説明

フィールド機器

【課題】複数の出力形態に対し容易かつ安全に対応できるフィールド機器を提供する。
【解決手段】フィールド機器1には、バス5との間での接続状態を切り替えるための出力段切替回路41と、バス5上の通信信号の有無および通信速度を検出するためのボートレート検出回路42と、が設けられる。さらに、フィールド機器1はフィールド機器1の各部に電力を供給するための電源回路43およびフィールド機器1の各部にクロックを供給するためのクロック供給回路44を備える。クロック供給回路44のクロック周波数は、通信速度に応じて切り替え可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信線を介する通信機能を有するフィールド機器に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、フィールド機器ではその出力形態に応じたハードウェア設計がなされている。例えば、出力が消費電流に比例する2線式フィールド機器と、FOUNDATION Fieldbus(FF;商標名)やProfibus PAに代表される双方向ディジタル通信可能な機器とでは、そのハードウェア構成は大きく異なる。
【特許文献1】特許出願公開番号US2005/0232305 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
FOUNDATION FieldbusとProfibus PAのように、物理層の仕様が同一で、かつ通信速度が同一である場合には、電源起動時にフレーム内容を確認して、通信方式を選択する手法も提案されている。しかし、フィールド機器のベンダーからの視点からは、
(1)種類の異なる複数のハードウェアに対する開発を要する。
(2)開発したソフトウェアの管理などを必要とし、開発効率を低下させる。
(3)製造工場において在庫管理などが必要となる。
などの問題がある。また、ユーザの視点からは、
(4)向上における在庫、予備品の管理が煩雑になる
などの問題がある。
【0004】
さらに、機器交換などの際に2線式フィールド機器ではなく、誤ってフィールドバス機器を接続した場合に、システムに影響を与える可能性がある。例えば、フィールドバス機器の消費電流は常時10-15mAであるため、4-20mA信号であると誤認される可能性があり、システムに与える影響が懸念される。
【0005】
すなわち、フィールドバス機器では、4-20mA型の2線式伝送器において信号線に重畳される通信速度(1200bps)とは大幅に異なり、通信速度が31.25kbpsと高速であるため、通常10mA以上の消費電流を要する。一方、HARTなどの従来の4-20mA型の2線式伝送器では4mA未満の消費電流で動作させる必要があり、消費電流についても両者は基本設計を異にしているという事情がある。
【0006】
本発明の目的は、複数の出力形態に対し容易かつ安全に対応できるフィールド機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフィールド機器は、通信線を介する通信機能を有するフィールド機器において、2線式フィールド機器の通信形態に対応する通信を行う第1の通信手段と、フィールドバス通信を行う第2の通信手段と、前記フィールドバス通信におけるトークンを検出するトークン検出手段と、所定の時間内に前記トークン検出手段により前記トークンを検出した場合には、前記第2の通信手段を機能させ、所定の時間内に前記トークン検出手段により前記トークンを受信できなかった場合には、前記第2の通信手段を機能させない制御手段と、を備えることを特徴とする。
このフィールド機器によれば、所定の時間内にトークンを検出したか否かにより通信形態を切り替えるので、複数の出力形態に対し容易かつ安全に対応できる。
【0008】
前記制御手段は、所定の時間内に前記トークン検出手段により前記トークンを受信できなかった場合には、前記第1の通信手段を機能させてもよい。
【0009】
前記制御手段は、前記第1の通信手段または前記第2の通信手段への電源供給の有無により、前記第1の通信手段または前記第2の通信手段を機能させるか否かを制御してもよい。
【0010】
前記第1の通信手段および前記第2の通信手段は互いに通信速度が異なり、前記トークン検出手段は、前記通信線のフレームのボーレートに基づいて前記トークンを検出してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフィールド機器によれば、所定の時間内にトークンを検出したか否かにより通信形態を切り替えるので、複数の出力形態に対し容易かつ安全に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図1〜図3を参照して、本発明によるフィールド機器の一実施形態について説明する。
【0013】
図1(a)は、本実施形態のフィールド機器の構成を示すブロック図、図1(b)は、フィールド機器1の機能を切り替える動作のための制御系を示すブロック図である。
【0014】
図1(a)に示すように、本実施形態のフィールド機器1は、フィールド機器のセンサ機能を提供するセンサ回路11と、フィールド機器全体の制御を実行するCPU12とを備える。また、CPU12にはRAM13、ROM14およびアドレスデコーダ・外部ウオッチドックタイマーなどの論理回路を内蔵したゲートアレイ15が接続される。
