説明

フェライト成形体、フェライト研削体、フェライト磁心、製造方法、成形方法及び装置、研削方法及び装置

【課題】片側に端子電極が形成可能なフェライト磁心、該フェライト磁心を生産性よく製造することができる製造方法、フェライト成形体、フェライト研削体、成形装置及び方法、研削装置及び方法を提供する。
【解決手段】フェライト材料を含む第1部材31と、該第1部材31より大きい断面積を有し、該第1部材31に連なり、フェライト材料を含む第2部材32とを有し、該第2部材32は、前記第1部材31の密度より3%〜8%大きい密度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスとチョークコイルなどインダクタンス部品として使用され、両側に鍔部を有する面実装型フェライト磁心、特に片側の鍔部が略多角形を含む自由度の高い形状とすることが可能なフェライト磁心、フェライト成形体、フェライト研削体、フェライト磁心の成形方法、研削方法、製造方法、成形装置、及び研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器に用いられるトランスやチョークコイル等のインダクタンス素子を構成する面実装型コイル部品には、フェライト磁心が広く用いられている。このフェライト磁心として、両側に円形状または略四角形の鍔部を備えるドラムコアが良く知られている。以下フェライト磁心をドラムコアとも呼ぶ。
【0003】
通常、両側に円形鍔部を備えるドラムコアをインダクタンス素子として使用する場合、図20に示すように使用される。即ち、ドラムコア8の軸部82に絶縁被覆導線85を巻回した後、略四角形の基台83に接着剤84などで固定し、前記導線85の2端を基台83に備えられた2端子86,86に、それぞれ接続することでインダクタンス素子が完成される。
【0004】
図20に示した両側に円形鍔部を備えるドラムコア8の製造方法として、フェライト顆粒を円柱状の成形体80にプレス成形した後、図21、22に示すように、フェライト成形体80を案内装置93に載せて、研削加工刃91でフェライト成形体80の軸方向の中央部分を研削するセンタレス加工によって、所望の幅を研削することにより、両側に円形鍔部81が形成されたフェライト研削体を、焼成によって収縮緻密化させて得られる。連続したプレス成形とセンタレス加工によって、生産性良くドラムコアを製造できる。
【0005】
しかしながら、前記両側に円形鍔部81を有するドラムコア8は、方向の識別性はないため、インダクタンス素子などに部品化するには、基台83など他の部材が必要となり、ドラムコア8と基台83を接着剤84を用いて固着しなければならないという問題点を有していた。従って、生産性良く低コストでドラムコアを製造できても、部品化において生産性が悪く、コストを要する問題があった。
【0006】
さらに、部品化した素子の高さは、ドラムコア8の高さと基台83の厚さの和になり、ドラムコア8の高さを低くしても基台83の厚さ分だけ高くなるという問題点を有していた。特に、高密度実装の電子機器に用いられるチップ型素子などに用いられる場合、薄型化及び軽量化を妨げる原因になっていた。
【0007】
そして、特許文献1では、ドラムコアのみで部品化が可能な構成として、両側に略四角形の鍔部を形成し、一方の鍔部に端子などを形成することで、基台が不要なドラムコアが開示されている。しかし、前記略四角形のドラムコアでは、図23に示すような加工方法で四角柱状の成形体80を研削して鍔部を形成する必要がある。この場合、一つ一つの成形体を加工するため生産性は高くない。両側鍔部が円形のドラムコアのように生産性良く、連続的に加工できるセンタレス加工を適用することは不可能である。
【0008】
尚、特許文献2には、片側の鍔部が円形で他の片側の鍔部が四角形であり、該四角形の鍔部に端子電極が形成されているドラムコアが開示されている。しかしながら、その製造方法についての記載は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−310982号公報
【特許文献2】実開昭58−187117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、フェライト材料を含む第1部材と、該第1部材より大きい断面積を有し、該第1部材に連なり、フェライト材料を含む第2部材とを有するフェライト成形体において、該第2部材は、前記第1部材の密度より3%〜8%大きい密度を有することによって、片側に端子電極が形成可能なフェライト磁心、該フェライト磁心を生産性よく製造することができる製造方法、フェライト成形体、フェライト研削体、成形装置及び方法、研削装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るフェライト成形体は、フェライト材料を含む第1部材と、該第1部材より大きい断面積を有し、該第1部材に連なり、フェライト材料を含む第2部材とを有し、該第2部材は、前記第1部材の密度より3%〜8%大きい密度を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るフェライト成形体は、前記第1部材は円板状をなし、前記第2部材の断面は少なくとも2つの角部を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るフェライト成形体は、前記第2部材は四角板状をなすことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るフェライト成形体は、前記第2部材の断面は長方形をなすことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るフェライト成形体は、前記第2部材の断面は円弧と直線からなる形状をなすことを特徴とする。
【0016】
