説明

フェノール二量体、その製造方法および使用方法

【課題】 粘度を調節し、酸を中和し、および/または酸化を抑制する潤滑油添加剤の提供。
【解決手段】 式Iを含んでなる化合物(ここで、式中、R1およびR3は、独立にアルキル基またはアルケニル基を表し、R2およびR4は、独立にヒドロカルビル基を表し、nは1から3であるが、ただしR1およびR3のそれぞれがメチルで、かつnが1の場合、R2およびR4はいずれもt-ドデシルであってはならない)。
【化1】


を含む潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清浄剤、潤滑油の添加剤および潤滑油組成物、ならびに清浄剤、潤滑油の添加剤および潤滑油組成物の製造方法に関する。本発明は、さらに詳細には、新規のフェノール二量体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車または貨物自動車の内燃機関および変速機内で使われる潤滑油組成物は、厳しい環境にさらされる。その結果、潤滑油組成物に含まれる鉄化合物等の不純物の存在下で触媒反応が進み、潤滑油組成物が酸化されてしまう。さらに、使用中に潤滑油組成物の温度が上昇することによっても、潤滑油組成物の酸化が促進される。
【0003】
使用中の潤滑油組成物の酸化は、通常、酸化防止剤や酸中和剤等の添加剤の使用によってある程度まで抑制されている。添加剤の使用により、特に、望ましくない粘度の上昇を抑制または防止することによって、潤滑油組成物の使用できる期間を延長することが可能である。
【0004】
潤滑油に使われる一般的な酸化防止剤・酸中和剤の例として、金属アルキルフェネート(metal alkyl phenate)があげられる。これらの金属アルキルフェネートを構成する金属は、通常、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属である。
【0005】
金属アルキルフェネートの例が、特許文献1および特許文献2に記載されている。これらの特許に開示されている金属アルキルフェネートは、過塩基性の単量体アルキルフェノールである。
【0006】
近年、エンジン用潤滑油に由来するリン化合物およびイオウ――これらはスルホン酸塩、イオウ含有フェネート、金属含有ジチオリン酸塩から発生する――は、排出微粒子の原因の1つであることが実証されている。また、イオウおよびリンには、触媒コンバータに使われる触媒の作用を損なう傾向があり、その結果触媒の働きを低下させてしまう。
【0007】
特許文献3および特許文献4には、エンジンの磨耗や腐食を抑える潤滑油組成物の添加剤として使用される過塩基性サリゲニン誘導体の記載があり、これは排気中のイオウおよびリンを減らすことができる。
【0008】
当技術分野では、粘度を調節し、酸を中和し、および/または酸化を抑制する作用を有する、より優れた添加剤が望まれている。本発明の新規なフェノール二量体および過塩基性フェノール二量体を含む清浄剤は、潤滑油組成物のリンおよびイオウの含有量を減らし、耐摩耗作用を提供する。
【特許文献1】米国特許第5,330,665号
【特許文献2】米国特許第5,162,085号
【特許文献3】米国特許第6,310,009B1号
【特許文献3】米国特許第2004/0102335A1号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1に、本明細書は、新規なフェノール二量体を開示し、このフェノール二量体は、2つのフェノールのそれぞれのパラ位に長鎖のヒドロカルビル基と、各フェノールのオルソ位のうちの1つにアルキル基またはアルケニル基のいずれかを有している。これらの2つの置換されたフェノールは、アルキレン基を介して、各フェノール分子のもう1つのオルソ位で結合している。さらに、本明細書では、これらの新規なフェノール二量体の合成方法も開示する。
【0010】
第2に、本明細書は、フェノール二量体を過塩基性化する方法を示す。
【0011】
第3に、本明細書は、潤滑油組成物中で酸化防止剤として働く新規な過塩基性フェノール二量体を開示する。
【0012】
第4に、本明細書は、新規な過塩基性フェノール二量体を含む潤滑油組成物または濃縮潤滑油を開示する。
【0013】
さらに、本明細書は、新規な過塩基性フェノール二量体を含む潤滑油組成物を、内燃機関の潤滑油として使用する方法を示す。
【0014】
発明の詳細な説明
本明細書は、新規なフェノール二量体、およびアルカリ土類金属源を用いてこれらの二量体を過塩基性化して得られた組成物を開示する。さらに、潤滑油組成物または濃縮潤滑油中において、これらの二量体を酸化防止剤として使用する方法も開示する。
【0015】
「過塩基性」という用語は、アルカリ土類金属部分のフェノール部分に対する当量比が1より大きい、アルキルフェノール分子のアルカリ土類金属塩、すなわちフェネート(phenate)を示すために使われる。この比は、通常1.2より大きいが、4.5より大きい場合もあり得る。参考までに、従来のアルカリ土類金属フェネートでは、アルカリ土類金属部分とフェノール部分の当量比は1:1である。
【0016】
本明細書では、「TBN」とは、全塩基価(Total Base Number)を意味し、ASTM D2896法によって測定し、mgKOH/gで表す。
【0017】
本明細書では、「ヒドロカルビル基」とは、直鎖および側鎖を有する、飽和、不飽和、および/または置換された鎖状炭化水素のラジカルで、炭素原子の数が1から100までのものを意味する。
【0018】
本明細書では、「アルキル基」とは、直鎖、側鎖を有する、および/または置換された鎖状飽和炭化水素のラジカルで、炭素原子の数が1から100までのものを意味する。
【0019】
本明細書では、「アルケニル基」とは、直鎖、側鎖を有する、および/または置換された鎖状不飽和炭化水素のラジカルで、炭素原子の数が3から10までのものを意味する。
フェノール二量体
本発明の新規なフェノール二量体は式Iで表される。
【0020】
【化1】

【0021】
ここで、式I中、RおよびRは、独立にアルキル基またはアルケニル基を表し、RおよびRは、独立にヒドロカルビル基を表し、nは1から3である。ただしRおよびRのそれぞれがメチル基で、かつnが1の場合、RおよびRはいずれもt−ドデシル基であってはならない。
【0022】
およびRは、互に同じであってもよいし、同じでなくてもよい。一実施形態では、RおよびRは、独立して炭素原子の数が1から6のアルキル基である。別の実施形態では、RおよびRは、独立して炭素原子の数が3から5のアルケニル基である。RおよびRに有用な基の例として、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、および2−ブテニル基がある。
【0023】
さらに別の実施形態では、RおよびRは、先に述べたように、同じ数の炭素原子の同じアルキル基である。また、さらに別の実施形態では、RおよびRは、ともにメチル基である。
【0024】
およびRは、互いに同じであってもよいし、同じでなくてもよい。一実施形態では、RおよびRは、独立して炭素原子の数が10から100のヒドロカルビル基である。
【0025】
別の実施形態では、RおよびRは、独立して炭素原子の数が10から100のアルキル基である。さらに別の実施形態では、RおよびRは、独立して炭素原子の数が12から75のアルキル基である。また、さらに別の実施形態では、RおよびRは、独立して炭素原子の数が25から75のアルキル基である。その上、さらに別の実施形態では、RおよびRは、独立して炭素原子の数が55から75のアルキル基である。ある実施形態では、RおよびRは、独立して炭素原子の数が35から45のアルキル基である。RおよびRに有用な基の例として、ドデシル基およびポリイソブチル基がある。
【0026】
他の実施形態では、RおよびRは、先に述べたように、同じ数の炭素原子の同じアルキル基である。
【0027】
有用なフェノール二量体として、式Iで表され、式中、Rがメチル基、Rがポリイソブチル基、Rがメチル基、Rがポリイソブチル基、nが1であるフェノール二量体がある。別の有用なフェノールの二量体として、式Iで表され、式中、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が10から100のポリイソブチル基、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が10から100のポリイソブチル基、nが1であるフェノール二量体がある。さらに別の有用なフェノールの二量体として、式Iで表され、式中、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が12から75のポリイソブチル基、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が12から75のポリイソブチル基、nが1であるフェノール二量体がある。また、さらに別の有用なフェノールの二量体として、式Iで表され、式中、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が25から75のポリイソブチル基、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が25から75のポリイソブチル基、nが1であるフェノール二量体がある。その上、さらに別の有用なフェノールの二量体として、式Iで表され、式中、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が55から75のポリイソブチル基、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が55から75のポリイソブチル基、nが1であるフェノール二量体がある。ある有用なフェノールの二量体として、式Iで表され、式中、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が35から45のポリイソブチル基、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が35から45のポリイソブチル基、nが1であるフェノール二量体がある。他の有用なフェノールの二量体として、式Iで表され、式中、Rがメチル基、Rがドデシル基、Rがメチル基、Rがドデシル基、nが1であるフェノール二量体がある。
【0028】
一実施形態では、式Iで表される新規なフェノール二量体は、触媒の存在下で、ホルムアルデヒドを式IIで表される化合物と接触または反応させることによって製造することができる。
【0029】
【化2】

