説明

フィルムの製造方法

【課題】フィルム表面のキズ、黒帯故障及び巻き崩れの発生を抑えつつ、フィルムを製造する。
【解決手段】テンタ部12は、Z1方向上流側から、予熱エリア、延伸エリア、緩和エリア及び冷却エリアに区画される。予熱エリアのZ1方向上流端では、Z1方向に走行自在のクリップがフィルム20の耳部20aを把持する。クリップの走行により、フィルム20は各エリアを順次通過する。延伸エリアでは、フィルム20がZ2方向に延伸される。冷却エリアでは、製品中央部20cに冷却風をあてて、製品中央部20cを冷却し、加熱装置により、製品端部20eを加熱する。製品部20bの温度分布は、Z2方向両端部から中央部に向かうに従い次第に低くなる分布となる。延伸に起因する製品部20bの収縮量X1のZ2方向の変動を、当該温度分布に起因する製品部20bの収縮量X2で抑えるように、フィルム20の把持を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、特に液晶表示装置等に用いられる光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーフィルム(以下、フィルムと称する)は、優れた光透過性や柔軟性および軽量薄膜化が可能であるなどの特長から光学フィルムとして多岐に利用されている。中でも、セルロースアシレート、特に57.5%〜62.5%の平均酢化度を有するセルローストリアセテート(以下、TACと称する)から形成されるTACフィルムは、その強靭性と難燃性とから写真感光材料のフィルム用支持体として利用されている。また、TACフィルムは、ポリマーフィルムの中でも光学等方性に優れていることから、液晶表示装置の偏光板の保護フィルム,光学補償フィルム(例えば、視野角拡大フィルムなど)などの光学フィルムとして用いられている。
【0003】
主なフィルムの製造方法としては、溶融押出方法と溶液製膜方法とがある。溶融押出方法とは、ポリマーをそのまま加熱溶解させた後、押出機で押し出してフィルムを製造する方法であり、生産性が高く、設備コストも比較的低額であるなどの特徴を有する。しかし、フィルムの厚さの精度を調節することが難しく、また、フィルム上に細かいスジ(ダイライン)ができるために、光学フィルムの製造方法に適していない。一方、溶液製膜方法は、ポリマーと溶媒とを含んだポリマー溶液(以下、ドープと称する)を支持体上に流延して形成した流延膜が自己支持性を有するものとなった後、これを支持体から剥がして湿潤フィルムとし、この湿潤フィルムを十分に乾燥して、フィルムとして巻き取る方法である。この溶液製膜方法は、溶融押出方法と比べて、光学特性の等方性や厚み均一性に優れるとともに、含有異物の少ないフィルムを得ることができるため、フィルム、特に光学フィルムの製造方法として、溶液製膜方法が採用されている。
【0004】
フィルムの光学特性を調節するため、或いは、シワやタルミ等の発生を抑えるため、湿潤フィルムの乾燥を行うとともに、湿潤フィルムの幅方向両端部(以下、耳部と称する)をクリップ等で把持し、幅方向に延伸するテンタが知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−160831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、テンタによる延伸処理が施されたフィルムを、ローラ等を用いて搬送すると、フィルムの表面にキズが発生する故障が多発した。また、テンタによる延伸処理が施されたフィルムを巻取ローラに巻き取ると、フィルムの幅方向において均一に巻き取ることができない結果、巻取ローラに巻き取られたフィルムの表面に帯状の跡がついてしまう故障(以下、黒帯故障と称する)や、巻取ローラに巻き取られたフィルムが崩れてしまう巻き崩れが多発した。
【0006】
発明者は、鋭意検討の結果、テンタによる延伸処理の後に所定の処理を行うことにより、フィルム表面のキズ、黒帯故障及び巻き崩れの発生を抑えることができることを見出した。本発明は、フィルム表面のキズ、黒帯故障及び巻き崩れの発生を抑えつつ、フィルムを製造するフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱可塑性樹脂を含み、長尺状のフィルムの幅方向両端にある耳部を把持して、前記フィルムを前記幅方向に延伸する延伸工程と、前記延伸工程を経た前記フィルムのうち前記耳部を除く製品部において、前記幅方向の両端部の温度をTe、前記幅方向の中央部の温度をTcとするときに、式(1)を満たし、前記製品部の温度分布を前記幅方向両端部から前記幅方向中央部に向かうに従い次第に温度が低くなるような分布にした後、前記延伸に起因して前記製品部が長手方向に収縮する量の前記幅方向における変動を、前記温度分布に起因する前記製品部の長手方向の収縮で抑えるように、前記耳部の前記把持を解除する把持解除工程と、を有することを特徴とする。
式(1) 0(℃)<Te−Tc(℃)≦80(℃)
【0008】
前記把持解除工程では、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg(℃)とするときに、式(2)及び式(3)を満たす前記フィルムについて、前記耳部の前記把持を解除することが好ましい。
式(2) 25(℃)≦Te(℃)≦Tg−10(℃)
式(3) 25(℃)≦Tc(℃)≦Tg−10(℃)
【0009】
前記把持解除工程では、前記製品部の前記幅方向両端部を加熱し、前記製品部の前記幅方向中央部を冷却した後、前記耳部の把持を解除することが好ましい。また、前記把持解除工程では、前記製品部の前記幅方向両端部から前記幅方向中央部に向かうに従って速さが大きくなる分布の冷却風により前記フィルムを冷却した後、前記耳部の把持を解除することが好ましい。
【0010】
前記熱可塑性樹脂がセルロースアシレートであることが好ましい。また、前記熱可塑性樹脂が飽和ノルボルネン系樹脂であることが好ましい。
【0011】
巻き芯に巻き取られた前記フィルムを前記巻き芯から取り出した後に前記延伸工程及び前記把持解除工程を行うことが好ましい。また、前記熱可塑性樹脂と溶剤とを含むドープを支持体に吐出して、前記支持体上に膜を形成する膜形成工程と、自己支持性を有するものとなった前記膜を前記支持体から剥ぎ取る剥取工程とを有し、前記支持体から剥ぎ取られた前記膜に前記延伸工程及び前記把持解除工程を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長尺状のフィルムの幅方向両端にある耳部を把持して、幅方向に延伸する延伸工程を経たフィルムについて、式(1)を満たし、フィルムのうち耳部を除く製品部の温度分布を幅方向両端部から幅方向中央部に向かうに従い次第に温度が低くなるような分布にした後、前記延伸に起因して製品部が長手方向に収縮する量の幅方向における変動を、温度分布に起因する製品部の長手方向の収縮で抑えるように、フィルムの前記把持を解除するため、フィルム表面のキズ、黒帯故障及び巻き崩れの発生を抑えつつ、フィルムを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(オフライン延伸装置)
