説明

フィルムガード製剤

【課題】
物理的に刺激が加わる手足を保護する皮膚上にフィルムを形成するフィルムガード製剤を提供する。
【解決手段】
ニトロセルロースを、酢酸3−メチルブチル、又は酢酸イソブチル又はアセトン、或いはこれらの混合物の溶解剤に溶解し、更にエチルアルコールを添加して製剤としたものであり、フィルムの摩擦係数や強度を調整する目的でポリビニールアルコール、ポリビニールピロリドン等の水溶性高分子を適量添加してもよく、皮膚に塗布した後溶剤が揮散し、塗布部位の皮膚上に透明或いは半透明のフィルムを形成することにより患部を密封し、塗布部を皮膜で保護することによって外部からの物理的刺激を緩和・低減し、さらに化学的刺激や細菌感染から皮膚を保護するフィルムガード製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、皮膚上にフィルムを形成して所定部位の皮膚を保護するフィルムガード製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手は人間にとって非常に便利な道具であり、食事、作業、スポーツ、筆記、絵画等の日常の生活の中で最も汎用し且つ重要な役割を担っている。
この手を寒さから守る防寒手袋、熱さから保護する耐熱手袋、家事・調理時の水の多用による手の荒れを防止する耐水性手袋、ゴルフや野球等の手を使うスポーツによる物理的刺激(打撲、圧迫、摩擦等)から手を守る各種の手袋がそれぞれのサイズとデザイン等の仕様で日常生活の中で汎用されている。
また、近年のIT技術の発達や医療・製薬技術の高度化で、防塵性を追求した非縫製の製品が利用されている。人間の2本の足で歩くといった基本的な動作において、足を物理的刺激(寒冷、圧迫、摩擦、打撲)から守る目的でソックスや足袋が靴とともに利用されている。特に足の踵は刺激が強く感じられる部位であるために皮膚の肥厚と角化が進み、ソックスやストッキングの糸を引く現象(伝線)が問題となり、踵を包む特殊なソックスや皮膚の保湿と柔軟性改善を目的としたクリーム製剤が多く利用されている現状にある。
なお、本発明者は、皮膚上にフィルムを形成する成分を含有する製剤として、次の特許文献1〜3を提供している。
【特許文献1】特願2005-136740号
【特許文献2】特願2005-198556号
【特許文献3】特願2005-254415号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の防寒用手袋の効果は素材の保温性に依存し、最近ではヒーターを内蔵した製品も市販されているが、手袋自体の複雑性と重量的に手の動きが制限される問題があり、脱いだ後の条件によっては急激に手を冷やすために手の動きが制約される状況を呈する。
スポーツ用手袋は、発汗による汗が皮膚刺激性と臭いを誘発するために、頻繁に取替えることと頻繁の洗濯や陰干し等が必要とされる。又、肌の弱い人は、手袋をして物を握るスポーツ(ゴルフ等)では、手袋をしても手袋の素材との接触で炎症(手まめ、擦過傷、浮腫等)を誘発することが多い。
この問題点を解決する目的で各種のオイルやクリーム等の外用製剤が使用されるが、手と手袋の滑りが強く、本来のスポーツの機能を損なう状況にある。また、IT産業及び医薬品関連工場で使用される非縫製タイプの防塵・無菌手袋は指と手袋素材との一体感に乏しく、つまり、隙間が開きやすく細かい作業が要求される現場からは改善策の要求が高い。又、手袋の素材(特に肌密着型のラテックス)でアレルギー性皮膚炎等のかぶれを誘発することも多く、打開策が求められている。本手袋は洗浄して3〜4回は使用が可能であるが、洗浄の手間と時間・コスト、更に使用後の廃棄処分が産業廃棄物として大きな問題となっている。
足に使用するソックスや足袋等でも、上記手袋と同様に肌を被覆する条件下では、同じ問題点が発生している。
手足を保護する目的の商品(手袋、サポーター、靴下等)は、物理的刺激に対する手足保護の機能性を有するものの、装着に違和感があり、装着時の蒸れと細菌増殖による悪臭の発生と不潔性が伴い、早期の取替えと洗濯が利用者の負担となっている。
