説明

フィルム、並びに偏光板及び表示装置、及びフィルムの製造方法

【課題】他の部材との貼り合せ適性に優れる、面内遅相軸がMD方向及びTD方向のいずれにも一致していないフィルムの提供。
【解決手段】正の固有複屈折の第1の分子と負の固有複屈折の第2の分子とを少なくとも含む長尺フィルムであって、長手方向に対し平行でも直交でもない方向に面内遅相軸を有し、且つ該面内遅相軸の方向が第1及び第2の分子それぞれの配向方向と平行でも直交でもないことを特徴とする長尺フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に用いられる光学補償フィルム、偏光膜の保護フィルム等、種々の光学フィルムとして有用なフィルム、並びにそれを用いた偏光板及び表示装置、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続的に長尺のフィルムを製造する場合、分子は、フィルムの搬送方向(MD)に配向し、面内遅相軸は分子配向方向又はそれに直交する方向になるのが一般的である。また、延伸処理を施すことにより、又は材料の選択によって、分子をフィルムの搬送方向と直交する方向(TD)に配向させることもできるが、この様にして作製されるフィルムの面内遅相軸も、同様に、分子配向方向又はそれに直交する方向になるのが一般的である。一方で、面内遅相軸が、長手方向に平行でも直交でもない方向にあるフィルムに対する需要も高い。例えば、円偏光板の一例は、面内レターデーションがλ/4の位相差フィルムと、偏光膜との積層体であって、該位相差フィルムの面内遅相軸と偏光膜の吸収軸とが45°で積層された積層体である。面内遅相軸が、長手方向に対して45°の方向にある長尺フィルムを提供できれば、吸収軸が長手方向に平行である長尺偏光膜と、ロール・ツー・ロールで積層することができ、生産性の改善に大きく寄与することができる。
【0003】
従来、面内遅相軸がMD方向にもTD方向にもないフィルムを製造するためには、斜め方向に延伸処理し、主成分である高分子を該延伸方向に配向させて、その配向方向に平行もしくは直交する方向に面内遅相軸を発現させる方法がしばしば採用されている。例えば、上記例の位相差フィルム、即ち面内遅相軸が長手方向に対して45°の方向にある位相差フィルムは、45°方向へ斜め延伸処理することで作製可能である(例えば特許文献1)。しかし、この様にMD方向及びTD方向に対して一方向に延伸処理し、ポリマー分子の配向方向又はそれに直交する方向に面内遅相軸を発現させると、その後に、偏光膜等の他の部材と貼合する際にしわが発生する傾向があり、生産性を損なうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−22944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、他の部材との貼り合せ適性に優れる、面内遅相軸がMD方向及びTD方向のいずれにも一致していないフィルム、それを有する偏光板及び表示装置、並びにその簡易な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 正の固有複屈折の第1の分子と負の固有複屈折の第2の分子とを少なくとも含む長尺フィルムであって、長手方向に対し平行でも直交でもない方向に面内遅相軸を有し、且つ該面内遅相軸の方向が第1及び第2の分子それぞれの配向方向と平行でも直交でもないことを特徴とする長尺フィルム。
[2] 音速の最大方向が長手方向に平行又は直交である[1]の長尺フィルム。
[3] 正の固有複屈折の第1の分子と負の固有複屈折の第2の分子とを少なくとも含み、音速の最大方向に対し平行でも直交でもない方向に面内遅相軸を有することを特徴とするフィルム。
[4] 前記第1及び第2の分子が、互いに同一の化合物の分子であって、結晶化度の違いによって互いに正負の異なる固有屈折率を示す分子である[1]〜[3]のいずれかのフィルム。
[5] 第1の分子がアモルファス状態のセルロースアシレート系化合物の分子であり、第2の分子が結晶化状態のセルロースアシレート系化合物の分子である[4]のフィルム。
[6] 前記第1及び第2の分子がそれぞれ添加剤の分子であり、正又は負の固有複屈折の主成分高分子をさらに含有する[1]又は[2]のフィルム。
[7] 波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)がλ/4である[1]〜[6]のいずれかのフィルム。
[8] 面内遅相軸が長手方向に対して又は音速の最大方向に対して45°の方向である[1]〜[7]のいずれかのフィルム。
[9] 偏光膜と、[1]〜[8]のいずれかのフィルムとを有する偏光板。
[10] 前記偏光膜の吸収軸と、前記フィルムの面内遅相軸とのなす角が45°である[9]の偏光板。
[11] [1]〜[8]のいずれかのフィルムを少なくとも有する表示装置。
[12] 正の固有複屈折を持つ第1の分子及び負の固有複屈折の第2の分子を含み、第1及び第2の分子の双方が、第1の方向に配向している膜を得る第1の工程、
第1及び第2の分子の一方の分子の配向方向を第1の方向に維持しつつ、他方の分子を第2の方向に配向させる第2の工程、
を含む[1]〜[8]のいずれかのフィルムの製造方法。
[13] 前記第1及び第2の工程の間に、第1の分子及び第2の分子の配向性に影響を与える少なくとも1つの条件を調整することを含む[12]の方法。
[14]アモルファス状態の分子を含み、このアモルファス状態の分子が第1の方向に配向している膜を得る第1の工程、
第1の方向に配向しているアモルファス状態の分子の一部を結晶化させ、アモルファス状態の分子が有する固有複屈折と正負が異なる固有複屈折を示す結晶化状態の分子に変化させる工程、
アモルファス分子の配向方向を第1の方向に維持しつつ、結晶化状態の分子を第2の方向に配向させる第2の工程、
を含む[1]〜[8]のいずれかのフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、他の部材との貼り合せ適性に優れる、面内遅相軸がMD方向及びTD方向のいずれにも一致していないフィルム、それを有する偏光板及び液晶表示装置、並びにその簡易な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のフィルムの製造方法の一例の流れを模式的に示す上面図である。
【図2】本発明のフィルムの製造方法の一例の流れを模式的に示す上面図である。
【図3】比較例のフィルムの製造方法の流れを模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。以下、本発明の実施の形態を挙げて詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書中、「MD方向」は、連続生産におけるフィルムの送り出し方向、及び「TD方向」はそれに直交する方向を意味する。また、本明細書では、単にフィルムという場合は、連続的に生産された長尺フィルム、及び実際に使用される形状、例えば矩形状、に切断された形態のフィルムのいずれも意味するものとする。