本発明に係るフェライト研削体は、前述したフェライト成形体を、第1部材と第2部材とが連なる部分が前記第1の部材よりも小径になるように研削してなることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るフェライト磁心は、前述したフェライト研削体を焼成してなることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る成形方法は、上述したフェライト成形体を成形する方法であって、柱状の第1のパンチ部と、該第1のパンチ部と対向する柱状の第2のパンチ部と、前記第1及び第2のパンチ部が進退する穴部が形成された金型とを備える成形装置の前記金型の穴部に、フェライトを含む顆粒を充填する第1の工程と、前記第1のパンチ部を進めて前記顆粒に押圧力を加える第2の工程と、前記第2のパンチ部を進めて前記顆粒に押圧力を加える第3の工程と、前記第1の工程で進めた第1のパンチ部の端面よりも前記第2のパンチ部に近い位置まで、該第1のパンチ部を進める第4の工程とを有することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る研削方法は、上述したフェライト成形体を、該フェライト成形体を支持面にて支持する支持手段と、外周面を前記支持面に対向させる円板状の回転研削刃とを備え、前記支持面は、前記回転研削刃の軸方向の一端側にある第1の面と、前記回転研削刃の軸方向の他端側にあり、前記第1の面よりも前記回転研削刃に近い第2の面とを有する研削装置を用いて研削する方法であって、前記フェライト成形体の第2部材が前記第1の面と対向するように、該フェライト成形体の第1部材を前記第2の面に載せて前記フェライト成形体を支持する支持工程と、前記回転研削刃を回転駆動して、前記フェライト成形体の第1部材と第2部材とが連なる部分を研削する工程とを備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る研削方法は、前記支持手段は、前記第1の面の前記第2の面と反対側に側壁部をさらに有し、該側壁部は、前記回転研削刃の軸端面と略平行する内側面を備え、前記研削装置は、前記側壁部の内側面が鉛直方向に対して傾くように配置されており、前記支持工程は、前記第2部材の外端面が前記側壁部の内側面と当接するように前記フェライト成形体を支持することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る製造方法は、前述した成形方法で成形してあるフェライト成形体に対して、前述した研削方法で研削したフェライト研削体を焼成してフェライト磁心を得る焼成工程をさらに備えることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る成形装置は、柱状の第1のパンチ部と、該第1のパンチ部と対向する柱状の第2のパンチ部と、前記第1及び第2のパンチ部が進退する穴部が形成された金型と、前記第1のパンチ部を前記穴部の第1位置まで進める第1の制御手段と、該第1の制御手段による動作後に、前記第2のパンチ部を前記穴部の第2位置まで進める第2の制御手段と、該第2の制御手段による動作後に、前記第1のパンチ部を前記穴部の第1位置と第3位置との間の第2位置までさらに進める補助制御手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る成形装置は、前記第2のパンチ部は、前記第1のパンチ部の軸断面積よりも小さい軸断面積を有し、前記穴部は、前記第1のパンチ部が進退する第1の穴、及び前記第2のパンチ部が進退する第2の穴を有することを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る成形装置は、前記第1のパンチ部の下端面は前記第2のパンチ部の上端面と対向するように構成してあることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る研削装置は、被研削物を支持面にて支持する支持手段と、外周面を前記支持面に対向させる円板状の回転研削刃とを備える研削装置において、前記支持面は、前記回転研削刃の軸方向の一端側にある第1の面と、前記回転研削刃の軸方向の他端側にあり、前記第1の面よりも前記回転研削刃に近い第2の面とを有することを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る研削装置は、前記第1の面の前記第2の面と反対側に側壁部をさらに有し、該側壁部は、前記第2の面と略垂直する内側面を備えることを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る研削装置は、前記側壁部の内側面が鉛直方向に対して傾くように構成してあることを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る研削装置は、前記内側面が鉛直方向に対して2度〜8度傾くように構成してあることを特徴とする。
【0029】
また、本発明に係る研削装置は、前記内側面が鉛直方向に対して4度〜6度傾くように構成してあることを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、第2部材は第1部材の密度より3%〜8%大きい密度を有することで、欠けが発生せず、焼成体の軸部中央近傍のクラックや鍔部の外端面と外周の稜部でのクラックの発生をより確実に避けることができ、片側に端子電極が形成可能なフェライト磁心が得られる。
【0031】
本発明によれば、第1部材は円柱状をなし、第2部材は、軸断面は少なくとも2つの角部を有することで、自由度の高い形状の研削成形体を作製可能である。
【0032】
本発明によれば、第2部材は、軸断面は長辺と短辺を有する長方形をなすことで、方向性も備えることができ、面実装部品としてエンボステープへの挿入、エンボステープから部品を取り出し、基板への実装に非常に好都合である。
【0033】
本発明によれば、第2部材は、軸断面は円弧と直線からなる形状をなすことで、方向性を備えながら、半円の対辺の両角に端子電極を形成することで、実装面積を小さくすることができる。
【0034】
本発明によれば、成形装置において、第1のパンチ部を進めてから、第2のパンチ部を進め、その後、前記進めた第1のパンチ部の端面よりも前記第2のパンチ部に近い位置まで、該第1のパンチ部を進めることで、密度差を有するフェライト成形体を製造することができる。
【0035】
本発明によれば、研削装置において、支持面は前記回転研削刃の軸方向の一端側にある第1の面と、前記回転研削刃の軸方向の他端側にあり、前記第1の面よりも前記回転研削刃に近い第2の面とを有することで、自由度の高い形状の被研削物を研削可能である。
【0036】
本発明によれば、研削装置において、側壁部を備えることで、被研削物を安定に研削可能である。
【0037】
本発明によれば、研削装置において、前記側壁部の内側面が鉛直方向に対して傾くように構成してあることで、重力を利用して被研削物の回転外周面及び一端の外側面を加工基準面である第2の面及び側壁部の内側面に常時接触させながら、確実な研削加工を行うことができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、生産性に優れる、プレス成形工程とセンタレス加工工程により、低コストで早いリードタイムで、片側鍔部に端子電極を容易に形成可能な形状を有するフェライト磁心を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施の形態1に係るフェライト磁心を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1に係るフェライト磁心を示す正面図である。