オフライン延伸装置10は、図1に示すように、供給部11と、テンタ部12と、熱緩和部13と、冷却部14と、巻取部15とを備えている。供給部11には、後述する溶液製膜方法により製造され、ロール状となって巻き芯21巻き取られたフィルム20が収納されている。巻き芯21巻き取られたフィルム20は、供給ローラ22により、テンタ部12に送られた後、熱緩和部13、冷却部14、及び巻取部15に順次送られ、各部12〜15にて所定の処理が施される。
【0014】
図2及び図3に示すように、テンタ部12は、フィルム20の両端部(以下「耳部」という)20aを把持して、フィルム20を方向Z1に搬送しながら、フィルム20の幅方向Z2に延伸する延伸処理を行う。テンタ部12の構成及び延伸処理の詳細は後述する。
【0015】
図1に示すように、テンタ部12と熱緩和部13との間には耳切装置25が設けられる。耳切装置25はフィルム20の耳部20a(図3参照)を切断する。切断された耳部は、カットブロア26で細かく小片にカットされる。カットされた耳部は、図示しない風送装置によりクラッシャ27に送られ、粉砕されてチップになる。
【0016】
熱緩和部13には多数のローラ28が設けられており、これらローラ28によりフィルム20は冷却部14まで搬送される。また、熱緩和部13では、搬送中のフィルム20に対して乾燥風が吹き付けられる。冷却部14では、フィルム20が所定温度にまで冷却される。冷却されたフィルム20は、巻取部15に送られる。巻取部15には巻取ローラ30及びプレスローラ31が設けられており、フィルム20はプレスローラ31により押圧されながら巻取ローラ30に巻き取られる。
【0017】
(テンタ部)
図2及び図3に示すように、テンタ部12は、方向Z1の上流側から順に、予熱エリア36、延伸エリア37、緩和エリア38及び冷却エリア39に区画される。なお、緩和エリア38は省略してもよい。
【0018】
テンタ部12は、クリップ40、レール41,42、ダクト43、及びエア供給部45を備えている。レール41,42はフィルム20の搬送路の両側に設置され、それぞれのレール41,42は所定のレール幅で離間している。このレール幅は、予熱エリア36では幅L1と一定であり、延伸エリア37では方向Z1に向かうに従って幅L1から幅L2へと次第に広くなり、緩和エリア38では方向Z1に向かうに従って幅L2から幅L3へと次第に狭くなり、冷却エリア39では幅L3と一定である。
【0019】
図示しないチェーンは、レール41,42に沿って移動自在に取り付けられている。複数のクリップ40は、所定の間隔でチェーン全体に取り付けられている。なお、図3では、図の煩雑化を避けるため、クリップ40の一部のみを示す。チェーンはスプロケット48,49と噛み合っている。スプロケット48,49が回転することにより、クリップ40はレール41,42に沿って移動する。予熱エリア36のZ1方向上流側には、クリップ40によるフィルム20の耳部の把持を開始する把持開始手段(図示しない)が設けられ、冷却エリア39のZ1方向下流側には、クリップ40によるフィルム20の耳部の把持を解除する把持解除手段(図示しない)が設けられる。クリップ40がレール41,42に沿って移動することで、フィルム20はZ2方向へ搬送され、各エリア36〜39を順次通過し、各エリア36〜39において所定の処理が施される。
【0020】
図2及び図4に示すように、ダクト43は、フィルム20の搬送路の上方に設けられている。ダクト43とフィルム20の搬送路との間隔は略一定となっている。ダクト43の下面には、スリット53がZ2方向に伸びるように形成されており、これらスリット53はZ1方向に所定の間隔で複数設けられている。また、ダクト43内は、仕切り板54により第1〜第4給気室43a〜43dに区画されている。なお、図2では、第1及び第2給気室43a、43bでは複数のスリット53を設け、第3及び第4給気室43c、43dでは1つのスリット53を設けたが、本発明はこれに限られず、第1給気室43aや第2給気室43bに1つのスリット53を設け、第3給気室43cや第4給気室43dに複数のスリット53を設けてもよい。
【0021】
エア供給部45は、ダクト43の第1〜第4給気室43a〜43dにエアを供給する。第1〜第4給気室43a〜43dに供給されたエアは、図示しない温調機により所定範囲内の温度に調節される。第1〜第4給気室43a〜43d内のエアは、風56〜59となって、スリット53を介して、各エリア36〜39を通過中のフィルム20に対して吹き付けられる。
【0022】
冷却エリア39において、スプロケット49よりもZ1方向上流側、フィルム20の搬送路とダクト43との間には、1対の加熱装置63が設けられる。1対の加熱装置63は、発熱部64を下面に有し、フィルム20の搬送路上のZ2方向両端部に設けられる。また、発熱部64とフィルム20の搬送路との間隔は略一定となっている。ここで、フィルム20のうち、耳部20aを除いた部分を製品部20bとすると、冷却エリア39を通過する製品部20bのうち、Z2方向の両側にある製品端部20eは発熱部64と対向し、製品部20bのうち製品端部20eを除く部分、すなわち製品中央部20cはダクト43のスリット53(図2参照)と対向する。なお、製品端部20eとは、Z2方向の長さが、製品部20b全体のZ2方向の長さの5%以上10%以下の領域を指す。
【0023】
次に、本発明の作用について説明する。図1に示すように、供給ローラ22は、ロール状となって巻き芯21巻き取られたフィルム20を、テンタ部12に送る。図3に示すように、テンタ部12に送られたフィルム20は予熱エリア36に送られる。予熱エリア36のZ1方向上流側では、図示しない把持開始手段により、レール41、42に沿って走行するクリップ40はフィルム20の耳部20aを把持する。そして、クリップ40は、耳部20aを把持しながらZ1方向に走行することにより、フィルム20はZ1方向上流側から、予熱エリア36、延伸エリア37、緩和エリア38及び冷却エリア39を順次通過する。テンタ部12を通過したフィルム20は、耳切装置25により耳部20aが切断され、製品部20bがフィルム20となって、熱緩和部13、冷却室14を経て、巻取部15へ送られる。
【0024】
図2に示すように、エア供給部45によってダクト43に供給されたエアは、スリット53を介して、風56〜59となって、各エリア36〜39を通過中のフィルム20に対して吹き付けられる。これにより、予熱エリア36、延伸エリア37におけるフィルム20の温度は、所定の範囲内となるまで上昇する。また、緩和エリア38、冷却エリア39では、フィルム20の温度は、所定の範囲内となるまで下降する。
【0025】
図3に示すように、フィルム20はZ2方向の長さがL1のまま予熱エリア36を通過する。その後、延伸エリア37では、フィルム20に延伸処理が施される。延伸処理により、フィルム20はZ2方向への張力が付与され、Z2方向の長さがL1からL2と次第に増大する。延伸エリア37を通過するフィルム20の残留溶媒量は、0重量%以上3重量%以下であることが好ましい。フィルム20の残留溶媒量は、対象となるフィルムからサンプルフィルムを採取し、採取時のサンプルフィルムの重量をx、サンプルフィルムを乾燥した後の重量をyとするとき、{(x−y)/y}×100で表される。
