説明

フェブリフジン及びイソフェブリフジンの新規製造方法

【課題】熱帯性マラリア原虫に対して極めて強い活性を有するフェブリフジン(3−[3−(3−ヒドロキシ−2−ピペリジニル)−2−オキソプロピル]−4(3H)−キナゾリノン)及びイソフェブリフジンの新規な合成方法であり、全ての段階において、水性溶媒中で行う全合成ルートによる製造方法の提供。
【解決手段】(R)−(+)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサアルデヒドを出発物質として数段階の工程により(3’S)−1−[2’−(3’−ベンジルオキシ)−1’−(tert−ブトキシカルボニル)−ピペリジノ]−3−ヒドロキシ−2−プロパノンを得、これを4−ヒドロキシキナゾリンと反応させて、目的物の保護体を得る。これを6N塩酸と加熱処理することによりフェブリフジンが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェブリフジン及びイソフェブリフジンの新規な製造方法に関する。より詳細には、本発明は、溶媒として水性溶媒のみを用いたフェブリフジン及びイソフェブリフジンの新規な製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マラリア原虫感染によって引き起こされるマラリアは、現在においても人類最大の寄生原虫感染症である。地球温暖化や全世界規模の交流化に伴いマラリア感染地域と交渉する機会が増えるにも関わらず、医薬品製造メーカーは市場性が期待できないという理由から新薬開発に十分な力を入れていない状況にある。そのため、治療としては現在上市しており、入手しやすいキニーネ、アルテミシンなどの薬剤の混合物(カクテル)を投与する場合が多く、不十分な治療によって、多剤耐性を持ったマラリアを生み出してしまうという悪循環に陥っている。
【0003】
キニーネやアルテミシニン同様天然物由来の抗マラリア活性を有する化合物として、生薬・常山(原植物:ジョウザンアジサイ=Dichroa febrifugaLour.)に含まれる植物アルカロイドの一種であるフェブリフギン(Febrifugine、化合物(1))又はイソフェブリフギン(Isofebrifugine、化合物(2))が知られている。
【0004】
フェブリフジン、イソフェブリフジンはマラリアに対して高い抗活性を有することが知られているが、天然には極微量しか存在していない。例えば特許文献1において、生薬・常山からフェブリフジン、イソフェブリフジンを抽出した例が報告されているが、生薬・常山の細片10kgからフェブリフジンを27mg、イソフェブリフジンを50mg単離している。一方、1日あたりの投与量は0.1〜1000mg必要とされ、天然からの供給では薬剤として投与するのは不可能であるばかりか、フェブリフジン、イソフェブリフジンを出発物質とした誘導体探索ですら困難な状況である。
【0005】
上記の理由から、フェブリフジン、イソフェブリフジンに対して、これまでにも効率的な化学合成法の検討が行われてきた。例えばラセミ体合成としては、非特許文献1〜10が、中間体の光学分割により合成した光学活性体としては例えば非特許文献11〜14が、天然若しくは非天然の光学活性化合物から誘導した合成例としては例えば特許文献2及び非特許文献15〜20が、そして、触媒量の不斉源を用いた触媒的不斉合成の例として特許文献3〜4、非特許文献21〜23をあげることができる。
【0006】
しかし、上記に挙げた合成例は何れも厳密な無水条件が必要なステップが含まれており、合成に際し通常の合成化学で必要とされる実験設備環境下で行う必要がある。前述したマラリア治療の現状を鑑みると、流行国で新薬を開発するのが理想的であるが、入手できる試薬の純度も含めて、厳密な条件下の反応を必要とする適切な環境が必要でないプロセスが望ましい。また、昨今の環境負荷の低減の観点からも、従来の有機溶媒中での反応を、環境に優しい水系反応で代替する重要性は極めて大きい。
【0007】
【特許文献1】特開2000−7673号公報
【特許文献2】特開2002−201170号公報
【特許文献3】WO2000/52005
【特許文献4】特開2002−201192号公報
【非特許文献1】Baker B. R.; Schaub, R. E.; McEvoy, F. J.; Williams, J. H. J. Org. Chem. 1952, 17, 132.
【非特許文献2】Baker B. R.; Schaub, R. E.; McEvoy, F. J.; Williams, J. H. J. Org. Chem. 1953, 18, 153.
【非特許文献3】Baker B. R.; McEvoy, F. J. J. Org. Chem. 1955, 20, 136.
【非特許文献4】Burgess, L. E.; Gross, E. K. M.; Jurka, J. Tetrahedron Lett. 1996, 37, 3255.
【非特許文献5】Takeuchi, Y.; Abe, H.; Harayama, T. Chemical & Pharmaceutical Bulletin 1999, 47, 905.
【非特許文献6】Takeuchi, Y.; Hattori, M.; Abe, H.; Harayama, T. Synthesis 1999, 1814.
【非特許文献7】Sugiura, M.; Kobayashi, S. Organic Letters 2001, 3, 477.
【非特許文献8】Sugiura, M.; Hagio, H.; Hirabayashi, R.; Kobayashi, S. Synlett 2001, 1225.
【非特許文献9】Kikuchi, H.; Tasaka, H.; Hirai, S.; Takaya, Y.; Iwabuchi, Y.; Ooi, H.; Hatakeyama, S.; Kim, H.-S.; Wataya, Y.; Oshima, Y. Journal of Medicinal Chemistry 2002, 45, 2563.
【非特許文献10】Takeuchi, Y.; Oshige, M.; Azuma, K.; Abe, H.; Harayama, T. Chemical & Pharmaceutical Bulletin 2005, 53, 868.
【非特許文献11】Baker B. R.; McEvoy, F. J.; Schaub, R. E.; Joseph, J. P.; Williams, J. H. J. Org. Chem. 1953, 18, 178.
【非特許文献12】Takeuchi, Y.; Azuma, K.; Takakura, K.; Abe, H.; Harayama, T. Chemical Communications, 2000, 17, 1643.
【非特許文献13】Takeuchi, Y.; Azuma, K.; Takakura, K.; Abe, H.; Kim, H.-S.; Wataya, Y.; Harayama, T. Tetrahedron 2001, 57, 1213.
【非特許文献14】Ooi, H.; Urushibara, A.; Esumi, T.; Iwabuchi, Y.; Hatakeyama, S. Organic Letters 2001, 3, 953.
【非特許文献15】Taniguchi, T.; Ogasawara, K. Organic Letters, 2000, 2, 3193.
【非特許文献16】Sugiura, M.; Hagio, H.; Hirabayashi, R.; Kobayashi, S. Journal of the American Chemical Society 2001, 123, 12510.
【非特許文献17】Huang, P.-Q.; Wei, B.-G.; Ruan, Y.-P. Synlett 2003, 1663.
【非特許文献18】Katoh, M.; Matsune, R.; Nagase, H.; Honda, T. Tetrahedron Letters 2004, 45, 6221.
【非特許文献19】Ashoorzadeh, A.; Caprio, V. Synlett 2005, 346.
【非特許文献20】Katoh, M.; Matsune, R.; Honda, T. Heterocycles 2006, 67, 189.
【非特許文献21】Kobayashi, S.; Ueno, M.; Suzuki, R.; Ishitani, H. Tetrahedron Letters 1999, 40, 2175.
【非特許文献22】Kobayashi, S.; Ueno, M.; Suzuki, R.; Ishitani, H.; Kim, H-S.; Wataya, Y. Journal of Organic Chemistry 1999, 64, 6833.
【非特許文献23】Okitsu, O.; Suzuki, R.; Kobayashi, S. Journal of Organic Chemistry 2001, 66, 809
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、毒性が低く、極めて高い抗マラリア活性を有するフェブリフジン及び/又はイソフェブリフジンを、合成の全工程において厳密な無水条件を必要とすること無しに製造する方法、すなわち水性溶媒のみを用いたフェブリフジン及び/又はイソフェブリフジンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、新規な中間体を経由する水性溶媒中での合成方法を開発し、フェブリフジン(Febrifugine、化合物(1))及びイソフェブリフジン(Isofebrifugine、化合物(2))を、全てのステップにおいて厳密な無水条件を必要すること無しに合成できることが可能となり、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、上記のとおりの課題を解決するものとして、第1には次式(1)
【0010】
【化27】

【0011】
で表されるフェブリフジン、及び/又は次式(2)
【0012】
【化28】

【0013】
で表されるイソフェブリフジンの水性溶媒中での全合成の方法を提供する。
また、本発明は、以下の製造方法も提供する。すなわち、第2の発明として、次式(4a)
【0014】
【化29】

【0015】
(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rはアミノ基の保護基を示し、Xは脱離基を示す。)
で表されるキラルピペリジン化合物の単一のジアステレオマーのそれぞれ又は両ジアステレオマーの混合物に対し、無溶媒又は水を含む有機溶媒若しくは水を溶媒とする条件下、末端のヒドロキシル基を適切な脱離基(ブロモ基、メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、等)に変換し、この系中に4−ヒドロキシキナゾリン及び塩基を作用させることにより、次式(4)
【0016】
【化30】

【0017】
(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rはアミノ基の保護基を示す。)
で表されるフェブリフジン及びイソフェブリフジンの保護体の単一のジアステレオマーのそれぞれ又は両ジアステレオマーの混合物を製造する方法を提供する。
上記項目のフェブリフジン及びイソフェブリフジンの保護体は、酸の水溶液、具体的には6規定塩化水素水溶液で加熱することにより容易に除去することが既知であり(例えば、WO/A1-200052005. Kobayashi, S.; Ueno, M.; Suzuki, R.; Ishitani, H. Tetrahedron Letters 1999, 40, 2175.、Kobayashi, S.; Ueno, M.; Suzuki, R.; Ishitani, H.; Kim, H-S.; Wataya, Y. Journal of Organic Chemistry 1999, 64, 6833.)、本発明は、この段階までの全てのステップにおいて厳密な無水条件下を必要としないフェブリフジン及びイソフェブリフジンの製造方法を提供する。
さらに第3の発明として次式(5)
【0018】
【化31】

【0019】
(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rは置換基を有してもよいアリール基を示し、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示す。)
で表されるβ−アミノケトン化合物の単一のジアステレオマーのそれぞれ又は両ジアステレオマーの混合物に対し、無溶媒又は水を含む有機溶媒若しくは水を溶媒とする条件下、末端のヒドロキシル基を適切な脱離基(ブロモ基、メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、等)に変換し、系中でピペリジン環を構築した後、この系中に金属塩の存在下でR及びRのみを選択的に除去し、さらに塩基性条件下ピペリジン環部の2級アミン部分を保護することで、前記式(4)で示したピペリジンの単一のジアステレオマーのそれぞれ又は両ジアステレオマーの混合物を製造する方法を提供する。
さらに本発明の第4の発明として次式(6)
【0020】
【化32】

【0021】
(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rは置換基を有してもよいアリール基をを示し、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示す。)
で表されるβ−アミノケトン化合物の単一のジアステレオマーのそれぞれ又は両ジアステレオマーの混合物に対し、水を含む有機溶媒又は水を溶媒とする条件下、末端のオレフィン部分を酸化して、ペンタメチルジシロキサン基を導入し、新規化合物であるペンタメチルジシロキサニルアミノケトン化合物を得た後に、ペンタメチルジシロキサン基を水性溶媒中で除去することで、前記式(5)のアミノケトンの単一のジアステレオマーそれぞれ又は両ジアステレオマーの混合物の製造方法を提供する。
さらに本発明の第5の発明として次式(7)
【0022】
【化33】

【0023】
(式中、Rは水酸基の保護基を示す。)
で表されるキラルアルデヒド化合物、次式(8)
【0024】
【化34】

【0025】
(式中、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示し、Rはアルキル基を示す。)
で表されるアルコキシプロペン化合物、及び次式
N−R
(式中、Rは置換基を有してもよいアリール基を示す。)
で表されるアミン化合物を、希土類金属水系ルイス酸若しくは界面活性機能を有するブレンステッド酸触媒存在下に水性溶媒中でマンニッヒ型反応をさせて、前記式(6)のβ−アミノケトン化合物の単一のジアステレオマーのそれぞれ又は両ジアステレオマーの混合物の製造方法を提供する。
また、当該式(6)の中間体化合物は、新規化合物であり、当該新規な中間体化合物自体は、第6の発明でもある。
なお、上記に挙げた式(3)から(6)の化合物の両ジアステレオマーの混合物はどの段階に於いても単一のジアステレオマーに分離可能である。
さらに本発明の第7の発明として、2-アルコキシプロパンから無溶媒若しくは水を含む有機溶媒若しくは水を溶媒とする条件下、N-ハロゲン化スクシイミドを作用させ、2-アルコキシプロパンのアリル位を酸化的にハロゲン化し、発生したスクシイミドを濾過で除去した後、塩基性水溶液条件下、界面活性剤及びアリールアルキルアルコールを作用させることにより、上記式(8)に示すアルコキシプロパン化合物の製造方法を提供する。
さらに本発明の第8の発明として次式(9)
【0026】
【化35】

