されている樹脂量を連続的に測定することを特徴とする。
【0013】
本発明の他の樹脂含浸量測定装置は、繊維の樹脂含浸面に向けて光を照射する投光素子と、樹脂含浸面で反射した光を受ける受光素子と、樹脂が含浸された繊維を走行させる走行装置とを備え、走行装置で繊維を走行させながら、投光素子から繊維の樹脂含浸面に向けて光を照射するとともに、その反射光を受光素子で受け、受光素子で検出された受光量に基づく反射率より、樹脂に含浸されている樹脂量を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る樹脂含浸量測定方法および樹脂含浸量測定装置においては、樹脂が含浸された繊維の静電容量を計測し、この計測結果に基づいて、繊維に含浸されている樹脂量を測定する。つまり、静電容量センサで計測される静電容量は、一対の導体間に位置する物質の種類および体積によって変化するため、この性質を利用して、繊維に対する樹脂の含浸量を測定する。具体的にはまず、繊維と樹脂の素材を特定したうえで、樹脂含浸量の異なる種々の繊維を準備し、各繊維を導体間に配置したときの静電容量を計測してデータベース化しておく。そして、実際に樹脂含浸繊維を走行させたときのセンサの計測結果と先のデータベースとを照合することで、当該繊維に対する樹脂含浸量を測定する。
【0015】
このように本発明においては、樹脂の含有量に応じて大きく変化する物性値である静電容量に基づいて、樹脂含有量を測定するようにしたので、特許文献1のように荷重計を用いる場合に比べて、樹脂含浸量の精密な計測が可能である。つまり、特許文献1の従来形態では、例えば1メートル当たり0.5gといった微妙な重量の変動具合に基づいて樹脂含有量を測定するため、当該含有量を正確に測定することは困難であったが、本発明においては、数センチ長の静電容量センサを通過するときの繊維の物性値の変化を捉えるため、樹脂含有量を格段に正確に測定することができる。これにて、樹脂含浸部に対して精密なフィードバック制御を行って、樹脂含浸量を所定の範囲内で正確に維持することができるので、フィラメントワインディング成形品の品質向上に貢献できる。
【0016】
樹脂含浸繊維が静電容量センサに対して非接触であると、樹脂が測定部に転移するおそれがなく、樹脂含有量の変動無く繊維を巻付部に送給できる。また、繊維を走行させながら連続的に樹脂含浸量を測定できるため、測定のために製造ラインを停止させる必要がなく、フィラメントワインディング成形の高速化への対応の容易である。さらに、測定装置の小型化が容易であり、既存のフィラメントワインディング装置に対して後付けすることも容易である。
【0017】
繊維の厚みを光電方式で計測することで、繊維に含浸されている樹脂量を測定する方法および装置によれば、上述の静電容量式の場合と同様に、樹脂含浸繊維に対して非接触の状態で樹脂含浸量を測定できる。したがって、樹脂が測定部に転移するおそれがなく、樹脂含有量の変動無く繊維を巻付部に送給できる。また、繊維を走行させながら連続的に樹脂含浸量を測定できるため、測定のために製造ラインを停止させる必要がなく、フィラメントワインディング成形の高速化への対応の容易である。さらに、測定装置の小型化が容易であり、既存のフィラメントワインディング装置に対して後付けすることも容易である。何よりも繊維の幅方向に配された投・受光素子の間を通過するときの繊維の厚みの変化を捉えるため、樹脂含有量の正確な測定が可能である点で優れている。
【0018】
繊維の樹脂含浸面に向けて光を照射し、その反射率に基づいて、樹脂に含浸されている樹脂量を測定する方法および装置によれば、上述の静電容量式の場合と同様に、樹脂含浸繊維に対して非接触の状態で樹脂含浸量を測定できる。したがって、樹脂が測定部に転移するおそれがなく、樹脂含有量の変動無く繊維を巻付部に送給できる。また、繊維を走行させながら連続的に樹脂含浸量を測定できるため、測定のために製造ラインを停止させる必要がなく、フィラメントワインディング成形の高速化への対応の容易である。さらに、測定装置の小型化が容易であり、既存のフィラメントワインディング装置に対して後付けすることも容易である。何よりも投光素子からの照射位置を通過するときの樹脂含有繊維の反射率の変化を捉えるため、樹脂含有量の正確な測定が可能である点で優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1実施形態) 図1ないし図3に、本発明に係る樹脂含浸量測定方法および樹脂含浸量測定装置を、マンドレル(被巻付部材)Mに対して繊維Fを巻き付けるフィラメントワインディング装置(以下、FW装置と記す)に適用した第1実施形態を示す。図2に示すように、このFW装置は、カーボン繊維(以下、単に繊維と記す)Fの供給部1、繊維Fに樹脂Pを含浸させる樹脂含浸部2、および、樹脂Pが含浸された繊維FをマンドレルMに巻き付ける巻付部3などから構成される。樹脂含浸部2と巻付部3との間に、繊維Fに含浸された樹脂量の測定装置4が設けられており、そこでの測定結果が樹脂含浸部2にフィードバックされる。