【0030】
ここで、式II中、Rは、アルキル基またはアルケニル基を表し、Rは、ヒドロカルビル基を表す。
【0031】
一実施形態では、Rは、炭素原子の数が1から6のアルキル基である。Rに有用な基の例として、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、および2−ブテニル基がある。別の実施形態では、Rは、メチル基である。
【0032】
一実施形態では、Rは、炭素原子の数が10から100のヒドロカルビル基である。
【0033】
別の実施形態では、Rは、炭素原子の数が10から100のアルキル基である。さらに別の実施形態では、Rは、炭素原子の数が12から75のアルキル基である。また、さらに別の実施形態では、Rは、炭素原子の数が25から75のアルキル基である。その上、さらに別の実施形態では、Rは、炭素原子の数が55から75のアルキル基である。ある実施形態では、Rは、炭素原子の数が35から45のアルキル基である。Rに有用な基の例として、ドデシル基およびポリイソブチル基がある。
【0034】
有用な原料モノマー化合物として、式IIで表され、式中、Rがメチル基、Rがポリイソブチル基である原料モノマー化合物がある。別の有用な原料モノマー化合物として、式IIで表され、式中、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が10から100のポリイソブチル基である原料モノマー化合物がある。さらに、別の有用な原料モノマー化合物として、式IIで表され、式中、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が12から75のポリイソブチル基である原料モノマー化合物がある。また、さらに別の有用な原料モノマー化合物として、式IIで表され、式中、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が25から75のポリイソブチル基である原料モノマー化合物がある。その上、さらに別の有用な原料モノマー化合物として、式IIで表され、式中、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が55から75のポリイソブチル基である原料モノマー化合物がある。ある有用な原料モノマー化合物として、式IIで表され、式中、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が35から45のポリイソブチル基である原料モノマー化合物がある。他の有用な原料モノマー化合物として、式IIで表され、式中、Rがメチル基、Rがドデシル基である原料モノマー化合物がある。
【0035】
好ましい触媒として、アミン含有触媒や酸等があげられるが、これらに限定されるわけではない。有用な触媒の例には、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン、エチレンジアミンおよび硫酸が含まれる。一実施形態では、触媒として3−(ジメチルアミノ)プロピルアミンが使われている。
【0036】
二量体化反応混合物に添加する触媒の量は、二量体化反応混合物に用いられる全化合物の重量に関し約0.2重量%から約2重量%になるように加えれば十分である。有用な触媒の量は、二量体化反応混合物に用いられる全成分の重量に関し約0.5重量%から約1重量%である。
【0037】
一実施形態では、二量体化反応混合物に添加するホルムアルデヒドの量は、二量体化反応混合物に用いられる全成分の重量に関し約1重量%から約5重量%になるように加えれば十分である。有用なホルムアルデヒドの量は、二量体化反応混合物に用いられる全成分の重量に関し約1.2重量%から約2重量%である。
【0038】
ホルムアルデヒドは、二量体化反応に固体で添加してもよいし、溶液の形態で添加してもよい。有用なホルムアルデヒドの形態は、溶液である。一実施形態では、ホルムアルデヒドは、二量化体反応に37%溶液の形態で添加される。別の実施形態では、ホルムアルデヒドは、二量化体反応に44%溶液の形態で添加される。ホルムアルデヒドは、初期反応物質に一度に全部添加してもよい。あるいは、初期反応物質に一部を添加し、反応が進むにつれて、残りを一度に、または数回に分けて添加してもよい。
【0039】
二量体化反応混合物の残りの部分は、式IIで表される単量体化合物からなる。
【0040】
新規なフェノール二量体反応成生物を含む単離された溶液中に存在する水の量は、1,000ppm以下である。一実施形態では、新規のフェノール二量体反応成生物を含む単離された溶液中に存在する水の量は、500ppm以下である。
【0041】
新規なフェノール二量体反応成生物は、マンニッヒの塩基(Mannich base)ではない。
【0042】
式Iで表される新規なフェノール二量体は、摩擦調整剤として有用であり、耐摩耗作用を提供する目的で、潤滑油組成物中に使用することができる。一実施形態では、式Iで表される新規なフェノール二量体を基油に添加し、潤滑油組成物を得ることができる。別の実施形態では、式Iで表される新規なフェノール二量体は、濃縮潤滑油に添加、すなわち濃縮潤滑油中に使用することができる。
過塩基性フェノール二量体
本発明の過塩基性化合物は、式IIIで表される化合物、またはその塩である。
【0043】
【化3】

