説明

フォーム製の磁気封止要素を持つ弁

【課題】低騒音の電磁開閉弁を提供する。
【解決手段】低雑音動作を確実にしかつ安価な構造を有する弁を創出するという目的に基づき、入口1と、出口2と、封止要素3と、磁界を発生させる装置4とを含む弁であって、封止要素3を装置4によって少なくとも部分的に移動、又は、変形させることができ、この前記封止要素3の移動、又は、変形により前記封止要素3を少なくとも部分的に弁座5から離間させ、前記封止要素3を経由して入口1と出口2を流体的導通状態に維持させる。また、前記封止要素3は少なくとも部分的に、前記装置4の発生する磁界によって変形することのできるフォーム要素6から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入口と、出口と、封止要素と、磁界を発生する装置とを備えた弁であって、前記装置によって封止要素が少なくとも部分的に移動し、かつ、前記封止要素が少なくとも部分的に弁座から離昇するので、封止要素が流体導通状態で入口を出口に接続させるように構成された弁に関する。
【背景技術】
【0002】
上記タイプの弁は、当該技術の現状から既知である。これらの弁では、封止要素は、磁界と相互作用するために剛性部品として構成される。封止要素はしばしば金属部品として、または金属プラスチック複合部品として設計される。
【0003】
汎用型の弁は、硬質の封止要素が弁座から持ち上げられて再び弁座に衝突するときに、騒音が発生するという不利点を有する。特にクロック弁(clocked valve)の場合、特に航空機の客室内で、極めて不快に感じられるスタッカートのような雑音が発生するおそれがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、低雑音動作を確実にしかつ安価な構造を有する、上記タイプの弁を創出するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、本発明に従って請求項1の特徴によって達成される。
【0006】
この請求項によると、上記タイプの弁は、封止要素が少なくとも部分的に、磁界によって変形することのできるフォーム要素から作られることを特徴とする。
【0007】
本発明に従って、フォーム要素の柔軟性および弾力性のおかげで、事実上雑音を発生することなく、それを弁座に着座させることができることが認められた。磁界によって可逆的に変形可能な弾性フォーム要素は、磁界によってその静止位置から移動することができ、かつ磁界のスイッチオフ後に自動的に前記静止位置に戻る。これにより、比較的高価な金属ばねを省くことが可能になる。特にクロック弁の場合、フォーム要素の柔軟性は、スタッカートのような雑音を防止できることを意味する。明細書に記載する弁を車両で使用した場合、封止要素が弁座に衝突するときに封止要素によって生じる不快な雑音が、車両の室内で聞こえなくなる。また、フォームは何の問題もなく任意の所望の形状に作成することができるので、本発明にしたがって、フォーム要素が高い費用対効果で製造することができることも認められた。従って、上記の目的が達成される。
【0008】
封止要素は、フォームの形状が変化する間に弁座を解放することができ、それによって入口および出口が流体導通状態で接続される。これにより、封止要素を全体的に弁座から離昇させる必要が無いので、迅速に開弁できることが確保される。封止要素の特定の領域だけを弁座から部分的に離昇させることができ、スリットまたはギャップが解放され、そこを通して流体が流動することができる。
【0009】
フォーム要素は第1端および第2端を有し、フォーム要素が圧縮されている間、磁界の作用によって第1端を第2端側に位置させることができる。ひとたび磁界が消えると、復元力がフォーム要素を圧縮解除させることが好都合である。圧縮解除により封止要素は再
び弁座上に載置し、こうして出口と入口との間の流体接続が再び閉鎖される。したがって、弁の開閉に磁気弾性効果が利用される。
【0010】
これを背景として、フォーム要素は撓み空間に関連付けることができる。この撓み空間は、フォーム要素の圧縮によって生成される膨出部が抵抗なく拡張することを可能にする。撓み空間を設けることにより、機械的抵抗が低減されるので、フォーム要素を比較的小さい力で圧縮することが可能になる。これにより封止要素の比較的大きい揚程の実現が可能になり、その結果、入口と出口との間に比較的大きい流路を形成することができる。好ましくは、揚程はフォーム要素の高さの約20%とすることができる。
【0011】
強磁性粒子はフォーム要素全体に配分させることができる。この具体的な実施形態のおかげで、フォーム要素を磁界によって変形させることができる。鉄粒子は安価であるので、鉄粒子の使用は特に優先される。
【0012】
強磁性粒子は、0.1μm以上1mm以下の範囲内の平均直径を有することができる。このサイズの粒子は、フォームマトリクスの構造と干渉しないという利点を必然的に伴う。フォーム要素の孔間のウェブは、それらの安定性に関して事実上影響を受けない。0.5μm以上10μm以下の平均直径を有する粒子は、発泡性材料中に容易に分散させることができ、かつ完成したフォーム要素中に均一に配分されるので、それらを使用することができることは特に好ましい。より小さい粒子は比表面積が非常に高いので、発泡性材料内に混合し難くなることが明らかになっている。より大きい粒子は、それらの沈殿挙動のため、不均質なフォーム要素を生じる。指摘した特に好適な範囲は、フォーム要素の混合挙動および均質性を最適化する。
【0013】
粒子はフォーム要素の5vol%以上50vol%以下を占めることができる。この範囲は、磁界に対し充分に応答しかつ磁界によって変形することのできる、適度な弾性のフォーム要素を形成するのに特に有利であることが分かっている。
