説明

フォトムービーの編集条件設定装置及び編集条件設定プログラム

【課題】 フォトムービーの注文時に、顧客自身が行う編集条件の入力に要する手間を軽減する。
【解決手段】 フォトムービーの編集条件を入力する際、切り出された静止画の一部を拡大表示するズームエフェクト又はパーンエフェクトが選択されると、静止画を切り出す対象となる切り出し領域の設定が行われる。切り出し領域は、ユーザーにより予め指定され、切り出し領域内に人物の顔画像が検出された場合は、顔画像の位置及び大きさに基づいて、見映えのよい最適な余白を有する切り出し領域になるように自動的に調整される。切り出し領域内で顔画像が検出されない場合、手動調節により位置及び大きさを変更する。手動調節を行う際には、切り出し領域の大きさは、予め決められた大きさを上回るように制限され、過度に拡大倍率が高くなることによるフォトムービーの品質の低下が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素材となる静止画から動画として観賞されるフォトムービーを作成するための編集条件を設定するフォトムービーの編集条件設定装置及び編集条件設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
フォトムービーは、デジタルカメラ等を用いて記録された静止画を加工編集して特殊効果を施すことにより、素材の静止画を動画に変換したものである。この特殊効果には、静止画の一部の領域に注目してズームイン/ズームアウトする電子ズーム効果、クローズアップした状態で画像をスクロールさせる電子パーン効果、画像を縮小表示して直線又は曲線状に移動させる移動効果、特定の一点を中心に画像を回転させる回転効果、歪み(スキュー)を与える歪曲効果、これらを組み合わせた複合効果等がある。
【0003】
フォトムービーでは、これらの特殊効果を使用して静止画に対する視点を擬似的に変化させることにより、特定の注目被写体を演出することや、画像を躍動的に表現することができる。また、複数の画像を同時に表示するマルチ画面効果、アニメーション画像や装飾画像、字幕の合成による視覚効果が併用されることや、これらの特殊効果を与えずにスライドショーとして画像を表示するものなど、その表示形態には様々なものがある。なお、以下の説明では、これらの特殊効果をエフェクトと称する。
【0004】
特許文献1及び非特許文献1には、フォトムービーを作成するためのソフトウェアについて記載されている。これらのソフトウェアでは、フォトムービーの素材となる静止画を選択した後に、再生順序やエフェクトの種類等からなる編集条件を設定することでフォトムービーを作成することができる。作成されたフォトムービーは、これらのソフトウェア上で観賞することができる。また、フォトムービーの映像を汎用的なデジタル動画フォーマットに変換し、DVD等の光ディスクに記録すれば、上記ソフトウェアを用いることなく、家庭用DVDプレイヤー等でフォトムービーを観賞できる。
【0005】
非特許文献1に記載されたソフトウェアには、全ての画像の編集条件をユーザーが設定できるマニュアル編集モードと、素材とする画像を選択するだけでフォトムービーが自動的に作成される自動編集モードが用意されている。自動編集モードでは、静止画の選択順で再生順序が決定され、各画像のエフェクトの種類等はプログラムにより自動で設定されるので、操作手順が非常に簡単になる。
【特許文献1】特開平10−200843号公報
【非特許文献1】株式会社デジタルステージ LIFE* with-Photo-Cinema [平成16年4月6日検索]インターネット<URL:http://www.digitalstage.net/jp/product/life/index.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の自動編集モードは、画像の内容に基づいて適切にエフェクトが設定されるものではないため、電子ズーム効果や電子パーン効果のように画像を拡大表示するエフェクトが選択されたときに、人物の被写体を無視した映像になることがあり、ユーザーの希望する作品が得られにくいという欠点がある。また、従来のマニュアル編集モードを使用してこのような事態を回避しようとすると、画像を拡大表示するために切り出される静止画の特定の一部を決める切り出し領域の位置や大きさをユーザーが詳細に設定しなければならず、各画像の人物を画面上でバランスよく表示させるためには、大変な手間がかかるという問題がある。