【0010】
1.フィルム
本発明は、正の固有複屈折を持つ第1の分子と負の固有複屈折の第2の分子とを少なくとも含む長尺フィルムであって、長手方向に対し平行でも直交でもない方向に面内遅相軸を有し、且つ該面内遅相軸の方向が第1及び第2の分子それぞれの配向方向と平行でも直交でもないことを特徴とする長尺フィルムに関する。
【0011】
本発明の長尺フィルムの特徴の1つは、面内遅相軸が、長手方向に対し平行でも直交でもない方向にあることである。MD方向にもTD方向にも一致しない面内遅相軸を有するフィルムを製造する方法の従来例として、当該面内遅相軸の方向に延伸処理し、分子をその方向に配向させる方法がある。しかし、この方法により得られる位相差フィルムは、面内遅相軸の方向が主成分高分子の配向方向と平行もしくは直交であるため、偏光膜等の他の部材と貼合する際に、しわが発生し、生産性を低下させる場合がある。本発明のフィルムでは、主成分高分子等の分子を、面内遅相軸の方向に配向させる必要はない。本発明では、正の固有複屈折を持つ第1の分子及び負の固有複屈折の第2の分子のそれぞれを互いに異なる方向に配向させることで、それぞれの配向方向とは異なる方向、例えば、その合成方向、に面内遅相軸を有するフィルムを提供している。本発明のフィルムでは、主成分高分子の配向方向と面内遅相軸の方向とは、平行でも直交でもないので、他の部材と貼合する際のしわの発生を抑制することができる。
【0012】
本発明のフィルムの音速の最大方向が長手方向に平行又は直交であると、偏光膜等の他の部材と貼合する際のしわの発生をより抑制できるので好ましい。一般的には、フィルムの音速の最大方向は、フィルムの硬度が最も高い方向になり、主成分高分子の配向方向と平行又は直交する方向になる。
なお、フィルムの音速の最大方向は、音速測定装置“SST−2501,野村商事(株)”を用い、25℃、60%RHの雰囲気中で2時間以上調湿したフィルムについて、25℃、60%RHの雰囲気にて、360度方向を32分割して音速を測定し、最大速度方向を算出した。
【0013】
また、本発明は、本発明の長尺フィルムを実際に使用する矩形状等のフィルムに切断した態様のフィルムにも関する。当該フィルムの一実施形態の特徴は、正の固有複屈折を持つ第1の分子と負の固有複屈折の第2の分子とを少なくとも含み、音速の最大方向に対し平行でも直交でもない方向に面内遅相軸を有することにある。
【0014】
本発明のフィルムは、正の固有複屈折の第1の分子と負の固有複屈折の第2の分子とを少なくとも含む。本発明では、前記第1及び第2の分子が、互いに同一の化合物の分子であってもよい。高分子化合物の中には、アモルファス状態と結晶化状態とで、固有屈折率の正負が逆転する化合物がある。本発明では、当該高分子化合物をフィルムの原料として用いることができる。
【0015】
セルロースアシレート系化合物の中には、アモルファス状態では、正の固有複屈折を示し、結晶化状態では負の固有複屈折を示すものがある。本発明のフィルムの一実施形態として、セルロースアシレート系化合物を原料として含有し、第1の分子がアモルファス状態のセルロースアシレート系化合物の分子、第2の分子が結晶化状態のセルロースアシレート系化合物の分子であるフィルムが例示される。なお、本実施形態において、セルロースアシレート系化合物は、フィルムの主原料であってもよいし、別途他の高分子を主原料として含有していてもよい。前者では、正又は負の固有複屈折を示す添加剤の少なくとも1種をさらに含有していてもよい。また、後者では、主原料として用いられる他の高分子は、正の固有複屈折を示す高分子であっても、負の固有複屈折を示す高分子であってもよい。
なお、結晶化状態の分子の存在は、フィルムの融解熱を測定することで確認することができる。測定方法の詳細は、実施例に記載する。
【0016】
前記第1及び第2の分子が、互いに同一の高分子化合物の分子である態様では、フィルムの製造工程中に、該高分子化合物の一部を結晶化する工程を実施する必要がある。例えば、延伸処理等により当該高分子化合物の分子をアモルファス状態のまま所定の方向に配向させる。その後、一部を結晶化させ、再び延伸処理等により、他の方向への配向を促進する。結晶化状態の分子とアモルファス状態の分子との配向性に差が生じる条件で後の延伸処理を行えば、結晶化状態の分子の配向を維持しつつ、アモルファス状態の分子のみの配向方向を変化させることができる。面内遅相軸は、結晶化状態の分子の配向方向と、アモルファス状態の分子の配向方向との合成方向に発現される。フィルムとしてのある程度の柔軟性及び強度等を維持するためには、結晶化状態の分子の割合は5〜10%程度であるのが好ましく、上記融解熱に換算すると、2.0〜0.0J/gであるのが好ましく、2.0J/g以下で且つ0.0J/gを超えているのが好ましい。但し、この範囲に限定されるものではない。例えば、アモルファス状態の分子が、フィルムのマトリックスを構成し、結晶化状態の分子が当該マトリックス中に分散しているのが好ましい。この態様では、マトリックスを構成しているアモルファス状態の分子が、長手方向に対して平行又は直交に配向していると、フィルムの取り扱い性がさらに改善され、偏光膜等の他の部材との貼合適性等がより改善されるので好ましい。
【0017】
また、本発明では、前記第1及び第2の分子が、互いに異なる化合物の分子であってもよい。本発明の一実施形態では、前記第1及び第2の分子がそれぞれ添加剤の分子であり、正又は負の固有複屈折の主成分高分子をさらに含有する前記フィルムである。この態様では、主成分高分子のマトリックス中に、互いに異なる方向に配向している、第1及び第2の添加剤の分子が分散含有されるのが好ましい。主成分高分子は、第1及び第2の添加剤の分子のいずれか一方と同一の方向に配向しているのが好ましい。一例は、主成分高分子が正の固有複屈折を有する高分子であり、該高分子が、第2の添加剤の分子の配向方向と異なる方向であって、第1の添加剤の分子と同一の方向に配向している態様である。この態様では、面内遅相軸は、第2の添加剤の分子の配向方向と、第1の添加剤の分子の配向方向(主成分高分子の配向方向)との合成方向に発現する。
【0018】
前記第1及び第2の分子が、互いに異なる化合物の分子である態様では、フィルムの製造工程に、第1及び第2の分子の配向性に差が生じない条件で配向処理(例えば延伸処理)し、且つその後、第1及び第2の分子の配向性に差が生じる条件で配向処理(例えば延伸処理)する必要がある。例えば、延伸処理等により、第1及び第2の添加剤の分子、並びに当該高分子化合物の分子を所定の方向に配向させる。その後、再び延伸処理等により、他の方向への配向を促進する。第1の添加剤の分子及び主成分高分子の配向性と、第2の添加剤の分子の配向性とに差が生じる条件で延伸処理等を行えば、第2の添加剤の分子の配向状態を維持しつつ、第1の添加剤の分子及び主成分高分子の配向方向を変化させることができる。面内遅相軸は、第2の添加剤の分子の配向方向と、第1の添加剤の分子及び主成分高分子の配向方向との合成方向に発現される。この態様では、マトリックスを構成している主成分高分子が、長手方向に対して平行又は直交に配向していると、フィルムの取り扱い性がさらに改善され、偏光膜等の他の部材との貼合適性がより改善されるので好ましい。