【0020】
繊維Fの供給部1は、繊維Fが巻回されたボビン6と、ボビン6からの繊維Fの解舒を担う解舒装置7とを備えている。解舒された繊維Fは、テンション装置8で所定のテンションを付与された後、繊維Fを走行させるための駆動ローラ9を経て、樹脂含浸部2に送給される。繊維Fは、上下にフラット面を有するテープ状を呈している。
【0021】
図3に示すように樹脂含浸部2は、樹脂Pが溜められる樹脂槽11と、樹脂槽11内の樹脂Pに下部が浸かった状態で配置される回転ローラ12と、回転ローラ12の表面に付着した樹脂Pの量を調整するためのナイフエッジ13とを備えている。ナイフエッジ13は、回転ローラ12の表面との間に僅かなクリアランスを有する状態でケース14内に配置されており、このクリアランスを大小に変更することで、回転ローラ12の表面に付着した樹脂Pの量を調整することができる。回転ローラ12を繊維Fの送給速度に応じた速度で回転させることにより、回転ローラ12の表面に付着した樹脂Pを、回転ローラ12の上部に触れる繊維Fの下面に付着させることができる。繊維Fの送給方向における回転ローラ12の両側のローラ15・16は、繊維Fの上面に当接して、回転ローラ12に対する繊維Fの接触圧を一定に維持している。
【0022】
図2に示すように巻付部3は、繊維Fをトラバースさせるトラバース装置19を備えており、樹脂含浸部2を経て樹脂Pが付着された繊維Fを、トラバース装置19によりトラバースしながらマンドレルMに巻き付ける。
【0023】
本実施形態に係る樹脂量測定装置4は、静電容量センサ21と、繊維Fを走行させる走行装置とを備えている。図1に示すように静電容量センサ21は、断面が横臥U字状の基体23と、この基体23の上下板部に埋設された導電性の並行平板24・24とで構成される。図1および図3において符号25は、上下の並行平板24・24間の静電容量を計測する計測部を示している。なお、両並行平板24・24は必ずしも埋設させる必要はなく、基体23の内部空間に露出されていてもよい。
【0024】
繊維Fの走行装置は、供給部1と樹脂含浸部2との間に配された先の駆動ローラ9と、図2に示すように繊維Fの送給方向における静電容量センサ21の下流側に配された駆動ローラ27とで構成される。繊維Fの送給方向における静電容量センサ21の両側のローラ28・29は、繊維Fの上面に当接して、繊維Fを並行平板24・24に対して非接触かつ平行に走行させる。
【0025】
並行平板24・24間の静電容量は、並行平板24・24の対向空間内に位置する物質の種類および体積によって変化する。したがって、この性質を利用して、当該空間内を走行する繊維Fに対する樹脂Pの含浸量を測定することができる。つまり、静電容量センサ21の計測部25は、繊維Fが並行平板24・24の対向空間を走行する間、静電容量を連続的に計測しており、その計測結果に基づき、当該繊維Fに対する樹脂Pの含浸量を測定する。詳しくは、計測部25には、樹脂Pの含浸量の異なる種々の繊維Fを並行平板24・24の対向空間内に位置させたときの静電容量の測定結果で構成されるデータベースが記録されており、計測部25は得られた静電容量の計測値を当該データベースと照合することで、当該繊維Fに対する樹脂Pの含浸量を測定する。なお、測定された樹脂Pの含浸量は、不図示の表示部に連続的に表示させることができる。
【0026】
計測部25で得られた樹脂含浸量の測定結果は、図3に示す制御部31に送信される。制御部31には、繊維Fに対する樹脂Pの含浸量の最適値と、許容される所定範囲の上限値および下限値とが記録されている。そして制御部31は、樹脂Pの含浸量が最適値より少ない場合は、樹脂含浸部2における樹脂Pの付着量を増加させるべく、ナイフエッジ13の先端を回転ローラ12の表面から遠ざける方向に、すなわちクリアランスが大きくなる方向にフィードバック制御を行う。逆に、含浸量が最適値より多い場合は、樹脂含浸部2における樹脂Pの付着量を減少させるべく、ナイフエッジ13の先端を回転ローラ12の表面に近付ける方向に、すなわちクリアランスが小さくなる方向にフィードバック制御を行う。また、樹脂Pの含浸量が許容範囲から外れる場合には、繊維Fの送給を停止させる。