また、人物に限らず、風景や建物等を注目被写体にする場合もあることから、ユーザーの希望する作品を得るためには編集作業に多大な労力を要するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を考慮してなされたもので、マニュアル編集モードを用いて人物の被写体を見映えよく表示するために必要な編集作業の手間が従来に比べて軽減でき、風景や建物等の人物以外の被写体を注目被写体にすることができ、ユーザーの希望する作品をより簡単に作成できるようにしたフォトムービーの編集条件設定装置及び編集条件設定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、静止画の一部を切り出してこれに加工編集処理を施して前記静止画を素材とするフォトムービーを作成する際に、前記静止画の一部を切り出す対象となる切り出し領域を前記フォトムービーの編集条件として設定するフォトムービーの編集条件設定装置において、前記静止画から人物の顔画像を検出する顔画像検出手段と、ディスプレイの表示画面に表示された前記静止画上で前記切り出し領域を指定するための切り出し領域指定手段と、前記切り出し領域内に前記顔画像が存在するか否かを判定する顔画像判定手段と、前記切り出し領域内に前記顔画像が存在する時に、前記切り出し領域内の顔画像の位置及び大きさの少なくとも一方に基づいて前記切り出し領域を調整する切り出し領域調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
前記切り出し領域指定手段は、前記静止画上にある1つの任意のポイントが指定されることにより、指定されたポイントを基点として所定の大きさを有する切り出し領域を画定することを特徴とする。
【0010】
前記顔画像検出手段は、前記切り出し領域内の画像から前記顔画像を検出することを特徴とする。
【0011】
前記切り出し領域内の画像を拡大表示させる場合には、前記切り出し領域内の画素数が予め決められた基準値よりも小さい時に、前記切り出し領域の大きさが前記基準値を上回る画素数となるように調整する画素数調整手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
前記切り出し領域調整手段による切り出し領域の調整を実行するか否かを選択するための領域調整選択手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
前記顔画像検出手段によって顔画像が検出された静止画に対し、画質補正処理を行う第1の画質補正手段を備えたことを特徴とする。
【0014】
記憶媒体から前記静止画の画像データを読み出す画像読み出し手段と、前記編集条件の設定を行う前に、読み出された画像データに画質補正処理を行う第2の画質補正手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の編集条件設定プログラムは、静止画の一部を切り出してこれに加工編集処理を施して前記静止画を素材とするフォトムービーを作成する際に、前記静止画の一部を切り出す対象となる切り出し領域を前記フォトムービーの編集条件として設定する処理をコンピュータに実行させるものであり、前記静止画から人物の顔画像を検出する顔画像検出手段と、ディスプレイの表示画面に表示された前記静止画上で前記切り出し領域を指定するための切り出し領域指定手段と、前記切り出し領域内に前記顔画像が存在するか否かを判定する顔画像判定手段と、前記切り出し領域内に前記顔画像が存在する時に、前記切り出し領域内の顔画像の位置及び大きさの少なくとも一方に基づいて前記切り出し領域を調整する切り出し領域調整手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、画像の拡大表示を伴う電子ズーム効果、電子パーン効果のように、切り出し領域を設定する必要のあるエフェクトに関する編集条件を設定する場合に、ユーザーにより指定された切り出し領域内に、静止画から検出された人物の顔画像が存在するか否かを判定し、切り出し領域内に顔画像が存在すると判定された場合には、顔画像の位置又は大きさの少なくとも一方に基づいて切り出し領域が調整されるから、人物に注目した最適な切り出し領域を簡単に設定でき、人物の顔を見映えよく画面内に収めたフォトムービーを得ることができるる。また、風景や背景の一部に注目した切り出し領域を設定することができ、ユーザーの多くの意図を反映させたフォトムービーを得ることができる。
【0017】
また、ユーザーにより切り出し領域を指定する操作がなされる際、静止画上の任意の1点が指定されることで指定されたポイントを基点とする所定の大きさの切り出し領域が画定されるから、切り出し領域の指定が簡単になる。
【0018】
また、画面に表示された静止画上で切り出し領域を指定し、この切り出し領域内の画像から顔画像を検出するようにしたので、静止画全体から顔画像を検出する場合に比べて顔画像の検出に要する時間を短縮できる。
【0019】
また、予め決められた基準値を下回る画素数の切り出し領域を指定できないようにしたから、過度に小さい切り出し領域が指定された時に、切り出し領域内の画像が拡大される倍率が極端に大きくならず、表示される画像が粗くなる画質の劣化によってフォトムービーの品質が低下することを防止できる。
【0020】
