説明

フェノール、アセトン、α−メチルスチレン及び酸化プロピレンのコプロダクション及びその触媒

α−メチルスチレン、アセトン、及びフェノール、を生成する方法であって、α−メチルスチレンの生成量がクメンヒドロペルオキシドの一部をジメチルフェニルカルビノール、α−メチルスチレンの水化物に選択的に変換することにより制御できる方法を開示する。従って、生成したジメチルフェニルカルビノールにより、フェノールプラントの酸開裂ユニットにおいて、脱水によりα−メチルスチレンの生成が増加される。ジメチルフェニルカルビノールに還元されるクメンヒドロペルオキシドのフラクション制御により、プラントで生成されるα−メチルスチレン量をα−メチルスチレン市場の需要に連続的に合わせることができる。また、クメンヒドロペルオキシドを還元するための非酸性触媒を開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明はフェノール、アセトン、α−メチルスチレン及び任意で酸化プロピレンのコプロダクションに関し、及びその触媒に関する;より具体的には、フェノール、アセトン、及びα−メチルスチレンをクメンヒドロペルオキシドから生成する方法及び触媒に関する。
【0002】
発明の背景
AMSの水化物であるジメチルフェニルカルビノール(DMPC)にクメンヒドロペルオキシド(CHP)を選択的に還元することにより、フェノール及びアセトン混合プラントにおいてα−メチルスチレン(AMS)の生成量を増やすことができる。DMPCは2−フフェニル−2−プロパノールまたはジメチルベンジルアルコールとしても公知である(DMBA)。クメンからCHPへの酸化副生成物として、少量のDMPCが生じる。DMPCは酸触媒の存在下、脱水され、AMSを生じる。十分量生成した場合、AMSを回収するフェノール製造業者もいる。一方、AMS回収は行わないが、酸化反応器で再利用するため、水素化してクメンに戻すフェノール製造業者もいる。AMSの水素化はフェノールプラントの蒸留セクションでAMS/クメンストリームの回収後に行うことができる。別の手段として、開裂反応器(cleavage reactor)流出物全体は、全てのAMSを含み、プラントの蒸留セクションでフェノールとアセトンを分離する前に、水素化できる(例えば、米国特許第5,245,090号)。
【0003】
AMSは産業上、様々な用途に用いられ、特に、特定コポリマー及び特殊ポリマーの生成に用いられる。さらに、AMSは不飽和AMS二量体などの精製化学製品の生成の中間体として有用である。これらの二量体はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂及びスチレン−ブタジエンゴムなどのコポリマーの生成で分子量調整剤として用いる。AMS二量体の水素化物は潤滑組成物中の成分として工業的に重要である。
【0004】
クメンからフェノールを生成する際のAMS収量を増加する試みで多数の特許方法が開発されてきた。これらの方法は、通常、二次反応によるAMS損失を最小限にすることによりAMS収量の増加を試みるものである。1の手段は複数工程方法を採用し、当該方法はCHP及びDMPCを硫酸と逆混合反応器中で反応させ、ジクミルペルオキシドを生成し、続いて、栓流(plug−flow)条件下、高温で分解させ、AMS、フェノール及びアセトンを生成する(例えば、米国特許第4,358,618号)。二次反応によるAMS損失を最小限にする別の手段は複数工程方法を採用し、当該方法はCHPを逆混合器中で分解し、次にアセトン及び/または水などの阻害剤をAMSの二次反応を制御するために加えた後、栓流型反応器中でDMPCの脱水を行う(例えば、米国特許第5,998,677号及び第5,463,136号)。しかしながら、これらの方法では酸化器ユニットで生成されるDMPCの完全脱水により得ることができる理論上の最大値以上にはAMS収量は増加しない。これらの方法は単に重(heavy)副生成物へのAMS損失を最小限にすることのみを追及しており、酸化器ユニットから出るDMPCに基づいて、理論上最大値の70〜80%のAMS収量を生じるだけである。
【0005】
本発明の方法は、適当な不均一触媒下、CHPストリームの一部をDMPCに還元することにより酸化器溶出物中のDMPCに基づいた理論最大値を上回る、AMS収量を増加させる方法を提供する。このプロセスストリームは、増加したDMPC量を有し、フェノールプラントの開裂ユニットに供給でき、ここで残留CHPはフェノール及びアセトンに酸触媒分解される。分解中、酸触媒はDMPCをAMSに脱水する。DMPCに還元されるCHPフラクションを制御することにより、プラント内で生成されるAMS量は連続的に市場需要に見合うようにできる。
【0006】
また、本発明は、エポキシ化反応においてプロピレンの外部供給源とCHPの一部を反応させることによりAMS収量を制御する方法を提供する。エポキシ化反応器において、CHPの一部はエポキシ化触媒の存在下、DMPCに還元され、プロピレンは酸化プロピレンになる。酸化プロピレンは有用な副生成物として回収できる。エポキシ化反応器を出た溶液はDMPCを多く含み、それから、フェノールプラントの開裂ユニットに供給でき、ここで残留CHPはフェノール及びアセトンに酸触媒分解される。分解中、酸触媒はDMPCをAMSに脱水できる。CHPがDMPCに還元されるフラクションを制御することにより、プラント内で生成されるAMSの量は連続してAMSの市場需要に見合うものとすることができる。
【0007】
現在、需要に応じたAMS生成が可能なフェノール製造の方法は存在しない。AMSは酸化反応器内で生成したDMPCの脱水から回収できるのみである。現在の方法は、DMPCレベルが酸化により増加した場合、好ましくない副反応によりアセトフェノンを多く生じるので、酸化により生成したDMPCの量を制御できる柔軟性がない。AMSを別個の生成物として回収するか、またはクメンに水素化して再利用するかにかかわらず、AMS収量を最大にする多数の方法が特許文献に開示されている。これらのAMS収量の改善方法は、溶媒としてアセトンを用いてAMSを希釈することにより、または別の反応器構成を用いることによりAMSの副反応を最小限にしようとするものである。いずれの方法を使用しても、現在の最新プラントの最大AMS収量は、酸化反応器を離れるDMPCに基づいて通常70〜80%の範囲内である。
【0008】
発明の概要
