説明

フィードバック耐性メバロン酸キナーゼ

本発明は、フィードバック阻害に対する感受性の低い修飾メバロン酸キナーゼおよびそれをコードするポリヌクレオチドに関する。本発明はさらにこれらポリヌクレオチドを含むベクターおよびそのようなベクターを含む宿主細胞に関係する。本発明は、修飾酵素の製法およびイソプレノイド化合物の製法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィードバック阻害に対する感受性の低い修飾メバロン酸キナーゼに関する。イソプレノイド化合物の製造、メバロン酸キナーゼの活性の減少を特徴とする障害の処置、および診断目的に、本修飾酵素およびそれをコードするポリヌクレオチドを使用できる。
【0002】
メバロン酸キナーゼ(MK)は、非常に多くの細胞性イソプレノイドの産生をもたらすメバロン酸経路における必須の酵素である。メバロン酸経路の産物であるイソペンテニル二リン酸(IPP)およびその異性体化合物であるジメチルアリル二リン酸(DMAPP)は、全ての生物におけるイソプレノイドの基本構成ブロックである。イソプレノイドは、一次代謝および二次代謝の両方の23,000種を超える天然分子を含む。この天然産物のクラスが化学的に多様であることは、それらが全生体系に広範囲の生理学的役割をもつことを反映している。イソプレノイドには、例えば細菌におけるホパントリテルペン、ユビキノンおよびメナキノン;植物におけるカロテノイド、プラストキノン、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、およびクロロフィルのプレニル側鎖;ならびに哺乳動物におけるヘムA、キノン、ドリコール、ステロール/ステロイドおよびレチノイドがある。さらにイソプレノイドは、イソペンテニルtRNA、タンパク質のプレニル化、および例えばヘッジホッグクラスの細胞シグナル伝達タンパク質のコレステロール修飾に関与している。
【0003】
MK酵素は、多様な生物において生化学レベルおよび分子レベルの両方でキャラクタライズされた(Houtenら、Biochim. Biophys. Acta 1529, 19-32, 2000)。現在すでに多くのメバロン酸キナーゼのDNAおよびアミノ酸配列が公知であり(例えばSwiss-Protアクセッション番号/ID P07277/kime_yeast; Q9ROO8/kime_mouse; P17256/kime_rat; Q03426/kime_human; P46086/kime_arath; Q09780/kime_schpo; Q9V187/kime_pyrab; 059291/kime_pyrho; Q8UOF3/kime_pyrfu; Q50559/kime_metth; 027995/kime_arcfu; Q58487/kime_metja; Q9Y946/kime_aerpe)、毎月公知のメバロン酸キナーゼ配列のリストに新しい記入が加わりうる。ゲノムシーケンシングプロジェクトから得られた上記の配列は、公知のメバロン酸キナーゼとの配列類似性に基づいて推定上のメバロン酸キナーゼの機能を割り当てられた。しかし、当業者にはこれらの配列が実際にメバロン酸キナーゼ活性を有するタンパク質をコードすることを証明するのは簡単である。
【0004】
調節に関して、HMG−CoAレダクターゼはメバロン酸経路における律速酵素であると広くみなされている(例えばGoldsteinおよびBrown、Nature 343, 425-430, 1990; Weinberger、Trends Endocrinol. Metab. 7, 1-6, 1996; Hamptonら、Trends Biochem. Sci. 21, 140-145, 1996; Houtenら、J. Biol. Chem. 278, 5736-5743, 2003)。この考えに一致して、培地へのメバロネートの補充は、ファフィア・ロドチマ(Phaffia rhodozyma)(Caloら、Biotechnol. Lett.17, 575-578, 1995)およびヘマトコッカス・プルバリス(Haematococcus pluvialis)(Kobayashiら、J. Ferment. Bioeng. 71, 335-339, 1991)の両方でカロテノイド産生を刺激することが示された。しかし、増え続ける近年の証拠は、メバロン酸キナーゼが、例えば下流の産物であるゲラニル二リン酸、ファルネシル二リン酸およびゲラニルゲラニル二リン酸によるフィードバック阻害を受けることを示している。このフィードバック阻害は、メバロン酸経路、よって一般にイソプレノイド生合成の調節および律速にも寄与している可能性がある。
【0005】
ヒトでは、ヒト遺伝性障害であるメバロン酸尿症および高免疫グロブリン血症Dおよび周期熱症候群の生化学的原因および分子的原因としてメバロン酸キナーゼの欠乏が同定されたことによって、メバロン酸キナーゼの重要性が実証された(Houtenら、2000; Nwokoroら、Mol. Genet. Metab. 74, 105-119, 2001)。これらの障害の病態生理はまだ分からないが、急性期応答および発熱に関するメバロン酸キナーゼおよびイソプレノイド生合成のインビボでの役割に関する知識を最終的に与えるであろう。メバロン酸キナーゼの欠乏は、例えばツェルヴェーガー症候群および肢根型点状骨端異形成にも関与していると思われる。肢根型点状骨端異形成は、メバロン酸キナーゼなどのペルオキシソーム酵素のサブセットがペルオキシソームに輸送されない、ペルオキシソームの生体発生の障害である(KelleyおよびHerman、Annu. Rev. Genomics Hum. Genet. 2, 299-341, 2001)。最終的にメバロン酸キナーゼは、細胞増殖、細胞周期の調節および/または細胞の形質転換に役割を果たすと提案された(Graefら、Virology 208, 696-703, 1995; Hinsonら、J. Biol. Chem. 272, 26756-26760, 1997を参照されたい)。
【0006】
これまでに研究された全てのメバロン酸キナーゼは、経路下流の産物によってフィードバック阻害される。例えばファルネシルピロリン酸またはゲラニルゲラニルピロリン酸によるフィードバック阻害に耐性であるとこれまでに記載されたメバロン酸キナーゼは、存在しない。フィードバック耐性メバロン酸キナーゼ酵素は、例えば(1)全ての種類のイソプレノイド化合物(例えばカロテノイド、コエンザイムQ10、ビタミンD、ステロールなど)のバイオテクノロジーによる製造に、(2)例えば生体液中のメバロネート濃度の酵素測定のための診断用酵素として、または(3)メバロン酸尿症を有する患者におけるメバロネート濃度を低下させるための治療用酵素として、産業上の潜在能力を有しうる。フィードバック耐性MKは、メバロン酸経路を通過するさらに大きな流れ、よってさらに高いイソプレノイドの生産性を可能にしうることから、バイオテクノロジーによるイソプレノイドの製造に特に適している。
【0007】
本明細書において使用する「メバロン酸キナーゼ」という用語は、メバロネート(メバロン酸)から5−ホスホメバロネート(5−ホスホメバロン酸)への、またはメバロン酸アナログ(例えばWildeおよびEggerer, Eur. J. Biochem. 221, 463-473, 1994に記載されたような)から対応するリン酸化化合物へのリン酸化を触媒可能な任意の酵素を意味する。メバロネート(またはメバロン酸アナログ)をリン酸化できるためには、酵素は追加的に適切なリン酸供与体を必要とする。メバロン酸キナーゼのリン酸供与体として、種々の化合物が考えられる。最も好ましいリン酸供与体は、ATP(アデノシン5′−三リン酸)である。他の好ましいリン酸供与体は、TTP、ITP、GTP、UTP、またはCTPである(Gibsonら、Enzyme 41, 47-55, 1989を参照されたい)。「メバロン酸キナーゼ」は、アミノ酸配列が配列番号1〜14に示される1個または複数の酵素と同一でありうる。「同一」は、配列番号1〜14および30に示されるとおりの1個または複数のアミノ酸配列と、少なくとも約60%同一、好ましくは約70%同一、さらに好ましくは少なくとも約80%同一、一層さらに好ましくは少なくとも約90%同一、最も好ましくは少なくとも約95%同一であるメバロン酸キナーゼを指す。
【0008】
当技術分野において公知である「一致率(%)」という用語は、場合によってはポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列の列の間の一致によって決定される、そのような配列の間の近縁性の度合いを意味する。公知の方法によって、例えばプログラムGAP(GCG Wisconsin Package、バージョン10.2、Accelrys Inc.、9685 Scranton Road、サンディエゴ、CA92121-3752、米国)で以下のパラメーターを用いて「一致率」を容易に決定できる:ギャップ作成ペナルティ8、ギャップ伸長ペナルティ2(デフォルトのパラメーター)。
【0009】
「野生型酵素」または「野生型メバロン酸キナーゼ」は、本発明により(さらに多数の)フィードバック耐性突然変異体を設計するための出発点として使用される、配列番号1〜14および30の任意の一つと同一の任意のメバロン酸キナーゼを意味する。本来この定義は、そのような「野生型酵素」または「野生型メバロン酸キナーゼ」がメバロン酸経路下流の産物の、例えばFPPまたはGGPPの生理学的または工業的に関連性のある濃度に対する阻害に感受性であることを意味している。本発明に関する「野生型」は、天然からだけ得られるメバロン酸キナーゼ/メバロン酸キナーゼの配列のみに本発明の範囲を限定するわけではない。合成メバロン酸キナーゼの変異体が本発明の教示のいずれかにより(さらに)フィードバック耐性にされうるのであれば、それらの変異体(配列番号1〜14および30の任意の一つに同一である限り)も「野生型」と称されることをここで明確に述べる。「野生型メバロン酸キナーゼ」および「非修飾メバロン酸キナーゼ」という用語は、本明細書において同義的に使用される。
【0010】
「突然変異体」、「突然変異酵素」、または「突然変異メバロン酸キナーゼ」は、本発明の教示により所定の(上記の定義による)野生型酵素/メバロン酸キナーゼから得ることができる、それぞれの野生型酵素よりも(さらに)フィードバック耐性である任意の変異体を意味する。本発明の範囲には、突然変異体がどのように得られるかは関係ない。例えば部位特異的突然変異誘発、飽和突然変異誘発、ランダム突然変異誘発/定方向進化、細胞/生物全体の化学的またはUV突然変異誘発などによってそのような突然変異体を得られる。例えば合成遺伝子の設計によりおよび/またはインビトロ(無細胞)翻訳によりこれらの突然変異体を調製できる(例えばJermutusら、Curr. Opin. Biotechnol. 9, 534-548, 1998; Betton、Curr. Prot. Pept. Sci. 4,73-80, 2003; Martinら、Biotechniques 31, 948-, 2001を参照されたい)。フィードバック耐性を試験するために、当業者に公知の方法によって(例えば部位特異的突然変異誘発または合成遺伝子の設計による)突然変異体を発生できる。
【0011】
本特許出願に関連して「イソプレノイド」は、天然または非天然経路(すなわち天然に存在せず、バイオテクノロジーにより設計された経路)のどちらか、好ましくは生化学経路によりメバロネートから得られる任意のおよび全ての代謝物およびプレニル化高分子を含む。イソプレノイドには、細菌におけるホパントリテルペン、ユビキノンおよびメナキノン;植物におけるカロテノイド、プラストキノン、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、およびクロロフィルのプレニル側鎖;ならびにヘムA、キノン、コエンザイムQ10、ドリコール、ステロール/ステロイド、ビタミンD、レチノイドなどがあるが、それらに限定されるわけではない。
【0012】
触媒性質が非修飾メバロン酸キナーゼよりも好都合である(すなわちフィードバック阻害に対する感受性がより低い)ように修飾されたメバロン酸キナーゼを提供することは、一般に本発明の目的である。
【0013】
本発明は、対応する非修飾メバロン酸キナーゼに比べて低減したフィードバック阻害に対する感受性を示す修飾メバロン酸キナーゼに関し、
(i)修飾メバロン酸キナーゼのアミノ酸配列は、対応する非修飾メバロン酸キナーゼのアミノ酸配列と比べた場合に、少なくとも1個の突然変異を含み、かつ
(ii)その少なくとも1個の突然変異は、配列番号1に示すとおりのパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス(Paracoccus zeaxanthinifaciens)のメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列の位置17、47、93、94、132、167、169、204、および266に対応するアミノ酸位置からなる群より選択される1個または複数のアミノ酸位置に存在する。
【0014】
本明細書に使用する「フィードバック阻害」という用語は、イソプレノイド生合成におけるメバロネート下流の代謝物によるメバロン酸キナーゼの酵素活性の阻害を意味する。イソプレノイド生合成におけるメバロネート下流の代謝物には、5−ホスホメバロネート、イソペンテニル二リン酸(IPP)、3,3−ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)、ゲラニル二リン酸(GPP)、ファルネシル二リン酸(FPP)、ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)、ファルネソール、ドリコールリン酸、およびフィチルピロリン酸があるが、それらに限定されるわけではない(DorseyおよびPorter、J. Biol. Chem. 243, 4667-4670, 1968; Flint、Biochem. J. 120, 145-150, 1970; GrayおよびKekwick、Biochim. Biophys. Acta 279, 290-296, 1972; Hinsonら、J. Lipid Res. 38, 2216-2223, 1997)。メバロン酸キナーゼのフィードバック阻害は、イソプレノイド生合成におけるメバロネート下流の代謝物が酵素に結合することによるメバロン酸キナーゼのアロステリック調節に基づくと考えられている。