なお、上記では、主成分高分子として、正の固有複屈折を示す高分子を用いる例を示したが、主成分高分子として、負の固有複屈折を示す高分子を用いても勿論よい。当該態様では、主成分高分子は、負の固有複屈折を示す第2の添加剤の分子とともに配向させるのが好ましい。また、本態様では、面内遅相軸は、第1の添加剤の分子の配向方向と、第2の添加剤の分子及び主成分高分子の配向方向との合成方向に発現される。
【0019】
以下、本発明のフィルムの製造に利用可能な材料、及び方法について詳細に説明する。
【0020】
1.−(1) 材料
本発明のフィルムは、正の固有複屈折の第1の分子と負の固有複屈折の第2の分子とを少なくとも含む。なお、本明細書では、「固有複屈折値が正である」とは、分子の長軸の配向方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも大きくなることを意味し、「固有複屈折値が負である」とは、分子の長軸の配向方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも小さくなることを意味する。固有複屈折値は誘電率分布から計算することもできる。
【0021】
前記第1及び第2の分子はそれぞれ、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。また、主成分であっても添加剤であってもよい。添加剤の例には、可塑剤、紫外線吸収剤、光学特性調整剤等が含まれる。以下、使用可能な材料について例示するが、以下の例に限定されるものではない。
【0022】
(a)正の固有複屈折を有する化合物
(a1)正の固有複屈折を有する可塑剤
本発明では、正の固有複屈折を有する可塑剤を用いることができる。該可塑剤の例には、高分子系可塑剤が含まれる。高分子系添加剤の数平均分子量は、より好ましくは200〜10000であり、さらに好ましくは200〜5000であり、特に好ましくは200〜2000である。
【0023】
前記高分子系可塑剤としては、ポリエステル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマーおよびこれら等の共重合体などから選択され、その中でも脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、脂肪族残基と芳香族残基を含むポリエステルの共重合体が好ましい。
【0024】
ポリエステル系ポリマー
本発明に使用可能なポリエステル系ポリマーは、ジカルボン酸成分とジオール成分の反応によって得られるものである。好ましくは、炭素原子数2〜20の脂肪族ジカルボン酸と炭素原子数8〜20の芳香族ジカルボン酸の混合物と、炭素原子数2〜12の脂肪族ジオール、炭素原子数4〜20のアルキルエーテルジオールおよび炭素原子数6〜20の芳香族ジオールから選ばれる少なくとも1種類以上のジオールとの反応によって得られるものである。反応物の両末端は反応物のままでもよいが、さらにモノカルボン酸類やモノアルコール類またはフェノール類を反応させて、所謂末端の封止を実施してもよい。この末端封止は、特にフリーなカルボン酸類を含有させないために実施されることが、保存性などの点で有効である。本発明のポリエステル系ポリマーに使用されるジカルボン酸は、炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸残基または炭素原子数8〜20の芳香族ジカルボン酸残基であることが好ましい。
高分子系可塑剤であるポリエステル系ポリマーに利用されるジオールは、例えば、炭素原子数2〜20の脂肪族ジオール、炭素原子数4〜20のアルキルエーテルジオールおよび炭素原子数6〜20の芳香族環含有ジオールから選ばれるものである。
【0025】
本発明においては、特に末端がアルキル基あるいは芳香族基で封止された高分子系可塑剤であることが好ましい。これは、末端を疎水性官能基で保護することにより、高温高湿での経時劣化に対して有効であり、エステル基の加水分解を遅延させる役割を示すことが要因となっている。
前記ポリエステル系ポリマーの両末端がカルボン酸やOH基とならないように、モノアルコール残基やモノカルボン酸残基で保護することが好ましい。
【0026】
また、モノカルボン酸残基で封止する場合は、モノカルボン酸残基として使用されるモノカルボン酸は、炭素原子数1〜30の置換、無置換のモノカルボン酸が好ましい。これらは、脂肪族モノカルボン酸でも芳香族環含有カルボン酸でもよい。これらのポリエステル系添加剤については、村井孝一編者「添加剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
【0027】
また、商品として、株式会社ADEKAからポリエステル系可塑剤としてDIARY 2007、55頁〜27頁に記載にアデカサイザー(アデカサイザーPシリーズ、アデカサイザーPNシリーズとして各種あり)を使用でき、また大日本インキ化学工業株式会社「ポリマ関連製品一覧表2007年版」25頁に記載のポリライト各種の商品や、大日本インキ化学工業株式会社「DICのポリマ改質剤」(2004.4.1.000VIII発行)2頁〜5頁に記載のポリサイザー各種を利用できる。さらに、米国 CP HALL 社製のPlasthall Pシリーズとして入手できる。ベンゾイル官能化ポリエーテルは、イリノイ州ローズモントのベルシコルケミカルズ(Velsicol Chemicals)から商品名BENZOFLEXで商業的に販売されている(例えば、BENZOFLEX400、ポリプロピレングリコールジベンゾエート)。
【0028】
(a2)正の固有複屈折を有する紫外線吸収剤
前記正の固有複屈折を有する紫外線吸収剤としては、特開2009−262551号公報に記載の紫外線吸収剤を挙げることができる。
以下において正の固有複屈折を有する紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、以下の化合物に限定されるものではない。
【0029】
【化1】

【0030】
【化2】

【0031】
(a3)正の固有複屈折の高分子
その他の正の固有複屈折の高分子としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル等があげられる。さらに、これらはホモポリマーだけでなく、コポリマー、それらの誘導体、ブレンド物等も含まれる。また、アシル置換度が2.6〜3.0のアモルファス状態のセルロースアシレートも、正の固有複屈折を示すので用いることができる。但し、後述する様に、結晶化したセルロースアシレートは負の固有複屈折を示すので、アモルファス状態で存在する必要がある。
【0032】