【0044】
ここで、式III中、RおよびRは、独立にアルキル基またはアルケニル基を表し、RおよびR10は、独立にヒドロカルビル基を表し、Mはアルカリ土類金属で、nは1から3である。
【0045】
およびRは、互に同じであってもよいし、同じでなくてもよい。一実施形態では、RおよびRは、独立して炭素原子の数が1から6のアルキル基である。別の実施形態では、RおよびRは、独立して炭素原子の数が3から5のアルケニル基である。RおよびRに有用な基の例として、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、および2−ブテニル基がある。
【0046】
さらに別の実施形態では、RおよびRは、先に述べたように、同じ数の炭素原子の同じアルキル基である。また、さらに別の実施形態では、RおよびRは、ともにメチル基である。
【0047】
およびR10は、互いに同じであってもよいし、同じでなくてもよい。一実施形態では、RおよびR10は、独立して炭素原子の数が10から100のヒドロカルビル基である。
【0048】
別の実施形態では、RおよびR10は、独立して炭素原子の数が10から100のアルキル基である。さらに別の実施形態では、RおよびR10は、独立して炭素原子の数が12から75のアルキル基である。また、さらに別の実施形態では、RおよびR10は、独立して炭素原子の数が25から75のアルキル基である。その上、さらに別の実施形態では、RおよびR10は、独立して炭素原子の数が55から75のアルキル基である。ある実施形態では、RおよびR10は、独立して炭素原子の数が35から45のアルキル基である。RおよびR10に有用な基の例として、ドデシル基およびポリイソブチル基がある。
【0049】
他の実施形態では、RおよびR10は、先に述べたように、同じ数の炭素原子の同じアルキル基である。
【0050】
Mは、少なくとも1つの、アルカリ土類金属、またはアルカリ土類金属源であるか、あるいは少なくとも1つの、アルカリ土類金属、またはアルカリ土類金属源を含んでいる。Mの例には、カルシウム、マグネシウム、もしくはバリウム、及びそれらの塩または前駆物質が含まれる。Mは、カルシウム、マグネシウム、および/またはバリウムの塩の形態、あるいはカルシウム、マグネシウム、および/またはバリウムの錯体の形態で供給することができる。例えば、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、またはスルホン酸塩等があげられるが、これに限定されるわけではない。
【0051】
有用な過塩基性化合物として、式IIIで表され、式中、Rがメチル基、Rがポリイソブチル基、Rがメチル基、R10がポリイソブチル基、Mがカルシウム、nが1である過塩基性化合物がある。別の有用な過塩基性化合物として、式IIIで表され、式中、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が10から100のポリイソブチル基、Rがメチル基、R10が炭素原子の数が10から100のポリイソブチル基、Mがカルシウム、nが1である過塩基性化合物がある。さらに別の有用な過塩基性化合物として、式IIIで表され、式中、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が12から75のポリイソブチル基、Rがメチル基、R10が炭素原子の数が12から75のポリイソブチル基、Mがカルシウム、nが1である過塩基性化合物がある。また、さらに別の有用な過塩基性化合物として、式IIIで表され、式中、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が25から75のポリイソブチル基、Rがメチル基、R10が炭素原子の数が25から75のポリイソブチル基、Mがカルシウム、nが1である過塩基性化合物がある。その上、さらに別の有用な過塩基性化合物として、式IIIで表され、式中、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が55から75のポリイソブチル基、Rがメチル基、R10が炭素原子の数が55から75のポリイソブチル基、Mがカルシウム、nが1である過塩基性化合物がある。ある有用な過塩基性化合物として、式IIIで表され、式中、Rがメチル基、Rが炭素原子の数が35から45のポリイソブチル基、Rがメチル基、R10が炭素原子の数が35から45のポリイソブチル基、Mがカルシウム、nが1である過塩基性化合物がある。他の有用な過塩基性化合物として、式IIIで表され、式中、Rがメチル基、Rがドデシル基、Rがメチル基、R10がドデシル基、Mがカルシウム、nが1である過塩基性化合物がある。
【0052】
式IIIで表される過塩基性化合物の塩の形態で有用なものの1つに、先に述べたように、カルシウムの炭酸塩がある。
【0053】
式IIIで表される過塩基性フェノール二量体は、二酸化炭素、飽和または不飽和カルボン酸、C1〜C20‐1価アルコール、およびC2〜C4‐多価アルコール――さらに必要に応じて基油――の存在下で、式Iで表される新規なフェノール二量体をアルカリ土類金属源と接触または反応させることによって製造することができる。過塩基性化反応を以下の図Iに示す。ここで、図I中、R、R、R、R、R、R、R、R10、Mおよびnは先の定義に従い、xは0から5である。
【0054】
【化4】

【0055】
さらに、本明細書は、本法により製造された生成物も提示する。
【0056】
式Iで表される新規なフェノール二量体は、過塩基化反応混合物中に、過塩基化反応混合物に用いられる全成分の重量に関し約15重量%から約50重量%、あるいは約17重量%から約22重量%の量で存在することができる。
【0057】
アルカリ土類金属源として、好ましくは、アルカリ土類金属の酸化物または水酸化物であることができる。水酸化物が特に有用である。有用なアルカリ土類金属の1つに、カルシウムがある。過塩基化反応に使われるアルカリ土類金属源の量は、フェノールすなわちフェネートの性質および反応混合物に必要に応じて添加することができる基油の量をはじめとする多数の要因によって決まるであろう。通常、過塩基化反応に用いられるアルカリ土類金属源と式Iで表される新規なフェノール二量体の重量比は、0.1〜1:1である。過塩基化反応に用いられるアルカリ土類金属源と式Iで表される新規なフェノール二量体の有用な重量比は、0.2〜0.8:1である。アルカリ土類金属源は、初期反応物質に一度に全部添加してもよい。あるいは、初期反応物質に一部を添加し、反応が進むにつれて、残りを一度に、または数回に分けて添加してもよい。
【0058】
好ましくは、反応混合物中のアルカリ土類金属源は、一実施形態では、過塩基化反応混合物に用いられる全成分の重量に関し約5重量%から約20重量%の量で存在する。さらには、過塩基化反応混合物に用いられる全成分の重量に関し約7重量%から約16重量%の量のアルカリ土類金属源が有用である。
【0059】
過塩基化反応に添加する二酸化炭素の形態は、気体でも固体でもよい。有用な二酸化炭素の形態は、気体である。気体の形態で使用する場合、好ましくは、二酸化炭素を、約150cc/minから約300cc/minの流速で約25分から約90分間、過塩基化反応混合物中に吹き込むことができる。
【0060】
一実施形態では、カルボン酸を反応混合物に添加することができる。この場合、反応混合物に添加する飽和または不飽和カルボン酸の量は、過塩基化反応混合物に用いられる全成分の重量に関し上限約20重量%になるように加えれば十分であろう。有用なカルボン酸の量は、反応混合物に用いられる全化合物の重量に関し約2重量%から約20重量%である。さらには、反応混合物に用いられる全成分の重量に関し約5重量%から約15重量%の量のカルボン酸が有用である。
【0061】
好ましい飽和カルボン酸の例には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、およびリグノセリン酸が含まれる。好ましい不飽和カルボン酸の例には、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、リシノール酸、リノール酸、およびリノレン酸が含まれる。また、ナタネ油脂肪酸等の酸の混合物を用いることもできる。特に好ましい酸の混合物は、飽和酸と不飽和酸の両方を含む複数の酸からなる工業用の酸混合物である。このような混合物は、合成することもできるし、綿花油、落花生油、ヤシ油、亜麻仁油、パーム油(palm kernel oil)、オリーブ油、トウモロコシ油、パーム油(palm oil)、ヒマシ油、大豆油、ヒマワリ油、ニシン油、イワシ油、および獣脂等の天然物から得ることもできる。カルボン酸の代わりに、またはカルボン酸に加え、酸無水物のエステル、または酸のエステルを使うができ、酸無水物のエステルが好ましい。一実施形態では、カルボン酸の塩が使われ、その塩はアルカリ土類金属の塩である。別の実施形態では、1種類のカルボン酸、または複数のカルボン酸の混合物を用いている。有用なカルボン酸の例に、オレイン酸がある。
【0062】
C1〜C20‐1価アルコールは、存在するならば、過塩基化反応混合物に用いられる全成分の重量に関し上限約30重量%になるように十分な量を加えることができる。あるいは、C1〜C20‐1価アルコールの量は、過塩基化反応混合物に用いられる全成分の重量に関し約2重量%から約20重量%である。有用なC1〜C20‐1価アルコールの量は、過塩基化反応混合物に用いられる全成分の重量に関し約4重量%から約10重量%である。C1〜C20‐1価アルコール例には、メタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、およびベンジルアルコールが含まれる。有用なC1〜C20‐1価アルコールは、2−エチルヘキサノールである。
【0063】
C2〜C4‐多価アルコールは、使用されるならば、過塩基化反応混合物に用いられる全成分の重量に関し約1重量%から約10重量%になるのに十分な量で存在することができる。有用なC2〜C4‐多価アルコールの量は、過塩基化反応混合物に用いられる全成分の重量に関し約1.5重量%から約6重量%である。好ましいC2〜C4‐多価アルコールの例として、エチレングリコールやプロピレングリコールのような二価アルコールがある。好ましいC2〜C4‐多価アルコールの別の例として、グリセロールのような三価アルコールがある。有用なC2〜C4‐多価アルコールは、エチレングリコールである。
【0064】
一実施形態では、潤滑油組成物を形成するために、過塩基化反応を基油の存在下で行う。
基油
本明細書中の潤滑油組成物に使われる基油は、米国石油協会(API:American Petroleum Institute)のガイドライン(Base Oil Interchangeability Guidelines)でグループI〜Vに特定されている基油の中から選ぶことができる。以下に、これらの5つのグループに分類される基油を示す。
【0065】
【表1】