【0015】
好ましくはフィードバック阻害は、ファルネシル二リン酸(FPP)またはゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)によるフィードバック阻害である。
【0016】
本発明によれば修飾メバロン酸キナーゼは、フィードバック阻害に対して、対応する非修飾メバロン酸キナーゼに比べて低減している感受性を示す。好ましくは、本発明の修飾メバロン酸キナーゼのフィードバック阻害に対する感受性は、対応する非修飾メバロン酸キナーゼに比べて(フィードバック耐性の測定および定量については下記を参照されたい)少なくとも5%低減している。
【0017】
「フィードバック耐性」は、(上に定義するような)「フィードバック阻害」に対する耐性の任意の増加を意味する。当業者に公知の種々の方法でフィードバック耐性を分析できる。適切なアプローチをここに簡潔に説明する:不飽和濃度のATP(または別のリン酸供与体)およびメバロネート(またはメバロン酸アナログ)で、すなわち反応速度がATP(またはリン酸供与体)およびメバロネート(またはメバロン酸アナログ)の濃度の変化に感受性であるこれらの基質の濃度付近で、例えばこれらの基質に対する検討中の酵素のそれぞれのK値付近の濃度で、実施例2に記載したアッセイに類似した活性アッセイでメバロン酸キナーゼ活性を測定する。適切な濃度のフィードバック阻害剤、すなわち野生型メバロン酸キナーゼの有意な阻害を提供する濃度のフィードバック阻害剤の非存在下および存在下の両方で、他の点では同一の状態で、野生型メバロン酸キナーゼの活性およびこの酵素の変異体/突然変異体の活性の両方を測定する。フィードバック阻害剤による阻害の程度(例えば阻害率%)が野生型酵素よりも突然変異体の方が低いならば、突然変異体は本特許出願に関連して「フィードバック耐性」である。いったん「フィードバック耐性」変異体/突然変異体が同定されると、さらに改良された突然変異体、すなわちさらに一層フィードバック耐性である突然変異体を同定するために上記と同じ手順を適用できる。フィードバック耐性(%)は以下のように計算される:aおよびbがそれぞれフィードバック阻害剤(例えばFPP)の非存在下および存在下で野生型酵素から測定されたメバロン酸キナーゼ活性であり、cおよびdがそれぞれ同じフィードバック阻害剤の非存在下および存在下で突然変異酵素から測定されたメバロン酸キナーゼ活性であるならば、フィードバック耐性(%)は:
耐性(%)=100・((d/c)−(b/a))/(1−(b/a))
である。
【0018】
好ましくはフィードバック耐性は、本出願の実施例2に記載された実験条件を参照する。およそ3〜30mU/ml(パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのメバロン酸キナーゼおよそ1〜10μg/mlに対応)、好ましくはおよそ10〜20mU/mlのメバロン酸キナーゼ活性、および場合により46μMのFPPがアッセイ混合物に存在し、反応は30℃で実施された。
【0019】
本発明の修飾メバロン酸キナーゼは、対応する非修飾メバロン酸キナーゼに比べた場合に、少なくとも5%、好ましくは少なくとも約10%、さらに好ましくは少なくとも約25%、一層さらに好ましくは少なくとも約40%、なおさらに好ましくは少なくとも約60%、最も好ましくは少なくとも約70%のフィードバック耐性を示す。
【0020】
本発明の修飾メバロン酸キナーゼのアミノ酸配列は、対応する非修飾メバロン酸キナーゼのアミノ酸配列と比べた場合に少なくとも1個の突然変異を含む。この突然変異は、付加、欠失および/または置換でありうる。好ましくは突然変異は、非修飾メバロン酸キナーゼのアミノ酸配列に存在する所定のアミノ酸が、本発明の修飾メバロン酸キナーゼのアミノ酸配列における別のアミノ酸に交換されるアミノ酸置換である。修飾メバロン酸キナーゼのアミノ酸配列は、対応する非修飾メバロン酸キナーゼのアミノ酸配列と比べた場合に少なくとも1個のアミノ酸置換を含んでいてもよい。さらなる態様において、修飾メバロン酸キナーゼは、対応する非修飾メバロン酸キナーゼのアミノ酸配列と比べた場合に、少なくとも二個、少なくとも三個、少なくとも四個、または少なくとも五個の置換を含む。本発明の他の態様において、修飾メバロン酸キナーゼは、対応する非修飾メバロン酸キナーゼのアミノ酸配列と比べた場合に1から10個、1から7個、1から5個、1から4個、2から10個、2から7個、2から5個、2から4個、3から10個、3から7個、3から5個、または3から4個のアミノ酸置換を含む。
【0021】
1個または複数の突然変異は、配列番号1に示すパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列の位置17、47、93、94、132、167、169、204、および266に対応するアミノ酸位置からなる群より選択される1個または複数のアミノ酸位置に存在してもよい。
【0022】
好ましくは少なくとも1個の突然変異は、配列番号1に示すパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列の位置17、47、93、94、132、167、および266に対応するアミノ酸位置からなる群より選択される1個または複数のアミノ酸位置に存在する。別の好ましい態様において、少なくとも1個の突然変異は、配列番号1に示すパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列の位置17、47、93、94、132、167、および169に対応するアミノ酸位置からなる群より選択される1個または複数のアミノ酸位置に存在する。
【0023】
対応する非修飾メバロン酸キナーゼに比べた場合に、修飾メバロン酸キナーゼが単一のアミノ酸置換しか含まない場合、その単一のアミノ酸置換は、配列番号1のアミノ酸位置17、47、93、94、204、および266に対応する位置からなる群より選択される一つの位置に存在することが好ましい。さらに好ましくは、置換はI17T、G47D、K93E、V94I、R204H、またはC266Sである。
【0024】
特に好ましい態様において、突然変異は、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸位置17に対応するアミノ酸位置に影響する置換である。非修飾メバロン酸キナーゼに存在するそのアミノ酸は、好ましくはイソロイシンである。非修飾メバロン酸キナーゼの配列におけるそのアミノ酸を、トレオニンまたはアラニンに取り替えることができる。最も好ましくは、配列番号1に示す配列の位置17に対応するアミノ酸位置での置換が、イソロイシンからトレオニンへの交換からなる。
【0025】
対応する非修飾メバロン酸キナーゼに比べた場合に、修飾メバロン酸キナーゼが少なくとも2個の突然変異を含む場合、突然変異の1個は、配列番号1の位置375に対応するアミノ酸位置に存在しうる。対応する非修飾メバロン酸キナーゼと比べた場合に、修飾メバロン酸キナーゼが2個のアミノ酸置換を含む場合、アミノ酸置換は配列番号1の位置132/375、167/169、17/47、または17/93の組み合わせに対応する位置に存在することが好ましい。組み合わせP132A/P375R、R167W/K169Q、I17T/G47D、またはI17T/K93Eが最も好ましい。
【0026】
対応する非修飾メバロン酸キナーゼに比べた場合に、修飾メバロン酸キナーゼが3個のアミノ酸置換を含む場合、アミノ酸置換は、配列番号1の位置17/167/169、17/132/375、93/132/375、または17/47/93の組み合わせに対応する位置に存在することが好ましい。最も好ましくは、組み合わせI17T/R167W/K169Q、I17T/P132A/P375R、K93E/P132A/P375R、I17T/R167W/K169H、I17T/R167T/K169M、I17T/R167T/K169Y、I17T/R167F/K169Q、I17T/R167I/K169N、I17T/R167H/K169Y、I17T/G47D/K93E、またはI17T/G47D/K93Qである。
【0027】
対応する非修飾メバロン酸キナーゼに比べた場合に、修飾メバロン酸キナーゼが4個のアミノ酸置換を含む場合、アミノ酸置換は、配列番号1の位置17/47/93/132の組み合わせに対応する位置に存在することが好ましい。組み合わせI17T/G47D/K93E/P132A、またはI17T/G47D/K93E/P132Sが最も好ましい。
【0028】
表1、2、3または4(下記参照)に開示された突然変異の組み合わせが最も好ましい。これらの例で同定されたアミノ酸位置を異なる起源のメバロン酸キナーゼに移してもよい。
【0029】
対応する非修飾メバロン酸キナーゼに突然変異を導入することによって、本発明の修飾メバロン酸キナーゼを入手できる。非修飾メバロン酸キナーゼは、フィードバック阻害に感受性を示す任意のメバロン酸キナーゼであってもよい。非修飾メバロン酸キナーゼには、自然から得ることが可能なメバロン酸キナーゼがあるが、それらに限定されるわけではない。非修飾メバロン酸キナーゼにはさらに、配列番号1から14および30に示すとおりの任意の一つのアミノ酸配列に同一なメバロン酸キナーゼがある。
【0030】
好ましい非修飾メバロン酸キナーゼには、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14および配列番号30に示すアミノ酸配列からなる群より選択される配列を有するものがある。
【0031】
非修飾メバロン酸キナーゼは、真核または原核生物、好ましくは真菌または細菌起源、さらに好ましくはアスペルギルス(Aspergillus)またはサッカロミセス(Saccharomyces)またはパラコッカスまたはファフィア(Phaffia)、最も好ましくは黒色こうじ菌(Aspergillus niger)またはサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)またはパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスまたはファフィア・ロドチマ(Phaffia rhodozyma)起源でありうる。一態様において、非修飾メバロン酸キナーゼは原核生物、好ましくは細菌起源、さらに好ましくはパラコッカス、最も好ましくはパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス起源である。
【0032】
好ましくはFPPによる非修飾メバロン酸キナーゼのフィードバック阻害は、実施例2に記載されたアッセイ(0または46μMのFPP)で決定されるとき、少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも20%、もっとさらに好ましくは少なくとも30%、なおさらに好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%である。
【0033】
本発明の修飾メバロン酸キナーゼは、好ましくはそのN末端またはC末端に外来アミノ酸を含みうる。「外来アミノ酸」は、天然(自然に存在する)メバロン酸キナーゼに存在しないアミノ酸、好ましくは天然メバロン酸キナーゼに存在しない少なくとも約3個、少なくとも約5個、または少なくとも約7個の隣接アミノ酸のストレッチを意味する。外来アミノ酸の好ましいストレッチには、組換え製造された修飾メバロン酸キナーゼの精製を容易にする「タグ」があるが、それらに限定されるわけではない。そのようなタグの例には、「His6」タグ、FLAGタグ、mycタグなどがあるが、それらに限定されるわけではない。
【0034】
別の態様において、対応する非修飾メバロン酸キナーゼのアミノ酸配列と比べた場合に、修飾メバロン酸キナーゼは、1個または複数、例えば2個の欠失を含んでもよい。好ましくは欠失は、対応する非修飾メバロン酸キナーゼのNまたはC末端アミノ酸に影響し、酵素の機能的性質、例えば比活性を有意に低減しない。
【0035】
本発明の修飾メバロン酸キナーゼは、通常は非天然メバロン酸キナーゼである。好ましくは、修飾メバロン酸キナーゼの比活性は、対応する非修飾メバロン酸キナーゼの比活性の少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも20%、もっとさらに好ましくは少なくとも35%、なおさらに好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%である。
【0036】
本発明の修飾メバロン酸キナーゼは、単離されたポリペプチドであってもよい。本明細書に使用する「単離されたポリペプチド」という用語は、他のポリペプチドを実質的に含まないポリペプチドを指す。単離されたポリペプチドは、好ましくは純度80%超、好ましくは純度90%超、さらに好ましくは純度95%超、最も好ましくは純度99%超である。当技術分野において公知の方法によって、例えばSDS−PAGEおよびその後のタンパク質染色によって、純度を決定できる。次に、デンシトメトリーでタンパク質のバンドを定量できる。純度を決定するための追加の方法は、当技術分野のレベル内に入る。
【0037】