【0015】
また、2線式伝送システムを構成する要素として、フィールド機器1は、より低速なスマート通信(例えば、BRAIN通信、HART(登録商標)通信)に対応するBRAIN/HART受信回路21、BRAIN/HART送信回路22、および4-20mA出力回路23を備える。
【0016】
さらに、フィールドバス対応機器としての機能に対応する要素として、フィールド機器1は、高速なフィールドバス通信に対応するフィールドバス通信受信部31、フィールドバス通信送信部32、およびフィールドバスモデム33を備える。
【0017】
また、フィールド機器1には、バス5との間での接続状態を切り替えるための出力段切替回路41と、バス5上の通信信号の有無および通信速度を検出するためのボートレート検出回路42と、が設けられる。さらに、フィールド機器1はフィールド機器1の各部に電力を供給するための電源回路43およびフィールド機器1の各部にクロックを供給するためのクロック供給回路44を備える(図1(b))。クロック供給回路44のクロック周波数は、通信速度に応じて切り替え可能とされている。
【0018】
図1(b)に示すように、CPU12には出力段切替回路41、ボーレート検出回路42、電源回路43およびクロック供給回路44が接続され、ボーレート検出回路42による検出結果に応じて出力段切替回路41、電源回路43およびクロック供給回路44を制御することにより、フィールド機器1の機能の選択を行う。
【0019】
以下、フィールド機器1における機能の選択動作について説明する。
【0020】
図2は、フィールド機器1における機能の選択手順を示すフローチャートである。図2の手順は、CPU12の制御によりフィールド機器1の起動時に実行される。
【0021】
図2のステップS1では、クロック供給回路44からの供給クロックの初期設定は通信速度の低いスマート通信に対応する周波数とする。これは、供給クロックをフィールド通信に対応する高い周波数に設定すると、全体の消費電力が増加し、結果として電源ラインに重畳する信号がスマート通信である場合に、主出力信号である4-20mA信号に悪影響を及ぼす可能性があるためである。
【0022】
また、ステップS1では、電源回路43からの電力の供給先をCPU12、BRAIN/HART受信回路21、BRAIN/HART送信回路22、4-20mA出力回路23、フィールドバス通信受信部31、およびボーレート検出回路42とする。消費電流を抑制するため、フィールドバス通信送信部32、およびフィールドバスモデム33への電源供給は行わない。
【0023】
次に、ステップS2では、ボーレート検出回路42を介してバス5上のフレームの有無の検出を開始する。
【0024】
次に、ステップS3では、フレームの監視時間(所定の時間)を定める監視タイマをスタートする。フレームの監視時間はフィールドバス通信およびスマート通信の特性を考慮して設定される。すなわち、一般的にフィールドバス通信では、双方向のディジタル通信であることから、ホスト機器が対象機器の存在を確認するためにトークン(例えば、FF機器の場合にはプローブノード(PN))を常時バス5上にフレームとして送信している。このトークンを送信する間隔は、FF機器を例にすると数ミリ秒間隔のオーダーである。また、ホスト機器が何らかのトラブルで無音になったときも、バックアップのホスト機器がクレームラス(Claim LAS)というフレームを送信し始めるまでの間隔も一般的に10ミリ秒以内である。したがって、無音状態が例えば、1秒間継続すればフィールドバス通信が行われていないと判断できるため、フレームの監視時間を1秒間とすれば充分な時間といえる。
【0025】
次に、ステップS4では、監視タイマがタイムアップするのを待って、ステップS5へ進む。
【0026】
ステップS5では、上記監視時間内にフレームが検出されたか否か判断し、判断が肯定されればステップS6へ進み、判断が否定されればステップS10へ進む。
【0027】
ステップS6では、ボーレート検出回路42により検出されたフレームがスマート通信のものであるか否か判断する。判断が肯定されればステップS10へ進み、判断が否定されれば、すなわち、ボーレート検出回路42により検出されたフレームがフィールドバス通信のもの(トークン)と判断されれば、ステップS7へ進む。
【0028】
ステップS7では、クロック供給回路44からの供給クロックの設定を通信速度の高いフィールドバス通信に対応する周波数に変更する。
【0029】
次に、ステップS8では、電源回路43への制御により、スマート通信に関する部位への電源供給を停止し、フィールドバス通信に関する部位、すなわち、ボーレート検出回路42、フィールドバス通信受信部31、フィールドバス通信送信部32、およびフィールドバスモデム33に電源供給する。次いでステップS9では、出力段切替回路41への制御により、バス5への接続状態をフィールドバス通信に対応した状態とする。
【0030】