【図3】実施の形態1に係るフェライト磁心を示す上面図である。
【図4】実施の形態1に係るプレス成形装置を示す模式図である。
【図5】実施の形態1に係るプレス成形装置によるプレス成形処理を模式的に示す説明図である。
【図6】実施の形態1に係るプレス成形後の成形体を示す斜視図である。
【図7】実施の形態1に係るセンタレス加工機を示す一部省略した斜視図である。
【図8】実施の形態1に係るセンタレス加工機の加工処理を模式的に示す断面図である。
【図9】実施の形態1に係るセンタレス加工後のドラムコア成形体を示す斜視図である。
【図10】実施の形態1に係る鍔部に端子電極が形成されたドラムコア焼成体を用いたインダクタンス素子を示す斜視図である。
【図11】実施の形態1に係る鍔部に端子電極が形成されたドラムコア焼成体を用いたトランス部品を示す斜視図である。
【図12】実施の形態2に係るフェライト磁心を示す斜視図である。
【図13】実施の形態2に係るフェライト磁心を示す正面図である。
【図14】実施の形態2に係るフェライト磁心を示す上面図である。
【図15】実施の形態2に係るプレス成形装置を示す模式図である。
【図16】実施の形態2に係る成形金型を示す上面図である。
【図17】実施の形態2に係るプレス成形装置によるプレス成形処理を模式的に示す説明図である。
【図18】実施の形態2に係るプレス成形後の成形体を示す斜視図である。
【図19】実施の形態2に係る鍔部に端子電極が形成されたドラムコア焼成体を用いたインダクタンス素子を示す斜視図である。
【図20】従来の両側円形鍔部を備えるドラムコアを用いたインダクタンス素子を示す斜視図である。
【図21】センタレス加工の原理を模式的に示す説明図である。
【図22】センタレス加工の原理を模式的に示す説明図である。
【図23】従来の両側四角形鍔部を備えるドラムコアのセンタレス加工の原理を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
なお、以下の実施の形態では、軟磁性を示すソフトフェライトのドラムコアを製造する例を挙げて説明する。
【0041】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るドラムコア1を示す斜視図、図2は実施の形態1に係るドラムコア1を示す正面図、図3は実施の形態1に係るドラムコア1を示す上面図である。図に示したように、ドラムコア1(フェライト磁心)は、円形鍔部11と、四角形鍔部12と、円形鍔部11及び四角形鍔部12を連結する軸部13とを備える。
【0042】
実施の形態1に係るドラムコア1を製造するには、フェライト材料の各原料粉を秤量し、純水を加えてアトライター(attritor)で混合し、混合したスラリーにバインダーを添加した後、スプレードライヤー(spray dryer)で乾燥する。得られた混合粉の顆粒を、アルミナ製の箱に入れて仮焼し、仮焼した顆粒に純水を加えて、アトライターで粉砕する。得られたスラリーにバインダーを添加してスプレードライヤーで乾燥し、フェライトの顆粒10を得た。フェライトの顆粒10を、図4、5に示すようなプレス成形装置2の成形金型20に充填した後、成形金型20に、上下パンチ部21、22が、それぞれ下ろされ、押し上げられ、図6に示したフェライト成形体3が製作された。
【0043】
製作したフェライト成形体3を、図7、8に示すようなセンタレス加工機4でセンタレス加工した。得られたフェライト研削体5は図9の斜視図に示すように、円形の鍔部51と、四角形の鍔部52と、それらを連結する軸部53とを備えている。次に、フェライト研削体5を焼成し、図1に示したような焼成体のドラムコア1を得た。
【0044】
以下、本実施の形態1のプレス成形処理の詳細を説明する。図4は実施の形態1に係るプレス成形装置を示す模式図、図5は実施の形態1に係るプレス成形装置によるプレス成形処理を模式的に示す説明図、図6は実施の形態1に係るプレス成形後の成形体を示す斜視図である。プレス成形装置2は、中空の四角筒状の上壁面20a、円筒状の下壁面20b、及びそれらを連結する連結面20cにより構成されている内壁面を有する成形金型20と、上壁面20aに摺動自在に挿入されている四角柱状の上パンチ部21と、下壁面20bに摺動自在に挿入されている円柱状の下パンチ部22とを備える。また、プレス成形装置2は、上パンチ部21及び下パンチ部22などを駆動するモータなどの駆動部23と、駆動部23による駆動を制御するマイクロコンピュータなどの駆動制御部24とを有する。駆動制御部24は、機能構成部として、下降制御部241、上昇制御部242、及び補助下降制御部243などを含む。
【0045】
本実施の形態1では、四角柱状の上パンチ部21の軸方向と交差する方向における断面積は、円柱状の下パンチ部22の軸方向と交差する方向における断面積よりも大きい。成形金型20に形成される穴部は下向き凸形状を成し、上パンチ部21が摺動する上壁面20aと連結面20cとにより囲まれる四角柱状の上穴、及び、下パンチ部22が摺動する下壁面20bにより囲まれる円柱状の下穴により構成される。なお、上パンチ部21が進退する方向と交差する方向における上穴の開口断面積は、下パンチ部22が進退する方向と交差する方向における下穴の開口断面積よりも大きい。
【0046】
このようなプレス成形装置2により本実施の形態1に係るフェライト成形体3を成形するには、まず、図5(a)に示すような第1の工程において、駆動部23は、成形金型20の上側端面よりも上方に上パンチ部21の下端面21aを配置し、さらに、成形金型20の下側端面よりも上方に下パンチ部22の上端面22aを配置するように、上パンチ部21と下パンチ部22を駆動する。これにより、成形金型20及び下パンチ部22により、フェライトの顆粒10を充填するための収容部を形成する。そして、収容部内に成形金型20の上側端面と同じ高さにまでフェライトの顆粒10を充填する。
【0047】
次に、図5(b)に示す第2の工程において、駆動部23は上パンチ部21を駆動し、上パンチ部21を下降させる。この時、下降制御部241は、下パンチ部22の上端面22aの初期位置を高度の基準面とし、上パンチ部21の下端面21aを該基準面からの第1高さh1にまで下降させるように、駆動部23の駆動を制御する。これにより、上パンチ部21の下端面21aをフェライトの顆粒10の表面に接触させ、収容部に充填されるフェライトの顆粒10に均一に押圧力を加える。