本発明はさらに、本発明による修飾メバロン酸キナーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドに関する。本明細書に使用される「ポリヌクレオチド」は、未修飾RNAもしくはDNA、または修飾RNAもしくはDNAでありうるポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを指す。ポリヌクレオチドには、一本鎖および二本鎖DNA;一本鎖領域と二本鎖領域との混合であるDNA;一本鎖および二本鎖RNA;ならびに一本鎖領域と二本鎖領域との混合であるRNA;一本鎖でありうるか、またはより典型的には二本鎖でありうるか、または一本鎖領域と二本鎖領域との混合でありうる、DNAおよびRNAを含むハイブリッド分子があるが、それらに限定されるわけではない。「ポリヌクレオチド」という用語は、1個もしくは複数の異常な塩基、例えばイノシン、または1個もしくは複数の修飾塩基、例えばトリチル化塩基を有するDNAまたはRNAを含む。
【0038】
本発明のポリヌクレオチドは、非修飾メバロン酸キナーゼをコードするポリヌクレオチド配列を修飾することによって容易に得られる。非修飾メバロン酸キナーゼをコードするそのようなポリヌクレオチド配列の例を、配列番号16〜29および31に示す。非修飾メバロン酸キナーゼをコードするヌクレオチド配列に突然変異、例えば付加、欠失および/または置換を導入するための方法には、部位特異的突然変異誘発およびPCRに基づく方法があるが、それらに限定されるわけではない。
【0039】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法の原理は、例えばWhiteら、Trends Genet. 5, 185-189, 1989に概説され、改良法は例えばInnisら[PCR Protocols: A guide to Methods and Applications, Academic Press, Inc.(1990)]に解説されている。
【0040】
当技術分野において公知のメバロン酸キナーゼをコードするゲノム配列またはcDNA配列[配列情報については、例えば関連する配列データベース、例えばGenbank(Intelligenetics、カリフォルニア州、米国)、European Bioinformatics Institute(Hinston Hall、ケンブリッジ、英国)、NBRF(ジョージタウン大学医療センター、ワシントンDC、米国)およびVecbase(ウィスコンシン大学、バイオテクノロジーセンター、マディソン、ウィスコンシン、米国)または図および配列リストに開示されている配列情報を参照されたい]から開始して、インビトロ突然変異誘発法[例えばSambrookら、Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨークを参照されたい]によって本発明のDNA配列を構築できる。もともとHutchisonおよびEdgell(J. Virol. 8, 181-189, 1971)によって概説されたそのような「部位特異的突然変異誘発」のための広く使用されている戦略は、突然変異を導入すべき一本鎖DNA配列の標的領域との、所望のヌクレオチド置換を保有する合成オリゴヌクレオチドのアニーリングを伴う(総説についてはSmith、Annu. Rev. Genet. 19, 423-462, 1985を;改良法についてはStanssenら、Nucl. Acids Res. 17, 4441-4454, 1989の参考文献2〜6を参照されたい)。本発明の実施にまた好ましい、所定のDNA配列を突然変異させる別の可能性は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用することによる突然変異誘発である。当技術分野において公知であり、例えばSambrookら(Molecular Cloning)に解説されている方法によって、それぞれの株/生物から出発物質としてのDNAを単離できる。しかし、公知のDNA配列に基づいても、例えば当技術分野で公知の方法による合成遺伝子の構築によっても(例えばEP747483およびLehmannら、Prot. Eng. 13, 49-57, 2000に記載されているように)、本発明により構築/突然変異誘発されるべきメバロン酸キナーゼをコードするDNAを調製できることが理解されている。
【0041】
本発明による修飾メバロン酸キナーゼをコードするポリヌクレオチドの非限定的な例を配列番号32および33に示す。
【0042】
本発明のポリヌクレオチドは、単離されたポリヌクレオチドでありうる。「単離されたポリヌクレオチド」という用語は、他の染色体ならびに染色体外DNAおよびRNAを非限定的に例とする他の核酸配列を実質的に含まないポリヌクレオチドを意味する。単離されたポリヌクレオチドを得るために、当業者に公知の通常の核酸精製法を使用できる。本用語は、組換えポリヌクレオチドおよび化学合成されたポリヌクレオチドも包含する。
【0043】
なお別の態様において本発明は、本発明によるポリヌクレオチドを含むベクターまたはプラスミドに関する。ベクターまたはプラスミドは、好ましくは少なくとも一つのマーカー遺伝子を含む。ベクターまたはプラスミドは、本発明のポリヌクレオチドに作動可能に連結した調節エレメントをさらに含んでもよい。本明細書に使用する「作動可能に連結した」という用語は、一方の機能が他方に影響されるように単一核酸断片に核酸配列を結合させることを指す。例えば、プロモーターがコード配列の発現に影響できる場合に、すなわちコード配列がプロモーターの転写制御下にある場合に、そのプロモーターはそのコード配列と作動可能に連結している。コード配列は、センスまたはアンチセンス方向に調節配列と作動可能に連結しうる。「発現」という用語は、mRNAへのDNA配列の転写および/またはアミノ酸配列へのmRNAの翻訳を意味する。「過剰発現」という用語は、対応する非修飾生物における産生のレベルを超えた、修飾生物(例えば形質転換またはトランスフェクションによって修飾された)における遺伝子産物の産生を意味する。
【0044】
いったん本発明の完全DNA配列が得られたなら、コードされたポリペプチドを適切な宿主系に(過剰)発現させるための当技術分野で公知であり、例えばSambrookら(刊行年なし)に記載された方法によって、それらのDNA配列をベクターに組み込むことができる。しかし当業者は、コードされるポリペプチドの(過剰)発現を得るために本発明の適切な宿主系を形質転換するためにDNA配列自体も使用できることを分かっている。適切な宿主系は、例えばアスペルギルス、例えば黒色こうじ菌もしくは米こうじ菌(Aspergillus oryzae)、またはトリコデルマ(Trichoderma)、例えばトリコデルマ・レーセイ(Trichoderma reesei)などの真菌、あるいはサッカロミセス(Saccaromyces)、例えばサッカロミセス・セレビジエ(Saccaromyces cerevisiae)またはピチア・パストリス(Pichia pastoris)のようなピチア(Pichia)、またはハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、例えばH.ポリモルファ(DSM5215)のような酵母である。当業者は、寄託機関、例えばAmerican Type Culture Collection(ATCC)、Centraalbureau voor Schimmelcultures(CBS)もしくはDeutsche Sammlung fur Mikroorganismen and Zellkulturen GmbH(DSMZ)、または雑誌「Industrial Property」(vol. 1, pages 29-40, 1991)もしくはOfficial Journal of the European Patent Office(vol. 4, pages 155/156, 2003)に挙げられているような他の任意の寄託機関から、そのような微生物を入手できることを知っている。使用できる細菌は、例えばパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスなどの例えばパラコッカス(Paracoccus)、大腸菌(E. coli)、例えば枯草菌(Bacillus subtilis)などのバチルス(Bacillus)、または例えばストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)などのストレプトマイセス(Streptomyces)である(例えばAnneおよびvan Mellaert in FEMS Microbiol. Lett. 114, 121-128, 1993を参照されたい)。使用できる大腸菌は、例えば大腸菌K12株、例えばM15(Villarejoら、J. Bacteriol. 120, 466-474,1974ではDZ291と記載されている)、HB101(ATCC番号33694)または大腸菌SG13009(Gottesmanら、J. Bacteriol. 148, 265-273, 1981)である。
【0045】
真菌に発現させるために使用できるベクターは、当技術分野において公知であり、例えばEP420358に、またはCullenら(Bio/Technology 5, 369-376, 1987)、Ward(Molecular Industrial Mycology, Systems and Applications for Filamentous Fungi, Marcel Dekker、ニューヨーク、1991)、Upshallら(Bio/Technology 5, 1301-1304, 1987)、Gwynneら(Bio/Technology 5, 71-79, 1987)、またはPuntら(J. Biotechnol. 17, 19-34, 1991)によって記載され、酵母についてはSreekrishnaら(J. Basic Microbiol. 28, 265-278, 1988; Biochemistry 28, 4117-4125, 1989)、Hitzemannら(Nature 293, 717-722,1981)によって、またはEP183070、EP183071、EP248227、EP263311に記載されている。大腸菌に発現させるために使用できる適切なベクターは、例えばSambrookら[刊行年なし]によって、またはFiersら、Proc. 8th Int. Biotechnol. Symp. [Soc. Franc. de Microbiol., Paris(Durandら編), pp. 680-697, 1988]、Bujardら(Meth. Enzymol., WuおよびGrossmann編、Academic Press, Inc., Vol. 155, 416-433, 1987)、もしくはStuberら(Immunological Methods、LefkovitsおよびPernis編、Academic Press, Inc., Vol. IV, 121-152, 1990)によって言及されている。バチルスでの発現に使用できるベクターは、当技術分野において公知であり、例えばEP207459またはEP405370に、YansuraおよびHenner(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81, 439-443 (1984))によって、またはHenner、Le GriceおよびNagarajan(Meth. Enzymol. 185, 199-228, 1990)によって記載されている。H.ポリモルファの発現に使用できるベクターは、当技術分野において公知であり、例えばGellissenら、Biotechnology 9, 291-295, 1991に記載されている。
【0046】
そのようなベクターの各々がすでに調節エレメント、例えばプロモーターを有するか、またはそのようなエレメントを含むように本発明のDNA配列を設計できるかのどちらかである。使用できる適切なプロモーターエレメントは、当技術分野で公知であり、例えばトリコデルマ・レーセイについてはcbh1プロモーター(Haarkiら、Biotechnology 7, 596-600,1989)またはpkilプロモーター(Schindlerら、Gene 130, 271-275,1993)、米こうじ菌についてはamyプロモーター[Christensenら、Abstr. 19th Lunteren Lectures on Molecular Genetics F23 (1987); Christensenら、Biotechnology 6,1419-1422,1988; Tadaら、Mol. Gen. Genet. 229, 301-306,1991]、黒色こうじ菌についてはglaAプロモーター(Cullenら、Bio/Technology 5, 369-376, 1987; Gwynneら、Bio/Technology 5, 713-719,1987; Ward「Molecular Industrial Mycology, Systems and Applications for Filamentous Fungi」Marcel Dekker, New York, 83-106,1991)、alcAプロモーター(Gwynneら、Bio/Technology 5, 718-719,1987)、suc1プロモーター(Boddyら、Curr. Genet. 24, 60-66, 1993)、aphAプロモーター(MacRaeら、Gene 71, 339-348, 1988; MacRaeら、Gene 132, 193-198, 1993)、tpiAプロモーター(McKnightら、Cell 46, 143-147, 1986; Upshallら、Bio/Technology 5,1301-1304,1987)、gpdAプロモーター(Puntら、Gene 69, 49-57,1988; Puntら、J. Biotechnol. 17,19-37,1991)およびpkiAプロモーター(de Graaffら、Curr. Genet. 22, 21-27,1992)である。酵母における発現に使用できる適切なプロモーターエレメントは、当技術分野において公知であり、例えばサッカロミセス・セレビジエに発現させるためのpho5プロモーター(Vogelら、 Mol. Cell. Biol. 9, 2050-2057, 1989; RudolfおよびHinnen, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84, 1340-1344, 1987)またはgapプロモーター、および例えばピチア・パストリスのためのaoxlプロモーター(Koutzら、Yeast 5, 167-177, 1989; Sreekrishnaら、J. Basic Microbiol. 28, 265-278, 1988)、またはH.ポリモルファについてのFMDプロモーター(Hollenbergら、EPA第0299108号)もしくはMOXプロモーター(Ledeboerら、Nucleic Acids Res. 13, 3063-3082, 1985)である。
