説明

フィルム、偏光板および画像表示装置

【課題】吸湿性や透湿性が低く、適度な弾性を有し、脆さがなく、機械的強度に優れたフィルム、これを用いた偏光板および画像表示装置の提供を目的とする。
【解決手段】(A)炭素数2〜20のα−オレフィンの少なくとも一種と、(B)下記一般式で表される環状オレフィンの少なくとも一種とからなる共重合体を含むフィルムであって、該共重合体は該(A)から誘導される繰返し単位のモル分率が10〜70モル%、該(B)から誘導される繰返し単位のモル分率が30〜90モル%であり、かつ、重量平均分子量が50,000〜1,000,000であるフィルム。


式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表すが、R〜Rのうち、少なくとも一つは直鎖または分岐状の炭素数4以上のアルキル基である。mは0または1を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿性や透湿性が低く、適度な弾性を有し、脆さがなく、機械的強度に優れたフィルム、偏光板および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、透明性の要求されるプラスチックス系光学材料として、エチレンと特定の環状オレフィンとを共重合させる事により得られる環状オレフィン系共重合体が注目を集めている。環状オレフィン系共重合体は、透明性のみならず、耐湿性、耐薬品性、耐熱性等にも優れており、例えば、光ファイバーやプラスチックレンズといった光学材料への展開が期待されている。(特許文献1、2)また、光学フィルムとしての用途も検討されており、従来用いられているセルローストリアセテートフィルムの吸湿性や透湿性を改良できるフィルムとして、熱溶融製膜及び溶液製膜による偏光板保護フィルムの開発が行われている(特許文献3、4)。
しかしながら環状ポリオレフィンフィルムは、固くて脆い性質を有しており、機械的強度が低く、ハンドリング、加工性が悪いという問題点があった。
【特許文献1】特開平6−93040号公報
【特許文献2】特許第2619856号公報
【特許文献3】特開平2002−114827号公報
【特許文献4】特開平2007−9010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、吸湿性や透湿性が低く、適度な弾性を有し、脆さがなく、機械的強度に優れたフィルム、これを用いた偏光板および画像表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は下記手段により達成された。
(1)
(A)炭素数2〜20のα−オレフィンの少なくとも一種と、(B)下記一般式(1)で表される環状オレフィンの少なくとも一種とからなる共重合体を含むフィルムであって、該共重合体は該(A)α−オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が10〜70モル%、該(B)環状オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が30〜90モル%であり、かつ、重量平均分子量が50,000〜1,000,000であることを特徴とするフィルム。
【0005】
【化1】

【0006】
式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表すが、R〜Rのうち、少なくとも一つは直鎖または分岐状の炭素数4以上のアルキル基である。mは0または1を表す。
(2)
前記一般式(1)において、R〜Rのうち、少なくとも一つは直鎖または分岐状の炭素数5〜20のアルキル基であることを特徴とする(1)に記載のフィルム。
(3)
前記共重合体が、(C)下記一般式(2)で表される環状オレフィンの少なくとも一種から誘導される繰返し単位をさらに含み、(A)α−オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が10〜60モル%、(B)環状オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が30〜80モル%、(C)環状オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が10〜60モル%であることを特徴とする(1)または(2)に記載のフィルム。
【0007】
【化2】

【0008】
式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、nは0または1を表す。
(4)
前記一般式(2)において、R〜Rが、いずれも水素原子であることを特徴とする(3)に記載のフィルム。
(5)
前記一般式(1)において、m=0であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のフィルム。
(6)
前記一般式(2)において、n=0であることを特徴とする(3)〜(5)のいずれかに記載のフィルム。
(7)
(1)〜(6)に記載のフィルムを用いてなることを特徴とする偏光板。
(8)