この発明が解決しようとする課題は、上記に列記した手袋、ソックス、サポーター等の体の一部(手、足、関節等)を被覆・カバーする製品の種々の欠点を解決するには、いかに皮膚組織をガードする生体適合性に優れた膜を必要な皮膚上に形成させればよいかという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、手足防御・シールド製品(手袋、ソックス、サポーター)の特性と効果を下げずに、より以上の機能性と安全性と利便性を兼ね備えた簡便な新規製剤についていろいろと考察し、実験と試作を重ねた。そして、従来の手足の防御・シールド製品の機能性の一つである皮膚の被覆の特徴を活かした新しい揮散タイプのジェル製剤を試作してみた。新ジェル製剤を皮膚に適用してみると使用前は半固形のジェル状であったものが皮膚に薄く塗布した後に皮膚上で薄いフィルムに近い皮膜を形成したことを顕微鏡下で確認した。本発明者は、この事実を基にして更に研究を重ねた結果、本発明に想到した。
【0005】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、ニトロセルロースを、酢酸3−メチルブチル、又は酢酸イソブチル、又はアセトン、或いはこれらの混合物の溶解剤に溶解し、更にエチルアルコールを添加したものであり、皮膚に塗布した後溶剤が揮散し、塗布部位の皮膚上に透明或いは半透明のフィルムを形成することにより患部を密封し、塗布部を皮膜で保護することによって外部からの物理的刺激を緩和・低減し、さらに化学的刺激や細菌感染から皮膚を保護することを特徴とするフィルムガード製剤である。
前記溶解剤には、フィルムの摩擦係数や強度を調整する目的でポリビニールアルコール、ポリビニールピロリドン等の水溶性高分子を適量添加してもよい。
また、透明、或いは半透明のフィルムを塗布した部位の皮膚上に形成することにより皮膚を密封してガードし、部位の保護効果を高めると同時に部位の副作用(皮膚刺激性:かぶれ、発赤、水泡等)を予防する。 又、部位を被膜で被覆することによって洗浄やシャワーから部位を隔離することで、部位のシールド効果の持続性が期待でき、更に水や足マットを介しての第三者への細菌感染と違和感を解消する。
また、非水性であるため保湿剤の安定性が高く、皮膚に対する悪影響を及ぼす危険性のある防腐剤や界面活性剤を使用する必要も無い。新製剤としては、皮膚の角質層の役割(外部からの物理的化学的浸襲に対する防御)と発汗の制御と基剤成分(エチルアルコール等)による殺菌・消毒作用により体臭(汗臭)を予防することも可能である。
【0006】
請求項2の発明は、前記溶解剤の中にシソオイル、ごま油、エゴマ油、オリーブ油、馬油、ヒノキオイル、ひまし油の天然油の内、一種以上を含有し、膜形成時の膜の強度・柔軟性とODT効果を高めることを特徴とする請求項1に記載のフィルムガード製剤である。
【0007】
請求項3の発明は、前記溶解剤の中にl―メントール、ハッカ油、ヒノキチオール、dl−カンフル、唐辛子エキス、カプサイシン、ショウガエキス等の皮膚刺激成分の内、一種以上を含有し、皮膚の新陳代謝を改善することを特徴とする請求項1に記載のフィルムガード製剤である。また、上記皮膚刺激成分は、皮膚の血流の流れが良くなり、手足に対してはフィルムの密閉作用と相俟って体温の低下を効果的に防ぐという作用も有する。
【0008】
請求項4の発明は、前記溶解剤の中に 保湿剤として多価アルコール(アルカンジオール、エリスリトール、グリセリン、キシリトール、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリセリン、D−マンニトール等)、セリシン、尿素、尿酸、ヒアルロン酸、加水分解コラーゲンゲル、DMAE(ジメチルアミノエタノール)、レシチン、大豆レシチン、卵黄レシチン、キチン・キトサンの一種以上を含有し、皮膜形成後の皮膚の保湿性を改善することを特徴とする請求項1に記載のフィルムガード製剤である。