【0048】
次に、図5(c)に示す第3の工程において、駆動部23は下パンチ部22を駆動し、下パンチ部22を上昇させる。この時、上昇制御部242は、下パンチ部22の上端面22aを基準面からの第3高さh3にまで上昇させて、下パンチ部22の上端面22aで収容部に充填されるフェライトの顆粒10に押圧力を加えるように、駆動部23の駆動を制御する。この結果、下パンチ部22の上端面22a上のフェライトの顆粒10の一部が、上パンチ部21の下面21aと成形金型の連結面20cにより形成される空間へと、すなわち、より負荷の少ない側へと流動する。
【0049】
さらに、図5(d)に示す第4の工程においては、駆動部23は上パンチ部21を駆動し、上パンチ部21を下降させる。この時、補助下降制御部243は、上パンチ部21の下端面21aを基準面からの前記第1の高さh1より略低い第2高さh2にまで下降させるように、駆動部23の駆動を制御する。上パンチ部21の下端面21aで収容部に充填されるフェライトの顆粒10にこれらを圧潰するような押圧力が加える。この結果、収容部に充填されるフェライトの顆粒10は流動せず、圧潰されて緊密に結合されている。図6に示すような、円柱部31と、密度が該円柱部31より高い四角柱部32とを含むフェライト成形体3が製作された。製作されたフェライト成形体3は後述するセンタレス加工機4へ伝送される。
【0050】
このように製作されたフェライト成形体3の円柱部31と四角柱部32の密度について、発明者は、前記プレス成形時の上下パンチ部の圧力またはストロークを調整し、円柱部31と四角柱部32とが異なる密度を有する複数のフェライト成形体3を作製し、センタレス研削加工により鍔部を形成した後、フェライト研削体5の外観を評価した。さらに、フェライト研削体5を焼成し、焼成後の寸法を評価した。その結果、本実施の形態1に係るフェライト成形体3では、四角柱部32が円柱部31の密度より3%〜8%大きい密度を有することが好ましいと判明した。四角柱部32の密度が円柱部31の密度に比べて3%から8%大きいと、フェライト研削体5の四角形鍔部の欠けなどの発生が無い。3%未満の場合は、センタレス加工後の外観では、略四角形の鍔部端部に多くの欠けが観察され、高合格率で生産することができない。8%を超えると、円形鍔部と四角形鍔部とをそれぞれ焼成収縮する際、収縮率の差が大きくなるため、円柱部分と略四角柱部分を合わせた界面近傍で収縮挙動の差によって、クラックが発生するようになる。欠けが発生せず、かつ焼成体の各界面近傍でのクラック発生をより確実に避けるためには、5%〜7%がより好ましい。
【0051】
次に、本実施の形態1のセンタレス加工処理の詳細を説明する。図7は実施の形態1に係るセンタレス加工機を示す一部省略した斜視図、図8は実施の形態1に係るセンタレス加工機の加工処理を模式的に示す断面図、図9は実施の形態1に係るセンタレス加工後のドラムコア成形体を示す斜視図である。図7、図8に示したように、本実施の形態1のセンタレス加工機(研削装置)4は、電動モータのモータ軸(不図示)に連動する回転軸41aに取り付けされている研削加工刃41と、フェライト成形体3を伝送する供給シュート42と、研削加工刃41と対向し、供給シュート42から伝送されたフェライト成形体3を案内する案内装置43とを備える。案内装置43は、円盤状の支持部46と、支持部46の外周に適長離隔して配置されている複数の突起部44と、支持部46の両側端面に配置されており、支持部46の外周面に対して垂直に設けられる側壁部47、48とを備える(図7では側壁部47の図示を省略した)。また、支持部46は、第1の外周面46a、及び軸方向において該第1の外周面46aに連なって、第1の外周面46aより大きい第2の外周面46bを含む段階状の外周形状を有する。該第2の外周面46bと第1の外周面46aとの段差は、加工するフェライト成形体3の四角柱部32が円柱部31から張り出している部分より大きくなるように形成されている。複数の突起部44は第2の外周面46bに配置されており、周方向に隣接する突起部44、44により形成される空間は、供給シュート42から伝送されたフェライト成形体3を安定に研削するように保持するための保持部45を形成する。また、第1の外周面46a側の側壁部47の内側面が鉛直方向に対して傾くように、該センタレス加工機4が構成されている。
【0052】
このセンタレス加工機4でフェライト成形体3をセンタレス処理する場合、図8に示すように、プレス成形装置2から送り出されたフェライト成形体3が、四角柱部32が案内装置43の第1の外周面46a、円柱部31が第2の外周面46bとそれぞれ対応するように供給シュート42を通って案内装置43の外周に順送りされる。案内装置43は、矢印Aの方向に回転駆動され、供給される各フェライト成形体3は、回転する案内装置43の外周面に装着されている複数の突起部44と44の間の保持部45に1個ずつ伝送される。円柱部31の外周面31bが第2の外周面46b、四角柱部32の外端面32aが側壁部47の内側面47aにそれぞれ常時接触させるとともに、円柱部31の外端面31aが側壁部48の内側面48a、四角柱部32の外周面32bが第1の外周面46aと隙間を明けて対向するように、保持部45に保持されている。保持されているフェライト成形体3は、突起部44で規制されつつ案内装置43と研削加工刃41の最小間隔部分に向けて順番に送り込まれる。
【0053】
研削加工刃41は高速に回転駆動され、フェライト成形体3が案内装置43と研削加工刃41の最小間隔部分を通過する際に、研削加工刃41はフェライト成形体3を、円柱部31の外周面31bが第2の外周面46b、四角柱部32の外端面32aが側壁部47の内側面47aにそれぞれ常時接触しながら、回転させる。回転しているフェライト成形体3は研削加工刃41に研削される。研削加工刃41の幅はフェライト成形体3の軸方向の全長より小さく、フェライト成形体3の軸方向の中間部分が研削加工刃41の幅で切り込まれ、図7のように円形の鍔部51と四角形の鍔部52とそれらを連結する軸部53とを有するドラム型のフェライト研削体5に加工される。ドラム型に加工されたフェライト研削体5は案内装置43の回転案内によって順に排出される。
【0054】
