説明

フィルター、空気洗浄装置、冷凍機器および水質浄化装置

【課題】 害が少なく、効率的に滅菌を行ない、花粉を処理することもできるフィルター、空気洗浄装置、冷凍機器および水質浄化装置を提供する。
【解決手段】 フィルターは、マイクロ波を透過する材料に光触媒材料が混合された複合材料により多孔質体として形成され、マイクロ波の照射に対して前記多孔質体に混合された光触媒材料がOHラジカルを生成する。上記のフィルターにマイクロ波を照射する空気洗浄装置を、映画館、ホール、病院、鉄道、地下鉄、バス、タクシーなどのエアーダクト内に設置することで、SARSまたは鳥インフルエンザなどの空気感染を未然に防ぐことができる。さらにマイクロ波出力が20−100Wと低パワーで十分であり、構成が簡易であるため維持管理費用を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波をフィルターに照射することで、フィルターに捕集されたウイルスおよびバクテリアなどの捕集物を処理し、空気および水質の洗浄化を行うフィルター、空気洗浄装置、冷凍機器および水質浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、SARSおよび鳥インフルエンザなどの空気を媒体として感染する種々のウイルスが猛威を振るい、世界的な問題となっている。特に人が密集する映画館、ホール、病院、あるいは鉄道、地下鉄、バス、タクシーなど交通機関などでは、空気感染による感染の拡大が懸念される。各国間の人の交流も年々活発になっていることから、このような空気感染を未然に防ぐための効果的な空気洗浄システムの開発が望まれてきた。
【0003】
最も普及している滅菌法である加熱およびオートクレーブ法は、熱源として蒸気、加熱蒸気、火炎、電熱などを用いている。特開2002−360675号公報には、オゾン分解装置に用いられる触媒や活性炭にかかる負担を軽減でき寿命延長を図って交換頻度を減少し得るオゾン滅菌装置が開示されている。
【0004】
また、超音波による滅菌方法もある。特開2004−147967号公報には、超音波洗浄滅菌装置が開示されている。超音波による滅菌方法は、高温を発すると同時に細菌の細胞壁を破壊し、細菌を死滅させる。
【0005】
また、特開2003−250868号公報のプラズマ滅菌処理は、プラズマを発生させることで生じる紫外線およびラジカルの作用で微生物を死滅させる方法である。特開平07−198178号の空気清浄器は、空気中の細菌類を薄板状除菌用フィルターで捕集し、紫外線を照射することにより滅菌処理する装置である。
【0006】
冷凍機内の食品は、黴または雑菌が繁殖しやすく、これらが冷凍機内で繁殖することは食品衛生上の観点から望ましくない。冷凍機内で黴および細菌類を繁殖させないようにするためには、活性炭で水分を除去する方法、例えば特開平10−028838号公報に開示されている方法がある。特開2004−276005号公報に記載される滅菌ろ過装置は、無光触媒塗料と銀メタルセラミクスとフィルターを内部に設けたことを特徴としている。
【0007】
また、循環式の浴槽、プール、温泉、上水道の濾過装置、温泉水の泉源にレジオネラ菌等、有害な微生物および細菌類が増殖すると衛生管理上問題があるため、水の安全対策が望まれている。
【0008】
杉および檜から放出される花粉は社会的な問題となっている。室内および車内など密閉空間における花粉対策として、例えば特開2005−000813号公報に記載される空気清浄機がある。この装置は、芳香族ヒドロキシル化合物をポリ−4−ビニルフェノールにより構成したことにより、フィルターに水分が付着しても長期間安定した抗アレルギー効果を発揮できる作用を有する。
【0009】
災害時には飲み水が不足するため、緊急用の飲み水の確保が重要である。雨水あるいは雪解け水を緊急時の飲み水として利用するために、細菌類を滅菌処理する必要がある。災害時の飲料水を確保する方法として、例えば特開2004−321977号公報には、動力を全く使用しないで、黄濁した原水からでも飲料水を製造できる方法及び装置が開示されている。この方法および装置では、薬剤を使用して汚濁物質を凝集沈殿させている。
【0010】
特開平10−257717号公報に開示されている簡易発電装置は、オゾンガスを用いて水を滅菌処理するオゾン処理飲料水製造装置の電力源である。