【0066】
グループI〜IIIは鉱油留分(mineral oil process stock)である。
【0067】
本発明の潤滑油組成物に使う基油は、天然オイル、合成オイル、またはそれらの混合物のいずれであってもよい。有用な天然オイルには、鉱油系潤滑油(たとえば、液体石油系オイル、およびパラフィン系オイル、ナフテン系オイルまたはパラフィン系‐ナフテン系混合オイルに溶剤処理または酸処理を施した鉱油系潤滑油等)のみならず、動物性オイルおよび植物性オイル(たとえば、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、落花生油、トウモロコシ油、ダイズ油および亜麻仁油等)が含まれる。これらのオイルは、必要ならば、部分的または完全に水素添加することができる。また、石炭またはけつ岩油由来のオイルも有用である。
【0068】
必要に応じて過塩基化反応に添加することができる基油の量は、過塩基化反応混合物に用いられる全成分の重量に関し約20重量%から約80重量%になるように加えれば十分であろう。有用な基油の量は、過塩基化反応混合物に用いられる全成分の重量に関し約40重量%から約70重量%である。
【0069】
本明細書中の有用な潤滑油組成物は、100℃において上限約525cStの粘度を有することができる。一実施形態では、100℃において約20cStから約200cStであり、別の実施形態では、100℃において約20cStから約120cStである。
【0070】
本明細書中の潤滑油組成物のTBNは、約50から約500であることができる。本明細書中の潤滑油組成物の有用なTBNは、約100から約400であることができる。
【0071】
また、本明細書中の新規なフェノール二量体または新規な過塩基性フェノール二量体のいずれかに加え、潤滑油組成物は、当技術分野で周知の他の添加剤を含むことができる。それらの添加剤には、ポリマー性粘度調整剤、清浄剤、酸化防止剤、分散剤、防錆剤、耐摩耗剤、ホウ素含有化合物、摩擦調整剤、流動点降下剤、および消泡剤等がある。
【0072】
さらに、本明細書中の潤滑油組成物は、必要に応じて、1つまたは複数のポリマー性粘度調整剤を含むことができる。ポリマー性粘度調整剤は、温度にともなう粘度変化の度合いを調節する。すなわち、ポリマー性粘度調整剤は、エンジンオイルの粘度が低温では微小に、高温では大幅に増加するように働く。ポリマー性粘度調整剤は、存在するならば、潤滑油組成物の最終重量に関し上限約12重量%になるように十分な量を加えることができる。あるいは、使用することができるポリマー性粘度調整剤の量は、潤滑油組成物の最終重量に関し約0.5重量%から約10重量%である。
【0073】
ポリマー性粘度調整剤の例には、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、ポリメタクリレート、エチレン‐プロピレン共重合体、ポリアクリレート、スチレン‐マレイン酸エステル共重合体、オレフィン共重合体、および水素添加スチレン‐ブタジエン共重合体が含まれる。有用なポリマー性粘度調整剤は、分散性オレフィン共重合体である。
【0074】
さらに、本明細書中の潤滑油組成物は、必要に応じて、1つまたは複数の清浄剤を含むことができる。清浄剤は、存在するならば、潤滑油組成物の最終重量に関し上限約10重量%になるように十分な量を加えることができる。あるいは、使用することができる清浄剤の量は、潤滑油組成物の最終重量に関し約0.02重量%から約2.5重量%である。
【0075】
清浄剤の例には、スルホン酸塩、フェネート、カルボン酸塩、サリチル酸塩またはホスホン酸塩等の極性基を含む金属添加剤が含まれる。これらは、脂肪族、環状脂肪族またはアルキル芳香族の側鎖、および少なくとも1つのアルカリ土類金属イオンを含む数個の金属イオンを有する。これらの清浄剤の機能は、燃焼室内の沈殿物を取り除くことである。この燃焼室には、関係のあるインジェクションバルブ、インジェクションポート、その他を含むことができる。これらのアルカリ土類金属含有清浄剤化合物は、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウムの塩に、燃料オイル組成物中における清浄作用を与える。例として、中性および過塩基性のアルカリ土類金属のスルホン酸塩、中性および過塩基性のアルカリ土類金属のサリチル酸塩、中性および過塩基性のアルカリ土類金属フェネートがある。これらの清浄剤には、石油スルホン酸のアルカリ土類金属塩、および長鎖のモノ‐またはジ‐アルキルアリールスルホン酸――各アルキル基は12個から18個の炭素原子を含み、アリール基はベンジル基、トリル基およびキシリル基である――のアルカリ土類金属塩を含むことができる。また、これらの清浄剤には、アルキルフェノールおよびアルキルメルカプトフェノール――直鎖状または分枝したアルキル基は4個から50個の炭素原子を含み、より好ましくは8個から20個の炭素原子を含む――を有するアルカリ土類金属フェネートを含むことができる。特に、清浄剤の例として、中性スルホン酸カルシウム、中性C14〜C24−α−オレフィンスルホン酸カルシウム、過塩基性スルホン酸カルシウム、過塩基性C14〜C24−α−オレフィンスルホン酸カルシウム、中性カルシウムフェネート、過塩基性カルシウムフェネート、中性サリチル酸カルシウム、過塩基性サリチル酸カルシウム、中性スルホン酸マグネシウム、過塩基性スルホン酸マグネシウム、中性マグネシウムフェネート、過塩基性マグネシウムフェネート、中性サリチル酸マグネシウム、過塩基性サリチル酸マグネシウム、またはそれらの組合せおよび混合物からなるグループから選ばれるような塩を含む。
【0076】
有用な清浄剤は、中性スルホン酸カルシウム、過塩基性スルホン酸カルシウム、中性サリチル酸カルシウム、過塩基性サリチル酸カルシウム、中性カルシウムフェネート、および過塩基性カルシウムフェネートである。一実施形態では、中性スルホン酸カルシウムが、C14〜C24−α−オレフィンスルホン酸カルシウムである。別の実施形態では、過塩基性スルホン酸カルシウムが、C14〜C24−α−オレフィンスルホン酸カルシウムである。さらに別の実施形態では、清浄剤が、過塩基性C14〜C24−α−オレフィンスルホン酸カルシウムと中性C14〜C24−α−オレフィンスルホン酸カルシウムとの混合物で、各清浄剤は、潤滑油組成物の最終重量に関し上限約5重量%になるように十分な量が存在する。また、さらに別の実施形態では、清浄剤が、潤滑油組成物の最終重量に関し、約0.01重量%から約1重量%の過塩基性C14〜C24−α−オレフィンスルホン酸カルシウムと約0.1重量%から約2重量%の中性C14〜C24−α−オレフィンスルホン酸カルシウムとの混合物である。
【0077】
さらに、本明細書中の潤滑油組成物は、必要に応じて、1つまたは複数の酸化防止剤を含むことができる。酸化防止剤は、存在するならば、潤滑油組成物の最終重量に関し上限約10重量%になるように十分な量を加えることができる。あるいは、使用することができる酸化防止剤の量は、潤滑油組成物の最終重量に関し約0.1重量%から約4重量%である。
【0078】
潤滑油組成物に使われる酸化防止剤の例は、周知であり、フェネート、硫化フェネート、硫化オレフィン、リンおよびイオウが結合したテルペン、硫化エステル、芳香族アミン、フェノール類、および立体障害性フェノール類等の種々の化合物を含む。有用な酸化防止剤には、ジアリールアミンおよび高分子量フェノール類が含まれる。一実施形態では、潤滑油組成物は、ジアリールアミンと高分子量フェノール類との混合物を含み、各酸化防止剤は、潤滑油組成物の最終重量に関し上限約5重量%になるように十分な量が存在する。別の実施形態では、酸化防止剤が、潤滑油組成物の最終重量に関し、約0.3重量%から約1.5重量%のジアリールアミンと約0.4重量%から約2.5重量%の高分子量フェノール類との混合物である。
【0079】
さらに、本明細書中の潤滑油組成物は、必要に応じて、1つまたは複数の分散剤を含むことができる。分散剤は、存在するならば、潤滑油組成物の最終重量に関し上限約12重量%になるように十分な量を加えることができる。あるいは、使用することができる分散剤の量は、潤滑油組成物の最終重量に関し約3重量%から約10重量%である。一実施形態では、潤滑油組成物は、混合分散系を利用している。
【0080】
潤滑油組成物中で使われる分散剤には、主として、時に「無灰」分散剤と呼ばれることがある分散剤を含む。「無灰」という用語は、潤滑油組成物に混合する前には、この種の分散剤は灰分を形成する金属を含んでおらず、かつ潤滑油組成物に添加したときも、通常、灰分を形成する金属を生じないことに由来する。分散剤は、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合する極性基を特徴とする。
【0081】
分散剤の1つのクラスに、マンニッヒ塩基(Mannich base)がある。マンニッヒ塩基は、アルキル基で置換された高分子量フェノールと、アルキレンポリアミンとホルムアルデヒド等のアルデヒドとを縮合させて形成される物質である。マンニッヒ塩基は、米国特許第3,634,515号にさらに詳しく説明されている。
【0082】
