説明

フォーマーにおける線材端末処理装置

【課題】線材の端末の切断時、カッターとクイルの間に噛み込みが発生するのを防止する線材端末処理装置の提供。
【解決手段】フォーマーの線材端末処理装置であって、素材供給機構8の線材供給方向後方側に、供給される線材Aの端末を検出する端末探知センサー21と、線材供給方向に移動可能で任意の位置にて線材端末を切断排除するノコ切断機22を設けると共に、端末探知センサー21からの端末検出信号に基づいて残余の線材長さXを検知すると同時にこの線材長さXを切断する長さLにて割り、割った残りの数値aが線径Dの二分の一以下の場合は、フォーマー1と素材供給機構8を停止させると共に、ノコ切断機22を割り切れた最終の端末部分から切断する長さLの約二分の一の位置まで移動させて余った端末を切断排除するように制御するコンピューター23を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の線材を圧造ステーション側に所定長さずつ供給してカッターで切断し、その切断ブランクを所定形状の成形品に成形するフォーマーにおける線材端末処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえばボルトやナット或いはその他の各種のパーツ類を成形するフォーマーは、相対向するダイとパンチとを備えた複数の圧造ステーションで所定寸法の切断ブランクを粗から精に圧造成形するものであるが、その場合、フォーマーとしては、たとえば長尺の線材を圧造ステーション側に所定長さずつ供給する素材供給機構と、線材を切断するカッターとを備え、素材供給機構により圧造ステーション側に供給された線材をカッターにより一定長さに切断し、この切断ブランクを相対向するダイとパンチにより順次圧造成形して所定形状の成形品を形成するように構成したものが知られている。
【0003】
そして、先行する線材A後端の端末が端数として残る場合、図3に示すように、端数となる線材Aの端末部分はカッター30により切断された後、後から連続して供給される後続の線材Aにより圧造部側に押し出されて排出されるようになされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 実用新案登録第3671290公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記した線材の端末処理方法によると、図3に示すように先行する線材を一定長さLずつ切断したとき、クイル内に残った端末a長さが線径Dの二分の一以下になるときがある。この場合、クイル31側での端末部分の保持が十分に確保できなくなり、そのため、カッター30による線材の切断時にカッター30とクイル31前面との間において噛み込みを起こし、工具の破損等損傷をフォーマーに与える問題があった。
【0006】
そこで本発明は、線材の端末切断時に上記した噛み込みが発生する問題をなくすことができるフォーマーにおける線材端末処理装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した問題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、長尺の線材を圧造ステーション側に所定長さずつ供給する素材供給機構と、供給された線材を切断するカッターとを備え、素材供給機構により圧造ステーション側に供給された線材をカッターにより一定長さに切断し、その切断ブランクを所定形状の成形品に成形するフォーマーの線材端末処理装置であって、素材供給機構の線材供給方向後方側に、供給される線材の端末を検出する端末探知センサーと、線材供給方向に移動可能で任意の位置にて線材端末を切断排除する切断機を備える一方、端末探知センサーからの端末検出信号に基づいて残余の線材長さXを検知すると同時にこの線材長さXを切断する長さLにて割り、割った残りの数値aが線径Dの二分の一以下の場合は、上記フォーマーと素材供給機構を停止させると共に、切断機を割り切れた最終の端末部分から切断する長さLの約二分の一の位置まで移動させて余った端末を切断排除するように制御する制御手段を備えていることを特徴とする。
【0008】
また、本願の請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、制御手段は、端末探知センサーからの端末検出信号に基づいて残余の線材長さXを切断する長さLにて割り、その割った残りの数値aが切断する長さLのほぼ二分の一となる場合、フォーマー及び素材供給機構を停止させずにそのまま先行する線材の末端と共に後続の線材を供給させ、圧造ステーション側においてカッターにより先行する線材の末端と後続する線材が切断する長さLのほぼ二分の一の長さに切断された状態で排除されるように構成したことを特徴とする。
【0009】
さらに、本願の請求項3発明は、請求項2記載の構成において、制御手段は、切断機により端末処理を行っている間は、フォーマー及び素材供給機構を停止させ、端末処理終了後にフォーマー及び素材供給機構を作動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記したフォーマーにおける線材端末処理装置によれば、先行する線材を一定長さLずつ切断するとき、端末探知センサーからの端末検出信号に基づいて制御手段は残余の線材長さXを切断する長さLにて割り、その割り切れた最終の端末部分から切断する長さLの約二分の一の位置において切断機により切断し、余った端末を切断排除するようにしたから、カッターとクイルで切断する際のクイル内に残る端末の長さが線径Dの二分の一以下になることはないので、クイル側での端末部分の保持が十分に確保でき、その結果、カッターによる線材の切断時にカッターとクイル前面の間における噛み込みを防止でき、工具の破損等損傷をフォーマーに与えるのを防止できる。