【特許文献1】特開2002−360675号公報
【特許文献2】特開2004−147967号公報
【特許文献3】特開2003−250868号公報
【特許文献4】特開平07−198178号公報
【特許文献5】特開平10−028838号公報
【特許文献6】特開2004−276005号公報
【特許文献7】特開2005−000813号公報
【特許文献8】特開2004−321977号公報
【特許文献9】特開平10−257717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、オートクレーブ法のような熱源を用いた滅菌は、加熱に時間がかかり、また蒸気などを加熱するので効率的ではなく、実用的ではない。
【0012】
また、オゾン滅菌は放電などで生成されたオゾンが物理的および化学的反応により大気中で消費されてしまうため、オゾンの生成量を多くする必要がある。またオゾンは人体にとって有害であるため、オゾン滅菌も実用的ではない。
【0013】
また、超音波による滅菌方法は、超音波照射対象を損傷させてしまうため実用的ではない。また、プラズマ滅菌も大気中でプラズマを安定に発生させることが難しいため実用的ではない。
【0014】
また、紫外線による滅菌方法はコンパクトで効果的な滅菌方法だが、紫外線が当たらない部分は滅菌ができない欠点がある(シャドウ効果)。
【0015】
また、冷凍機内において活性炭で水分を除去する方法では、水の吸収能力を超えてしまうと、水分を吸収しなくなるため、これらを新しいものに取り替えなくてはならない。
【0016】
レジオネラ菌等を死滅させるには塩素系薬剤などで化学的に対処する方法では、浴槽の水、プールの水、温泉水、飲料水に使用することはコストが高くまた薬剤の匂いが残留する問題がある。紫外線照射による滅菌方法は上述したとおり、照射対象は滅菌できるが、照射しないところは滅菌できないため効率が優れず、実用的ではない。滅菌ろ過装置の滅菌能力は紫外線などの電磁波を照射しないので滅菌効果が小さい。また、薬品を使用するため薬品を添加する必要があり、大規模処理ができないため、実用的ではない。このようなことから、実用的な花粉対策を構築することが望まれている。
【0017】
本発明は上記の課題を解決するためになされており、害が少なく、効率的に滅菌を行ない、花粉を処理することもできるフィルター、空気洗浄装置、冷凍機器および水質浄化装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、多孔質のシリカ(SiO)またはアルミナ(Al)にTiOを混合した複合体を合成し、さらに含浸法によりマイクロオーダーの金属のコーティングを施した複合体をフィルターとしている。そして、フィルターにマイクロ波を照射することで、フィルターに捕集された空気感染する恐れのあるウイルスおよびバクテリアを滅菌処理する空気洗浄装置である。これにより、空気感染症を効果的に防ぐ他の滅菌方法に比べて短時間の滅菌が可能である。
【0019】
フィルターとしては、多孔質のSiOまたはAlの代わりに繊維状のSiOまたはAlを用いてゾル−ゲル法によりTiOのコーティングを行い、さらに金属を含浸法によりコーティングした複合体を用いることもできる。また繊維状のTiを酸化させて、TiO膜をTiの表面に皮膜させた複合体をフィルターとして用いることが可能である。
【0020】
上記のフィルターに低パワー(20−100W)のマイクロ波を照射することにより、選択的に金属がマイクロ波によって急速に加熱されるために、フィルターに捕集された細菌を数秒以内に死滅させることができる。
【0021】
コーティングする金属として銀、白金が特に有効である。
【0022】
金属をコーティングしたSiOあるいはAlフィルターの代わりにマイクロ波を強く吸収する物質を含む材料をフィルターとして用いることで、フィルターに捕集された細菌に低パワー(20−100W)のマイクロ波を照射することにより、数秒以内で死滅させることができる。
【0023】
マイクロ波を強く吸収する材料として、グラファイト、炭化珪素、特に三次元網目構造を有する多孔質炭素化物がフィルターとして有効である。
【0024】
この構成を冷凍機器に応用することにより、冷凍機器内の空気の滅菌処理も行うことができる。
【0025】