本発明はAMSとアセトン及びフェノールを共に生成する方法を含み、当該方法は酸素含有ストリームの存在下、クメン含有ストリームを酸化してCHP含有ストリームを形成する工程を含む。CHPストリームの一部は触媒、好ましくは非酸性触媒の存在下、還元してDMPC含有ストリームを形成することができる。DMPC含有ストリーム及び前記CHPストリームの残留部を触媒、好ましくは酸性触媒の存在下、変換して、AMS、アセトン及びフェノール含有の生成ストリームを形成する。AMS、アセトン及びフェノールをそれぞれ前記生成ストリームから分離する。本発明において、DMPCに還元されるCHPの量は、CHP含有ストリームの約0から約50重量%までである。
【0009】
また、本発明はアセトン及びフェノールと一緒にAMS及び酸化プロピレンを共に生成する方法も含み、当該方法は酸素含有ストリームの存在下、クメン含有ストリームを酸化してCHP含有ストリームを形成する工程を含む。CHPストリームの一部はエポキシ化触媒及びプロピレン含有ストリームの存在下、還元して、DMPC及び酸化プロピレン含有ストリームを形成することができる。酸化プロピレンを反応器ストリームから分離し、DMPC含有ストリームが残る。DMPC含有ストリーム及び前記CHPストリームの残留部を触媒、好ましくは酸性触媒の存在下、変換し、AMS、アセトン、及びフェノールを含有する生成ストリームを形成する。AMS、アセトン、及びフェノールを前記生成ストリームからそれぞれ分離する。本発明において、DMPCに還元されるCHPの量は、CHP含有ストリームの約0から約50重量%までである。
【0010】
本発明はさらに、クメンヒドロペルオキシドをジメチルフェニルカルビノールに還元する非酸性触媒を含み、前記触媒は金属及び触媒担体を含み、好ましくは酸化ジルコニウムまたはアルミノホスフェートに担持されたコバルトを含む。
【0011】
好ましい実施態様の詳細な説明
図1は、フェノール、アセトン及びAMSのコプロダクション処理スキーム1として本発明の実施態様の概略フロー図を表す。ストリーム10のクメンは酸化反応器101に供給され、ここでクメンとストリーム12から供給された空気の酸素との反応によりCHPが生成される。クメンの酸化を促進する開始剤はストリーム13として加えることができる。好ましくは、これらの開始剤は有機ヒドロペルオキシドであり、例えばCHP、tert−ブチルヒドロペルオキシド、エチルベンゼンヒドロペルオキシド等である。もしくは、これらの開始剤はアゾ型フリーラジカル開始剤またはペルオキシ型フリーラジカル開始剤であり、これらは有機炭化水素の酸化を触媒することが知られる。本発明の方法で使用できる当該アゾ型フリーラジカル開始剤及びペルオキシ型フリーラジカル開始剤の例は、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering(ポリマー科学及び工学百科事典)、第2巻、143頁以下参照、1985及び第11巻、1頁以下参照、1988にそれぞれ記載されている。CHPストリーム14は、非反応クメンと共にDMPC及びアセトフェノンを含み、処理スキーム1(図示せず)の開裂セクションの前に非反応クメンの一部を除去することにより濃縮できる。
【0012】
本発明の実施態様において、増加した量のAMSをフェノール及びアセトンと一緒に生成する場合、CHPストリーム14を、AMSの望ましいプラント産出量に従って設定した分割比α=16/15でストリーム15と16に分ける。ストリーム16を還元反応器103に送り、ここでストリーム16のCHPの一部を適当な触媒上でDMPCに還元する。還元反応器を出るストリーム17はCHPストリーム14と比較してDMPC濃度が増加している。好ましくは、還元反応器103のCHPからフェノール及びアセトンへの変換を最小限にするために、そこで使用する触媒は非酸性または低酸性触媒担体及び金属からなる不均一触媒である。非酸性または低酸性触媒担体は、限定されないが、シリカ、アルミナ、結晶またはアモルファスアルミノホスフェート;第4族金属酸化物、例えば、チタニア、ジルコニア、ハフニア及びこれらの混合物;及びMCM−41などのメソポーラス・モレキュラーシーブを含む。そのような触媒担体に担持される金属は、限定されないが、第8、第9または第10遷移金属、例えば、コバルト、鉄、ニッケル、またはこれらの混合物;第2族金属、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウムまたはこれらの混合物;第1族金属、例えばリチウム、ナトリウム、セシウム及びこれらの混合物;第3族金属、例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタンまたはこれらの混合物;または上記の混合物及び/または組み合わせを含む。本願明細書で用いる族番号はIUPACフォーマットを用いる元素周期表からであり、CRC Handbook Chemistry and Physics、第79版、CRC Press、Boca Raton,フロリダ(1998)に記載されている。
【0013】
より好ましくは、当該不均一触媒は担体上の第8、9または10族遷移金属であり、例えば、酸化ジルコニウムなどの第4族金属酸化物上に担持されたコバルト、または以下に説明する実施例1及び3に記載のアルミノホスフェート上に担持されたコバルトなどである。これらの混合金属酸化物は、含浸法、incipient wetness法、またはイオン交換などの当業者に公知の一般的な方法により調製でき、または溶性食塩水から金属酸化物を共沈させることにより調製できる。
【0014】
ストリーム15及び17は開裂反応器102にまず送り、ここで酸性触媒はCHPをフェノール及びアセトンに分解し、DMPCをAMSに脱水する。酸性触媒は硫酸などの液相中、ストリーム18を通って供給できる。好ましくは、触媒は固体酸触媒などの固相中、ヒドロペルオキシドをアルコール及びケトンに分解できる。当該固体酸触媒は、米国特許第6,169,215号に開示されているように、第4族金属酸化物源を第6族金属のオキシアニオン源を用いて少なくとも温度400℃で焼成することにより生成される触媒;米国特許第6,169,216号に開示の硫酸遷移金属酸化物;及び米国特許第6,297,406号に開示のセリウム及び第4金属の混合金属酸化物を含む。米国特許第6,169,215号、第6,169,216号、及び第6,297,406号の開示の内容はその全体をここに引用する。第1の開裂反応器102からの流出物、ストリーム19は、フェノール、アセトン、AMS、アセトフェノン、クメン及び二次反応から生成される副生成物(heavies)からなる。
【0015】
