説明

フォトリアクター

本発明の対象は、1個以上のLED発光体(7)がプラスチックマトリックス中に封入されているLEDプラスチック成形部材(6)を、フォトリアクターの内側に配置されている放射線源として備えているフォトリアクター(1)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDを有するプラスチック成形部材、特にHTVシリコーン成形部材を、場合によっては放射線源としての光伝導体成形部材と組み合わせて有するフォトリアクター、殊にLEDを有するプラスチック成形部材、特にHTVシリコーン成形部材を、場合によっては放射線源としての光伝導体成形部材を組み合わせて有するフォトバイオリアクターに関する。
【0002】
フォトリアクター、殊にフォトバイオリアクターには、微細藻類、例えばスピルリナSpirulina、クロレラChlorella、耐塩性緑藻ClamydomonasまたはヘマトコッカスHaematococcusの大工業的生産のために、光合成細菌類、例えばシアノバクテリア(例えば、ロドバクタRhodobacter、ロドスピリルムRhodospirillum)、苔または別の植物細胞培地が使用されている。この種の微細藻類およびシアノバクテリアは、光エネルギー、CO2および水によりバイオマスに変わる状態にある。この場合には、一般に2つの顔料集団に分けられており、この場合第1の顔料集団は、450nmの波長で良好な光吸収を有し、第2の顔料集団は、680nmの波長で良好な光吸収を有する。バイオマスは、光反応および暗反応で形成される。光反応は、放射線エネルギーを化学エネルギーまたは光量子に変えるために酸素の形成下で使用される(=水の光化学的分解)。バイオマス(CH2O)nは、2工程で光量子を使用して形成される(暗反応)。
【0003】
フォトバイオリアクターは、藻類バイオマスおよび例えば食物、食物サプリメント、蛋白質、脂質、ビタミン、酸化防止剤、医薬品および化粧品のための作用物質の生産のために藻類からの油に至るまで使用される。この場合、藻類の栽培のための炭素源としてのCO2は、空気、CO2の濃度が増加された空気、CO2含有排ガスまたは純粋なCO2としてフォトバイオリアクター中に供給されることができる。
【0004】
このようなフォトバイオリアクターは、CO2を排ガスから除去するために使用されてもよい。
【0005】
第一世代のフォトバイオリアクターは、太陽光を光源として利用する。リアクターは、大型の開いた槽装置、例えば45mまでの直径を有する円形の槽装置と回転する混合アームとからなる。この場合、太陽光の入射強度へ依存すること、および開いたシステムのために汚染がもたらされることは、不利である(www.ybsweb.co.jp: YAEYAMA Premium Quality Chlorella)。
【0006】
微細藻類を閉鎖された滅菌可能なリアクター中で生産するための世界的規模の最初のフォトバイオリアクタープラントは、2000年にBisantech社によって稼働された(www.bisantech.de)。この場合も、太陽光の入射強度へ依存することは、不利であると指摘された。
【0007】
人工的な照射部を有する閉鎖されたフォトバイオリアクターは、米国特許第6602703号明細書B2の記載から公知である。この場合には、リアクター中に平衡に配置された発光管が光源として使用される。この場合、比較的高いエネルギー需要および照射装置の汚染傾向は、不利である。米国特許第2006/0035370号明細書A1には、微生物および培地を植物成長のために含む第1の培養帯域と、この第1の帯域の片側を狭く制限しかつ培地および微生物を代謝物の生産のために含む第2の培養帯域とからなる、有利な代謝物を成長と結び付けて生産するための多層フォトバイオリアクターが記載されている。2つの培養領域は、互いに透明な分離壁によって分離されている。光源としては、既に上記した欠点を有する太陽光または人工光が使用されている。
【0008】
WO 92/00380A1の記載から、リアクターの外側に光源を設置し、この光源の光を光伝導体を介してリアクター中に輸送することにより、フォトバイオリアクターを照射することは、公知である。LED発光体(LED=Light Emitting Diode)または光ダイオードとも呼称される発光体をフォトバイオリアクターとして使用することは、公知である。米国特許第2005/0135104号明細書A1には、LEDsを海洋性培養のための培養容器を照明するためのLEDsを使用することが記載されている。この場合、LEDsは、透明なケーシング中に封入されている。LEDsを透明なプラスチックマトリックス中での埋設は、記載されていない。特開2007−040176号公報Aの記載から、リアクターを例えばLEDsにより人工的に照明するための電流供給を、藻類の培養のために風力装置によって保証することは、公知である。特開2000−325073号公報Aには、藻類を培養するための2つに分割された容器が記載されている。容器の2つの区分室は、LEDsを装備した導体板を含む構造によって分離されている。このLEDsを装備した導体板は、両側で透明な板により培地と分離されている。特開平10−098964号公報Aおよび特開平11−089555号公報Aには、照明のためにLEDsが使用されている藻類リアクターが記載されている。1つの実施態様において、LEDチェーンは、透明な管中に導入され、この管は、照明のためにリアクター中に沈下されている。別の実施態様において、LEDチェーンは、予め支持体上に溶接されており、次に透明な管中に導入される。特開2002−315569号公報Aには、藻類を生産するための方法が記載されており、この場合LEDsは、照明のために使用される。そのために、長いLEDチェーンは、アクリルガラス板の間に敷設されているか、または透明な管中に懸吊されている。LEDsをバイオリアクターのための光源として閉鎖されたリアクター中で使用することは、WO 2007/047805A2中に記載されている。照明を外側に存在するLEDsにより行なうことは、不利である。従って、媒体の放射は、不十分であり、数センチメートルの短い光路長だけが可能であり、量産のためには、大きな面積需要が必要とされる。