【0011】
また、制御手段は、端末探知センサーからの端末検出信号に基づいて残こされた線材長さXを切断する長さLにて割り、その割った残りの数値aが切断する長さLのほぼ二分の一となる場合、フォーマー及び素材供給機構を停止させずにそのまま先行する線材の末端と共に後続の線材を供給させ、圧造ステーション側においてカッターにより先行する線材の末端と後続する線材が切断する長さLのほぼ二分の一の位置にて切断された状態で排除されるように構成すれば、端末探知センサーからの端末検出信号に基づいて毎回フォーマーや素材供給機構を停止させるといったことが省略でき、これにより、フォーマーによる圧造成形がよりスムーズに行えるのでこのましい。
【0012】
さらに、制御手段は、切断機により端末処理を行っている間は、フォーマー及び素材供給機構を停止させ、端末処理終了後にフォーマー及び素材供給機構を作動させる構成とすれば、線材の端末処理とフォーマーによる圧造成形がスムーズに行えるのでこのましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る線材端末処理装置を備えたフォーマーの概略平面図である。
【図2】同線材端末処理装置の要部の縦断側面図である。
【図3】従来の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0015】
図1及び図2は、本発明に係る端末処理装置を備えたフォーマーを示す。このフォーマー1は、図1に示すように機台2の所定位置にダイブロック3が設けられ、ダイブロック3に粗から精に至る複数個のダイ4…4が所定間隔で配置されていると共に、これらダイ4…4に向かって進退するラム5の前面に同数のパンチ6…6が上記ダイ4…4に対向して配置されている。これらのダイ4…4とパンチによって複数の圧造ステーションが構成され、かつ、ラム5によるパンチ6…6の進退動によってパンチ6…6とダイ4…4との間で切断ブランクを粗から精に順次段階的に圧造成形するようになされている。
【0016】
ダイブロック3の一側部には、クイル7と、このクイル7の後方で該クイル7に長尺の線材Aを移送する複数の上下供給ロール(素材供給機構)8…8と、該クイル7より前方に供給された線材Aを一定寸法Lに切断するカッター9とが設けられている。また、線材Aのクイル7からの突出量はストッパー10で任意に規制される。さらに、ダイ4…4の前面側には、クイル7の側方に設けられるプッシャー(図示せず)から押し出された切断ブランク(図示せず)を受け取って上記圧造ステーションにわたって移送する素材移送機構(図示せず)が配設されている。
【0017】
また、供給ロール8…8の後方には、適宜回転支持台(図示せず)に巻回支持されたコイル状の線材Aが配備され、かつ、コイル状線材Aの供給方向前方位置に線材Aを供給ロール8…8に移送する上下送りロール11,11が配設されている。これら供給ロール8…8と送りロール11,11とはそれぞれに設けられたサーボモータ12,13により回転駆動され、線材Aを一定長さLずつクイル側に供給するようになされている。なお、図に示す実施の形態では線材としてコイル線材を用いたけれども、棒状線材であってもよいこと勿論である。
【0018】
そして、図1及び図2に示すように供給ロール8…8と送りロール11,11との間に線材端末処理装置20が設けられている。この線材端末処理装置20は、供給される線材Aの端末を検出する端末探知センサー21と、線材供給方向に移動可能で任意の位置にて線材端末を切断排除するノコ切断機22を備える一方、端末探知センサー21からの端末検出信号に基づいて機台2に残こされた線材長さXを検知すると同時にこの線材長さXを切断する長さLにて割り、その割った残りの数値aが線径Dの二分の一以下の場合は、上記フォーマー1と供給ロール8…8及び送りロール11,11を停止させると共に、ノコ切断機22を割り切れた最終の端末部分から切断する長さLの約二分の一の位置まで移動させて余った端末を切断排除するように制御するコンピューター(制御手段)23を備えている。
【0019】
ノコ切断機22は、具体的に図示してはいないがそのノコ刃を線材供給方向に移動可能で、コンピューター23からの信号によりサーボモータなどの移動手段(図示せず)により割り切れた最終の端末部分から切断する長さLの約二分の一の位置に一致するように移動調節可能に構成されていると共に、常時は線材Aから半径方向外方に離れた待機位置に待機し、切断時に線材Aの中心側に向かって移動可能な構成となっている。
【0020】
また、コンピューター23は、残余の線材長さXを切断する長さLにて割り、その割った残りの数値aが切断する長さLのほぼ二分の一となる場合、フォーマー1及び供給ロール8…8と送りロール11,11を停止せずそのまま先行の線材Aと後続の線材Aとを共に供給し、圧造ステーション側においてカッター9により先行する線材Aと後続する線材Aが切断する長さLのほぼ二分の一の長さに切断されて排除されるように構成されている。
【0021】
さらに、コンピューター23は、ノコ切断機22により端末処理を行っている間は、フォーマー1及び供給ロール8…8と送りロール11,11を停止させ、ノコ切断機22が余った端末を切断排除し待機位置に戻って端末処理が終了した後、フォーマー1及び供給ロール8…8と送りロール11,11を作動させるように構成されている。