ここに記載の実施態様において、副生成物(heavies)の形成を最小限にするために、AMSを開裂反応器内で希釈することが好ましい。考えられるひとつの希釈ストリームは生成物自体である。第1の開裂反応器102を例えば、米国特許第6,169,215号、第6,169,216号、及び第6,297,406号に記載されている固体酸触媒を用いて栓流反応器構成において操作する場合、AMSの二次反応を最小限にするために、注入口でAMS濃度をできるだけ低くすることが望ましい。この目的の達成のため、希釈ストリーム23のAMSを最小限にすることが望ましい。これは溶出ストリーム19の一部をストリーム20として水素化することにより達成できる。ストリーム20は水素ストリーム22及び水素化触媒(図示せず)の存在下、水素化反応器104で水素化される。
【0016】
好ましくは、水素化反応器104で使用する水素化触媒は、水素化成分及び触媒担体を含む。水素化触媒の水素化成分は第8、9、または10族遷移金属由来のものでもよく、例えば、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、ニッケル、コバルト、鉄及びこれらの2以上の混合物である。好ましい金属はパラジウム及びプラチナである。第8、9、または10族遷移金属は任意で第14族金属、好ましくは錫と混合でき、及び/または第7族金属、好ましくはレニウム及び/またはマンガンと混合できる。水素化成分として作用できるその他の当業界に公知の金属は、限定されないが、タングステン及びモリブデンなどの第6族金属、銅、銀及び金などの第11族金属を単独または組み合わせて含む。水素化成分の量は全触媒の0.001〜30重量%の範囲であり、好ましくは0.01〜5重量%である。水素化成分は担体物質上に交換でき、含浸でき、または物理的に混合できる。適当な触媒担体物質は当業界に公知であり、例えば、アルミナ、シリカ、粘土、炭素、ジルコニア、チタニア及びMCM−41に例示されるようなメソポーラス・モレキュラーシーブ及びこれらの混合物である。
【0017】
希釈ストリーム23は第1の開裂反応器102の前部に完全に送ることができる。もしくは、希釈ストリーム23は必要な希釈効果を得るために、一段階以上で端から端まで供給できる。分割比β=20/21は必要な希釈を与えるため設定し、副生成成分の形成を最小限にする。βの増加により開裂反応器内で生成する副生成成分の量が減少するが、そのかわりに回収可能なAMSが減少する。開裂反応器の必要な希釈を行うことに加え、ストリーム23は反応器の熱除去を補助するため、第1の開裂反応器102に入る前に冷却してもよい。別の希釈剤として、または生成物の再利用に加えて、アセトン塔113からのアセトンをストリーム29で開裂反応器に戻してもよい。
【0018】
第1の開裂反応器102からのストリーム21は第2の開裂反応器105に送られる。第2の開裂反応器105は第1の開裂反応器102と同じまたは異なる条件で操作できる。例えば、第2の開裂反応器105は第1の開裂反応器102よりも高温で操作できる。第2の開裂反応器105は通常、栓流反応器であり、触媒床を含んでも含まなくてもよい。硫酸などの液体酸を第1の開裂反応器102で用いる場合、第2の開裂反応器105で必要な反応を触媒するのに十分な酸性度がストリーム21に残っていると考えられる。好ましい実施態様において、第2の開裂反応器105は、米国特許第6,169,215号;第6,169,216号;及び第6,297,406号に記載されているような固体酸触媒を含む。第2の開裂反応器105は第1の開裂反応器102内で形成し得る過酸化ジクミルを分解するため、及び残留CHPをフェノール及びアセトンに変換するために用いる。他の実施態様において、一連の2以上の反応器をCHPの最終変換のために用いることができ、アセトンなどの希釈剤は各反応前に加えても加えなくてもよい。
【0019】
本発明の他の実施態様において、処理スキーム1はフェノール及びアセトンを生成し、AMS生成量を最小限とするために操作することができる。この方法で行う場合、分割比αはゼロであり、全てのCHPストリーム14は第1の開裂反応器102(ストリーム15として)に送られ、その結果、還元反応器103をバイパスする。次に、希釈ストリーム23及び任意でストリーム29はストリーム15と一緒に酸性触媒の存在下で第1の開裂反応器102に送られ、ここでCHPはフェノール及びアセトンに分解される。当該酸性触媒は好ましくは、上に述べたようなヒドロペルオキシドを分解できる固体酸触媒である。この実施態様における溶出ストリーム19は主に、フェノール、アセトン、クメン及び少量のAMS及び副生成物からなる。希釈ストリーム23は溶出ストリーム19の一部である水素化ストリーム20により、上に述べたような適当な水素化触媒を用いて水素化反応器104内で形成される。ストリーム21は溶出ストリーム19の残りの部分であり、次に、所望によりさらに変換するために第2の開裂反応器105に送られる。
【0020】
本発明のさらに他の実施態様において、DMPC形成及びCHP開裂の反応温度は類似しているので、2床、単一反応器を還元及び開裂に用いることができる(図示していない)。上部床は、上述の通り、多量のCHPをフェノール及びアセトンに変換せず、DMPCを生成し、所望のAMS収量を生じる不均一触媒を含んでもよい。底部床は残留CHPをフェノール及びアセトンに分解し、DMPCをAMSに脱水する適当な酸性触媒を含むことができる。
【0021】
上述の通り、開裂反応器102及び105内で固体触媒を用いることは好ましいが、CHPを分解するために、硫酸などの液体酸を用いることも本発明の範囲内である(図示せず)。液体酸を使用する場合、プラントの回収工程前に中和工程が必要である。当該中和工程は液体塩基またはイオン交換樹脂等を用いることができ、当業者に公知である。
【0022】
プラントの開裂工程から出たストリーム24から個々の成分を分離する、多数の方法が当業者に公知である。以下の蒸留スキームは説明目的としてのみ示すものである。開裂反応器105からストリーム24は未精製アセトン塔110に送られ、ここで、アセトン及び軽量成分はフェノール及び重量成分から分離される。上部ストリーム25はアセトアルデヒドなどの軽量成分をストリーム26として取り除く軽量トッピング塔(Lights Topping Tower)112に送られる。トッピング塔の底部、ストリーム27は精製アセトンカラム113に送られ、ここで生成物指定アセトン(product specification acetone)がストリーム28として回収される。未精製アセトン塔110からの底部、ストリーム31はフェノール及び多少のAMS、クメン、アセトフェノン及び副生成物を含み、副生成物最終塔(Heavy Ends Tower)114に送られ、ここで重量成分はストリーム33として分離される。上部ストリーム32は炭化水素除去塔115に送られ、ここで残留AMS及びクメンがフェノールから分離し、ストリーム34としてAMS回収工程に送られる。未精製フェノール生成物、ストリーム35はフェノール最終工程塔116に送られ、ここで、生成物指定フェノールは上部でストリーム36として回収される。AMS及びクメンストリーム30及び34はAMS回収塔117に送られ、ここでAMSは生成物ストリーム39として回収され、クメンはストリーム38として酸化反応器101に戻る。
