説明

フェノキシ酢酸誘導体の製造中間体およびその使用方法

本発明は、β3−アドレナリン受容体刺激作用を有し、肥満症、高血糖症、腸管運動亢進に起因する疾患、頻尿、尿失禁、うつ病または胆石の予防あるいは治療薬として有用な下記一般式(X)で表されるフェノキシ酢酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩を製造するために有用な新規な下記一般式(I)等の製造中間体、該中間体の製造方法および使用方法を提供する。


(式中、R、Rは、独立して低級アルキル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、β−アドレナリン受容体刺激作用を有し、肥満症、高血糖症、腸管運動亢準に起因する疾患、頻尿、尿失禁、うつ病、胆石または腸管運動亢進に起因する疾患の予防あるいは治療薬として有用な一般式(X):

(式中、Rは低級アルキル基を表わす)で表わされるフェノキシ酢酸誘導体またはその薬理学的に許容される塩を製造するために有用な新規な製造中間体、該製造中間体の製造方法および使用方法に関するものである。
【背景技術】
一般式(X)で表わされるフェノキシ酢酸誘導体の製造方法として、WO00/02846公報に一般式(XI):

(式中、Rは低級アルコキシ基を表わし、R、Rは低級アルキル基を表わし、Yはp−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などの脱離基を表わす)で表わされるアルキル化剤と、式(IX):

で表わされるアミンとを塩基の存在下または非存在下で反応させる方法が開示されているが、本発明の一般式(I)で表わされる化合物については何ら記載されていない。
【発明の開示】
本発明者らは、一般式(X)で表されるフェノキシ酢酸誘導体またはその薬理学的に許容される塩を簡便にかつ高収率に製造するために有用な新規な製造中間体について鋭意研究を重ねた結果、一般式(I)で表される新規なヘミアセタール化合物を見出し、該ヘミアセタール化合物(I)を使用することによりフェノキシ酢酸誘導体(X)を極めて収率よく製造できること、さらには該ヘミアセタール化合物(I)を、2,5−キシレノールから容易に製造できることを見出し、これらの知見に基づき本発明を完成した。
すなわち本発明は、
(1) 一般式(I):

(式中、RおよびRは、独立して低級アルキル基である)で表わされる化合物;
(2) RおよびRがエチル基である上記(1)に記載の化合物;
(3) 式(II):

で表される化合物と、一般式(III):

(式中、Rは、低級アルキル基である)で表される化合物とを反応させることにより、一般式(IV):

(式中、Rは、上記定義の通りである)で表される化合物を製し;
該一般式(IV)で表される化合物と、一般式(V):

(式中、Zは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり、Rは低級アルキル基である)で表される化合物とを反応させることにより、一般式(VI):

(式中、RおよびRは、上記定義の通りである)で表される化合物を製し;
該一般式(VI)で表される化合物を還元することにより、一般式(VII):

(式中、RおよびRは、上記定義の通りである)で表される化合物を製し;
該一般式(VII)で表される化合物を加水分解することにより、一般式(VIII):

(式中、Rは、上記定義の通りである)で表される化合物を製し;
該一般式(VIII)で表される化合物とROH(式中、Rは低級アルキル基である)とを反応させることを特徴とする、一般式(I):

(式中、RおよびRは上記定義の通りである)で表される化合物の製造方法;
(4) RおよびRがエチル基であり、Rがメチル基である上記(3)に記載の製造方法;
(5) 一般式(IV):

(式中、Rは低級アルキル基である)で表される化合物;
(6) Rがメチル基である上記(5)に記載の化合物;
(7) 一般式(VI):

(式中、RおよびRは、独立して低級アルキル基である)で表される化合物;
(8) 一般式(VII):

(式中、RおよびRは、独立して低級アルキル基である)で表される化合物;
(9) Rがエチル基であり、Rがメチル基である上記(7)または(8)に記載の化合物;
(10) 一般式(VIII):

(式中、Rは、独立して低級アルキル基である)で表される化合物;
(11) Rがエチル基である上記(10)に記載の化合物;
(12) 一般式(I):

(式中、RおよびRは、独立して低級アルキル基である)で表わされる化合物と、式(IX):

で表される化合物とを還元剤の存在下で反応させ、その後、必要であれば薬理学的に許容される塩を形成させることを特徴とする、一般式(X):

(式中、Rは上記定義の通りである)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩の製造方法;
(13) RおよびRがエチル基である上記(12)に記載の製造方法に関する。
本発明において、低級アルキルとは炭素数1から6の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表わし、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基などが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の一般式(I)で表わされる化合物は、下記スキームに示す工程a〜工程eの反応を行うことにより製造することができる。