また、光学異方性制御剤として機能する化合物の中にも、正の固有複屈折を有する高分子化合物があり、当該高分子化合物を用いることが好ましい。前記光学異方性制御剤については、特開2005−104148号公報に記載がある。
【0033】
(b)負の固有複屈折を有する化合物
固有複屈折が負のポリマーの例には、ポリスチレン系重合体、アクリル酸エステル系重合体、メタアクリル酸エステル系重合体、アクリロニトリル系重合体及びメタアクリロニトリル系重合体が含まれる。
負の複屈折ポリマーを与えるモノマー(B)としては、メチルメタクリレート(MMA)、スチレン、イソプロピルメタクリレート(iPMA)、エチルメタクリレート(EMA)、ブチルメタクリレート(BMA)、tert−ブチルメタクリレート(t−BMA)、メチル−αフルオロアクリレート(MFA)などが例示される。さらに、総アシル置換度が高いセルロースアシレート、および結晶化したセルロースアシレートは負の固有複屈折を示し、本発明に用いることができる。
【0034】
上記、ポリスチレン系重合体の例には、スチレン及びスチレン誘導体のホモポリマー;スチレン及びスチレン誘導体のコポリマー;これらのブレンド物;が含まれる。
スチレン誘導体としては、例えば、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−フェニルスチレン、2,5−ジクロロスチレン等があげられる。スチレン及びスチレン誘導体(以下、STと略す。)のコポリマーとしては、ST/アクリロニトリル、ST/メタアクリロニトリル、ST/メタアクリル酸メチル、ST/メタアクリル酸エチル、ST/α−クロルアクリロニトリル、ST/アクリル酸メチル、ST/アクリル酸エチル、ST/アクリル酸ブチル、ST/アクリル酸、ST/メタクリル酸、ST/ブタジエン、ST/イソプレン、ST/無水マレイン酸、ST/酢酸ビニル、コポリマー及びスチレン/スチレン誘導体コポリマー等があげられる。以上にあげた二元コポリマー以外に三元以上のコポリマーもあげられる。また、前記ブレンド物の例には、上記スチレンホモポリマー、スチレン誘導体ホモポリマー、並びにスチレン及びスチレン誘導体コポリマーから選択される2種以上のブレンド物のみならず、スチレン及びスチレン誘導体のポリマー(以下、PSTと略す。)と、PSTを含まないポリマーとのブレンド物も含まれる。後者のブレンド物の例として、PST/ブチルセルロースPST/クマロン樹脂が挙げられる。
【0035】
また、スチレン及びその誘導体も負の固有複屈折を有する化合物として、用いることができる。スチレン誘導体の例には、p−ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、エトキシエトキシスチレン、及びアセトキシスチレンが含まれる。また、負の複屈折を有する化合物の例には、無水マレイン酸及びその重合体も含まれる。
【0036】
(c)好ましい組み合わせ
以下に、本発明のフィルムの材料の好ましい組み合わせ例を挙げるが、以下の例に限定されるものではない。
【0037】
【表1】

【0038】
1.−(2)製法
本発明のフィルムは、種々の方法で製造することができる。溶液製膜法又は溶融製膜法により製膜した後、延伸処理等の配向処理を施すことで製造することができる。本発明では、第1及び第2の分子をそれぞれ異なる方向に配向させる必要があり、第1及び第2の分子の配向性に差が生じる条件で配向処理する必要がある。溶液製膜法は、延伸時に膜中に含まれる溶剤量を乾燥条件によって調整でき、また延伸時の溶剤量の違い等が、互いに異なる分子の配向性に顕著な差を生じさせる場合があるので、簡易な方法で本発明のフィルムを製造可能である点で有利である。以下に、本発明のフィルムの製法の例を説明するが、以下の方法に限定されるものではない。
【0039】
本発明のフィルムの製法の一例は、
正の固有複屈折を持つ第1の分子及び負の固有複屈折の第2の分子を含み、第1及び第2の分子の双方が、第1の方向に配向している膜を得る第1の工程、
第1及び第2の分子の一方の分子の配向方向を第1の方向に維持しつつ、他方の分子を第2の方向に配向させる第2の工程、
を含む方法である。
また、特に、第1及び第2の分子が同一の化合物の分子であって、一方がアモルファス状態の分子であり、且つ他方が結晶化状態の分子である製法の一例は、
アモルファス状態の分子を含み、このアモルファス状態の分子が第1の方向に配向している膜を得る第1の工程、
第1の方向に配向しているアモルファス状態の分子の一部を結晶化させ、アモルファス状態の分子が有する固有複屈折と正負が異なる固有複屈折を示す結晶化状態の分子に変化させる工程、
アモルファス分子の配向方向を第1の方向に維持しつつ、結晶化状態の分子を第2の方向に配向させる第2の工程、
を含む方法である。
【0040】
(第1の工程)
前記第1の工程では、正の固有複屈折を持つ第1の分子及び負の固有複屈折の第2の分子を含み、第1及び第2の分子の双方が、第1の方向に配向している膜を得る。ポリマー溶液(以下、ドープとも言う)を流延して、製膜するのが好ましい。なお、以下、「ウェブ」とは、流延により製膜され、且つ溶剤をある程度含む膜をいうものとする。前記ポリマー溶液の主溶媒としては、主成分ポリマー(例えばセルロースアシレート)の良溶媒である有機溶媒を好ましく用いることができる。ポリマー溶液は、主成分ポリマーとともに、1種以上の添加剤を含有していてもよい。
【0041】
前記第1の工程では、第1及び第2の分子の双方が、第1の方向に配向している膜を得る。残留溶剤量が所定の範囲のウェブを延伸して、正の固有複屈折を持つ第1の分子及び負の固有複屈折の第2の分子を第1の方向に配向させることができる。この工程の延伸条件は、第1及び第2の分子の配向性に差が生じない条件で行うのが好ましい。
【0042】
第1及び第2の分子が、同一の化合物(例えばセルロースアシレート化合物)の分子である上記態様の製法では、例えば、第1の工程において、アモルファス状態のセルロースアシレート化合物の分子を含む膜を得、該膜を所定の方向に延伸して、アモルファス状態のセルロースアシレート化合物の分子を第1の方向に配向させる。その後、第1の方向に配向しているアモルファス状態の分子の一部を結晶化させ、アモルファス状態の分子が有する固有複屈折と正負が異なる固有複屈折を示す結晶化状態の分子に変化させる。セルロースアシレート系化合物の分子の中には、アモルファス状態では正の固有複屈折を示すが、結晶化すると負の固有複屈折を示すものがある。かかる性質のセルロースアシレート系化合物を用いることで、正の固有複屈折を持つ第1の分子及び負の固有複屈折の第2の分子を含み、第1及び第2の分子の双方が、第1の方向に配向している膜を作製することができる。
【0043】