【0027】
以上のように、本実施形態に係る樹脂量測定装置4においては、樹脂Pの含有量に応じて大きく変化する物性値である静電容量に基づいて、樹脂含有量を測定するようにしたので、特許文献1のように荷重計を用いる場合に比べて、樹脂含浸量の精密な計測が可能となる。これにて、樹脂含浸部に対して精密なフィードバック制御を行って、樹脂含浸量を所定の範囲内で正確に維持することができるので、FW成形品の品質向上に貢献できる。
【0028】
非接触で樹脂含有量を測定することができるので、樹脂Pが測定装置4に転移するおそれが無く、樹脂含有量の変動無く繊維Fを巻付部3に送給できる。また、繊維Fを走行させながら連続的に樹脂含浸量を測定できるため、測定のために製造ラインを停止させる必要がなく、FW成形の高速化への対応の容易である。さらに、測定装置4の小型化が容易であり、既存のFW装置に対して後付けすることも容易である。
【0029】
(第2実施形態) 図4ないし図6に、本発明に係る樹脂含浸量測定方法および樹脂含浸量測定装置を、マンドレル(被巻付部材)Mに対して繊維Fを巻き付けるフィラメントワインディング装置(以下、FW装置と記す)に適用した第2実施形態を示す。図5に示すように、このFW装置は、カーボン繊維(以下、単に繊維と記す)Fの供給部1、繊維Fに樹脂Pを含浸させる樹脂含浸部2、および、樹脂Pが含浸された繊維FをマンドレルMに巻き付ける巻付部3などから構成される。樹脂含浸部2と巻付部3との間に、繊維Fに含浸された樹脂量の測定装置4が設けられており、そこでの測定結果が樹脂含浸部2にフィードバックされる。
【0030】
繊維Fの供給部1は、繊維Fが巻回されたボビン6と、ボビン6からの繊維Fの解舒を担う解舒装置7とを備えている。解舒された繊維Fは、テンション装置8で所定のテンションを付与された後、繊維Fを走行させるための駆動ローラ9を経て、樹脂含浸部2に送給される。繊維Fは、上下にフラット面を有するテープ状を呈している。
【0031】
図6に示すように樹脂含浸部2は、樹脂Pが溜められる樹脂槽11と、樹脂槽11内の樹脂Pに下部が浸かった状態で配置される回転ローラ12と、回転ローラ12の表面に付着した樹脂Pの量を調整するためのナイフエッジ13とを備えている。ナイフエッジ13は、回転ローラ12の表面との間に僅かなクリアランスを有する状態でケース14内に配置されており、このクリアランスを大小に変更することで、回転ローラ12の表面に付着した樹脂Pの量を調整することができる。回転ローラ12を繊維Fの送給速度に応じた速度で回転させることにより、回転ローラ12の表面に付着した樹脂Pを、回転ローラ12の上部に触れる繊維Fの下面に付着させることができる。繊維Fの送給方向における回転ローラ12の両側のローラ15・16は、繊維Fの上面に当接して、回転ローラ12に対する繊維Fの接触圧を一定に維持している。
【0032】
図5に示すように巻付部3は、繊維Fをトラバースさせるトラバース装置19を備えており、樹脂含浸部2を経て樹脂Pが付着された繊維Fを、トラバース装置19によりトラバースしながらマンドレルMに巻き付ける。
【0033】
本実施形態に係る樹脂量測定装置4は、図4および図5に示すように、繊維Fの幅方向から樹脂Pが含浸された繊維Fに対して光を照射する投光素子35と、投光素子35と繊維Fを挟んだ対向位置に設けられるCCDイメージセンサである受光素子36と、繊維Fを走行させる走行装置とを備えている。投光素子35および受光素子36は、互いに対向する投光面37および受光面38をそれぞれ備えており、両面37・38の上下寸法は、樹脂Pが含浸された繊維Fより十分大きく設定されている。繊維Fが投光面37と受光面38との対向空間を走行する間、投光面37からは連続的或いは間欠的に光が照射され、受光素子36では投光素子35からの投光に応じて連続的或いは間欠的に撮像が行われる。
【0034】
繊維Fの走行装置は、供給部1と樹脂含浸部2との間に配された先の駆動ローラ9と、図5に示すように繊維Fの送給方向における投光素子35および受光素子36の下流側に配された駆動ローラ27とで構成される。ローラ28・29は、繊維Fの上面に当接して、繊維Fを投光素子35および受光素子36に対して非接触に、かつ、投光面37および受光面38に対して垂直な状態で走行させる。
【0035】