【0026】
緩和エリア38では、フィルム20に緩和処理が施される。緩和処理により、フィルム20に残留する応力が取り除かれ、フィルム20のZ2方向の長さがL2からL3と次第に減少する。その後、フィルム20は、Z2方向の長さがL3のまま冷却エリア39を通過する。幅L3は500mm以上4000mm以下であることが好ましい。冷却エリア39を通過するフィルム20の残留溶媒量は、0重量%以上3重量%以下であることが好ましい。
【0027】
図4に示すように、発熱部64は、図示しない制御部の制御の下、所定の温度にまで加熱される。冷却エリア39を通過するフィルム20のうち、製品端部20eは加熱装置63に設けられた発熱部64により加熱される。一方、冷却エリア39を通過するフィルム20のうち、製品中央部20cは風59により冷却される。その後、図示しない把持解除手段により、クリップ40による把持が解除される。
【0028】
図5(A)に示すように、延伸エリア37では延伸処理によりフィルム20にネッキング現象が起こり、延伸処理の前後におけるフィルム20のZ1方向の収縮量X1は、点線C1のように、クリップ20により把持されるZ2方向の両端部から、クリップ40により把持されない中央部に向かうに従い大きくなる。一方、クリップ40の把持解除の前後におけるZ1方向の収縮量X2は、フィルム20の温度が高くになるに従い大きくなり、フィルム20の温度が低くなるに従い小さくなるため、Z2方向の温度分布が略均一の状態のままクリップ40(図3参照)の把持を解除すると、収縮量X2は、Z2方向において略一定となる結果、製品端部20eは、製品中央部20cに比べてZ1方向に伸びた状態(以下、耳伸びと称する)となる。
【0029】
耳伸びの状態となったフィルム20を熱緩和部13等に案内すると、フィルム20のうち中央部がローラ28の周面と接触するものの、フィルム20のうち両端部がローラ28の周面と接触しにくくなるため、ローラ28周面の保持力が低下する結果、ローラ28が空転する、或いはフィルム20の両端部がローラ28の周面上でバタつく等の理由により、フィルム20の表面にキズが生じてしまう。また、耳伸びの状態となったフィルム20を巻取部15に案内すると、フィルム20のうち、Z1方向中央部のみが巻きしまる結果、巻き取られたフィルム20に帯状の跡がついてしまう、いわゆる黒帯故障が発生すること、加えて、Z1方向両端部を十分な張力で巻き取ることが困難となる結果、巻き崩れが起こりやすくなってしまう。
【0030】
本発明では、クリップ40の把持を解除する前のフィルム20において、冷却エリア39に設けられたダクト43及び加熱装置63により、製品中央部20cの温度をTcとし、製品端部20eの温度をTeとするときに、式(1)を満たし、製品部20bの温度分布が、Z2方向両端部から中央部に向かうに従い低くなるような分布にする。
式(1) 0(℃)<Te−Tc(℃)≦80(℃)
【0031】
このような温度分布を有するフィルム20において、クリップ40の把持を解除することにより、製品部20bの収縮量X2は、図5(B)に示すように、この温度分布に起因し、すなわちZ2方向の両端部から中央部に向かうに従い小さくなる。本発明では、製品部20bの温度分布を所定の分布となるように調節した後に、クリップ40の把持解除を行うため、延伸処理に起因する収縮量X1のZ2方向の変動を、温度分布に起因する収縮量X2で抑えることが可能となるため、すなわちフィルム20の耳伸びを抑え、耳伸びにより誘発されるフィルム20の表面のキズ、黒帯故障及び巻き崩れの発生を抑えることができる。
【0032】
(Te−Tc)の値が0℃を下回ると、耳伸びが発生するため好ましくない。また、(Te−Tc)の値が80℃を超えると、長さLcが長さLeより長くなるため、好ましくない。よって、(Te−Tc)の下限は、2℃以上であることが好ましく、5℃以上であることがより好ましい。また、(Te−Tc)の上限は、60℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることが更に好ましい。
【0033】
クリップ40の把持解除直前におけるフィルム20の温度分布は、延伸処理における延伸率ERや、緩和処理における緩和率RRに応じて決定してもよい。延伸率ER(%)は(L2−L1)/L1×100で、緩和率RR(%)は(L3−L2)/L2×100で表される。延伸率ERは、0%より大きく400%以下であることが好ましい。緩和率RRは、0%より大きく10%以下であることが好ましい。
【0034】
フィルム20において、製品中央部20cのうち、Z2方向中心部近傍の方向Z1の長さをLc、製品端部20eのうち、Z2方向中心部近傍の方向Z1の長さをLeとすると、Lc/Leの値が、0.98以上1.02以下であることが好ましい。なお、Lc/Leの値は、0.99以上1.01以下であることがより好ましく、0.995以上1.005以下であることがより好ましく、0.998以上1.002以下であることが更に好ましい。Lc/Leの値が、0.98未満または1.02を超えると、フィルム20は耳伸び状態となり、フィルム20の表面のキズ、黒帯故障及び巻き崩れが発生してしまうため、好ましくない。
【0035】
長さLcは、テンタ部12に導入される前のフィルム20において、製品中央部20c上に、第1の点、及び第1の点から方向Z1にxだけ離れた第2の点をとったときに、テンタ部12から送り出されたフィルム20において、第1の点と第2の点との方向Z1の間隔である。長さLeも、長さLcと同様にして、テンタ部12に導入される前のフィルム20において、製品端部20e上に、第1の点、及び第1の点から方向Z1にxだけ離れた第2の点をとったときに、テンタ部12から送り出されたフィルム20において、第1の点と第2の点との方向Z1の間隔である。
【0036】
また、クリップ40の把持を解除する直前のフィルム20において、式(2)〜(3)を満たすことが好ましい。更に、延伸処理により調節したレターデーションRe、Rthを維持する点から、温度Tc、Teの上限は、(Tg−10)℃以下であることが好ましく、(Tg−30)℃以下であることがより好ましく、(Tg−40)℃以下であることが更に好ましく、(Tg−50)℃以下であることが特に好ましい。レターデーションReとは、フィルムのZ1方向、Z2方向の屈折率をn1、n2とし、膜厚をdとするときに、|n1−n2|・dで表される。レターデーションRthとは、フィルムの厚み方向の屈折率をn3とするときに、{(n1+n2)/2−n3}・dで表される。
式(2) 25(℃)≦Te(℃)≦Tg−10(℃)
式(3) 25(℃)≦Tc(℃)≦Tg−10(℃)
【0037】
なお、ダクト43をフィルム20の搬送路の上方に設けたが、フィルム20の搬送路の下方にも設けてもよいし、フィルム20の搬送路の上方及び下方に設けてもよい。ダクト43をフィルム20の搬送路の下方に設ける場合には、ダクト43の上面にスリット53を設け、上面に発熱部を有する加熱装置をダクト43とフィルム20の搬送路との間に設けてもよい。