ここで、本実施の形態1では、第1の外周面46a側の側壁部47の内側面47aが鉛直方向に対して下方に傾くように、該センタレス加工機4が配置されている。また、フェライト成形体3は、四角柱部32は円柱部31より高い密度を有し、且つ円柱部31より張り出した構成となるため、四角柱部32の方が円柱部31に比べて重量が大きい。従って、前述のように円柱部31の外周面31bが第2の外周面46b、四角柱部32の外端面32aが側壁部47の内側面47aにそれぞれ常時接触させるように、保持部45に保持される場合、フェライト成形体3では、四角柱部32の重心が円柱部31の重心よりも低位にされる。また、第2の外周面46bと第1の外周面46aとの段差は、四角柱部32が円柱部31から張り出している部分より大きいとともに、円柱部31の外端面31aが側壁部48の内側面48aと隙間を明けて対向している。これにより、センタレス加工時にフェライト成形体3を安定に回転、移動させることができる。
【0055】
本実施の形態1では、第1の外周面46a側の側壁部47の内側面47aが鉛直方向に対して2度から8度傾くことが好ましい。2度未満では、円柱部31の外周面31bと第2の外周面46bとの接触が不安定であり、研削加工精度が低下する。8度を超えると、四角柱部32の外端面32aと側壁部47の内側面47aとの接触による摩擦が大きく、成形体の回転移動がスムーズでなくなり、途中で停止する現象が起こり、研削加工が全周に渡ってなされなくなる。より好ましくは4度から6度である。
【0056】
図10は実施の形態1に係る鍔部に端子電極が形成されたドラムコア焼成体を用いたインダクタンス素子を示す斜視図である。上記のフェライト研削体5は、前述のように焼成され、図1の焼成体のドラムコア1を得た。さらに、得られた焼成体のドラムコア1の略四角形鍔部の隣接する2角に端子電極16,16を形成し、両側鍔部の間の軸部13に絶縁被覆導線15を巻回し、導線の両端を前記2つの端子電極16,16に半田で半田付けし、図10に示したようなインダクタンス素子が得られた。
【0057】
図11は実施の形態1に係る鍔部に端子電極が形成されたドラムコア焼成体を用いたトランス部品を示す斜視図である。上記のフェライト研削体5は、前述のように焼成され、図1の焼成体のドラムコア1を得た。さらに、得られた焼成体のドラムコア1の略四角形鍔部の4角に端子電極16,16,16,16を形成し、両側鍔部の間の軸部13に1対の絶縁被覆導線15を巻回し、各導線の両端をそれぞれ隣接する前記4つの端子電極16,16,16,16に半田で半田付けし、さらに、円形鍔部11と四角形鍔部12とに挟まれた空間に、フェライト粉末が分散混合された耐熱性樹脂を充填することで、図11に示したようなトランス部品が得られた。
【0058】
(実施の形態2)
次に、図12〜17に基づいて、本発明の実施形態2について説明する。
図12は実施の形態2に係るフェライト磁心を示す斜視図、図13は実施の形態2に係るフェライト磁心を示す正面図、図14は実施の形態2に係るフェライト磁心を示す上面図である。本実施形態2に係るフェライト磁心6は、実施形態1の四角形鍔部12を備える構成の代わりに、円形鍔部61と、四角形と円形の結合形状である半円四角形の鍔部62と、それらを連結する軸部63とを備える構成とする。そして、プレス成形装置7及びプレス成形処理も実施の形態1と異なる。それ以外は、本実施形態2は基本的に実施形態1と同様に構成されているので、重複する説明を省略する。
【0059】
図15は実施の形態2に係るプレス成形装置を示す模式図、図16は実施の形態2に係る成形金型を示す上面図、図17は実施の形態2に係るプレス成形装置によるプレス成形処理を模式的に示す説明図、図18は実施の形態2に係るプレス成形後の成形体を示す斜視図である。図15に示したプレス成形装置7は、成形するフェライト成形体60と対応する中空の半円略四角筒状の上壁面70a、円筒状の下壁面70b、及びそれらを連結する連結面により構成されている内壁面70cを有する成形金型70と、上壁面70aに摺動自在に挿入されている半円略四角柱状の上パンチ部71と、下壁面70bに摺動自在に挿入されている円柱状の下パンチ部72とを備える。また、プレス成形装置7は、上パンチ部71及び下パンチ部72などを駆動するモータなどの駆動部73と、駆動部73による駆動を制御するマイクロコンピュータなどの駆動制御部74とを有する。駆動制御部74は、機能構成部として、下降制御部741、上昇制御部742、及び補助下降制御部743などを含む。
【0060】
図15、16に示したように、成形金型70は、半円略四角柱状の上パンチ部71の軸方向と交差する方向における断面は、円柱状の下パンチ部72の軸方向と交差する方向における断面積よりも大きい。成形金型70に形成される穴部は下向き凸形状を成し、上パンチ部71が摺動する上壁面70aと連結面70cとにより囲まれる半円四角柱状の上穴、及び、下パンチ部72が摺動する下壁面70bにより囲まれる円柱状の下穴により構成される。半円四角柱状の上穴は、片側で円柱状の下穴から張り出している。上パンチ部71が進退する方向と交差する方向における上穴の開口断面積は、下パンチ部72が進退する方向と交差する方向における下穴の開口断面積よりも大きい。
【0061】
上述のようなプレス成形装置7により本実施の形態2に係るフェライト成形体を製造するには、まず、図17(a)に示すような第1の工程において、駆動部73は、成形金型70の上側端面よりも上方に上パンチ部71の下端面71aを配置し、さらに、成形金型70の下側端面よりも上方に下パンチ部72の上端面72aを配置するように、上パンチ部71と下パンチ部72を駆動する。これにより、成形金型70及び下パンチ部72により、フェライトの顆粒10を充填するための収容部を形成する。そして、収容部内に成形金型70の上側端面と同じ高さにまでフェライトの顆粒10を充填する。
【0062】
次に、図17(b)に示す第2の工程において、駆動部73は上パンチ部71を駆動し、上パンチ部71を下降させる。この時、下降制御部741は、下パンチ部72の上端面72aの初期位置を高度の基準面とし、上パンチ部71の下端面71aを該基準面からの第1高さh1にまで下降させるように、駆動部73の駆動を制御する。これにより、上パンチ部71の下端面71aをフェライトの顆粒10の表面に接触させることで、収容部に充填されるフェライトの顆粒10に均一に押圧力を加えている。
【0063】
次に、図17(c)に示す第3の工程において、駆動部73は下パンチ部72を駆動し、下パンチ部72を上昇させる。この時、上昇制御部742は、下パンチ部72の上端面72aを基準面からの第3高さh3にまで上昇させて、下パンチ部72の上端面72aで収容部に充填されるフェライトの顆粒10にこれらを圧潰するような押圧力を加えるように、駆動部73の駆動を制御する。これによって、収容部内に収容されるフェライトの顆粒10が圧潰され、緊密に結合されている。
【0064】