また、切り出し領域の調整を有効にするか無効にするかを選択できるようにしたから、切り出し領域内の画像から顔画像が検出された場合でも、人物と背景とをバランスよく収めた切り出し領域を設定でき、ユーザーのより多くの意図を反映させたフォトムービーを得ることができる。
【0021】
顔画像が検出された静止画に対して画質補正処理を行うことにより、顔画像が拡大表示された際の画像の粗さによるフォトムービーの品質の低下を小さくすることができる。
【0022】
記憶媒体から読み出される全ての静止画に対して画質補正処理を行うことにより、顔画像の検出精度を高めることができるとともに、編集条件の設定時にフォトムービーの品質を知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1において、フォトムービー注文受付システム10は、注文受付機11とフォトムービー出力機12とにより構成されている。注文受付機11とフォトムービー出力機12は同一のDPE店等の店舗内に設置され、店舗の構内ネットワーク(LAN)により互いに通信可能に接続されている。なお、注文受付機11がフォトムービー出力機12に対して遠隔地に設置される場合には、両者がインターネットを介して通信可能に接続されてもよい。
【0024】
注文受付機11は、顧客が注文内容を入力するための入力操作部15と、注文内容を表示するための表示部16とを備えている。入力操作部15は、表示部16の表示画面と一体に設けられたタッチパネルからなり、画面上に表示された選択キー等の位置に触れることで入力処理が行われる。メディア読取り部17は、顧客が持参した記憶媒体から画像データを読取るもので、メモリカード18とCD又はDVDの光ディスク19とからデータの読取りが可能である。メモリカード18は、デジタルカメラに着脱自在であり、撮影画像を保存するために用いられる。光ディスク19は、パーソナルコンピュータ等に保存された画像データがコピーされ、メモリカード18よりも多くの撮影画像を保存できる大容量記憶媒体である。
【0025】
通信部21は、注文受付機11とフォトムービー出力機12との間でデータの送受信を行う。レシート出力部22は、顧客が商品を受け取る際の引換証となるレシート23を発行する。レシート23には、顧客の注文内容を識別するための識別情報が印刷されている。この識別情報は、注文番号、注文を受付けた受付機の識別コード、商品の受渡し日時及び受渡し店舗を示す情報等がバーコードと文字でそれぞれ記録されている。
【0026】
制御部25及び編集条件設定部26は、注文受付機11に内蔵された記憶装置に格納されたオペレーティングシステムとフォトムービーの編集条件を設定する編集条件設定プログラムとをマイクロプロセサに実行させることによりそれぞれ実現される。この記憶装置は、例えばハードディスク記憶装置(HDD)又は多数のメモリチップからなるメモリユニットにより構成される。制御部25は、メディア読取り部17,通信部21等の各ハードウェアを制御し、入力操作部15でなされた操作に応じて各部の動作を管理する。
【0027】
編集条件設定部26では、顧客の入力操作等によりフォトムービーに使用する各静止画についてエフェクトの有無やその種類等の編集条件を設定するための処理が行われる。編集条件設定部26は、予め用意されたシナリオテンプレートに従って全ての静止画のエフェクトを自動的に決定する自動編集モードと、顧客の手動設定により画像ごとにエフェクトの設定が行われるマニュアル編集モードとを有する。自動編集モードのシナリオテンプレートには、季節や年間行事等のテーマ別に複数種類のものが用意されており、旅行用のテンプレート、結婚式や卒業式用のテンプレート、正月、ひなまつり、七夕、クリスマス用のテンプレートなどがある。テンプレートごとに、撮影画像に合成される装飾画像の種類や、選ばれやすいエフェクトが異なっている。
【0028】
プレビュー動画出力部28は、編集条件設定部26により設定された編集条件に基づいて、実際に作成されるフォトムービーと同様にエフェクトが付与されたプレビュー用フォトムービーを出力する。プレビュー動画出力部28は、メモリカード18や光ディスク19から読み出した撮影画像の画素数を小さくした低解像度画像を生成し、この低解像度画像からプレビュー用フォトムービーを作成する。低解像度画像を用いることで、プレビュー用フォトムービーの生成及び再生表示に要するマイクロプロセサの負荷が軽減される。プレビュー用フォトムービーは表示部16に表示され、その仕上がりの品質が顧客に伝えられる。
【0029】
編集条件設定部26は、シナリオデータ生成部29と、切り出し領域設定部30と、顔画像検出部31とを有している。シナリオデータ生成部29は、画像の再生順序、各画像のエフェクトの有無やその種類等が指定された編集条件を組み込んだシナリオデータを作成する。シナリオデータは、エフェクトの種類やその詳細な設定内容が画像データのファイル名に関連付けされることにより構成される。シナリオデータは、注文情報の一部として静止画の画像データとともにフォトムービー出力機12に送信される。
【0030】