【0038】
なお、上記実施形態では、1対の加熱装置63を設けたが、本発明はこれに限られず、Z2方向に複数の加熱装置63を並べ、製品部20bのZ2方向両端から中央に向かうに従い、発熱部64の温度を低くしてもよい。また、発熱部64とフィルム20とのクリアランスがZ2方向両端から中央に向かうに従って大きくなるように、各発熱部64を配置し、これらの発熱部64の温度を略均一にしてもよい。
【0039】
上記実施形態では、加熱装置63を用いて製品端部20eを加熱したが、本発明はこれに限られず、製品部20bの温度がZ2方向両端部から中央部に向かうに従い低くなる分布にすることができる方法であれば、いずれの方法でもよい。例えば、スリットが製品部20b全体と対向するように設けられている場合には、製品端部20eと対向する一部のスリットを遮風部材で塞いでも良い。また、製品中央部20cのみに対向するようにスリットを設けても良い。
【0040】
上記実施形態では、フィルム20のうち、製品部20bの温度分布をZ2方向両端部から中央部に向かうに従い低くなるようにしたが、本発明はこれに限られず、テンタ部12から送り出されたフィルム20について、耳部20aの切断を行わずに、ローラ搬送や巻取りを行う場合には、フィルム20の温度分布をZ2方向両端部から中央部に向かうに従い低くなるようにした後に、クリップ40の把持を解除してもよい。
【0041】
上記実施形態では、各エリア36〜39におけるフィルム20の温度を調節するために、温度が所定の範囲内に調節された風56〜59をフィルム20にあてたが、本発明はこれに限られず、温度及びガス露点が所定の範囲内に調節された風56〜59をフィルム20にあてて、フィルム20の温度を調節するとともに、フィルム20から溶媒を蒸発させてもよい。
【0042】
上記実施形態では、製品中央部20cのみに風59をあてたが、製品中央部20c及び製品端部20eに風59を当ててもよい。例えば、図2に示されるダクト43において、第4給気室43d内に仕切り板を設け、Z1方向に複数の給気室を設ける。そして、各給気室にそれぞれ送風機を設ける。図示しない制御部により、風59の風速の分布が、フィルム20のZ2方向両端から中央に向かうに従い大きくなるように、各給気室に設けられた送風機を調節する。製品部20bにあたる風59の速さが、Z2方向両端部から中央部に向かうに従い大きくなる分布となるため、製品部20bの温度分布が、Z2方向両端部から中央部に向かうに従い低くなるような分布となった後に、クリップ40の把持を解除してもよい。
【0043】
本発明は、図6に示す溶液製膜設備80にて行われる溶液製膜方法に適用することができる。なお、上記実施形態と同一の装置、部材については、同一の符号を付し、その詳細の説明は省略する。溶液製膜設備80は、ストックタンク81、流延室82、ピンテンタ112、テンタ部12、乾燥室83、冷却室14、及び巻取部15を有する。
【0044】
ストックタンク81は、モータ81aで回転する攪拌翼81bとジャケット81cとを備えており、その内部にはフィルム20の原料となるドープ91が貯留されている。ストックタンク81内のドープ91は、ジャケット11cにより温度が略一定となるように調整されているまた、攪拌翼81bの回転によって、ポリマーなどの凝集を抑制しつつ、ドープ91を均一な品質に保持している。ストックタンク81の下流には、ギアポンプ92及び濾過装置93が設置されており、これらを介してドープ91が流延ダイ95に送られる。
【0045】
流延室82には、流延ダイ95、支持体としての流延ドラム96、剥取ローラ97、温調装置98,99、及び減圧チャンバ100が設置されている。流延ドラム96は図示しない駆動装置によって、軸96aを中心にA1方向に回転する。この回転中の流延ドラム96の周面に向けて、流延ダイ95からドープ91が吐出し、流延ドラム96の周面に流延膜103が形成する。
【0046】
流延室82内及び流延ドラム96は、温調装置98,99によって、流延膜103が冷却固化(ゲル化)し易い温度に設定されている。そして、流延ドラム96が約3/4回転する間に、流延膜103は自己支持性を有するゲル強度に達し、剥取ローラ97によって流延ドラム96から剥ぎ取られ、湿潤フィルム104となる。
【0047】
減圧チャンバ100は、流延ダイ95に対し、A1方向上流側に配置されており、減圧チャンバ100内を負圧に保っている。これにより、流延ビードの背面(後に、流延ドラム96の周面に接する面)側を所望の圧力に減圧し、流延ドラム96が高速で回転することにより発生する同伴風の影響を少なくし、安定した流延ビードを流延ダイ95と流延ドラム96との間に形成し、膜厚ムラの少ない流延膜103が形成される。
【0048】
流延ダイ95の材質は、電解質水溶液、ジクロロメタンやメタノールなどの混合液に対する高い耐腐食性、及び低い熱膨張率を有する素材から形成される。流延ダイ95の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下のものを用いることが好ましい。
【0049】
流延ドラム96の周面は、クロムメッキ処理が施され、十分な耐腐食性と強度を有する。また、温調装置99は、流延ドラム96の周面の温度を所望の温度に保つために、流延ドラム96に伝熱媒体を循環させる。伝熱媒体は所望の温度に保持されており、流延ドラム96内の伝熱媒体流路を通過することにより、流延ドラム96の周面の温度が所望の温度に保持される。
【0050】
流延ドラム96の幅は特に限定されるものではないが、ドープの流延幅の1.1倍〜2.0倍の範囲のものを用いることが好ましい。流延ドラム96の材質は、ステンレス製であることが好ましく、十分な耐腐食性と強度とを有するようにSUS316製であることがより好ましい。流延ドラム96の周面に施されるクロムメッキ処理はビッカース硬さHv700以上、膜厚2μm以上、いわゆる硬質クロムメッキであることが好ましい。
【0051】
流延室82内には、蒸発している有機溶媒を凝縮回収するための凝縮器(コンデンサ)109と凝縮液化した溶媒を回収する回収装置110とが備えられている。凝縮器109で凝縮液化した有機溶媒は、回収装置110により回収される。回収された溶媒は再生装置で再生された後に、ドープ調製用溶媒として再利用される。
【0052】
流延室82の下流には、渡り部111、ピンテンタ112、テンタ部12が順に設置されている。渡り部111では、搬送ローラ113を用いて、湿潤フィルム104をピンテンタ112に導入する。ピンテンタ112は、湿潤フィルム104の両端部を貫通して保持する多数のピンプレートを有し、このピンプレートが軌道上を走行する。この走行中に湿潤フィルム104に対して乾燥風が送られ、湿潤フィルム104が走行しつつ乾燥され、フィルム20となる。
【0053】