(7)に記載の偏光板を用いてなることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフィルムは、吸湿性や透湿性が低く、適度な弾性を有し、脆さがなく、機械的強度に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
〔(A)α−オレフィン〕
本発明で用いられる(A)炭素数2〜20のα−オレフィンは、直鎖状でも、分岐を有していても良い。また、環状構造を形成していてもよい。具体的に例示すると、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。入手のしやすさ、前記共重合体により得られるフィルムの物性の観点(例えば側鎖のからみあい)から、炭素数2〜16のα−オレフィンが好ましく、炭素数2〜8のα−オレフィンがより好ましい。エチレン、プロピレンは特に好ましい。また、α−オレフィンは1種のみで用いてもよいが複数種を組み合わせて用いても良い。
【0012】
〔(B)環状オレフィン〕
本発明で用いられる(B)環状オレフィンは下記一般式(1)で表される。
【0013】
【化3】

【0014】
式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表すが、R〜Rのうち、少なくとも一つは直鎖または分岐状の炭素数4以上のアルキル基である。mは0または1を表す。
【0015】
〜Rがアルキル基を表す場合、アルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、直鎖状でも分岐を有していても良い。また、環状構造を有していても良い。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、R〜Rのうち少なくとも2つが互いに結合して環状構造を形成しても良く、かつ該単環または多環が二重結合を有していてもよい。
【0016】
〜Rのうち、少なくとも一つは直鎖または分岐状の炭素数4以上のアルキル基であるが、扱いやすさや本発明の目的を鑑みると、炭素数4〜20のアルキル基が好ましく、炭素数5〜20のアルキル基がより好ましく、炭素数6〜12のアルキル基がさらに好ましい。
【0017】
以下に、(B)環状オレフィンの具体的な例を示すが、本発明はこの例示化合物に何ら限定されない。
【0018】
【化4】

【0019】
一般式(1)において、mは0または1を表すが、合成、製造のしやすさの観点などからm=0が好ましい。
【0020】
本発明で用いられる(B)環状オレフィンは、単独で用いても良いが、複数を併用しても良い。
【0021】
本発明で用いられる(B)環状オレフィンは、シクロペンタジエンと対応する構造を有するオレフィン類とをディールス・アルダー反応させる公知の方法によって合成することができる。
【0022】
本発明にかかる共重合体は、(A)α−オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が10〜70モル%、(B)環状オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が30〜90モル%である。この範囲を満たすことにより、吸湿性や透湿性が低く、適度な弾性を有し、脆さがなく、機械的強度に優れた共重合体となる。好ましくは、(A)α−オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が20〜65モル%、(B)環状オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が35〜80モル%の範囲であり、さらに好ましくは(A)α−オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が30〜60モル%、(B)環状オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が40〜70モル%の範囲である。なお、モル分率は13C NMR等の測定から求めることができる。
【0023】
〔(C)環状オレフィン〕
また、本発明のフィルムに用いられる共重合体には、上述の(A)および(B)から誘導される繰り返し単位の他に、下記一般式(2)で表される環状オレフィンから誘導され
る繰返し単位を含むことがフィルムにしたときの耐久性という観点などからより好ましい。
【0024】
【化5】

【0025】
式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、nは0または1を表す。
〜Rは、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜2のアルキル基であることが好ましく、全て水素原子であることがより好ましい。また、n=0が好ましい。
【0026】
前記(C)環状オレフィンとしては、例えばノルボルネン、5−メチルー2−ノルボルネン、5,6ージメチル−2−ノルボルネン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン等が挙げられ、ノルボルネンが、入手しやすいほか、ガラス転移点を上げられる等の理由でさらに好ましい。
【0027】
(C)一般式(2)で表される環状オレフィンも、(B)環状オレフィンと同様に公知の方法によって合成することができる。
