説明

フォーマーディスペンサー

【課題】泡切れがよく、内容物の固化による目詰まりを起こさないフォーマーディスペンサーを提案する。
【解決手段】容器の口部に固定保持されるべースキャップ1と、べースキャップに垂下保持され、同心二重配置になる2つのポンプ2、3と、各ポンプの出側経路をそれぞれ合流させる空間領域Mを形成する筒体4aを有し、押し込み動作を繰り返して内容物及び外気を空間領域内で混合、発泡させてノズル4bを通して外界へ噴出させる押圧ヘッド4とを備えたフォーマーディスペンサーにおいて、押圧ヘッドの筒体内に、押圧ヘッドの押し込み方向に沿ってスライド可能に弾性保持され、筒体の出側開口端に当接して出側開口を密閉するシール部材5を設ける一方、押圧ヘッドの天面部に、天面部を通り抜けてシール部材に連結するロッド12を有し、押圧ヘッドの押し込みによってシール部材をスライドさせて筒体の出側開口を開放するカバー体11を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の内容物を外気(エアー)と混合、泡状にして噴出させるのに好適なフォーマーディスペンサーに関するものであり、ノズル部における泡切れをよくするとともに、発泡部材であるメッシュリングの目詰まりを回避し噴出形態の安定化を図ろうとするものである。
【背景技術】
【0002】
洗顔料や整髪剤等を充填した容器では、容器内の内容物を直接泡状にして噴出させるフォーマーディスペンサーを装着したものが多用されており、これにより内容物の泡立て動作を省略した簡便な使用を実現している。
【0003】
かかるディスペンサーは、容器の口部に固定保持されるべースキャップに、内容物の吸引、加圧、圧送を司るピストンと、外気の吸引、加圧、圧送を行うエアーピストンをそれぞれ同心に配置した単一のシリンダーが取り付けられており、押圧ヘッドにより各ポンプ内のピストンを同期駆動させて内容物と外気をそれぞれ各シリンダーに吸引するとともに加圧、圧送し、ポンプの出側における合流空間にて内容物と外気を相互に混合させてメッシュ等の発泡部材を通過させることで内容物を泡状にして外部へ噴出させる仕組みになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−230961号公報
【0005】
ところで、上記のような従来のフォーマーディスペンサーは、内容物の噴出後における泡切れがよくない(ノズル部の先端から液がたれやすい)ところに難点を有しており、また、ノズルの内部通路やそれに至る前の通路、発泡部材等に内容物が付着、残存するのが避けられないことから、外気との接触により内容物が固化して発泡部材の目詰まりを引き起こす場合があって噴出形態が不安定となり均質な泡を噴出させることができない場合があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、内容物の噴出後における泡切れをよくするとともに発泡部材の目詰まりを起こすことのない新規なフォーマーディスペンサーを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、容器の口部に固定保持されるべースキャップと、このべースキャップに垂下保持され容器内の内容物と外気をそれぞれ個別に吸引、加圧、圧送する同心二重配置になる2つのポンプと、これら各ポンプの出側経路をそれぞれ合流させる空間領域を形成する筒体を有し、押し込み動作の繰り返しにて各ポンプを作動させて内容物及び外気をそれぞれ該空間領域内で混合、発泡させてノズルを通して外界へ噴出させる押圧ヘッドとを備えたフォーマーディスペンサーであって、
前記押圧ヘッドの筒体内に、該押圧ヘッドの押し込み方向に沿ってスライド可能に弾性保持され該筒体の出側開口端に当接して該出側開口を密閉するシール部材を設け、
前記押圧ヘッドの天面部に、該天面部を通り抜けてシール部材に連結するロッドを有し、押圧ヘッドの押し込み方向に沿う押し込みによってシール部材をスライドさせて筒体の出側開口を開放するカバー体を設けたことを特徴とするフォーマーディスペンサーである。
【0008】
上記の構成になるフォーマーディスペンサーにおいては、押圧ヘッドの天面部に、ロッドを取り囲む環状周壁を設け、該ロッドに、環状周壁の内壁に摺動可能に当接するとともに、シール部材のスライドに帯同させてバックサクションを誘発させる環状シール部材を設けることができる。
【発明の効果】
【0009】
筒体の出側開口は押圧ヘッドを押し込まない限りシール部材によって常に密閉状態に保持されており、筒体内に存在する内容物が外気と接触するのが避けられるため発泡部材が目詰まりを起こすことがなくなる。
【0010】
また、内容物の噴出後においてはシール部材が初期の位置へ復帰する動作によってノズルの通路内が負圧化することができるためノズル先端に残存する内容物は筒体側へと引き込まれ泡切れがよくなる(バックサクションが誘発される)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は本発明にしたがうフォーマーディスペンサーの実施の形態を容器の口部に取付けた状態で示した図であり、図2は図1に示したフォーマーディスペンサーの要部拡大図である。
【0012】