(式中、R、R、RおよびZは、上記と同義である)
工程a
式(II)で表される2,5−キシレノールと一般式(III)で表わされる化合物とを、アルカリ金属水酸化物水溶液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液)の存在下に反応させることにより、一般式(IV)で表わされるフェノール誘導体を製造することができる。
化合物(III)およびアルカリ金属水酸化物の量は、通常、2,5−キシレノール(II)に対して約1〜約3当量の範囲から適宜選択して使用される。本反応は、通常、約10〜約70℃の温度で1〜10時間行われ、反応終了後、反応液を希酸(例えば、希塩酸)を用いて中和し、析出する結晶をろ過、乾燥することにより、一般式(IV)で表わされるフェノール誘導体を得ることができる。
工程b
このフェノール誘導体(IV)と一般式(V)で表されるハロ酢酸エステルとを、不活性溶媒中、塩基の存在下に反応させることにより、一般式(VI)で表わされる化合物を製造することができる。
本反応に使用できる不活性溶媒としては、例えば、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどを挙げることができ、これらの不活性溶媒を単独でまたは2種以上混合して使用することができる。塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどを使用することができる。ハロ酢酸エステル(V)としては、ClCHCO、BrCHCOまたはICHCOを使用することができる。ハロ酢酸エステル(V)および塩基の量は、通常、フェノール誘導体(IV)に対して約1〜約5当量の範囲から適宜選択して使用される。ハロ酢酸エステル(V)と塩基のモル比は、通常、等モルが使用されるが、いずれか一方を過剰に使用しても良い。本反応は、通常、約0〜約100℃の温度で1〜24時間行われ、反応終了後、常法により抽出、濃縮することにより、一般式(VI)で表わされる化合物を得ることができる。
工程c
この化合物(VI)を、不活性溶媒中、還元剤の存在下に反応させることにより、一般式(VII)で表わされるアセタール誘導体を製造することができる。
本反応に使用できる不活性溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチルなどの有機カルボン酸エステル類、アセトニトリルなどを挙げることができ、これらの不活性溶媒を単独でまたは2種以上混合して使用することができる。還元剤としては、ヨウ化ナトリウム/トリアルキルクロロシラン(例えば、クロロトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、t−ブチルジメチルクロロシランなど)などを使用することができ、通常、化合物(VI)に対して約2〜約6当量の範囲から適宜選択して使用することができる。本反応は、通常、約−30〜約30℃の温度で10分〜12時間行われ、反応終了後、常法により抽出、濃縮することにより一般式(VII)で表わされるアセタール誘導体を得ることができる。
工程d
このアセタール誘導体(VII)を適切な溶媒中、酸を使用して加水分解することにより、一般式(VIII)で表されるアルデヒド誘導体が得られる。
加水分解反応に使用できる溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン等のエーテル類、アセトンなどのケトン類、アセトニトリルなどを挙げることができ、これらの溶媒を単独でまたは2種以上混合し、必要に応じて水を添加して使用することができる。酸としては、5〜20%過塩素酸、1〜10%塩酸、1〜10%硫酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などを使用することができ、通常、アセタール誘導体(VII)に対して約0.1〜約2.5当量の範囲から適宜選択して使用される。加水分解反応は、通常、約0〜約50℃の温度で0.5〜24時間行われ、反応終了後、常法により抽出、濃縮することによりアルデヒド誘導体(VIII)が得られる。
工程e
このアルデヒド誘導体(VIII)に、必要に応じて酸(例えば、酢酸など)と共に、ROHを加えることにより、本発明の一般式(I)で表わされるヘミアセタール誘導体を製造することができる。
このアルデヒド誘導体(VIII)へのROHの付加反応は速やかに進行し、適切な溶媒から結晶化させることにより、一般式(I)で表わされるヘミアセタール誘導体を得ることができる。ROHの量は、通常、アルデヒド誘導体(VIII)に対して約1〜約10当量の範囲から適宜選択して使用される。酸を使用する場合、通常、アルデヒド誘導体(VIII)に対して約0.01〜約0.1当量の酸が使用される。結晶化に使用できる溶媒としては、例えば、ROHと、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサンなどとの混合溶媒を挙げることができる。このヘミアセタール誘導体(I)は、良好な結晶性を示し、一定の保存条件下(例えば、10℃以下)では長期間保存できるので工業的生産に好適である。
次にこのようにして得られた本発明の一般式(I)で表わされるヘミアセタール誘導体を使用して、医薬品として有用な一般式(X)で表されるフェノキシ酢酸誘導体を製造する方法について説明する。