さらに、図17(d)に示す第4の工程においては、駆動部73は上パンチ部71を駆動し、上パンチ部71を下降させる。この時、補助下降制御部743は、上パンチ部71の下端面71aを基準面からの前記第1の高さh1より略低い第2高さh2にまで下降させるように駆動部73の駆動を制御する。上パンチ部71の下端面71aで収容部に充填されるフェライトの顆粒10に押圧力を加える。この場合、フェライトの顆粒10が既に圧潰されて結合されたので、収容部に充填されるフェライトの顆粒10は流動しない。この結果、上パンチ部71の下端面71aと成形金型の連結面70cにより形成される空間に位置するフェライト顆粒10の結合体は一層圧力加えられ、さらに緊密に結合されている。この結果、図18に示すような、円柱部と、密度が該円柱部より高い半円略四角柱部とを備えるフェライト成形体60が製作された。
【0065】
このように製作されたフェライト成形体60の円柱部と半円略四角柱部の密度は、実施の形態1と同様、半円略四角柱部が円柱部の密度より3%〜8%大きい密度を有することが好ましい。5%以上7%以下がより好ましい。
【0066】
製作されたフェライト成形体60は実施の形態1と同様、センタレス加工されて焼成され、図12に示したようなフェライト磁心6が得られた。フェライト磁心6は、半円略四角形の鍔部において端子電極16を形成し、両鍔部の間に絶縁被覆導線を巻回し、導線の両端を前記2つの端子電極16に半田で半田付けし、さらに、両鍔部61、62に挟まれた空間に、フェライト粉末が分散混合された耐熱性樹脂を充填することで、図19に示したようなインダクタンス素子が得られた。
【0067】
本実施の形態2に係るフェライト磁心6は、実施形態1の四角形鍔部12を備える構成の代わりに、四角形と円形の結合形状である半円四角形の鍔部62を備える構成を有する。この半円四角形の鍔部62と円形の鍔部との軸断面積の差は、実施の形態1の四角形の鍔部12と円形の鍔部11との軸断面積の差より小さいなどを考慮して、上述のプレス成形処理を採用するが、これに限らず、実施の形態1と同様なプレス成形処理を採用してもよいことは勿論である。
【0068】
なお、フェライト成形体の密度は、プレス時にフェライト顆粒が金型内への充填される様子や、圧力による流動・変形などの挙動が非常に複雑であると推測される。成形体それぞれの形状に応じて上下パンチの条件をパラメータとして、成形体・焼成体の形状や焼成時の収縮ばらつき等を評価して、適当な成形処理を採用することが好ましい。
【0069】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に述べる。
(実施例1)
フェライト材料として、mol%で、Fe23 :47、NiO:23、CuO:5、ZnO:25の組成になるように、各原料粉を秤量し、純水を加えてアトライターで混合した。混合スラリーにPVAをフェライト材料重量に対して1%添加した後、スプレードライヤーで乾燥した。得られた混合粉の顆粒を、アルミナ製の箱に入れて、大気中、最高温度900℃で2時間保持することで仮焼した。仮焼した顆粒に純水を加えて、アトライターで粉砕した。このスラリーにPVAをフェライト材料重量に対して2%添加し、スプレードライヤーで乾燥し、顆粒を得た。顆粒の粒径は約100μmであった。
【0070】
得られた顆粒を、円柱部と略正方形の四角柱部を合わせた成形体が得られる図4に示すようなプレス成形装置の成形金型20に充填した後、実施の形態1に説明した工程でプレス成形し、フェライト成形体が得られた。成形体の形状は円形の鍔の直径または略四角形鍔の一辺の長さが約3mmで、高さが約1mmである。
【0071】
先ず、フェライト成形体を10ヶ作製し、円柱部と四角柱部をカッターナイフで分離し、それぞれの重量を電子天秤で、大きさをマイクロメータで測定し、成形体密度を算出した。結果を表1に示す。四角柱部の密度が円柱部に比べて、3%から8%大きい範囲にあることが分かる。
【0072】
【表1】

【0073】
次に、前記条件でフェライト成形体を1000ヶ作製した。予め前記形状に合わせて図7、図8に示したセンタレス加工機4の加工機構部分を製作し、側壁部47の内側面47aを鉛直方向に5度の角度で傾くように設定する。
【0074】
作製したフェライト成形体1000ヶを前記機構を備えるセンタレス加工機4で加工した。研削加工刃の厚さは490μmで、両側鍔部の間隔は約510μmであった。図9に示したような円形の鍔部と略正方形の鍔部を備えているドラムコア成形体が作製された。該ドラムコア成形体1000ヶの外観を評価したところ、欠け不良は無かった。
【0075】
次に、ドラムコア成形体1000ヶを大気中、最高温度1100℃で2時間保持により焼成し、ドラムコア焼成体を得た。焼成収縮率は約16%であった。焼成体の外観検査及び寸法検査を行い問題無いことを確認した。
【0076】
得られたドラムコア焼成体の内50ヶについて、両側鍔部の間に直径100μmの絶縁被覆導線を12回巻回し、HP社製LCRメータ4284Aを使用して、周波数100kHzでのインダクタンス及び直流重畳特性を評価し、インダクタンス素子として目的とする特性が得られていることを確認した。
【0077】
(実施例2)
実施例1で得られたドラムコア焼成体の内50ヶについて、略正方形の鍔部の隣接する2角にディップ法によりAgペーストを鍔部の外面から側面を通じて内面に連続するように塗布乾燥させた後、大気中600℃で20分保持により焼成した。次に電解バレルめっきによりAg電極上にNi及びSnめっき膜を施し、端子電極を形成した。次に両側鍔部の間に直径100μmの絶縁被覆導線を12回巻回し、導線の両端を前記2つの端子電極に高融点半田で半田付けし、インダクタンス素子とした。得られたインダクタンス素子を、予め作製し、前記端子電極部分との接続部分に低融点半田を印刷した評価用プリント基板に実装し、リフロー装置により半田付けした。評価用プリント基板を介してインダクタンス素子を評価し、目的とする特性が得られていることを確認した。
【0078】
(実施例3)
プレス成形金型として、図6に示したような片側が円柱、他の片側が断面が長辺と短辺を有する長方形である四角柱部を合わせたフェライト成形体3が得られるプレス成形金型2を用いて、他の条件は実施例1と同条件でドラムコア焼成体を1000ヶ作製した。得られたドラムコア焼成体は図1に示したような円形の鍔部11と略長方形の鍔部12を備えている。次に、略長方形鍔部の4角にディップ法によりAgペーストを鍔部の外面から側面を通じて内面に連続するように塗布乾燥させた後、実施例2と同様の条件で端子電極を形成した。次に両側鍔部の間に直径70μmの絶縁被覆導線を5回巻回した後、さらにもう1つの絶縁被覆導線を合わせ2本を5回巻回し、次に最初に巻回した絶縁被覆導線のみをさらに5回巻回した。