切り出し領域設定部30は、静止画の一部を切り出して特殊効果を付与するための切り出し領域を設定する。この切り出し領域は、静止画の一部に注目してズームイン又はズームアウトを行うズームエフェクトや、クローズアップした状態で画像をスクロールさせるパーンエフェクト、静止画の一部を除いて暗転表示することにより静止画にスポットライトを当てたような効果を出すスポットライトエフェクト等、静止画中の注目被写体を演出したい場合に使用されるエフェクトのパラメータである。
【0031】
例えば、ズームエフェクトは、静止画全体を縮小又は等倍表示した状態から切り出し領域により定まる表示範囲の間で倍率を変化させて静止画を表示する。すなわち、切り出し領域により、ズームインの終了時の表示範囲、ズームアウトの開始時の表示範囲が定められる。また、パーンエフェクトでは、パーンの開始及び終了時にクローズアップされる画像の抽出範囲が定められ、スポットライトエフェクトでは、明るく表示される領域が定められる。ズームエフェクトやパーンエフェクトでは、フォトムービーを再生表示する表示デバイスの画面のアスペクト比に基づいてアスペクト比が固定された矩形の切り出し領域が設定され、スポットライトエフェクトや他のエフェクトでは切り出し領域の形状を円形等の他の形状に指定することができる。なお、ズームエフェクトでは、1つの切り出し領域が設定され、パーンエフェクトでは、複数の切り出し領域が設定される。これらの切り出し領域は、表示部16の画面上に切り出し枠F11(図4参照)として表示される。
【0032】
顔画像検出部31は、静止画中に存在する人物の顔画像を検出する。顔画像の検出が行われる際には、顔画像を検出する範囲が切り出し領域によって指定され、切り出し領域内の顔画像が検出される。顔画像の検出処理は、静止画の画素ごとの色情報に基づいて肌色である皮膚が識別され、さらに瞳や眉毛、髪の有無から顔画像が識別される。また、顔の皮膚を示す肌色の画素と髪や眉毛、瞳を示す黒色の画素の配列パターンや、背景との輝度差等に基づき顔及び頭部の輪郭が識別され、その形状が特定される。
【0033】
切り出し領域設定部30には、顔画像検出部31により検出された人物の顔が見映えよく表示されるように、検出された顔画像に基づいて顔画像の天地左右の余白を最適にする切り出し領域を画定するための推奨余白データが記憶されている。様々な撮影シーンにより最適とされる余白が異なるため、推奨余白データは、例えば、素材の静止画が横長の画像である場合と縦長の画像である場合ごとに、検出された顔画像の数(人数)や、それぞれの顔の位置関係、顔画像が静止画全体に占める割合等の特徴情報に応じて分類されたものが予め用意されている。
【0034】
切り出し領域設定部30は、顔画像検出部31により検出された顔画像の特徴情報に基づき切り出し領域の位置及び大きさを調整する自動調整モードと、指定された切り出し領域を調整せず、顧客の入力操作をそのまま反映させる手動調整モードの2種類の動作モードを有している。自動調整モードと手動調整モードは、指定された切り出し領域に顔画像が存在するか否かにより切り替えられ、切り出し領域内に顔画像が存在する場合には自動調整モードに移行し、顔画像が存在しない場合には手動調整モードに移行する。
【0035】
なお、所定の入力操作を行えば、自動調整モードから強制的に手動調整モードに移行させることもでき、切り出し領域から顔画像が検出された後、これにより決まる切り出し領域の適否に応じて、顧客が自由に指定できる切り出し領域に変更できる。手動調整モードでは、指定される切り出し領域の最低限の大きさが制限されており、切り出し領域が包含する画素数の下限が基準値として定められている。これにより、過度に小さい切り出し領域が指定されることが防止される。
【0036】
画質補正部32は、画像データに対して色調補正等の画質補正処理を行う。画質補正処理には、メディア読取り部17から読取られた全ての画像データに対して一律に行われるセットアップ補正処理と、顔画像検出部31により人物の顔が認識された際に行われる高品位処理とがある。セットアップ補正処理では、全ての画像に対し、グレーバランスの調整、肌色画素の調子を整える色合い調整、コントラスト調整等の基本的な画質補正処理が行われる。高品位処理は、ズームエフェクトやパーンエフェクトのように、顔画像検出部31により人物の顔が存在する静止画に対して行われるもので、撮影時のレンズ性能に起因する歪曲や周辺減光の補正、赤目補正処理、ノイズ低減処理、シャープネス補正、ジャギー低減処理等の画像の品質を高めるための画質補正処理が行われる
【0037】
フォトムービー出力機12は、注文受付機11より送信された注文情報を受信する通信部35と、受信した注文情報が記憶される注文情報記憶部36と、注文情報に組み込まれたシナリオデータを解析し、送信された画像データに基づいてフォトムービーを出力するフォトムービー出力部37と、フォトムービーの映像を汎用的なデジタル動画フォーマットに準拠した映像に変換するビデオムービー変換部38とを備えている。なお、デジタル動画フォーマットの1つとして、フォトムービーをDVD映像として観賞できるように、MPEG2−DVD−Videoフォーマットが採用されている。