【0023】
分割比α及びβを制御することにより、プラントで生成されるAMSの量を連続的にCHP含有ストリームの約0〜約50重量%に設定でき、好ましくはCHP含有ストリームの約0〜約30重量%、より好ましくはCHP含有ストリームの約0〜約20重量%、及び最も好ましくはCHP含有ストリームの約0〜約15重量%にAMS市場の需要に合うように設定できる。
【0024】
図2は、酸化プロピレン、AMS、フェノール及びアセトンのコプロダクションに関する処理スキーム40として、本発明の別の実施態様の概略フロー図を表す。ストリーム41中のクメンは酸化反応器101に送られ、ここでストリーム42として送られる空気からの酸素とクメンの反応によりCHPが生成される。クメンの酸化を促進する開始剤はストリーム43として添加できる。好ましくは、これらの開始剤はCHP、tert−ブチルヒドロペルオキシド、エチルベンゼンヒドロペルオキシド等などの有機ヒドロペルオキシドである。もしくは、これらの開始剤は、処理スキーム1に関して開示したように、アゾ型フリーラジカル開始剤またはペルオキシ型フリーラジカル開始剤等などの有機炭化水素の酸化を触媒することが知られるフリーラジカル開始剤であってもよい。CHPストリーム45は、非反応クメンと一緒にDMPC及びアセトフェノンを含み、処理スキーム40の開裂工程前に、非反応クメンの一部を除去することにより濃縮できる。
【0025】
次に、CHPストリーム45は、所望のAMSプラント生産量に従って設定した分割比α=47/46でストリーム46と47に分割される。ストリーム47はエポキシ化反応器120に送られ、ここでストリーム47のCHPの一部はプロピレン含有供給ストリーム44と反応して生成ストリーム70として酸化プロピレンを生成する。エポキシ化反応の間、CHPは、シリカまたはモリブデン上に担持されたチタニウムを含む、適当なエポキシ化触媒上でDMPCに還元される。好ましくは、当該エポキシ化触媒は、ここに引用する米国特許第6,114,551号に開示される触媒である。従って、還元反応器から出るストリーム48は、CHPストリーム45と比較してDMPC濃度が増加している。ストリーム48及び46は第1の開裂反応器102に供給され、ここで、酸性触媒はCHPをフェノール及びアセトンに分解し、DMPCをAMSに脱水する。好ましくは、適当な酸性触媒、例えば混合金属酸化物は、処理スキーム1に関して上に開示したものと同じである。第1の開裂反応器102からの溶出物は主に、フェノール、アセトン、AMS、アセトフェノン、クメン、及び二次反応により生じた多少の副生成物からなる。
【0026】
副生成物の形成を最小限にするために、開裂反応器内のAMSを希釈することが好ましい。1の考えられる希釈ストリームは生成物自身である。第1の開裂反応器102を栓流反応器構成内で酸性触媒を用いて操作する場合、AMSの二次反応を最小限にするために、注入口でのAMS濃度はできる限り低くすることが望ましい。これを達成するために、希釈ストリーム53内のAMSは最小限にすることが望ましい。これはストリーム50として溶出ストリーム49の一部を水素化することにより達成できる。ストリーム50は、水素供給ストリーム52及び水素化触媒(図示せず)の存在下、水素化反応器104中で水素化される。
【0027】
水素化反応器104内で用いる適当な触媒は、上述の通り、酸性または非酸性の担体上に担持されたパラジウム及び白金などの貴金属が挙げられる。希釈ストリーム53は水素化反応器104の前部に完全に送ることができる。もしくは、希釈ストリーム53は必要な希釈効果を得るために、一段階以上で端から端まで供給できる。副生成成分の形成を最小限にするのに必要な希釈を与えるため、分割比β=50/51を設定する。βの増加により開裂反応器内で生成する副生成成分の量は減少するが、そのかわりに回収可能なAMSが減少する。別の希釈剤として、または生成物の再利用に加えて、アセトン塔113からのアセトンをストリーム59で開裂反応器に戻してもよい。
【0028】
第1の開裂反応器102からのストリーム51は第2の開裂反応器105に送られる。第2の開裂反応器105は第1の開裂反応器102と同じまたは異なる条件で操作できる。例えば、第2の開裂反応器105は第1の開裂反応器102よりも高温で操作できる。開裂反応器105は通常、栓流反応器であり、触媒床を含んでも含まなくてもよい。硫酸などの液体酸を反応器102で用いる場合、反応器105で必要な反応を触媒するのに十分な酸性度がストリーム51に残っていると考えられる。好ましい実施態様において、開裂反応器105は、米国特許第6,169,215号;第6,169,216号;及び第6,297,406号に記載されているような固体酸触媒を含む。開裂反応器105は開裂反応器102内で形成し得る過酸化ジクミルを分解するため、及び残留CHPをフェノール及びアセトンに変換するために用いる。他の実施態様において、一連の2以上の反応器をCHPの最終変換のために用いることができ、アセトンなどの希釈剤は各反応床前に加えても加えなくてもよい。
【0029】
上述の通り、開裂反応器102及び105内で固体触媒を用いることは好ましいが、CHPを分解するために、硫酸などの液体酸を用いることも本発明の範囲内である。液体酸を使用する場合、プラントの回収工程前に中和工程が必要である(図示せず)。当該中和工程は液体塩基またはイオン交換樹脂等を用いることができ、当業者に公知である。
【0030】
プラントの開裂工程から出たストリーム54から個々の成分を分離する、多数の方法が当業者に公知である。以下の蒸留スキームは説明目的としてのみ示すものである。開裂反応器からストリーム54は未精製アセトン塔110に送られ、ここで、アセトン及び軽量成分はフェノール及び重量成分から分離される。上部ストリーム55はアセトアルデヒドなどの軽量成分をストリーム56として取り除く軽量トッピング塔(Lights Topping Tower)112に送られる。トッピング塔の底部、ストリーム57は精製アセトンカラム113に送られ、ここで生成物指定アセトン(product specification acetone)がストリーム58として回収される。未精製アセトン塔110からの底部、ストリーム61はフェノール及び多少のAMS、クメン、アセトフェノン及び副生成物を含み、副生成物最終塔(Heavy Ends Tower)114に送られ、ここで重量成分はストリーム63として分離される。上部ストリーム62は炭化水素除去塔115に送られ、ここで残留AMS及びクメンがフェノールから分離し、ストリーム64としてAMS回収工程に送られる。未精製フェノール生成物、ストリーム65はフェノール最終工程塔116に送られ、ここで、生成物指定フェノールは上部でストリーム66として回収される。AMS/クメンストリーム60及び64はAMS回収塔117に送られ、ここでAMSは生成物ストリーム69として回収され、クメンはストリーム68として酸化反応器101に戻る。