【0009】
従って、密閉系中での培養をできるだけ均一で最適な放射強度で全体積に亘って可能にするフォトリアクターを提供するという課題が課された。更に、光合成リアクターの生産性を高め、大工業的規模での生産を最適化するという課題が課された。更に、物理的影響、化学的影響または生物学的影響とも呼称される多種多様な環境の影響に長時間に亘って有効であるように耐えるような成形部材の形状でLEDsが提供されるはずである。もう1つの課題は、個別の発光体だけでなく、LEDsとその接続線との間の電気的接続を電流源で有効に環境の影響から保護することにあった。
【0010】
本発明の対象は、1個以上のLED発光体がプラスチックマトリックス中に封入されているLEDを有するプラスチック成形部材を、フォトリアクターの内側に配置されている放射線源として備えているフォトリアクターである。
【0011】
フォトリアクターとしては、閉鎖されたリアクターが好ましい。リアクターは、例えば鋼、特殊鋼、プラスチック、エナメルまたはセラミックからなる耐圧性で、場合によっては耐熱性のジャケットで完成されている。透明な材料および不透明な材料が使用されてもよく、閉鎖されたリアクターの場合には、好ましくは、不透明な材料が使用される。リアクターの容量は、任意に選択することができる。公知技術水準とは異なり、閉鎖されたリアクターの場合には、僅かな容量に制限することは、不要である。それというのも、放射線源として内側に配置されたLEDを有するプラスチック成形部材を用いた場合には、内部空間の均一な照明が達成され、それによってリアクターの寸法決定は、光路によって干渉されないからである。
【0012】
耐圧性の材料のために、ガラスまたは透明プラスチックからなるリアクターとは異なり、質量の積に対して底面積が節約される高度な構造形式が可能になる。このようなリアクター中に光を組み込むためのLEDを有するプラスチック成形部材の配置は、相応する場所の節約を有する塔状の高いリアクターに対して数多くのリアクターセグメントの組合せを可能にし、即ち極めて高い底面生産性を可能にする。更に、特に0.1〜5バールの過圧の範囲内での高められた圧力で作業することができる。フォトバイオリアクターの場合、よりいっそう高い圧力は、リアクターに供給されるCO2含有ガス中でのよりいっそう高いCO2分圧を必然的に引き起こし、このことは、媒体中でよりいっそう高いCO2平衡濃度を生じ、微細藻類中へのCO2輸送を促進させ、光合成反応の強化を必然的に引き起こす。CO2源としてCO2含有排ガスを使用する場合には、媒体中での平衡濃度は、同様に/付加的に高められ、それによって光合成および藻類の生長は、明らかに促進される。
【0013】
フォトバイオリアクターの底面積を節約する高度な構造形式によって、よりいっそう長いガス滞留時間に調節され(気泡の上昇速度は、不変のままである)、それによって本質的に良好なCO2濃度の減少が達成される。よりいっそう良好なCO2濃度の減少と共に、このようなプラントを用いた場合には、フォトバイオリアクターの排ガス中でのガスのよりいっそう高い濃度増加が得られてもよく、それによって例えば酸素の取得または水素を発生する藻類の場合には水素の取得も経済的に可能になる。更に、閉鎖されたリアクターは、水の場合に蒸発損失を減少させるかまたは阻止し、このことは、殊に地球上の水貧有の地域(乾燥地帯)において好ましい。
【0014】
また、LEDを有するプラスチック成形部材を、場合によってはフォトリアクターの内側に配置されている放射線源としての光伝導体成形部材との組合せで使用する場合には、もはや太陽光の依存性は全くあり得ない。
【0015】
リアクタージャケットの耐圧性および耐熱性の実施を耐熱性のLEDを有するプラスチック成形部材と関連させることによって、場合によってはよりいっそう高い温度でも作業させることができる。120℃で蒸気を用いてのリアクターの滅菌は、可能であり、それによって汚染の有効な回避ならびに遺伝子マニプレータ操作された微細藻類またはシアノバクテリアの使用も可能である。リアクターの清浄化は、同様に120℃でCIP("Cleaning in place")蒸気噴流によって極めて効果的に行なうことができる。
【0016】
リアクターは、充填および栄養素の供給のために供給管を備えており、生成物の分離および空にするために導出管を備えている。連続的な運転形式のためには、場合によっては外側の環状線を装備することが推奨されており、この環状線には、相分離装置または透析のためのモジュール、反転浸透装置ならびにマイクロ濾過装置またはナノ濾過装置が配置されている。熱導出および加熱のために、リアクターは、場合によっては二重ジャケット、リアクター壁上での半蛇管または内在する熱交換器を装備していてよい。更に、リアクターは、なお攪拌装置およびポンプを混合のために備えていてよい。特に、混合は、供給ガスを通気することによって、気泡塔と同様にエアリフト原理により付加的な機械的エネルギーなしに行なわれる。気泡塔/エアリフト型リアクターは、特に0.005〜2.0m/秒、特に有利に0.02〜0.2m/秒の範囲内のガス速度で運転される。特に、リアクターは、多数のリアクターユニットに分けられ、リアクターユニットは、重なり合って、有利にはずれて、スタック状に配置され、この場合リアクターユニットは、透過開口を介して互いに結合されている。この場合、リアクターセルは、フランジ(塔端部と同様)によって相互に結合されていてよいし、好ましくは、取り付け物(塔底面と同様)によって共通の外側ジャケット中に形成されていてよい。
【0017】
フォトバイオリアクターとして運転する場合には、例えば0.025 l/時間の藻類成長速度、水性リアクター媒体中の2.5質量%の藻類濃度および0.05m/秒のガス速度でCO2源としての典型的な発電所の排ガスを使用した際に最適なリアクター高さは、約20mである。
【0018】