この保湿剤を含有させることにより、フィルムの密閉作用と相俟って保湿を長時間効果的に保つという作用も有する。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るフィルムガード製剤においては、ニトロセルロースを、酢酸3−メチルブチル、又は酢酸イソブチル、又はアセトン、或いはこれらの混合物の溶解剤に溶解し、更にエチルアルコールを添加した基剤に保湿剤に加えて皮膚引赤薬や皮膚刺激薬を添加してもよく、皮膚に塗布した後溶剤が揮散し、透明、或いは半透明のフィルムを皮膚上に形成することにより部位を密封するので、塗布部を皮膜で保護することによって外部からの物理的刺激を緩和・低減し、従来の物理的に刺激が加わる手足の保護を目的とした商品(ゴルフ手袋、サポーター、ソックス、カカトクリーム、床ずれ防止クリーム等)のように、装着の違和感がなく、装着・脱着に手間がかかるといったこともなく、装着時には患部の細菌繁殖がなく、悪臭発生が押さえられ、さらに、化学的刺激や細菌感染から皮膚を保護し、シールド効果と皮膚刺激薬の血流改善による温熱効果によって患部の新陳代謝を高め、及び、保湿効果を長時間維持することが可能であり、更に皮膚と入浴やシャワーに伴う水分との直接の接触を予防することにより皮膚引赤薬や皮膚刺激薬の流出を防ぎ、温熱効果の持続化をはかり、結果として被覆部位の保温性を高めることが可能となる。
又、水に対して非溶解性フィルムが部位を被覆することによってフィルム自体が入浴やシャワーによって流失されることはなく、逆に水との接触によってより確実なシールド(膜形成)となり、部位の保護効果とその持続性を維持するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のフィルムガード製剤の好適な実施例について説明する。
[実施例1]
[組成比]
本発明の皮膚上にフィルムを形成するフィルムガード製剤の好適な実施例1を説明するが、先ず、この実施例1の配合比を次の[表1]に示す。
[表1][組成比(重量%)]
ニトロセルロース・・・・・・・7.0%
エチルアルコール・・・・・・71.5%
酢酸3−メチルブチル・・・・・8.0%
アセトン・・・・・・・・・・10.0%
トウガラシチンキ・・・・・・・1.0%
セリシン・・・・・・・・・・・1.0%
dl−カンフル・・・・・・・・1.0%
ゴマ油・・・・・・・・・・・・0.5%
【0011】
[調製方法]
上記の組成比になるように本実施例のフィルムガード製剤は、次のような手順で調製する。
先ず、ニトロセルロース5〜10重量%、好ましくは7.0重量%を、酢酸3−メチルブチルブチルの3〜10重量%、好ましくは8.0重量%に溶解させたのち、アセトン12〜8重量%、好ましくは10.0重量%を添加して液温30℃にて良く攪拌する。次に、この溶解液にエチルアルコールの80〜60重量%、好ましくは71.5重量%を加えて良く攪拌したのち、トウガラシチンキ、セリシン、dl−カンフル更にゴマ油と順次攪拌下に少量ずつ添加し、24時間室温放置して製造する。
すなわち、上記のニトロセルロース、酢酸3−メチルブチル、アセトンがフィルム形成素材であり、エチルアルコールは揮発する溶剤で塗布後30秒から1分程度でエチルアルコールが揮発するとともに、製剤の表面にフィルムが形成されるようにする。
上記組成において、皮膚の新陳代謝を改善するため、皮膚の血流の流れを良くするため、皮膚刺激成分として、トウガラシチンキを1.0%を添加するが、少なすぎても薬効がなく、多すぎると却って皮膚を傷つけるので0.2〜3重量%が良く、皮膜形成後の皮膚の保湿性を改善するための保湿剤としてセリシンを1.0を添付したが、0.2〜5.0重量%が良く、好ましくは1.0〜3.0重量%がよく、0.2重量%より少ないと効果がなく、5重量%より多くしても沈殿して溶解しない。抗痒剤としてdl―カンフルを1.0%を添加したが0.5〜10.0重量%、好ましくは1.0重量%が良く、膜形成時の膜の強度・柔軟性とODT効果を高めるためにゴマ油を3.0重量%を添加するが、少なすぎても薬効がなく、多すぎるとフィルム形成を阻害するので1.0〜10重量%が良い。