図における番号1は容器の口部に固定保持されるべースキャップである。このべースキャップ1は、容器の口部の外面に設けられたねじ部に係合するねじ部を有する周壁1aと、この周壁1aの上端に一体連結する隔壁1bにて構成されている。べースキャップ1はアンダーカットの如き係合手段によって容器の口部に係合させるようにしてもよい。
【0013】
また、2、3はべースキャップ1に垂下保持されるポンプである。ポンプ2、3のうちポンプ2は吸引管2aを通して容器内の内容物を吸引、加圧、圧送するポンプであり、3は外気を吸引、加圧、圧送するポンプである。これらのポンプ2、3は各シリンダー2b、3a毎にそれぞれ構成部材が個別に組み込まれた同心二重配置の単一部材で構成されており、押圧ヘッドの押し込み動作によって各ポンプ2、3を同時に駆動することができるようになっている。
【0014】
ポンプ2はシリンダー2b内に配置されるポペット2cと、中空ステムSの下部にてスプリング2dを介して弾性支持され、シリンダー2b内でスライド可能な中空ピストン2eとを備えており、中空ピストン2eの上端部とポペット2cの上端部が当接することにより中空ピストン2eの上端開口2eが閉塞されているが、押圧ヘッドを押し込んでシリンダー2bの内部が規定圧力に達した時点でもって上端開口2eが開放されてシリンダー2b内の内容物が逆止弁eを通して流出するようになっている。
【0015】
また、4は押圧ヘッドである。この押圧ヘッド4は、押し込み動作を繰り返すことにより各ポンプ2、3を駆動するものであって、べースキャップ1の隔壁1bに設けられた中央開口部1bにて起立する筒体4aと、この筒体4aの上部側壁に一体的に設けられた横向きのノズル4bから構成されている。筒体4aはその下部がポンプ2、3のステムSにつながっており、その内側には各ポンプ2、3の出側経路をそれぞれ合流させる空間領域(混合室)Mが形成されている。
【0016】
また、5は筒体4a内に配置されたディスク状のシール部材である。このシール部材5は筒体4aの内壁に間隔をおいて複数設けられた縦リブ4cをガイドにして上下にスライドすることができるようになっている。6は筒体4aの空間領域M内に配置され、エアーの混在した内容物を泡状にするメッシュリングである。このメッシュリング6の上端及び下端には発泡部材6a、6b(シート状のもの)が配置されている。7はメッシュリング6の上端面に設置され、シール部材5を弾性保持するスプリングである。シール部材5はスプリング7によって筒体4aの出側開口端4aに形成された座面Z(図2参照)に押しつけられ、筒体4aの出側開口を押圧ヘッド4の押し込みを伴わない初期姿勢において密閉状態に維持している。
【0017】
8は押圧ヘッド4の天面部に設けられた外側環状周壁、9は外側環状周壁8の内側に設けられた内側環状周壁、10は押圧ヘッド4の天面部に形成されその内部につながる貫通孔である。この貫通孔10の縁部に内側環状周壁9が位置しており、この内側環状種周壁9によって後述するロッドを取り囲んでいる。また、11は外側周壁8に沿ってスライド可能に抜け止め保持されたカバー体である。このカバー体11は、外側周壁8を取り囲む周壁11aと、この周壁11aの上端に一体連結する天板11bと、天板11bの下面に一体連結し内側環状周壁9を取り囲む垂下筒体11cから構成されており、アンダーカットの如き係合手段によって外側環状周壁8に抜け止めされている。
【0018】
12はシール部材5の上面に一体連結した例で示したロッドである。このロッド12は貫通孔10を通り抜けて押圧ヘッド4の天面部に突出する突出端部12aを有しており、この突出端部12aがカバー体11の小筒体11dに嵌合している。ロッド12の突出端部12aはカバー体11と一体連結していてもよい。
【0019】
さらに、13はロッド12の外周壁に設けられ、内側環状周壁9の内壁に摺動可能に当接してその相互間をシールする環状シール部材である。この環状シール部材13はロッド12と同材質とした一体成形によって形成されている。14はべースキャップ1の周壁1aに着脱自在に取り付けられ押圧ヘッド4を覆い隠す保護キャップである。
【0020】
容器内の内容物を噴出させるには、保護キャップ14を取り外したのち押圧ヘッド4を最下端(押し込みエンド)まで押し込んだ後に押し込みに係る力を取り除く動作を繰り返し行えばよい。押圧ヘッド4を押し込み、その押し込みに係る力を取り除くとスプリング2dの付勢力によって押圧ヘッド4が元の位置へと復帰し、この時、シリンダー2b内は負圧化され、容器内の内容物は吸引管2a、吸引口を経てシリンダー2b内に吸引される。
【0021】
押圧ヘッド4の押し込みに係る力を取り除くとポンプ3についても、やはりシリンダー3a内が負圧となりピストン3bに配された環状の逆止弁3bを通してシリンダー3a内にエアーが導入される。なお、シリンダー3aの壁部に設けられた開孔3aは、内容物の噴出に伴う容器内の負圧を解除するエアー導入孔であり、押圧ヘッド4の押し込みにより外界と連通し、外気を容器内へと導入する。
【0022】
押圧ヘッド4が初期姿勢に復帰したのち、再度押圧ヘッド4を押し込むと、中空ステムSにより中空ピストン2e、ピストン3bがともに押し込まれ、エアーの導入孔3aが外界と連通する。中空ピストン2e、ピストン3bの押し込みによってシリンダー2b及びシリンダー3aの内部がそれぞれ加圧され、シリンダー2bについては所定の圧力に達した時、中空ピストン2eの上端開口2eが開となり、加圧された内容物は押圧ヘッド4の筒体4aにて形成された空間領域Mへ流出する。一方、シリンダー3aにおいては加圧されたエアーが中空ステムSと押圧ヘッド4の筒体4aの内壁との間で形成される隙間tを通して空間領域Mへ流出する。