【0027】
(式中、Rは、それぞれ独立して炭化水素基を示す。)
で表されるキラルアルデヒド化合物に対し、触媒存在若しくは非存在下アリル化剤を作用させ、生じた2級アルコールを炭化水素基で保護し、Rで示されているアセタール保護基を除去した後、生じたジオールを酸化的開裂に付すことにより、上記式(7)に示す。キラルアルデヒド化合物の製造方法を提供する。
本発明の方法は、これらの一連の反応において、反応溶媒として厳密な無水条件を必要とせず、無溶媒又は水を含む有機溶媒若しくは水のみを溶媒として用いることができることを特徴とするものである。
より詳細には、本発明は、以下を包含する。
(1) 以下の(A)〜(F)の工程、即ち、
(A)下記の式(9)
【0028】
【化36】

【0029】
(式中、Rは、それぞれ独立して炭化水素基を示す。)
で表されるキラルアルデヒド化合物を、触媒の存在下又は非存在下でアリル化剤を作用させ、次いで生じたアリル化第2級アルコールの水酸基を保護基で保護した後、Rで示されているケタール基を除去し、生じた1,2−ジオールを酸化的開裂に付すことにより、下記の式(7)
【0030】
【化37】

【0031】
(式中、Rは水酸基の保護基を示す。)
で表されるキラルアルデヒド化合物を製造する工程、
(B) 2−アルコキシプロペンを、無溶媒又は水性溶媒中で、N−ハロゲン化スクシイミドを作用させて2−アルコキシプロペンのアリル位をハロゲン化した後、これに置換基を有してもよいアリールアルキルアルコールを作用させることにより、下記の式(8)
【0032】
【化38】

【0033】
(式中、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示し、Rはアルキル基を示す。)
で表されるアルコキシプロペン化合物を製造する工程、
(C) 工程(A)で製造した式(7)で表されるキラルアルデヒド化合物、工程(B)で製造した式(8)で表されるアルコキシプロペン化合物、及び次式
N−R
(式中、Rは置換基を有してもよいアリール基を示す。)
で表されるアミン化合物を、希土類金属水系ルイス酸又は界面活性機能を有するブレンステッド酸触媒の存在下に水性溶媒中でマンニッヒ型の反応をさせて、下記の式(6)
【0034】
【化39】

【0035】
(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rは置換基を有してもよいアリール基を示し、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示す。)
で表されるβ−アミノケトン化合物を製造する工程、
(D) 工程(C)で製造された式(6)で表されるβ−アミノケトン化合物を、水性溶媒中で末端のオレフィン部分をシリル化した後、シリル基を水性溶媒中で除去することにより、下記の式(5)
【0036】
【化40】

【0037】
(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rは置換基を有してもよいアリール基を示し、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示す。)
で表される5−アミノアルコール化合物を製造する工程、
(E) 工程(D)で製造された式(5)で表される5−アミノアルコール化合物を、無溶媒又は水性溶媒中で、末端のヒドロキシル基を脱離基に変換した後、系中でピペリジン環を構築した後、金属塩の存在下でR及びRを除去し、さらに塩基性条件下でピペリジン環部の2級アミンを保護することで下記の式(4)
【0038】
【化41】

【0039】
(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rはアミノ基の保護基を示す。)
で表されるキラルピペリジン化合物を製造する工程、
(F) 工程(E)で製造した式(4)で表されるキラルピペリジン化合物の末端のヒドロキシル基を脱離基に変換した後、次いで塩基の存在下で4−ヒドロキシキナゾリンを作用させて、下記の式(3)
【0040】
【化42】

【0041】
(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rはアミノ基の保護基を示す。)
で表される保護されたフェブリフジン化合物を得、次いで保護基R及びRを除去する工程、
からなる(A)〜(F)の工程を含む下記の式(1)
【0042】
【化43】

【0043】
で表されるフェブリフジン及び/又はその異性体である下記の式(2)
【0044】
【化44】

【0045】
で表されるイソフェブロフジンを製造する方法であって、これらの工程において溶媒として水性溶媒のみを用いることを特徴とするフェブリフジン及び/又はイソフェブリフジンを製造する方法。
(2) 下記の式(4a)
【0046】
【化45】

【0047】
(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rはアミノ基の保護基を示し、Xは脱離基を示す。)
で表されるキラルピペリジン化合物に、無溶媒又は水性溶媒中で、塩基の存在下に4−ヒドロキシキナゾリンを作用させて、下記の式(3)
【0048】
【化46】

【0049】
(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rはアミノ基の保護基を示す。)
で表されるフェブリフジン及びイソフェブリフジンの保護体を得、次いで保護基を除去することからなるをフェブリフジン及びイソフェブリフジンを製造する方法。
(3) 式(4a)で表されるキラルピペリジン化合物が、下記の式(5)
【0050】
【化47】

【0051】
(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rは置換基を有してもよいアリール基を示し、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示す。)
で表される5−アミノアルコール化合物を原料とし、無溶媒又は水性溶媒中で、末端のヒドロキシル基を脱離基に変換し、系中でピペリジン環を構築した後、金属塩の存在下にR及びRのの保護基を除去し、さらに塩基性条件下でピペリジン環部の2級アミンを保護基で保護し、ついで末端のヒドロキシ基を脱離基に変換することにより製造されたものである前記(2)に記載の方法。
(4) 式(5)で表される5−アミノアルコール化合物が、下記式(6)
【0052】
【化48】

【0053】
(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rは置換基を有してもよいアリール基をを示し、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示す。)
で表されるβ−アミノケトン化合物を原料とし、水性溶媒中で末端のオレフィン部分をペンタメチルジシロキサン基でシリル化し、得られたシリル化物を水性溶媒中で加水分解することにより製造されたものである前記(3)に記載の方法。
(5) 式(6)で表されるβ−アミノケトン化合物が、下記の式(7)
【0054】
【化49】

【0055】
(式中、Rは水酸基の保護基を示す。)
で表されるキラルアルデヒド化合物、下記の式(8)
【0056】
【化50】

【0057】
(式中、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示し、Rはアルキル基を示す。)
で表されるアルコキシプロペン化合物、及び次式
N−R
(式中、Rは置換基を有してもよいアリール基を示す。)
で表されるアミン化合物を、希土類金属水系ルイス酸又は界面活性機能を有するブレンステッド酸触媒の存在下に水性溶媒中でマンニッヒ型の反応をさせて製造されたものである前記(4)に記載の方法。
(6) 式(7)で表されるキラルアルデヒド化合物が、下記の式(9)
【0058】
【化51】

【0059】
(式中、Rは、それぞれ独立して炭化水素基を示す。)
で表されるキラルアルデヒド化合物を、触媒の存在下又は非存在下でアリル化剤を作用させ、次いで生じたアリル化第2級アルコールの水酸基を保護基で保護した後、Rで示されているケタール基を除去し、生じた1,2−ジオールを酸化的開裂に付すことにより製造されたもので前記(5)に記載の方法。
(7) 式(8)で表されるアルコキシプロペン化合物が、2−アルコキシプロペンから無溶媒又は水性溶媒中で、N−ハロゲン化スクシイミドを作用させ、2−アルコキシプロペンのアリル位を酸化的にハロゲン化し、発生したスクシイミドを濾過で除去した後、塩基性水溶液条件下、界面活性剤及びハロゲン化炭化水素を作用させることにより製造されたものである前記(5)に記載の方法。
(8) 下記の式(5)
【0060】
【化52】

【0061】
(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rは置換基を有してもよいアリール基を示し、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示す。)
で表されるβ−アミノケトン化合物を、無溶媒又は水性溶媒中で、末端のヒドロキシル基を脱離基に変換し、次いで系中でピペリジン環を構築した後、金属塩の存在下でR及びRの保護基を除去し、さらに塩基性条件下でピペリジン環部の2級アミンを保護基で保護して、下記の式(4)
【0062】
【化53】

【0063】
(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rはアミノ基の保護基を示す。)
で表されるピペリジン誘導体を製造する方法。
(9) 下記の式(6)
【0064】
【化54】

【0065】
(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rは置換基を有してもよいアリール基をを示し、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示す。)
で表されるβ−アミノケトン化合物を、水性溶媒中で末端のオレフィン部分をペンタメチルジシロキサン基でシリル化し、得られたシリル化物を水性溶媒中で加水分解することにより下記の式(5)
【0066】
【化55】

【0067】
(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rは置換基を有してもよいアリール基を示し、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示す。)
で表されるβ−アミノケトン化合物を製造する方法。
(10) 下記の式(7)
【0068】
【化56】

【0069】
(式中、Rは水酸基の保護基を示す。)
で表されるキラルアルデヒド化合物、下記の式(8)
【0070】
【化57】

【0071】
(式中、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示し、Rはアルキル基を示す。)
で表されるアルコキシプロペン化合物、及び次式
N−R
(式中、Rは置換基を有してもよいアリール基を示す。)
で表されるアミン化合物を、希土類金属水系ルイス酸又は界面活性機能を有するブレンステッド酸触媒の存在下に水性溶媒中でマンニッヒ型の反応をさせて、下記の式(6)
【0072】
【化58】

【0073】
(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rは置換基を有してもよいアリール基をを示し、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示す。)
で表されるβ−アミノケトン化合物を製造する方法。
(11) 下記の式(9)
【0074】
【化59】

【0075】
(式中、Rは、それぞれ独立して炭化水素基を示す。)
で表されるキラルアルデヒド化合物を、触媒の存在下又は非存在下でアリル化剤を作用させ、次いで生じたアリル化第2級アルコールの水酸基を保護基で保護した後、Rで示されているケタール基を除去し、生じた1,2−ジオールを酸化的開裂に付すことにより、下記の式(7)
【0076】
【化60】

【0077】
(式中、Rは水酸基の保護基を示す。)
で表されるキラルアルデヒド化合物を製造する方法。
(12) 2−アルコキシプロペンを、無溶媒又は水性溶媒中で、N−ハロゲン化スクシイミドを作用させて2−アルコキシプロペンのアリル位をハロゲン化した後、これに置換基を有してもよいアリールアルキルアルコールを作用させることにより、下記の式(8)
【0078】
【化61】