第1の方向は、MD方向及びTD方向のいずれでもないのが好ましい。但し、操作上は、MD方向又はTD方向の延伸処理が容易である。一旦、残留溶剤量が多い状態でMD方向に延伸した後、TD方向の一方向(例えばTD方向を幅左右方向とした場合に左及び右のいずれかの方向のみ)に延伸すると、分子をMD方向及びTD方向のいずれでもない方向に配向させることができるので好ましい。一例では、残留溶剤量が300〜30%の状態で膜面温度70〜−30℃でMD方向に0〜100%の延伸倍率で延伸した後、残留溶剤量が200〜30%の状態まで乾燥して、膜面温度が70〜30℃でTD方向に0〜100%の延伸倍率で延伸する。延伸倍率は、ドラム速度とテンター搬送速度の比を調整することで、所望の範囲にすることができる。また、延伸温度(ウェブの膜面温度)は、ドラム等の支持体の温度を冷媒によって制御したり、温風又は冷風を吹き付けることで、所望の範囲にすることができる。また、残留溶剤量は、以下の式で算出することができる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
[式中、Mは、延伸ゾーンに挿入される直前のフィルムの質量、Nは、延伸ゾーンに挿入される直前のフィルムを120℃で2時間乾燥させたときの質量を表す]
【0044】
前記態様では、アモルファス状態の分子を第1の方向に配向させた後、一部を結晶化させる。結晶化は、ウェブを、膜面温度を制御しながら所定の残留溶媒量になるまで乾燥することで進行させることができる。例えば、セルロース系アシレート化合物を主成分として含むウェブについては、膜面温度が200℃以上にならないように制御しながら残留溶媒量を6〜120質量%の状態から12質量%未満の状態に減少させることで、一部の結晶化を進行させることができる。結晶化処理を実施することで、結晶状態のセルロースアシレート系化合物の分子(第2の分子)と、アモルファス状態のセルロースアシレート化合物の分子(第1の分子)が、第1の方向に配向した膜を形成できる。
【0045】
また、前記第1及び第2の分子がそれぞれ異なる添加剤の分子である態様では、これらの添加剤を含むポリマー溶液を流延して製膜した後、乾燥して残留溶剤量を減少させた後に、所定の方向(例えば幅方向)に延伸して、第1及び第2の添加剤の分子が第1の方向に配向した膜を得ることができる。延伸条件については特に制限はないが、例えば、残留溶剤量が50〜10質量%で、膜面温度50〜200℃でTD方向に10〜100%延伸するのが好ましい。
【0046】
(第2の工程)
次に、第1及び第2の分子の一方の分子の配向方向を第1の方向に維持しつつ、他方の分子を第2の方向に配向させる(第2の工程)。第2の工程では、延伸処理により第2の方向に配向させるのが好ましい。例えば、前記第1の工程で、膜の幅方向(TD方向)の一方向(例えばTD方向を幅左右方向とした場合に左及び右のいずれかの方向のみ)に延伸している場合は、他方のTD方向に延伸して、第1及び第2の分子のいずれか一方の分子の配向方向を、第2の方向に配向させる。この例では、第2の方向が、第1の方向と比較してよりMD方向になるように、例えば、第2の方向がMD方向と一致するように、延伸処理条件を調整してもよい。面内遅相軸は、第1の方向と第2の方向との合成の方向に発現する。前記膜が、第1及び第2の分子とともに、主成分高分子も含む場合は、第2の工程で、主成分高分子も第2の方向に配向させるのが好ましい。
【0047】
第2の工程を安定的に実施するためには、第1の分子及び第2の分子の配向性に影響を与える少なくとも1つの条件を調整して、第2の工程を実施することが好ましい。第1及び第2の分子の配向性に影響を与える条件の例には、膜中の残留溶剤量、膜面温度等が含まれる。また、各分子のガラス転移点、分子量等、マトリックス分子との相溶性など分子の固有の性質も含まれる。
【0048】
例えば、同一の化合物の結晶化状態の分子とアモルファス状態の分子とでは、化合物の分子量は同一であるが、各分子間の相互作用の強さ、分子クラスターサイズ等が異なるので、膜中に含まれる揮発分(溶媒)の割合、膜面温度等の条件を調整してから第2の工程を実施することで、結晶化状態の分子を第1の方向に配向させたまま、アモルファス状態の分子の配向を第2の方向に安定的に配向させることができる。また、互いに異なる添加剤の分子は、分子量、ガラス転移点、マトリックス分子との相溶性等の諸特性が異なるので、上記と同様に条件を調整して、第2の工程を実施すれば、これらの諸特性の違いにより、いずれか一方の分子を第1の方向に配向させたまま、他方の分子を第2の方向に安定的に配向させることができる場合もある。
【0049】
図1に、第1及び第2の分子が、セルロースアシレート化合物の分子である態様についてのフィルムの製造の流れの一例を模式的に示した上面図を、及び図2に、第1及び第2の分子がそれぞれ、添加剤の分子である態様についてのフィルムの製造の流れの一例を模式的に示した上面図を示す。
【0050】
1.−(3) 特性
本発明のフィルムの特性については特に制限はない。延伸条件、延伸方向を調整することで、また原料として用いる種々の成分を選択することで、所望のReを有し、且つ所望の方向に面内遅相軸を有するフィルムを製造することができる。本発明のフィルムの一例は、Re(550)がλ/4のλ/4板である。λ/4板は、円偏光板の部材等として有用である。特に、面内遅相軸が長手方向に対して45°の方向にあるλ/4板は、吸収軸が長手方向に平行な偏光膜と、ロール・ツー・ロールで積層して、円偏光板を作製できるので有用性が高い。即ち、本発明のフィルムの好ましい一態様は、面内遅相軸が長手方向に対して45°の方向にあるλ/4板の態様である。
【0051】
なお、 Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(B)よりRthを算出することもできる。
【0052】
【数1】

なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(B)
【0053】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0054】
本明細書において、「平行」、「直交」とは、厳密な角度±10゜以下の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±5゜未満であることが好ましく、±2゜未満であることがより好ましい。また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。
なお、屈折率の測定波長は、特に断らない限り、可視光域のλ=550nmでの値であり、Re及びRthの測定波長については、特に断らない限り、550nmとする。
【0055】
2.偏光板及び表示装置
本発明は、偏光膜と、本発明のフィルムとを有する偏光板;及び本発明のフィルムを有する表示装置にも関する。なお、本明細書では、「偏光膜」及び「偏光板」を区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する透明保護膜を有する積層体を意味するものとする。また、本明細書では、「偏光板」は、「直線偏光版」、「円偏光板」及び「楕円偏光板」のいずれも含む意味で用いる。
【0056】