放射線源としては、1個以上のLED発光体を1個以上のプラスチックマトリックス中に備えたLEDを有するプラスチック成形部材、特にLEDシリコーン成形部材が使用される。適したLED発光体は、有機または無機半導体の放射線を放出する半導体構造部材、所謂LEDsである。LEDsは、既にプラスチック、大抵の場合シリコーン、でカプセル化されたダイオードであるかまたはカプセル化されていないダイオードである。LEDsは、赤外範囲内、可視範囲内またはUV範囲内で放射することができる。この選択は、意図される用途に依存する。フォトバイオリアクター中での光合成のためには、可視範囲内で、殊に赤色光を放射するLEDsが好ましい。プラスチックマトリックス中に埋設されたLED発光体は、均一な波長で放出することができる。しかし、LED発光体は、異なる放射特性で互いに組み合わされてもよい。一般に、多数のLED発光体は、互いに導電的に結合され、直列および/または並列で接続されている。発光体装置は、センサーと結合されていてもよいし、測定/制御装置と結合されていてもよい。発光体の数および発光体の互いの配置は、発光体の用途に依存する。LED発光体は、連続的にかまたはパルス的に動作されてよい。電流供給は、任意であり、特にソーラーセルを用いて行なわれる。
【0019】
光伝導体は、透明な光透過性材料、多くの場合にガラスまたはプラスチックからなる繊維であり、この繊維は、光または赤外線の輸送に使用される。光伝導体の例は、光導波路、ガラス繊維、ポリマー光学繊維またはプラスチックからなる別の光伝導性構造部材ならびに繊維光学構成成分である。光伝導体は、光が光伝導体の全拡大部に亘って均一に放出されるように装備されている。場合によっては、光伝導体は、レンズを装備していてよく、光が光伝導体中への入射前に集光しかつ強化される。光伝導体成形部材を放射線源としてプラスチックLED成形部材と共に使用することは、日中での動作の際に好ましい。好ましいのは、熱可塑性シリコーンエラストマー(TPSE)を基礎とする光伝導体である。熱可塑性シリコーンエラストマーは、有機ポリマー含分、例えばポリウレタンまたはポリビニルエステルとシリコーン含分、多くの場合に上記規定に基づいてポリジアルキルシロキサンを基礎とするシリコーン含分とを含有する。適した熱可塑性シリコーンエラストマーは、例えばWacker Chemie AG社の相応するGeniomer(登録商標)タイプで市場で入手可能である。
【0020】
LEDを有するプラスチック成形部材および光伝導体の形状は、任意である。前記のLEDを有するプラスチック成形部材および光伝導体は、ホースの形で存在することができるか、テープ、管、板として存在することができるか、またはマットの形で存在することができる。
【0021】
板、マットまたはテープは、殊にLEDを有するプラスチック成形部材の場合に放射線源として、特にリアクターの内壁に放射線源を装備するために使用される。管またはホースの形の形状は、放射線源をリアクター内部空間内に取り付けるのに向いている。
【0022】
大型のリアクターの内部空間内に光を均一に供給するために、藻類懸濁液が周囲を流れかつ例えば管、ホースまたは板として形成されている多数のLEDを有するプラスチック成形部材は、管束、ホースの束または板の束としてまとめて光取り付け部材に変えることができる。発光体は、1つの特に好ましい実施態様において、周囲空間を完全に均一に照明するように、互いにずれて配置されていてよい(例えば、捩れていてよい)。
【0023】
LEDを有するプラスチック成形部材からなる管束の場合、隣接した成形部材表面と天然の太陽光入射にほぼ相当する光放出部との必要とされる距離は、成形部材表面に対して約1〜10cm、有利に2〜5cmである。
【0024】
また、フォトバイオリアクターは、LEDを有するプラスチック成形部材を管または板の形で備えていてもよく、このプラスチック成形部材は、藻類懸濁液によって貫流される。この場合、多数の管または板は、管束または板の束にまとめられていてよく、リアクターユニットを形成し、このリアクターユニットは、ジャケット空間内で冷媒によって貫流され、それによって冷却される。LEDを有するプラスチック成形部材または光伝導体成形部材の寸法決定は、任意であり、リアクターの寸法に適合させることができる。
【0025】
LEDを有する複数のプラスチック成形部材および/または複数の光伝導体成形部材の間の距離は、支持する光分布によってフォトリアクターの内側で"蛍光シリコーン浮遊体"によって調節される最適な波長および最小の密度差で増大させることができ、この蛍光シリコーン浮遊体は、特に単に通気によって懸濁される。この"蛍光シリコーン浮遊体"は、欧州特許第1412416号明細書B1または欧州特許第1489129号明細書B1の記載と同様に、例えば熱可塑性シリコーンエラストマーからなるシリコーンマトリックス中の1つ以上の蛍光物質からなる。
【0026】
LEDを有するプラスチック成形部材に適した材料は、熱可塑性プラスチックまたは熱硬化性プラスチック、例えばアクリルガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、ポリアミド、ポリエステル、例えばPETである。好ましいのは、シリコーンである。
【0027】
LEDを有するプラスチック成形部材では、LEDsは、完全にプラスチックマトリックス中に埋設されており、特にLEDs間の導電性結合部および特に有利に電流供給部でのLEDチェーンの接続部を含めて、前記のプラスチックマトリックスによって包囲されている。
【0028】
適したシリコーンの例は、架橋されたシリコーンゴムであり、このシリコーンゴムは、縮合反応または付加反応によってかまたはラジカル的に架橋する。架橋反応は、カチオン的に相応する触媒を用いて開始されうるか、またはラジカル的に過酸化物を用いて開始されうるか、或いは放射線、殊にUV線によって開始されうるか、または熱的に開始されうる。架橋されたシリコーンゴムを生じる系は、特に1成分系または2成分系として市場で入手可能であり、しかし多成分系としても市場で入手可能である。シリコーンハイブリッドポリマーおよびシリコーン樹脂も適している。シリコーンマトリックスの層厚は、LEDシリコーン成形部材の使用に依存し、一般に0.1〜50mmである。
【0029】
縮合架橋性シリコーンゴム系は、
a)縮合能を有する末端基を有するオルガノポリシロキサン、
b)場合によっては1分子当たり珪素に結合した少なくとも3個の加水分解可能な基を有する有機珪素化合物、ならびに
c)縮合触媒を含有する。
【0030】