【0028】
本発明に係る共重合体が、(C)一般式(2)で表される環状オレフィンから誘導される繰返し単位を含んでなる場合、共重合体における各繰り返し単位の含有割合は、(A)α−オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が10〜60モル%、(B)一般式(1)で表される環状オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が30〜80モル%、(C)一般式(2)で表される環状オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が10〜60モル%であることが好ましい。より好ましくは、(A)α−オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が15〜55モル%、(B)一般式(1)で表される環状オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が35〜75モル%、(C)一般式(2)で表される環状オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が10〜50モル%の範囲である。
【0029】
前記共重合体は、前記に示した構成要素のほかに、本発明の目的を損なわない範囲内で、別種の構成要素を含んでもよい。
【0030】
前記共重合体は公知の技術により合成することができる。例えば、特開平5−301926号公報、特開2004−107442号公報、Polyhedron、2005年、第24巻、1269ページ等に詳細が記載されている。
【0031】
前記共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた重量平均分子量は、50,000〜1,000,000であり、好ましくは、60,000〜
500,000、より好ましくは70,000〜250,000、さらに好ましくは70,000〜150,000である。重量平均分子量が50,000を下回ると、該共重合
体を用いたフィルムの自己支持性が低下し、破壊強度が不足する。また、1,000,000を上回ると成形加工性が低下し、取扱い難くなる。
【0032】
前記共重合体は、強度、成形加工性の面から、ガラス転移温度が50〜250℃であることが好ましく、60〜200℃であることがより好ましい。
【0033】
本発明のフィルムは、例えば溶液キャスト法、溶融押し出し法、熱プレス法、カレンダー法等公知の方法にて製造(製膜)することが出来る。なかでも溶融押し出し法が生産性、経済性の面、また溶媒使用しないことから環境面からも好ましい。溶融押し出し法では、Tダイを用いて共重合体(樹脂)を押し出し冷却ロールに送る方法が好ましく用いられる。押し出し時の樹脂温度としては、該樹脂の流動性、熱安定性等を勘案して決められるが、本発明では110℃から300℃の範囲で行うことが好ましい。110℃未満では樹脂の溶融粘度が高くなりすぎ、また300℃を超えると樹脂の分解劣化、ゲル化によりフィルムの透明性、均質性が損なわれる懸念が生じる。より好ましくは120℃から290℃の範囲である。溶融押し出し時の樹脂の酸化劣化を抑制するため、酸化防止剤を添加しておくことも好ましい。
【0034】
本発明のフィルムは、湿度変化による寸法変化が少なく、優れた機械的強度を有するため、偏光板や液晶表示素子などの保護膜として好適に使用できる。
また、本発明のフィルムには、延伸配向などにより、光学的異方性を付与することができる。例えば、位相差フィルムとして用いる場合には、前記の方法で得られた未延伸のフィルムを延伸配向させて所望のフィルムとすることが出来る。延伸方法は特に限定されずロール間で延伸する縦一軸延伸、テンターを用いる横一軸延伸、あるいはそれらを組み合わせた同時ニ軸延伸、逐次ニ軸延伸など公知の方法を用いることが出来る。また連続で行うことが生産性の点で好ましいが、バッチ式で行ってもよく特に制限はない。延伸温度は共重合体のガラス転移温度(Tg)に対して、(Tg−20℃)〜(Tg+30℃)の範囲内であり、好ましくは(Tg−10℃)〜(Tg+20℃)の範囲内である。延伸倍率は目的とする位相差値により決められるが、縦、横それぞれ、1.05〜4倍、より好ましくは1.1〜3倍である。
【0035】
〔添加剤〕
本発明のフィルムは、前記共重合体の他に、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、劣化防止剤、紫外線防止剤、レターデーション(光学異方性)調節剤、微粒子、剥離促進剤、赤外吸収剤、など)を含んでいてもよい。これらの添加剤は、固体でもよく油状物でもよい。添加する時期は溶液流延法により製造する場合、前記共重合体の溶液(ドープ)作製工程の何れの時期に添加しても良いが、ドープ調製工程の最後に添加剤を添加する工程を加えて行ってもよい。
【0036】
(劣化防止剤)
劣化防止剤としては、公知の劣化(酸化)防止剤、例えば、2,6−ジ−t−ブチル,4−メチルフェノール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。さらに、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤を添加することが好ましい。劣化(酸化)防止剤の添加量は、共重合体100質量部に対して、0.05〜5.0質量部を添加することが好ましい。