【0023】
空間領域Mに流出した内容物及びエアーはその部位で混合され、メッシュリング6を経て発泡、整泡された後、内部通路を通ってノズル4bの先端から外界へと噴出される。
【0024】
押圧ヘッド4の押し込みに際しては、図3に示すように、その天面部でカバー体11が外側周壁8に沿って単独で下に向けてスライドしロッド12によってシール部材5が押し込まれることになり、筒体4aの出側開口端4aに形成された座面7から該シール部材5が離反して出側開口が開放される。
【0025】
押圧ヘッド4の押し込みに係る力を取り除いた状態(内容物及びエアーの吸引工程)では、スプリング7の付勢力によりシール部材5は初期姿勢に復帰し筒体4aの出側開口端4aに形成された座面Zに押し付けられて出側開口が再び密閉状態に維持される。
【0026】
本発明にしたがうフォーマーディスペンサーは、内容物を噴出させるときにのみ筒体4aの出側開口が開放されることとなるので、押圧ヘッド4の内部通路内、とくに混合室を形成する空間領域Mにおいては内容物が残存していても外気との接触が避けられるため、その固化等によってメッシュリング6が目詰まりを起こすことがない。
【0027】
また、シール部材5が初期姿勢に復帰するとき、環状シール部材13が内側環状周壁9の内壁に沿って摺動しながら上方へ移動することになるためノズル4bの内部通路における負圧化によりバックサクションが誘発され、ノズル4bの先端部分に残存している内容物が筒体4a側へと引き込まれ泡切れがよくなる。
【0028】
本発明の実施の形態では、シール部材5にロッド12を一体連結した場合について示したが、該ロッド12はカバー体11に一体連結したものを適用することもできる。また、環状シール部材13はロッド12とは材質の異なるものを用いるのが好ましいが、ロッド12において所望の剛性を確保できるならば環状シール部材13と同材質のものを用いてもよい。シール状態が確保できるならば摺動する際に変形を伴う軟質材で構成してもよいし変形を伴わない硬質材で構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
泡切れがよく、メッシュリングにおいて目詰まりを起こすことのないフォーマーディスペンサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明にしたがうフォーマーディスペンサーの実施の形態を示した図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図1に示したフォーマーディスペンサーの作動要領の説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 べースキャップ
1a 周壁
1b 隔壁
2 ポンプ
2a 吸引管
2b シリンダー
2c ポペット
2d スプリング
2e 中空ピストン
3 ポンプ
3a シリンダー
3b ピストン
4 押圧ヘッド
4a 筒体
4b ノズル
4c 縦リブ
5 シール部材
6 メッシュリング
6a 発泡部材
6b 発泡部材
7 スプリング
8 外側環状周壁
9 内側環状周壁
10 貫通孔
11 カバー体
11a 周壁
11b 天板
11c 垂下筒体
11d 小筒体
12 ロッド
12a 突出端部
13 環状シール部材
14 保護キャップ
S 中空ステム
M 空間領域(混合室)
e 逆止弁
Z 座面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に固定保持されるべースキャップと、このべースキャップに垂下保持され容器内の内容物と外気をそれぞれ個別に吸引、加圧、圧送する同心二重配置になる2つのポンプと、これら各ポンプの出側経路をそれぞれ合流させる空間領域を形成する筒体を有し、押し込み動作の繰り返しにて各ポンプを駆動させて内容物及び外気をそれぞれ該空間領域内で混合、発泡させてノズルを通して外界へ噴出させる押圧ヘッドとを備えたフォーマーディスペンサーであって、
前記押圧ヘッドの筒体内に、該押圧ヘッドの押し込み方向に沿ってスライド可能に弾性保持され、該筒体の出側開口端に当接して該出側開口を密閉するシール部材を設け、
前記押圧ヘッドの天面部に、該天面部を通り抜けてシール部材に連結するロッドを有し、押圧ヘッドの押し込み方向に沿う押し込みによってシール部材をスライドさせて筒体の出側開口を開放するカバー体を設けたことを特徴とするフォーマーディスペンサー。
【請求項2】
前記押圧ヘッドの天面部に、ロッドを取り囲む環状周壁を設け、該ロッドに、環状周壁の内壁に摺動可能に当接するとともに、シール部材のスライドに帯同させてバックサクションを誘発させる環状シール部材を設けた、請求項1記載のフォーマーディスペンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−126235(P2010−126235A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305287(P2008−305287)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】