【0012】
[ゴルフスイングによるグリップハンドの皮膚損傷及び臭気判定試験]
上記の組成、及び調整法で製造した実施例1のフィルムガード製剤の作用・効果を以下の条件で検証した。
(1)被検体:
実施例1:実施例1のフィルムガード製剤を手に塗布して通常市販ゴルフ手袋を装着。
比較例1:通常市販のゴルフ手袋(D社製ゴルフ手袋:M〜L)を単独で装着
比較例2:手袋を装着しない素手(コントロール:(手袋未着))
(2)被験者:
ゴルフ歴1年未満の成人ボランティア5名×3群、計15名(男性45歳〜50歳)
(3)試験方法:
ゴルフの打放し前に10分間、実施例1の製剤を被験者1群(5名)の左手の平に一定量を均一に塗布した。皮膜の形成を目視にて確認した後、通常の市販のゴルフ手袋(D社製ゴルフ手袋:M〜L)を装着して各自のペースで300球を連続して試打した。
同様に、被験者2群(5名)の左手には何も塗布せず、直接市販のゴルフ手袋(D社製ゴルフ手袋:M〜L)を単独で装着して各自のペースで300球を連続して試打した。
同様に、被験者3群(5名)の左手にはゴルフ手袋を装着せず、素手のまま各自のペースで300球を連続して試打した。
その後、実施例1及び比較例1の群は手袋を脱いで、比較例2はそのままで、手の平の損傷度を下記の判定基準に基づいて評価した。
同時に第三者(3名の臭気判定人)により手の臭いの程度を下記の判定基準に基づいて評価した。臭気の判定は最大値と最小値を除いた中間値を採用した。
【0013】
(4)損傷度の評価判定
手の平の皮膚の損傷度について、下記の基準に従って評価判定した。
4点.(+++):手まめの破壊(破れ)
3点.(++):手の平の肥厚・まめの形成
2点.(+):手の平の強い発赤
1点.(±):軽度の発赤
0点.(−):変化なし
(5)臭気強度の判定基準
手の臭いの強度を下記の基準に従って判定した。
4点.(+++):非常に臭う
3点.(++):臭う
2点.(+):軽度に臭う
1点.(±):僅かながら臭う
0点.(−):殆ど臭わないの
【0014】
(6)試験結果1(皮膚損傷試験)
前記(4)での手の平の皮膚の損傷について、損傷状態を目視しその評価判断の結果を[表2]に示す。
実施例1を使用した場合は、被験者5例中1例に軽度の発赤が認められたのみで、残り4例は変化なしであった。手袋だけの使用の比較例1場合は、5例中1例に肥厚・まめ形成、2例に強い発赤、1例に軽度の発赤が認められた。素手である比較例2(コントロール)の場合は、5例中2例がまめの破壊、3例に肥厚・まめの形成が認められた。
5例の評価点数の平均では、実施例1の使用では:0.2点、比較例1の手袋単独では:1.6点、素手の比較例2(コントロール)では3.4点であり、実施例1を使用の場合は、比較例1手袋単独使用の約1/8、素手の比較例2(コントロール)の1/17の損傷度であった。
(7)試験結果2(手の臭気度試験)
前記(5)での手の平の臭いについて、前記臭気判定人の3名により判定しその結果を[表3]に示す。
実施例1と手袋を使用の場合は、被験者5例中1例が僅かながら臭うと答えたが他の4例は全て臭わないと答えた。
比較例1の手袋のみでは5例中3例が非常に臭うと答え、1例が臭う、残り1例が軽度に臭うと答えた。
比較例2(コントロール)の素手では、5例中1例が僅かに臭うと答えたのみであった。
この結果、臭気度の5例の平均評価点数では、実施例1と手袋併用では、0.2点であり、素手の比較例2と同程度の評価点数であった。これに対して、比較例1では、評価点数は3.0点であり、実施例1使用の場合の約15倍の臭気度であった。
この効果試験では、ゴルフ手袋を併用することで物理的に刺激が加わる手足を保護する利点が増すばかりでなく、素手や素足や刺激が加わる身体部位に、実施例1を塗布するだけで、ゴルフ手袋等の保護部材の代わりになることを意味し、加えて、サポーター、ソックス、カカトクリーム、床ずれ防止クリーム等のように、装着の違和感がなく、装着・脱着に手間がかるかといったこともなく、装着時には患部の細菌繁殖がなく、悪臭発生が押さえられ、特に、長期に亘ってベッドを使用の際に生じる、床ずれの生じやすい部位に予め塗布することで、床ずれ防止効果を有することも期待できる。