分散剤の別のクラスに、コハク酸イミド化合物がある。これらの物質は、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤とアミンとの反応で形成される。本明細書中の潤滑油組成物に適したコハク酸イミド化合物は、欧州特許第976814号および米国特許第4,234,435号にさらに詳しく説明されている。
【0083】
分散剤の第3のクラスに、高分子量エステルがある。このクラスの分散剤は、米国特許第3,381,022号にさらに詳しく説明されている。
【0084】
その他の分散剤には、ポリマー性分散剤添加物が含まれ、それらは通常、ポリマーに分散特性を与える極性の官能基を含む炭化水素系ポリマーである。
【0085】
有用な分散剤のクラスに、カルボン酸系分散剤がある。カルボン酸系分散剤には、コハク酸由来分散剤が含まれ、それらは、水酸基含有有機化合物、または好ましくは少なくとも1つの水素原子が窒素原子に結合しているアミン、または前記水酸基含有有機化合物と前記アミンの混合物のいずれかと、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤との反応生成物である。「コハク酸アシル化剤」とは、炭化水素置換コハク酸または炭化水素置換コハク酸を生成する化合物を意味する。コハク酸アシル化剤の例には、ヒドロカルビル置換コハク酸、ヒドロカルビル置換コハク酸の無水物、エステル(半エステルを含む)およびハロゲン化物が含まれる。
【0086】
有用な分散剤は、グリコールで末端キャップしたコハク酸イミドである。
【0087】
さらに、本明細書中の潤滑油組成物は、必要に応じて、1つまたは複数の防錆剤を含むことができる。防錆剤は、存在するならば、潤滑油組成物の最終重量に関し上限約5重量%になるように十分な量を加えることができる。
【0088】
防錆剤は、含鉄金属表面の腐蝕を抑制する特性を有する単一化合物、またはそのような特性を有する化合物の混合物であることができる。これらに限定されるわけではないが、本明細書中の有用な防錆剤の例として、トール油脂肪酸、オレイン酸、およびリノール酸等から生成する二量体および三量体酸を含む油溶性のポリカルボン酸のみならず、2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、およびセロチン酸等の油溶性の高分子量有機酸が含まれる。その他の好ましい防錆剤には、分子量が600から3,000の範囲の長鎖のα,ω−ジカルボン酸、およびテトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸等のアルケニル基が10個以上の炭素原子を有するアルケニルコハク酸が含まれる。酸性防錆剤の別の有用なタイプとして、アルケニル基中に8個から24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸と多価グリコール等のアルコールとの半エステルがある。また、そのようなアルケニルコハク酸の対応する半アミドも有用である。有用な防錆剤は、高分子有機酸である。
【0089】
本明細書中の潤滑油組成物は、必要に応じて、1つまたは複数の耐摩耗剤を含むことができる。耐摩耗剤は、存在するならば、潤滑油組成物の最終重量に関し上限約5重量%になるように十分な量を加えることができる。あるいは、使用することができる耐摩耗剤の量は、潤滑油組成物の最終重量に関し約0.1重量%から約5重量%である。
【0090】
耐摩耗剤の例として、これに限定されるわけではないが、チオリン酸の金属塩、特にジアルキルジチオリン酸亜鉛、リン酸のエステルまたは塩、亜リン酸塩およびリン含有カルボン酸のエステル、エーテルまたはアミドが含まれる。リン含有耐摩耗剤は、欧州特許第612839号にさらに詳しく説明されている。有用な耐摩耗剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛である。
【0091】
本明細書中の潤滑油組成物は、必要に応じて、1つまたは複数のホウ素含有化合物を含むことができる。ホウ素含有化合物は、存在するならば、潤滑油組成物の最終重量に関し上限約8重量%になるように十分な量を加えることができる。あるいは、使用することができるホウ素含有化合物の量は、潤滑油組成物の最終重量に関し約0.5重量%から約7重量%である。
【0092】
ホウ素含有化合物の例として、ホウ酸エステル、含ホウ酸脂肪族アミン、含ホウ酸エポキシド、および米国特許第5,883,057号、29欄から33欄に開示されている含ホウ酸コハク酸イミド等の含ホウ酸分散剤が含まれる。有用なホウ素含有化合物は、必要に応じてマレイン酸エステルで末端をキャップさせることができる含ホウ酸ポリイソブチレンコハク酸イミド分散剤である。
【0093】
本明細書中の潤滑油組成物は、必要に応じて、1つまたは複数の摩擦調整剤を含むことができる。摩擦調整剤は、存在するならば、潤滑油組成物の最終重量に関し上限約5重量%になるように十分な量を加えることができる。あるいは、使用することができる摩擦調整剤の量は、潤滑油組成物の最終重量に関し約0.05重量%から約1重量%である。
【0094】
摩擦調整剤の例として、脂肪族のアミン、脂肪族のエステル――特にグリセリンエステル(例えばグリセリン=モノオレエート)、含ホウ酸グリセリンエステル、脂肪族亜リン酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪族エポキシド、含ホウ酸脂肪族エポキシド、アルコキシ化脂肪族アミン、含ホウ酸アルコキシ化脂肪族アミン、脂肪酸の金属塩、硫化オレフィン、脂肪族イミダゾリン、カルボン酸とポリアルキレン‐ポリアミンの縮合生成物、およびアルキルリン酸のアミン塩が含まれる。さらに、モリブデンを含有する酸化防止剤すなわち摩擦調整剤――これに限定されるわけではないが、ジチオカルバミン酸モリブデン、モリブデンアミド、およびカルボン酸のモリブデン塩等――も含まれる。好ましいモリブデン摩擦調整剤には、モリブデンとイオウを含有する組成物――モリブデン化合物と塩基性窒素含有化合物と二硫化炭素とから得られる――が挙げられる。塩基性窒素含有化合物は、ヒドロカルビルアミン、またはカルボン酸とアルキレンポリアミンとの反応生成物であることができる。モリブデン化合物は、モリブデン酸等の酸性モリブデン化合物であることができる。また本明細書では、モリブデンを含有するがイオウは含有しない化合物も有用である。有用な摩擦調整剤は、グリセリン=モノオレエートである。
【0095】
本明細書中の潤滑油組成物は、必要に応じて、1つまたは複数の流動点降下剤を含むことができる。流動点降下剤は、存在するならば、潤滑油組成物の最終重量に関し上限約1重量%になるように十分な量を加えることができる。あるいは、使用することができる流動点降下剤の量は、潤滑油組成物の最終重量に関し約0.04重量%から約0.5重量%である。有用な流動点降下剤は、ポリメチルメタクリレートである。
【0096】
本明細書中の潤滑油組成物は、必要に応じて、1つまたは複数の消泡剤を含むことができる。消泡剤は、存在するならば、潤滑油組成物の最終重量に関し上限約1重量%になるように十分な量を加えることができる。あるいは、使用することができる消泡剤の量は、潤滑油組成物の最終重量に関し約0.001重量%から約0.015重量%である。有用な消泡剤は、シロキサンである。
【0097】
本明細書中の必要に応じて添加剤を含む潤滑油組成物のTBNは、約2から約20であることができる。本明細書の必要に応じて添加剤を含む潤滑油組成物の有用なTBNは、約5から約12であることができる。
【0098】
一実施形態では、最終潤滑油組成物が、上限約5%の新規な過塩基性二量体、上限約12%のポリマー性粘度調節剤、上限約10%の清浄剤、上限約10%の酸化防止剤、上限約12%の分散剤、上限約5%の防錆剤、上限約5%の耐摩耗剤、上限約8%のホウ素含有化合物、上限約5%の摩擦調整剤、上限約1%の流動点降下剤、および上限約1%の消泡剤を含有する。
【0099】
別の実施形態では、最終潤滑油組成物が、約2%から約4.5%の新規な過塩基性二量体、約0.5%から約10%のポリマー性粘度調節剤、約0.02%から約2.5%の清浄剤、約0.1%から約4%の酸化防止剤、約3%から約10%の分散剤、約0.1%から約5%の耐摩耗剤、約0.5%から約7%のホウ素含有化合物、約0.05%から約1%の摩擦調整剤、約0.04%から約0.5%の流動点降下剤、および約0.001%から約0.015%の消泡剤を含有する。
【0100】
さらに別の実施形態では、最終潤滑油組成物が、上限約5%の新規な過塩基性二量体、上限約12%の分散性オレフィン共重合体、上限約5%の中性スルホン酸カルシウム、上限約5%の過塩基性スルホン酸カルシウム、上限約5%のジアリールアミン、上限約5%の高分子量フェノール、上限約12%のグリコールで末端キャップされたコハク酸イミド、上限約5%のジアルキルジチオリン酸亜鉛、上限8%の必要に応じてマレイン酸エステルで末端キャップさせることができる、含ホウ酸ポリイソブチレンコハク酸イミド、上限約5%のグリセリン=モノオレエート、上限約1%の流動点降下剤、および上限約1%の消泡剤を含有する。
【0101】