上記の構成は大気中だけでなく水中の細菌の滅菌処理装置にも応用することが可能である。浴槽の水、プールの水、温泉水、飲料水で増殖するレジオネラ菌等の有害細菌また緊急災害時の非常用の飲料水として有効である雨水および雪解け水に含まれる細菌類を上記フィルターで補修し、低パワー(20−100W)のマイクロ波を照射することで細菌類を数秒以内で死滅させ、水を浄化させることができる。
【0026】
さらに上記フィルターを用いた空気洗浄装置は、工場および自動車から排出された大気汚染物質(SOx、NOx、微粒子状の煤、未燃焼ガソリン成分)が花粉に付着することで引き起こるとされている花粉症を防ぐシステムにも応用が可能である。
【0027】
大気汚染物質が付着した花粉を上記フィルターが捕集し、低パワー(20−100W)のマイクロ波を照射することにより、花粉に付着した大気汚染物質を脱離、分解する。また花粉のアレルゲン物質が加熱により変性し、花粉症を低減させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る空気洗浄装置を用いれば、極めて短時間にSiOあるいはAl上の金属あるいは炭化珪素、グラファイトはマイクロ波により選択的に加熱させることができるため、短時間に低パワー(20−100W)のマイクロ波で細菌を滅菌処理が可能である。
【0029】
本発明の空気洗浄装置を、映画館、ホール、病院、鉄道、地下鉄、バス、タクシーなどのエアーダクト内に設置することで、SARSまたは鳥インフルエンザなどの空気感染を未然に防ぐことができる。
【0030】
また、本発明の空気洗浄装置に温度調節部を設けて空調調節器として用いることで、滅菌処理がされた清浄な空気を室内に提供することができる。
【0031】
また、本発明の冷凍機器により、冷凍機器内の黴または細菌の繁殖を抑えることができる。さらにマイクロ波出力が20−100Wと低パワーで十分であり、構成が簡易であるため維持管理費用を低減できる。
【0032】
また、本発明の水質浄化装置を循環式の浴槽、プール、温泉、上水道の濾過装置、温泉水の泉源に設置することで、濾過槽等で増殖するレジオネラ菌等の有害な細菌を短時間で死滅させることができる。本発明の水質浄化装置の導入により、温泉管理者は容易に安全性を確保することができる。また薬剤等を用いないため、全く無害である。
【0033】
本発明の空気洗浄装置は花粉症対策としても有効である。本発明の空気洗浄装置を映画館、ホール、病院、鉄道、地下鉄、乗用車、バス、タクシーなどのエアーダクト内および室内の空調機に設置することで、花粉のアレルゲンを変質させることにより、抗アレルギー反応を抑えることができる。
【0034】
災害時における非常用の飲料水として有効な雨水、雪解け水を、本発明の水質浄化装置によって滅菌処理することで利用することができる。本発明の水質浄化装置は、主にマイクロ波照射部とフィルターで構成されているため、コンパクトかつシンプルである。設置コストもかからないため、各市町村に設置することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の空気清浄装置に用いるフィルター11の断面図である。フィルター11は、複合体2(本体部)および金属膜1(被覆部)から構成されている。複合体2は、SiOまたはAlのようなマイクロ波を透過する材料にTiOのような光触媒材料が混合され、多孔質体として形成されている。金属膜1は、金属を含んで形成され、本体部2の表面を覆っている。
【0036】
フィルター11となるペレットの作成方法について以下に説明する。
【0037】
SiOまたはAlとTiO粉末それぞれが0.5−0.7モルになるように、天秤で計量し、乳鉢にて1時間混合する。混合した粉末に、成形性を高めるためにポリビニールアルコール(PVA)を少量加える。PVAを少量の温水で溶かし、この水溶液を粉末に加える。
【0038】
再び乳鉢で1時間混合し、PVAと粉末を良くなじませる。自然乾燥後、粉末を金型に入れ、プレス機にて粉末を固め、成型された複合体2を電気炉において600℃、1時間で焼結を行う。
【0039】
次に、複合体2に対して含浸法にて金属膜1のコーティングを行う。コーティングを行う金属は触媒として機能するものが望ましい。ヘキサクロロ白金(IV)酸6水和物、硝酸銀、硝酸ランタン(III)酸6水和物、塩化パラジウム、硝酸ニッケル6水和物などの金属イオンを含む塩を30m−mol/l、50mlの蒸留水に溶かし、30分間攪拌する。
【0040】