【0047】
細菌に発現させるための適切なプロモーターおよびベクターには、例えばGiacominiら(Gene 144,17-24, 1994)によって記載された合成プロモーターがある。適切なプラスミドによるか、またはメバロン酸キナーゼをコードするDNA配列の染色体DNAへの組み込みを介するかのどちらかで、請求項に記載された(突然変異)メバロン酸キナーゼを細菌に発現させるための適切な教示を、多数の箇所、例えば米国特許第6322995号から見出すことができる。
【0048】
本発明はさらに、本発明のベクターまたはプラスミドを含む宿主細胞に関する。適切な宿主細胞は、真核または原核細胞でありうる。適切な宿主細胞の例には、連鎖球菌、ブドウ球菌、腸球菌、大腸菌、ストレプトマイセス、シアノバクテリア、枯草菌、および肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の細胞などの細菌細胞;酵母であるクルイベロミセス(Kluyveromyces)、サッカロミセス、担子菌類であるカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)およびアスペルギルスの細胞などの真菌細胞;ショウジョウバエ(Drosophila)S2およびスポドプテラ(Spodoptera)Sf9の細胞などの昆虫細胞;CHO、COS、HeLa、3T3、BHK、293、CV−1などの動物細胞;ならびに裸子植物または被子植物の細胞などの植物細胞があるが、それらに限定されるわけではない。
【0049】
したがって、好ましくは細菌、真菌、酵母または植物宿主に本発明のポリヌクレオチドを発現させるための、前記ポリヌクレオチドを含むベクターおよびそのような形質転換された細菌、または真菌、酵母もしくは植物宿主も本発明の目的である。
【0050】
本発明は、以下を含むイソプレノイド化合物の製造法に関する:
(a)宿主細胞における修飾メバロン酸キナーゼの発現を可能にする条件で適切な培地中で本発明の宿主細胞を培養すること;および
(b)場合により培地からイソプレノイド化合物を分離すること。
【0051】
そのような方法は、任意の種類のイソプレノイド化合物またはイソプレノイド由来化合物:例えばフィトエン、リコペン、α−、β−およびγ−カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン、β−クリプトキサンチン、アドニキサンチン(adonixanthin)、エキネノン、カンタキサンチン、アスタキサンチン、およびそれらの誘導体を例とするが、それらに限定されるわけではないカロテノイド(Misawa & Shimada, J. Biotechnol. 59,169-181,1998; Miuraら、AppL Environ. Microbiol. 64, 1226-1229, 1998; Hirschberg, Curr. Opin. Biotechnol. 10, 186-191, 1999; Margalith, Appl. Microbiol. Biotechnol. 51, 431-438,1999; Schmidt-Dannert, Curr. Opin. Biotechnol.11, 255-261, 2000; Sandmann, Arch. Biochem. Biophys. 385, 4-12, 2001; Lee & Schmidt-Dannert, Appl. Microbiol. Biotechnol. 60, 1-11, 2002);ユビキノン(=コエンザイムQ)、メナキノン、プラストキノンおよびアントラキノン、好ましくはコエンザイムQ6、コエンザイムQ7、コエンザイムQ8、コエンザイムQ9、コエンザイムQ10またはコエンザイムQ11、最も好ましくはコエンザイムQ10を例とするがそれらに限定されるわけではないキノン(Clarke, Protoplasma 213, 134-147, 2000; Hanら、Plant Cell Tissue Organ Culture 67, 201-220, 2001; Kawamukai, J. Biosci. Bioeng. 94, 511-517, 2002);ゴムおよびゴム誘導体、好ましくは天然ゴム(=シス−1,4−ポリイソプレン;Mooibroek & Cornish, Appl. Microbiol. Biotechnol. 53, 355-365, 2000);エルゴステロール、コレステロール、ヒドロコルチゾンを例とするがそれらに限定されるわけではないステロールおよびステロール誘導体(Menard Szczebaraら、Nature Biotechnol. 21, 143-149,2003)、ビタミンD、25−ヒドロキシ−ビタミンD3、食物フィトステロール(Ling & Jones, Life Sci. 57,195-206,1995)および天然界面活性剤(Holmberg, Curr. Opin. Colloid. Interface Sci. 6, 148-159, 2001);ならびにモノテルペン、ジテルペン、セスキテルペンおよびトリテルペン、例えばタキソールを例とするがそれらに限定されるわけではない多数の他のイソプレノイド(Jennewein & Croteau, Appl. Microbiol. Biotechnol. 57, 13-19, 2001)およびジベレリン(Bruckner & Blechschmidt, Crit. Rev. Biotechnol. 11,163-192,1991)のバイオテクノロジーによる製造に使用できる。
【0052】
適切な宿主細胞は、細菌、酵母、真菌、藻類、植物または動物の細胞を例とするがそれらに限定されるわけではない、遺伝子修飾に従う全ての種類の生物である。遺伝子工学および代謝工学の方法は、当業者に公知である(例えばVerpoorteら、Biotechnol. Lett. 21, 467-479, 1999; Verpoorteら、Transgenic Res. 9, 323-343, 2000; Barkovich & Liao, Metab. Eng. 3, 27-39, 2001)。同様に、イソプレノイドおよびイソプレノイド由来の化合物および/または分子に(潜在的に)適した精製法は、ファインケミカルの生合成および製造の分野で周知である。
【0053】
本発明によるイソプレノイドまたはイソプレノイド由来の化合物および/または分子のバイオテクノロジーによる製造方法は、上記のような細胞全体の発酵工程に限定されるわけではなく、例えば透過性宿主細胞、粗細胞抽出物、例えば遠心分離もしくはろ過によって細胞残余物から清澄にされた細胞抽出物、またはそれどころか単離された酵素を用いて再構成された反応経路も使用できることが理解される。そのようなプロセスの組み合わせも、本発明の範囲内に属す。無細胞生合成(再構成された反応経路のような)の場合に、単離された酵素が、インビトロ転写/翻訳によって、またはさらに他の方法によって宿主細胞から調製され、単離されたかどうかは関係しない。
【0054】
本発明はさらに、以下を含む、本発明の修飾メバロン酸キナーゼを産生させるための方法に関する:
(a)本発明の修飾メバロン酸キナーゼの発現を可能にする条件で本発明の宿主細胞を培養すること;および
(b)細胞または培地から修飾メバロン酸キナーゼを回収すること。
【0055】
発現系を含む遺伝子操作された宿主細胞から本発明の修飾メバロン酸キナーゼを調製できる。
【0056】
本発明のポリペプチドの組換え産生のために、宿主細胞を遺伝子操作して、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターまたはプラスミドを組み込むことができる。多数の標準的な実験マニュアル[例えばDavisら、Basic Methods in Molecular Biology (1986)、およびSambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y. (1989)]に記載されている方法、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン介在性トランスフェクション、マイクロインジェクション、陽イオン性脂質介在性トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、弾丸導入(ballistic introduction)および感染のような方法によって、宿主細胞へのポリヌクレオチドまたはベクターの導入を実施できる。
【0057】
本発明の修飾メバロン酸キナーゼを産生させるために多様な発現系を使用できる。そのようなベクターには、とりわけ上記のベクターがある。一般に、ポリヌクレオチドの維持、増大、もしくは発現、および/または宿主でのポリペプチドの発現に適した任意の系またはベクターをこれに関する発現に使用できる。
【0058】
真核生物における組換え発現系では、小胞体の内腔、ペリプラスム間隙または細胞外環境に翻訳されたタンパク質を分泌させるために、発現したポリペプチドに適切な分泌シグナルを組み込むことができる。これらのシグナルはポリペプチドに内因性であるか、または異種シグナルであってもよい。
【0059】
硫安またはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンもしくは陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、およびヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどの周知の方法によって組換え細胞培養物から本発明のポリペプチドを回収および精製できる。一態様において、高速液体クロマトグラフィーが精製に採用される。単離および/または精製時にポリペプチドが変性した場合、活性コンホメーションを再生するタンパク質の再フォールディングのための周知の手法を採用できる。タンパク質の精製法は、例えばDeutscher, Protein Purification, Academic Press, New York, 1990; およびScopes, Protein Purification, Springer Verlag, Heidelberg, 1994に記載されている。
【0060】
例えばPenら、Bio/Technology 11, 811-814, 1994またはEP449375に記載されているような方法により、植物に、好ましくは例えばEP449376に記載されているように種子に、本発明のメバロン酸キナーゼを発現させることもできる。プロモーターおよびターミネーターの適切な例には、ノパリンシンターゼ(nos)、オクトピンシンターゼ(ocs)およびカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)遺伝子からのものが挙げられる。使用できる効率的な植物プロモーターの一種類は、高レベル植物プロモーターである。本発明の遺伝子配列と作動可能に連結しているそのようなプロモーターは、本遺伝子産物の発現を促進できるはずである。本発明に使用できる高レベル植物プロモーターには、例えばダイズからのリブロース−1,5−ビスリン酸カルボキシラーゼのスモールサブユニット(ss)のプロモーター(Berry-Loweら、J. Mol. Appl. Genet. 1, 483-498, 1982)およびクロロフィルa/b結合タンパク質のプロモーターがある。これらの二つのプロモーターは、植物細胞において光誘導性であることが公知である(例えばGenetic Engineering of Plants, an Agricultural Perspective, A. Cashmore, Plenum Press、NY (1983), pages 29-38; Coruzziら、J. Biol. Chem. 258,1399-1402,1983; およびDunsmuirら、J. Mol. Appl. Genet. 2,285-300,1983を参照されたい)。
【0061】
当該タンパク質の商業的製造が望ましい場合に、多様な培養法を適用できる。例えば、組換え微生物宿主から過剰発現された特定遺伝子産物の大規模製造を回分培養法または連続培養法の両方で行うことができる。回分および流加培養法はよくみられ、当技術分野において周知であり、Thomas D. Brock「Biotechnology: A Textbook of Industrial Microbiology, Second Edition」(1989) Sinauer Associates, Inc., Sunderland, Mass.またはDeshpande, Appl. Biochem. Biotechnol. 36,227-234, 1992に例を見出すことができる。連続培養プロセスのために栄養素および増殖因子を調整する方法、ならびに産物の形成速度を最大にするための手法は、工業微生物の分野において周知であり、多様な方法がBrock(上記)によって詳述されている。