【0014】
封止要素は、弁座に対面する端にシールを有する筒状フォーム要素として構成することができる。この具体的実施形態は、封止要素のための軸受を、何の問題も無く、回転対称に製造することを可能にする。封止要素は軸受にクランプされることができ、その結果、封止要素はそれが弁座上に載置する静止位置に固定される。シールの形成により、入口を出口から確実に流体密に分離することが可能になる。シールは膜として構成され得る。そのようなシールは薄肉であるという事実のおかげであまり重くなく、弁座から部分的に離昇するために、フォーム要素と一緒に容易に変形することができる。
【0015】
フォーム要素は、直径が10μm以上0.5mm以下の範囲の孔を有することができる。この孔径は、非常に効果的な封止効果を達成する目的に有利であることが分かっている。この目的のために、開放気泡または独立気泡フォームを使用することができる。開放気泡フォームの場合、個々の孔の少なくとも一部は相互に接触する。独立気泡フォームの場合、全ての孔がポリママトリクス内で相互に分離される。独立気泡フォームは、封止すべき流体がフォーム要素を貫通浸透することができないので、弁に使用するのに特によく適している。この理由により、フォーム要素およびシールを単一の部品に、すなわちコンポーネントとして構成することが考えられる。弁座に対面するフォーム要素の端は、高密度で、非常に緊密に封止するために、フォーム要素の他の部分より高い密度およびより微細な多孔性を有することができる。
【0016】
フォーム要素は、比較的弱い磁界によって何の問題も無く変形することができるように、少なくとも5vol%の空孔率を有することができる。
【0017】
磁界を発生する装置は、コイルを含むことができる。その結果、電磁界が生成され、弁の高速クロッキングが可能になる。
【0018】
これを背景として、封止要素は0.5テスラ以上2テスラ以下の磁束密度で移動可能にすることができる。封止要素は、比較的低い電流で少なくとも部分的に移動することができることが有利である。
【0019】
これを背景として、熱可塑性エラストマから構成されるエラストマフォームをフォーム要素として使用することが考えられる。本願で使用する場合、用語「エラストマフォーム」とは、ゴム弾性挙動を示す多孔性プラスチックを指す。それらは、ガラス転移温度未満で鋼弾性的に(steel−elastically)挙動し、かつガラス転移温度より上ではゴム弾性的である、化学的または物理的に緩く架橋したポリマとすることができる。使用することが好ましいエラストマのガラス転移温度は20℃[68゜F]以下である。
【0020】
使用するエラストマフォームは、それらの溶融または熱分解温度に達するまで、ゴム弾性的に挙動することが好ましい。使用することが好ましい熱可塑性エラストマは、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリアミド、無架橋熱可塑性ポリオレフィン、部分架橋熱可塑性ポリオレフィン、熱可塑性スチレン系ポリマ、および特に熱可塑性ポリウレタンである。
【0021】
フォーム要素は、酢酸エチルビニルで作られたフォームから構成することができる。この材料で作られたフォームは、均一に配分された強磁性粒子を保持するのに特によく適していることが分かっている。
【0022】
ここに記載する弁は、幾つかの入口を持つことができる。この実施形態では、弁は、2つ以上の入口を流体導通状態で交互に出口に接続することのできる逆洗弁として使用するのに適している。
【0023】
ここに記載する弁は、事実上雑音無く動作し、かつ小さい電流で高い周波数のクロッキングを行なうことができるので、車両のパージ弁として使用するのに特によく適している。
【0024】
所与の温度で始動すると、揮発性炭化水素は車両のタンク排気装置を介して大気中に放出することができる。Euro−2規格は、この排気に特定の制限値を規定している。この値を満たすために、活性炭フィルタがタンク排気装置に設置される。このフィルタは漏出した炭化水素を吸収し、きれいな空気だけを大気中に到達させる。パージ弁は、活性炭フィルタとエンジンの吸気管との間に配置される。弁は特定の条件下で開き、活性炭フィルタを再生させる。燃料蒸気はパージ弁を介して吸気管内に引き込まれ、次いで気筒の内燃室に達し、そこで燃焼される。
【0025】
本発明の教示を有利に構成しかつ改善するための様々な可能性が存在する。これを目的として、一方では従属請求項を参照し、他方では、図面に関連する本発明の好適な実施形態についての以下の説明を参照されたい。
【0026】
図面に関連する本発明の好適な実施形態の以下の説明と併せて、教示の一般的に好適な実施形態および改善についても説明する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、低雑音動作を確保することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
単一の図面は、入口1と、出口2と、封止要素3と、磁界を発生させる装置4とを有する弁であって、封止要素3を装置4によって少なくとも部分的に移動させることができ、かつ封止要素3が少なくとも部分的に弁座5から離昇することによって、封止要素3が入口1を流体導通状態で出口2に接続するように構成された弁を示す。封止要素3は少なくとも部分的にフォーム要素6から作られる。
【0029】