【0037】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から好適に用いられるものであり、紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。これらの紫外線防止剤の添加量は、共重合体の質量を100%とした場合に質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
【0038】
(微粒子)
フィルム面のすべり性の悪さを改良するためには、フィルム表面に凹凸を付与することが有効であり、有機、無機物質の微粒子を含有させて、フィルム表面の粗さを増加させ、いわゆるマット化することで、フィルム同士のブロッキングを減少させる方法が知られている。さらに本発明のフィルム中、または本発明のフィルムの少なくとも片方の面上に微粒子が存在することにより、偏光板加工時の偏光子と前記共重合体からなるフィルムの密着性が著しく向上する。
【0039】
本発明に使用する微粒子(マット剤)は、無機微粒子であれば、平均粒径0.05μm〜0.5μmの微粒子が好ましく、さらに好ましくは0.08μm〜0.3μm、より好ましくは0.1μm〜0.25μmである。
【0040】
本発明に用いられる微粒子は、無機化合物としては二酸化ケイ素、シリコーンおよび二酸化チタンが好ましく、高分子化合物としてはフッ素樹脂、ナイロン、ポリプロピレンおよび塩素化ポリエーテルが好ましいが、さらに好ましくは二酸化ケイ素であり、特に好ましくは有機物により表面処理されている二酸化ケイ素である。
【0041】
(レターデーション発現剤)
レターデーション発現剤は、レターデーション値を発現するために用いられるもので、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物が好ましく用いられる。レターデーション発現剤を使用する場合は、前記共重合体100質量部に対して、0.05〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.2〜5質量部の範囲で使用することがさらに好ましく、0.5〜2質量部の範囲で使用することが最も好ましい。二種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。ここで、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族ヘテロ環を含む。
【0042】
レターデーション発現剤が有する芳香族環の数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。
レターデーション発現剤としては、欧州特許出願公開0911656A2号明細書、および特開2003−344655号公報に記載の発現剤などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0043】
本発明のフィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、20〜500μmの範囲が好ましく、30〜150μmの範囲がさらに好ましく、特に液晶表示装置用には40〜110μmであることが好ましい。
【0044】
(フィルムの透湿度)
本発明のフィルムの好ましい透湿度は、偏光板保護フィルムとしての用途を考えた場合、40℃×90%RHにおける透湿度が200(g/m/24h)以上400(g/m/24h)以下であることが好ましく、250(g/m/24h)以上390(g/m/24h)以下であることがさらに好ましく、300(g/m/24h)以上380(g/m/24h)以下であることが特に好ましい。前記の範囲よりも透湿度が低い場合、偏光板加工時に偏光子からの水分放出が妨げられ、偏光子内部が高湿のまま保持されることとなり、偏光子の劣化が急速に進み、偏光板性能の低下をもたらす。また、ポリビニルアルコールを代表とする親水性の偏光子と保護フィルムの密着性が悪いことから、偏光子とフィルムの剥離が生じ、偏光板の耐久性悪化と打ち抜き加工での歩留まり低下を引き起こす。逆に前記の範囲よりも透湿度が高い場合には、親水性の偏光子と保護フィルムの密着性は十分であり、剥離に起因する問題はないものの、湿度などの外部環境変化の影響を内部の偏光子も受けやすくなるために、内部の偏光子の劣化を防止することは難しく、保護フィルムとして十分に機能しない。
【0045】
本発明のフィルムは、偏光板保護フィルムとして使用する際、保護フィルムとして両面に使用することも、その片面にセルローストリアセテートフィルムなどの従来より用いられているフィルムを対向のフィルムとして用いることもできる。
【0046】
(フィルムの光学特性)
本発明のフィルムの好ましい光学特性は、フィルムの用途により異なる。偏光板保護フィルム用途の場合は、面内レターデーション(Re)は5nm以下が好ましく、3nm以下がさらに好ましい。厚さ方向レターデーション(Rth)も50nm以下が好ましく、35nm以下がさらに好ましく、10nm以下が特に好ましい。