本発明の偏光板の一例は、面内遅相軸が長手方向に対して45°の方向にあるλ/4板の態様の本発明のフィルムと、偏光膜とを有し、前記偏光膜の吸収軸と、前記フィルムの面内遅相軸とのなす角が45°である偏光板である。当該偏光板は、円偏光板又は楕円偏光板として、液晶表示装置、自発光型表示等の種々の表示装置に利用することができる。また、3D画像表示装置に利用される円偏光板、3D画像観察用の円偏光メガネの部材、反射防止膜として利用することができる。
【0057】
前記偏光膜については特に制限はない。偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜があり、本発明にはいずれを使用してもよい。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。
【0058】
(保護フィルム)
偏光膜の他方の表面に貼合される保護フィルムには、透明なポリマーフィルムを用いることが好ましい。透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。保護フィルムとしては、セルロースアシレートフィルム、およびポリオレフィンを含むポリオレフィンフィルムが好ましい。セルロースアシレートフィルムの中でも、セルローストリアセテートフィルムが好ましい。また、ポリオレフィンフィルムの中でも、環状ポリオレフィンを含むポリノルボルネンフィルムが好ましい。
前記保護フィルムの厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。
【0059】
(光拡散フィルム)
前記偏光板は、偏光膜の片側表面上に光拡散フィルムを有していてもよい。光拡散不フィルムは一層のフィルムであっても、また積層フィルムであってもよい。積層フィルムの態様の例としては、光透過性ポリマーフィルムの上に、光散乱層を有する光拡散フィルムが挙げられる。光拡散フィルムは、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良に寄与するものであり、表示面側の偏光膜の外側に反射防止層を配置した態様において、特に高い効果を奏する。光拡散フィルム(又はその光散乱層)は微粒子をバインダー中に分散させた組成物から形成することができる。微粒子は無機微粒子であっても有機微粒子であってもよい。バインダーと微粒子とは、屈折率差が0.02〜0.20程度あるのが好ましい。また、前記光拡散フィルム(又はその光散乱層)は、ハードコート機能を兼ね備えていてもよい。本発明に利用可能な光拡散フィルムについては、例えば、光散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等が挙げられる。
【0060】
(ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム)
前記セルロースアシレートフィルムは、場合により、ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへ適用してもよい。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、前記セルロースアシレートフィルムの片面又は両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れか或いは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)54頁〜57頁に詳細に記載されており、前記セルロースアシレートフィルムにおいても好ましく用いることができる。
【0061】
本発明のフィルムは、種々のモードの液晶表示装置に、光学補償フィルム等の種々の部材として利用することができる。液晶セルの駆動モードについても特に制限はなく、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等の種々のモードを利用することができる。
【0062】
本発明のフィルムは、その上に、液晶組成物の配向を固定してなる光学異方性層を有する積層フィルムとして、種々の用途、例えば液晶表示装置の光学補償フィルム等、として利用することもできる。光学異方性層の形成に利用する液晶の例には、棒状液晶及びディスコティック液晶が含まれる。また光学異方性層の形成時に利用する配向状態についても、所望とされる光学特性に応じて選択することができ、水平配向、垂直配向、及びハイブリッド配向等の配向状態が選択することができる。
【実施例】
【0063】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、以下の例で作製したフィルムの物性の測定は、以下の方法で行った。
(1)結晶化熱(ΔHc)の測定
DSC測定装置(DSC8230:(株)リガク製)を用い、DSCのアルミニウム製測定パン(Cat.No.8578:(株)リガク製)に以下の例で作製した各セルロースアシレートフィルムを5〜6mg入れ、これを50mL/分の窒素気流中で25℃から120℃まで20℃/分の昇温速度で昇温して15分保持した後、30℃まで−20℃/分で冷却し、さらにこの後、再度30℃から320℃まで20℃/分の昇温速度で昇温した際に現れた発熱ピークと試料のベースラインとで囲まれる面積をフィルムの結晶化熱として算出した。この値が小さいほどフィルム中のセルロースアシレート分子の結晶化が進行していることを示す。
(2)音速の最大となる方向の測定
音速測定装置“SST−2501,野村商事(株)”を用い、25℃、60%RHの雰囲気中で2時間以上調湿したフィルムについて、25℃、60%RHの雰囲気にて、360度方向を32分割して音速を測定し、最大速度方向を算出した。
(3)面内遅相軸の方向の測定
Reの遅相軸方位は、WR(王子計測機器(株)製)の550nmでのRe測定により決定した。
【0064】
[実施例1]
(1)セルロースアシレートフィルムの作製
(1−1)ドープの作製と流涎
可塑剤AA−1(エタンジオール/アジピン酸(1/1モル比)との縮合物(数平均分子量1000))および正の固有複屈折剤量BB−1(下記構造の化合物BB−1)を含む下記の組成のポリマー溶液Aを30℃に加温し、流延ギーサーを通して鏡面ステンレス支持体上に流延した。支持体の表面温度は−5℃に設定し、塗布幅は200cmとした。流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。
【0065】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ポリマー溶液Aの組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
・平均置換度2.94のセルロースアセテート 100.0質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 295.2質量部
・メタノール(第2溶媒) 70.1質量部
・ブタノール(第3溶媒) 3.7質量部
・平均粒子サイズ16nmのシリカ粒子 0.13質量部
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