投光面37からの照射光は、受光面38に到達するまでに、樹脂Pが含浸された繊維Fにより一部が遮られる。このため、受光素子36では、投光面37から一部がくり抜かれた形状の画像が得られる。画像の面積は、樹脂Pが含浸された繊維Fの上下厚み寸法により変化する。ここで、樹脂Pの層と繊維Fとのうち、繊維Fの厚みは同一であることを考慮すると、受光面38に作製される画像の面積は、樹脂Pの層の厚み、すなわち、繊維Fに対する樹脂Pの含浸量により変化する。つまり、本実施形態では、受光素子36が撮像した画像の面積に基づき、樹脂Pが含浸された繊維Fの厚みを計測し、その計測結果から、当該繊維Fに対する樹脂Pの含浸量を測定している。なお、測定された樹脂Pの含浸量は、不図示の表示部に表示させることができる。
【0036】
得られた樹脂含浸量の測定結果は、図6に示す制御部31に送信される。制御部31には、繊維Fに対する樹脂Pの含浸量の最適値と、許容される所定範囲の上限値および下限値とが記録されている。そして制御部31は、樹脂Pの含浸量が最適値より少ない場合は、樹脂含浸部2における樹脂Pの付着量を増加させるべく、ナイフエッジ13の先端を回転ローラ12の表面から遠ざける方向に、すなわちクリアランスが大きくなる方向にフィードバック制御を行う。逆に、含浸量が最適値より多い場合は、樹脂含浸部2における樹脂Pの付着量を減少させるべく、ナイフエッジ13の先端を回転ローラ12の表面に近付ける方向に、すなわちクリアランスが小さくなる方向にフィードバック制御を行う。また、樹脂Pの含浸量が許容範囲から外れる場合には、繊維Fの送給を停止させる。
【0037】
(第3実施形態) 図7に、本発明に係る樹脂含浸量測定方法および樹脂含浸量測定装置の第3実施形態を示す。ここでは、繊維Fの樹脂含浸面に光を照射したときの反射率が、樹脂Pの含浸量により変化する性質を利用して、繊維Fに対する樹脂Pの含浸量を測定する。詳しくは、投光素子35および受光素子36を繊維Fの走行経路の下方に配置して、投光素子35から繊維Fの下面(樹脂含浸面)に向けて斜め上方に光を照射し、その反射光を受光素子36で受光している。樹脂含浸面における反射率は、投光素子35からの投光量と、受光素子36での受光量との比から求められ、この反射率に基づいて、繊維Fに含浸されている樹脂量を測定する。それ以外の点は、先の第2実施形態と同様であるので、同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0038】
(第4実施形態) 図8に、本発明に係る樹脂含浸量測定方法および樹脂含浸量測定装置の第4実施形態を示す。ここでは、ある地点から樹脂含浸面までの距離が、樹脂Pの層の厚み、つまり、繊維Fに対する樹脂Pの含浸量により変化する点に着目し、当該距離の計測結果に基づき樹脂Pの含浸量を測定する。具体的には、レーザ光の投光素子35および受光素子36を備えるレーザ光ユニット41を、繊維Fの走行経路の下方に配置し、投光素子35から繊維Fの下面(樹脂含浸面)に向けて斜め上方にレーザ光を照射する。そして、樹脂含浸面で反射されたレーザ光の受光素子36における受光位置に基づき、投光素子35から樹脂含浸面までの距離を計測し、計測された距離に基づいて樹脂量を測定する。樹脂含浸面におけるレーザ光照射部分の上方に設けられたローラ42は、繊維Fの上面に当接して、レーザ光ユニット41に対する繊維Fの走行位置を一定に維持している。それ以外の点は、先の第2実施形態と同様であるので、同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0039】
以上のように、第2ないし第4実施形態に係る樹脂量測定装置4によれば、樹脂Pが含浸された繊維Fに対して非接触で樹脂含有量を測定することができるので、樹脂Pが測定装置4に転移するおそれが無く、樹脂含有量の変動無く繊維Fを巻付部3に送給できる。また、繊維Fを走行させながら連続的に樹脂含浸量を測定できるため、測定のために製造ラインを停止させる必要がなく、FW成形の高速化への対応の容易である。さらに、測定装置4の小型化が容易であり、既存のFW装置に対して後付けすることも容易である。何よりも繊維Fの厚み変化や反射率、あるいは投光素子35から樹脂含浸面までの距離などの変化を捉えて、これに基づいて樹脂含有量を測定するため、従来形態よりも格段に正確な測定が可能である点で優れている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態に係る樹脂含浸量測定装置の構成図である。