【0031】
分割比α及びβを制御することにより、プラントで生成されるAMSの量を連続的にCHP含有ストリームの約0〜約50重量%に設定でき、好ましくはCHP含有ストリームの約0〜約30重量%、より好ましくはCHP含有ストリームの約0〜約20重量%、及び最も好ましくはCHP含有ストリームの約0〜約15重量%にAMS市場の需要に合うように設定できる。さらに、高価値生成物である、酸化プロピレンが生成される。
【0032】
本発明を以下の実施例を参照することにより、より具体的に説明する。処理スキーム1のため、反応器103で使用するための適当な不均一触媒が必要である。実施例1及び3は当該触媒の合成について説明する。実施例2及び4はCHPをDMPCに還元するためのこれらの触媒の使用について説明する。
【0033】
実施例1
500gの水、45gの濃縮リン酸、117gの硝酸コバルト及び75gの濃硫酸を含む溶液を混合しながら調製した。1600gの水及び300gの硫酸アルミニウムを含有する別の溶液を調製した。これら2つの溶液をかき混ぜながら混合した。コバルト/アルミニウム/リンのモル比は1/8/1である。生成物のpHは50重量%の硫酸溶液を添加して9に調節した。当該物質をポリプロピレン瓶に入れ、蒸気室(100℃)に48時間置いた。当該物質を次にろ過し、洗浄し、約85℃で乾燥させた。物質の一部を540℃、6時間で空気焼成させた。元素分析及び物理的性質を表1に示す。
【表1】

【0034】
上記物質の一部は0.1Nの硝酸アンモニウムで処理した(100mlの0.1N 硝酸アンモニウム溶液と10gの焼成物質)。この処理は新しい溶液を用いて合計4回行った。当該物質は次にろ過し、洗浄し、及び約85℃で乾燥させた。物質の一部を540℃、6時間で空気焼成させた。この物質の表面積は310m/gであった。
【0035】
実施例2
凝縮器(condenser)、攪拌棒及び滴下漏斗を取り付け、温度制御のため水槽内に配置した250mlの丸底フラスコに、100.0gのアセトン及び1.00gの実施例1の触媒の混合物を充填した。当該混合物は攪拌しながら加熱して還流(57℃)し、50.0gの80重量%CHP溶液(分析結果:80.8重量%CHP、7.7重量%クメン、6.9重量%DMPC、2.1重量%アセトフェノン)を速度約2g/分で滴下して加えた。CHP溶液の添加の後、反応溶液の小サンプル(約0.2ml)を定期的に回収し、ろ過し、及びガスクロマトグラフィー(GC)により分析した。
【0036】
下記の表2は、CHPの添加完了1及び3時間後の反応溶液の組成(重量%)を示す。表2のデータ分析のため、以下の定義を規定する:
CHP変換(%)=(重量%CHP供給量−重量%CHP生成量)/(重量%CHP供給量
DMPCの増加%=(重量%DMPC生成量−重量%DMPC供給量)/(重量%DMPC供給量
【表2】

【0037】
上記の実施例は、Co/Al/PO触媒はCHPをDMPCに還元するということを示す。非酸性の触媒は、CHPのフェノール及びアセトンへの分解に不活性である。
【0038】
実施例3
250gのZrOCl・8HO及び88gのCo(NO・6HOをかき混ぜながら、1.5リットルの蒸留水に溶解させた。130gの濃NHOH及び1.6リットルの蒸留水を含む別の溶液を調製した。これらの2つの溶液を速度50ml/分でノズルミキサーを用いて混合した。最終的な混合物のpHを濃水酸化アンモニウムを添加することにより約9に調節した。次に、このスラリーをポリプロピレン瓶に入れ、蒸気室(100℃)に72時間置いた。形成した生成物をろ過して回収し、過剰な水で洗浄し、85℃で一晩中乾燥させた。この触媒の一部を3時間、気流中、800℃で焼成し、コバルトを20重量%含む触媒を形成した。
【0039】
実施例4
凝縮器、攪拌棒及び滴下漏斗を取り付け、温度制御のため水槽内に配置した250mlの丸底フラスコに、100.0gのアセトン及び1.00gの実施例3の触媒の混合物を充填した。当該混合物は攪拌しながら加熱して還流(57℃)し、50.0gの80重量%CHP溶液(分析結果:80.8重量%CHP、7.7重量%クメン、6.9重量%DMPC、2.1重量%アセトフェノン)を速度約2g/分で滴下して加えた。CHP溶液の添加の後、反応溶液の小サンプル(約0.2ml)を定期的に回収し、ろ過し、及びガスクロマトグラフィー(GC)により分析した。
【0040】
下記の表3は、CHPの添加完了1及び3時間後の反応溶液の組成(重量%)を示す。
【表3】

【0041】
上記の実施例は、Co/ZrO触媒はCHPをDMPCに還元するということを示す。非酸性の触媒は、CHPのフェノール及びアセトンへの分解に不活性である。
【0042】
実施例5
実施例1及び3の触媒は処理スキーム1の反応器103での使用に適している。分割比αを調節し、変換を制御する温度及び接触時間の処理パラメーターを用いることにより、様々な比率のCHPストリーム14をDMPCに還元できる。説明のため、処理スキーム1の物質バランスを表4に示す。ここで、還元されるCHPの量は0〜約12重量%である。
【表4】

【0043】
表4に示すフェノール収量は101に送られ、変換されたクメンの割合としての生成フェノールの量である。表4に示すAMS収量は、酸化工程での生成DMPCの量と比較したプラント内での生成AMS量である。表4に示すように、還元されるCHP量を0〜約12%に変化させることで、プラント内で生成するAMSとフェノールの比を3.5%〜約15%に変化させることができる。
【0044】
当業者に公知の通り、フェノールプラントに影響を与える多くの因子が存在する。処理スキーム1及び40に説明したように、フェノール生成において多くの処理工程が存在し、全体的な生成収量に影響を与える。当該実施例の説明のため、以下の選択性を前提条件とした。酸化工程において、反応器101におけるクメンのCHPに対する選択性は約95%である。非CHP酸化生成物のDMPCに対する選択性は約83%である。第1の開裂反応器102及び第2の開裂反応器105におけるフェノール及びアセトンに対する選択性は約99.5%である。脱水反応におけるAMSに対する選択性は約80%である。残った20%のAMSはAMS二量体及びp−クミルフェノールに変換される。