【0022】
次に、上記したフォーマーにおける線材端末処理装置の作用について説明する。
【0023】
まず、端末探知センサー21が線材Aの末端を検出すると、該探知センサー21はコンピューター23に端末検出信号を出力する。コンピューター23はその端末検出信号に基づいて残余の線材長さXを検知すると同時にこの線材長さXを切断する長さLにて割り、その割った残りの数値aが線径Dの二分の一以下の場合は、フォーマー1の運転及び供給ロール8…8と送りロール11,11の駆動を停止させる。これと同時にコンピューター23はノコ切断機22のノコ刃を割り切れた最終の端末部分から切断する長さLの約二分の一の位置まで移動させ、ノコ切断機22にて余りの端末を切断すると共に切断片を下方に落下させて排除する。
【0024】
その後、フォーマー1の運転及び供給ロール8…8と送りロール11,11の駆動を開始して通常通り切断する長さLずつカッター9により切断していく。そして、カッター9とクイル7で割り切れた最終の端末部分を切断する際、クイル7内に残る端末の長さが切断する長さLの約二分の一残ることになる。つまり、クイル7内に残る端末aの長さが線径Dの二分の一以下になることはないので、クイル7側での端末部分の保持が十分に確保でき、その結果、カッター9による切断時にカッター9とクイル7前面の間における噛み込みを防止でき、工具の破損等損傷をフォーマー1に与えるのを防止できる。
【0025】
然る後、クイル内に残された先行する線材Aの端末は、後続する線材Aと共に圧造ステーション側に供給され、カッター9により後続する線材Aが切断する長さLの二分の一の位置にて切断されて両者は圧造ステーションにて排除されることになる。以後は、通常通りカッター9による線材Aの切断動作が行われる。
【0026】
また、機台2に残された線材長さXを切断する長さLにて割り、割った残りの数値が切断する長さLのほぼ二分の一となる場合、制御手段16は、フォーマー1、供給ロール8…8及び送りロール11,11を停止せず、つまりノコ切断機22による先行線材Aの端末切断を行わずそのまま後続の線材Aと共に供給し、圧造ステーション側にて先に説明した切断動作と同様の動作により先行線材Aの端末と後続する線材Aはそれぞれ切断する長さLのほぼ二分の一の長さに切断された状態で圧造ステーションにて排除される。これにより、端末探知センサー21からの端末検出信号に基づいて毎回フォーマー1、供給ロール8…8及び送りロール11,11を停止させるといったことが省略できる。その結果、フォーマー1による圧造成形がより連続してスムーズに行うことができる。
【符号の説明】
【0027】
1 フォーマー
4 ダイ
6 パンチ
7 クイル
8 供給ロール(素材供給装置)
9 カッター
20 線材端末処理装置
21 端末探知センサー
22 ノコ切断機
23 コンピューター(制御手段)
A 線材
a 残りの端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の線材を圧造ステーション側に所定長さずつ供給する素材供給機構と、供給された線材を切断するカッターとを備え、素材供給機構により圧造ステーション側に供給された線材をカッターにより一定長さに切断し、その切断ブランクを所定形状の成形品に成形するフォーマーの線材端末処理装置であって、素材供給機構の線材供給方向後方側に、供給される線材の端末を検出する端末探知センサーと、線材供給方向に移動可能で任意の位置にて線材端末を切断排除する切断機を備える一方、端末探知センサーからの端末検出信号に基づいて残余の線材長さXを検知すると同時にこの線材長さXを切断する長さLにて割り、割った残りの数値aが線径Dの二分の一以下の場合は、上記フォーマーと素材供給機構を停止させると共に、切断機を割り切れた最終の端末部分から切断する長さLの約二分の一の位置まで移動させて余った端末を切断排除するように制御する制御手段を備えていることを特徴とするフォーマーにおける線材端末処理装置。
【請求項2】
制御手段は、端末探知センサーからの端末検出信号に基づいて残余の線材長さXを切断する長さLにて割り、その割った残りの数値aが切断する長さLのほぼ二分の一となる場合、フォーマー及び素材供給機構を停止させずにそのまま先行する線材の末端と共に後続の線材を供給させ、圧造ステーション側においてカッターにより先行する線材の末端と後続する線材が切断する長さLのほぼ二分の一の長さに切断された状態で排除されるように構成したことを特徴とする請求項1記載のフォーマーにおける線材端末処理装置。
【請求項3】
制御手段は、切断機により端末処理を行っている間は、フォーマー及び素材供給機構を停止させ、端末処理終了後にフォーマー及び素材供給機構を作動させることを特徴とする請求項2記載のフォーマーにおける線材端末処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−179652(P2012−179652A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134595(P2011−134595)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願変更の表示】意願2011−1450(D2011−1450)の変更
【原出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000143916)株式会社阪村機械製作所 (29)
【Fターム(参考)】