縮合反応によって架橋する、適した架橋されたシリコーンゴムは、室温で架橋する1成分系、所謂RTV−1−シリコーンゴムである。RTV−1−シリコーンゴムは、触媒の存在下で縮合下に室温で架橋する、縮合能を有する末端基を有するオルガノポリシロキサンである。最も一般的に使用されているのは、n>2の鎖長を有する構造式R3SiO[−SiR2O]n−SiR3のジアルキルポリシロキサンである。アルキル基Rは、同一でも異なっていてもよく、一般に1〜4個のC原子を有し、および場合によっては置換されていてよい。アルキル基Rは、部分的に別の基、特に場合によっては置換されているアリール基によって置換されていてよく、この場合アルキル−(アリール)基Rは、部分的に縮合架橋能を有する基、例えばアルコール基、アセテート基、アミン基またはオキシム基によって交換されている。架橋は、適した触媒、例えば錫触媒またはチタン触媒により促進される。適したRTV−1−シリコーンゴム、例えばWacker Chemie AG社のELASTOSIL(登録商標)Aシリーズ、EシリーズまたはNシリーズの相応するタイプは、市場で入手可能である。
【0031】
縮合反応によって架橋する、適した架橋されたシリコーンゴムは、室温で架橋する2成分系、所謂RTV−2−シリコーンゴムである。RTV−2−シリコーンゴムは、ヒドロキシ基で数回置換されたオルガノポリシロキサンを珪酸エステルの存在下で縮合架橋することにより得られる。架橋剤としては、アルコキシ基、オキシム基、アミン基またはアセテート基を有するアルキルシランが使用されてもよく、このアルキルシランは、適した縮合触媒、例えば錫触媒またはチタン触媒の存在下でヒドロキシ基を末端に有するポリジアルキルシロキサンと架橋する。適した縮合架橋性RTV−2−シリコーンゴム、例えばWacker Chemie AG社のELASTOSIL(登録商標)RTシリーズの相応するタイプは、市場で入手可能である。
【0032】
RTV−1−シリコーンゴム中およびRTV−2−シリコーンゴム中に含有されているポリジアルキルシロキサンの例は、n>2の鎖長を有する式(OH)R2SiO[−SiR2O]n−SiR2(OH)のポリジアルキルシロキサンであり、この場合アルキル基Rは、同一でも異なっていてもよく、一般に1〜4個のC原子を含有し、および場合によっては置換されていてよい。アルキル基Rは、部分的に別の基、特に場合によっては置換されているアリール基によって置換されていてもよい。特に、ポリジアルキルシロキサンは、末端のOH基を含有し、このOH基は、珪酸エステルまたは系アルキルシラン/錫(チタン)触媒と室温で架橋する。
【0033】
RTV−1−シリコーンゴム中およびRTV−2−シリコーンゴム中に含有されている、加水分解可能な基を有するアルキルシランの例は、aが1〜3(有利に1)であり、かつXがR’’(アルコキシ架橋剤)、C(O)R’’(アセテート架橋剤)、N=CR’’2(オキシム架橋剤)またはNR’’2(アミン架橋剤)を意味する式RaSi(OX)4-aのアルキルシランであり、この場合R’’は、1〜6個の炭素原子を有する1価炭化水素基を表わす。
【0034】
付加架橋するシリコーンゴム系は、
a)脂肪族炭素−炭素多重結合を有する基を有する有機珪素化合物、
b)場合によってはSi結合した水素原子を有する有機珪素化合物またはa)およびb)の代わりに、
c)脂肪族炭素−炭素多重結合を有する基およびSi結合した水素原子を有する有機珪素化合物、
d)脂肪族多重結合へのSi結合した水素の付着を促進する触媒および
e)場合によっては脂肪族多重結合へのSi結合した水素の付着を室温で遅延させる薬剤を含有する。
【0035】
付加反応によって架橋する、適した架橋されたシリコーンゴムは、室温で架橋する2成分系、所謂付加架橋性RTV−2−シリコーンゴムである。
【0036】
付加架橋性RTV−2−シリコーンゴムは、ポリエチレン系不飽和基、特にビニル基、によって置換されたオルガノポリシロキサンと、Si−H基で数回置換されたオルガノポリシロキサンとを、白金触媒の存在下でPt触媒で促進させて架橋することによって得られる。
【0037】
特に、前記成分の1つは、一般にアルキル基中に1〜4個のC原子を有する、n≧0を有する構造式R3SiO[−SiR2O]n−SiR3のジアルキルポリシロキサンからなり、この場合アルキル基は、全体的または部分的にアリール基、例えばフェニル基によって置換されていてよく、末位の基Rの1端または両端で重合可能な基、例えばビニル基によって置換されている。同様に、シロキサン鎖中の基Rは、部分的に重合可能な基によって置換されていてよく、また末端基の基Rと組み合わせて重合可能な基によって置換されていてよい。好ましくは、構造式CH2=CH2−R2SiO[−SiR2O]n−SiR2−CH2=CH2のビニル末端封鎖されたポリジメチルシロキサンが使用される。
【0038】
第2の成分は、Si−H官能性架橋剤を含有する。通常使用されるポリアルキルハイドロジェンシロキサンは、ジアルキルポリシロキサンとm≧0、n≧0を有する一般式R'3SiO[−SiR2O]n−[SiHRO]m−SiR'3を有するポリアルキルハイドロジェンシロキサンとからなるコポリマーであり、但し、この場合には、少なくとも2個のSiH基が含有されていなければならず、その際R’は、HまたはRの意味を有することができる。それに応じて、側位のSiH基および末位のSiH基を有する架橋剤が存在し、一方で、末位にSiH基だけを有する、R’=Hを有するシロキサンも鎖長延長に使用される。
【0039】
架橋触媒としては、微少量の白金有機化合物が含有されている。
【0040】
適したRTV−シリコーンゴム、例えばWacker Chemie AG社のELASTOSIL(登録商標)RTまたはELASTOSIL(登録商標)LR(LSRシリコーンゴム)またはSEMICOSIL(登録商標)シリーズの相応するタイプは、市場で入手可能である。
【0041】
ラジカル架橋する適したシリコーンゴムまたは付加反応によって架橋する適したシリコーンゴムは、温度の上昇の際に架橋する固体シリコーンゴム(HTV)である。
【0042】
付加架橋性HTV−2−シリコーンゴムは、ポリエチレン系不飽和基、特にビニル基、によって置換されたオルガノポリシロキサンと、Si−H基で数回置換されたオルガノポリシロキサンとを、白金触媒の存在下で架橋することによって得られる。