(式中、RおよびRは、上記と同義である)
一般式(I)で表されるヘミアセタール誘導体と式(IX)で表されるアミンとを不活性溶媒中、還元剤の存在下に反応させることにより、一般式(X)で表されるフェノキシ酢酸誘導体を製造することができる。
本反応に使用することができる不活性溶媒としては、例えば、テトラヒドフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサンなどのエーテル類、メチレンクロリド、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、酢酸などの有機カルボン酸類、トルエンなどの炭化水素類、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトニトリルなどが挙げられ、これらの溶媒を単独または2種以上混合して使用することができる。還元剤としては、NaBH、NaBHCN、NaBH(OAc)、NaBH(OMe)などの水素化ホウ素アルカリ金属類、BH・ピリジン、BH・N,N−ジエチルアニリンなどのボラン類を、必要に応じて酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸、塩酸などの酸またはトリエチルアミンなどの塩基の存在下で使用するか、あるいは触媒量の金属触媒(例えば、5〜10%パラジウムカーボン、ラネーニッケル、酸化白金、パラジウムブラック、10%白金カーボン(硫黄被毒)など)の存在下に水素雰囲気下で反応を行うことができる。還元剤として水素化ホウ素アルカリ金属類、ボラン類を使用する場合、これらの試薬を通常、ヘミアセタール誘導体(I)に対して約0.5〜約5当量の範囲から適宜選択して使用することができる。本反応は、通常、約0〜約60℃の温度で1〜48時間行われ、反応終了後、必要に応じて不溶物を除去し、常法により抽出、濃縮することにより一般式(X)で表されるフェノキシ酢酸誘導体を得ることができる。また本反応において、ヘミアセタール誘導体(I)の代わりにアルデヒド誘導体(VIII)を使用してアミン(IX)と反応させることによっても同様にフェノキシ酢酸誘導体(X)を得ることができる。
このフェノキシ酢酸誘導体(X)は、必要に応じて、常法に従いその薬理学的に許容される酸付加塩とすることができる。このような酸付加塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸との酸付加塩、ギ酸、酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、プロピオン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、炭酸、グルタミン酸、アスパラギン酸などの有機カルボン酸との酸付加塩を挙げることができる。
式(IX)で表わされるアミンは、市販のエナンチオマー混合物を常法に従い光学分割するか、文献記載の方法に従って製造することができる(例えば、J.Med.Chem.,20(7):978−981頁(1977))。
本発明の一般式(I)で表される化合物、その製造中間体(IV)、(VI)、(VII)および(VIII)、ならびに化合物(I)を使用して製造される一般式(X)で表されるフェノキシ酢酸誘導体は、必要に応じて慣用の単離・精製手段である溶媒抽出、再結晶、クロマトグラフィーなどの操作を行うことにより、単離・精製することができる。
【実施例】
本発明の内容を実施例でさらに詳細に説明する。なお以下の実施例は本発明を例示することを意図したものであり、発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
4−(1−ヒドロキシ−2,2−ジメトキシエチル)−2,5−ジメチルフェノール
5.2%水酸化ナトリウム水溶液(630g)、2,5−キシレノール(100g)、60%グリオキサールジメチルアセタール水溶液(213g)および水(200g)の懸濁液を55℃で5時間加熱撹拌した。氷浴で冷却し、反応混合物にアセトニトリル(90g)、および7.4%塩酸(380g)を順次加えた。析出結晶をろ過にて集め、4−(1−ヒドロキシ−2,2−ジメトキシエチル)−2,5−ジメチルフェノール(150g)を得た。
H−NMR(DMSO−d)δ ppm:2.06(3H,s),2.15(3H,s),3.08(3H,s),3.35(3H,s),4.23(1H,d,J=6.7Hz),4.55(1H,dd,J=6.7,4.4Hz),4.96(1H,d,J=4.4Hz),6.49(1H,s),7.03(1H,s),8.96(1H,s)
【実施例2】
2−[4−(1−ヒドロキシ−2,2−ジメトキシエチル)−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル
撹拌下のN,N−ジメチルホルムアミド(81g)に、室温にて4−(1−ヒドロキシ−2,2−ジメトキシエチル)−2,5−ジメチルフェノール(20.0g)、炭酸カリウム(15.8g)およびクロロ酢酸エチル(12.4g)を加え、混合物を1時間撹拌し、さらに71℃で2時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水および食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を減圧下濃縮し、残留物に酢酸エチル/n−ヘキサンの混合液を加え、析出させた結晶をろ過にて集め、2−[4−(1−ヒドロキシ−2,2−ジメトキシエチル)−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル(21.3g)を得た。
H−NMR(CDCl)δ ppm:1.28(3H,t,J=7.1Hz),2.26(3H,s),2.32(3H,s),2.54(1H,d,J=2.3Hz),3.22(3H,s),3.50(3H,s),4.27(2H,q,J=7.1Hz),4.32(1H,d,J=6.6Hz),4.61(2H,s),4.80(1H,dd,J=6.6,2.3Hz),6.48(1H,s),7.25(1H,s)
【実施例3】
2−[4−(2,2−ジメトキシエチル)−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル
撹拌下のヨウ化ナトリウム(72g)およびクロロトリメチルシラン(52g)のアセトニトリル(180g)懸濁液を塩氷浴で冷却し、2−[4−(1−ヒドロキシ−2,2−ジメトキシエチル)−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル(50g)のアセトニトリル(80g)溶液を滴下した。その混合物を30分撹拌した後、トルエン(400g)、ピリジン(25g)を加え、反応混合物をチオ硫酸ナトリウム水溶液、クエン酸水溶液、重曹水および食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮して2−[4−(2,2−ジメトキシエチル)−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル(43g)を得た。
H−NMR(CDCl)δ ppm:1.30(3H,t,J=7.1Hz),2.24(3H,s),2.27(3H,s),2.82(2H,d,J=5.6Hz),3.33(6H,s),4.27(2H,q,J=7.1Hz),4.47(1H,t,J=5.6Hz),4.60(2H,s),6.50(1H,s),6.97(1H,s)