フィルムを位相差フィルムとして使用する場合は、位相差フィルムの種類によってReやRthの範囲は異なり、多様なニーズがあるが、測定波長590nmにおいて、0nm≦Re≦100nm、40nm≦Rth≦400nmであることが好ましい。測定波長590nmにおいて、TNモードなら0nm≦Re≦20nm、40nm≦Rth≦80nm、VAモードなら20nm≦Re≦80nm、80nm≦Rth≦400nmがより好ましく、特にVAモードで好ましい範囲は、30nm≦Re≦75nm、120nm≦Rth≦250nmであり、一枚の位相差膜で補償する場合は、50nm≦Re≦75nm、180nm≦Rth≦250nm、2枚の位相差膜で補償する場合は、30nm≦Re≦50nm、80nm≦Rth≦140nmであることがVAモードの補償膜の場合、黒表示時のカラーシフト、コントラストの視野角依存性の点でより好ましい態様である。測定波長590nmにおいて、OCBモードなら30nm≦Re≦70nm、120nm≦Rth≦300nmが好ましい。本発明のフィルムは使用するポリマー構造、添加剤の種類および添加量、延伸倍率、剥離時の残留揮発分などの工程条件を適宜調節することで所望の光学特性を実現することができる。
【0047】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。
【0048】
【数1】

【0049】
注記:
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
式(1)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dはフィルムの膜厚を表す。
【0050】
【数2】

【0051】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算
出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0052】
<偏光板>
偏光板は、通常、偏光子およびその両側に配置された二枚の透明保護膜を有する。両方または一方の保護膜として、本発明の環状ポリオレフィン系フィルムを用いることができる。他方の保護膜は、通常のセルロースアセテートフィルム等を用いてもよい。偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明のフィルムを偏光板保護膜として用いる場合、フィルムは後述の如き表面処理を行い、しかる後にフィルム処理面と偏光子とを接着剤を用いて貼り合わせる。使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス、ゼラチン等が挙げられる。偏光板は偏光子およびその両面を保護する保護膜で構成されており、さらに該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルムおよびセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
【0053】
本発明のフィルムの偏光子への貼り合せ方は、偏光子の透過軸と本発明のフィルムの遅相軸を一致させるように貼り合せることが好ましい。
【0054】
(フィルムの表面処理)
本発明では、偏光子と保護フィルムとの接着性を改良するため、フィルムの表面を表面処理することが好ましい。表面処理については、接着性を改善できる限りいかなる方法を利用してもよいが、好ましい表面処理としては、例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理および火炎処理が挙げられる。ここでいうグロー放電処理とは、低圧ガス下でおこる、いわゆる低温プラズマのことである。本発明では大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。その他、グロー放電処理の詳細については、米国特許第3462335号、米国特許第3761299号、米国特許第4072769号および英国特許第891469号明細書に記載されている。放電雰囲気ガス組成を放電開始後にポリエステル支持体自身が放電処理を受けることにより容器内に発生する気体種のみにした特表昭59−556430号公報に記載された方法も用いられる。また真空グロー放電処理する際に、フィルムの表面温度を80℃以上180℃以下にして放電処理を行う特公昭60−16614号公報に記載された方法も適用できる。
【0055】
表面処理の程度については、表面処理の種類、共重合体の種類によって好ましい範囲も異なるが、表面処理の結果、表面処理を施された保護フィルムの表面の純水との接触角が、50°未満となるのが好ましい。前記接触角は、25°以上45°未満であるのがより好ましい。保護フィルム表面の純水との接触角が前記範囲にあると、保護フィルムと偏光膜との接着強度が良好となる。
【0056】
(接着剤)
ポリビニルアルコールからなる偏光子と、表面処理されたフィルムからなる保護フィルムとを貼合する際には、水溶性ポリマーを含有する接着剤を用いることが好ましい。
前記接着剤に好ましく使用される水溶性ポリマーとしては、N−ビニルピロリドン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、ビニルアルコール、メチルビニルエーテル、酢酸ビニル、アクリ