【0015】
[実施例2]
[組成比]
次に、本発明の皮膚上にフィルムを形成するフィルムガード製剤の好適な別の実施例2を説明するが、先ず、この実施例2の配合比を次の[表4]に示す。
[表4][組成比(重量%)]
ニトロセルロース・・・・・・5.5
エチルアルコール・・・・・76.0
酢酸イソブチル・・・・・・・5.5
アセトン・・・・・・・・・・6.0
l−メントール・・・・・・・1.0
キチン・キトサン・・・・・・1.0
ひまし油・・・・・・・・・・2.0
シソオイル・・・・・・・・・3.0
【0016】
[調整方法]
上記の組成比になるように本実施例2のフィルムガード製剤は、次のような手順で調整する。
先ず、実施例1と同様に、ニトロセルロース4〜9重量%、好ましくは5.5重量%を、酢酸イソブチル3〜9重量%、好ましくは5.5重量%に溶解させたのち、アセトン4〜8重量%、好ましくは6.0重量%を添加して液温30℃にて良く攪拌する。次に、この溶解液にエチルアルコールの60〜80重量%、好ましくは76.0重量%を加えて良く攪拌したのち、l−メントール、キチン・キトサン、更に、ひまし油、シソオイルと順次攪拌下に少量ずつ添加し、24時間室温放置して製造する。
すなわち、実施例1と同様に、ニトロセルロース、酢酸3−メチルブチル、アセトンがフィルム形成素材であり、エチルアルコールは揮発する溶剤で塗布後30秒から1分程度でエチルアルコールが揮発するとともに、製剤の表面にフィルムが形成されるようにする。
上記組成において、皮膚の新陳代謝を改善するため、皮膚の血流の流れが良くするため、皮膚刺激成分として、l−メントールを1.0%を添加するが、少なすぎても薬効がなく、多すぎると却って皮膚を傷つけるので0.2〜3重量%が良く、皮膜形成後の皮膚の保湿性を改善するための保湿剤としてキチン・キトサンを1.0を添付したが、0.2〜3重量%が良く、好ましくは1.0重量%、膜形成時の膜の強度・柔軟性とODT効果を高めるためにゴマ油とシソオイルをそれぞれ2.0重量%、3.0重量%を添加するが、少なすぎても薬効がなく、多すぎるとフィルム形成を阻害するのでそれぞれ1.0〜10重量%が良い。
【0017】
[細菌のシールド効果試験]
上記の組成、及び調製方法で製造した実施例2のフィルムガード製剤の一般生菌に対する被覆・殺菌効果を以下の条件で検証した。血流に対する効果を以下の条件で検証した。
(1)被検体
実施例2:実施例2のフィルムガード製剤
比較例3(コントロール(未処理))
(2)被験者:成人男性ボランティア(56歳)
(3)試験方法:
被験者が一定の室内作業(清掃)を実施したあと、ハンドスタンプシャーレ上の標準寒天培地上に右手の平を静置した。培地と手の平の一定の接触を確認したあとハンドスタンプシャーレを一定温度(35℃)に設定された恒温槽にセットし、48時間後に恒温槽より取り出して一般生菌のコロニーを観察・記録し比較例3のコントロールとした。
その後、同一の右手に実施例3を一定量取り、手の全体を包むように薄く塗布した。次に、その手をハンドスタンプ上の標準寒天培地に静置し、手と培地との十分な接触を確認したのち、上記と同様に処理した。
(4)試験結果:
この(3)の試験結果を図3の比較例3の未処置でのハンドスタンプシャーレ上の写真1と、図4の実施例2を使用した場合のハンドスタンプシャーレ上の写真2に示す。
未処理のコントロールでは、培地全体に手の形に相関した一般生菌のコロニーが明確に観察された。これに対して実施例2で処理した場合は、培地上に一般生菌のコロニーは全く観察されなかった。この事実は、実施例2自体が持つ殺菌作用と、フィルム形成による被覆作用が相乗的に効果を発揮したものと考えられる。
【0018】