【実施例4】
2−[4−(2−ホルミルメチル)−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル
撹拌下に2−[4−(2,2−ジメトキシエチル)−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル(23.7g)をアセトニトリル(110g)に溶解し、10%過塩素酸(120g)を加えて室温で1時間撹拌した。反応混合物をトルエン(190g)および水(120g)間に分配させた後、有機層を水、重曹水および食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残留物をエタノール(96g)に溶かした後、溶媒を留去する操作を2回繰り返し、2−[4−(2−ホルミルメチル)−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル(20.8g)を得た。
H−NMR(CDCl)δ ppm:1.30(3H,t,J=7.1Hz),2.20(3H,s),2.25(3H,s),3.59(2H,d,J=2.4Hz),4.27(2H,q,J=7.1Hz),4.62(2H,s),6.56(1H,s),6.94(1H,s),9.66(1H,t,J=2.4Hz)
【実施例5】
2−[4−(2−エトキシ−2−ヒドロキシエチル)−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル
撹拌下に2−[4−(2,2−ジメトキシエチル)−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル(43g)をアセトニトリル(190g)に溶解し、10%過塩素酸(216g)を加えて室温で1時間撹拌した。反応混合物をトルエン(340g)および水(200g)間に分配させた後、有機層を水、重曹水および食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残留物をエタノール(180g)に溶かした後、溶媒を留去した。残留物をヘキサン(86g)およびエタノール(37g)に溶かし、結晶種を加えた後、その溶液を0〜10℃で2時間撹拌した。ヘキサン(220g)を加え、懸濁液を0〜10℃で2時間撹拌した。析出した結晶をろ過にて集め、2−[4−(2−エトキシ−2−ヒドロキシエチル)−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル(21g)を得た。
H−NMR(DMSO−d)δ ppm:1.06(3H,t,J=7.0Hz),1.21(3H,t,J=7.1Hz),2.11(3H,s),2.19(3H,s),2.50−2.80(2H,m),3.20−3.40(1H,m),3.60−3.70(1H,m),4.16(2H,q,J=7.1Hz),4.50−4.70(1H,m),4.73(2H,s),5.98(1H,d,J=7.6Hz),6.59(1H,s),6.93(1H,s)
【実施例6】
(−)−2−[4−[2−[[(1S,2R)−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル
2−[4−(2−エトキシ−2−ヒドロキシエチル)−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル(5.4g)、10%パラジウムカーボン(50%含水品)(1.4g)、(1R,2S)−2−アミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−1−オール(3.0g)およびテトラヒドロフラン(30g)の懸濁液を水素雰囲気下、40℃で3時間撹拌した。触媒をろ過にて除去した後、ろ液を減圧下濃縮した。残留物をトルエンに溶かし、水、重曹水および食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下に濃縮後、(−)−2−[4−[2−[[(1S,2R)−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル(7.3g)を得た。
H−NMR(CDCl)δ ppm:0.98(3H,d,J=6.4Hz),1.34(3H,t,J=7.1Hz),2.18(3H,s),2.22(3H,s),2.60−3.00(5H,m),4.31(2H,q,J=7.1Hz),4.49(1H,d,J=5.6Hz),4.62(2H,s),6.41(1H,s),6.69(2H,d,J=8.5Hz),6.78(1H,s),7.05(2H,d,J=8.5Hz)
【実施例7】
(−)−2−[4−[2−[[(1S,2R)−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル塩酸塩
2−[4−(2−エトキシ−2−ヒドロキシエチル)−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル(68.7g)、10%パラジウムカーボン(50%含水品)(17g)、(1R,2S)−2−アミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−1−オール(38.0g)およびテトラヒドロフラン(380g)の懸濁液を水素雰囲気下、40℃で5時間撹拌した。触媒をろ過にて除去した後、ろ液を減圧下濃縮した。残留物をトルエンに溶かし、水、重曹水および食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下に溶媒を留去した。残留物をトルエン(200g)およびエタノール(21g)に溶かし、氷冷下、その溶液に20重量%塩化水素含有エタノール(37.3g)を滴下した。析出した結晶をろ取し、(−)−2−[4−[2−[[(1S,2R)−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−2,5−ジメチルフェノキシ]酢酸エチル塩酸塩(70.2g)を得た。
H−NMR(DMSO−d)δ ppm:0.96(3H,d,J=6.6Hz),1.21(3H,t,J=7.1Hz),2.15(3H,s),2.25(3H,s),2.8−3.2(4H,m),4.16(2H,q,J=7.1Hz),4.76(2H,s),4.9−5.1(1H,m),5.8−6.0(1H,m),6.68(1H,s),6.76(2H,d,J=8.5Hz),6.96(1H,s),7.17(2H,d,J=8.5Hz),8.5−9.0(2H,br),9.41(1H,s)
【産業上の利用可能性】
本発明の一般式(I)で表されるヘミアセタール誘導体を経由することにより、市販の2,5−キシレノールから一般式(X)で表わされるフェノキシ酢酸誘導体またはその薬理学的に許容される塩を極めて簡便にかつ収率よく製造することができる。従って該ヘミアセタール誘導体(I)は、肥満症、高血糖症、腸管運動亢進に起因する疾患、頻尿、尿失禁、うつ病、胆石または腸管運動亢進に起因する疾患の予防あるいは治療薬のための製造中間体として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):