【0038】
制御部39は、予め組み込まれた注文処理プログラムに基づいて各部を制御することにより、注文情報の処理から商品の仕上げまでの一連の流れを管理する。メディア記録部40は、CD又はDVDからなる光ディスク41にフォトムービーのデータを記録する。ラベル印刷部42は、注文内容を識別するための識別情報とフォトムービーの内容を示すラベル画像を光ディスク41の表面にプリントする。
【0039】
次にフォトムービー注文受付システム10の作用について説明する。図2において、注文受付機11のメディア読取り部17に、静止画の画像データが記憶されたメモリカード18又は光ディスク19の記憶媒体がセットされると、制御部39がセットされた記憶媒体を検知し、画像データの読み込みが開始される。
【0040】
記憶媒体から画像データがコピーされると、画質補正部32によって全ての画像データに対してセットアップ補正処理が行われる。また、セットアップ補正処理がなされた画像データからサムネイル画像が生成され、このサムネイル画像が表示部16に一覧表示される。表示されたサムネイル画像を参考にしてフォトムービーの素材として用いる画像を選択することができ、全ての画像を使用するか、一部の画像を使用するかを決定する操作がなされる。
【0041】
画像の選択が終了すると、選択された画像を用いてフォトムービーを自動で作成する自動編集モードと、再生順序やエフェクトの種類等を顧客が選択できるマニュアル編集モードのいずれかを選択する操作がなされる。自動編集モードが選択されると、編集条件設定部26により、サムネイル画像の配列順に再生順序が決められ、各画像のエフェクトの有無やその種類が決定される。このとき、年間行事や季節等のテーマ別に予め用意されたシナリオテンプレートを選ぶことができる。
【0042】
マニュアル編集モードでは、画像の再生順序、各画像のエフェクトの有無、エフェクトの種類、エフェクトのかけ方を示す詳細設定等の編集条件を顧客が自ら設定する。読み込まれた画像のサムネイル画像が表示部16に一覧表示された状態で、入力操作部15を介して表示部16の画面上で画像の配列順を変更することにより画像の再生順序を決めることができる。また、所定の画像についてエフェクトを与えることを指定する項目が選択されることにより、そのエフェクトの詳細設定を行うためのステップに移る。
【0043】
エフェクトには、ズームエフェクト、パーンエフェクトのように拡大表示を伴うエフェクト、静止画の一部を除いて暗転させるスポットライトエフェクト、静止画を画面上に縮小表示して画面の端から端へ直線又は曲線状に移動させるムーブエフェクトや、前に表示された静止画を徐々に透明にして次に表示される画像を徐々に濃くするフェードインエフェクト、装飾画像や字幕を合成する合成エフェクト、これらを組み合わせた複合エフェクトなど、多くの種類が用意されている。以下の説明では、パーンエフェクトを選択した場合を例にして説明する。
【0044】
図3及び図4において、パーンエフェクトが選択されると、パーン動作の基点を指定するステップに移る。パーンエフェクトでは、パーン動作の基点として、パーン開始位置を示す始点、終了位置を示す終点となる切り出し領域が指定され、必要に応じて始点と終点の間の中継点を指定することができる。図4(b)に示すように、表示部16の画面上には、エフェクトを指定した静止画を表示する編集ウインドウW1と、切り出し領域によって切り出される画像を表示するプレビューウインドウW2と、エフェクトの詳細設定を行うための設定ウインドウW3とが表示される。パーン動作の基点を指定する際には、編集ウインドウW1の画面上で人物の顔を指定する。
【0045】
編集ウインドウW1には、パーンエフェクトが指定された編集対象画像として、例えば、人物の被写体A1及び被写体A2,風景の被写体A3が写る画像が表示される。設定ウインドウW3には、パーン動作の始点、終点、中継点を指定するための設定キーK1,K2,K3がそれぞれ表示される。また、自動調整モード時に、強制的に手動調整モードに切り替えるための手動調整キーK4と、顔画像検出部31により検出できなかった人物の顔を指定するときに、これを顔画像として顔画像検出部31に認識させる認識キーK5が表示される。パーン動作の始点を指定するためには、設定キーK1が操作される。表示部16の画面上には、編集ウインドウW1上のポイントを指定するように促すメッセージが表示される。
【0046】
パーン動作の始点が指定される際、顧客が被写体A1の顔をクローズアップすることを希望した場合には、被写体A1の顔の位置が指定される。編集ウインドウW1には、図4(b)に示すように、指定された座標を示すマークM1が表示され、マークM1を中心とする矩形状をした所定の大きさの切り出し領域が切り出し枠F11によって表示される。なお、切り出し領域、すなわち切り出し枠F11の大きさや形状は初期設定により決まっているが、変更することも可能である。