【0045】
表4に示すように、フェノール及びAMS収量は、還元反応器103で還元されるCHPの関数である。酸化反応器101内で生成した約7%のCHPの還元は、プラントにより生成したフェノール量の約10%と比較したAMS収量を表し、還元反応器を使用しないで生成した場合の2倍以上の、200%以上の収量を示す。
【0046】
DMPCの追加生成はCHPの還元方法とは独立している。従って、AMS収量は、DMPCが図1のスキーム中の還元反応により形成されるか、図2のスキーム中に示すようにエポキシ化反応により形成されるかに関係なく同じである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】フェノール、アセトン及びAMSのコプロダクションの処理スキームの概略フロー図である。
【図2】フェノール、アセトン、AMS及び酸化プロピレンのコプロダクションの処理スキームの概略フロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−メチルスチレン、アセトン及びフェノールの生成方法であって、以下の工程を含む:
(a)酸素の存在下、クメンを酸化して、クメンヒドロペルオキシドを形成する工程、
(b)不均一触媒の存在下、工程(a)で形成された前記クメンヒドロペルオキシドの一部を選択的に還元して、ジメチルフェニルカルビノールを形成する工程、及び
(c)酸性触媒の存在下、前記クメンヒドロペルオキシドの残留部分と前記ジメチルフェニルカルビノールとを接触させて、α−メチルスチレン、アセトン及びフェノールを形成する工程。
【請求項2】
前記工程(b)の不均一触媒が、金属及び第1の触媒担体からなり、前記第1の触媒担体は非酸性触媒担体、低酸性触媒担体及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1の方法。
【請求項3】
前記金属が、第1族金属、第2族金属、第3族金属、第8族遷移金属、第9族遷移金属、第10族遷移金属及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項2の方法。
【請求項4】
前記第1の触媒担体がシリカ、アルミナ、結晶性またはアモルファスアルミノホスフェート、第4族金属酸化物、メソポーラスモレキュラーシーブ、及びこれらの混合物である、請求項3の方法。
【請求項5】
前記金属がコバルトであり、第1の触媒担体が酸化ジルコニウムである、請求項4の方法。
【請求項6】
前記金属がコバルトであり、第1の触媒担体がアルミノホスフェートである、請求項4の方法。
【請求項7】
前記工程(c)の酸性触媒が液体触媒及び固体酸触媒からなる群より選択される、請求項1の方法。
【請求項8】
前記液体触媒が硫酸である、請求項7の方法。
【請求項9】
前記固体酸触媒が、第6族金属酸化物により修飾された第4族金属酸化物、硫酸化遷移金属酸化物、セリウム酸化物と第4族金属酸化物の混合金属酸化物、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項7の方法。
【請求項10】
前記固体酸触媒が固定床反応器内に含まれる、請求項7の方法。
【請求項11】
工程(c)がさらに、前記酸性触媒の存在下、希釈ストリームと前記クメンヒドロペルオキシドの残留部分と前記ジメチルフェニルカルビノールを接触させて、α−メチルスチレン、アセトン及びフェノールを形成する工程を含む、請求項1の方法。
【請求項12】
前記希釈ストリームがアセトンである、請求項11の方法。
【請求項13】
さらに、(d)工程(c)で形成された前記α−メチルスチレンの一部と水素を水素化触媒の存在下で接触させ、前記工程(c)の希釈ストリームを形成する工程を含む、請求項11の方法。
【請求項14】
前記水素化触媒が水素化成分及び第2の触媒担体を含む、請求項13の方法。
【請求項15】
前記水素化成分が、第6族金属、第7族金属、第8族金属、第9族金属、第10族金属、第11族金属、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項14の方法。
【請求項16】
前記第10族金属がパラジウムまたは白金である、請求項15の方法。
【請求項17】
前記第2の触媒担体が、アルミナ、シリカ、粘土、炭素、ジルコニア、チアニア、メソポーラスモレキュラーシーブ、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項14の方法。
【請求項18】
還元工程(b)で還元される前記クメンヒドロペルオキシドの前記一部が約0〜50重量%の前記クメンヒドロペルオキシドを工程(a)で含む、請求項1の方法。
【請求項19】
還元工程(b)で還元される前記クメンヒドロペルオキシドの前記一部が約0〜15重量%の前記クメンヒドロペルオキシドを工程(a)で含む、請求項1の方法。
【請求項20】
前記酸化工程(a)が開始剤の存在下で前記クメンを酸化することを含む、請求項1の方法。
【請求項21】
前記開始剤が、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、アゾ型フリーラジカル開始剤、ペルオキシ型フリーラジカル開始剤及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項20の方法。
【請求項22】
さらに、(d)前記クメンヒドロペルオキシドの前記残留部分と工程(c)で形成されたジクミルペルオキシドを第2の酸性触媒を用いて反応させ、フェノール、アセトン、及びα−メチルスチレンを形成する工程を含む、請求項1の方法。
【請求項23】
前記第2の酸性触媒が固体酸触媒または液体酸触媒である、請求項22の方法。
【請求項24】
フェノール及びアセトンの生成方法であって、以下の工程を含む:
(a)酸素の存在下、及び任意で開始剤の存在下、クメンを酸化し、クメンヒドロペルオキシドを形成する工程、
(b)前記クメンヒドロペルオキシド及び希釈剤を酸性触媒の存在下で接触させて、フェノール、アセトン及びα−メチルスチレンを形成する工程、
(c)形成された前記α−メチルスチレンの少なくとも一部を除去する工程、及び
(d)水素化触媒の存在下、α−メチルスチレンの前記一部を水素を用いて水素化し、前記希釈剤を形成する工程。
【請求項25】
前記開始剤が、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、アゾ型フリーラジカル開始剤、ペルオキシ型フリーラジカル開始剤及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項24の方法。