【0043】
特に、過酸化的に架橋するかまたは付加架橋するHTVシリコーンゴムの成分の1つは、一般にアルキル基中に1〜4個のC原子を有する、n≧0を有する構造式R3SiO[−SiR2O]n−SiR3のジアルキルポリシロキサンからなり、この場合アルキル基は、全体的または部分的にアリール基、例えばフェニル基によって置換されていてよく、末位の基Rの1端または両端で重合可能な基、例えばビニル基によって置換されている。しかし、側位にビニル基を有するポリマーまたは側位および末位にビニル基を有するポリマーが使用されてもよい。好ましいのは、構造式CH2=CH2−R2SiO[−SiR2O]n−SiR2−CH2=CH2のビニル末端封鎖されたポリジメチルシロキサンならびになお側位にビニル基を有する前記構造式のビニル末端封鎖されたポリジメチルシロキサンである。付加架橋性HTVシリコーンゴムの場合、第2の成分は、ジアルキルポリシロキサンとm>0、n>0を有する一般式R'3SiO[−SiR2O]n−[SiHRO]m−SiR'3を有するポリアルキルハイドロジェンシロキサンとからなるコポリマーであり、但し、この場合には、少なくとも2個のSiH基が含有されていなければならず、その際R’は、HまたはRの意味を有することができる。それに応じて、側位のSiH基および末位のSiH基を有する架橋剤が存在し、一方で、末位にSiH基だけを有する、R’=Hを有するシロキサンも鎖長延長に使用される。架橋触媒としては、白金触媒が使用され、HTVシリコーンゴムは、1成分系としても加工され、この場合架橋反応は、温度上昇によって架橋触媒としての過酸化物、例えばアシル過酸化物、アルキル過酸化物またはアリール過酸化物の存在下で誘発される。過酸化物架橋性のHTVシリコーンゴムは、場合によってはエチレン系不飽和基、特にビニル基で数回置換されたオルガノポリシロキサンを架橋することによって得られる。適したHTVシリコーンゴム、例えばWacker Chemie AG社の相応するELASTOSIL(登録商標)RタイプまたはELASTOSIL(登録商標)Rプラスタイプは、市場で入手可能である。
【0044】
その上、最近、なお特殊なHTVシリコーンゴムおよびRTV−1−シリコーンゴムが市場で入手可能であり、これらのシリコーンゴムは、前記の付加反応により、特殊な白金錯体または白金/抑制剤系を熱的および/または光化学的に活性化し、それによって架橋反応を促進させることにより架橋される。この種の系は、例えばWacker Chremie AG社のELASTOSIL(登録商標)Rタイプ、ELASTOSIL(登録商標)RTタイプおよびSemicosil(登録商標)タイプとして入手可能である。
【0045】
また、適した材料は、シリコーンハイブリッドポリマーである。シリコーンハイブリッドポリマーは、有機ポリマーブロック、例えばポリウレタン、ポリ尿素またはポリビニルエステルと一般に上記種のポリジアルキルシロキサンを基礎とするシリコーンブロックとのコポリマーまたはグラフトコポリマーである。例えば、熱可塑性シリコーンハイブリッドポリマーは、欧州特許第1412416号明細書B1および欧州特許第1489129号明細書B1に記載されており、これらの関連する開示は、本願の対象でもある。この種のシリコーンハイブリッドポリマーは、熱可塑性シリコーンエラストマー(TPSE)と呼称され、例えばWacker Chemie AG社の相応するGENIOMER(登録商標)タイプとして市場で入手可能である。
【0046】
シリコーン樹脂は、同様にシリコーンマトリックスに適した材料である。一般に、シリコーン樹脂は、bが0、1、2または3であり、cが0、1、2または3である一般式Rb(RO)cSiO(4-b-c)/2の単位を含有し、但し、この場合b+cは、3以下であり、Rは、高度に架橋された有機珪素網状組織を形成する上記の意味を有する。適したシリコーン樹脂は、例えばWacker Chemie AG社の相応するSILRES(登録商標)タイプで市場で入手可能である。
【0047】
また、ラジカル形成剤またはカチオン光開始剤で硬化される、放射線硬化性アクリル官能性シリコーン、放射線硬化性エポキシ官能性シリコーンまたは放射線硬化性ビニルエーテル官能性シリコーンが適している。
【0048】
この場合、LED発光体が個々のシリコーンマトリックス中に埋設されている場合には、フォトリアクターの運転時間中に光効率が減少しないようにするために、シリコーンマトリックスは、シリコーンマトリックスは、リアクターの全運転時間に亘って完全に持続的にLED発光体に結合されていなければならない。この場合には、シリコーンの形が発光体に適合し、良好に付着し、および例えば生じる温度変動のためにマトリックスと発光体との間に空隙を全く形成しないシリコーンが特に好適である。好ましい材料は、前記のRTV−2−シリコーンゴム、殊にLSR−シリコーンゴム、HTVシリコーンゴムおよびシリコーンハイブリッドポリマー、殊にさらに上記したような熱可塑性エラストマーである。
【0049】
1つの好ましい実施態様において、LEDシリコーン成形部材は、内部の軟質シリコーンマトリックスAを含有し、この軟質シリコーンマトリックスAは、1個以上のよりいっそう硬質のシリコーンマトリックスBによって包囲されている。内側のシリコーンマトリックスAは、10以下のショアーA硬度(DIN 53505/ISO 868)で軟質であるか、または液状のシリコーン油が問題である場合には、1〜100×106mPa.sの平均粘度(23℃および1013ミリバールで)で軟質である。特に、ショアーA硬度は、5未満であり、或いは平均粘度(23℃および1013ミリバールで)は、10〜10×106mPa.sである。外側のシリコーンマトリックスBの場合、ショアーA硬度は、10を上廻り、内側のシリコーンマトリックスAが同様に標準条件(23/50 DIN 50014)で固体のシリコーンタイプからなる場合には、内側のシリコーンマトリックスAのショアーA硬度と外側のシリコーンマトリックスBのショアーA硬度との差は、少なくとも5個所、有利に少なくとも10個所、殊に少なくとも20個所のショアー硬度の測定点にある。