複合体2を溶液に1時間浸し、複合体2を6時間自然乾燥後、熱処理を1時間600℃で行う。担時させた金属は水酸化物として析出している。そのため、水素還元処理を1時間300℃で行うことで、複合体2の表面にナノ粒子状の金属膜1を得たペレットが完成する。
【0041】
次に、SiOまたはAlにTiOを加えた粉末に金属を混合させる混合法を用いてペレットを作成する方法を示す。0.5−0.7モルのSiOまたはAlと、0.5−0.7モルのTiOを混合した粉末にヘキサクロロ白金(IV)酸6水和物、硝酸銀、硝酸ランタン(III)酸6水和物、塩化パラジウム、硝酸ニッケル6水和物などの金属イオンを含む塩を30m−mol/l、50mlの蒸留水に溶かし、スタラーで30分間攪拌しながら溶液を沸騰しない程度に加熱させて、水分を蒸発させる。
【0042】
粉末状の複合体を乳鉢で再び一時間混合し、PVAを少量加え、プレス機にて成形、600℃一時間で焼結後、300℃で1時間水素還元を行う。本方法を用いることで、ペレット内部まで均一に金属を担持させることができる、担持する金属の量を制御することができることが利点である。
【0043】
ペレットの代わりに繊維状のSiOあるいはAlをフィルターとして用いることも可能である。
【0044】
図2は、アルミナファイバーにゾルーゲル法でTiOをコーティングし、さらに金属をコーティングしたフィルター11aの断面図である。繊維状のAlをシート状に切断し、アルミナファイバー3をTiO膜4でコーティングし、さらに含浸法で金属膜1をコーティングしている。
【0045】
ゾル−ゲル法により、アルミナファイバー3にマイクロオーダーの薄いTiO膜4を形成することができる。アルコール溶液にアセチルアセトンを少量加え、チタンテトライソポキシドを少量加える。チタンテトライソポキシド以外のチタンアルコキシド溶液も有効である。加水反応により縮合重合反応が即座に開始されるので、TiOが固まらないように容器を振りながら室温で18時間保持する。合成されたTiO膜はナノ粒子の集合体であるため、非常に高い活性を示す。
【0046】
コーティングしたフィルター11aを溶液から取り出し、自然乾燥させた後、300℃で1時間水素還元処理を行う。
【0047】
図3は、Tiメッシュ3aを酸化させて、TiO膜4をコーティングしたフィルター11bの断面図である。繊維状のTiをシート状に切断し、Tiメッシュ3aを酸素雰囲気中500-600℃で酸化させることによりTiO膜4でコーティングしている。
【0048】
上記のようなフィルターにマイクロ波を照射したときの現象について以下に説明する。
【0049】
マイクロ波はSiOあるいはAl上の金属を選択に加熱するため、金属のみが急速に加熱される。このため、金属の表面上の細菌類、花粉は瞬間的に滅菌あるいは変質を起こし、無害化される。
【0050】
マイクロ波を照射することによりTiO上にOHラジカルが発生する。また、紫外線が照射されたTiOにマイクロ波を照射することによりOHラジカルの生成が助長される。たとえば、OHラジカルの大腸菌に対する滅菌作用は塩素化合物よりも数千倍高く、OHラジカルは細菌類の滅菌に極めて効果的である。
【0051】
本発明のペレット状フィルター11、あるいはSiO、AlウールにTiOを混合あるいはコーティングしたフィルター11aはマイクロ波の照射により、TiOが活性化し、TiOの表面上にOHラジカルが発生するため、OHラジカルの酸化力により細菌類が死滅させることができる。
【0052】
なお、フィルターとしてマイクロ波を強く吸収する炭化珪素、グラファイトを材料とするフィルター、特に三次元網目構造を有する多孔質炭素化物を用いることもできる。
【0053】
図4は、上記のフィルター11を用いた空気洗浄装置30の構成図である。マイクロ波空気洗浄装置の構成は石英管5、マイクロ波を漏らさないためのマイクロ波チャンバー6、塵などを取り除くプレフィルター7、高圧電源8、マイクロ波を発生させるマグネトロン9、導波管10、細菌を滅菌するフィルター11、排気ファン12より構成されている。
【0054】