【請求項26】
前記酸性触媒が、第6族金属酸化物により修飾された第4族金属酸化物、硫酸化遷移金属酸化物、セリウム酸化物と第4族金属酸化物の混合金属酸化物、及びこれらの混合物からなる群より選択される固体酸触媒である、請求項24の方法。
【請求項27】
前記水素化触媒が水素化成分及び触媒担体を含む、請求項24の方法。
【請求項28】
前記水素化成分が、第6族金属、第7族金属、第8族金属、第9族金属、第10族金属、第11族金属、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項27の方法。
【請求項29】
前記第10族金属がパラジウムまたは白金である、請求項28の方法。
【請求項30】
前記触媒担体が、アルミナ、シリカ、粘土、炭素、ジルコニア、チアニア、メソポーラスモレキュラーシーブ、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項27の方法。
【請求項31】
α−メチルスチレン、酸化プロピレン、アセトン及びフェノールの生成方法であって、以下の工程を含む:
(a)酸素の存在下、及び任意で開始剤の存在下、クメンを酸化して、クメンヒドロペルオキシドを形成する工程、
(b)エポキシ化触媒の存在下、プロピレンと前記クメンヒドロペルオキシドの一部を反応させて、ジメチルフェニルカルビノール及び酸化プロピレンを形成する工程、及び
(c)酸性触媒の存在下、前記クメンヒドロペルオキシドの残留部分と前記ジメチルフェニルカルビノールとを接触させて、α−メチルスチレン、アセトン及びフェノールを形成する工程。
【請求項32】
前記開始剤が、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、アゾ型フリーラジカル開始剤、ペルオキシ型フリーラジカル開始剤及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項31の方法。
【請求項33】
工程(b)の前記エポキシ化触媒が、シリカに担持されたチタニウム、モリブデンに担持されたチタニウム及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項31の方法。
【請求項34】
工程(c)の前記酸性触媒が、液体触媒及び固体酸触媒からなる群より選択される、請求項31の方法。
【請求項35】
前記液体触媒が硫酸である、請求項34の方法。
【請求項36】
前記酸性触媒が、第6族金属酸化物により修飾された第4族金属酸化物、硫酸化遷移金属酸化物、セリウム酸化物と第4族金属酸化物の混合金属酸化物、及びこれらの混合物からなる群より選択される固体酸触媒である、請求項34の方法。
【請求項37】
前記固体酸触媒が固定床反応器内に含まれる、請求項34の方法。
【請求項38】
工程(c)がさらに、前記クメンヒドロペルオキシドの残留部分と前記ジメチルフェニルカルビノールを前記酸性触媒の存在下で希釈ストリームと接触させ、α−メチルスチレン、アセトン及びフェノールを形成する工程を含む、請求項31の方法。
【請求項39】
前記希釈ストリームがアセトンである、請求項38の方法。
【請求項40】
さらに、(d)工程(c)で形成された前記α−メチルスチレンの一部と水素を水素化触媒の存在下で接触させ、工程(c)の前記希釈ストリームを形成する工程を含む、請求項38の方法。
【請求項41】
前記水素化触媒が水素化成分及び触媒担体を含む、請求項40の方法。
【請求項42】
前記水素化成分が、第6族金属、第7族金属、第8族金属、第9族金属、第10族金属、第11族金属、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項41の方法。
【請求項43】
前記第10族金属がパラジウムまたは白金である、請求項42の方法。
【請求項44】
前記触媒担体が、アルミナ、シリカ、粘土、炭素、ジルコニア、チアニア、メソポーラスモレキュラーシーブ、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項41の方法。
【請求項45】
反応工程(b)で還元される前記クメンヒドロペルオキシドの一部が工程(a)で約0〜50重量%の前記クメンヒドロペルオキシドを含む、請求項31の方法。
【請求項46】
反応工程(b)で還元される前記クメンヒドロペルオキシドの一部が工程(a)で約0〜15重量%の前記クメンヒドロペルオキシドを含む、請求項31の方法。
【請求項47】
金属及び触媒担体を含む触媒であって、当該触媒は非酸性であり、クメンヒドロペルオキシドをジメチルフェニルカルビノールに還元する、触媒。
【請求項48】
前記金属が、第1族金属、第2族金属、第3族金属、第8族遷移金属、第9族遷移金属、第10族遷移金属及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項47の触媒。
【請求項49】
前記触媒担体が、シリカ、アルミナ、結晶性またはアモルファスアルミノホスフェート、第4族金属酸化物、メソポーラスモレキュラーシーブ、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項47の触媒。
【請求項50】
前記金属が第1族金属、第2族金属、第3族金属、第8族遷移金属、第9族遷移金属、第10族遷移金属及びこれらの混合物からなる群より選択され、かつ前記触媒担体がシリカ、アルミナ、結晶性またはアモルファスアルミノホスフェート、第4族金属酸化物、メソポーラスモレキュラーシーブ、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項47の触媒。
【請求項51】
前記金属がコバルトであり、前記触媒担体が酸化ジルコニウムである、請求項50の触媒。
【請求項52】
前記金属がコバルトであり、前記触媒担体がアルミノホスフェートである、請求項50の触媒。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−メチルスチレン、アセトン及びフェノールの生成方法であって、以下の工程を含む:
(a)酸素の存在下、クメンを酸化して、クメンヒドロペルオキシドストリームを形成する工程、
(b)不均一触媒の存在下、工程(a)で形成された前記クメンヒドロペルオキシドストリームの一部を選択的に還元して、ジメチルフェニルカルビノールストリームを形成する工程、