【0062】
発酵用培地は適切な炭素基質を含有しなければならない。適切な基質には、グルコースおよびフルクトースなどの単糖;乳糖またはスクロースなどのオリゴ糖;デンプンもしくはセルロースまたはその混合などの多糖;および再生可能原料からの未精製混合物がありうるが、それらに限定されるわけではない。本発明に利用される炭素源は、基質を含む多様な炭素を包含でき、生物の選択によってのみ制限されることが意図されている。
【0063】
本発明はさらに、フィードバック阻害に対して低減した感受性を有するメバロン酸キナーゼの調製のための、以下の工程を含む方法に関する:
(a)フィードバック阻害に対して感受性を示す第一メバロン酸キナーゼをコードするポリヌクレオチドを提供する工程;
(b)ポリヌクレオチド配列に1個または複数の突然変異を導入し、突然変異ポリヌクレオチド配列が、第一メバロン酸キナーゼと比較した場合に少なくとも1個のアミノ酸突然変異を含む第二メバロン酸キナーゼをコードするようにする工程(少なくとも1個のアミノ酸突然変異は、配列番号1に示すアミノ酸配列の位置17、47、93、94、132、167、169、204、および266に対応するアミノ酸位置からなる群より選択される1個または複数のアミノ酸位置に存在する);
(c)突然変異ポリヌクレオチドをベクターまたはプラスミドに場合により挿入する工程;
(d)ポリヌクレオチドまたはベクターまたはプラスミドを適切な宿主細胞に導入する工程;および
(e)宿主細胞を修飾メバロン酸キナーゼの発現を可能にする条件で培養する工程。
【0064】
この方法の好ましい態様は、修飾メバロン酸キナーゼ、それらをコードするポリヌクレオチド、ベクターおよびプラスミド、宿主細胞、ならびに本明細書に記載された方法の好ましい態様に対応する。第一および第二メバロン酸キナーゼは、それぞれ非修飾および修飾メバロン酸キナーゼに対応する(上記参照)。
【0065】
本発明の別の態様は、メバロン酸キナーゼ活性減少に関連する障害の処置用の医薬の製造のための本発明の修飾メバロン酸キナーゼまたは本発明のポリヌクレオチドの使用である。そのような障害には、メバロン酸尿症、高免疫グロブリン血症Dおよび周期熱症候群があるが、それらに限定されるわけではない。本発明の修飾メバロン酸キナーゼを治療用酵素として投与することが好ましい。投与様式には、経口、非経口、腹腔内、および/または皮下投与がある。本発明の修飾メバロン酸キナーゼおよびその塩を、少なくとも一つのそのような酵素を単独で、または薬学的に許容される担体、賦形剤、および/または希釈剤との混合物中に含む医薬組成物として製剤化(例えば顆粒剤、酵素結晶、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤、液剤など)できる。通常の方法により医薬組成物を製剤化できる。採用した特定の化合物の活性、年齢、体重、全身健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、併用薬、および治療を受けている特定の疾患の重症度などの多様な要因に応じて、任意の特定患者に対する特異的用量レベルを採用する。
【0066】
本発明のポリヌクレオチドを遺伝子治療プロトコルに使用できる。
【0067】
本発明のなお別の態様は、生物学的液体中のメバロネート濃度を決定するための本発明の修飾メバロン酸キナーゼまたは本発明のポリヌクレオチドの使用である。生物学的液体の非限定的な例は、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、涙、汗、ならびに他の任意の細胞内、細胞間および/または細胞外液である。
【0068】
上記のような修飾メバロン酸キナーゼをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド;そのようなポリヌクレオチドを含むベクター、好ましくは発現ベクター;そのようなポリヌクレオチドまたはベクターで形質転換された宿主細胞;前記の宿主細胞を適切な培養条件で培養し、そのような宿主細胞または培地から当技術分野において公知の方法によってメバロン酸キナーゼを単離する、本発明のメバロン酸キナーゼの調製方法;ならびにそのようなポリペプチドもしくはベクターで形質転換され、かつ/または染色体にそのようなポリヌクレオチドを安定して組み込まれていてもよい宿主細胞に基づくイソプレノイドのバイオテクノロジーによる製造方法を提供することが、本発明の目的である。
【0069】
(i)本発明の少なくとも1個の特異的突然変異を有するメバロン酸キナーゼをコードし、かつ本発明の特異的修飾メバロン酸キナーゼの任意のDNA配列と標準条件でハイブリダイズするDNA配列、または(ii)本発明の少なくとも一つの特異的突然変異を有するメバロン酸キナーゼをコードするが、遺伝コードの縮重が原因でハイブリダイズせず、本発明の特異的修飾メバロン酸キナーゼの任意のDNA配列と標準条件でハイブリダイズするDNA配列と全く同じアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA配列、または(iii)上記のDNA配列の断片であるDNA配列(これは断片であるポリペプチドの活性性質を維持する)を提供することも本発明の目的である。
【0070】
これに関連してハイブリダイゼーションのための「標準条件」は、特異的ハイブリダイゼーションシグナルを検出するために当業者によって一般に使用され、例えばSambrookら、“Molecular Cloning”, second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press 1989, ニューヨークに記載されている条件、または好ましくはいわゆるストリンジェントなハイブリダイゼーション条件および非ストリンジェントな洗浄条件、またはさらに好ましくは当業者に親しまれ、例えばSambrookら(刊行年なし)に記載されているいわゆるストリンジェントなハイブリダイゼーション条件およびストリンジェントな洗浄条件を意味する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の特定の例は、50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート溶液、10%硫酸デキストラン、および20μg/ml変性シェアリング処理サケ精子DNAを含む溶液中で、42℃、一晩インキュベート(例えば15時間)した後に、約65℃で0.1×SSC中でハイブリダイゼーション支持体を洗浄することである。
【0071】
本発明の具体的に記載されたDNA配列に基づいて設計されたPCRプライマーによるいわゆるポリメラーゼ連鎖反応法(「PCR」)によって得られるDNA配列を提供することは、さらに本発明の目的である。そのように得られたDNA配列は、それらが設計されるもととなりまた匹敵する活性性質を示すDNA配列と同じ突然変異を少なくとも有するメバロン酸キナーゼをコードすることが了解されている。
【0072】
本明細書に記載した本発明の様々な態様を相互に組み合わせてもよい。
【0073】
以下の非限定的な実施例は、本発明をさらに例証する。
【0074】
実施例1:多重配列アラインメント
例えばパラメーター:ギャップ作成ペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、およびblosum62.cmpマトリックス(デフォルトのパラメータ)を用いたプログラム「PILEUP」(GCG Wisconsin Package、バージョン10.2、Accelrys Inc.、9685 Scranton Road、サンディエゴ、CA92121-3752、米国)またはBLOSUM交換マトリックスを用いたプログラムClustalW(バージョン1.7、EMBL、ハイデルベルク、ドイツ)で種々のメバロン酸キナーゼの多重アミノ酸配列アラインメント(図1参照)を計算できる。当業者はそのような配列アラインメントを日常的に実施している(例えばChoら、J. Biol. Chem. 276,12573-12578, 2001)。
【0075】
本発明に関連して同一メバロン酸キナーゼは、図1に示す任意のメバロン酸キナーゼと配列類似性を示しうる。図1は、マウス、ラット、ヒト、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(ARATH)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)(SCHPO)、酵母(YEAST)、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)(PYRAB)、ピロコッカス・ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii)(PYRHO)、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)(PYRFU)、メタノバクテリウム・テルモオートトロフィカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)(METTH)、アーケオグロブス・フルギダス(Archaeoglobus fulgidus)(ARCFU)、メタノコッカス・ヤナシイ(Methanococcus jannaschii)(METJA)、エロピルム・ペルニクス(Aeropyrum pernix)(AERPE)、およびパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス(PARACOCCUS)のメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列についての多重配列アラインメントの例を示し、後者の配列は、例えば以前に名付けられた他の配列の位置が参照されるアミノ酸付番に対する参照としても使用される。さらに、E6V突然変異を有する修飾ラットのメバロン酸キナーゼは、上に定義されたような割り当てによる位置6(実際はラットのメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列の位置4)で天然に存在するGlu(「E」は標準IUPAC一文字アミノ酸コードを参照している)がVal(「V」)に交換されているラットのメバロン酸キナーゼに他ならないものを意味する。本発明の全ての突然変異体/変異体はこのように称されている。
【0076】
実施例2:メバロン酸キナーゼ活性およびフィードバック阻害剤による阻害の測定
メバロン酸キナーゼ活性を測定するための酵素アッセイは、例えばPopjak(Meth. Enzymol. 15, 393-, 1969)、Gibsonら(Enzyme 41, 47-55, 1989)、Hinsonら(J. Lipid Res. 38, 2216-2223, 1997)、Schulteら(Anal. Biochem. 269, 245-254, 1999)、またはChoら(J. Biol. Chem. 276, 12573-12578, 2001)によって記載されている。基質としてメバロネートを調製するためにDL−メバロン酸ラクトン(FLUKA Chemie AG、ブックス、スイス)130mgを0.2MのKOH5.5mlに溶かし、50℃で15分間インキュベートした。次にこの溶液に室温(RT)で0.1MのHClを加えることでpH7.0に調整した。別に言及する場合を除き(実施例3を参照されたい)、アッセイ混合物は、100mMのK2HPO4/KH2PO4(pH7.0)、1mMのATP、2mMのMgC12、1mMメバロネート、0.5mMホスホエノールピルべート(PEP)、0.32mMのNADH、20U/mlのピルビン酸キナーゼおよび27U/ml乳酸デヒドロゲナーゼ(Sigma-Aldrich、セントルイス、ミズーリ州、米国)からなる。アッセイ混合物に入れて阻害剤として試験したFPP、GGPP、IPP、DMAPPおよびGPPを全てSigmaから購入した。精製(His6タグ付き)メバロン酸キナーゼを添加した場合、光度計による340nmでの測定で、NADHの消費に反映される酵素反応を追跡した。メバロン酸キナーゼ活性1ユニット(1U)は、毎分メバロネート1μmolのリン酸化を触媒する。
【0077】
実施例3:酵素アッセイの質の試験
最適なアッセイは、酵素濃度との直線性および時間との直線性のような多数の要求を満たすべきである。さらに本発明に関連してアッセイは、フィードバック阻害剤によるメバロン酸キナーゼの阻害の定量を可能にすべきである。本実施例の実験では、以下のアッセイ条件を使用した:100mMのKH2PO4(pH7.0)、0.125〜4mMのATP、1.125〜5mMのMgCl2(常にATPよりも1mM過剰!)、0.25〜3mMメバロネート、0または46μMのFPP、0.16mMのNADH、0.5mMのPEP、20U/mlピルビン酸キナーゼ、27U/ml乳酸デヒドロゲナーゼ、30℃。種々の量の精製His6タグ付きパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのメバロン酸キナーゼを使用した。
【0078】
本実施例の実験は、メバロン酸キナーゼ活性アッセイが、実際に時間および酵素(メバロン酸キナーゼ)濃度に対して直線性を有し、パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスについての所定の条件下でそれぞれ1mMのMgATPおよびメバロネート濃度がFPPによるフィードバック阻害の信頼性の高い測定を可能にするのに最適でありうることを示している。