湿潤フィルム104は、ピンテンタ112で、残留溶媒量が0.1重量%以上10重量%以下となるまで乾燥することが好ましい。残留溶媒量が150重量%以上320重量%以下の範囲のときに流延膜103を剥ぎ取り、ピンテンタ112で残留溶媒量が上記範囲となるまで乾燥することにより、テンタ部12におけるセルロースアシレート分子の配向制御がさらに効果的に行われる。すなわち、テンタ部12での延伸処理での、遅相軸の方向制御効果と、Re、Rthを高める効果と、光学ムラの改良効果とが高まる。ただし、本発明ではピンテンタ112での乾燥は、残留溶媒量が上記の範囲となるまで実施せずともよい。つまり、残留溶媒量が10重量%よりも高い状態の湿潤フィルム104をテンタ部12に送り込んでもよい。
【0054】
乾燥室83では、フィルム20に50℃以上200℃以下の乾燥風をあてて、フィルム20を乾燥する。乾燥室83では、残留溶媒量が0.01重量%以上5重量%以下となるまでフィルム20を乾燥することが好ましい。
【0055】
テンタ部12を、ピンテンタ112と乾燥室83との間に設けたが、本発明はこれに限られず、冷却室14と巻取部15との間にテンタ部12を設けてもよいし、ピンテンタ112と乾燥室83との間、及び冷却室14と巻取部15との間の両方に、テンタ部12を設けてもよい。
【0056】
本発明のフィルム20には、上記のような溶液製膜方法によって得られるフィルムに限られず、溶融製膜方法によって得られるフィルムも含まれる。
【0057】
(ポリマー)
以下、本発明においてドープ91を調製する際に使用するポリマーについて説明する。ポリマーとして熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。また、熱可塑性樹脂として、例えば、セルロースアシレートや環状ポリオレフィン等を用いることが好ましい。
【0058】
(セルロースアシレート)
セルロースアシレートとしては、セルローストリアセテート(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)において、A及びBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90重量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。ただし、本発明に用いることができるポリマーは、セルロースアシレートに限定されるものではない。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
【0059】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
【0060】
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「2位のアシル置換度」とする)であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「3位のアシル置換度」という)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「6位のアシル置換度」という)である。
【0061】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が用いられてもよい。2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
【0062】
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位の水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上であることが好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましく、これらのセルロースアシレートを用いることで、より溶解性に優れたドープを作製することができる。特に、非塩素系有機溶媒を使用すると、優れた溶解性を示し、低粘度で濾過性に優れるドープを作製することができる。
【0063】
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター、パルプのいずれかから得られたものでもよい。
【0064】
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特には限定されない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどが挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレノイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などが挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
【0065】
ドープを調製する溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブなど)などが挙げられる。
【0066】
上記のハロゲン化炭化水素の中でも、炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度及び光学特性など物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対して2〜25重量%が好ましく、より好ましくは5〜20重量%である。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール、エタノール、n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0067】
最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない溶媒組成も検討されている。この場合には、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素数1〜12のアルコールが好ましく、これらを適宜混合して用いる場合もある。例えば、酢酸メチル、アセトン、エタノール、n−ブタノールの混合溶媒が挙げられる。これらのエーテル、ケトン、エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン、エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−、−CO−、−COO−および−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も溶媒として用いることができる。
【0068】
セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。また、溶媒及び可塑剤、劣化防止剤、紫外線吸収剤(UV剤)、光学異方性コントロール剤、レターデーション制御剤、染料、マット剤、剥離剤、剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
【0069】
(環状ポリオレフィン)