【0079】
(式中、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示し、Rはアルキル基を示す。)
で表されるアルコキシプロペン化合物を製造する方法。
【発明の効果】
【0080】
本発明は、熱帯性マラリア原虫に対する極めて強い活性を持つフェブリフジン及びイソフェブリフジンの厳密な無水条件を必要としない条件下、即ち水性溶媒を用いた条件下での全合成ルートを提供するものであり、本発明の方法は厳密な無水条件を必要とせず工業的な製造が可能になるだけでなく、立体選択的な製造が可能となり、しかも有機溶媒の使用量を減少させることができ環境にも配慮された製造方法である。本発明の方法により、工業的に有利な効率的で、かつ大量生産が可能となり、マラリアの予防や治療に大きく貢献することができる。
また、本発明は、フェブリフジン及びイソフェブリフジンを工業的に効率的に製造するための新規物質を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0081】
本発明は以上のとおりの特徴を持つものであるが、以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、フェブリフジン及び/又はイソフェブリフジンの製造方法に関するものであるが、当該フェブリフジン及びイソフェブリフジンは、互変異性体であり、ピペリジン環における2位の側鎖と3位の水酸基がアンチの配置になっている場合にはフェブリフジンが生成し、また、ピペリジン環における2位の側鎖と3位の水酸基がシンの配置になっている場合にはイソフェブリフジンが生成することが知られている(Kobayashi, S.; Ueno, M.; Suzuki, R.; Ishitani, H.; Kim, H-S.; Wataya, Y. Journal of Organic Chemistry 1999, 64, 6833.)。したがって、フェブリフジンが生成するか、イソフェブリフジンが生成するかは、化学反応の条件の問題ではなく、原料の立体配置に依存するものであり、両者は製造方法としては同等なものである。
【0082】
また、本発明における「水性溶媒」とは、「厳密な無水条件を必要としない」ということであり、好ましくは、無溶媒で、又は水を含む有機溶媒若しくは水を溶媒とするものである。水性溶媒としての水は、酸性、中性、もしくは塩基性の、好ましくは緩衝液を含んだ水溶液であってもよい。また、水を含む有機溶媒とは、このような水と有機溶媒の溶液又は混合物であってもよい。水と相溶性のある有機溶媒としては、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、メタノール、エタノール、エチレングリコールなどが挙げられ、好ましくは水−THF系、水−アセトニトリル系の溶媒が挙げられる。また、有機溶媒としてトルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、デカンなどの炭化水素系溶媒;塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロムベンゼン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素系溶媒:ブタノール、オクタノールなどの高級アルコール系溶媒などの水と難溶性又は不溶性の有機溶媒を使用することもできる。この場合には、溶媒系は相分離した二相系になるが、相間移動触媒などの使用により反応を行うことができるので、このような溶媒系も本発明の方法における好ましい溶媒系の例とすることができる。
【0083】
前記した式(9)における基Rの炭化水素基としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基;炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜15、炭素数2〜10の直鎖状又は分枝状のアルケニル基;炭素数3〜15、好ましくは炭素数3〜10の飽和又は不飽和の単環式、多環式又は縮合環式の脂環式炭化水素基;炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基;炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基(アリール基)に、前記した炭素数1〜20のアルキル基が結合した、炭素数7〜40、好ましくは炭素数7〜20、炭素数7〜15のアリールアルキル基(炭素環式芳香脂肪族基)などが挙げられ、このようなアルキル基の例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、などが挙げられ、脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ビシクロ[1.1.0]ブチル基、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプチル基、ビシクロ[3.2.1]オクチル基、ビシクロ[2.2.2.]オクチル基、アダマンチル基(トリシクロ[3.3.1.1]デカニル基)、ビシクロ[4.3.2]ウンデカニル基、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカニル基、などが挙げられ、炭素環式芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントリル基、などが挙げられ、アリールアルキル基(炭素環式芳香脂肪族基)としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチル−メチル基などが挙げられる。好ましい炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などが挙げられる。特に好ましい炭化水素基としてはメチル基が挙げられる。
【0084】
前記した式(5)、式(6)、及び式(8)における基Rのアリールアルキル基としては、炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基(アリール基)に、炭素数1〜20のアルキル基が結合した、炭素数7〜40、好ましくは炭素数7〜20、炭素数7〜15のアリールアルキル基(炭素環式芳香脂肪族基)が挙げられ、例えば、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチル−メチル基などが挙げられるが、式(5)、式(6)、及び式(8)におけるRは、水酸基の保護基としての作用するものが好ましく、より好ましい例としてはベンジル基が挙げられる。このようなアリールアルキル基における置換基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜15の脂環式炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜21のアルキルカルボニル基、炭素数4〜16の脂環式炭化水素−カルボニル基、炭素数8〜41のアリールアルキルカルボニル基、ハロゲン原子、炭素数2〜21のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数7〜37の炭素環式芳香族−カルボニルオキシ基、炭素数8〜41のアリールアルキルカルボニルオキシ基、アルキルシリル基などが挙げられるが、好ましい置換基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。このような置換基はアリールアルキル基のアリール環又はアルキル側鎖中、好ましくはアリール環中に1個又は2個以上有することができる。前記式(5)、式(6)、及び式(8)の好ましいR基としては、ベンジル基、4−メトキシベンジル基等が挙げられる。
前記した式(8)における基Rのアルキル基としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基などが挙げられ。式(8)におけるRも、水酸基の保護基としての作用するものが好ましいが、前記した基Rとは異なる条件で切断できるものが好ましい。好ましいRとしては、炭素数1〜5の直鎖状又は分枝状のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などが挙げられるが、特に好ましい基としてはメチル基が挙げられる。
【0085】
前記した式(5)、式(6)、及びアミン化合物における基Rのアリール基としては、炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基が挙げられ、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントリル基などが挙げられる。このようなアリール基における置換基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜15の脂環式炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜21のアルキルカルボニル基、炭素数4〜16の脂環式炭化水素−カルボニル基、炭素数8〜41のアリールアルキルカルボニル基、ハロゲン原子、炭素数2〜21のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数7〜37の炭素環式芳香族−カルボニルオキシ基、炭素数8〜41のアリールアルキルカルボニルオキシ基、アルキルシリル基などが挙げられるが、好ましい置換基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。このような置換基はアリールアルキル基のアリール環又はアルキル側鎖中、好ましくはアリール環中に1個又は2個以上有することができる。前記式(5)、式(6)、及びアミン化合物の好ましいR基としては、フェニル基、特にメトキシ基で置換されたフェニル基、より好ましくは2−メトキシフェニル基等が挙げられる。これらの基Rはアミノ基の保護基としての作用を有するものであり、式(5)、式(6)、及び式(8)における基Rを切断できる条件で同時に切断される基が好ましい。
【0086】
また、本発明における「水酸基の保護基」又は「アミノ基の保護基」は、化学反応中において好ましくない反応の生起を防止するために一時的に水酸基又はアミノ基を保護しておくための機能を有する有機基であり、このような機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、ペプチド合成などにおいて使用されている保護基が好ましい。このような保護基は、多数の文献に記載されているものであり、例えば、Greene,“Protective Groups in Organic Synthesis”, (John Wiley & Sons,ニューヨーク(1981))などに開示されているものなどが挙げられる。このような公知の保護基の中から、保護すべき反応条件及び切断すべき反応条件を適宜選択して、本発明の方法において好ましい保護基を選定することができる。
例えば、式(3)、式(4)、式(4a)、式(5)、式(6)、及び式(7)における基Rは、最終段階の反応に至るまでの水酸基の保護基として機能するものであり、しかも基Rと同様の反応条件で切断される保護基が好ましい。このような保護基としては、ベンジル系の保護基が挙げられ、より具体的にはベンジル基(−Bn)が挙げられる。
また、式(3)、式(4)、及び式(4a)における基Rは、前記した基Rと同様の反応条件で切断される保護基が好ましい。このような保護基としては、炭素数2〜10、好ましくは2〜5のアルコキシカルボニル基が挙げられ、より具体的にはtert-ブトキシカルボニル基(−Boc)が挙げられる。
【0087】
前記式(4a)における基Xの脱離基、及び本発明の方法における脱離基としては、置換反応の反応条件下において、置換される原子又は原子団により脱離される機能を有するものであればよく、具体的には、例えば、塩素原子、臭素原子、よう素原子などのハロゲン原子;アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基、プロパノイルオキシ基などのアルカノイルオキシ基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基などのアルキルスルホニル基;ベンゾイルオキシ基、p−クロロベンゾイルオキシ基などの芳香族アシルオキシ基;メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基などのアルキルスルホニルオキシ基などの汎用されている脱離基が挙げられる。好ましい脱離基としては、塩素原子、臭素原子、よう素原子などのハロゲン原子が挙げられる。より好ましくは臭素原子が挙げられる。
【0088】
次に本発明の方法をさらに詳細に具体例に基づいて説明するが、これらの具体例は本発明の方法を説明するためのものであり、本発明の方法はこれらの具体例により限定されるものではない。
本発明の方法における工程(A)〜(C)までの具体的な反応例を次の反応式で示す。
【0089】
【化62】

【0090】
本発明の工程(A)は、式(9)で表されるキラルアルデヒド化合物から、式(7)で表されるキラルアルデヒド化合物を製造する工程である。前記の反応式では式(9)で表されるキラルアルデヒド化合物の例として化合物(1)の(R)−(+)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボアルデヒド(1)が用いられている。当該(R)−(+)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボアルデヒド(1)は文献公知(例えば、Schmid, C. R.; Bryant, J. D. In Organic Synthesis; Coffen, D. L., Ed.; New York, 1993; Vol 72; pp 6-12. Earle, M. J.; Absur-Rashid, A.; Priestley, N. J. Org. Chem. 1996, 61, 5697. Bergmeier, S. C.; Stanchina, D. M. J. Org. Chem. 1999, 64, 2852. Chattopadhyay, A.; Mamdapur, V. R. J. Org. Chem. 1995, 60, 585. Chattopadhyay, A. J. Org. Chem. 1996, 61, 6104.等)の化合物であり、アルドリッチ社を初め各社で市販されている化合物でもあることから、入手容易である。
この反応で使用されるアリル化剤としては、アリル基に反応性の官能基、例えばトリアルコキシシリル基などが結合した化合物などが挙げられる。この例ではアリル化剤として3−トリメトキシシリル−プロペンが使用されている。触媒は使用しなくても良いが、好ましくは金属錯体が触媒として使用される。この例ではフッ化カドミウム錯体を触媒として使用している。溶媒は水に溶解する有機溶媒との混合溶媒が好ましい。好ましい溶媒としては水−THF系溶媒が挙げられる。この反応によりアリル基が化合物(1)のアルデヒドに付加した化合物(2)が得られる。シン:アンチ比が、13:87で生成し、立体選択的に反応が進行する。なお、アルデヒドに対するアリル化合物を作用させる反応は古くからバルビエ反応として知られ、化合物(2)の物性値も文献既知である(例えばSharma, G. V. M.; Chander, A. S.; Krishna, P. R. Tetrahedron: Asymmetry 2001, 12, 539. Roush W. R.; Walts, A. E.; Hoong, L. K. J. Am. Chem. Soc. 1985, 107, 8186. Mulzer, J.; Angermann, A. Tetrahedron Lett. 1983, 24, 2843.等)。
また、この反応で使用されている、触媒として2,2’:6’,2”−ターピリジンとフッ化カドミウムを用い、アリル化剤としてアリルトリメトキシシランを作用させる反応例は既に発明者らにより報告されている(Kobayashi, S.; Aoyama, N.; Manabe, K. Synlett, 2002, 483. Kobayashi, S.; Aoyama, N.; Manabe, K. Chirality, 2003, 15, 124. Aoyama, N.; Hamada, T.; Manabe, K.; Kobayashi, S. Chem. Commun. 2003, 676. Aoyama, N.; Hamada, T.; Manabe, K.; Kobayashi, S. J. Org. Chem. 2003, 68, 7329.)。
【0091】
次いで、得られた化合物(2)の水酸基を立体配置を保持したままで基Rで保護する。この例ではベンジル基(Bn)で保護している。シン及びアンチのジアステレオマーは、どの段階でも分離することができるが、この例ではこの段階でシン体とアンチ体を分離している。この分離方法は公知の各種の方法で行うことができる。なお、当該化合物(3)は、触媒量の界面活性剤存在下、強塩基性条件下でアルコールのベンジル化により製造されるとの報告例もなされている(Freedman, H. H.; Dubois, R. A. Tetrahedron Lett. 1975, 16, 3251.)。また、化合物(3)の物性値は、例えばSharma, G. V. M.; Chander, A. S.; Krishna, P. R. Tetrahedron: Asymmetry 2001, 12, 539. Roush W. R.; Walts, A. E.; Hoong, L. K. J. Am. Chem. Soc. 1985, 107, 8186. Mulzer, J.; Angermann, A. Tetrahedron Lett. 1983, 24, 2843.等の文献に記載されており、公知化合物である。
得られたアンチ体(3)をスルホン酸化ポリスチレン(LL−ALPS)を用いて、ケタール基を切断して1,2−ジオール化合物(4)を得た。この反応はほぼ定量的であった。この反応は脱アセタール反応なので、汎用されている手法で達成が可能であるが、生成物がジオールなため、抽出に困難を伴う。この例で使用されている高分子固定化触媒は濾過するだけで分離が可能であり、回収後繰り返し使用できる利点がある。この例で用いているLL−ALPS(Low-loading and alkylated polystyrene-supported sulfonic acid)は、発明者らにより開発された高分子固定化触媒の一種であり、有機化合物を取り込みやすく、水中でブレンステッド酸条件の反応を行う際に効果的であることが知られている(例えば、Iimura, S.; Manabe, K.; Kobayashi, S. Org. Biomol. Chem. 2003, 1, 2416. Iimura, S.; Manabe, K.; Kobayashi, S. J. Org. Chem. 2003, 68, 8723.等を参照のこと)。
また、ここで得た化合物(4)自体は文献既知であり、例えば、Sharma, G. V. M.; Chander, A. S.; Krishna, P. R. Tetrahedron: Asymmetry 2001, 12, 539. Roush, W. R.; Kageyama, M.; Riva, R.; Brown, B. B.; Warmus, J. S.; Moriarty, K. J. J. Org. Chem. 1991, 56, 1192. Mulzer, J.; Angermann, J.; Munch, W. Liebigs Ann. Chem. 1986, 825.等に物性値の詳細な記述がある。
【0092】
次いで、得られた1,2−ジオール化合物(4)を過ヨウ素酸ナトリウムなどの酸化剤で酸化してジオール部分を酸化的に切断して、対応するアルデヒド化合物(5)を得た。
なお、ここで得た化合物(5)自体は文献既知であり、例えば、Roush, W. R.; Kageyama, M.; Riva, R.; Brown, B. B.; Warmus, J. S.; Moriarty, K. J. J. Org. Chem. 1991, 56, 1192. 等に物性値の詳細な記述がある。
【0093】
工程(B)は、もうひとつの原料化合物を製造する工程であり、2−アルコキシプロペンから2,3−ジヒドロキシ−プロペン誘導体を製造する工程である。
原料の2−メトキシ−プロペンを、NBSなどのハロゲン化剤でアリル位をハロゲン化した後、水酸化ナトリウムなどの塩基の存在下に、p−メトキシベンジルアルコール(PMBOH)などのアルコールで置換して、2,3−ジヒドロキシ−プロペン誘導体(6)を製造することができる。
なお、化合物(6)自体は発明者らにより合成されている文献既知化合物であり、これまではヒドロ水銀化−酸化により合成されていた(Kobayashi, S.; Ueno, M.; Suzuki, R.; Ishitani, H.; Kim, H-S.; Wataya, Y. Journal of Organic Chemistry 1999, 64, 6833. Horning, D. E.; Kavadias, G.; Muchowski, M. Can. J. Chem. 1970, 48, 975. Greenwood, G.; Hoffmann, H. M. R. J. Org. Chem. 1972, 37, 611. )。本発明の方法は、水銀を使用する必要がなく毒性が遥かに少ないだけでなく、より簡便であり、本発明の方法の一つの特徴をなすものである。
【0094】
工程(C)は本発明における重要な工程のひとつである。工程(C)は、工程(A)で製造した式(7)で表されるキラルアルデヒド化合物、工程(B)で製造した式(8)で表されるアルコキシプロペン化合物、及び次式
N−R
(式中、Rは置換基を有してもよいアリール基を示す。)
で表されるアミン化合物を、希土類金属水系ルイス酸又は界面活性機能を有するブレンステッド酸触媒の存在下に水性溶媒中でマンニッヒ型の反応をさせて、式(6)で表されるβ−アミノケトン化合物を製造する工程である。
この工程におけるマンニッヒ型反応は、希土類金属の水系ルイス酸触媒の存在下に行なうことができる。例えばイッテルビウム(Yb)、スカンジウム(Sc)等の基土類金属や過塩素化合物である。さらにまた、前記マンニッヒ型反応に於いては、ルイス酸−界面活性剤一体型触媒を用いることも有効である。これらは、例えば塩化スカンジウムとドデシル硫酸ナトリウムとの水中での混合により得られるスカンジウムドデシルサルフェート(STDS)や、スルホン酸演化合物を始めとする遷移金属の界面活性剤化合物との塩化合物として各種使用することができる。反応は水中で行うことが出来、その操作は非常に簡便である(合成例、及び使用例としては例えば、Kobayashi, S.; Wakabayashi, T.; Nagayama, S.; Oyamada, H. Tetrahedron Lett. 1997, 38, 4559. Kobayashi, S.; Wakabayashi, T. Tetrahedron Lett. 1998, 39, 5389. Manabe, K.; Mori, Y.; Wakabayashi, T.; Nagayama, S.; Kobayashi, S. J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 7202. Mori, Y.; Kakumoto, K.; Manabe, K.; Kobayashi, S. Tetrahedron Lett. 2000, 41, 3107. Manabe, K.; Aoyama, N.; Kobayashi, S. Adv. Synth. Catal. 2001, 343, 174.等を参照)。さらに、例えばドデシルベンゼンスルホン酸といったような界面活性機能を有するブレンステッド酸触媒存在下でも本反応は円滑に進行する。
なお、この例に挙げている化合物(7)は新規化合物である。
【0095】
次に、本発明の方法における工程(D)〜(F)までの具体的な反応例を次の反応式で示す。
【0096】
【化63】