【0079】
実施例4:フィードバック耐性突然変異体を得るためのパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのメバロン酸キナーゼの突然変異誘発
EcoRI制限部位、6×Hisの配列、およびATG開始コドンを有さないメバロン酸キナーゼの5′末端配列片をコードするプライマー、ならびに停止コドンを含めたメバロン酸キナーゼの3′末端配列およびBamHI制限部位を含むプライマーを用いたPCRで、パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスR114由来メバロン酸キナーゼのcDNAを増幅する。アガロースゲル電気泳動による精製後に、EcoRIおよびBamHIでPCR産物を分解消化し、同酵素で分解消化したpQE−80L(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)に連結する。pQE−80Lは、lacオペレーターエレメントによって調節されるT5プロモーターを含み、pQE−80Lが同じくコードするlacリプレッサーはこのオペレーターをシス阻害できる。次に、供給業者のプロトコルに従い、このプラスミドを用いてInvitrogen(カールズバッド、カリフォルニア州、米国)の大腸菌DH5αを形質転換する。大腸菌の対数増殖期にあるOD600nmが0.6の時点で100μMのIPTGを添加して、30℃、4時間、250rpmの振盪でHis6タグ付きメバロン酸キナーゼを誘導する。QiagenのQIAexpressシステム/試薬を用いたNi−NTAクロマトグラフィーで、His6タグ付きメバロン酸キナーゼおよびHis6タグ付きメバロン酸キナーゼ突然変異酵素の精製を行う。
【0080】
Stratagene(ラ・ホーヤ、カリフォルニア州、米国)のTurbo-Pfu DNAポリメラーゼを用いたいわゆる「二工程PCR」で、His6タグ付きメバロン酸キナーゼの突然変異誘発を実現する。突然変異コドンを含むプライマー(プライマーM)およびpQE−80Lの多重クローニング部位(MCS)の5′末端にある配列片に対応するプライマーpQE−5′を用いて、第一PCRを実施する。テンプレートはpQE−80L−His−Mvkである。PCR産物をアガロースゲル電気泳動で精製し、第二PCR反応用のプライマーとして使用する。第二PCRは、MCSの3′末端配列片を包含するプライマーpQE−3′およびテンプレートとして野生型pQE−80L−His−Mvkも含む。PCR産物をアガロースゲル電気泳動で精製し、EcoRIおよびBamHIで分解消化し、それを用いてHis−MvkをpQE−80Lにサブクローニングする。最後に、分解消化後の断片をアガロース電気泳動で精製し、同制限酵素で線状にしたpQE−80Lに連結する。
【0081】
実施例5:パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのメバロン酸キナーゼの突然変異体のフィードバック耐性
メバロネートを実施例2に記載したように調製した。アッセイ混合物は、100mMのK2HPO4/KH2PO4(pH7.0)、1mMのATP、1mMメバロネート、2mMのMgCl2、0.5mMホスホエノールピルベート(PEP)、0.32mMのNADH、20U/mlピルビン酸キナーゼおよび27U/ml乳酸デヒドロゲナーゼ(Sigma-Aldrich、セントルイス、ミズーリ州、米国)からなる。アッセイ混合物に入れて阻害剤として試験したFPP、GGPP、IPP、DMAPPおよびGPPを全てシグマから購入した。メバロン酸キナーゼ突然変異体を用いて実施した阻害アッセイに92μMのFPPまたは17.6μMのGGPPを使用した。FPP、GGPP、IPP、DMAPPおよびGPPによる阻害を比べるために、138μMのこれらの中間体を加えた(実施例9)。精製(His6タグ付き)メバロン酸キナーゼの添加時に、340nmでの光度計測定によって、NADHの消費に反映される酵素反応を追跡した。
【0082】
フィードバック耐性(%)を以下のように計算する:aおよびbは、フィードバック阻害剤(この場合FPP)の非存在下および存在下でそれぞれ野生型酵素から測定されたメバロン酸キナーゼ活性であり、cおよびdは、同フィードバック阻害剤の非存在下および存在下でそれぞれ突然変異酵素から測定されたメバロン酸キナーゼ活性であるとき、フィードバック耐性(%)は以下となる:
耐性(%)=100・((d/c)−(b/a))/(1−(b/a))
【0083】
【表1】

【0084】
これらの突然変異がメバロン酸キナーゼのフィードバック阻害に影響を有することは意外である。以前、ヒトのメバロン酸キナーゼの残基133から残基156までの保存された疎水性ストレッチは、イソプレノイドの結合の有望な候補と提案された(Riouら、Gene 148, 293-297,1994; Houtenら、Biochim. Biophys. Acta 1529, 19-32, 2000)。しかし、上記の突然変異のどれもパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのメバロン酸キナーゼの対応するストレッチ(残基137〜160)に局在していない。
【0085】
かなり多数の突然変異がメバロン酸キナーゼ活性を低下させるか、または破壊することさえあり、かくしてヒト疾患であるメバロン酸尿症および高免疫グロブリン血症Dおよび周期熱症候群を引き起こすと提案された(例えばK13X、H20P、H20N、L39P、W62X、S135L、A148T、Y149X、S150L、P165L、P167L、G202R、T209A、R215Q、T243I、L264F、L265P、I268T、S272F、R277C、N301T、G309S、V310M、G326R、A334T、V377I、およびR388X;全てヒトのメバロン酸キナーゼにおける突然変異;Houtenら、Eur. J. Hum. Genet. 9, 253-259, 2001; Cuissetら、Eur. J. Hum. Genet. 9, 260-266, 2001)。これらのうちわずか二つ(すなわちP165LおよびR215Q)が、フィードバック耐性に影響を有することが示されたパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのメバロン酸キナーゼの残基(すなわちそれぞれ残基169および204)とのアミノ酸配列アラインメント内の位置に対応する残基に生じている。しかし、ヒトのメバロン酸キナーゼにおける上に記載された突然変異は、フィードバック耐性に作用を有することが示されておらず、むしろ酵素の(比)活性に負の影響を与えると示唆された。
【0086】
実施例6:フィードバック阻害に対する酵素の耐性に影響を有することが以前に同定されたアミノ酸残基/位置でのパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのメバロン酸キナーゼの飽和突然変異誘発
飽和突然変異誘発に供されたコドンがランダム化配列から作られる方法で突然変異誘発プライマーを合成した以外は、突然変異誘発について上に記載したのと同じ方法で、飽和突然変異誘発を行った。
【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】

【0090】
実施例7:フィードバック阻害耐性メバロン酸キナーゼを用いたイソプレノイド化合物であるコエンザイムQ10の産生の改善
メバロン酸キナーゼのフィードバック阻害に影響する突然変異のインビボ作用を試験するために、パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスにおいて複製可能な広範囲の宿主に対応するベクターにクローニングした機能的メバロン酸オペロンに、パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのメバロン酸キナーゼ突然変異体K93Eを導入した。イソプレノイド化合物であるコエンザイムQ10の産生を、K93E突然変異の存在または非存在のみが異なるP.ゼアキサンチニファシエンスの二つの組換え株で直接比較した。
【0091】
プラスミド構築
図2にプラスミドの構築を図示する。クローニングの詳細は以下のとおりであった。大腸菌株をLB培地(Becton Dickinson、スパークス、メリーランド州、米国)で37℃で増殖させた。組換え大腸菌株中にプラスミドを維持するために、培地にアンピシリン(100μg/ml)および/またはカナマイシン(実験に応じて25〜50μg/ml)を加えた。固体培地には寒天(終濃度1.5%)を加えた。液体培養をロータリーシェーカーを用いて200rpmで増殖させた。
【0092】
プラスミドpBBR−K−mev−op−wt(図2)は、プラスミドpBBR1MCS−2のSacI部位とNsiI部位の間に挿入されたP.ゼアキサンチニファシエンスATCC21588株由来メバロン酸オペロンをそのプロモーター領域込みで含む(Kovachら、Gene 166, 175-176,1995)。クローニングされたメバロン酸オペロンは、GenBank/EMBLアクセッション番号AJ431696を有する配列のヌクレオチド2469〜9001の配列に対応する。SacI部位とメバロン酸オペロン配列との間に短いリンカー配列があり、その配列はプラスミドpCR(登録商標)2.1−TOPO(Invitrogen、カールズバッド、カリフォルニア州、米国)から得られたものであり、SacI部位からPCRフラグメント挿入部位までの配列に対応する。アクセッション番号AJ431696を有する配列は、P.ゼアキサンチニファシエンスR114株(ATCC PTA−3335)由来であり、P.ゼアキサンチニファシエンスATCC21588株由来ではないことに注意すべきである。P.ゼアキサンチニファシエンスATCC 21588株とR114株との間のメバロン酸オペロン配列の唯一の差異は、R114株ではmvk遺伝子に突然変異が存在することである。この突然変異の結果、メバロン酸キナーゼにおけるアラニンからバリンへのアミノ酸265の変化(A265V)が生じる。pBBR−K−mev−op−wtにおけるメバロン酸オペロンがATCC21588由来であることから、これは突然変異を含まず、よってmvkのコドン265はGCCである(そしてアクセッション番号AJ431696におけるようなGTCではない)。
【0093】
pBBR−K−mev−op−wtに類似しているがR114株由来mvk遺伝子を有するプラスミドも構築し、pBBR−K−mev−op−R114と名付けた。crtEプロモーター領域制御下のP.ゼアキサンチニファシエンスATCC21588株由来ddsA遺伝子を、pBBR−K−mev−op−R114のEcl136IIとSpeI部位との間に導入することによって、pBBR−K−mev−op−R114−PcrtE−ddsAwtを得た(図2)。
【0094】
最終工程は、pBBR−K−mev−op−R114−PcrtE−ddsAwtと同一であるがmvk遺伝子にK93E突然変異を含むプラスミドを創造することであった。XmaI−SpeIで切断したpBluescript II KS+ベクター(Stratagene、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州、米国)に3166bpのXmaI−SpeI断片をサブクローニングすることによってプラスミドpBlu2SP−mvk−mvd(図2)を構築した。プラスミドpBlu2SP−mvk−mvdは、メバロン酸オペロンの3′末端に突然変異mvk遺伝子を導入するために便利で独特の制限エンドヌクレアーゼ部位XmaIおよびAscIを有する。プラスミドpQE−80L−mvk−K93EをXmaIおよびAscIで切断した。K93E突然変異を含めたmvkの大部分を有する1kbの断片を、pBlu2SP−mvk−mvdをXmaI−AscIで切断した主鎖に連結させ、pBlu2KSp−mvk−K93E−mvdを得た。mvkにK93E突然変異を有する完全長メバロン酸オペロンを再構成するために、pBlu2KSp−mvk−K93E−mvdをXmaIおよびSpeIで切断し、3166bpの断片を、pBBR−K−mev−op−R114−PcrtE−ddsAwtからの8.18kbのXmaI−SpeI断片と連結させ、pBBR−K−mev−op−(mvk−K93E)−PcrtE−ddsAwtを得た。このプラスミドにおけるmvk遺伝子のコドン265はGTCである。それは、pQE−80L−mvk−K93Eのmvk遺伝子がP.ゼアキサンチニファシエンスR114株(ATCC PTA−3335)に由来するからである。
【0095】
まとめると、プラスミドpBBR−K−mev−op−R114−PcrtE−ddsAwtおよびpBBR−K−mev−op−(mvk−K93E)−PcrtE−ddsAwtは、後者のプラスミドにK93E突然変異が存在することを除き同一である。
【0096】
組換えP.ゼアキサンチニファシエンス株の構築
P.ゼアキサンチニファシエンス株を28℃で増殖させた。P.ゼアキサンチニファシエンスに使用した培地の組成を下に記載する。フラスコに増殖させたP.ゼアキサンチニファシエンスの液体培養を、他に明記しない限りロータリーシェーカーで200rpmで振盪した。固体培地には寒天(終濃度2%)を加えた。培地をオートクレーブで滅菌した場合、グルコースを(濃縮原液として)滅菌後に加えて所望の終濃度にした。F培地は、トリプトン10g;酵母エキス10g;NaClを30g;D−グルコース・H2Oを10g;MgSO4・7H2Oを5g含む(蒸留水1lあたり)。ろ過またはオートクレーブで滅菌する前にpHを7.0に調整する。培地362F/2は、D−グルコース・H2Oを33g;酵母エキス10g;トリプトン10g;NaClを5g;MgSO4・7H2Oを2.5gを含む(蒸留水1lあたり)。ろ過またはオートクレーブで滅菌する前に培地のpHを7.4に調整する。滅菌後に、微量元素溶液、NKP溶液およびCaFe溶液をそれぞれ2.5ml加える。後者の三つの溶液をろ過滅菌する。微量元素溶液は、(NH42Fe(SO42・6H2Oを80g;ZnSO4・7H2Oを6g;MnSO4・H2Oを2g;NiSO4・6H2Oを0.2g;EDTAを6g含む(蒸留水1lあたり)。NKP溶液は、K2HPO4を250gおよび(NH42PO4を300g含む(蒸留水1lあたり)。CaFe溶液は、CaC12・2H2Oを75g;FeCl3・6H2Oを5g;濃HClを3.75ml含む(蒸留水1lあたり)。