【0047】
顔画像検出部31は、切り出し枠F11の内部の顔検出処理を行う。顔検出処理により、切り出し領域内から被写体A1の顔が検出される。また、被写体A1の顔の輪郭が特定され、特定された輪郭に基づいて顔画像の認識範囲が反転表示される。顔画像の検出数より切り出し枠F11に含まれる人数が1人であることが特定される。切り出し領域設定部30は、被写体A1の顔の位置及び大きさに基づいて推奨余白データを参照し、最適な切り出し領域の位置及び大きさを算出する。切り出し枠F11は、最適化された切り出し枠F12に調整される。切り出し枠F12の中心は、顔の認識範囲の中心C1と同一である。プレビューウインドウW2には、切り出し枠F12によって切り出される画像が表示される。このように切り出し領域が決定し、パーン動作の始点の設定が終了する。
【0048】
図5において、次にパーン動作の終点の設定が行われる。顧客が被写体A2の顔をクローズアップすることを希望した場合には、被写体A2の顔の位置が指定される。編集ウインドウW1には、図5(b)に示すように、指定された座標を示すマークM2が表示され、マークM2を中心とする所定の大きさの切り出し領域が切り出し枠F21によって表示される。顔画像検出部31は、切り出し枠F21について顔検出処理を行う。しかし、被写体A2は横顔で写っているため、顔としての特徴が不足しているため、被写体A2の顔画像は検出ができない。従って、切り出し領域設定部30は、切り出し枠F21の内部には顔が存在しないものと判断し、切り出し枠F21を二重線で表示する。このとき、認識キーK5が点滅し、顔画像の検出のやり直しを促すメッセージが表示される。顧客は、切り出し枠F21が二重線で表示されたことと、認識キーK5が点滅したことにより、顔画像の検出が失敗したことを理解できる。
【0049】
そこで、人物の顔検出のやり直しを行うために認識キーK5が操作される。認識キーK5が操作されると、顔の位置を指定するように促すメッセージが表示される。顧客はメッセージに従い、被写体A2の顔の位置を指定し、指定された座標がマークM3によって表示される。顔画像検出部31は、指定された座標を示すマークM3の周辺に分布する肌色画素を検出し、肌色画素が集合した領域を顔とみなして、顔及び頭部の輪郭を特定する。これにより、被写体A2の顔画像が強制的に認識され、顔画像と推定された範囲が反転表示される。切り出し領域設定部30は、被写体A2の顔の位置及び大きさに基づいて推奨余白データを参照し、最適な切り出し領域の位置及び大きさを算出する。切り出し枠F21は、調整された切り出し枠F22として更新される。切り出し枠F22の中心は、顔の認識範囲の中心C2と同一である。プレビューウインドウW2には、切り出し枠F22によって切り出される画像が表示される。このように切り出し領域が決定し、パーン動作の終点の設定が終了する
【0050】
図6において、パーンエフェクトの中継点として、山の背景である被写体A3上の座標を指定する操作がなされると、その座標を示すマークM4とともに切り出し枠F31が表示される。顔画像検出部31は、切り出し枠F31によって画定される切り出し領域から顔画像の検出処理を行うが、山の背景である被写体A3から顔の特徴を見つけることはできないため、顔画像を検出することはできない。切り出し領域設定部30は、切り出し枠F31を二重線で表示する。このとき、手動調節キーK4が点灯し、手動調節モードであることが報知される。認識キーK5が点滅し、顔画像の検出のやり直しを促すメッセージが表示される。なお、認識キーK5を操作し、被写体A3の特定の座標を入力しても、顔画像を検出することはできず、切り出し枠F31は二重線で表示されたままになる。
【0051】
切り出し枠F31の内部には、切り出し枠F31の大きさを制限する制限枠RF1が表示される。切り出し枠F31は、画面上での操作によりその位置や大きさを変更できるが、制限枠RF1よりも小さく変更することはできず、切り出し枠F31の最小限の大きさが制限される。制限枠RF1は、切り出し枠F31内の画像が過度に大きい倍率で拡大表示されることによる画質の劣化を防止する役目をする。切り出し枠F31を手動調整し、位置及び大きさが決まると、これを確定する操作がなされる。
【0052】
このようにして、パーンエフェクトの始点、終点、中継点に関し、それぞれ切り出し枠F12,22,31を決定し、パーンエフェクトの詳細設定が終了すると、画質補正部32によりパーンエフェクトが指定された画像の高品位処理が行われる。高品位処理により、被写体A1,A2,A3を拡大表示したときに生じる画質の低下が小さくされ、フォトムービーの品質が損なわれることが防止される。なお、セットアップ補正処理や高品位処理では、人物の見映えを高めるのに適した画質調整が行われるため、被写体A3のような非人物の被写体に対しては、切り出し領域の設定時などに、色調補正等を別途行えるようにしてもよい。
【0053】