特に好ましい環状ポリオレフィンについて説明する。本発明における環状ポリオレフィンとは、環状オレフィン構造を有する重合体であり、その例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及び(1)〜(4)の各水素化物などがある。本発明に好ましい重合体は、下記化2で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体環状ポリオレフィン、及び、化1で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上をさらに含んでなる付加(共)重合体環状ポリオレフィンである。また、化3で表される環状繰り返し単位を少なくとも1種含む開環(共)重合体も好適に使用することができる。
【0070】
【化1】

【0071】
【化2】

【0072】
【化3】

【0073】
化1〜化3における各式において、mは0〜4の整数を表す。R〜Rは、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、X〜X、Y〜Yは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CHCOOR11、−(CHOCOR12、−(CHNCO、−(CHNO、−(CHCN、−(CHCONR1314、−(CHNR1314、−(CHOZ、−(CHW、または、XとYあるいはXとYあるいはXとYから構成された(−CO)O、(−CO)NR15を示す。なお、R11〜R15は、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基、WはSiR163−p (R16は炭素数1〜10の炭化水素基、Dはハロゲン原子−OCOR16または−OR16、pは0〜3の整数を示す)、nは0〜10の整数を示す。
【0074】
〜X、Y〜Yの置換基に分極性の大きい官能基を導入することにより、フィルムの厚さ方向レターデーション(Rth)を大きくすることができるとともに、面内レターデーション(Re)の発現性を大きくすることができる。Re、Rth発現性の大きなフィルムは、フィルム製造過程でフィルムを延伸することにより、Re値、Rth値を大きくすることができる。
【0075】
ノルボルネン系付加(共)重合体は、特開平10−7732号、特表2002−504184号、US2004229157A1号、WO2004/070463A1号等の各公報に開示されており、ノルボルネン系多環状不飽和化合物同士を付加重合することによって得られる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多環状不飽和化合物と、次のようなジエン化合物とを付加重合して得ることもできる。ジエン化合物としては、共役ジエン、非共役ジエン、線状ジエンの各化合物等がある。共役ジエン化合物としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレンを例示することができる。非共役ジエン化合物としてはエチリデンノルボルネンを例示することができる。線状ジエン化合物としてはアクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル、塩化ビニルを例示することができる。ノルボルネン系付加(共)重合体は、三井化学(株)よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)が互いに異なる複数のグレードがある。それらは例えばAPL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)、APL6015T(Tg145℃)などである。また、ポリプラスチックス(株)よりTOPAS8007、同6013、同6015などのペレットが製品として発売されている。さらに、Ferrania社よりAppear3000が発売されている。
【0076】
ノルボルネン系重合体水素化物は、特開平1−240517号、特開平7−196736号、特開昭60−26024号、特開昭62−19801号、特開2003‐1159767号、特開2004‐309979号等の各公報に開示されているように、多環状不飽和化合物を付加重合あるいはメタセシス開環重合したのち水素添加することにより作られる。本発明に用いるノルボルネン系重合体において、R〜Rは水素原子または−CHが好ましく、X及びYは水素原子、Cl、−COOCHが好ましく、その他の基は適宜選択される。このノルボルネン系樹脂は、JSR(株)からアートン(Arton)GあるいはアートンFという商品名で発売されており、また日本ゼオン(株)からゼオノア(Zeonor)ZF14、ZF16、ゼオネックス(Zeonex)250あるいはゼオネックス280という商品名で市販されており、本発明では以上のものを用いることもできる。
【0077】
環状ポリオレフィンが溶解することができるもの、すなわち良溶媒であれば、溶媒は特に限定されない。好ましい例として、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素系化合物、炭素原子数が3〜12の鎖状炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、エステル、ケトン、エーテルから選ばれる化合物が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。炭素原子数が3〜12の鎖状炭化水素類の例としては、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカンなどが挙げられる。炭素原子数が3〜12の環状炭化水素類としてはシクロペンタン、シクロヘキサン及びその誘導体が挙げられる。炭素原子数が3〜12の芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエステルの例としては、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトンの例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテルの例としては、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトールが挙げられる。2種類以上の官能基を有する有機溶剤の例としては、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノールが挙げられる。有機溶剤の好ましい沸点は35℃以上かつ150℃以下である。なお、本発明においては、乾燥性、粘度等のドープ物性調節のために、2種以上の化合物の混合物を溶剤として用いることができ、さらに、混合物を溶媒として用いるときには、その混合物にいわゆる貧溶媒が添加されていてもよい。
【0078】