【0097】
工程(D)は、工程(C)で製造された式(6)で表されるβ−アミノケトン化合物から、式(5)で表される5−アミノアルコール化合物を製造する工程である。この例では、化合物(7)から化合物(9)の製造例として示されている。
末端オレフィンから1級アルコールを得る方法は玉尾酸化と呼ばれる方法(Tamao, K.; Ishida, T.; Tanaka, T.; Kumada, M. Organometallics, 1983, 2, 1694. Tamao, K.; Ishida, N. J. Organomet. Chem., 1984, 269, C37. Tamao, K.; Maeda, K. Tetrahedron Lett. 1986, 27, 65. Tamao, K.; Nakajima, T.; Sumiya, R.; Arai, H.; Higuchi, N.; Ito, Y. J. Am. Chem. Soc. 1986, 108, 6090. Tamao, K.; Yamauchi, T.; Ito, Y. Chem. Lett. 1987, 171. Tamao, K.; Nakajo, E.; Ito, Y. J. Org. Chem. 1987, 52, 957. Tamao, K.; Nakajo, E.; Ito, Y. J. Org. Chem. 1987, 52, 4412.等参照)として公知の方法である。この方法は、遷移金属触媒下ヒドロシリル化、その後酸化的加水分解により1級アルコールに導く方法である。
なお、この例で製造された化合物(8)は新規化合物である。
【0098】
工程(E)は、工程(D)で製造された式(5)で表される5−アミノアルコール化合物から式(4)で表されるキラルピペリジン化合物を製造する工程である。この例では、化合物(9)から化合物(10)の製造方法として示されている。
この例で使用されている四臭化炭素を用いる中性条件下のブロモ化は公知の方法(例えば、Hooz, J.; Gilani, S. S. H. Can. J. Chem. 1968, 46, 86. (b) Shibata, H.; Ohashi, K.; Kawashima, K.; Hori, K.; Murakami, N.; Kitagawa, I. Chem. Lett. 1986, 85. (c) Saimoto, H.; Kusano, Y.; Hiyama, T. Tetrahedron Lett. 1986, 27, 1607.などを参照)に準じて行うことができる。引き続く硝酸アンモニウムセリウムによる脱保護、ショッテン-バウマン法によるtert-ブチルカルバメート基の導入で化合物(10)が合成できる。なお、水-トルエン混合溶媒中塩基とメタンスルホニルクロリドを作用させることにより、系中でメタンズルホニル化を行っても同様なピペリジン環化合物が合成できる。
【0099】
工程(F)は、工程(E)で製造した式(4)で表されるキラルピペリジン化合物の末端のヒドロキシル基を脱離基に変換した後、次いで塩基の存在下で4−ヒドロキシキナゾリンを作用させて、式(3)で表される保護されたフェブリフジン化合物を得、次いで保護基R及びRを除去する工程により式(1)で表されるフェブリフジン及び/又はその異性体である式(2)で表されるイソフェブロフジンを製造する工程である。この例では、化合物(10)から最終生成物の製造方法として示されている。
最初の段階のブロム化方法は先に示した四臭化炭素を用いる中性条件下のブロモ化であり、4−ヒドロキシキナゾリンによる置換反応も公知の方法に準じて行われる方法であり、次いで行われる脱保護化も公知の方法に準じて行うことができる。
そして、ここで得た化合物(11)に対し、6規定塩化水素水溶液で加熱することにより、化合物(11)のアンチ体からはフェブリフジンが、化合物(11)のシン体からはイソフェブリフジンがそれぞれ製造できることは既に公知である(Kobayashi, S.; Ueno, M.; Suzuki, R.; Ishitani, H.; Kim, H-S.; Wataya, Y. Journal of Organic Chemistry 1999, 64, 6833.)。
【0100】
以上のように、本発明者らは、公知の入手容易な原料化合物から出発して、全工程を水性溶媒系で行うことができるフェブリフジン及び/又はイソフェブリフジンを製造する方法を確立した。
【0101】
以下の実施例において、本発明をより具体的に説明するが、本発明の方法はこれらの具体例に限定されるものではない。
以下のの実施例においては、旋光度は日本電子株式会社製JASCO P−1010 digital polarimeterを、融点測定は矢沢科学社製のYAZAWA MICROMERTING POINT BY−1を、IRスペクトルは日本電子株式会社製JASCO FT/IR−610 infrared spectrometerを、H−NMR及び13C−NMRは溶媒としてCDClを内部標準としてテトラメチルシランを用い、日本電子株式会社製JNM−LA300、JNM−LA400又はJNM−LA500により測定した。NMRスペクトルは重クロロホルムを用いた場合、特記しない限りH−NMRは内部標準としてテトラメチルシラン(0.00ppm)を用いて、また13C−NMRはCDCl(77ppm)を基準として測定した。重ジメチルスルホキシドを用いた場合には、H−NMR、13C−NMR共に重ジメチルスルホキシドのピークを基準(H−NMR:2.49ppm,13C−NMR:39.5ppm)にして測定した。カラムクロマトグラフィーによる生成物の分離には、Silica gel 60(Merck)を用いた。また、薄層クロマトグラフィーによる生成物の分離には、和光純薬社製ワコーゲルB−5Fを使用した0.75mmシリカゲルプレートを用いた。
【実施例1】
【0102】
化合物(2)の製造
次に示す反応式にしたがって化合物(1)から化合物(2)を製造した。
【0103】
【化64】

【0104】
200mlの二径なす型フラスコに、室温下2,2’:6’,2”−ターピリジン(233.3mg,1.0mmol)とフッ化カドミウム(150.4mg,1.0mmol)を直接投入した。これに水(10.0ml)を加え、2,2’:6’,2”−ターピリジンが溶解するまでおよそ10分間撹拌し、さらにTHF(90.0ml)を加え30分間撹拌した。これを0℃に冷却し、直前に蒸留した(R)−(+)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサアルデヒド(1)(1.25ml,10.0mmol)とアリルトリメトキシシラン(2.53ml,15.0mmol)を18時間かけて滴下した。滴下終了後さらに18時間攪拌後、水(100ml)及び酢酸エチル (200ml)で希釈し、生成したポリシロキサンをセライト濾過により取り除いた。分液により水層を除き、有機層を水(100ml×2)及び飽和塩化ナトリウム水溶液 (100ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残さをカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=9/1)で精製することにより対応する1,2−O−イソプロピリデンヘキサ−5−エン−1,2,3−トリオール(2)を得た(1.275g,74%)。ジアステレオー選択性は実施例2に於いて水酸基をベンジル化することにより決定した。
【0105】
b.p. 62−64℃/1.5mmHg
IR(neat): 3481, 2985, 2895, 1643, 1063, 915 cm−1
H−NMR (CDCl,500MHz)
アンチ体: δ
1.37 (s, 3H), 1.43 (s, 3H), 2.09 (brs, 1H), 2.17-2.26 (m, 1H),
2.31-2.36 (m, 1H), 3.78 (dq, 1H, J = 4.2, 8.4 Hz),
3.91-3.96 (m, 1H), 4.00-4.06 (m, 2H), 5.11-5.18 (m, 2H),
5.81-5.91 (m, 1H).
シン体: δ
1.37 (s, 3H), 1.44 (s, 3H), 2.09 (brs, 1H), 2.17-2.26 (m, 2H),
3.60 (q, 1H, J = 6.0 Hz), 3.73-3.76 (m, 1H), 4.00-4.06 (m, 2H),
5.11-5.18 (m, 2H), 5.81-5.91 (m, 1H).
13C−NMR (CDCl,125MHz)
アンチ体: δ
25.2, 26.5, 37.6, 65.2, 70.3, 78.0, 109.0, 118.3, 133.9.
シン体: δ
25.3, 26.6, 38.2, 66.0, 71.5, 78.4, 109.4, 117.9, 134.0.
HRMS: C16 (M)として 計算値: 172.1099,
実測値 172.1087.
【実施例2】
【0106】
化合物(3)の製造
次に示す反応式にしたがって化合物(2)から化合物(3)を製造した。
【0107】
【化65】