【0050】
外側のシリコーンマトリックスBは、上記材料を基礎とする。
【0051】
シリコーンマトリックスAは、発光体に向かって最適化されており、電子構造部材のための保護機能(衝撃吸収)と共に光収量を最適化し(屈折率の適合)、および熱導出を簡易化する。更に、発光体が持続的に発光体の全動作時間中にシリコーンマトリックスによって堅固に包囲されたままであり、拡散する光散乱効果をまねく空気および水の封入が阻止されることは、重要である。
【0052】
内側のシリコーンマトリックスAに好ましい材料は、一般にn>2の鎖長を有する構造式R3SiO[−SiR2O]n−SiR3のジアルキルポリシロキサンであるシリコーン油である。アルキル基Rは、同一でも異なっていてもよく、一般に1〜4個のC原子を有し、および場合によっては置換されていてよい。アルキル基Rは、部分的に別の基によって、特に場合によっては置換されているアリール基によって置換されていてもよいし、分枝鎖状シリコーン油の場合には、トリアルキルシロキシ基によって置換されていてもよい。例は、メチルシリコーン油(CH33SiO[−Si(CH32O]n−Si(CH33、メチルフェニルシリコーン油それぞれn’+n’’>2を有する(CH33SiO[−Si(CH32O]n'−[−Si(C6H5)2O]n''−Si(CH33または(CH33SiO[−Si(CH32O]n'−[−Si(CH3)(C65)O]n''−Si(CH33、分枝鎖状メチルシリコーン油(CH33SiO[−Si(CH3)(OSi(CH33O]n−Si(CH33、分枝鎖状メチルフェニルシリコーン油(CH33SiO[−Si(C65)(OSi(CH33)O]n−Si(CH33である。アリール基の導入およびアルキル基とアリール基との比の調節により、当業者であれば、公知の方法でシリコーンマトリックスの屈折率を発光体に適合させることができる。更に、特に末端基には、官能化された("停止されていない")ポリジメチルシロキサン油が使用されてもよい。このようなシリコーン油は、市場で入手することができ、公知方法で製造可能である。商業的に入手可能なシリコーン油の例は、Wacker Chemie AG社のWacker Siliconoeleである。
【0053】
内側のシリコーンマトリックスAには、シリコーンゲルも適している。シリコーンゲルは、室温で触媒存在下で架橋する、注型可能な2つの成分から製造される。前記成分の1つは、一般に1〜4個のC原子を有する、一般にn≧0を有する構造式R3SiO[−SiR2O]n−SiR3のジアルキルポリシロキサンからなり、この場合アルキル基は、全体的または部分的にアリール基、例えばフェニル基によって置換されていてよく、末位の基Rの1端または両端で重合可能な基、例えばビニル基によって置換されている。同様に、シロキサン鎖中の基Rは、部分的に重合可能な基によって置換されていてよく、また末端基の基Rと組み合わせて重合可能な基によって置換されていてよい。好ましくは、構造式CH2=CH2−R2SiO[−SiR2O]n−SiR2−CH2=CH2のビニル末端封鎖されたポリジメチルシロキサンが使用される。
【0054】
第2の成分は、Si−H官能性架橋剤を含有する。通常使用されるポリアルキルハイドロジェンシロキサンは、ジアルキルポリシロキサンとm≧0、n≧0を有する一般式R'3SiO[−SiR2O]n−[SiHRO]m−SiR'3を有するポリアルキルハイドロジェンシロキサンとからなるコポリマーであり、但し、この場合には、少なくとも2個のSiH基が含有されていなければならず、その際R’は、HまたはRの意味を有することができる。それに応じて、側位のSiH基および末位のSiH基を有する架橋剤が存在し、一方で、末位にSiH基だけを有する、R’=Hを有するシロキサンも鎖長延長に使用される。架橋触媒としては、微少量の白金有機化合物が含有されている。前記成分を混合することによって、架橋反応は、開始され、ゲルが形成される。この架橋反応は、熱の作用によっておよび/または電磁線、特にUV線によって促進されうる。この場合、UV−LEDsそれ自体は、ゲルの架橋反応を誘発することができる。シリコーンゲルは、特に有利に50未満のショアー硬度00(DIN 53505/ISO 868)を有する軟質材料、多くの場合に有利には、10mm/10のDIN ISO 2137による侵入値(Penetraionswert)(底面が四分の一の円錐体9.38gおよび作用時間3秒間)を有する軟質材料である。適したシリコーンゲルは、例えばWacker Chemie AG社, Muenchen在の商品名WACKER SilGel(登録商標)で市場で入手可能である。
【0055】
LEDを有するプラスチック成形部材は、プラスチック加工において通常の技術を用いて、例えば注型、押出、流し込み成形、圧縮成形または射出成形を用いてLEDを有するプラスチック成形部材の形状に応じて製造される。LEDシリコーン成形部材は、場合によってはなお例えばシリコーン樹脂を基礎とするトップコートで被覆されてよい。
【0056】
リアクターの取り付け物の範囲内で多数のLEDを有するプラスチック成形部材を大型の発光器の内部空間内で最適化された構造的配置によって、大容量の発光器中での藻類バイオマスの経済的な量産が可能になる。LEDを有するプラスチック成形部材を用いた場合には、多数のLEDsをリアクター発光取り付け物にまとめることができ、それによってこの取り付け物は、大容量のリアクターの最適な内部照明を可能にする。
【0057】
LEDsをプラスチックマトリックス中に埋設したために、殊にシリコーンマトリックスの場合には、汚れおよび付着物形成は、明らかに減少される。更に、利点は、LEDシリコーン成形部材を使用することによって、フォトリアクター全体を121℃で少なくとも1時間の時間に亘って繰り返し蒸気滅菌することが可能になることにある。
【0058】
LEDを有するプラスチック成形部材をリアクター容積全体に亘って配置することによって、よりいっそう良好な熱導出が達成され、それによってLEDsは、外側配置で可能である場合によりも高い圧力および光収量で動作させることができる。
【0059】
