説明

フィルム加工工法

【課題】 従来技術では、部品組付の場合に、部品の柄毎にそれぞれを加飾後、その部品同士を組付しなければならず、作業効率が悪いという問題、成形工程が煩雑になってしまうという問題がある。
【解決手段】 複数の部材1、2の端部同士に所定寸法離間して間隙部5を形成して、表皮材3を前記複数の部材1、2に貼着した後、近接させることによって、前記複数の部材1、2の間隙部5に位置合わせして、前記表皮材3の境界部4を前記間隙部5に埋没させたフィルム加工工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂からなる基材表面に2種類の表皮材を隣接して貼合する加工工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装部品では、意匠面の一部に表皮材で部分的に加飾を加えた一体成型品を採用し、自動車の内装に意匠的に優れた部品を採用している。
従来技術としては、意匠面の一部を形成すると共にその周縁部が意匠面側から樹脂層を横切って裏面側へ貫通する表皮材と、該表皮材が樹脂層を横切るところの横断部に接合し表皮材で覆われた内側領域で成形される第一の樹脂層と、前記表皮材が樹脂層を横切るところの横断部に接合して表皮材の外側領域で成形される第二の樹脂層とを具備し、該第二の樹脂層は表皮材との接合部分で所定間隔ごとに厚みをもたせた肉厚部を形成しながら大半を薄肉部で形成したことを特徴とする表皮材の部分加飾一体成形品(例えば、特許文献1参照)や、2種類の表皮材の端部同士を挟持する表皮材挟持体とこの挟持体を嵌合する嵌合溝を有する金型を用いて、まず2種類の表皮材の端部同士を重ね合わせて表皮材挟持体に挟持させ、この挟持体を金型内に設けた嵌合溝に嵌合して表皮材を固定し、表皮材と表皮材挟持体を嵌合した側の金型面との間に溶融状熱可塑性樹脂を供給して、熱可塑性樹脂からなる基材の表面に2種類の表皮材を隣接して貼合一体化する多層成形品の製造方法であって、表皮材挟持部に2種類の表皮材のそれぞれの端部同士を樹脂止め板を介して挟持することを特徴とする多層成形品の製造方法(例えば、特許文献2参照)が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−127200号公報(特許請求の範囲の欄、発明の詳細な説明の欄、及び図1〜図17を参照)
【特許文献2】特開2001−353746号公報(特許請求の範囲の欄、発明の詳細な説明の欄、及び図1〜図10を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術である特許文献1は、2種類の柄を組み合わせた製品を作る場合、それぞれの部品毎に加飾を行い、その部品同士を結合させることにより、製造するものである。
また、特許文献2は、第1の表皮材、第2の表皮材の連結部を挟持体にて挟持して、前記挟持体を雄型に形成した凹部にセットしてキャビティ内において、前記表皮材を保持しつつ、溶融樹脂を充填し、硬化後に離型して2種類の表皮を持つ成型品を製造する方法である。
しかしながら、特許文献1の従来技術では、部品組付の場合に、部品の柄毎にそれぞれを加飾後、その部品同士を組付しなければならず、作業効率が悪いという問題がある。
また、特許文献2の従来技術の成形による場合では、成形工程が煩雑になってしまうという問題がある。
そこで、本発明は、上記の問題を解決するフィルム加工工法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決することができる本発明の第1発明は、請求項1に記載された通りのフィルム加工工法であり、次のようなものである。
複数の部材の端部同士に所定寸法離間して間隙部を形成して、表皮材を前記複数の部材に貼着した後、近接させることによって、前記複数の部材の間隙部に位置合わせして、前記表皮材の境界部を前記間隙部に埋没させる構成である。
【0006】
上記の課題を解決することができる本発明の第2発明は、請求項2に記載された通りのフィルム加工工法であり、次のようなものである。
請求項1に記載の発明に加えて、前記複数の部材は、スライド可能に連結され、係止手段によって前記間隙部の有り、または無し状態を保持するように係止される構成である。
【0007】
上記の課題を解決することができる本発明の第3発明は、請求項3に記載された通りのフィルム加工工法であり、次のようなものである。
複数の部材の端部同士に所定寸法離間して間隙部を形成して、複数の柄を設けた表皮材の境界部を、前記複数の部材の間隙部に位置合わせして、前記表皮材を複数の部材に貼着した後、前記複数の部材同士を接近させて前記表皮材の境界部を前記間隙部に埋没させる構成である。
【0008】
上記の課題を解決することができる本発明の第4発明は、請求項4に記載された通りのフィルム加工工法であり、次のようなものである。
請求項1〜請求項3のうち、いずれか1項に記載の発明に加えて、前記表皮材は、真空圧空成形によって、前記複数の部材に貼着される構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るフィルム加工工法は、上記説明のような構成を有するので、以下に記載する効果を奏する。
(1)部材同士のきめ込みが容易にできる。
(2)2トーンの加飾部材の製造が容易にできる。