・可塑剤(前記AA−1) 10.0質量部
・正の固有複屈折剤量(下記化合物BB−1) 3.5質量部
・クエン酸エステル 0.01質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0066】
【化3】

【0067】
(1−2)第一延伸工程
そして、流延部の終点部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフィルム(ウェブ)を残留溶媒量270%でフィルム(ウェブ)をドラムから剥離し、ピンテンターによって搬送し、フィルム搬送方向に40%延伸した(第一延伸工程)。
なお、第一延伸工程におけるフィルムの延伸倍率(%)は、ドラム速度とテンター搬送速度の比より求めた。また、延伸温度(ウェブの膜面温度)が−5℃となるようにドラムの温度を冷媒によって制御することで調節した。延伸速度は1000%/分で行った。
【0068】
(1−3)乾燥工程、第二延伸工程
第一延伸工程終了後、さらに図1に模式的に示す様に、片側のみ横方向に拡幅した(第二延伸工程)。この時乾燥前におけるウェブの一部をサンプリングして、上述の方法によって120℃で2時間乾燥させる前後の質量変化から残留溶媒量および音速の最大となる方向を求めた。このときの残留溶媒量は100%、音速の最大となる方向は搬送方向に対し16.5°であった。
その後、乾燥(結晶化処理)工程として乾燥温度(フィルム膜面温度)が80℃となるように乾燥を行い、残留溶媒量が7%となった時に、図1に模式的に示す様に第三延伸工程を行うためにピンテンターによって搬送した。なお、前記乾燥温度は延伸ゾーンの温度を乾燥風によって制御することで調節した。
その後、第三延伸工程開始前の残留溶媒量を乾燥ゾーンにおけるウェブの一部をサンプリングして、上述の方法によって120℃で2時間乾燥させる前後の質量変化から求めた。その後、ピンテンターを用いてフィルム搬送方向と直交する方向に135℃で拡幅した。延伸温度(フィルムの膜面温度)は乾燥風によって制御することで調節した。延伸速度は60%/分で行った。この時乾燥前におけるウェブの一部をサンプリングして、音速の最大となる方向を求めた。このときの音速の最大となる方向は搬送方向に対し0°であった。
【0069】
(1−4)後乾燥工程、巻き取り
さらに第二延伸工程後のフィルムを140℃で20分乾燥した。
こうして、幅1400mm、および膜厚150μmのセルロースアシレートフィルムを得て、巻取り機により巻き取った。
【0070】
得られたセルロースアシレートフィルムは、Reが140nmであり、その遅軸は長手方向に対し45°方向になっていた。さらに、音速の最大となる方向は搬送方向に対し0°であった。
また、フィルムの融解熱ΔHcを上述の方法にしたがって測定した。これらの結果を下記表に示す。
【0071】
(3)偏光板の作製
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光膜を得た。
作製したフィルムを1.5モル/Lで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬して希硫酸水溶液を十分に洗い流し、最後に120℃で十分に乾燥させた。
前記のように鹸化処理を行ったフィルムを、同じく鹸化処理を行った市販のセルロースアセテートフィルムと組合せて前記の偏光膜を挟むようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて、鹸化処理面を貼り合せることにより偏光板を得た。ここで市販のセルロースアセテートフィルムとしてはフジタックTF80UL(富士フイルム(株)製)を用いた。このとき、偏光膜および偏光膜両側の保護膜はロール形態で作製されているため各ロールフィルムの長手方向が平行となっており連続的にシワ無くきれいに貼り合わせられた。従ってフィルムの長手方向(フィルムの流延方向)と偏光膜の吸収軸とは45°ずれた方向となった。得られた偏光板を実施例1の偏光板とした。
【0072】
[実施例2〜5]
添加剤BB−1の添加量を下記表に記載の組成にかえた以外は、実施例1と同様にして各フィルムを作製し、該フィルムを用いて、実施例2〜5の偏光板を作製した。いずれのフィルムについても、偏光膜との貼合時にしわ等は発生せず、問題なく加工できた。
なお、実施例2〜5では、アモルファス状態のセルロースアシレート系化合物の分子が、正の固有複屈折の第1の分子であり、結晶化状態のセルロースアシレート系化合物の分子が、負の固有複屈折の第2の分子である。また、アモルファス状態のセルロースアシレート系化合物の分子はフィルムの主成分であり、マトリックスを形成している分子でもある。
【0073】
[実施例6]
<環状ポリオレフィン重合体P−1の合成>
精製トルエン100質量部とノルボルネンカルボン酸メチルエステル100質量部とを反応釜に投入した。次いで、トルエン中に溶解したエチルヘキサノエート−Ni 25mmol%(対モノマー質量)、トリ(ペンタフルオロフェニル)ボロン 0.225mol%(対モノマー質量)及びトルエンに溶解したトリエチルアルミニウム 0.25mol%(対モノマー質量)を反応釜に投入した。室温で攪拌しながら18時間反応させた。反応終了後、過剰のエタノール中に反応混合物を投入し、共重合物沈殿を生成させた。沈殿を精製して得られた共重合体(P−1)を真空乾燥で65℃24時間乾燥した。
【0074】
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
環状オレフィン系付加重合体溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
環状オレフィン系付加重合体P−1 100質量部
p−ヒドロキシスチレン 20質量部
オリゴマー *2 20質量部
メチレンクロライド 400質量部
メタノール 50質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
*テレフタル酸/アジピン酸/エタンジオール/1,2プロパンジオール(0.7/0.3/1/1 モル比)との縮合物(数平均分子量1000))
【0075】
次に上記方法で作製した環状ポリオレフィン溶液を含む下記組成物を、分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液
――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製 2.0質量部
メチレンクロライド 72.4質量部
メタノール 10.8質量部
環状オレフィン系付加重合体溶液 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0076】
上記環状オレフィン系付加重合体溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量を混合し、製膜用ドープを調製した。