以上のように、本発明の皮膚上にフィルムを形成するフィルムガード製剤の実施例は、透明、或いは半透明のフィルムを皮膚上に形成することにより部位を密封するので、塗布部を皮膜で保護することによって外部からの物理的刺激を緩和・低減し、従来の物理的に刺激が加わる手足の保護を目的とした商品(ゴルフ手袋、サポーター、ソックス、カカトクリーム、床ずれ防止クリーム等)のように、装着の違和感がなく、装着・脱着に手間がかかるといったこともなく、装着時には患部の細菌繁殖がなく、悪臭発生が押さえられ、特に、長期ベットに寝たきりで生ずる床ずれに対しては生じやすい部位に予め塗布しておくことで簡単に床ずれを防止でき、更に、化学的刺激や細菌感染から皮膚を保護し、シールド効果と皮膚刺激薬の血流改善による温熱効果によって患部の新陳代謝を高め、及び、保湿効果を長時間維持することが可能であり、更に皮膚と入浴やシャワーに伴う水分との直接の接触を予防することにより皮膚引赤薬や皮膚刺激薬の流出を防ぎ、温熱効果の持続化をはかり、結果として被覆部位の保温性を高めることが可能となる。
又、水に対して非溶解性フィルムが部位を被覆することによってフィルム自体が入浴やシャワーによって流失されることはなく、逆に水との接触によってより確実なシールド(膜形成)となり、部位の保護効果とその持続性を維持する。
なお、本発明の特徴を損なうものでなければ、上述した実施例に限定されるものでないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1と比較例1、比較例2の皮膚損傷に対する効果試験の[表1]の図
【図2】本発明の実施例1と比較例1、比較例2の臭いに対する効果試験の[表1]の図
【図3】本発明の比較例3のハンドスタンプシャーレ上の写真の図
【図4】本発明の実施例2のハンドスタンプシャーレ上の写真の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトロセルロースを、酢酸3−メチルブチル、又は酢酸イソブチル又はアセトン、或いはこれらの混合物の溶解剤に溶解し、更にエチルアルコールを添加して製剤としたものであり、フィルムの摩擦係数や強度を調整する目的でポリビニールアルコール、ポリビニールピロリドン等の水溶性高分子を適量添加してもよく、皮膚に塗布した後溶剤が揮散し、塗布部位の皮膚上に透明或いは半透明のフィルムを形成することにより患部を密封し、塗布部を皮膜で保護することによって外部からの物理的刺激を緩和・低減し、さらに化学的刺激や細菌感染から皮膚を保護することを特徴とするフィルムガード製剤。
【請求項2】
前記溶解剤の中にシソオイル、ごま油、エゴマ油、オリーブ油、馬油、ヒノキオイル、ひまし油の天然油の内、一種以上を含有し、膜形成時の膜の強度・柔軟性とODT効果を高めることを特徴とする請求項1に記載のフィルムガード製剤。
【請求項3】
前記溶解剤の中にl―メントール、ハッカ油、ヒノキチオール、dl−カンフル、唐辛子エキス、カプサイシン、ショウガエキス等の皮膚刺激成分の内、一種以上を含有し、皮膚の新陳代謝を改善することを特徴とする請求項1に記載のフィルムガード製剤。
【請求項4】
前記溶解剤の中に 保湿剤として多価アルコール(アルカンジオール、エリスリトール、グリセリン、キシリトール、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリセリン、D−マンニトール等)、セリシン、尿素、尿酸、ヒアルロン酸、加水分解コラーゲンゲル、DMAE(ジメチルアミノエタノール)、レシチン、大豆レシチン、卵黄レシチン、キチン・キトサンの一種以上を含有し、皮膜形成後の皮膚の保湿性を改善することを特徴とする請求項1に記載のフィルムガード製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−105979(P2008−105979A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289048(P2006−289048)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(593095070)有限会社日本健康科学研究センター (12)
【Fターム(参考)】