吸気口より流入した大気中の塵、などはプレフィルター7によって取り除かれる。プレフィルター7を通過した細菌類および花粉はマイクロ波チャンバー6内に設置された石英管5(空気流通路)内のフィルター11で滅菌あるいは加熱処理される。滅菌および加熱処理が完了した洗浄な空気は排気ファン12より排気される。マグネトロン9とマイクロ波チャンバー6間には導波管10が設置されており、マグネトロン9付近では導波管10の半径は約3センチに萎められている。これはマグネトロン9から放出され、フィルター11に吸収されずに反射したマイクロ波がマグネトロン9に戻らないようにするためである。
【0055】
導波管10がマイクロ波によって加熱される場合は、導波管10を冷却水によって冷却する。高圧電源8を制御することにより、マイクロ波の出力の調整およびマイクロ波をパルス状に放出することが可能である。マイクロ波出力は20−100Wである。
【0056】
図4に示す空気清浄装置30と同様の構成により冷凍機器あるいは空調機器を構成することで、冷凍機器内あるいは室内の細菌、黴などを滅菌処理し、冷凍機器内あるいは室内を清浄な空気に保つことができる。なお、空調機器では、空気流通路を流通する空気を加熱または冷却する温度調節部を設ける必要がある。冷凍機器では、冷却室内の空気を吸引し所定の経路で循環させる空気循環路を設け、空気循環路にフィルターを設ける必要がある。所定の経路とは、冷凍機器ごとに決まる循環経路を指す。
【0057】
図5は、循環式の水質浄化装置40の構成図である。循環式の水質浄化装置40の構成も空気洗浄装置30の構成と類似しており、空気洗浄装置30の構成に温泉水を循環させるためのポンプ13が追加されている。
【0058】
浴槽14の温泉水は、循環路14a(水流通路)を循環させられている。循環路14aを循環する温泉水からはプレフィルター7でごみなどが取り除かれ、レジオネラ菌などを含む温泉水はフィルター11で滅菌処理される。マイクロ波空気洗浄装置と同様に導波管10がマイクロ波によって加熱される場合は、導波管を冷却水によって冷却する。高圧電源8を制御することにより、マイクロ波の出力(20−100W)の調整およびマイクロ波をパルス状に放出することが可能である。
【0059】
浴槽14をプールと置き換えることで、プールの水も浄化処理することができる。また浴槽14を浄化槽と置き換えることで、浄化槽内の水を滅菌処理することができる。
【0060】
図6は、災害時における飲料水供給装置50の構成図である。本体は空気洗浄装置30と類似した構成で、止水弁15、流量調節弁16が追加されている。
【0061】
貯水槽17には雨水または雪解け水などを貯水している。これらの水は衛生上そのまま飲むことができない。貯水槽17からの水をプレフィルター7でごみなどを取り除き、フィルター11で水中の細菌類を滅菌処理する。流量調節弁16にて水の流量を調節する。
【実施例1】
【0062】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。大腸菌(Escherichia coli)を用いた第一実施を行った。図7は実施例1の装置を示す構成図である。石英管5は導波管の端から1/4波長の位置に垂直に固定した。マイクロ波出力を100Wに固定し、反射出力がないように調整した。石英管5内にアルミナボート20を設置し、アルミナボート20に金属をコーティングしたペレット19を設置した。ペレット19の設置場所が変わらないように、アルミナボート20を加工した。
【0063】
使用したペレットはSiO粉末にTiO粉末を混合し、焼結したペレットにAg、Pt、Pd、Ni、Laをコーティングしたペレットを用いた。また別のサンプルとしてAl粉末にTiO粉末を混合し、焼結したペレットにAg、Ptをコーティングしたペレットを用いた。
【0064】
LB培地(1 % Bacto tryptone, 0.5 % Bacto yeast extract, 1 % NaCl, pH7.0)で3×10CFU(Colony Formation Unit)/mlまで培養した大腸菌を50μlペレット19に滴下した。
実施後のペレットをLB培地で37℃、48時間培養した。滅菌処理の可否の判定は培養後の培地の濁りより判定した。実施結果を図8に示す。SiO粉末にTiO粉末を混合し、焼結しAgを含浸したペレットは5秒以内に滅菌することができた。SiO粉末にTiO粉末を混合し、焼結したペレットの方がAl粉末にTiO粉末を混合し、熱処理したペレットに比べて短時間で滅菌処理ができた。この理由としてSiOはAlに比べて熱伝導率が低いため、熱が伝わりにくく、SiO上の金属の熱がペレットに発散しないため、金属がより高温になったことが上げられる。