上述のドープを流延ギーサーを通して鏡面ステンレス支持体上に流延した。残留溶剤量が15から25質量%でステンレス支持体から剥ぎ取ったフィルムを、図2に模式的に示す通り、テンターを用いて幅方向に延伸して、フィルムに皺が入らないように保持しながら、120℃の熱風を当てて乾燥した。その後更に120℃〜140℃で乾燥し、残留溶剤量が3%以下で図2のB領域のテンターパターンで逆方向に延伸し、音速の最大方向がMD方向のフィルムを得た。
【0077】
得られたフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の偏光板を作製した。偏光膜との貼合時に、フィルムにしわなどが発生せず、問題なく加工できた。
なお、実施例6では、添加剤であるオリゴマー及びp−ヒドロキシスチレン(PHS)がそれぞれ、正の固有複屈折の第1の分子及び負の固有複屈折の第2の分子である。また、環状オレフィン系付加重合体P−1がフィルムの主成分であり、その分子が、マトリックスを形成している分子である。
【0078】
[比較例1]
下記表に記載の組成に代えて、実施例1と同様にして、フィルムを作製した。但し、第二延伸時に音速の最大となる方向を45°になるように拡幅し、その後は図3に模式的に示す様なパターンで乾燥を実施した。また、残留揮発分が7%以上の時には膜面温度が80℃以上にならないように乾燥風を制御した。
【0079】
このフィルムを用いて、実施例1と同様にして偏光板を作製したが、比較例1のフィルムは、偏光板加工時にポリマーマトリックスが斜めに配向しているため、斜め方向に歪が発生し、偏光板加工時にシワが発生して、きれいな加工が出来なかった。
【0080】
上記で作製した実施例1〜6、及び比較例5の偏光板について、組成、各特性及び偏光板加工時の評価について、下記表にまとめる。偏光板加工の欄の「○」は、シワの発生がないきれいな加工ができたことを意味し、「×」はシワの発生があり、きれいな加工ができなかったことを意味する。
また、下記表中、「結晶ずらし角」とは、完成したフィルムの結晶配向方向を意味し、「結晶化前ずらし角」とは、第二延伸前のフィルムの結晶配向方向を意味し、それぞれX線測定による配向度解析により算出した値である。また「max/min音速」は、配向度を意味し、音速の最大と最小の比により算出した値である。
【0081】
【表2】

【0082】
<液晶表示装置への実装と評価>
市販の3D対応VAモードの液晶表示装置(LC−46LV3、シャープ製)の表側偏光板の代りに、本実施例の偏光板を本発明のフィルムが視認側となるように貼りあわせた。また、付属の3D用メガネの偏光板も本発明の偏光板に貼り変えた。この時、本発明のフィルムを、メガネの表示装置側の表面であって、画面をメガネで観察した時に、画面側に貼ったフィルムの遅相軸と、メガネに貼ったフィルムの遅相軸とが直交する様に貼りあわせた。
この様にして作製した液晶表示装置に、3D立体映像表示用の右眼用画像と左眼用画像を含む映像データを入力した。フィルムを貼った付属のメガネで液晶表示装置画像を観察した結果、斜めに頭を傾けても良好な立体画像が観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正の固有複屈折の第1の分子と負の固有複屈折の第2の分子とを少なくとも含む長尺フィルムであって、長手方向に対し平行でも直交でもない方向に面内遅相軸を有し、且つ該面内遅相軸の方向が第1及び第2の分子それぞれの配向方向と平行でも直交でもないことを特徴とする長尺フィルム。
【請求項2】
音速の最大方向が長手方向に平行又は直交である請求項1に記載の長尺フィルム。
【請求項3】
正の固有複屈折の第1の分子と負の固有複屈折の第2の分子とを少なくとも含み、音速の最大方向に対し平行でも直交でもない方向に面内遅相軸を有することを特徴とするフィルム。
【請求項4】
前記第1及び第2の分子が、互いに同一の化合物の分子であって、結晶化度の違いによって互いに正負の異なる固有屈折率を示す分子である請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項5】
第1の分子がアモルファス状態のセルロースアシレート系化合物の分子であり、第2の分子が結晶化状態のセルロースアシレート系化合物の分子である請求項4に記載のフィルム。
【請求項6】
前記第1及び第2の分子がそれぞれ添加剤の分子であり、正又は負の固有複屈折の主成分高分子をさらに含有する請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項7】
波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)がλ/4である請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項8】
面内遅相軸が長手方向に対して又は音速の最大方向に対して45°の方向である請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項9】
偏光膜と、請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルムとを有する偏光板。
【請求項10】
前記偏光膜の吸収軸と、前記フィルムの面内遅相軸とのなす角が45°である請求項9に記載の偏光板。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルムを少なくとも有する表示装置。
【請求項12】
正の固有複屈折を持つ第1の分子及び負の固有複屈折の第2の分子を含み、第1及び第2の分子の双方が、第1の方向に配向している膜を得る第1の工程、
第1及び第2の分子の一方の分子の配向方向を第1の方向に維持しつつ、他方の分子を第2の方向に配向させる第2の工程、
を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項13】
前記第1及び第2の工程の間に、第1の分子及び第2の分子の配向性に影響を与える少なくとも1つの条件を調整することを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アモルファス状態の分子を含み、このアモルファス状態の分子が第1の方向に配向している膜を得る第1の工程、
第1の方向に配向しているアモルファス状態の分子の一部を結晶化させ、アモルファス状態の分子が有する固有複屈折と正負が異なる固有複屈折を示す結晶化状態の分子に変化させる工程、
アモルファス分子の配向方向を第1の方向に維持しつつ、結晶化状態の分子を第2の方向に配向させる第2の工程、
を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−220823(P2012−220823A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88145(P2011−88145)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】