説明

フォルトファインダーシステム

【課題】リニューアル工事の際に起こりうる不具合を工事担当者が速やかに気づき不具合箇所を特定するフォルトファインダーシステムを提供する。
【解決手段】フォルトファインダーシステムは、群管理されている複数台のエレベータをリニューアル工事するときに工事によって引き起こされる不具合を検出するフォルトファインダーシステムにおいて、上記複数台のエレベータのうち稼働中のエレベータの稼動に係わる電源または信号の状態を監視する監視制御盤(4)と、上記電源または信号に不具合が発生したとき不具合が発生した電源または信号を表示するとともに警報を発する表示盤(5)と、を備えるフォルトファインダー盤(1)を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータのリニューアル工事の際に起こる不具合を検出するフォルトファインダーシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの各機器の動作を監視し、復旧のための作業予定などを決定する保守作業等支援装置が提案されている。その保守作業等支援装置は、エレベータ監視端末装置がそれらの異常を検出して監視センタのセンタ監視装置に電話回線を介して故障検出情報を送信すると、センタ監視装置は受信した故障検出情報と記憶部から読み出した各種データに基づいて故障発生情報を生成し、この故障発生情報が電話回線を介して管轄の営業所の端末情報処理装置に送信されると、端末情報処理装置は受信した故障発生情報を基に故障の緊急度、難易度を判定し、作業員の作業予定の情報と作業員の能力評価を参照して当該エレベータの故障の復旧のために出向するのに最適な作業員を決定する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−329375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、群管理される多数台のエレベータをリニューアル工事するときにはエレベータが通常に稼動しているときとは異なる不具合が起こりうる。すなわち、リニューアル工事では群管理している全てのエレベータが停止してしまわないように一部のエレベータ毎に施工するため、交換対象のエレベータの制御盤を取り外すときに交換対象外で稼働中のエレベータの制御盤につながる信号線や電源線などに影響を与え、稼働中のエレベータが停止してしまうという問題がある。
また、制御盤を床から取り外すために床ハツリ作業など振動が伴う作業を行ったときに、振動により地震感知器を誤動作させてしまい稼働中のエレベータが停止してしまうという問題がある。
特に、稼働中のエレベータが停止したことに気づくのが遅れるとお客に多大な迷惑をかけてしまうという問題がある。
【0005】
この発明の目的は、リニューアル工事の際に起こりうる不具合を工事担当者が速やかに気づき不具合箇所を特定するフォルトファインダーシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るフォルトファインダーシステムは、群管理されている複数台のエレベータをリニューアル工事するときに工事によって引き起こされる不具合を検出するフォルトファインダーシステムにおいて、上記複数台のエレベータのうち稼働中のエレベータの稼動に係わる電源または信号の状態を監視する監視制御盤と、上記電源または信号に不具合が発生したとき不具合が発生した電源または信号を表示するとともに警報を発する表示盤と、を備えるフォルトファインダー盤を具備する。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るフォルトファインダーシステムの効果は、稼働中のエレベータの運転に係わる不具合が発生すると、不具合の箇所が表示されるとともに警報が発せられるので、フォルトファインダー盤の近くで作業している作業者は不具合が発生したことを知ることができる。そして、フォルトファインダー盤の表示盤に点灯しているボタンスイッチから不具合が発生した箇所を知ることができるので、復旧作業を直ちに始めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、この発明の実施の形態によるフォルトファインダーシステムの構成図である。図2は、この発明の実施の形態によるフォルトファインダー盤の外観図である。
この発明の実施の形態によるフォルトファインダーシステムは、図1に示すように、工事現場に携行されるフォルトファインダー盤1と、現場代理人、工事部門長および当日作業者が携帯する携帯電話機2と、情報センタに設置される監視装置3を備える。フォルトファインダー盤1から携帯電話機2にメールが送信される。
【0009】
フォルトファインダー盤1は、図1と図2に示すように、監視制御盤4、表示盤5、通信制御盤6、パトライト7を備える。
監視制御盤4は、受電盤用リレー盤11、共通リレー盤用リレー盤12、管制運転リレー盤用リレー盤13を備える。なお、監視対象の箇所が多いとき、適宜追加リレー盤を追加すれば良い。
【0010】
受電盤用リレー盤11は、4個のDC仕様のパワーリレー15および10個のAC仕様のパワーリレー16、パワーリレー15、16の入力側にそれぞれ接続される先端にワニ口クリップ17が付けられたペア線18、パワーリレー15、16の出力側にそれぞれ接続されるリードケーブル19、パワーリレー15、16に電源を供給する電源線20を備える。