(3)表皮材の貼り付けが効率的にできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のフィルム加工工法の一実施例を示す概略断面図で、(a)はフィルム加工前の状態を示す概略断面図、(b)は部材にフィルムを貼り付けた際の概略断面図、(c)は部品にフィルムを加工した状態を示す概略断面図及び要部拡大断面図である。
【図2】従来のフィルム加工工法の一例を示す概略断面図で、(a)はフィルム加工前の状態を示す概略断面図、(b)は部材にフィルムを貼り付けた際の概略断面図、(c)はフィルム加工の完了した部品を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
複数の部材の端部同士に所定寸法離間して間隙部を形成して、表皮材を前記複数の部材に貼着した後、近接させることによって、前記複数の部材の間隙部に位置合わせして、前記表皮材の境界部を前記間隙部に埋没させたフィルム加工工法である。
【実施例1】
【0012】
図2に示すように、従来のフィルム加工工法は、先ず部材1´と部材2´にそれぞれ柄が付加された表皮材3´、3´´を真空圧空機等で貼着し(図2(a)参照)、その部材同士をネジや爪等で組み付ける(図2(b)参照)ことで2種類の柄が入った部材を製造していた。なお、完成図を図2(c)に示す。
しかしながら、上記の方法では、作業工程が煩雑であり、2種類の柄の見切り部分の一体性も劣っていた。
そこで、本発明のフィルム加工方法では、2種類の柄の付加された表皮材を1枚使用し、2部品を組み付ける方法を採用した。
【0013】
以下に、本発明の一実施例を添付図面で詳細に説明する。
図1は本発明のフィルム加工工法の一実施例を示すもので、部材1、部材2は汎用樹脂(ABS等)を射出成形によって成形したものを仮組してスライドできるように構成している。なお、それぞれの部材1、2には、スライド時の案内、及び部材の横ズレを防止するために各々の部材にガイド溝か突起部を1セット以上形成し、さらに間隙部5の有り・無しの状態を保持できるような構成を有する。
表皮材3は、アクリル、またはポリカーボネート等の厚さ約0.2〜0.5ミリ程度のフィルムに、2つの柄を付加しているものである。
フィルム加工方法の一実施例としては、部品1、部品2を仮組みし、完成時の部材の表皮材3より若干長めの2種類の柄(柄A・柄B)が付加された表皮材3を用意し、2種類の柄の境界部4が仮組みした部材の間隙部5に対応するように表皮材3の位置合わせを行う(図1(a)参照)。そして、必要に応じてヒーター等で加熱して軟化し、真空圧空機等によって加飾面を加圧・加飾面の裏面側を減圧することで、間隙部5の下方に設けられた溝6から空気が抜けて、間隙部5に対応する表皮材3が下方へ吸引される(図1(b)参照)。
そして、仮組みした部材1、2に表皮材3が貼着されると、真空圧空の作用により表皮が反表皮側に湾曲するように変形した状態(図1(b)参照)になっているので、仮組みした部材2を間隙部5を無くすように部材2をスライド(スライドするのは当然部材1の方でも良い。)することによって柄の境界部4が、間隙部5内に埋没した状態になり、係止爪によってその状態を維持でき、最後にネジや爪等で本組みすることによって、フィルムの加工が完成する。
【産業上の利用可能性】
【0014】
全ての種類の車両の部材のフィルム加工に利用することができる。
【符号の説明】
【0015】
1・・・・部材
1´・・・・部材
2・・・・部材
2´・・・・部材
3・・・・表皮材
3´・・・・表皮材
3´´・・・・表皮材
4・・・・境界部
5・・・・間隙部
6・・・・溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部材の端部同士に所定寸法離間して間隙部を形成して、表皮材を前記複数の部材に貼着した後、近接させることによって、前記複数の部材の間隙部に位置合わせして、前記表皮材の境界部を前記間隙部に埋没させたことを特徴とするフィルム加工工法。
【請求項2】
前記複数の部材は、スライド可能に連結され、係止手段によって前記間隙部の有り、または無し状態を保持するように係止されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルム加工工法。
【請求項3】
複数の部材の端部同士に所定寸法離間して間隙部を形成して、複数の柄を設けた表皮材の境界部を、前記複数の部材の間隙部に位置合わせして、前記表皮材を複数の部材に貼着した後、前記複数の部材同士を接近させて前記表皮材の境界部を前記間隙部に埋没させたことを特徴とするフィルム加工工法。
【請求項4】
前記表皮材は、真空圧空成形によって、前記複数の部材に貼着されたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のフィルム加工工法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−254546(P2012−254546A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128195(P2011−128195)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】