【0097】
P.ゼアキサンチニファシエンスR114株のエレクトロコンピテント細胞の調製およびエレクトロポレーションを以下のように実施した:F培地100mlにP.ゼアキサンチニファシエンスR114株の定常期培養液1.5mlを植菌し、660nmの吸光度が約0.5に達するまで28℃、200rpmで増殖させた。4℃、7000×gで15分間遠心分離して細胞を回収し、氷冷したHEPES緩衝液(pH7)100mlで2回洗浄した。最終的に得られたペレットを氷冷したHEPES緩衝液(pH7)0.1mlに再懸濁し、細胞を直ちにエレクトロポレーションに使用するか、またはグリセロールを終濃度15%となるように加えて細胞を50μlに小分けして−80℃で保存した。プラスミドDNA1〜5μlを無塩溶液に加え、氷冷した1mmキュベット中でエレクトロポレーションを18kV/cmおよび1290hmで実施した。パルス長を概して4から5ミリ秒の間とした。F培地1mlを添加し、細胞を28℃で1時間インキュベートした。25〜50μg/mlカナマイシンを含有するF寒天平板に希釈液を広げ、28℃でインキュベートした。推定上の形質転換体について所望のプラスミドを含むことをPCR分析によって確認した。
【0098】
コエンザイムQ10産生を評価するための培養条件
P.ゼアキサンチニファシエンスR114/pBBR−K−mev−opR114−PcrtE−ddsAwt株およびR114/pBBR−K−mev−op−(mvk−K93E)−PcrtE−ddsAwt株の流加培養におけるコエンザイムQ10の産生を試験した。凍結細胞懸濁液(25%グリセロール貯蔵物として−80℃で保存した)から全ての培養を開始した。362F/2培地がそれぞれ200ml入った2l容のバッフル付き振盪フラスコ2本に流加発酵用の前培養を調製した。解凍した細胞懸濁液2mlを各フラスコへの植菌として使用した。前培養の初発pHは7.2であった。前培養を250rpmで28時間、28℃で振盪しながらインキュベートした後、660nmにおける吸光度(OD660)は、使用した株に応じて吸光度単位14から22の間であった。以下の組成:D−グルコース・H2Oが25g;酵母エキス(Tastone900)17g;NaClが4.0g;MgSO4・7H2Oが6.25g;(NH42Fe(SO42・6H2Oが0.5g;ZnSO4・7H2Oが0.038g;MnSO4・H2Oが0.013g;NiSO4・6H2Oが0.001g;CaCl2・2H2Oが0.47g;FeCl3・6H2Oが0.062g;ナイアシン0.01g;NH4Clが0.5g;消泡剤0.1ml;KP溶液3.5mlを有する(蒸留水1lあたり)培地を入れたBiostat EDバイオリアクター(B. Braun Biotech International、メルスンゲン、ドイツ)で本培養を行った。KP溶液の組成は、K2HPO4が250g;NaH2PO4・2H2Oが200g;(NH42HPO4が100gである(蒸留水1lあたり)。プラスミド保有株にはカナマイシン(終濃度50mg/l)を培地に加えた。全ての工程に使用した流加溶液は、以下の組成を有した(蒸留水1lあたり):D−グルコース・H2Oを550g;KP溶液18.25ml。バイオリアクターの(植菌後の)初発体積は8.0Lであった。バイオリアクターに400mlを加えた場合に初発OD660値が0.5に達するように、必要に応じて前培養を蒸留水で希釈した。発酵条件を以下のように自動制御した:28℃、pH7.2(28%NH4OHを添加してpH調整)、最低40%相対値に溶存酸素を制御(撹拌を伴う工程流で)、最小撹拌速度300rpm、および通気速度1v.v.m.(終体積に対して)。流加溶液を加えずに約20時間これらの条件で培養を進めた(回分培養期)。この後、撹拌速度の減少、塩基消費の中止、pHの激しい増加およびCO2産生の減少は、初回のグルコースが消費し尽くされたことを示したため、流加を開始した。標準的な流加プロフィルを以下のように規定した(流加開始時点から):17時間に50g/hから80g/hへの勾配、80g/hで7時間継続、11時間かけて55g/hまで下方勾配、発酵の残りの時間55g/hで継続(総発酵時間=70時間)。本培養の終体積は約10lであった。
【0099】
分析法
試薬
アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、t−ブチルメチルエーテル(TBME)およびブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)は、高純度(puriss., p.a.)等級またはHPLC等級であり、Fluka(スイス)から入手した。コエンザイムQ10をFlukaから購入した。メタノール(Lichrosolv)をMerck、ダルムシュタット、ドイツから購入した。カロテノイド標準をChemistry Research Department、Roche Vitamins Ltd.、スイスから入手した。
【0100】
試料の調製と抽出
総培養液400μlを15ml容のディスポーザブルポリプロピレン遠心管に入れた。安定化抽出溶液(DMSO/THFの1:1(v/v)混液に溶かした0.5g/lのBHT)4mlを加え、試料を実験用シェーカー(IKA、ドイツ)で20分間混合して抽出を促進した。最後に、試料を遠心分離し、上清を褐色ガラス製バイアルに移し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析に供した。
【0101】
HPLC
ユビキノンとそれに対応するヒドロキノンを同時に決定するための逆相HPLC法を開発した。この方法は、カロテノイドであるゼアキサンチン、フィトエン、β−クリプトキサンチン、β−カロテンおよびリコペンをコエンザイムQ10からはっきりと分離することができる。温度制御オートサンプラーおよびダイオードアレイ検出器を備えるAgilent1100HPLCシステムでクロマトグラフィーを実施した。本方法のパラメーターは次の通りであった:
【0102】
【表5】

【0103】
【表6】

【0104】
計算、選択性、直線性、検出限界および再現性
ピーク面積に基づいて計算を行った。関連する基準化合物の標準溶液をインジェクトすることによって方法の選択性を検証した。標的化合物(コエンザイムQ10およびユビキノール10)は完全に分離され、干渉を示さなかった。抽出溶液(上記)に溶かしたコエンザイムQ10の希釈系列を調製し、分析した。直線範囲は、5mg/lから50mg/lにみられた。相関係数は0.9999であった。本HPLC法によるコエンザイムQ10の検出限界を4mg/lと決定した。抽出法を含めた本方法の再現性をチェックした。個別の10個の試料調製物を比較した。相対標準偏差を4%と決定した。
【0105】
コエンザイムQ10産生の結果
上記の流加培養の条件で、P.ゼアキサンチニファシエンスR114/pBBR−K−mev−op−(mvk−K93E)−PcrtE−ddsAwt株によって産生されたコエンザイムQ10の終濃度は、R114/pBBR−K−mev−opR114−PcrtE−ddsAwt株で観察されたものよりも34%高かった。この差は、二つの株の増殖の差を単に原因とできなかった。それは、R114/pBBR−K−mev−op−(mvk−K93E)−PcrtE−ddsAwt株がR114/pBBR−K−mev−opR114−PcrtE−ddsAwt株に比べて12%高いコエンザイムQ10の比産生(コエンザイムQ10のユニット/乾燥細胞質量(g)/時間)も示したからである。さらに、R114/pBBR−K−mev−op−(mvk−K93E)−PcrtE−ddsAwt株は、R114/pBBR−K−mev−opR114−PcrtE−ddsAwt株に比べて培養液中のメバロネート蓄積の31%の減少も示した。この比較から、プラスミドpBBR−K−mev−op−(mvk−K93E)−PcrtE−ddsAwtにおけるK93E突然変異がコエンザイムQ10の産生向上に直接寄与していることが示された。
【0106】
実施例8:パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのメバロン酸キナーゼの溶解性に及ぼすI17T突然変異の作用
ヒトのメバロン酸キナーゼでは、突然変異体E19A、E19QおよびH20Aは大腸菌形質転換体をIPTGで誘導した後に完全に不溶性であることが示された(PotterおよびMiziorko、J. Biol. Chem. 272, 25449-25454,1997)。パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスR114のHis6タグ付きメバロン酸キナーゼ(配列番号15)も、特にかなり高いイオン強度(例えば50mMのNaH2PO4(pH8.0)、300mMのNaCl、250mMイミダゾール)を有する緩衝溶液中で凝集/沈殿する顕著な傾向を示した。意外なことに、パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスR114のHis6タグ付きメバロン酸キナーゼ突然変異体I17Tは同条件で完全に可溶性で安定であったため、この突然変異酵素は可溶性メバロン酸キナーゼを必要とする用途にずっとよく適している。
【0107】
実施例9:経路の種々の下流産物によるメバロン酸キナーゼのフィードバック阻害
種々のメバロン酸キナーゼがメバロン酸経路の以下の下流産物によるフィードバック阻害に感受性であると以前に報告された:IPP、DMAPP、GPP、FPP、GGPP、フィチル−PP、ファルネソール、ドリコールリン酸。138μMのGGPP、FPP、GPP、IPP、またはDMAPPで、パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのHis6タグ付きメバロン酸キナーゼはそれぞれ98%、80.1%、18.6%、16.3%および14.7%に阻害された。FPP(92μM)またはGGPP(17.6μM)によるフィードバック阻害に対するパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのメバロン酸キナーゼ突然変異体I17T/G47D/K93E/P132Sの耐性は、それぞれ83%および92%であった。
【0108】
実施例10:パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのメバロン酸キナーゼと同一であるメバロン酸キナーゼにおける対応する残基の同定
配列アラインメントプログラムGAP(GCG Wisconsin Package、バージョン10.2、Accelrys Inc., 9685 Scranton Road、サンディエゴ、CA92121-3752、米国;ギャップ作成ペナルティ8;ギャップ伸長ペナルティ2)を用いて、パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列(配列番号1)の特異的アミノ酸位置に対応する以下の残基を同定した:
【0109】
【表7】

【0110】
非修飾メバロン酸キナーゼのアミノ酸配列の例には、以下のアミノ酸配列(配列番号1〜15および30)があるが、それらに限定されるわけではない。非修飾メバロン酸キナーゼ(配列番号1〜14および30)をコードするヌクレオチド配列を、それぞれ配列番号16〜29および31に示す。
【0111】
配列番号1:パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列。
配列番号2:ヒトのメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列(Swiss-Protアクセッション番号Q03426)。
配列番号3:マウスのメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列(Swiss-Protアクセッション番号Q9R008)。
配列番号4:ラットのメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列(Swiss-Protアクセッション番号P17256)。
配列番号5:シロイヌナズナのメバロン酸キナーゼ のアミノ酸配列(Swiss-Protアクセッション番号P46086)。
配列番号6:酵母のメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列(Swiss-Protアクセッション番号P07277)。
配列番号7:シゾサッカロミセス・ポンベのメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列(Swiss-Protアクセッション番号Q09780)。
配列番号8:ピロコッカス・アビシのメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列(Swiss-Protアクセッション番号Q9V187)。
配列番号9:ピロコッカス・ホリコシイのメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列(Swiss-Protアクセッション番号Q59291)。