共通リレー盤用リレー盤12は、8個のパワーリレー16、パワーリレー16の入力側にそれぞれ接続される先端にワニ口クリップ17が付けられたペア線18、パワーリレー16の出力側にそれぞれ接続されるリードケーブル19、パワーリレー16に電源を供給する電源線20を備える。
管制運転リレー盤用リレー盤13は、5個のパワーリレー16、パワーリレー16の入力側にそれぞれ接続される先端にワニ口クリップ17が付けられたペア線18、パワーリレー16の出力側にそれぞれ接続されるリードケーブル19、パワーリレー16に電源を供給する電源線20を備える。
【0011】
表示盤5は、フォルトファインダー盤1の電源をON/OFFする電源スイッチ23、27個の表示セット24、ブザー25、ランプリセットスイッチ26、ブザーリセットスイッチ27、ヒューズ28、制御部29を備える。電源スイッチ23、表示セット24、ブザー25、ランプリセットスイッチ26、ブザーリセットスイッチ27、ヒューズ28は、パネル30に取り付けられ、取り付けられたパネル30の下方に該当する名称が表示されている。
【0012】
表示セット24は、ボタンスイッチ31とLED表示灯32とが対になっており、ボタンスイッチ31とLED表示灯32とが直列に接続されている。ボタンスイッチ31は、ボタンを押す度にON/OFFを繰り返し、ONのときランプが点灯する。LED表示灯32はボタンスイッチ31がONのとき、ボタンスイッチ31に接続されているリードケーブル19からON信号が送られてくると点灯する。
【0013】
27個の表示セット24は、8個が管理内号機、4個がDC125V制御電源、5個がAC100V制御電源、5個がAC100V客先支給電源、5個が管制運転のグループとして分けられている。
管理内号機にグループ化された8個のボタンスイッチ31には、共通リレー盤用リレー盤12からのリードケーブル19が接続されている。DC125V制御電源にグループ化された4個のボタンスイッチ31には、受電盤用リレー盤11からのリードケーブル19が接続されている。AC100V制御電源にグループ化された5個のボタンスイッチ31には、受電盤用リレー盤11からのリードケーブル19が接続されている。AC100V客先支給電源にグループ化された5個のボタンスイッチ31には、受電盤用リレー盤11からのリードケーブル19が接続されている。管制運転にグループ化された5個のボタンスイッチ31には、管制運転リレー盤用リレー盤13からのリードケーブル19が接続されている。
【0014】
制御部29は、少なくともいずれか1つの表示セット24のLED表示灯32が点灯したとき、パトライト7を点灯するとともにブザー25を鳴動する。また、ブザーリセットスイッチ27からリセット信号が入力されたときブザー25の鳴動を停止し、ランプリセットスイッチ26からリセット信号が入力されたときパトライト7を消灯する。
また、制御部29は、点灯したLED表示灯32から不具合の内容を取り込み、現時刻を不具合の内容に添付して緊急メールとして通信制御盤6に送信する。
【0015】
通信制御盤6は、作業開始前に現場名、緊急連絡先、当日作業者名簿を入力する入力インターフェース35、表示盤5の制御部29からの緊急メールを受信したとき、緊急連絡先に現場名、当日作業者名簿、時刻が添付された不具合内容をメール発信するメール手段36を有する。
緊急連絡先としては、情報センタの監視装置3と、例えば現場代理人、工事部門長、当日作業者が携帯する携帯電話機2である。
【0016】
次に、この発明の実施の形態によるフォルトファインダーシステムを用いてリニューアル工事を監視する手順を説明する。
リニューアル工事を担当する工事作業者は工事現場にフォルトファインダー盤1を携行する。そして、工事作業者のうちのオペレータは、作業開始前に通信制御盤6の入力インターフェース35から現場名、緊急連絡先、当日作業者名簿を入力する。
また、オペレータは、エレベータ群管理盤40に備わる受電盤41および共通リレー盤42、管制運転リレー盤43の回路図に基づき受電盤用リレー盤11、共通リレー盤用リレー盤12および管制運転リレー盤用リレー盤13の該当するペア線18を、受電盤41、共通リレー盤42および管制運転リレー盤43の該当する回路にワニ口クリップ17で挟むことにより接続する。
【0017】
図3は、この発明の実施の形態によるフォルトファインダーシステムで監視する受電盤の回路図である。
例えば、図3に示される回路図の受電盤41の場合、受電盤41のDCRAおよびDCRBの回路に受電盤用リレー盤11のDC仕様のパワーリレー15に接続されるペア線18、受電盤41のRAC、RAT、RBC、SIGM、SIGNおよびEMの回路に受電盤用リレー盤11のAC仕様のパワーリレー16に接続されるペア線18を接続する。
【0018】
図4は、この発明の実施の形態によるフォルトファインダーシステムで監視する共通リレー盤の回路図である。
例えば、図4に示される回路図の共通リレー盤42の場合、共通リレー盤42の1号機用リレー、2号機用リレー、3号機用リレー、4号機用リレー、5号機用リレー、6号機用リレーに並列に共通リレー盤用リレー盤12のパワーリレー16に接続されるペア線18を接続する。
【0019】
図5は、この発明の実施の形態によるフォルトファインダーシステムで監視する管制運転リレー盤の回路図である。
例えば、図5に示される管制運転リレー盤43の場合、管制運転リレー盤43のP波感知器に直列に接続されているP波用リレー、総括回路のリレーに並列に管制運転リレー盤用リレー盤13のパワーリレーに接続されるペア線18を接続する。