【0079】
次に、巻回数の多い方の導線の両端を、略長方形の1短辺の両端角部の端子電極に、巻回数の少ない方の導線の両端を、前記短辺と対向する短辺の両端角部の端子電極に、それぞれ高融点半田で半田付けした。さらに、略長方形鍔部と円形鍔部の外円を延長した面に挟まれた空間に、フェライト粉末が分散混合された耐熱性樹脂を充填することで、図11に示したようなトランス部品が得られた。得られたトランス部品を、予め作製した前記端子電極部分との接続部分に低融点半田を印刷した評価用プリント基板に実装し、リフロー装置により半田付けした。評価用プリント基板を介してトランス部品を評価し、目的とする特性が得られていることを確認した。また、漏洩磁束について、フェライト粉末が分散混合された耐熱性樹脂の充填をしたものとしなかったものを比較評価し、前記樹脂の充填によって漏洩磁束がより少ないことを確認した。
【0080】
(実施例4)
プレス成形金型として、図18に示したような片側が円柱と他の片側が半円柱と略四角柱を合わせたフェライト成形体60が得られるプレス成形金型を用いて、他の条件は実施例1と同条件でドラムコア焼成体を1000ヶ作製した。得られたドラムコア焼成体は円形の鍔部と半円と略四角形を合わせた形の鍔部を備えている。
【0081】
得られたドラムコア焼成体の内50ヶについて、略半円と略四角形を合わせた形状の、2角にディップ法によりAgペーストを鍔部の外面から側面を通じて内面に連続するように塗布乾燥させた後、実施例2と同様の条件でインダクタンス素子を得た。得られたインダクタンス素子を、予め作製し、前記端子電極部分との接続部分に低融点半田を印刷した評価用プリント基板に実装し、リフロー装置により半田付けした。評価用プリント基板を介してインダクタンス素子を評価し、目的とする特性が得られていることを確認した。また、実装面積は実施例2の場合に比べて約20%小さく、かつ実装する鍔部が半円と略四角形を合わせた形であるため、表面実装で使用するエンボステープへの挿入時に、パーツフィーダー等により方向性を容易に認識可能であった。
【0082】
(比較例1〜3)
比較例1として、実施例1に記載のプレス条件を変えて、表2の試料No.11、12、13に示すように、四角柱部の成形体密度が円柱部に比べて8%を超える条件として、それぞれの条件で成形体を各30ヶ作製した。焼成後、外観評価を行ったところ、試料No.11の条件では30ヶ中6ヶで、試料No.12の条件では30ヶ中9ヶで、試料No.13の条件では30ヶ中13ヶについて、円柱部と四角柱部を合わせた境界近傍にクラックが認められた。
【0083】
比較例2として、実施例1に記載のプレス条件を変えて、表2の試料No.14、15、16に示すように、四角柱部の成形体密度が円柱部に比べて3%未満となる条件として、それぞれの条件で成形体を各30ヶ作製し、外観評価を行ったところ、試料No.14では30ヶ中16ヶで、試料No.15では30ヶ中10ヶで、試料No.16では30ヶ中9ヶについて、成形体の略四角形鍔部の欠けが顕著に認められた。
【0084】
比較例3として、実施例1に記載のプレス条件を変えて、表2の試料No.17、18、19に示すように、四角柱部の成形体密度が円柱部に比べて3%未満となり、かつ密度がNo.11〜13の略四角柱の密度と同程度と、比較的高密度の条件として、それぞれの条件で成形体を各30ヶ作製した。焼成後、外観評価を行ったところ、試料No.17の条件では30ヶ中16ヶで、試料No.18の条件では30ヶ中13ヶで、試料No.19の条件では30ヶ中10ヶについて、円柱部の外端面と外周の稜部にクラックが認められた。
【0085】
【表2】

【0086】
(実施例5〜11、比較例4、5)
実施例5〜11、比較例4、5として、実施の形態1のセンタレス加工機4の加工機構部分において、表3に示すように、傾く角度を0度(比較例4)、2度(実施例5)、3度(実施例6)、4度(実施例7)、5度(実施例8)、6度(実施例9)、7度(実施例10)、8度(実施例11)、10度(比較例5)にして、実施例1で得られたフェライト成形体各30ヶをセンタレス加工し、鍔部を形成した。これら各試料30ヶについて、加工品の略四角形鍔部の厚さと円形鍔部の厚さを投影機で測定し、厚さばらつきの指標として3σを算出し、表3に示した。角度2度〜8度では3σは略四角形鍔部の厚さで19μm以下、円形鍔部の厚さで25μm以下と小さく、特に角度4度〜6度ではではそれぞれ15μm以下、21μm以下とより小さく、加工精度が高い。他方、角度10度では、成形体の回転移動が加工途中で止まってしまい、全周に渡って切削加工できなかった。尚、両側鍔部の平均厚さは約300μmであった。角度0度では、円柱部の外周面の加工基準面への接触が不安定のため、研削位置がばらつくと推定できる。
【0087】
【表3】

【0088】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0089】
例えば、前記実施形態1、2において、片側が円柱と他の片側が四角柱を合わせた成形体、及び片側が円柱と他の片側が半円柱と略四角柱を合わせた成形体を例として説明したが、これに限定されるものではなく、他の形状の成形体を適用してもよい。要するに、成形体の高さの略半分程度が円柱形状であれば、円柱の外周面を利用することで、成形体の残りの略半分は、原理的に略四角柱に限らず、略多角形を含む自由度の高い形状の成形体を作製可能である。
【0090】
また、円柱は、円の直径と柱の高さを有し、前記直径と高さの大小関係は不問としている。従って、円板も円柱に含まれるものとする。同様に、略四角柱を含む略多角柱は、略多角形の辺の長さと柱の長さの大小関係は不問としている。よって、略多角板も略多角柱に含まれる。また、略多角形は略正多角形のみを意味するものではない。ここで、略四角形や略多角形で用いている略とは、それぞれの角部の全てまたは一部を直線状または円弧状に面取り加工している形状を含むことを意味している。
【0091】
また、略円柱は、センタレス加工が可能であれば、円柱に限らず楕円柱や直方体を半円柱で挟んだ形状などを含むことを意味している。
【0092】
また、センタレス加工時の傾く角度は、重力を利用して円柱の外周面及び多角柱の外側面を加工基準面に常時接触させればよい。
【0093】
また、研削装置では、側壁部47の内側面は、第2の外周面46bと垂直するように構成してあるが、センタレス加工が可能であれば、実質的に垂直することを意味している。
【0094】
なお、開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0095】
1,6 ドラムコア(フェライト磁心)