ルアミド、メタクリルアミド,ジアセトンアクリルアミド、ビニルイミダゾールなどエチレン性不飽和モノマーを構成要素として有する単独重合体もしくは共重合体、またポリオキシエチレン、ボリオキシプロピレン、ポリ−2−メチルオキサゾリン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースゼラチン、などが挙げられる。本発明では、この中でもPVAおよびゼラチンが好ましい。接着剤層厚みは、乾燥後に0.01〜5μmが好ましく、0.05〜3μmが特に好ましい。
【0057】
(反射防止層)
偏光板の、液晶セルと反対側に配置される透明保護膜には反射防止層などの機能性膜を設けることが好ましい。特に、本発明では透明保護膜上に少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層した反射防止層または透明保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層が好適に用いられる。
【0058】
(光散乱層)
光散乱層は、表面散乱および/または内部散乱による光拡散性と、フィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに付与する目的で形成される。従って、ハードコート性を付与するためのバインダー、光拡散性を付与するためのマット粒子、および必要に応じて高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを含んで形成される。
【0059】
光散乱層の膜厚は、ハードコート性を付与する観点並びにカールの発生および脆性の悪化抑制の観点から、1〜10μmが好ましく、1.2〜6μmがより好ましい。
【0060】
(反射防止層の他の層)
さらに、ハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
【0061】
(ハードコート層)
ハードコート層は、反射防止層を設けた透明保護膜に物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
【0062】
(帯電防止層)
帯電防止層を設ける場合には体積抵抗率が10−8(Ωcm−3)以下の導電性を付与することが好ましい。吸湿性物質や水溶性無機塩、ある種の界面活性剤、カチオンポリマー、アニオンポリマー、コロイダルシリカ等の使用により10−8(Ωcm−3)の体積抵抗率の付与は可能であるが、温湿度依存性が大きく、低湿では十分な導電性を確保できない問題がある。そのため、導電性層素材としては金属酸化物が好ましい。
【0063】
<液晶表示装置>
本発明の環状ポリオレフィン系フィルム、該フィルムからなる位相差フィルム、該フィルムを用いた偏光板は、様々な表示モードの液晶セル、液晶表示装置に用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な
表示モードが提案されている。このうち、OCBモードまたはVAモードに好ましく用いることができる。
【実施例】
【0064】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0065】
実施例、比較例で用いた原料は以下の通りである。
トルエン(溶媒)、ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、および1ーヘキセンはすべて蒸留精製を行い、充分に乾燥したものを用いた。触媒は、Macromolecules、1998年、第31巻、3184ページの記載に基づき合成した[(t−BuNSiMeFlu)TiMe]を使用した。助触媒は、修飾メチルアルミノキサン(MMAO−3A)トルエン溶液(東ソー・ファインケム製)を購入し、そのまま使用した。
重合装置として、撹拌翼を備え、真空ライン、エチレンライン、プロピレンライン、アルゴンラインがつながった容量200mLのフラスコを使用し、以下のようにして共重合反応を行った。
【0066】
<合成例1:共重合体P1の合成>
フラスコ内をアルゴンガスで置換した後、容器内にトルエン40.1mL、5−ブチル−2−ノルボルネン3.0g、MMAO−3Aを3.9mLを添加して、凍結脱気した後、エチレン1気圧でフローし、30℃で10分間攪拌した。これとは別に、シュレンク中にて14.9mgの(t−BuNSiMeFlu)TiMeをアルゴン雰囲気下トルエン2mLに溶解させた。この触媒溶液1mLをフラスコに加えて重合を開始し、エチレンを1気圧でフローしたまま30℃で10分間重合した。その後、微量のメタノールを添加して反応を終了させた。該反応混合物を塩酸で酸性にした大量のメタノール中に放出して沈殿物を析出させ、濾別、洗浄後、乾燥して共重合体P1を2.5g得た。この共重合体のガラス転移温度は95℃で、GPCにより求めた重量平均分子量は120,000、5−ブチル−2−ノルボルネンの共重合組成は58mol%、エチレンの共重合組成は42mol%であった。
【0067】
<合成例2:共重合体P2の合成>