【実施例2】
【0065】
第一実施では菌を滴下したペレットにマイクロ波照射を行い、滅菌処理を行った実施例であるが、空気洗浄装置に応用するためには不完全である。そこで大気中に飛散させた菌をフィルターでトラップさせ、そのフィルターをマイクロ波により滅菌処理を試みる第二実施を行った。
【0066】
図9は第二実施で使用したマイクロ波滅菌実験装置を示す構成図である。石英管5は2重構造になっており、石英管五の先端に設置されているフィルター11を内外の石英管で挟むことでフィルター11を固定した。この位置は最もマイクロ波が集中するポイントである。マイクロ波出力を100Wに固定し、反射出力がないように調整した。
【0067】
吸気口から空気が吸気され、空気はHEPA−CUPフィルター21で塵などが取り除かれた。細菌飛散用リボン25には枯草菌の一種であるBacillus subtilisまたはBacillusstearothermophilusを固着しており、それぞれの枯草菌について第二実施を行った。細菌飛散用リボン25は振動器22と接続されており、振動器22が振動することでB. subtilisまたはB. stearothermophilusが飛散した。
【0068】
飛散した細菌はフィルター11で捕集され、マイクロ波を照射することでフィルター11が加熱され、細菌を滅菌することができた。流量計24により空気の流量を確認しながら流量制御バルブ23によって空気の流量を調節した。滅菌処理により、洗浄された空気は排気ファン12を通過後、装置より排出された。
【0069】
第二実施後、フィルター12をTSB培地(BactoTM Tryptic Soy Broth)に入れB. subtilis については37℃でB. stearothermophilus については56度でそれぞれ48時間培養した。滅菌処理の可否の判定は培養後の培地の濁りより判定した。
【0070】
実験結果を図10に示す。図10において、−は滅菌完了を+は滅菌不完了を示している。フィルターはアルミナ繊維(カオウール)にゾル−ゲル法でTiOのコーティングを行い、さらにAgまたはPtを含浸法でコーティングしたものである。またマイクロ波を強く吸収する炭化珪素を材料とするハニカムSiC、Ti−Si−O−Cで構成されるチラノファイバーを用いた。B. subtilisに関して金属をコーティングしていないフィルター(None)は滅菌時間が長いが、AgおよびPtをコーティングしたフィルター(Ag、Pt)はNoneに比べて短い時間で滅菌処理が完了した。ハニカムSiCおよびチラノヘックスフィルターも比較的短い時間で滅菌処理が完了した。
【0071】
B.stearothermophilusに関してはNone、AgおよびPtは五秒以内で滅菌が完了した。この理由としてTiO上にOHラジカルが発生し、OHラジカルの酸化作用によりB. stearothermophilusが死滅したとものである。ハニカムSiCおよびチラノヘックス共に短時間で滅菌処理が完了した。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係るフィルターの断面図である。
【図2】本発明に係るフィルターの断面図である。
【図3】本発明に係るフィルターの断面図である。
【図4】本発明に係る空気洗浄装置を示す構成図である。
【図5】本発明に係る水質浄化装置を示す構成図である。
【図6】本発明に係る水質浄化装置を示す構成図である。
【図7】第一実施の装置を示す構成図である。
【図8】第一実施の結果を示す図である。
【図9】第二実施の装置を示す構成図である。
【図10】第二実施の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1 金属膜(被覆部)
2 SiOまたはAl粉末にTiO粉末を加えた複合体(本体部)
3 アルミナファイバー(本体部)
3a Tiメッシュ(本体部)
4 TiO膜(被覆部)
5 石英管(空気流通路、水流通路)
6 マイクロ波チャンバー
7 プレフィルター
8 高圧電源
9 マグネトロン(マイクロ波照射部)
10 導波管(マイクロ波照射部)
11 フィルター
11a フィルター
11b フィルター
12 排気ファン
13 ポンプ
14 浴槽
14a 循環路(水流通路)
15 止水弁
16 流量調節弁
17 貯水槽
18 活性炭
19 ペレット