良溶媒と貧溶媒との混合物をドープの溶媒として用いる場合には、貧溶媒は、使用するポリマーの種類と良溶媒の種類との少なくともいずれか一方により適宜選択するとよい。例えば、良溶媒として塩素系有機溶剤を使用する場合には、アルコールを好適に使用することができる。アルコールとしては、直鎖、分枝、環状のいずれの構造を有していてもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールは、第一級〜第三級のいずれのものであってもよい。アルコールの例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なお、アルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。貧溶媒のなかでも特に1価のアルコールは、剥離抵抗の低減効果があり、好ましく使用することができる。剥離抵抗とは、流延膜を支持体から剥がす際の剥ぎ取り力である。選択する良溶剤によって特に好ましいアルコールは変化するが、乾燥負荷を考慮すると、沸点が120℃以下のアルコールが好ましく、炭素数が1〜6の1価アルコールがさらに好ましく、炭素数1〜4のアルコールが特に好ましく使用することができる。環状ポリオレフィンのドープを作成する上で特に好ましい混合溶剤は、ジクロロメタンを主溶剤とし、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールあるいはブタノールから選ばれる1種以上のアルコールを貧溶媒にする組み合わせである。
【実施例】
【0079】
以下に示す条件で実験1〜10を行い、本発明の効果の有無について調べた。各実験の説明は実験1で詳細に行い、実験2〜10については、実験1と同じ条件の箇所の説明は省略する。
【0080】
(実験1)
所定の固形分を所定の溶媒に適宜添加し、攪拌溶解してドープAを調整した。ドープAの処方は次の通りである。
セルローストリアセテート(置換度2.8) 89.3重量%
可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 7.1重量%
可塑剤B(ビフェニルジフェニルフォスフェート) 3.6重量%
の組成比からなる固形分(溶質)を
ジクロロメタン 80重量%
メタノール 13.5重量%
n−ブタノール 6.5重量%
からなる混合溶媒に適宜添加し、攪拌溶解してドープAを調製した。なお、ドープのTAC濃度は略23重量%になるように調整した。ドープを濾紙(東洋濾紙(株)製,#63LB)にて濾過後さらに焼結金属フィルタ(日本精線(株)製06N,公称孔径10μm)で濾過し、さらにメッシュフイルタで濾過した後にストックタンクに入れた。
【0081】
なお、ここで使用したセルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1重量%以下であり、Ca含有率が5ppm、Mg含有率が42ppm、Fe含有率が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンを15ppm含むものであった。また6位水酸基の水素に対するアセチル基の置換度は0.91であった。また、全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基の水素が置換されたアセチル基であった。また、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8重量%であり、その重量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。また、得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であった。このTACは、パルプから採取したセルロースを原料として合成されたものである。また、このTACのガラス転移温度Tgは145℃であった。
【0082】
このドープAを用いて溶液製膜方法を行い、フィルム20を得た。得られたフィルム20について、図1に示すオフライン延伸装置10を用いて、テンタ部12において延伸処理を行った。延伸前のフィルム20の幅は、1500mmであった。予熱エリア36では、フィルム20の温度を150℃〜180℃に保持し、延伸エリア37では、フィルム20の温度を180℃〜200℃に保持しながら、Z2方向へフィルム20を延伸した。延伸率ERは30%であった。次いで、緩和エリア38では、フィルム20の温度を150℃〜200℃に保持しながら、緩和処理を行った。緩和率RRは5%であった。その後、冷却エリア39では、加熱装置63及びダクト43により、製品部20bの温度が、Z2方向両端から中央に向かうに従い高くなるような分布にした。製品中央部20cの温度Tcは70℃であり、製品端部20eの温度Teは88℃であった。また、テンタ部12から送り出されたフィルム20について、Lc/Leの値は0.999であった。
【0083】
(実験2〜10)
実験2〜10では、冷却エリア39における、製品中央部20cの温度Tc、製品端部20eの温度Te、及びLc/Leの値を表1に示す値にしたこと以外は、実験1と同様にした。なお、実験6及び10については、ドープAに代えて、ドープBを用いた。
【0084】
次に、ドープBについて説明する。環状ポリオレフィンAを溶媒に攪拌溶解させて、ドープBを得た。ドープBの成分は以下の通りである。
環状ポリオレフィンA 100重量%
からなる固形分(溶質)を
ジクロロメタン 84重量%
メタノール 10重量%
n−ブタノール 6重量%
からなる混合溶媒に適宜添加し、攪拌溶解してドープBを調製した。ドープを濾紙(東洋濾紙(株)製,#63LB)にて濾過後さらに焼結金属フィルタ(日本精線(株)製06N,公称孔径10μm)で濾過し、さらにメッシュフイルタで濾過した後にストックタンクに入れた。
【0085】
環状ポリオレフィンAは、以下の方法により得られた化合物である。精製トルエン100重量部とノルボルネンカルボン酸メチルエステル100重量部を反応釜に投入した。次いでトルエン中に溶解したエチルヘキサノエート−Ni25mmol%(対モノマー)、トリ(ペンタフルオロフェニル)ボロン0.225mol%(対モノマー)及びトルエンに溶解したトリエチルアリミニウム0.25mol%(対モノマー)を反応釜に投入した。室温で攪拌しながら18時間反応させた。反応終了後過剰のエタノール中に反応混合物を投入し、重合物の沈殿を生成させた。沈殿を精製して真空乾燥で65℃24時間乾燥し、環状ポリオレフィンAを得た。
【0086】
得られた環状ポリオレフィンAをテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーエミションクロマトグラフによる分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量は79,000、重量平均分子量は205,000であった。得られたポリマーAをアッベの屈折計で測定した屈折率は1.52であった。また、環状ポリオレフィンAのガラス転移温度Tgは138℃であった。
【0087】
(評価)
得られたフィルムについて、以下の評価を行った。
【0088】
1.キズの有無の評価
得られたフィルム20の表面を目視で観察し、キズの有無について、以下基準に基づいて評価した。