【図2】第1実施形態に係るFW成形を説明するための斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る樹脂含浸量測定装置および樹脂含浸部の構成図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る樹脂含浸量測定装置の構成図である。
【図5】第2実施形態に係るFW成形を説明するための斜視図である。
【図6】第2実施形態に係る樹脂含浸量測定装置および樹脂含浸部の構成図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る樹脂含浸量測定装置の構成図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る樹脂含浸量測定装置の構成図である。
【符号の説明】
【0041】
4 樹脂量測定装置
21 静電容量センサ
24 並行平板
35 投光素子
36 受光素子
F 繊維
P 樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂が含浸された繊維の静電容量を計測し、この計測結果に基づいて、繊維に含浸されている樹脂量を測定することを特徴とするフィラメントワインディング成形における樹脂含浸量測定方法。
【請求項2】
静電容量センサを構成する2枚の並行平板の間を、樹脂が含浸された繊維を非接触で走行させて静電容量の変化を計測することにより、繊維に含浸されている樹脂量を連続的に測定する請求項1記載のフィラメントワインディング成形における樹脂含浸量測定方法。
【請求項3】
樹脂が含浸された繊維の厚みを光電方式で計測することにより、繊維に含浸されている樹脂量を測定することを特徴とするフィラメントワインディング成形における樹脂含浸量測定方法。
【請求項4】
繊維の幅方向から、樹脂が含浸された繊維に対して光を照射する投光素子と、
前記投光素子と繊維を挟んだ対向位置に設けられて、樹脂が含浸されている繊維の表面形状に対応する画像を撮像する受光素子とを備え、
前記受光素子で得られた像の面積に基づいて、繊維に含浸されている樹脂量を測定する請求項3記載のフィラメントワインディング成形における樹脂含浸量測定方法。
【請求項5】
繊維の樹脂含浸面に向けて光を照射し、その反射率に基づいて、繊維に含浸されている樹脂量を測定することを特徴とするフィラメントワインディング成形における樹脂含浸量測定方法。
【請求項6】
フィラメントワインディング成形において、繊維に含浸されている樹脂量を測定する樹脂含浸量測定装置であって、
2枚の並行平板を有する静電容量センサと、
これら2枚の並行平板の間を、非接触で樹脂が含浸された繊維を走行させる走行装置とを備え、
前記走行装置で繊維を走行させながら、繊維に含浸されている樹脂量を連続的に測定することを特徴とする樹脂含浸量測定装置。
【請求項7】
フィラメントワインディング成形において、繊維に含浸されている樹脂量を測定する樹脂含浸量測定装置であって、
繊維の幅方向から、樹脂が含浸された繊維に対して光を照射する投光素子と、
前記投光素子と繊維を挟んだ対向位置に設けられて、樹脂が含浸されている繊維の表面形状に対応する画像を撮像する受光素子と、
これら投光素子と受光素子との間を、非接触で樹脂が含浸された繊維を走行させる走行装置とを備え、
前記走行装置で繊維を走行させながら、前記表面形状に対応する画像を撮像することにより、繊維に含浸されている樹脂量を連続的に測定することを特徴とする樹脂含浸量測定装置。
【請求項8】
フィラメントワインディング成形において、繊維に含浸されている樹脂量を測定する樹脂含浸量測定装置であって、
繊維の樹脂含浸面に向けて光を照射する投光素子と、
前記樹脂含浸面で反射した光を受ける受光素子と、
樹脂が含浸された繊維を走行させる走行装置とを備え、
前記走行装置で繊維を走行させながら、前記投光素子から繊維の樹脂含浸面に向けて光を照射するとともに、その反射光を前記受光素子で受け、
前記受光素子で検出された受光量に基づく反射率より、繊維に含浸されている樹脂量を測定することを特徴とするフィラメントワインディング成形における樹脂含浸量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−119717(P2009−119717A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296143(P2007−296143)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】