合成例1において、5−ブチル−2−ノルボルネンの仕込み量を2.3gにし、さらにノルボルネン0.5gを仕込んで重合した以外は合成例1と同様にして共重合体を合成し、共重合体P2を2.1g得た。この共重合体のガラス転移温度は135℃で、GPCにより求めた重量平均分子量は113,000、ノルボルネンの共重合組成は17mol%、5−ブチル−2−ノルボルネンの共重合組成は44mol%、エチレンの共重合組成は39mol%であった。
【0068】
<合成例3:共重合体P3の合成>
合成例2において、ノルボルネンの仕込み量を0.3g、5−ブチル−2−ノルボルネンの仕込み量を2.5gに変更した以外は合成例2と同様にして共重合体を合成し、共重合体P3を2.3g得た。この共重合体のガラス転移温度は117℃で、GPCにより求めた重量平均分子量は121,000、ノルボルネンの共重合組成は11mol%、5−ブチル−2−ノルボルネンの共重合組成は48mol%、エチレンの共重合組成は41mol%であった。
【0069】
<合成例4:共重合体P4の合成>
合成例1において、5−ブチル−2−ノルボルネンの代わりにノルボルネン0.9g、5−ヘキシル−2−ノルボルネン1.8gを用いて重合した以外は合成例1と同様にして共重合体を合成し、共重合体P4を1.7g得た。この共重合体のガラス転移温度は明確には観測されず、GPCにより求めた重量平均分子量は109,000、ノルボルネンの共重合組成は30mol%、5−ヘキシル−2−ノルボルネンの共重合組成は32mol%、エチレンの共重合組成は38mol%であった。
【0070】
<合成例5:共重合体P5の合成>
合成例1において、5−ブチル−2−ノルボルネンの代わりにノルボルネン0.5g、5−ヘキシル−2−ノルボルネン2.7gを用い、エチレンの代わりにプロピレンを1気圧でフローして重合した以外は合成例1と同様にして共重合体を合成し、共重合体P5を2.3g得た。この共重合体のガラス転移温度は明確には観測されず、GPCにより求めた重量平均分子量は98,200、ノルボルネンの共重合組成は14mol%、5−ヘキシル−2−ノルボルネンの共重合組成は41mol%、プロピレンの共重合組成は45mol%であった。
【0071】
<合成例6:共重合体P6の合成>
フラスコ内をアルゴンガスで置換した後、容器内にトルエン40.1ml、ノルボルネン0.8g、5−ヘキシル−2−ノルボルネン2.0g、1−ヘキセン3.3gを仕込んだ後、MMAO−3Aを3.9mlを添加して、凍結脱気した後、再度アルゴンガスで置換した。これとは別に、シュレンク中にて14.9mgの(t−BuNSiMeFlu)TiMeをアルゴン雰囲気下トルエン2mlに溶解させた。この触媒溶液1mlをフラスコに加えて重合を開始し、30℃で20分間反応させた。20分間重合した後、微量のメタノールを添加して反応を終了させた。該反応混合物を塩酸で酸性にした大量のメタノール中に投入して沈殿物を析出させ、濾別、洗浄後、乾燥して共重合体P6を2.3g得た。この共重合体のガラス転移温度は明確には観測されず、GPCにより求めた重量平均分子量は108,000、ノルボルネンの共重合組成は24mol%、5−ヘキシル−2−ノルボルネンの共重合組成は31mol%、1−ヘキセンの共重合組成は45mol%であった。
【0072】
<合成例7:比較用共重合体PP−1の合成>
フラスコ内をアルゴンガスで置換した後、容器内にトルエン45.1mL、ノルボルネン2.9g、MMAO−3Aを3.9mLを添加して、凍結脱気した後、エチレン1気圧でフローし、30℃で10分間攪拌した。これとは別に、シュレンク中にて14.9mgの(t−BuNSiMeFlu)TiMeをアルゴン雰囲気下トルエン2mLに溶解させた。この触媒溶液1mLをフラスコに加えて重合を開始し、エチレンを1気圧でフローしたまま30℃で15分間重合した。その後、微量のメタノールを添加して反応を終了させた。該反応混合物を塩酸で酸性にした大量のメタノール中に放出して沈殿物を析出させ、濾別、洗浄後、乾燥して比較用共重合体PP−1を3.3g得た。この共重合体のガラス転移温度は126℃で、GPCにより求めた重量平均分子量は123,000、ノルボルネンの共重合組成は42mol%、エチレンの共重合組成は58mol%であった。
【0073】
<合成例8:比較用共重合体PP−2の合成>
合成例7において、ノルボルネン4.7g、MMAO−3A3.9mLにし、エチレンの代わりにプロピレンを使用し、重合時間を40分間に変更した以外は同様にして、比較用共重合体PP−2を1.6g得た。この共重合体のガラス転移温度は186℃、重量平均分子量は108,000、ノルボルネンの共重合組成は47mol%、プロピレンの共重合組成は53mol%であった。
【0074】
<合成例9:比較用共重合体PP−3の合成>
容器内にトルエン70mlとノルボルネン7.9g、5−ヘキシル−2−ノルボルネン12.1gを添加した後、塩化メチレン3mlに溶解したパラジウム(II)アセチルアセトネート(東京化成(株)製)9mg、トリシクロヘキシルフォスフィン(STREM社製)9mg、および、ジメチルアルミニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩(STREM社製)50mgを添加した。90℃で攪拌しながら12時間反応させた。反応終了後、大量のメタノール中に放出して沈殿物を析出させ、濾別、洗浄後、乾燥して比較用共重合体PP−3を17.4g得た。この共重合体のガラス転移温度は186℃で、GPCにより求めた重量平均分子量は155,000、ノルボルネンの共重合組成は56mol%、5−ヘキシル−2−ノルボルネンの共重合組成は44mol%であった。