【0108】
30mlのなす型フラスコに、実施例1で製造した1,2−O−イソプロピリデンヘキサ−5−エン−1,2,3−トリオール(2)(1.38g,8.0mmol)とテトラブチルアンモニウムハイドロジェンサルフェート(BuNHSO)(136mg,0.4mmol)、ベンジルブロマイド(1.44g,8.4mmol)を直接投入した。これに50%水酸化ナトリウム水溶液水(3.20g)を加え40℃に加温した。18時間後反応液を飽和塩化ナトリウム水溶液(50ml)と酢酸エチル(50ml)で希釈した。分液後水層を酢酸エチル(50ml×2)で抽出し、合わせた有機層を水(100ml)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(100ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残さをカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=9/1)で精製することにより対応する3−ベンジルオキシ−1,2−O−イソプロピリデンヘキサ−5−エン−1,2,3−トリオール(3)を得た(2.10g,定量的)。なおこの段階でジアステレオマーを分離し、純粋な(2R,3S)−3−ベンジルオキシ−1,2−O−イソプロピリデンヘキサ−5−エン−1,2,3−トリオール(3)を用いて次のステップで使用した。
【0109】
b.p. 98−103℃/0.7mmHg
[a]25 +35.3(c=2.04,CHCl).
IR(neat): 2987, 2881, 1640, 1497, 1455, 1370, 1211, 1071 cm−1
H−NMR (CDCl,400MHz) δ:
1.35 (s, 3H), 1.41 (s, 3H), 2.31-2.47 (m, 2H),
3.57 (dd, 1H, J = 6.0, 10.8 Hz), 3.89 (dd, 1H, J = 6.3, 8.1 Hz),
4.03 (dd, 1H, J = 6.3, 8.1 Hz), 4.10 (dd, 1H, J = 6.2, 12.6 Hz),
4.59 (d, 1H, J = 11.4 Hz), 4.65 (d, 1H, J = 11.4 Hz),
5.08-5.17 (m, 2H), 5.89 (ddt, 1H, J = 7.1, 10.1, 17.2 Hz),
7.24-7.36 (m, 5H).
13C−NMR (CDCl,100MHz) δ:
25.2, 26.4, 35.4, 66.2, 72.3, 76.5, 78.7, 108.8, 117.3, 127.4, 127.6,
128.1, 134.0, 138.2.
HRMS: C1622 (M)として 計算値 262.1569,
実測値 262.1585.
元素分析 C1622 :計算値 C,73.25 ;H,8.45.
実測値 C,73.01 ;H,8.61.
【実施例3】
【0110】
化合物(4)の製造
次に示す反応式にしたがって化合物(3)から化合物(4)を製造した。
【0111】
【化66】

【0112】
50mlのフラスコに0.483mmol/gのスルホン酸低担のアルキルかポリスチレン(LL−ALPS−SOH)(Low-loading and alkylated polystyrene-supported sulfonic acid)(210mg,0.1mmol)及び水(10.0ml)を加えた。その中に実施例2で分離した(2R,3S)−3−ベンジルオキシ−1,2−O−イソプロピリデンヘキサ−5−エン−1,2,3−トリオール(3)(2.63g,10.0mmol)を加え、40℃に加温し4時間撹拌した。放冷後触媒をグラスフィルター(G4)で回収し、THF(30ml)で洗浄した。洗液を濃縮し残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/2)で精製することにより対応する(2R,3S)−3−ベンジルオキシ−5−ヘキセン−1,2,3−トリオール(4)を得た(2.21g,99%)。
回収したLL−ALPSに水(10.0ml)、化合物(3)(2.64g,10.0mmol)を加え、同様の操作により化合物(4)を得た(2.23g,定量的)。以降3回目は2.62gの化合物(3)から2.17g(98%)の化合物(4)を、4回目は2.61gの化合物(3)から2.23g(定量的)の化合物(4)を、5回目は2.63gの化合物(3)から2.25g(定量的)の化合物(4)を得た。
【0113】
b.p. 200−220℃/0.3mmHg(クーゲルロールの外温)
[α]26 +37.5(c=2.06,CHCl).
IR(neat): 3409, 2878, 1641, 1497, 1455, 1080 cm−1
H−NMR (CDCl,500MHz) δ:
2.34-2.45 (m, 2H), 3.16 (brs, 2H), 3.58 (dd, 1H, J = 5.3, 11.1 Hz),
3.64-3.71 (m, 3H), 4.49 (d, 1H, J = 11.3 Hz),
4.61 (d, 1H, J = 11.3 Hz), 5.08 (dt, 1H, J = 1.0, 10.2 Hz),
5.14 (ddd, 1H, J = 1.4, 3.3, 17.4 Hz),
5.86 (ddt, 1H, J = 7.1, 10.1, 17.4 Hz), 7.24-7.34 (m, 5H).
13C−NMR (CDCl,100MHz) δ:
34.8, 63.3, 72.2, 72.4, 79.9, 117.5, 127.7, 127.8, 128.4, 134.2, 137.9.
HRMS: C1318 (M)として 計算値 222.1256,
実測値 222.1221.
元素分析: C1318として 計算値: C,70.24 ;H,8.16.
実測値: C,70.24 ;H,8.14.
【実施例4】
【0114】
化合物(5)の製造
次に示す反応式にしたがって化合物(4)から化合物(5)を製造した。
【0115】
【化67】

【0116】
100mlのフラスコに、実施例3で製造した(2R,3S)−3−ベンジルオキシ−5−ヘキセン−1,2,3−トリオール(4)(5.32g,23.9mmol)のTHF溶液(21.6ml)及び水(14.4ml)を加え0 ℃に冷却した。これに過ヨウ素酸ナトリウム(10.2g,47.8mmol)を固体のまま30分かけて少しずつ加えた。1時間撹拌後、反応混合物中の固形物をセライトろ過により取り除き、さらに酢酸エチル(50ml)で洗った。併せた洗液を分液し、水層を酢酸エチル(30ml×2)で抽出した。有機層を水(50ml×2)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(50ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残さをカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=9/1)で精製することにより対応する(S)−2−ベンジルオキシ−4−ペンテナール(5)を得た(4.48g,98%)。
【0117】
b.p. 79−81℃/1.2mmHg
[α]25 −74.9(c=1.08,CHCl).
IR(neat): 2867, 1734, 1496, 1375, 1103 cm−1
H−NMR (CDCl,400MHz) δ:
2.45-2.50 (m, 2H), 3.82 (dt, 1H, J = 2.0, 6.8 Hz),
4.58 (d, 1H, J = 11.8 Hz), 4.66 (d, 1H, J = 11.8 Hz),
5.81 (ddt, 1H, J = 7.0, 10.1, 17.2 Hz), 7.27-7.36 (m, 5H),
9.64 (d, 1H, J = 2.0 Hz).
13C−NMR (CDCl,100MHz) δ:
34.6, 72.4, 82.7, 118.4, 127.9, 128.0, 128.5, 132.3, 137.2, 203.0.
HRMS: C1214 (M)として 計算値 190.0994,
実測値 190.1007.
元素分析: C1214として 計算値: C,75.76 ;H,7.42.
実測値: C,75.51 ;H,7.51.
【実施例5】
【0118】
化合物(6)の製造
次に示す反応式にしたがってアルコキシプロペンから化合物(6)を製造した。
【0119】
【化68】

【0120】
100mlのフラスコに、イソプロペニル−メチル−エーテル(23.9ml,250mmol)を加え、0℃に冷却し、これにN−ブロムコハク酸イミド(26.7g,150mmol)を30分かけ少しずつ加えた。10分間撹拌後反応混合物中の固形物をセライトろ過により取り除き、さらにトルエン(50ml)で洗った。200mmHgの減圧下未反応のイソプロペニル−メチル−エーテルを留去し、残渣を0℃に冷却した。これに50%水酸化ナトリウム水溶液(20.0g,250mmol)、テトラブチルアンモニウムハイドロジェンサルフェート(BuNHSO)(0.849g,2.5mmol)、p−メトキシベンジルアルコール(6.91g,50.0mmol)を加え、5分間撹拌後、40℃に昇温した後、さらに10時間撹拌した。反応混合物をヘキサン(100ml)及び水(100ml)で希釈し、分液後水層をヘキサン(50ml×3)で抽出した。併せた有機層を水(100ml×2)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(100ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残さをカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=20/1)で精製することにより対応する2−メトキシ−3−(p−メトキシベンジルオキシ)−1−プロペン(6)を得た(6.67g,64%)。
【0121】
b.p. 100−102℃/1.0mmHg
IR(neat): 2939, 2841, 1667, 1611 cm−1
H−NMR (CDCl) δ:
3.59 (s, 3H), 3.79 (s, 3H), 3.92 (s, 2H), 4.10 (d, 1H, J = 12.2 Hz),
4.19 (d, 1H, J = 12.2 Hz), 4.48 (s, 2H), 6.87 (d, 1H, J = 8.4 Hz),
7.28 (d, 1H, J = 8.4 Hz).
13C−NMR (CDCl) δ:
55.3, 67.4, 70.2, 71.9, 83.4, 99.6, 129.5, 129.9, 159.2, 160.1.
HRMS: C1216 (M)として 計算値 208.1099,
実測値 208.1104.
【実施例6】
【0122】
化合物(7)の製造
次に示す反応式にしたがって化合物(5)、化合物(6)、及びアミン化合物から化合物(7)を製造した。
【0123】
【化69】

【0124】
50mlのフラスコに、スカンジウムトリスドデシルサルフェート(Sc(DS))(83.4 mg,0.1mmol)及び水(20.0ml)を加えた。これにo−メトキシアニリン(1.23g,10.0mmol)、2−メトキシ−3−(p−メトキシベンジルオキシ)−1−プロペン(6)(3.27g,15.0mmol)、及び(S)−2−ベンジルオキシ−4−ペンテナール(5)(1.90g,10.0mmol)を順次加え、30℃に昇温後18時間撹拌した。放冷後水層に塩化ナトリウムを飽和するまで加え、固形物をセライトろ過により取り除き、さらに酢酸エチル(50ml)で洗った。分液後、水層を酢酸エチル(50ml×3)で抽出、併せた有機層を水(100ml×2)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(100ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残さをカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=9/1)で精製することにより対応する5−ベンジルオキシ−1−(4−メトキシベンジルオキシ)−4−(2−メトキシフェニルアミノ)−7−オクテン−2−オン(7)のシン体とアンチ体の混合物を得た(3.83g,78%)。ジアステレオマー選択性は、H−NMRスペクトルにより1/1と決定された。得られた化合物(7)は新規物質であった。
【0125】
(4S,5S)−5−ベンジルオキシ−1−(4−メトキシベンジルオキシ)−4−(2−メトキシフェニルアミノ)−7−オクテン−2−オン(シン体−7)
[α]26 −3.05(c=1.04,CHCl).
IR(neat): 3394, 2934, 2863, 1725, 1601, 1512, 1457, 1249 cm−1
H−NMR (CDCl,400MHz) δ:
2.35-2.49 (m, 2H), 2.66 (dd, 2H, J = 5.9, 16.2 Hz),
2.71 (dd, 1H, J = 7.2, 16.2 Hz), 3.56 (ddd, 1H, J = 2.1, 5.6, 9.9 Hz),
3.78 (s, 3H), 3.80 (s, 3H), 3.82 (d, 1H, J = 18.7 Hz),
3.89 (d, 1H, J = 18.7 Hz), 4.13 (brt, 1H, 5.6Hz),
4.39 (d, 1H, J = 13.4 Hz), 4.41 (d, 1H, J = 13.4 Hz),
4.45 (d, 1H, J = 11.7 Hz), 4.68 (d, 1H, J = 11.7 Hz),
5.02-5.12 (m, 2H), 5.73-5.84 (m, 1H), 6.56 (dd, 1H, J = 1.3, 8.0 Hz),
6.63 (dt, 1H, J = 1.5, 7.7 Hz), 6.74 (dd, 1H, J = 1.5, 8.0 Hz),
6.79 (dt, 1H, J = 1.3, 7.7 Hz), 6.82-6.89 (m, 2H),
7.20 (dd, 1H, J = 2.0, 6.6 Hz), 7.23-7.34 (m, 5H).
13C−NMR (CDCl,100MHz) δ:
35.0, 40.8, 50.4, 55.2, 55.4, 71.8, 72.8, 75.0, 79.1, 109.7, 110.2,
113.8, 116.4, 117.7, 121.3, 127.7, 128.0, 128.4, 129.2, 129.5, 134.5,
136.7, 138.3, 146.9, 159.4, 208.1.
HRMS: C3035NO (M)として 計算値 489.2515,
実測値 489.2542.
【0126】
(4R,5S)−5−ベンジルオキシ−1−(4−メトキシベンジルオキシ)−4−(2−メトキシフェニルアミノ)−7−オクテン−2−オン(アンチ体−7)
[α]26 +29.0(c=1.02,CHCl).
IR(neat): 3394, 2934, 2863, 1725, 1601, 1513, 1457, 1249 cm−1
H−NMR (CDCl,400MHz) δ:
2.28-2.35 (m, 1H), 2.40-2.47 (m, 1H), 2.67 (dd, 2H, J = 4.9, 15.9 Hz),
2.78 (dd, 1H, J = 7.1, 15.9 Hz), 3.65 (dd, 1H, J = 6.0, 10.6 Hz),
3.77 (s, 3H + 3H), 3.96 (s, 2H), 4.05-4.13 (m, 1H),
4.40 (d, 1H, J = 11.2 Hz), 4.40 (s, 2H), 4.60 (d, 1H, J = 11.2 Hz),
5.08-5.14 (m, 2H), 5.84 (ddt, 1H, J = 7.1, 10.2, 17.1 Hz),
6.65 (dt, 2H, J = 1.5, 6.2 Hz), 6.74 (dd, 1H, J = 1.5, 8.3 Hz),
6.80-6.89 (m, 1H), 6.82 (d, 2H, J = 8.5 Hz), 7.20 (d, 2H, J = 8.5 Hz),
7.24-7.33 (m, 5H).
13C−NMR (CDCl,100MHz) δ:
35.8, 39.2, 52.2, 55.2, 55.3, 72.5, 72.8, 75.1, 79.9, 109.7, 111.6,
113.8, 116.9, 117.9, 121.3, 127.5, 127.7, 128.2, 129.3, 129.5, 133.9,
136.5, 138.3, 147.1, 159.3, 207.9.
HRMS: C3035NO (M)として 計算値 489.2515,
実測値 489.2526.
【実施例7】
【0127】
化合物(8)の製造
次に示す反応式にしたがって化合物(7)から化合物(8)を製造した。
【0128】
【化70】