また、管制運転リレー盤43の図示しない火災報知機と機械室の図示しない温度計が接続される管制運転リレー盤43の図示しない端子盤に管制運転リレー盤用リレー盤13のパワーリレー16に接続されるペア線18を接続する。
【0020】
また、表示盤5のボタンスイッチ31の内、監視対象に接続したペア線18に対応する表示セット24のボタンスイッチ31を押す。すると、ボタンスイッチ31のランプが点灯し監視中であることが分かる。図2でボタンスイッチ31のランプを灰色に塗りつぶしたランプが点灯していることを表す。
【0021】
次に、上述のようにフォルトファインダー盤1を現場で設定しリニューアル工事を行ったとき、例えば、受電盤41のDCRAのヒューズが切れたときのフォルトファインダー盤1の動作について説明する。
受電盤41のDCRAのヒューズが切れると、該当する受電盤用リレー盤11のDC仕様のパワーリレー15が作動してON信号を表示盤5のDC125V制御電源にグループ化されたDCRAと表示された表示セット24のボタンスイッチ31に送られる。このDCRAの表示セット24のボタンスイッチ31はONされているので、LED表示灯32が点灯する。
LED表示灯32が点灯すると、表示盤5の制御部29がパトライト7を点灯しブザー25を鳴動する。
受電盤41のDCRAのヒューズが切れると、このようにしてパトライト7が点灯しブザー25が鳴動するので、フォルトファインダー盤1の近くで作業している作業者は不具合が発生したことを知ることができる。そして、フォルトファインダー盤1の表示盤5に点灯しているボタンスイッチ31から不具合が発生した箇所を知ることができるので、復旧作業を直ちに始めることができる。
【0022】
LED表示灯32が点灯すると、表示盤5の制御部29は、点灯したLED表示灯32から不具合が起こった箇所、この場合受電盤41のDCRA回路であることを特定し、不具合が起こった箇所に関する情報に現時刻を添付して通信制御盤6に緊急メールとして送信する。
通信制御盤6は、作業の前に設定した緊急連絡先に時刻を添付した不具合が起こった箇所に関する情報をメールする。
【0023】
受電盤41のDCRAのヒューズが切れると、このようにして緊急連絡先に不具合が起こったこと、起こった箇所、起こった時刻がメールされるので、現場代理人や工事部門長が応急措置を関係部門に指示できる。
また、フォルトファインダー盤1の近くにいなくても不具合が発生したことが分かるので、不具合の状況で作業を継続して状況を悪化することを防げる。
【0024】
また、情報センタの監視装置3に不具合状況がメールされるので、監視員は現場代理人に不具合の内容を細かに聞くことができ、全体としての対応を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施の形態によるフォルトファインダーシステムの構成図である。
【図2】この発明の実施の形態によるフォルトファインダー盤の外観図である。
【図3】この発明の実施の形態によるフォルトファインダーシステムで監視する受電盤の回路図である。
【図4】この発明の実施の形態によるフォルトファインダーシステムで監視する共通リレー盤の回路図である。
【図5】この発明の実施の形態によるフォルトファインダーシステムで監視する管制運転リレー盤の回路図である。
【符号の説明】
【0026】
1 フォルトファインダー盤、2 携帯電話機、3 監視装置、4 監視制御盤、5 表示盤、6 通信制御盤、7 パトライト、11 受電盤用リレー盤、12 共通リレー盤用リレー盤、13 管制運転リレー盤用リレー盤、15、16 パワーリレー、17 ワニ口クリップ、18 ペア線、19 リードケーブル、20 電源線、23 電源スイッチ、24 表示セット、25 ブザー、26 ランプリセットスイッチ、27 ブザーリセットスイッチ、28 ヒューズ、29 制御部、30 パネル、31 ボタンスイッチ、32 LED表示灯、35 入力インターフェース、36 メール手段、40 エレベータ群管理盤、41 受電盤、42 共通リレー盤、43 管制運転リレー盤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
群管理されている複数台のエレベータをリニューアル工事するときに工事によって引き起こされる不具合を検出するフォルトファインダーシステムにおいて、
上記複数台のエレベータのうち稼働中のエレベータの稼動に係わる電源または信号の状態を監視する監視制御盤と、
上記電源または信号に不具合が発生したとき不具合が発生した電源または信号を表示するとともに警報を発する表示盤と、
を備えるフォルトファインダー盤を具備することを特徴とするフォルトファインダーシステム。
【請求項2】
上記フォルトファインダー盤は、上記電源または信号に不具合が発生したとき不具合が発生した電源または信号に関する情報を緊急連絡先にメールする通信制御盤を備えることを特徴とする請求項1に記載のフォルトファインダーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−239270(P2008−239270A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79356(P2007−79356)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】