(c)酸性触媒の存在下、前記クメンヒドロペルオキシドストリームの残留部分と前記ジメチルフェニルカルビノールストリームとを接触させて、α−メチルスチレン、アセトン、フェノール及び副生成物(heavies)を含む溶出ストリームを形成する工程、及び
(d)水素化触媒の存在下、前記溶出ストリームの一部を水素化して、工程(b)で再利用される希釈ストリームを形成し、それにより副生成物の形成を減少させる工程。
【請求項2】
前記工程(b)の不均一触媒が、金属及び第1の触媒担体からなり、前記第1の触媒担体は非酸性触媒担体、低酸性触媒担体及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1の方法。
【請求項3】
前記金属が、第1族金属、第2族金属、第3族金属、第8族遷移金属、第9族遷移金属、第10族遷移金属及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項2の方法。
【請求項4】
前記第1の触媒担体がシリカ、アルミナ、結晶性またはアモルファスアルミノホスフェート、第4族金属酸化物、メソポーラスモレキュラーシーブ、及びこれらの混合物である、請求項3の方法。
【請求項5】
前記金属がコバルトであり、第1の触媒担体が酸化ジルコニウムである、請求項4の方法。
【請求項6】
前記金属がコバルトであり、第1の触媒担体がアルミノホスフェートである、請求項4の方法。
【請求項7】
前記工程(c)の酸性触媒が液体触媒及び固体酸触媒からなる群より選択される、請求項1の方法。
【請求項8】
前記液体触媒が硫酸である、請求項7の方法。
【請求項9】
前記固体酸触媒が、第6族金属酸化物により修飾された第4族金属酸化物、硫酸化遷移金属酸化物、セリウム酸化物と第4族金属酸化物の混合金属酸化物、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項7の方法。
【請求項10】
前記固体酸触媒が固定床反応器内に含まれる、請求項7の方法。
【請求項11】
工程(d)の前記水素化触媒が水素化成分及び第2の触媒担体を含む、請求項1の方法。
【請求項12】
前記水素化成分が、第6族金属、第7族金属、第8族金属、第9族金属、第10族金属、第11族金属、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項11の方法。
【請求項13】
前記第10族金属がパラジウムまたは白金である、請求項12の方法。
【請求項14】
前記第2の触媒担体が、アルミナ、シリカ、粘土、炭素、ジルコニア、チアニア、メソポーラスモレキュラーシーブ、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項11の方法。
【請求項15】
還元工程(b)で還元される前記クメンヒドロペルオキシドの前記一部が約0〜50重量%の前記クメンヒドロペルオキシドを工程(a)で含む、請求項1の方法。
【請求項16】
還元工程(b)で還元される前記クメンヒドロペルオキシドの前記一部が約0〜15重量%の前記クメンヒドロペルオキシドを工程(a)で含む、請求項15の方法。
【請求項17】
前記酸化工程(a)が開始剤の存在下で前記クメンを酸化することを含む、請求項1の方法。
【請求項18】
前記開始剤が、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、アゾ型フリーラジカル開始剤、ペルオキシ型フリーラジカル開始剤及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項17の方法。
【請求項19】
工程(a)の全クメンヒドロペルオキシドストリームを工程(c)に供給して、フェノール及びアセトンを含む溶出ストリームを形成する工程であって、前記希釈ストリームが工程(a)で再利用される、請求項1の方法。
【請求項20】
酸化工程(a)が任意で開始剤の存在下、前記クメンを酸化する工程を含み、前記開始剤が、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、アゾ型フリーラジカル開始剤、ペルオキシ型フリーラジカル開始剤及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項19の方法。
【請求項21】
前記酸性触媒が、第6族金属酸化物により修飾された第4族金属酸化物、硫酸化遷移金属酸化物、セリウム酸化物と第4族金属酸化物の混合金属酸化物、及びこれらの混合物からなる群より選択される固体酸触媒である、請求項19の方法。
【請求項22】
前記水素化触媒が水素化成分及び触媒担体を含む、請求項20の方法。
【請求項23】
前記水素化成分が、第6族金属、第7族金属、第8族金属、第9族金属、第10族金属、第11族金属、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項22の方法。
【請求項24】
前記第10族金属がパラジウムまたは白金である、請求項23の方法。
【請求項25】
前記触媒担体が、アルミナ、シリカ、粘土、炭素、ジルコニア、チアニア、メソポーラスモレキュラーシーブ、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項22の方法。
【請求項26】
リチウム、ナトリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、コバルト、鉄、ニッケル及びこれらの混合物からなる群より選択される金属;及びシリカ、アルミナ、結晶性またはアモルファスアルミノホスフェート、第4族金属酸化物、メソポーラスモレキュラーシーブ、及びこれらの混合物からなる群より選択される触媒担体を含む触媒であって、当該触媒は非酸性であり、クメンヒドロペルオキシドをジメチルフェニルカルビノールに還元する、触媒。
【請求項27】
前記触媒が酸化ジルコニウムに担持されたコバルトである、請求項26の触媒。
【請求項28】
前記触媒がアルミノホスフェートに担持されたコバルトである、請求項26の触媒。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−509829(P2006−509829A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563715(P2004−563715)
【出願日】平成15年12月16日(2003.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2003/040283
【国際公開番号】WO2004/058672
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】