【0129】
50mlのフラスコに、実施例6で製造した5−ベンジルオキシ−1−(4−メトキシベンジルオキシ)−4−(2−メトキシフェニルアミノ)−7−オクテン−2−オン(7)(2.74g,5.60mmol)、ペンタメチルジシロキサン(1.66g,11.2mmol)、トルエン(13.5ml)、及び水(10.86ml)を加え、35℃に昇温した。これに水素化ヘキサクロロ白金(0.0212mmol/ml,2.64ml,0.056mmol)を滴下した。5時間撹拌後、反応混合物をヘキサン(100ml)及び水(100ml)で希釈し、固形物をセライトろ過により取り除いた。分液後、有機層を水(100ml×3)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(100ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残さをカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=9/1)で精製することにより対応する5−ベンジルオキシ−1−(4−メトキシベンジルオキシ)−4−(2−メトキシフェニルアミノ)−8−(1,1,3,3,3−pentaメチルジシロキサニル)−オクタン−2−オン(8)を得た(3.05g,85%)。上記化合物(8)は、新規化合物であった。
【0130】
(4S,5S)−5−ベンジルオキシ−1−(4−メトキシベンジルオキシ)−4−(2−メトキシフェニルアミノ)−8−(1,1,3,3,3−pentaメチルジシロキサニル)−オクタン−2−オン(シン体−8)
[α]28 +5.18(c=1.09,CHCl).
IR(neat): 2956, 1725, 1602, 1254, 1052 cm−1
H−NMR (CDCl,400MHz) δ:
0.01 (s, 3H), 0.01 (s, 3H), 0.04 (s, 9H),
0.47 (ddd, 2H, J = 3.2, 6.5, 9.8 Hz), 1.26-1.48 (m, 2H),
1.56-1.70 (m, 2H), 2.65 (dd, 1H, J = 5.9, 16.2 Hz),
2.74 (dd, 1H, J = 7.2, 16.2 Hz), 3.51 (dt, 1H, J = 2.4, 6.5 Hz),
3.79 (s, 3H), 3.80 (s, 3H), 3.86 (d, 1H, J = 17.1 Hz),
3.92 (d, 1H, J = 17.1 Hz), 4.16 (dt, 1H, 2.1, 6.5 Hz), 4.41 (s, 2H),
4.49 (d, 1H, J = 11.7 Hz), 4.62 (d, 1H, J = 11.7 Hz),
6.61 (d, 1H, J = 7.8 Hz), 6.65 (dd, 1H, J = 1.2, 7.6 Hz),
6.74 (dd, 1H, J = 1.2, 8.1 Hz), 6.80 (dd, 1H, J = 1.2, 7.6 Hz),
6.82-6.86 (m, 2H), 7.19-7.22 (m, 2H), 7.25-7.33 (m, 5H).
13C−NMR (CDCl,100MHz) δ:
-0.02, 0.28, 1.96, 18.4, 19.8, 33.9, 40.4, 50.4, 55.2, 55.4, 71.9,
72.9, 75.0, 79.4, 109.7, 113.8, 121.4, 127.7, 128.0, 128.4, 129.3,
129.6, 138.5, 147.0, 159.4, 208.1.
HRMS: C3551NOSi (M)として 計算値 637.3255,
実測値 637.3278.
【0131】
(4R,5S)−5−ベンジルオキシ−1−(4−メトキシベンジルオキシ)−4−(2−メトキシフェニルアミノ)−8−(1,1,3,3,3−pentaメチルジシロキサニル)−オクタン−2−オン(アンチ体−8)
[α]28 +18.9(c=1.17,CHCl).
IR(neat): 2955, 1718, 1602, 1513, 1253, 1051 cm−1
H−NMR (CDCl,400MHz) δ:
0.03 (s, 3H), 0.05 (s, 3H), 0.06 (s, 9H), 0.49 (t, 2H, J = 4.9 Hz),
1.39-1.54 (m, 3H), 1.54-1.71 (m, 1H), 2.66 (dd, 1H, J = 5.0, 16.0 Hz),
2.78 (dd, 1H, J = 7.2, 16.0 Hz), 3.61 (dd, 1H, J = 4.6, 6.1 Hz),
3.77 (s, 3H), 3.78 (s, 3H), 3.99 (s, 2H), 4.08-4.12 (m, 1H),
4.42 (s, 2H), 4.44 (d, 1H, J = 13.9 Hz), 4.54 (d, 1H, J = 13.9 Hz),
6.58-6.69 (m, 1H), 6.68 (d, 1H, J = 7.9 Hz),
6.76 (dd, 1H, J = 1.2, 7.9 Hz), 6.83 (d, 2H, J = 8.8 Hz),
6.82-6.90 (m, 1H), 7.21 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 7.22-7.34 (m, 5H).
13C−NMR (CDCl,100MHz) δ:
-0.03, 0.32, 1.97, 18.5, 19.5, 35.3, 39.2, 52.6, 55.2, 55.3, 72.8,
73.0, 75.1, 80.2, 109.8, 113.8, 113.9, 121.4, 127.5, 127.8, 128.3,
129.3, 129.6, 138.5, 147.3, 159.4, 208.1.
HRMS: C3551NOSi (M)として 計算値 637.3255,
実測値 637.3260.
【実施例8】
【0132】
化合物(9)の製造
次に示す反応式にしたがって化合物(8)から化合物(9)を製造した。
【0133】
【化71】

【0134】
50mlのフラスコに、実施例7で製造した5−ベンジルオキシ−1−(4−メトキシベンジルオキシ)−4−(2−メトキシフェニルアミノ)−8−(1,1,3,3,3−pentaメチルジシロキサニル)−オクタン−2−オン(8)(2.65g,4.15mmol)及びTHF(10.0ml)を加えた。これに75%フッ化テトラブチルアンモニウム水溶液(13.0g,37.4mmol)、フッ化カリウム(2.90g,49.8mmol)、炭酸水素カリウム(1.25g,12.5mmol)、30%過酸化水素(9.44g,83.1mmol)を順次加え、40℃に昇温後30分間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(50ml)及び水(50ml)で希釈し、固形物をセライトろ過により取り除いた。分液後水層を酢酸エチル(50ml×2)で抽出、併せた有機層を水(100ml×2)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(100ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残さをカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製することにより対応する5−ベンジルオキシ−8−ヒドロキシ−1−(4−メトキシベンジルオキシ)−4−(2−メトキシフェニルアミノ)−2−オクタノン(9)を得た(1.76g,84%)。
【0135】
(4S,5S)−5−ベンジルオキシ−8−ヒドロキシ−1−(4−メトキシベンジルオキシ)−4−(2−メトキシフェニルアミノ)−2−オクタノン(シン体−9)
[α]24 +5.33(c=2.95,CHCl).
IR(neat): 3426, 2938, 1719, 1601, 1514 cm−1
H−NMR (CDCl,400MHz) δ:
1.50-1.72 (m, 4H), 2.64 (dd, 1H, J = 5.7, 16.2 Hz),
2.75 (dd, 1H, J = 7.2, 16.2 Hz), 3.51-3.60 (m, 1H),
3.56 (t, 2H, J = 6.2 Hz), 3.78 (s, 3H), 3.79 (s, 3H),
3.84 (d, 1H, J = 17.1 Hz), 3.91 (d, 1H, J = 17.1 Hz),
4.17-4.19 (m, 1H), 4.41 (s, 2H), 4.50 (d, 1H, J = 11.7 Hz),
4.62 (d, 1H, J = 11.7 Hz), 6.59 (dd, 1H, J = 1.4, 8.0 Hz),
6.63 (dt, 1H, J = 1.4, 7.6 Hz), 6.74 (dd, 1H, J = 1.3, 8.0 Hz),
6.80 (dd, 1H, J = 1.3, 7.6 Hz), 6.84 (d, 2H, J = 8.8 Hz),
7.20 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 7.26-7.33 (m, 5H).
13C−NMR (CDCl,100MHz) δ:
26.2, 29.0, 40.3, 50.1, 55.2, 55.4, 62.6, 71.8, 72.8, 74.9, 79.3,
109.7, 110.0, 113.8, 116.5, 121.3, 127.7, 128.0, 128.3, 129.1, 129.5,
136.7, 138.2, 146.9, 159.4, 208.2.
HRMS: C3037NO (M)として 計算値 507.2621,
実測値 507.2633.
【0136】
(4R,5S)−5−ベンジルオキシ−8−ヒドロキシ−1−(4−メトキシベンジルオキシ)−4−(2−メトキシフェニルアミノ)−2−オクタノン(アンチ体−9)
[α]25 +20.1(c=2.73,CHCl).
IR(neat): 3414, 2942, 1721, 1601, 1514 cm−1
H−NMR (CDCl,400MHz) δ:
1.54-1.76 (m, 4H), 2.68 (dd, 1H, J = 5.4, 16.0 Hz),
2.76 (dd, 1H, J = 6.7, 16.0 Hz), 3.57 (dt, 2H, J = 2.2, 5.9 Hz),
3.61-3.64 (m, 1H), 3.78 (s, 3H), 3.78 (s, 3H), 3.98 (s, 2H),
4.12 (dd, 1H, J = 5.4, 10.2 Hz), 4.41 (s, 2H),
4.44 (d, 1H, J = 11.5 Hz), 4.55 (d, 1H, J = 11.5 Hz),
6.66 (t, 2H, J = 7.6 Hz), 6.75 (dd, 1H, J = 1.2, 8.3 Hz),
6.81-6.89 (m, 1H), 6.83 (d, 2H, J = 8.7 Hz), 7.21 (d, 2H, J = 8.7 Hz),
7.22-7.34 (m, 5H).
13C−NMR (CDCl,100MHz) δ:
27.3, 28.4, 39.4, 52.1, 55.2, 55.3, 62.6, 72.6, 72.8, 75.1, 80.2,
109.8, 111.0, 113.8, 113.9, 117.0, 121.3, 127.6, 127.8, 128.3, 129.2,
129.6, 136.5, 138.2, 147.2, 159.3, 208.2.
HRMS: C3037NO (M)として 計算値 507.2621,
実測値 507.2625.
【実施例9】
【0137】
化合物(10)の製造
次に示す反応式にしたがって化合物(9)から化合物(10)を製造した。
【0138】
【化72】