(式中、RおよびRは、独立して低級アルキル基である)で表わされる化合物。
【請求項2】
およびRがエチル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(II):

で表される化合物と、一般式(III):

(式中、Rは、低級アルキル基である)で表される化合物とを反応させることにより、一般式(IV):

(式中、Rは、上記定義の通りである)で表される化合物を製し;
該一般式(IV)で表される化合物と、一般式(V):

(式中、Zは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり、Rは低級アルキル基である)で表される化合物とを反応させることにより、一般式(VI):

(式中、RおよびRは、上記定義の通りである)で表される化合物を製し;
該一般式(VI)で表される化合物を還元することにより、一般式(VII):

(式中、RおよびRは、上記定義の通りである)で表される化合物を製し;
該一般式(VII)で表される化合物を加水分解することにより、一般式(VIII):

(式中、Rは、上記定義の通りである)で表される化合物を製し;
該一般式(VIII)で表される化合物とROH(式中、Rは低級アルキル基である)とを反応させることを特徴とする、一般式(I):

(式中、RおよびRは上記定義の通りである)で表される化合物の製造方法。
【請求項4】
およびRがエチル基であり、Rがメチル基である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
一般式(IV):

(式中、Rは低級アルキル基である)で表される化合物。
【請求項6】
がメチル基である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
一般式(VI):

(式中、RおよびRは、独立して低級アルキル基である)で表される化合物。
【請求項8】
一般式(VII):

(式中、RおよびRは、独立して低級アルキル基である)で表される化合物。
【請求項9】
がエチル基であり、Rがメチル基である、請求項7または8に記載の化合物。
【請求項10】
一般式(VIII):

(式中、Rは、独立して低級アルキル基である)で表される化合物。
【請求項11】
がエチル基である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
一般式(I):

(式中、RおよびRは、独立して低級アルキル基である)で表わされる化合物と、式(IX):

で表される化合物とを還元剤の存在下で反応させ、その後、必要であれば薬理学的に許容される塩を形成させることを特徴とする、一般式(X):

(式中、Rは上記定義の通りである)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩の製造方法。
【請求項13】
およびRがエチル基である、請求項12に記載の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/026807
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【発行日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537493(P2004−537493)
【国際出願番号】PCT/JP2002/009034
【国際出願日】平成14年9月5日(2002.9.5)
【出願人】(000104560)キッセイ薬品工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】