◎:フィルムの表面にて、キズを確認することができなかった。
○:フィルムの表面にて、実用上問題のない程度のキズのみを確認した。
×:フィルムの表面にて、製品として用いることができない程度のキズを確認した。
【0089】
2.帯状跡の評価
ロール状に巻き取られたフィルム20を目視で観察し、帯状跡の有無について、以下基準に基づいて評価した。
◎:帯状跡を確認することができなかった。
○:実用上問題のない程度の帯状跡のみを確認した。
×:製品として用いることができない程度の帯状跡を確認した。
【0090】
3.ΔReの評価
テンタ部導入前のフィルム20の面内レターデーションReと、テンタ部から送り出された後のフィルム20の面内レターデーションReの変動量ΔReを測定し、この変動量ΔReを以下基準に基づいて評価した。
○:ΔReが2nm以下であった。
×:ΔReが2nmより大きかった。
【0091】
面内レターデーションReの測定方法は次の通りである。フィルム20を70mm×100mmに切断し、温度25℃,湿度60%RHで2時間調湿し、自動複屈折率計(KOBRA21DH 王子計測(株))にて632.8nmにおける垂直方向から測定したレターデーション値の外挿値より次式に従い算出した。
Re=|n1−n2|×d
n1は、Z1の屈折率,n2はZ2方向の屈折率,dはフィルムの厚み(膜厚)を表す。
【0092】
4.ΔRthの評価
テンタ部導入前のフィルム20の厚み方向のレターデーションRthと、テンタ部から送り出された後のフィルム20の厚み方向のレターデーションRthの変動量ΔRthを測定し、この変動量ΔRthを以下基準に基づいて評価した。
○:ΔRthが2nm以下であった。
×:ΔRthが2nmより大きかった。
【0093】
厚み方向レターデーションRthの測定方法は次の通りである。フィルム20を30mm×40mmに切断し、温度25℃,湿度60%RHで2時間調湿し、エリプソメータ(M150 日本分光(株)製)で632.8nmにより垂直方向から測定した値と、フィルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値とから下記式に従い算出した。
Rth={(n1+n2)/2−n3}×d
n3は厚み方向の屈折率を表す。
【0094】
実験1〜10における評価結果1〜4を、表1に示す。表1において、評価結果1は、キズの有無の評価結果を表し、評価結果2は、帯状跡の評価結果を表し、評価結果3は、ΔReの評価結果を表し、評価結果4は、ΔRthの評価結果を表す。
【0095】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】オフライン延伸装置を示す概略図である。
【図2】テンタ部の概要を示す側面図である。
【図3】テンタ部の概要を示す上面図である。
【図4】テンタ部に設けられるダクト及び加熱装置の概要を示す上面図である。
【図5】(A)は、ネッキング現象に起因するフィルムのZ1方向の収縮量X1を示す説明図である。(B)は、収縮量X1のZ2方向における変動が、温度分布に起因する収縮量X2により抑えられる様子を示す説明図である。
【図6】溶液製膜設備を示す概略図である。
【符号の説明】
【0097】
10 オフライン延伸装置
12 テンタ部
20 フィルム
20a 耳部
20b 製品部
20c 製品中央部
20e 製品端部
37 延伸エリア
39 冷却エリア
43 ダクト
53 スリット
56〜59 風
63 加熱装置
64 発熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含み、長尺状のフィルムの幅方向両端にある耳部を把持して、前記フィルムを前記幅方向に延伸する延伸工程と、
前記延伸工程を経た前記フィルムのうち前記耳部を除く製品部において、前記幅方向の両端部の温度をTe、前記幅方向の中央部の温度をTcとするときに、式(1)を満たし、前記製品部の温度分布を前記幅方向両端部から前記幅方向中央部に向かうに従い次第に温度が低くなるような分布にした後、前記延伸に起因して前記製品部が長手方向に収縮する量の前記幅方向における変動を、前記温度分布に起因する前記製品部の長手方向の収縮で抑えるように、前記耳部の前記把持を解除する把持解除工程と、
を有することを特徴とするフィルムの製造方法。
式(1) 0(℃)<Te−Tc(℃)≦80(℃)
【請求項2】
前記把持解除工程では、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg(℃)とするときに、式(2)及び式(3)を満たす前記フィルムについて、前記耳部の前記把持を解除することを特徴とする請求項1記載のフィルムの製造方法。
式(2) 25(℃)≦Te(℃)≦Tg−10(℃)
式(3) 25(℃)≦Tc(℃)≦Tg−10(℃)
【請求項3】
前記把持解除工程では、前記製品部の前記幅方向両端部を加熱し、前記製品部の前記幅方向中央部を冷却した後、前記耳部の把持を解除することを特徴とする請求項1または2記載のフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記把持解除工程では、前記製品部の前記幅方向両端部から前記幅方向中央部に向かうに従って速さが大きくなる分布の冷却風により前記フィルムを冷却した後、前記耳部の把持を解除することを特徴とする請求項1または2記載のフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂がセルロースアシレートであることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載のフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂が飽和ノルボルネン系樹脂であることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載のフィルムの製造方法。
【請求項7】
巻き芯に巻き取られた前記フィルムを前記巻き芯から取り出した後に前記延伸工程及び前記把持解除工程を行うことを特徴とする請求項1ないし6のうちいずれか1項記載のフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂と溶剤とを含むドープを支持体に吐出して、前記支持体上に膜を形成する膜形成工程と、
自己支持性を有するものとなった前記膜を前記支持体から剥ぎ取る剥取工程とを有し、
前記支持体から剥ぎ取られた前記膜に前記延伸工程及び前記把持解除工程を行うことを特徴とする請求項1ないし6のうちいずれか1項記載のフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−76109(P2010−76109A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243662(P2008−243662)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】