図7において、上述のようにパーンエフェクトの基点が設定されたフォトムービーは、被写体A1の顔がクローズアップされた映像から始まり、画面上で被写体A1から被写体A3に向かって画面が移動して擬似的なパーンが再現される。また、被写体A3がクローズアップされると、画面が被写体A2に向かって移動し、被写体A2の横顔をクローズアップした映像へ移行して終了する。なお、パーンエフェクトでは、切り出し枠F12等によって切り出された画像を画面全体に拡大して表示するため、切り出し枠F12等が小さくなればその分だけ拡大倍率は大きくなり、切り出し枠F12が大きければ拡大倍率が小さくなる。また、パーン動作の始点と終点の少なくとも2つの切り出し領域が指定されるため、例えば、切り出し枠F12,F22,F31の大きさが異なれば、パーン動作中に拡大倍率が変化することになる。
【0054】
図2において、その他の画像についてもエフェクトの有無、その種類等の設定がなされ、全ての編集条件の入力が終了すると、プレビュー動画出力部28によりプレビュー用のフォトムービーが作成される。プレビュー用フォトムービーは表示部16に表示され、顧客により確認される。編集条件の変更の必要がなければ次のステップに移る操作がなされ、氏名や住所等の個人情報を入力するステップに移る。これらの入力処理が終了すると、シナリオデータ生成部29により全ての編集条件を記録したシナリオデータが作成される。また、制御部25は、シナリオデータ、画像データ、顧客の個人情報、注文内容を識別するための識別情報等をまとめた注文情報を作成し、通信部21を介して注文情報をフォトムービー出力機12に送信する。
【0055】
注文情報の送信が終了すると、制御部39はレシート出力部22を作動させる。レシート出力部22が、注文内容の識別情報をプリントしたレシート23を発行すると、注文受付処理が終了する。
【0056】
注文情報を受信したフォトムービー出力機12では、注文情報に組み込まれたシナリオデータ及び画像データに基づいてフォトムービーが作成される。作成されたフォトムービーは、注文内容に基づき、DVD映像として観賞できるMPEG2−DVD−Videoフォーマット等の映像データに変換され、この映像データがメディア記録部40によりDVD等の光ディスク41に記録される。フォトムービーが記録された光ディスク41は、レシート23と引換に顧客に渡される。
【0057】
以上のように、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、注文受付機11とフォトムービー出力機12のように、編集条件の入力設定とフォトムービーの作成を別々の機器により分担して行うことに限らず、これらを1つの装置により行えるようにしてもよい。また、注文受付機11の機能と同等なアプリケーションプログラムを配布し、これを顧客が所有するパーソナルコンピュータに組み込むことにより、編集条件の入力設定とフォトムービーの注文を自宅からインターネット等の通信手段を介して行えるようにしてもよい。
【0058】
また、顔画像検出部31により複数の顔画像が複数検出された場合には、切り出し領域を決定する基準となる顔画像を指定するステップを追加することで、検出された顔画像の全て又は一部を自由に指定できるようにし、撮影シーンの多様な複数の静止画を素材とする場合であっても、簡単な操作でフォトムービーの編集条件を設定できるようにすることが好ましい。また、人物の顔画像を検出することに加え、人物の全身像、あるいは動物や植物、観光名所を例とする建造物や地形等が検出できるようにしてもよい。
【0059】
上記実施形態は、表示部16の画面と一体にしたタッチパネルによって入力操作部15を構成しているが、ポインティングデバイス等の他の入力装置により構成してもよい。切り出し領域を指定する際には、上記実施形態に示すように静止画上の1点の座標を指定することに限らず、矩形の対角線上に位置する2つの座標を指定して矩形の領域を直接指定するようにしてもよい。また、切り出し領域を指定した後に人物の顔画像を検出することに限らず、画像全体から人物の顔を検出した後に切り出し領域の指定が行えるようにすれば、検出されない顔画像の有無により、認識キーK5の操作を要するか否かが直ちに分かり、便利である。
【0060】
また、商品形態としては、DVDメディアにビデオムービー形式のデータを記録したものに限らず、例えば、フォトムービーのビューワーソフトをユーザーに配布し、このビューワーソフトをインストールしたコンピュータ上で再生できる形式のデータを記録してもよい。また、素材となる静止画は、デジタルカメラで記録された画像の他に、プリント写真や写真フイルムをスキャナーで読取って得られた画像や、ビデオカメラ等で撮影して得られた動画から抽出した1フレームの画像であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】フォトムービー注文受付システムの概略構成図である。
【図2】注文受付機の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】切り出し領域設定処理の流れを示す説明図である。