フォトリアクターは、放射線誘発された化学反応のためのリアクターとして使用されることができる。フォトリアクターは、価値のある物質、例えばタンパク質、ビタミン、製薬学的作用物質、脂質、ならびに微細藻類を用いる、CO2、水および無機栄養素からの水素の独立栄養生物による生産および従属栄養生物による生産のために使用されることができる。更に、使用は、有機炭素源を与え(Zufuetterung)ながら価値のある物質を混合栄養生産することにある。CO2および水および無機栄養素からの藻類バイオマスの生産、および発電所の排ガスまたは工業排ガスからのCO2の除去。こうして製造された藻類バイオマスは、エネルギー原料、化学的原料、食品として適しており、および化粧学的用途および医学的用途に使用される。更に、リアクターは、光の形でエネルギー供給を必要とする微細藻類または微生物を用いて水素または別のガス状の物質交換物質を生産するための方法に適している。
【0060】
本発明は、図1〜3で例示的に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】管束またはホース束中にLEDシリコーン成形部材を備えたフォトバイオリアクター要素を示す略図。
【図2】気泡塔のフォトバイオリアクターを示す略図。
【図3】平衡に接続されたLEDを有するシリコーン管を備えた気泡塔リアクターを示す略図。
【0062】
図1は、管束またはホース束中にLEDシリコーン成形部材を備えたフォトバイオリアクター要素を示す略図である。
【0063】
フォトバイオリアクター要素1は、耐圧性のリアクタージャケット1aから構成されており、塔取り付け部材(特殊な塔底)の範囲内で光取り付け部材1bまたは特殊な場合には、同時にフォトバイオリアクター蓋であることができる光取り付けフランジを使用する。リアクタージャケット1aまたはフォトバイオリアクター蓋1bには、供給および導出のための接続管が配置されていてよい。光取り付け部材または光取り付けフランジ1bは、直ぐ次のフォトバイオリアクター要素のための通過開口2を備えている。
【0064】
フォトバイオリアクターは、通気された水性藻類懸濁液3で充填されており、このフォトバイオリアクターとガス側および懸濁液側で結合された、フォトバイオリアクターの下方にあるフォトバイオリアクター要素の通過開口の上方に存在する。この場合、気泡は、上昇し、微細藻類の液体循環、混合および懸濁を誘発する。
【0065】
光取り付け部材(光取り付けフランジ、特殊な場合にはフォトバイオリアクター蓋)1bは、LEDシリコーン成形部材6の平衡に接続された束5を備えており、このシリコーン成形部材は、一列に接続された赤色LEDs(赤色の点)7を有する。束5は、光取り付け部材(光取り付けフランジ、特殊な場合にはリアクター蓋)1bの管底面と注型シーリング剤により結合されている。
【0066】
図2は、気泡塔のフォトバイオリアクターである。
【0067】
図2は、図1に記載の多数のフォトバイオリアクター要素からなる塔リアクター9にまとめられたフォトバイオリアクターを示す。塔リアクター9の下端部から最も下方のリアクター成分9aに導管10およびガス分配器を介してCO2含有空気または発電所排ガスが供給される。上端部から導管11を介してCO2貧有の精製されたガスが流出するか、またはガス状の生成物が取り出されることができ、次の処理工程で分離されることができる。導管12を介して、水性藻類懸濁液は、取り出されることができる。藻類バイオマスは、マイクロ濾過/分離器ユニット13中で濃縮水として濃縮されることができる。1つの部分流は、微細藻類の濃縮を高めるために導管14を介して返送されることができる。水は、場合によっては栄養塩で濃度を増加させた後に、特に上方へフォトバイオリアクター中に供給され、マイクロ濾過/分離器ユニット13が設置されている場合には、透過水として分離される。1つの部分流は、場合によっては導管15を介して返送されることができる。塔リアクター9は、バッチ式、バッチ連続式(Feedbatchbetrieb)または連続輸送式(kontinuierlich)で運転されることができる。
【0068】
図3は、平衡に接続されたLEDを有するシリコーン管を備えた気泡塔リアクターを示す略図。図3は、LEDs16を装備した多数の透明なシリコーン管17を管束として平行に接続しかつ枠18と結合されているフォトバイオリアクターを示す。シリコーン管は、加熱/冷却系19で温度調節される。多数のこのようなフォトリアクター取り付け部材は、塔リアクターとして重なり合って接続されることができ、および/または攪拌エアリフト気泡塔リアクターまたはループリアクターに取り付けることができる。
【実施例】
【0069】
例1:
約2cmの2個のLEDシリコーン成形部材の間の間隔で、シリコーン中に埋設されたLEDテープ(接続効率8.4W;Vf=12V lf=700mA)からなる、それぞれ255個の下向きに立つLEDシリコーン成形部材(寸法(H×B×T)965mm×8mm×13mm)を有し、それぞれ1mの間隔で重なり合って配置された27個の光取り付け部材を有する、365mmの直径および28mの高さを有する特殊鋼からなる閉鎖された光合成管状リアクターを、藻類バイオマス(クロレラChlorella vulgaris)の独立栄養生物の生産のために滅菌条件下で完全に連続的に4週間の期間に亘って運転した。
【0070】
リアクターは、滅菌および冷却のために外側で溶接された半蛇管を備え、温度制御装置、圧力制御装置、ph制御装置および状態制御装置を装備していた。
【0071】
滅菌は、媒体(水+栄養塩)で充填された状態で121℃および過圧で1時間の期間に亘って行なわれた。このために、半蛇管に蒸気が6バールで貫流され、蒸気の供給は、リアクター中での温度調節により制御された。冷却の場合には、最初に通気が開始され、低圧の発生が回避された。引続き、リアクター中の運転温度は、二重ジャケット中への冷却水の供給により一定になるように調整され、27℃に調節された。リアクターの塔頂部で10ミリバールの弱い過圧に調節された。吸気、排気および水供給原料を滅菌濾過し、滅菌された捕集容器中の藻類懸濁液を空にした。
【0072】