【0139】
室温下、実施例8で製造した(5S)−5−ベンジルオキシ−8−ヒドロキシ−1−(4−メトキシベンジルオキシ)−4−(2−メトキシフェニルアミノ)−2−オクタノン(66.3mg,0.1306mmol)に四臭化炭素(86.6mg,0.2612mmol)を投入し、引き続きトリオクチルホスフィン(0.23ml,0.5224mmol)を加えた。そのまま5分間撹拌した後、水/アセトニトリル=1/4混合溶液(5.0ml)を加え0℃に冷却した。これにセリウム(IV)アンムニウムナイトレート((NHCe(NO)(CAN)(572.8mg,1.045mmol)を加え3時間攪拌した。固体の炭酸ナトリウム(約0.5g)を液性がpH9以上になるまで加え、さらに水(10ml)、酢酸エチル(10ml)、セライト(約1.0g)を加え暫く攪拌した後、不溶性の沈殿物をセライト濾過により取り除いた。水層を酢酸エチルで抽出(20ml×3)した後、抽出液を10%炭酸ナトリウム水溶液(50ml×2)、10%硫酸ナトリウム水溶液(50ml×2)、10%炭酸ナトリウム水溶液(50ml×2)、食塩水(50ml×2)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去した残さに、炭酸ジ−tert−ブチル(57.0mg,0.2612mmol)のトルエン溶液(1.0ml)及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1.0ml)を加え30分間攪拌した。水(10ml)及び酢酸エチル(10ml)を加え反応溶液を希釈し、水層を酢酸エチルで抽出した(10ml×3)。有機層を水(30.0ml)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(30.0ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去し、得た残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で精製することにより対応する(3’S)−1−[2’−(3’−ベンジルオキシ)−1’−(tert−ブトキシカルボニル)−ピペリジノ]−3−ヒドロキシ−2−プロパノン(10)(30.1mg,63%)を得た。
【0140】
(2’R,3’S)−1−[2’−(3’−ベンジルオキシ)−1’−(tert−ブトキシカルボニル)−ピペリジノ]−3−ヒドロキシ−2−プロパノン(トランス体−10)
[α]26 −37.0(c=1.15,CHCl).
IR(neat): 3440, 2930, 1720, 1683 cm−1
H−NMR (DMSO−d,50℃、400MHz) δ:
1.35 (s, 9H), 1.49-1.72 (m, 4H), 2.59-2.87 (m, 3H),
3.37 (d, 1H, J = 2.2 Hz), 3.79-3.92 (m, 1H), 3.87 (d, 1H, J = 9.3 Hz),
4.06 (d, 2H, J = 5.6 Hz), 4.45 (d, 1H, J = 12.0 Hz),
4.59 (d, 1H, J = 12.0 Hz), 4.84 (t, 1H, J = 6.5 Hz),
5.00 (t, 1H, J = 5.9 Hz), 7.23-7.36 (m, 5H).
13C−NMR (DMSO−d,50℃、100MHz) δ:
19.1, 23.6, 27.8, 37.6, 67.5, 69.1, 73.5, 78.3, 126.9, 127.9, 138.7,
154.1, 208.6.
HRMS: C2029NO (M)として 計算値 363.2046,
実測値 363.2039.
【0141】
(2’S,3’S)−1−[2’−(3’−Bベンジルオキシ)−1’−(tert−ブトキシカルボニル)−ピペリジノ]−3−ヒドロキシ−2−プロパノン(シス体−10)
[α]25 +5.54(c=1.08,CHCl).
IR(neat): 3468, 2933, 2862, 1687 cm−1
H−NMR (DMSO−d,50℃、400MHz) δ:
1.15-1.34 (m, 1H), 1.37 (s, 9H), 1.40-1.52 (m, 1H),
1.62 (d, 1H, J = 13.0 Hz), 1.80 (dd, 1H, J = 3.4, 13.0 Hz),
2.46-2.52 (m, 1H), 2.69-2.82 (m, 2H), 3.41 (dt, 1H, J = 5.2, 10.6 Hz),
3.74 (d, 1H, J = 12.9 Hz), 4.03 (dd, 1H, J = 3.4, 5.2 Hz),
4.47 (d, 1H, J = 12.0 Hz), 4.55 (d, 1H, J = 12.0 Hz),
4.93-4.95 (m, 1H), 4.94 (t, 1H, J = 5.6 Hz), 7.25-7.35 (m, 5H).
13C−NMR (DMSO−d,50℃、100MHz) δ:
23.4, 24.8, 27.7, 33.6, 67.6, 69.4, 74.9, 78.8, 127.2, 127.2, 128.0,
138.3, 153.6, 208.8.
HRMS: C2029NO (M)として 計算値 363.2046,
実測値 363.2057.
【0142】
化合物(10)を製造した際に単離された中間体のデータを以下に示す。
(2’R,3’S)−1−[2’−(3’−ベンジルオキシ)ピペリジノ]−3−((4−メトキシベンジル)オキシ)−2−プロパノン(アンチ体)
[α]25 +45.3(c=1.94,CHCl).
IR(neat): 2937, 1724, 1612, 1514, 1499, 1249 cm−1
H−NMR (CDCl) δ:
1.52-1.98 (m, 4H), 2.50 (m, 2H), 2.83 (m, 1H), 3.11 (m, 1H),
3.40 (br, 1H), 3.69 (m, 1H), 3.79 (s, 3H), 3.81 (s, 3H), 3.89 (m, 1H),
4.24 (m. 2H), 4.26 (d, 1H, J = 11.5 Hz), 4.29 (d, 1H, J = 11.5 Hz),
4.62 (m, 1H), 6.80-7.35 (m, 13H).
13C−NMR (CDCl) δ:
22.4, 27.0, 31.9, 38.8, 44.1, 49.5, 55.3, 56.5, 70.3, 72.8, 74.7,
111.6, 113.8, 120.7, 123.2, 124.2, 127.3, 127.7, 128.3, 129.5, 138.9,
139.8, 152.5, 154.2, 159.4, 207.2.
HRMS: C3035NO (M)として 計算値 489.2515,
実測値 489.2508.
【0143】
(2’S,3’S)−1−[2’−(3’−ベンジルオキシ)ピペリジノ]−3−((4−メトキシベンジル)オキシ)−2−プロパノン(シン体)
[α]25 −59.2(c=1.58,CHCl).
IR(neat): 2936, 1725, 1612, 1513, 1455, 1249 cm−1
H−NMR (CDCl) δ:
1.48-1.94 (m, 6H), 2.25-2.32 (m, 1H), 2.75-2.83 (m, 1H),
2.87-3.03 (m, 2H), 3.70-3.88 (m, 1H), 3.79 (s, 3H), 3.90 (s, 3H),
4.28 (m. 2H), 4.47 (d, 1H, J = 11.9 Hz), 4.57 (d, 1H, J = 11.9 Hz),
4.91 (m, 1H).
13C−NMR (CDCl): δ:
24.0, 25.6, 31.8, 44.1, 55.0, 55.3, 55.6, 70.4, 72.7, 75.0, 75.9,
111.7, 113.8, 120.2, 123.1, 127.5, 127.9, 128.3, 129.5, 129.6, 138.6,
139.7, 152.4, 159.3, 207.6.
HRMS: C3035NO (M)として 計算値 489.2515,
実測値 489.2513.
【0144】
(2’R,3’S)−1−[2’−(3’−ベンジルオキシ)ピペリジノ]−3−ヒドロキシ−2−プロパノン(アンチ体)
[α]26 +41.4(c=0.79,CHCl).
IR(neat): 3413, 2934, 1719, 1095 cm−1
H−NMR (CDCl,500MHz)
アンチ体: δ
H−NMR (CDCl): δ:
1.20-1.77 (m, 4H), 2.24-2.63 (m, 2H), 2.88-2.98 (m, 2H), 3.14 (br, 1H),
3.90 (s, 1H), 4.06-4.23 (m, 2H), 4.11-4.18 (m, 2H),
4.36 (d, 1H, J = 11.7 Hz), 4.63 (d, 1H, J = 11.7 Hz),
7.23-7.36 (m, 5H).
13C−NMR (CDCl) δ:
25.1, 29.8, 41.4, 45.8, 57.6, 68.5, 70.4, 78.3, 112.5, 127.8, 128.5,
138.2, 209.7.
HRMS: C1521NO (M)として 計算値 263.1521,
実測値 263.1542.
【0145】
(2’S,3’S)−1−[2’−(3’−ベンジルオキシ)ピペリジノ]−3−ヒドロキシ−2−プロパノン(シン体)
[α]27 −21.5(c=0.74,CHCl).
IR(neat): 3399, 2926, 1721, 1091 cm−1
H−NMR (CDCl) δ:
1.25-1.79 (m, 4H), 2.02 (s, 1H), 2.17-2.48 (m, 4H), 2.58-2.67 (m, 1H),
2.96-3.13 (m, 3H), 4.12-4.25 (m, 1H), 4.38 (d, 1H, J = 11.5 Hz),
4.64 (d, 1H, J = 11.5 Hz), 7.23-7.37 (m, 5H).
13C−NMR (CDCl) δ:
25.1, 29.8, 41.4, 45.8, 87.6, 68.7, 70.4, 78.4, 112.5, 127.8, 128.5,
138.2, 209.6.
HRMS: C1521NO (M)として 計算値 263.1521,
実測値 263.1525.
【実施例10】
【0146】
化合物(11)の製造
次に示す反応式にしたがって化合物(10)から化合物(11)を製造した。
【0147】
【化73】