【図4】パーンエフェクトの始点設定時における画面の様子を示す説明図である。
【図5】パーンエフェクトの終点設定時における画面の様子を示す説明図である。
【図6】パーンエフェクトの中継点設定時における画面の様子を示す説明図である。
【図7】フォトムービーの映像の移り変わりを示す説明図である。
【符号の説明】
【0062】
10 フォトムービー注文受付システム
11 注文受付機
12 フォトムービー出力機
15 入力操作部
26 編集条件設定部
28 プレビュー動画出力部
29 シナリオデータ生成部
30 切り出し領域設定部
31 顔画像検出部
32 画質補正部
A1,A2,A3 被写体
F11,F12,F21,F22,F31 切り出し枠
W1 編集ウインドウ
W2 プレビューウインドウ
W3 設定ウインドウ
RF1 制限枠


【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止画の一部を切り出してこれに加工編集処理を施して前記静止画を素材とするフォトムービーを作成する際に、前記静止画の一部を切り出す対象となる切り出し領域を前記フォトムービーの編集条件として設定するフォトムービーの編集条件設定装置において、
前記静止画から人物の顔画像を検出する顔画像検出手段と、
ディスプレイの表示画面に表示された前記静止画上で前記切り出し領域を指定するための切り出し領域指定手段と、
前記切り出し領域内に前記顔画像が存在するか否かを判定する顔画像判定手段と、
前記切り出し領域内に前記顔画像が存在する時に、前記切り出し領域内の顔画像の位置及び大きさの少なくとも一方に基づいて前記切り出し領域を調整する切り出し領域調整手段とを備えたことを特徴とするフォトムービーの編集条件設定装置。
【請求項2】
前記切り出し領域指定手段は、前記静止画上にある1つの任意のポイントが指定されることにより、指定されたポイントを基点として所定の大きさを有する切り出し領域を画定することを特徴とする請求項1記載のフォトムービーの編集条件設定装置。
【請求項3】
前記顔画像検出手段は、前記切り出し領域内の画像から前記顔画像を検出することを特徴とする請求項1又は2記載のフォトムービーの編集条件設定装置。
【請求項4】
前記切り出し領域内の画像を拡大表示させる場合には、前記切り出し領域内の画素数が予め決められた基準値よりも小さい時に、前記切り出し領域の大きさが前記基準値を上回る画素数となるように調整する画素数調整手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし3にいずれか1つ記載のフォトムービーの編集条件設定装置。
【請求項5】
前記切り出し領域調整手段による切り出し領域の調整を実行するか否かを選択するための領域調整選択手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし4にいずれか1つ記載のフォトムービーの編集条件設定装置。
【請求項6】
前記顔画像検出手段によって顔画像が検出された静止画に対し、画質補正処理を行う第1の画質補正手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし5にいずれか1つ記載のフォトムービーの編集条件設定装置。
【請求項7】
記憶媒体から前記静止画の画像データを読み出す画像読み出し手段と、
前記編集条件の設定を行う前に、読み出された画像データに画質補正処理を行う第2の画質補正手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし6にいずれか1つ記載のフォトムービーの編集条件設定装置。
【請求項8】
静止画の一部を切り出してこれに加工編集処理を施して前記静止画を素材とするフォトムービーを作成する際に、前記静止画の一部を切り出す対象となる切り出し領域を前記フォトムービーの編集条件として設定する処理をコンピュータに実行させるフォトムービーの編集条件設定プログラムにおいて、
前記静止画から人物の顔画像を検出する顔画像検出手段と、
ディスプレイの表示画面に表示された前記静止画上で前記切り出し領域を指定するための切り出し領域指定手段と、
前記切り出し領域内に前記顔画像が存在するか否かを判定する顔画像判定手段と、
前記切り出し領域内に前記顔画像が存在する時に、前記切り出し領域内の顔画像の位置及び大きさの少なくとも一方に基づいて前記切り出し領域を調整する切り出し領域調整手段としてコンピュータを機能させることを特徴とするフォトムービーの編集条件設定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−146428(P2006−146428A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333454(P2004−333454)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】