このリアクターを、振盪フラスコ中で製造されたクロレラChlorella予備培養物で接種した。2%(20g/l)の乾燥バイオマス濃度が達成された後、連続的な運転に切り換えた。リアクター中で藻類含量2質量%を有する水性藻類懸濁液(藻類:クロレラ ブルガリスChlorella vulgaris)が静止状態を生じるように希釈速度を調節した。藻類への給水および栄養塩の供給のために、8.8 l/時間の連続的な供給水の流れが必要であった。このプラントにCO2 4.5体積%、O2 10.2体積%、H2O 10.8体積%およびN2 74.5体積%を含有する、CO2含有排ガス20Nn/時間を供給した。リアクターから流出する排ガスは、CO2 0.1%、O2 16.0%、H2O 2.9%およびN2 81.0%の組成を有していた。
【0073】
2%の藻類懸濁液を充填位置に来るように調整して、この藻類懸濁液を連続的にリアクターから取り出した。リアクターから毎日3回試料採取した。リアクターの生産性は、連続的な運転で毎時間1m3当たり乾燥藻類バイオマス0.4kgであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個以上のLED発光体がプラスチックマトリックス中に封入されているLEDプラスチック成形部材を、フォトリアクターの内側に配置されている放射線源として備えているフォトリアクター。
【請求項2】
LEDプラスチック成形部材としてLEDシリコーン成形部材が使用されている、請求項1記載のフォトリアクター。
【請求項3】
有機または無機半導体の放射線放出する半導体構造素子がLED発光体として使用されている、請求項1または2記載のフォトリアクター。
【請求項4】
LEDシリコーン成形部材が、互いに導電的に結合され直列および/または並列で接続された多数のLED発光体を備えている、請求項1から3までのいずれか1項に記載のフォトリアクター。
【請求項5】
光伝導体成形部材が放射線源としてプラスチックLED成形部材と共に使用されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載のフォトリアクター。
【請求項6】
光伝導体成形部材として熱可塑性シリコーンエラストマーを基礎とする光伝導体成形部材が使用されている、請求項5記載のフォトリアクター。
【請求項7】
フォトリアクター中で支持する光分布のためにプラスチックLED成形部材および/または光伝導体成形部材と共に蛍光シリコーン浮遊体が使用されている、請求項1から6までのいずれか1項に記載のフォトリアクター。
【請求項8】
LEDプラスチック成形部材および光伝導体が、ホースの形で存在するか、テープとして、管として、板として存在するか、またはマットの形で存在する、請求項1から7までのいずれか1項に記載のフォトリアクター。
【請求項9】
フォトリアクターが管、ホースまたは板として形成されている多数のLEDプラスチック成形部材を備え、前記LEDプラスチック成形部材が管束、ホース束または板の束として光取り付け部材にまとめられている、請求項1から8までのいずれか1項に記載のフォトリアクター。
【請求項10】
発光体を包囲するマトリックス中に組み込まれた発光体は、この発光体が周囲空間を完全に均一に照明するように互いにずれて配置されている、請求項1から9までのいずれか1項に記載のフォトリアクター。
【請求項11】
フォトバイオリアクターとしてLEDプラスチック成形部材が藻類懸濁液によって貫流される管または板の形で備えられており、この場合多数の管または板は、管束または板の束にまとめられ、およびリアクターユニットを形成し、このリアクターユニットがジャケット空間内で冷媒によって貫流されている、請求項1から10までのいずれか1項に記載のフォトリアクター。
【請求項12】
LEDプラスチック成形部材が架橋されたシリコーンゴム、シリコーンハイブリッドポリマーおよび/またはシリコーン樹脂を基礎とするLEDプラスチック成形部材である、請求項1から11でのいずれか1項に記載のフォトリアクター。
【請求項13】
LEDプラスチック成形部材が熱可塑性エラストマーからなる唯一のシリコーンマトリックスを有する、請求項1から12でのいずれか1項に記載のフォトリアクター。
【請求項14】
LEDプラスチック成形部材が、1つ以上のよりいっそう硬質のシリコーンマトリックスBによって包囲されている、内側の軟質シリコーンマトリックスAを備えている、請求項1から13までのいずれか1項に記載のフォトリアクター。
【請求項15】
プラスチックマトリックスがなおトップコートCを備えている、請求項1から14までのいずれか1項に記載のフォトリアクター。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項に記載のフォトリアクター中で放射線誘発された化学反応を実施するための方法。
【請求項17】
請求項1から15までのいずれか1項に記載のフォトリアクターを用いて藻類バイオマスを生産する方法。
【請求項18】
価値のある物質を藻類バイオマスを用いて独立栄養生物により生産し、および従属栄養生物により生産するための請求項17記載の方法。
【請求項19】
請求項1から15までのいずれか1項に記載のフォトリアクターを用いてCO2を発電所の排ガスまたは工業排ガスから除去する方法。
【請求項20】
請求項1から15までのいずれか1項に記載のフォトリアクターを用いて光の形のエネルギー供給を必要とする微細藻類または微生物により水素または別のガス状の物質交換物質を生産する方法。
【請求項21】
エネルギー原料、化学的原料、食品としての化粧学的用途および医学的用途への請求項1から15までのいずれか1項に記載のフォトリアクター中で生産された藻類バイオマスの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−530738(P2010−530738A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509830(P2010−509830)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056666
【国際公開番号】WO2008/145719
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】