配列番号10:ピロコッカス・フリオサスのメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列(Swiss-Protアクセッション番号Q8U0F3)。
配列番号11:メタノバクテリウム・テルモオートトロフィカムのメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列(Swiss-Protアクセッション番号Q50559)。
配列番号12:アーケオグロブス・フルギダスのメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列(Swiss-Protアクセッション番号O27995)。
配列番号13:メタノコッカス・ヤナシイのメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列(Swiss-Protアクセッション番号Q58487)。
配列番号13:メタノコッカス・ヤナシイのメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列(Swiss-Protアクセッション番号Q58487)。
配列番号14:エロピルム・ペルニクスのメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列(Swiss-Protアクセッション番号Q9Y946)。
配列番号15:パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのHis6タグ付きメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列。
配列番号16:パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのメバロン酸キナーゼのDNA配列。
配列番号17:ヒトのメバロン酸キナーゼのDNA配列(Genbankアクセッション番号M88468)。
配列番号18:マウスのメバロン酸キナーゼのDNA配列(Genbankアクセッション番号AF137598)。
配列番号19:ラットのメバロン酸キナーゼのDNA配列(Genbankアクセッション番号M29472)。
配列番号20:シロイヌナズナのメバロン酸キナーゼのDNA配列(Genbankアクセッション番号X77793)。
配列番号21:酵母のメバロン酸キナーゼのDNA配列(Genbankアクセッション番号X06114)。
配列番号22:シゾサッカロミセス・ポンベのメバロン酸キナーゼのDNA配列(Genbankアクセッション番号AB000541)。
配列番号23:ピロコッカス・アビシのメバロン酸キナーゼのDNA配列(Genbankアクセッション番号AJ248284)。
配列番号24:ピロコッカス・ホリコシイのメバロン酸キナーゼのDNA配列(Genbankアクセッション番号AB009515;逆方向)。
配列番号25:ピロコッカス・フリオサスのメバロン酸キナーゼのDNA配列(Genbankアクセッション番号AE010263;逆方向)。
SEQ ID NO.26:メタノバクテリウム・テルモオートトロフィカムのメバロン酸キナーゼのDNA配列(Genbankアクセッション番号U47134)。
配列番号27:アーケオグロブス・フルギダスのメバロン酸キナーゼのDNA配列(Genbankアクセッション番号AE000946;逆方向)。
配列番号28:メタノコッカス・ヤナシイのメバロン酸キナーゼのDNA配列(Genbankアクセッション番号U67551)。
配列番号29:エロピルム・ペルニクスのメバロン酸キナーゼのDNA配列(Genbankアクセッション番号AP000064)。
配列番号30:ファフィア・ロドチマATCC96594のメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列。
配列番号31:ファフィア・ロドチマATCC96594のメバロン酸キナーゼの遺伝子(DNA)配列。メバロン酸キナーゼ遺伝子は、4個のイントロンおよび5個のエキソンからなる。
エキソン1:1021〜1124
イントロン1:1125〜1630
エキソン2:1631〜1956
イントロン2:1957〜2051
エキソン3:2052〜2366
イントロン3:2367〜2446
エキソン4:2447〜2651
イントロン4:2652〜2732
エキソン5:2733〜3188
ポリA部位:3284
配列番号32:パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのHis6タグ付きメバロン酸キナーゼ突然変異体I17TのDNA配列。
配列番号33:パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのHis6タグ付きメバロン酸キナーゼ突然変異体I17T/G47D/K93E/P132SのDNA配列。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】プログラムClustalWで計算したマウス、ラット、ヒト、酵母、シロイヌナズナ(ARATH)、シゾサッカロミセス・ポンベ(SCHPO)、ピロコッカス・アビシ(PYRAB)、ピロコッカス・ホリコシイ(PYRHO)、ピロコッカス・フリオサス(PYRFU)、メタノバクテリウム・テルモオートトロフィカム(METTH)、アーケオグロブス・フルギダス(ARCFU)、メタノコッカス・ヤナシイ(METJA)、エロピルム・ペルニクス(AERPE)、およびパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス(PARACOCCUS)由来メバロン酸キナーゼの多重配列アラインメントを示す図である。ナンバーリングは、パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンスのメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列に従った。
【図2】pBBR−Kに基づくプラスミド上のメバロン酸オペロンへのK93Eメバロン酸キナーゼ突然変異の導入を示す図である。詳細については本文参照。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードバック阻害に対して、対応する非修飾メバロン酸キナーゼに比べて低減した感受性を示す修飾メバロン酸キナーゼであって、
(i)該対応する非修飾メバロン酸キナーゼのアミノ酸配列と比べた場合に、該修飾メバロン酸キナーゼのアミノ酸配列が少なくとも1個の突然変異を含み、かつ
(ii)該少なくとも1個の突然変異が、配列番号1に示すパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス(Paracoccus zeaxanthinifaciens)のメバロン酸キナーゼのアミノ酸配列の位置17、47、93、94、132、167、169、204、および266に対応するアミノ酸位置からなる群より選択される1個または複数のアミノ酸位置に存在する、修飾メバロン酸キナーゼ。
【請求項2】
フィードバック阻害が、ファルネシル二リン酸またはゲラニルゲラニル二リン酸によるフィードバック阻害である、請求項1記載の修飾メバロン酸キナーゼ。
【請求項3】
修飾メバロン酸キナーゼが、対応する非修飾メバロン酸キナーゼに比べて少なくとも10%のフィードバック耐性を示す、請求項1または2記載の修飾メバロン酸キナーゼ。
【請求項4】
突然変異がアミノ酸置換である、請求項1〜3のいずれか1項記載の修飾メバロン酸キナーゼ。
【請求項5】
修飾メバロン酸キナーゼが、対応する非修飾メバロン酸キナーゼのアミノ酸配列と比べた場合に2個のアミノ酸置換を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の修飾メバロン酸キナーゼ。
【請求項6】
修飾メバロン酸キナーゼが、対応する非修飾メバロン酸キナーゼのアミノ酸配列と比べた場合に3個のアミノ酸置換を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の修飾メバロン酸キナーゼ。
【請求項7】
修飾メバロン酸キナーゼが、対応する非修飾メバロン酸キナーゼのアミノ酸配列と比べた場合に4個のアミノ酸置換を含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の修飾メバロン酸キナーゼ。
【請求項8】
修飾メバロン酸キナーゼが、対応する非修飾メバロン酸キナーゼのアミノ酸配列と比べた場合に1個の置換を含み、該置換が配列番号1に示す配列のアミノ酸位置17に対応するアミノ酸位置に存在する、請求項1〜7のいずれか1項記載の修飾メバロン酸キナーゼ。
【請求項9】
配列番号1に示す配列の位置17に対応するアミノ酸位置に存在する置換が、イソロイシンからトレオニンへの交換からなる、請求項8記載の修飾メバロン酸キナーゼ。
【請求項10】
対応する非修飾メバロン酸キナーゼのアミノ酸配列が配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および30に示すアミノ酸配列からなる群より選択される、請求項1〜9のいずれか1項記載の修飾メバロン酸キナーゼ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項記載の修飾メバロン酸キナーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項記載の修飾メバロン酸キナーゼをコードするヌクレオチド配列が、配列番号32および33のヌクレオチド配列からなる群より選択される、請求項11記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項11または12記載のポリヌクレオチドを含む、ベクターまたはプラスミド。
【請求項14】
少なくとも1個のマーカー遺伝子をさらに含む、請求項13記載のベクターまたはプラスミド。
【請求項15】
請求項13または14記載のベクターまたはプラスミドを含む宿主細胞。
【請求項16】
大腸菌(E.coli)またはパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス(Paracoccus zeaxanthinifaciens)またはロドバクター(Rhodobacter)またはサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisae)の細胞である、請求項15記載の宿主細胞。
【請求項17】
(a)適切な培地中で請求項15または16記載の宿主細胞を培養すること;および
(b)場合により該培地からイソプレノイド化合物を分離すること
を含む、イソプレノイド化合物を製造するための方法。
【請求項18】
イソプレノイド化合物がコエンザイムQ10である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
(a)適切な培地中で請求項15または16記載の宿主細胞の集団を培養すること;および
(b)場合により該細胞または該培地から修飾メバロン酸キナーゼを回収すること
を含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の修飾メバロン酸キナーゼを産生するための方法。
【請求項20】
(a)フィードバック阻害に感受性を示す第一メバロン酸キナーゼをコードするポリヌクレオチドを提供する工程;
(b)該ポリヌクレオチド配列に1個または複数の突然変異を導入して、突然変異ポリヌクレオチド配列が、該第一メバロン酸キナーゼに比べた場合に少なくとも1個のアミノ酸突然変異を含む第二メバロン酸キナーゼをコードするようにする工程(ここで、該少なくとも1個のアミノ酸突然変異は、配列番号1に示すアミノ酸配列の位置17、47、93、94、132、167、169、204、および266に対応するアミノ酸位置からなる群より選択される1個または複数のアミノ酸位置に存在する);
(c)該突然変異ポリヌクレオチドを場合によりベクターまたはプラスミドに挿入する工程;
(d)該ポリヌクレオチドまたは該ベクターまたは該プラスミドを適切な宿主細胞に導入する工程;および
(e)該宿主細胞を修飾メバロン酸キナーゼの発現を可能にする条件で培養する工程
を含む、フィードバック阻害に対して低減した感受性を有するメバロン酸キナーゼを調製するための方法。
【請求項21】
メバロン酸キナーゼの活性減少に関連する障害の処置用医薬の製造のための、請求項1〜10のいずれか1項記載の修飾メバロン酸キナーゼまたは請求項11もしくは12記載のポリヌクレオチドの使用。
【請求項22】
メバロン酸キナーゼの活性減少に関連する障害が、メバロン酸尿症および高免疫グロブリン血症Dおよび周期熱症候群からなる群より選択される、請求項21記載の使用。
【請求項23】
生物学的液体中のメバロネート濃度を決定するための、請求項1〜10のいずれか1項記載の修飾メバロン酸キナーゼまたは請求項11もしくは12記載のポリヌクレオチドの使用。
【請求項24】
イソプレノイド化合物の産生を増加させるための、請求項1〜10のいずれか1項記載の修飾メバロン酸キナーゼまたは請求項11もしくは12記載のポリヌクレオチドの使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−523612(P2007−523612A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515622(P2006−515622)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000353
【国際公開番号】WO2004/111214
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】