図3(a)は、ステップS8の処理が終了した後のフィールド機器1の動作状態を示すブロック図であり、動作状態となっている部位のみを抽出している。このように、フィールド機器1はフィールドバス機器として動作する状態(第2の通信手段が機能する状態)となり、ステップS12においてフィールドバス機器としての定常状態に移行して起動時の処理を終了する。
【0031】
一方、ステップS10では、電源回路43への制御により、フィールドバス通信に関する部位への電源供給を停止し、スマート通信に関する部位、すなわち、ボーレート検出回路42、BRAIN/HART受信回路21、BRAIN/HART送信回路22、および4-20mA出力回路23に電源供給する。次いでステップS11では、出力段切替回路41への制御により、バス5への接続状態をスマート通信に対応した状態とする。
【0032】
図3(b)は、ステップS11の処理が終了した後のフィールド機器1の動作状態を示すブロック図であり、動作状態となっている部位のみを抽出している。このように、フィールド機器1は2線式フィールド機器として動作する状態(第1の通信手段が機能する状態)となり、ステップS12において2線式フィールド機器としての定常状態に移行して起動時の処理を終了する。
【0033】
以上のように、本実施例のフィールド機器では、バス5におけるフレームの有無、およびボーレートの検出結果に基づいて、フィールドバス通信とスマート通信とを自動的に認識し、その認識結果に応じて自らをフィールドバス機器または2線式フィールド機器として機能させている。このため、フィールド機器の種類に応じた開発が不要となるとともに、在庫管理などの煩雑な作業も不要となる。
【0034】
また、ボーレートの検出時には、検出に必要な部位にのみ電源供給を行うとともに、ボーレート検出後は、フィールド機器1をフィールドバス機器として機能させるか、あるいは2線式フィールド機器として機能させるかに応じて、必要な部位のみに電源供給を行っている。これにより、全体の消費電力を抑制できると同時に、システムへの悪影響を回避できる。
【0035】
上記実施形態では、フィールドバスとしてFFバスを例示したが、他のフィールドバス(例えばProfibus PA)についても本発明を適用できる。
【0036】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、通信線を介する通信機能を有するフィールド機器に対し、広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】一実施形態のフィールド機器の構成を示す図であり、(a)はフィールド機器の構成を示すブロック図、(b)は、フィールド機器の機能を切り替える動作のための制御系を示すブロック図。
【図2】フィールド機器における機能の選択手順を示すフローチャート。
【図3】定常状態を示す図であり、(a)はフィールドバス機器として動作する状態を示す図、2線式フィールド機器として動作する状態を示す図。
【符号の説明】
【0038】
5 バス(通信線)
12 CPU(制御手段)
21 BRAIN/HART受信回路(第1の通信手段)
22 BRAIN/HART送信回路(第1の通信手段)
23 4-20mA出力回路(第1の通信手段)
31 フィールドバス通信受信部(第2の通信手段)
32 フィールドバス通信送信部(第2の通信手段)
33 フィールドバスモデム(第2の通信手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信線を介する通信機能を有するフィールド機器において、
2線式フィールド機器の通信形態に対応する通信を行う第1の通信手段と、
フィールドバス通信を行う第2の通信手段と、
前記フィールドバス通信におけるトークンを検出するトークン検出手段と、
所定の時間内に前記トークン検出手段により前記トークンを検出した場合には、前記第2の通信手段を機能させ、所定の時間内に前記トークン検出手段により前記トークンを受信できなかった場合には、前記第2の通信手段を機能させない制御手段と、
を備えることを特徴とするフィールド機器。
【請求項2】
前記制御手段は、所定の時間内に前記トークン検出手段により前記トークンを受信できなかった場合には、前記第1の通信手段を機能させることを特徴とする請求項1に記載のフィールド機器。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1の通信手段または前記第2の通信手段への電源供給の有無により、前記第1の通信手段または前記第2の通信手段を機能させるか否かを制御することを特徴とする請求項1または2に記載のフィールド機器。
【請求項4】
前記第1の通信手段および前記第2の通信手段は互いに通信速度が異なり、前記トークン検出手段は、前記通信線のフレームのボーレートに基づいて前記トークンを検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィールド機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−134752(P2010−134752A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310931(P2008−310931)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】