【0075】
以下のようにして、上記各合成例により得られた共重合体を製膜し、各フィルムの破断伸度を測定した。
<実施例1>
共重合体P1を150℃(入口温度)から200℃(出口温度)に調整した2軸溶融押し出し機を用いて、ハンガーダイから溶融押し出しし、これをガラス転移温度(Tg)−5℃、Tg、Tg−10℃に設定した3連のキャストロール上に押し出し、未延伸フィルムF1を製膜した。膜厚は100μmであった。フィルムは透明性、均質性に優れ表面性も良好であり、またダイ筋や異物もほとんど見られなかった。またロール巻取り時およびその後のハンドリングに問題はなく十分丈夫なフィルムであった。
【0076】
<実施例2〜6、比較例1〜3>
実施例1において使用する共重合体をP2〜P6およびPP1〜PP3に変更し、溶融温度を適宜調整する以外は同様にして、膜厚が100μmになるように調整して未延伸フィルムF2〜F6および、FP1〜FP3を製膜した。いずれのフィルムも透明性、均質性に優れ表面性も良好であり、またダイ筋や異物もほとんど見られなかった。またロール巻取り時およびその後のハンドリングに問題はなく十分丈夫なフィルムであった。
【0077】
得られた未延伸フィルムF1〜F6およびFP1〜FP3の10mm×50mmの試験片を25℃60%RHで2時間以上調湿した後、テンシロン万能試験機(オリエンテック製)を用いてチャック間距離30mm、温度25℃、延伸速度3mm/分の条件で引っ張り試験を行い、破断伸度を求めた。測定は3サンプル行い、その平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1に示す結果から明らかなように、本発明にかかる共重合体P1〜P6から形成されたフィルムは、いずれも大きな破断伸度を示すことから、脆性が改良され、好適なフィルムであることがわかる。一方、比較例の共重合体から得られたフィルムは破断伸度が小さ
く、脆いことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数2〜20のα−オレフィンの少なくとも一種と、(B)下記一般式(1)で表される環状オレフィンの少なくとも一種とからなる共重合体を含むフィルムであって、該共重合体は該(A)α−オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が10〜70モル%、該(B)環状オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が30〜90モル%であり、かつ、重量平均分子量が50,000〜1,000,000であることを特徴とするフィルム。
【化1】


式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表すが、R〜Rのうち、少なくとも一つは直鎖または分岐状の炭素数4以上のアルキル基である。mは0または1を表す。
【請求項2】
前記一般式(1)において、R〜Rのうち、少なくとも一つは直鎖または分岐状の炭素数5〜20のアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記共重合体が、(C)下記一般式(2)で表される環状オレフィンの少なくとも一種から誘導される繰返し単位をさらに含み、(A)α−オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が10〜60モル%、(B)環状オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が30〜80モル%、(C)環状オレフィンから誘導される繰返し単位のモル分率が10〜60モル%であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム。
【化2】


式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、nは0または1を表す。
【請求項4】
前記一般式(2)において、R〜Rが、いずれも水素原子であることを特徴とする請求項3に記載のフィルム。
【請求項5】
前記一般式(1)において、m=0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム。
【請求項6】
前記一般式(2)において、n=0であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のフィルム。
【請求項7】
請求項1〜6に記載のフィルムを用いてなることを特徴とする偏光板。
【請求項8】
請求項7に記載の偏光板を用いてなることを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2009−79098(P2009−79098A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248085(P2007−248085)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】