また、さらに別の実施形態では、最終潤滑油組成物が、約2%から約4.5%の新規な過塩基性二量体、約0.5%から約10%の分散性オレフィン共重合体、約0.01%から約1%の過塩基性C14〜C24−α−オレフィンスルホン酸カルシウム、約0.1%から約2%の中性C14〜C24−α−オレフィンスルホン酸カルシウム、約0.3%から約1.5%のジアリールアミン、約0.4%から約2.5%の高分子量フェノール、約3%から約10%のグリコールで末端キャップされたコハク酸イミド、約0.1%から約5%のジアルキルジチオリン酸亜鉛、約0.5%から約7%の含ホウ酸ポリイソブチレンコハク酸イミド、約0.05%から約1%のグリセリン=モノオレエート、約0.04%から約0.5%の流動点降下剤、および約0.001%から約0.015%の消泡剤を含有する。
【0102】
その上、さらに別の実施形態では、最終潤滑油組成物が、上限約5%の新規な過塩基性二量体、上限約12%の分散性オレフィン共重合体、上限約5%の中性サリチル酸カルシウム、上限約5%の過塩基性サリチル酸カルシウム、上限約5%のジアリールアミン、上限約5%の高分子量フェノール、上限約12%のグリコールで末端キャップされたコハク酸イミド、上限約5%のジアルキルジチオリン酸亜鉛、上限約8%の必要に応じてマレイン酸エステルで末端キャップさせることができる、含ホウ酸ポリイソブチレンコハク酸イミド、上限約5%のグリセリン=モノオレエート、上限約1%の流動点降下剤、および上限約1%の消泡剤を含有する。
【0103】
ある実施形態では、最終潤滑油組成物が、上限約5%の新規な過塩基性二量体、上限約12%の分散性オレフィン共重合体、上限約5%の中性カルシウムフェネート、上限約5%の過塩基性カルシウムフェネート、上限約5%のジアリールアミン、上限約5%の高分子量フェノール、上限約12%のグリコールで末端キャップされたコハク酸イミド、上限約5%のジアルキルジチオリン酸亜鉛、上限約8%の必要に応じてマレイン酸エステルで末端キャップさせることができる、含ホウ酸ポリイソブチレンコハク酸イミド、上限約5%のグリセリン=モノオレエート、上限約1%の流動点降下剤、および上限約1%の消泡剤を含有する。
【0104】
上記各成分のパーセントは、最終潤滑油組成物の重量に関する各成分の重量パーセントを表す。潤滑油組成物の上記成分以外の部分は、基油からなる。
【0105】
本明細書中の潤滑油組成物は、約0.2%から約1.8%の硫酸灰分(ASTM D874)および約0.03重量%から約0.18重量%のリン元素を有する。
【0106】
本明細書中の潤滑油組成物は、耐摩耗作用が強化されており、エンジン用潤滑油として特に有効である。これらの潤滑油は、自動車および貨物自動車エンジン、2サイクルエンジン、航空機用ピストンエンジン、船舶用エンジン、低負荷ディーゼルエンジン、および高荷重ディーゼルエンジン等の火花点火および圧縮点火内燃機関に用いるクランク室用潤滑油を含む広範な用途において有効である。さらに、本明細書中の潤滑油組成物は、自動式、手動式および無段変速機用等の動力伝達流体しても使うことができるであろう。また、金属加工用の潤滑油としても有用であろう。
【0107】
前記の新規なフェノール二量体および新規な過塩基性フェノール二量体は、潤滑油組成物を形成するために、基油に直接添加することができる。しかし、一実施形態では、新規なフェノール二量体、新規な過塩基性フェノール二量体、および必要に応じて、上記の他の添加剤は、濃縮潤滑油を形成するために、鉱油、合成オイル、ナフサ、アルキル化(例えばC10〜C13のアルキルによる)ベンゼン、トルエン、またはキシレン等の実質的に不活性な、通常は液体の有機系の希釈液を用いて希釈される。通常、これらの濃縮潤滑油は、約1重量%から99重量%の希釈液を含む。一実施形態では、これらの濃縮潤滑油は、約10重量%から90重量%の希釈液を含む。濃縮潤滑油は、潤滑油組成物を形成するために、基油に添加することができる。
【0108】
以下の例は、本発明の方法および組成物を例示するためもので、これによって本発明を限定するためのものではない。さらに、通常当技術分野でみられ、当業者にとって明らかな、様々な条件や要素の適切な変更および応用は、本発明の精神および範囲に属する。本明細書中に引用した全ての特許および文献は、引用することによりその全体が本明細書に完全に組み込まれる。
【実施例】
【0109】
実施例1
4−ポリイソブチルクレゾール二量体の製造
攪拌器、温度コントローラ、Dean‐Starkトラップおよび凝縮器を備えた1Lの3つ口丸底フラスコで構成される反応器に、4−ポリイソブチルクレゾール1,200gを入れた。窒素ブランケットを用いた。4−ポリイソブチルクレゾールを、35〜40℃で加熱した。3−(ジメチルアミノ)ポリアミン12gを4−ポリイソブチルクレゾールに添加した。37%ホルムアルデヒド溶液96gを、5〜10分間かけて、滴下漏斗から液面下に注入した。反応温度は60℃以下に保った。混合物を60℃で15分間攪拌した後、150℃で窒素を1.0SCFMで流しながら蒸留した。水を150℃で1時間収集した。残りの反応混合物を約80℃に冷却した。最後に、残りの反応混合物を11cmのろ紙およびプレコート15gを用いてろ過した。生成した4−ポリイソブチルクレゾール二量体溶液の粘度は、100℃で994cStであった。
【0110】
実施例2
過塩基性4−ポリイソブチルクレゾール二量体の製造
攪拌器、滴下漏斗、温度計、温度コントローラおよび凝縮器を備えた1Lの底に出口のある3つ口樹脂製フラスコで構成される反応器に、4−ポリイソブチルクレゾール二量体70gを入れた後、基油200gを添加した。混合物を500±50rpmで攪拌した。2−エチルヘキサノール40g、エチレングリコール5g、オレイン酸50gおよび水酸化カルシウム42gを混合物に添加し、真空(11”Hg)下、105℃で加熱した。その後、真空圧を28.8”Hgに上げた。混合物を40分間、真空下に放置し、反応を進行させた。その後、真空圧を11”Hgに下げるとともに、温度を130℃に上げた。その後、真空を開放し、さらにエチレングリコール18gを5分間かけて滴下漏斗から滴下して加えた。二酸化炭素ガスを、液面下に、130℃で、40分間、260cc/min.の速度で添加した。再び温度を180℃に上げ、真空圧を29”Hgに上げた後、温度を210℃に上げた。混合物を、温度210℃、真空圧29”Hgに1時間保った。最後に、生成物を熱い状態のまま、8%ろ過助剤(body aid)およびプレコート15gを用いてろ過した。
【0111】
生成した潤滑油組成物のTBNは、164であった。カルシウム含量は、5.72重量%であった。生成した潤滑油の粘度は、100℃で30.2cStであった。
【0112】
実施例3
過塩基性4−ポリイソブチルクレゾール二量体の製造
反応に水酸化カルシウム100gおよび4−ポリイソブチルクレゾール二量体200gを用いた以外は、実施例2の手順に従った。
【0113】
生成した潤滑油組成物のTBNは、197であった。カルシウム含量は、6.13重量%であった。生成した潤滑油組成物の粘度は、100℃で118cStであった。
【0114】
実施例4
異なる反応成分を以下に明記する量で用い、実施例2の手順に従った。生成した各潤滑油組成物のTBN、カルシウム含量(重量%)および粘度を表Iに示す。
【0115】
実施例5
分散性オレフィン共重合体(約2%)、マレイン酸エステルで末端キャップした含ホウ酸ポリイソブチレンコハク酸イミド(3.3%)、グリコールで末端キャップしたコハク酸イミド分散剤(1.4%)、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(1%)、新規な過塩基性フェノール二量体(2.5%)、中性C14〜C24−α−オレフィンスルホン酸カルシウム(0.48%)、過塩基性C14〜C24−α−オレフィンスルホン酸カルシウム(0.11%)、ジアリールアミン(0.7%)、グリセリン=モノオレエート(0.4%)、および高分子量フェノール(1.5%)を含む潤滑油組成物をCaterpillar高荷重エンジンのクランク室で使用した。括弧内に示す各成分のパーセントは、潤滑油組成物の最終重量に関する潤滑油組成物の各成分の重量パーセントを表す。潤滑油組成物の上記成分以外の部分は、グループIIの基油からなる。
【0116】
本潤滑油組成物のTBNは8.3であった。本潤滑油組成物に含まれる硫酸灰、イオウおよびリンは、それぞれ0.88%、0.29%および0.107%であった。
【0117】
本潤滑油組成物を用いたCaterpillar 1Pエンジンに関するCH−4 APIディーゼルエンジン性能試験(CH‐4 API Diesel Engine Performance Test)結果を下記に示す。
Weighted Demirits‐1P:248.8で、最大許容値350を下回る。
Top Groove Carbon:31.8%で、最大許容値36%を下回る。
Top Land Carbon:24.8%で、最大許容値40%を下回る。
平均オイル消費量:3.1g/hで、最大許容値12.4g/hを大幅に下回る。
最終オイル消費量:2.3g/hで、これも最大許容値14.6g/hを大幅に下回る。
【0118】
したがって、本明細書中の潤滑油組成物は、CH−4 APIディーゼルエンジン性能試験に合格した。
【0119】
【表2】