フォーム要素6の形状が変化する間に封止要素3は弁座5を解放し、それにより入口1が流体導通状態で出口2と接続する。フォーム要素6は第1端7および第2端8を有し、フォーム要素6が圧縮されている間、磁界の作用によって第1端7を第2端8側に位置させることができる。圧縮中にフォーム要素6に膨出部9が形成され、それらは撓み空間10内に侵入することができる。その結果、封止要素3は、弁座5から離昇するように、上向行程11を容易に実行することができる。
【0030】
フォーム要素6は筒状に構成され、周囲が軸受16内に装着される。したがって、圧縮の結果、封止要素3は全体的に移動するのではなく、部分的にだけ移動する。
【0031】
強磁性粒子、すなわち鉄粒子はフォーム要素6全体に配分される。強磁性粒子は0.1μm以上1mm以下の範囲内の平均直径を有する。粒子はフォーム要素6の5vol%以上50vol%以下を占める。強磁性粒子のおかげで、フォーム要素6は磁界と相互作用し、このプロセスで変形することができる。
【0032】
封止要素3は、弁座5に対面する端7がシール12を有する筒状フォーム要素6として構成される。
【0033】
フォーム要素6は、直径が10μm以上0.5mm以下の範囲の孔を有する。フォーム要素6は少なくとも5vol%の空孔率を有する。
【0034】
磁界を発生する装置4は、軟磁性スリーブ14を同軸的に取り囲むコイル13を含む。コイル13は、磁力線をガイドする筐体15によって取り囲まれる。封止要素3は0.5テスラ以上2テスラ以下の磁束密度で移動可能である。
【0035】
本発明に係る教示の追加の有利な実施形態および改善に関し、一方では本明細書の概要部分を、他方では特許請求の範囲を参照されたい。
【0036】
結論として、純粋に無作為に選択した上記の実施形態は、本発明に係る教示を単に明瞭にするために役立つものであって、本発明をこの実施形態に限定するものではないことを特に言明しておきたい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】変形によって弁座から離昇することのできるフォーム要素を持つ封止要素を有する弁の概略断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 入口
2 出口
3 封止フォーム
4 装置
5 弁座
6 フォーム要素
7 第1端
8 第2端
9 膨出部
10 撓み空間
11 上向行程
12 シール
13 コイル
14 軟磁性スリーブ
15 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口(1)と、出口(2)と、封止要素(3)と、磁界を発生させる装置(4)とを含み、封止要素(3)を装置(4)によって少なくとも部分的に移動させることができ、かつ前記封止要素(3)が少なくとも部分的に弁座(5)から離昇するので、封止要素(3)が入口(1)を流体導通状態で出口(2)に接続させるように構成された弁であって、
封止要素(3)が少なくとも部分的に、磁界によって変形することのできるフォーム要素(6)から作られることを特徴とする弁。
【請求項2】
フォーム要素(6)の形状が変化する間に封止要素(3)が弁座(5)を解放し、それによって入口(1)および出口(3)が流体導通状態で接続されることを特徴とする請求項1に記載の弁。
【請求項3】
フォーム要素(6)が第1端(7)および第2端(8)を有し、フォーム要素(6)が圧縮されている間、磁界の作用によって第1端(7)を第2端(8)側に位置させることができることを特徴とする請求項1または2に記載の弁。
【請求項4】
フォーム要素(6)が撓み空間(10)に関連付けられることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の弁。
【請求項5】
強磁性粒子がフォーム要素(6)全体に配分されることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の弁。
【請求項6】
前記強磁性粒子が0.1μm以上1mm以下の範囲内の平均直径を有することを特徴とする請求項5に記載の弁。
【請求項7】
前記粒子がフォーム要素(6)の5vol%以上50vol%以下を占めることを特徴とする請求項5または6に記載の弁。
【請求項8】
封止要素(3)が筒状フォーム要素(6)として構成され、弁座(5)に対面するその端(7)がシール(12)を有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の弁。
【請求項9】
フォーム要素(6)が10μm以上0.5mm以下の範囲の直径の孔を有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の弁。
【請求項10】
フォーム要素(6)が少なくとも5vol%の空孔率を有することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の弁。
【請求項11】
磁界を発生させる装置(4)がコイル(13)を含むことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の弁。
【請求項12】
封止要素(3)が0.5テスラ以上2テスラ以下の磁束密度で移動することができ、上向行程(11)を実行することを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の弁。

【図1】
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【公開番号】特開2009−144910(P2009−144910A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−222153(P2008−222153)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】