【0148】
室温下、実施例9で製造した(3’S)−1−[2’−(3’−ベンジルオキシ)−1’−(tert−ブトキシカルボニル)−ピペリジノ]−3−ヒドロキシ−2−プロパノン(10)(24.0mg,0.06603mmol)に、四臭化炭素(43.8mg,0.1321mmol)を投入し、引き続きトリオクチルホスフィン(0.12ml,0.2641mmol)を加えた。そのまま5分間撹拌した後、水(0.05ml)を加え反応を停止した。引き続き50%水酸化ナトリウム溶液(8.0mg,0.09905mmol)、4−ヒドロキシキナゾリン(14.5mg,0.09905mmol)、THF(0.1ml)を加え、室温下で2時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(10.0ml)で反応を停止し、水層を酢酸エチルで抽出した(10ml×3)。抽出液を水(30.0ml)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(30.0ml)で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、得た残さをシリカゲル薄層クロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=19/1)で精製することにより(2’R,3’S)−3−ベンシルオキシ−2−[2−オキソ−3−(4−オキソ−4H−キナゾリン−3−イル)−プロピル]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(アンチ体−11)(11.0mg,34%)及び、(2’S,3’S)−3−ベンシルオキシ−2−[2−オキソ−3−(4−オキソ−4H−キナゾリン−3−イル)−プロピル]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(シン体−11)(12.3mg,38%)を得た。
【0149】
(2’S,3’R)−3−ベンシルオキシ−2−[2−オキソ−3−(4−オキソ−4H−キナゾリン−3−イル)−プロピル]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(11−アンチ体)
[α]26 −38.7(c=0.27,CHCl).
IR(neat): 2930, 1732, 1681, 1613 cm−1
H−NMR (CDCl) δ:
1.39-1.48 (m, 1H), 1.45 (s, 9H), 1.57-1.72 (m, 1H), 1.87-1.95 (m, 2H),
2.72 (dd, 1H, J = 5.5, 14.3 Hz), 2.84 (dd, 1H, J = 4.6, 14.2 Hz),
2.90 (brs, 1H), 3.49 (s, 1H), 3.98 (brs, 1H),
4.53 (d, 1H, J = 12.2 Hz), 4.68 (d, 1H, J = 12.2 Hz), 4.94 (brs, 1H),
4.98 (t, 1H, J = 6.7 Hz), 7.25-7.36 (m, 5H),
7.50 (dd, 1H, J = 1.5, 7.5 Hz), 7.73-7.79 (m, 2H), 7.93 (s, 1H),
8.26-8.28 (m 1H).
13C−NMR (CDCl) δ:
19.4, 24.5, 28.4, 41.0, 50.1, 53.8, 60.3, 70.3, 73.9, 80.2, 121.9,
126.7, 127.3, 127.5, 127.5, 127.6, 128.3, 134.4, 138.4, 146.6, 148.3,
155.7, 160.9, 200.0.
HRMS: C2833 (M)として 計算値 491.2420,
実測値 491.2413.
【0150】
(2’S,3’S)−3−ベンシルオキシ−2−[2−オキソ−3−(4−オキソ−4H−キナゾリン−3−イル)−プロピル]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(11−シン体)
[α]26 +37.6(c=1.20,CHCl).
IR(neat): 2934, 1732, 1680, 1612 cm−1
H−NMR (DMSO−d,50℃) δ:
1.35-1.52 (m, 3H), 1.42 (s, 9H), 1.54-1.59 (m, 1H),
1.70 (d, 1H, J = 13.4 Hz), 1.89-1.93 (m, 1H),
3.07 (dd, 1H, J = 5.5, 15.8 Hz), 3.47-3.50 (m, 1H),
3.82 (d, 1H, J = 11.9 Hz), 4.54-4.58 (m, 2H), 5.03-5.05 (m, 3H),
7.34-7.41 (m, 5H), 7.62 (dd, 1H, J = 1.2, 7.6 Hz),
7.75 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 7.90 (dd, 1H, J = 1.5, 7.8 Hz),
8.03 (s 1H), 8.19 (dd, 1H, J = 1.5, 7.8 Hz).
13C−NMR (DMSO−d,50℃) δ:
23.99, 24.03, 25.4, 28.4, 36.2, 36.3, 54.6, 70.0, 75.2, 79.7, 121.8,
126.5, 127.7, 127.9, 128.7, 135.0, 138.8, 148.3, 148.4, 154.6, 160.4,
202.1.
HRMS: C2833 (M)として 計算値 491.2420,
実測値 491.2406.
【0151】
化合物(11)を製造した際に単離された中間体のデータを以下に示す。
(2’R,3’S)−1−[2’−(3’−(ベンジルオキシ)−1’−(tert−ブトキシカルボニル)−ピペリジノ)]−3−ブロモ−2−プロパノン(アンチ体)
[α]26 −28.4(c=0.25,CHCl).
IR(neat): 2930, 1685 cm−1
H−NMR (CDCl) δ:
1.26-1.65 (m, 4H), 1.43 (s, 9H), 1.86-1.91 (m, 2H), 2.81-2.86 (m, 3H),
3.43 (br, 1H), 4.01 (br, 1H), 4.52 (d, 1H, J = 11.9 Hz),
4.70 (d, 1H, J = 11.9 Hz), 4.98 (br, 1H), 7.25-7.36 (m, 5H).
13C−NMR (CDCl) δ:
19.5, 24.7, 34.1, 39.8, 49.6, 70.1, 73.5, 76.8, 80.0, 127.4, 127.5,
128.3, 138.5, 155.3, 199.7.
HRMS: C2028BrNO(M)として 計算値 425.1202,
実測値 425.1195.
【0152】
(2’S,3’S)−1−[2’−(3’−(ベンジルオキシ)−1’−(tert−ブトキシカルボニル)−ピペリジノ)]−3−ブロモ−2−プロパノン(シン体)
[α]25 −22.5(c=0.28,CHCl).
IR(neat): 2929, 1731, 1685 cm−1
H−NMR (DMSO−d,50℃) δ:
1.05-1.43 (m, 4H), 1.31 (s, 9H), 1.55-1.61 (m, 1H), 1.74-1.80 (m, 1H),
2.66 (dt, 1H, J = 2.5, 13.2 Hz), 2.85 (dd, 1H, J = 8.4, 16.0 Hz),
3.09 (dd, 1H, J = 5.0, 16.0 Hz), 3.39 (m, 1H),
3.71 (dd, 1H, J = 3.7, 13.2 Hz), 4.42 (d, 1H, J = 12.1 Hz),
4.48 (d, 1H, J = 12.1 Hz), 4.87 (m, 1H), 7.19-7.28 (m, 5H).
13C−NMR (DMSO−d,50℃) δ:
23.9, 25.5, 28.4, 32.5, 46.4, 50.9, 70.1, 75.3, 79.6, 126.8, 127.9,
128.7, 138.8, 154.2, 194.3.
HRMS: C2028BrNO(M)として 計算値 425.1202,
実測値 425.1204.
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明は、水性溶媒だけを使用してマラリアの予防・治療薬として有用なフェブリフジン及び/又はイソフェブリフジンを工業的に製造することができる方法を提供するものであり、産業上極めて有用なものであり、産業上の利用可能性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記の式(9)
【化1】

(式中、Rは、それぞれ独立して炭化水素基を示す。)
で表されるキラルアルデヒド化合物を、触媒の存在下又は非存在下でアリル化剤を作用させ、次いで生じたアリル化第2級アルコールの水酸基を保護基で保護した後、Rで示されているケタール基を除去し、生じた1,2−ジオールを酸化的開裂に付すことにより、下記の式(7)
【化2】

(式中、Rは水酸基の保護基を示す。)
で表されるキラルアルデヒド化合物を製造する工程、
(B) 2−アルコキシプロペンを、無溶媒又は水性溶媒中で、N−ハロゲン化スクシイミドを作用させて2−アルコキシプロペンのアリル位をハロゲン化した後、これに置換基を有してもよいアリールアルキルアルコールを作用させることにより、下記の式(8)
【化3】

(式中、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示し、Rはアルキル基を示す。)
で表されるアルコキシプロペン化合物を製造する工程、
(C) 工程(A)で製造した式(7)で表されるキラルアルデヒド化合物、工程(B)で製造した式(8)で表されるアルコキシプロペン化合物、及び次式
N−R
(式中、Rは置換基を有してもよいアリール基を示す。)
で表されるアミン化合物を、希土類金属水系ルイス酸又は界面活性機能を有するブレンステッド酸触媒の存在下に水性溶媒中でマンニッヒ型の反応をさせて、下記の式(6)
【化4】

(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rは置換基を有してもよいアリール基を示し、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示す。)
で表されるβ−アミノケトン化合物を製造する工程、
(D) 工程(C)で製造された式(6)で表されるβ−アミノケトン化合物を、水性溶媒中で末端のオレフィン部分をシリル化した後、シリル基を水性溶媒中で除去することにより、下記の式(5)
【化5】

(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rは置換基を有してもよいアリール基を示し、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示す。)
で表される5−アミノアルコール化合物を製造する工程、
(E) 工程(D)で製造された式(5)で表される5−アミノアルコール化合物を、無溶媒又は水性溶媒中で、末端のヒドロキシル基を脱離基に変換した後、系中でピペリジン環を構築した後、金属塩の存在下でR及びRを除去し、さらに塩基性条件下でピペリジン環部の2級アミンを保護することで下記の式(4)
【化6】

(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rはアミノ基の保護基を示す。)
で表されるキラルピペリジン化合物を製造する工程、
(F) 工程(E)で製造した式(4)で表されるキラルピペリジン化合物の末端のヒドロキシル基を脱離基に変換した後、次いで塩基の存在下で4−ヒドロキシキナゾリンを作用させて、下記の式(3)
【化7】

(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rはアミノ基の保護基を示す。)
で表される保護されたフェブリフジン化合物を得、次いで保護基R及びRを除去する工程、
からなる(A)〜(F)の工程を含む下記の式(1)
【化8】

で表されるフェブリフジン及び/又はその異性体である下記の式(2)
【化9】

で表されるイソフェブロフジンを製造する方法であって、これらの工程において溶媒として水性溶媒のみを用いることを特徴とするフェブリフジン及び/又はイソフェブリフジンを製造する方法。
【請求項2】
下記の式(4a)
【化10】

(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rはアミノ基の保護基を示し、Xは脱離基を示す。)
で表されるキラルピペリジン化合物に、無溶媒又は水性溶媒中で、塩基の存在下に4−ヒドロキシキナゾリンを作用させて、下記の式(3)
【化11】

(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rはアミノ基の保護基を示す。)
で表されるフェブリフジン及びイソフェブリフジンの保護体を得、次いで保護基を除去することからなるをフェブリフジン及びイソフェブリフジンを製造する方法。
【請求項3】
式(4a)で表されるキラルピペリジン化合物が、下記の式(5)
【化12】

(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rは置換基を有してもよいアリール基を示し、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示す。)
で表される5−アミノアルコール化合物を原料とし、無溶媒又は水性溶媒中で、末端のヒドロキシル基を脱離基に変換し、系中でピペリジン環を構築した後、金属塩の存在下にR及びRのの保護基を除去し、さらに塩基性条件下でピペリジン環部の2級アミンを保護基で保護し、ついで末端のヒドロキシ基を脱離基に変換することにより製造されたものである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
式(5)で表される5−アミノアルコール化合物が、下記式(6)
【化13】

(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rは置換基を有してもよいアリール基をを示し、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示す。)
で表されるβ−アミノケトン化合物を原料とし、水性溶媒中で末端のオレフィン部分をペンタメチルジシロキサン基でシリル化し、得られたシリル化物を水性溶媒中で加水分解することにより製造されたものである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式(6)で表されるβ−アミノケトン化合物が、下記の式(7)
【化14】

(式中、Rは水酸基の保護基を示す。)
で表されるキラルアルデヒド化合物、下記の式(8)
【化15】

(式中、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示し、Rはアルキル基を示す。)
で表されるアルコキシプロペン化合物、及び次式
N−R
(式中、Rは置換基を有してもよいアリール基を示す。)
で表されるアミン化合物を、希土類金属水系ルイス酸又は界面活性機能を有するブレンステッド酸触媒の存在下に水性溶媒中でマンニッヒ型の反応をさせて製造されたものである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式(7)で表されるキラルアルデヒド化合物が、下記の式(9)
【化16】

(式中、Rは、それぞれ独立して炭化水素基を示す。)
で表されるキラルアルデヒド化合物を、触媒の存在下又は非存在下でアリル化剤を作用させ、次いで生じたアリル化第2級アルコールの水酸基を保護基で保護した後、Rで示されているケタール基を除去し、生じた1,2−ジオールを酸化的開裂に付すことにより製造されたもので請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式(8)で表されるアルコキシプロペン化合物が、2−アルコキシプロペンから無溶媒又は水性溶媒中で、N−ハロゲン化スクシイミドを作用させ、2−アルコキシプロペンのアリル位を酸化的にハロゲン化し、発生したスクシイミドを濾過で除去した後、塩基性水溶液条件下、界面活性剤及びハロゲン化炭化水素を作用させることにより製造されたものである請求項5に記載の方法。
【請求項8】
下記の式(5)
【化17】

(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rは置換基を有してもよいアリール基を示し、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示す。)
で表されるβ−アミノケトン化合物を、無溶媒又は水性溶媒中で、末端のヒドロキシル基を脱離基に変換し、次いで系中でピペリジン環を構築した後、金属塩の存在下でR及びRの保護基を除去し、さらに塩基性条件下でピペリジン環部の2級アミンを保護基で保護して、下記の式(4)
【化18】

(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rはアミノ基の保護基を示す。)
で表されるピペリジン誘導体を製造する方法。
【請求項9】
下記の式(6)
【化19】

(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rは置換基を有してもよいアリール基をを示し、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示す。)
で表されるβ−アミノケトン化合物を、水性溶媒中で末端のオレフィン部分をペンタメチルジシロキサン基でシリル化し、得られたシリル化物を水性溶媒中で加水分解することにより下記の式(5)
【化20】

(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rは置換基を有してもよいアリール基を示し、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示す。)
で表されるβ−アミノケトン化合物を製造する方法。
【請求項10】
下記の式(7)
【化21】

(式中、Rは水酸基の保護基を示す。)
で表されるキラルアルデヒド化合物、下記の式(8)
【化22】

(式中、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示し、Rはアルキル基を示す。)
で表されるアルコキシプロペン化合物、及び次式
N−R
(式中、Rは置換基を有してもよいアリール基を示す。)
で表されるアミン化合物を、希土類金属水系ルイス酸又は界面活性機能を有するブレンステッド酸触媒の存在下に水性溶媒中でマンニッヒ型の反応をさせて、下記の式(6)
【化23】

(式中、Rは水酸基の保護基を示し、Rは置換基を有してもよいアリール基をを示し、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示す。)
で表されるβ−アミノケトン化合物を製造する方法。
【請求項11】
下記の式(9)
【化24】

(式中、Rは、それぞれ独立して炭化水素基を示す。)
で表されるキラルアルデヒド化合物を、触媒の存在下又は非存在下でアリル化剤を作用させ、次いで生じたアリル化第2級アルコールの水酸基を保護基で保護した後、Rで示されているケタール基を除去し、生じた1,2−ジオールを酸化的開裂に付すことにより、下記の式(7)
【化25】

(式中、Rは水酸基の保護基を示す。)
で表されるキラルアルデヒド化合物を製造する方法。
【請求項12】
2−アルコキシプロペンを、無溶媒又は水性溶媒中で、N−ハロゲン化スクシイミドを作用させて2−アルコキシプロペンのアリル位をハロゲン化した後、これに置換基を有してもよいアリールアルキルアルコールを作用させることにより、下記の式(8)
【化26】

(式中、Rは置換基を有してもよいアリールアルキル基を示し、Rはアルキル基を示す。)
で表されるアルコキシプロペン化合物を製造する方法。

【公開番号】特開2008−222566(P2008−222566A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59111(P2007−59111)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】