【0120】
本発明の実施の態様は次のとおりである。
1.式Iを含んでなる化合物(ここで、式中、R1およびR3は、独立にアルキル基またはアルケニル基を表し、R2およびR4は、独立にヒドロカルビル基を表し、nは1から3であるが、ただしR1およびR3のそれぞれがメチルで、かつnが1の場合、R2およびR4はいずれもt-ドデシルであってはならない)。
【0121】
【化5】

【0122】
2.R1およびR3のそれぞれがメチルである上記1に記載の化合物。
3.R2およびR4のそれぞれがポリイソブチルである上記1に記載の化合物。
4.R2およびR4のそれぞれが、10個から100個の炭素原子を含むポリイソブチルである上記3に記載の化合物。
5.R2およびR4のそれぞれが、55個から75個の炭素原子を含むポリイソブチルである上記3に記載の化合物。
6.R2およびR4のそれぞれがドデシルである上記1に記載の化合物。
7.nが1である上記1に記載の化合物。
8.R1およびR3のそれぞれがメチルで、R2およびR4のそれぞれがポリイソブチルで、かつnが1である上記1に記載の化合物。
9.R1およびR3のそれぞれがメチルで、R2およびR4のそれぞれが10個から100個の炭素原子を含むポリイソブチルで、かつnが1である上記1に記載の化合物。
10.ホルムアルデヒドを、触媒の存在下において、式IIで表される化合物(ここで、R5は、アルキル基またはアルケニル基を表し、かつR6は、ヒドロカルビル基を表す)と接触させることを含んでなる上記1に記載の化合物の製造方法。
【0123】
【化6】