20 アルミナボート
21 HEPA−CAPフィルター
22 振動器
23 流量制御バルブ
24 流量計
25 細菌飛散用リボン
30 空気洗浄装置
40 循環式の水質浄化装置(水質浄化装置)
50 飲料水供給装置(水質浄化装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を透過する材料に光触媒材料が混合された複合材料により多孔質体として形成され、
マイクロ波の照射に対して前記多孔質体に混合された光触媒材料がOHラジカルを生成することを特徴とするフィルター。
【請求項2】
マイクロ波を透過する材料に金属が混合された複合材料により多孔質体として形成され、
マイクロ波の照射に対して前記多孔質体に混合された金属が選択的に加熱されることを特徴とするフィルター。
【請求項3】
マイクロ波を透過する材料を含み、多孔質体として形成される本体部と、
光触媒材料を含み、前記本体部の表面を覆って形成される被覆部と、を備え、
マイクロ波の照射に対して前記被覆部がOHラジカルを生成することを特徴とするフィルター。
【請求項4】
マイクロ波を透過する材料を含み、多孔質体として形成される本体部と、
金属を含み、前記本体部の表面を覆って形成される被覆部と、を備え、
マイクロ波の照射に対して前記被覆部が選択的に加熱されることを特徴とするフィルター。
【請求項5】
特定の金属により多孔質体として形成される本体部と、
前記特定の金属が酸化することにより生成される光触媒材料を含み、前記本体部の表面を覆って形成される被覆部と、を備え、
マイクロ波の照射に対して前記被覆部がOHラジカルを生成することを特徴とするフィルター。
【請求項6】
前記本体部は、光触媒材料を含み、
マイクロ波の照射に対して前記本体部がOHラジカルを生成することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載のフィルター。
【請求項7】
前記本体部は、金属を含み、
マイクロ波の照射に対して前記本体部が選択的に加熱されることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載のフィルター。
【請求項8】
前記被覆部は、金属膜および光触媒材料の膜が重なって形成されている二重構造を有することを特徴とする請求項3から請求項7のいずれかに記載のフィルター。
【請求項9】
空気を流通させる空気流通路と、
前記空気流通路に設けられる請求項1から請求項8のいずれかに記載のフィルターまたはマイクロ波を強く吸収する物質を含む材料をフィルターと、
前記フィルターにマイクロ波を照射する前記マイクロ波照射部と、を備え、
前記マイクロ波照射部のマイクロ波の照射により、前記フィルターに捕集された捕集物を変質させる空気洗浄装置。
【請求項10】
前記空気流通路には、前記流通路を流通する空気を加熱または冷却する温度調節部を更に備え、
前記流通路を介して供給する空気により温度調節を行なう請求項9記載の空気洗浄装置。
【請求項11】
内部を冷却する冷却室と、
前記冷却室内の空気を吸引し所定の経路で循環させる空気循環路と、
前記空気循環路内に設けられる請求項1から請求項8のいずれかに記載のフィルターまたはマイクロ波を強く吸収する物質を含む材料をフィルターと、
前記フィルターにマイクロ波を照射する前記マイクロ波照射部と、を備え、
前記マイクロ波照射部のマイクロ波の照射により、前記フィルターに捕集された捕集物を変質させる冷凍機器。
【請求項12】
水を流通させる水流通路と、
前記水流通路に設けられる請求項1から請求項8のいずれかに記載のフィルターまたはマイクロ波を強く吸収する物質を含む材料をフィルターと、
前記フィルターにマイクロ波を照射する前記マイクロ波照射部と、を備え、
前記マイクロ波照射部のマイクロ波の照射により、前記フィルターに捕集された捕集物を変質させる水質浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−334494(P2006−334494A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161407(P2005−161407)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(505066604)
【Fターム(参考)】