2,7 プレス成形装置
20,70 成形金型
20a 上壁面(上金型)
20b 下壁面(下金型)
21,71 上パンチ部
22,72 下パンチ部
21a、71a 下端面
22a、72a 上端面
241、741 下降制御部
242、742 上昇制御部
243、743 補助下降制御部
3 フェライト成形体
31 円柱部(第1部材)
32 四角柱部(第2部材)
4 センタレス加工機(研削装置)
41 研削加工刃
43 案内装置(支持手段)
46 支持部(支持面)
46a 第1の外周面(第1の面)
46b 第2の外周面(第2の面)
47 側壁部
47a 内側面
5 フェライト研削体
53 軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェライト材料を含む第1部材と、
該第1部材より大きい断面積を有し、該第1部材に連なり、フェライト材料を含む第2部材とを有し、
該第2部材は、前記第1部材の密度より3%〜8%大きい密度を有すること
を特徴とするフェライト成形体。
【請求項2】
前記第1部材は円板状をなし、
前記第2部材の断面は少なくとも2つの角部を有すること
を特徴とする請求項1に記載のフェライト成形体。
【請求項3】
前記第2部材は四角板状をなすことを特徴とする請求項1又は2に記載のフェライト成形体。
【請求項4】
前記第2部材の断面は長方形をなすことを特徴とする請求項3に記載のフェライト成形体。
【請求項5】
前記第2部材の断面は円弧と直線からなる形状をなすことを特徴とする請求項1又は2に記載のフェライト成形体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のフェライト成形体を、第1部材と第2部材とが連なる部分が前記第1の部材よりも小径になるように研削してなることを特徴とするフェライト研削体。
【請求項7】
請求項6に記載のフェライト研削体を焼成してなることを特徴とするフェライト磁心。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載のフェライト成形体を成形する方法であって、
柱状の第1のパンチ部と、該第1のパンチ部と対向する柱状の第2のパンチ部と、前記第1及び第2のパンチ部が進退する穴部が形成された金型とを備える成形装置の前記金型の穴部に、フェライトを含む顆粒を充填する第1の工程と、
前記第1のパンチ部を進めて前記顆粒に押圧力を加える第2の工程と、
前記第2のパンチ部を進めて前記顆粒に押圧力を加える第3の工程と、
前記第1の工程で進めた第1のパンチ部の端面よりも前記第2のパンチ部に近い位置まで、該第1のパンチ部を進める第4の工程と
を有することを特徴とする成形方法。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか1項に記載のフェライト成形体を、該フェライト成形体を支持面にて支持する支持手段と、外周面を前記支持面に対向させる円板状の回転研削刃とを備え、前記支持面は、前記回転研削刃の軸方向の一端側にある第1の面と、前記回転研削刃の軸方向の他端側にあり、前記第1の面よりも前記回転研削刃に近い第2の面とを有する研削装置を用いて研削する方法であって、
前記フェライト成形体の第2部材が前記第1の面と対向するように、該フェライト成形体の第1部材を前記第2の面に載せて前記フェライト成形体を支持する支持工程と、
前記回転研削刃を回転駆動して、前記フェライト成形体の第1部材と第2部材とが連なる部分を研削する工程と
を備えることを特徴とする研削方法。
【請求項10】
前記支持手段は、前記第1の面の前記第2の面と反対側に側壁部をさらに有し、
該側壁部は、前記回転研削刃の軸端面と略平行する内側面を備え、
前記研削装置は、前記側壁部の内側面が鉛直方向に対して傾くように配置されており、
前記支持工程は、前記第2部材の外端面が前記側壁部の内側面と当接するように前記フェライト成形体を支持すること
を特徴とする請求項9に記載の研削方法。
【請求項11】
請求項8に記載の成形方法で成形してあるフェライト成形体に対して、請求項9または10に記載の研削方法で研削したフェライト研削体を焼成してフェライト磁心を得る焼成工程をさらに備えることを特徴とする製造方法。
【請求項12】
柱状の第1のパンチ部と、
該第1のパンチ部と対向する柱状の第2のパンチ部と、
前記第1及び第2のパンチ部が進退する穴部が形成された金型と、
前記第1のパンチ部を前記穴部の第1位置まで進める第1の制御手段と、
該第1の制御手段による動作後に、前記第2のパンチ部を前記穴部の第2位置まで進める第2の制御手段と、
該第2の制御手段による動作後に、前記第1のパンチ部を前記穴部の第1位置と第3位置との間の第2位置までさらに進める補助制御手段と
を備えることを特徴とする成形装置。
【請求項13】
前記第2のパンチ部は、前記第1のパンチ部の軸断面積よりも小さい軸断面積を有し、
前記穴部は、前記第1のパンチ部が進退する第1の穴、及び前記第2のパンチ部が進退する第2の穴を有すること
を特徴とする請求項12に記載の成形装置。
【請求項14】
前記第1のパンチ部の下端面は前記第2のパンチ部の上端面と対向するように構成してあることを特徴とする請求項12又は13に記載の成形装置。
【請求項15】
被研削物を支持面にて支持する支持手段と、外周面を前記支持面に対向させる円板状の回転研削刃とを備える研削装置において、
前記支持面は、前記回転研削刃の軸方向の一端側にある第1の面と、
前記回転研削刃の軸方向の他端側にあり、前記第1の面よりも前記回転研削刃に近い第2の面とを有すること
を特徴とする研削装置。
【請求項16】
前記第1の面の前記第2の面と反対側に側壁部をさらに有し、
該側壁部は、前記第2の面と略垂直する内側面を備えること
を特徴とする請求項15に記載の研削装置。
【請求項17】
前記側壁部の内側面が鉛直方向に対して傾くように構成してあることを特徴とする請求項16に記載の研削装置。
【請求項18】
前記内側面が鉛直方向に対して2度〜8度傾くように構成してあることを特徴とする請求項17に記載の研削装置。
【請求項19】
前記内側面が鉛直方向に対して4度〜6度傾くように構成してあることを特徴とする請求項18に記載の研削装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−135758(P2010−135758A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241472(P2009−241472)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】