【0124】
11.触媒が3-(ジメチルアミノ)プロピルアミンを含んでなる上記10に記載の方法。
12.上記10に記載の方法によって製造された化合物。
13.触媒が3-(ジメチルアミノ)プロピルアミンを含んでなる上記10に記載の方法によって製造される化合物。
14.式IIIを含んでなる化合物、またはその塩(ここで、R7およびR9は、独立にアルキル基またはアルケニル基を表し、R8およびR10は、独立にヒドロカルビル基を表し、Mはアリカリ土類金属であり、かつnは1から3である)。
【化7】

15.R7およびR9のそれぞれがメチルである上記14に記載の化合物。
16.R8およびR10のそれぞれがポリイソブチルである上記14に記載の化合物。
17.R8およびR10のそれぞれが、10個から100個の炭素原子を含むポリイソブチルである上記16に記載の化合物。
18.R8およびR10のそれぞれが、55個から75個の炭素原子を含むポリイソブチルである上記16に記載の化合物。
19.R8およびR10のそれぞれがドデシルである上記14に記載の化合物。
20.Mがカルシウム、マグネシウムおよびバリウムからなる群から選択される上記14に記載の化合物。
21.Mがカルシウムを含んでなる上記20に記載の化合物。
22.nが1である上記14に記載の化合物。
23.R7およびR9のそれぞれがメチルで、R8およびR10のそれぞれがポリイソブチルで、Mがカルシウムで、かつnが1である上記14に記載の化合物。
24.R7およびR9のそれぞれがメチルで、R8およびR10のそれぞれが10個から100個の炭素原子を含むポリイソブチルで、Mがカルシウムで、かつnが1である上記23に記載の化合物。
25.化合物が炭酸カルシウム塩の形態を含んでなる上記14に記載の化合物。
26.(a)アルカリ土類金属源、飽和または不飽和カルボン酸、C1〜C20‐1価アルコール、およびC2〜C4‐多価アルコールを、式Iで表される化合物
【0125】
【化8】

【0126】
(ここで、R1、R2、R3、R4およびnは上記1において定義されたとおりである)と接触させ、そして
(b)二酸化炭素を添加する
ことを含んでなる上記14に記載の化合物の製造方法。
27.アルカリ土類金属源が水酸化カルシウムである上記26に記載の方法。
28.飽和または不飽和カルボン酸がオレイン酸を含んでなる上記26に記載の方法。
29.C1〜C20‐1価アルコールが2-エチルヘキサノールを含んでなる上記26に記載の方法。
30.C2〜C4‐多価アルコールがエチレングリコールからなる上記26に記載の方法。
31.上記26に記載の方法によって製造される生成物。
32.アルカリ土類金属源が水酸化カルシウムである上記26に記載の方法によって製造される生成物。
33.飽和または不飽和カルボン酸がオレイン酸を含んでなる上記31に記載の生成物。
34.C1〜C20‐1価アルコールが2-エチルヘキサノールを含んでなる上記31に記載の生成物。
35.C2〜C4‐多価アルコールがエチレングリコールを含んでなる上記31の生成物。
36.上記14に記載の過塩基性化合物を含んでなる潤滑油組成物。
37.潤滑油組成物が、ポリマー性粘度調節剤、清浄剤、酸化防止剤、分散剤、防錆剤、耐摩耗剤、ホウ素含有化合物、摩擦調整剤、流動点降下剤、および消泡剤からなるグループから選択される1つまたは複数の追加の添加剤を含む上記36に記載の潤滑油組成物。
38.潤滑油組成物が、上限約12%のポリマー性粘度調整剤、上限約10%の清浄剤、上限約10%の酸化防止剤、上限約12%の分散剤、上限約5%の防錆剤、上限約5%の耐摩耗剤、上限約8%のホウ素含有化合物、上限約5%の摩擦調整剤、上限約1%の流動点降下剤、および上限約1%の消泡剤(ここで、各成分のパーセントは、最終潤滑油組成物の重量に関する各成分の重量パーセントを表す)を含む上記37に記載の潤滑油組成物。
39.潤滑油組成物が、約4%から約10%のポリマー性粘度調整剤、約0.1%から約2.5%の清浄剤、約0.2%から約4%の酸化防止剤、約4%から約10%の分散剤、約0.25%から約5%の耐摩耗剤、約1%から約7%のホウ素含有化合物、約0.1%から約1%の摩擦調整剤、約0.1%から約0.5%の流動点降下剤、および約0.001%から約0.015%の消泡剤(ここで、各成分のパーセントは、最終潤滑油組成物の重量に関する各成分の重量パーセントを表す)を含む上記38に記載の潤滑油組成物。
40.(a)上記1に記載の化合物、基油、アルカリ土類金属源、飽和または不飽和カルボン酸、C1〜C20‐1価アルコール、およびC2〜C4‐多価アルコールを混ぜ合わせ、
かつ
(b)二酸化炭素を添加する
ことを含んでなる方法によって製造される潤滑油組成物。
41.アルカリ土類金属源が水酸化カルシウムを含んでなる上記40に記載の方法によって製造される潤滑油組成物。
42.飽和または不飽和カルボン酸がオレイン酸を含んでなる上記40に記載の方法によって製造される潤滑油組成物。
43.C1〜C20‐1価アルコールが2-エチルヘキサノールを含んでなる上記40に記載の方法によって製造される潤滑油組成物。
44.C2〜C4‐多価アルコールがエチレングリコールを含んでなる上記40に記載の方法によって製造される潤滑油組成物。
45.上記36に記載の潤滑油組成物を内燃機関に添加することを含んでなる内燃機関を潤滑する方法。
46.上記36に記載の潤滑油組成物を変速機に添加することを含んでなる変速機を潤滑する方法。
47.変速機が、手動式変速機、自動変速機、および無段変速機からなる群から選択される変速機である上記46に記載の変速機を潤滑する方法。
48.(a)上記1に記載の化合物、基油、アルカリ土類金属源、飽和または不飽和カルボン酸、C1〜C20‐1価アルコール、およびC2〜C4‐多価アルコールを混ぜ合わせ、
かつ
(b)二酸化炭素を添加する
ことを含んでなる潤滑油組成物の製造方法。
49.アルカリ土類金属源が水酸化カルシウムを含んでなる上記48に記載の方法。
50.飽和または不飽和カルボン酸がオレイン酸を含んでなる上記48に記載の方法。
51.C1〜C20‐1価アルコールが2-エチルヘキサノールを含んでなる上記48に記載の方法。
52.C2〜C4‐多価アルコールがエチレングリコールを含んでなる上記48に記載の方法。
53.アルカリ土類金属源が水酸化カルシウムであり;飽和または不飽和カルボン酸がオレイン酸であり;C1〜C20‐1価アルコールが2-エチルヘキサノールであり;C2〜C4‐多価アルコールがエチレングリコールである上記48に記載の方法。
54.上記14に記載の過塩基性化合物を含んでなる濃縮潤滑油。
55.実質的に不活性な液体の有機希釈液中に上記14に記載の過塩基性化合物を含んでなる濃縮潤滑油。
56.濃縮潤滑油が、ポリマー性粘度調整剤、清浄剤、酸化防止剤、分散剤、防錆剤、耐摩耗剤、ホウ素含有化合物、摩擦調整剤、流動点降下剤、および消泡剤からなる群から選択される1つまたは複数の追加の添加剤を含む上記54に記載の濃縮潤滑油。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iを含んでなる化合物(ここで、式中、RおよびRは、独立にアルキル基またはアルケニル基を表し、RおよびRは、独立にヒドロカルビル基を表し、nは1から3であるが、ただしRおよびRのそれぞれがメチルで、かつnが1の場合、RおよびRはいずれもt−ドデシルであってはならない)。
【化1】

【請求項2】
およびRのそれぞれがメチルである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
およびRのそれぞれがポリイソブチルである請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
ホルムアルデヒドを、触媒の存在下において、式IIで表される化合物(ここで、Rは、アルキル基またはアルケニル基を表し、かつRは、ヒドロカルビル基を表す)と接触させることを含んでなる請求項1に記載の化合物の製造方法。
【化2】

【請求項5】
式IIIを含んでなる化合物、またはその塩(ここでRおよびRは、独立にアルキル基またはアルケニル基を表し、RおよびR10は、独立にヒドロカルビル基を表し、Mはアリカリ土類金属であり、かつnは1から3である)。
【化3】

【請求項6】
請求項5に記載の過塩基性化合物を含んでなる潤滑油組成物。

【公開番号】特開2006−143698(P2006−143698A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69551(P2005−69551)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】